JP7331698B2 - ポリエチレン系樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、でんぷん等の粉をシーラントフィルムの表面にふりかけることで、前述のようなシーラントフィルムと基材とのブロッキングやシーラントフィルム同士のブロッキングを回避する方策が知られている。
しかし、この方策ではフィルム加工装置周辺を汚染するばかりか、包装食品の外観を著しく悪化させる、あるいはシーラントフィルムに付着した粉末が食品とともに直接包装体内に混入したり、ヒートシール強度が低下するといった問題を生じていた。
しかしながら、この方策では、傷つき易さは無機粒子ほど悪くはないものの十分とは言えない。また、耐ブロッキングや粒子の脱落の問題もいまだ残っていた。
本発明におけるポリエチレン系樹脂からなる粒子はその粘度平均分子量が150万以上であることが好ましく、160万以上であることがより好ましく、170万以上がさらに好ましい。また、250万以下が好ましく、240万以下であることがより好ましく、230万以下であることがさらに好ましい。
この範囲の粘度平均分子量であれば、得られたフィルムの少なくとも片側の表面層の最大山高さを2μm以上、15μm以下とすることができる。その理由は定かではないが、ポリエチレン系樹脂からなる粒子とポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂との分子量の差が非常大きいことから分子が混ざり合わず、溶融混合し、押出して得たフィルム中においてもポリエチレン系樹脂からなる粒子の形状を維持することが容易で、また粒子同士の融着や接着等による凝集も起こりにくいため、フィルム表面に無機の粒子と同様に粒径に見合った突起を形成することができると推定している。
ポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量が150万未満であると、溶融混合時の温度が融点ピークより高い場合、熱やせん断による分解または融着凝集やベース樹脂との部分的な相溶による粒経形状の変化が発生する為、従来の無機粒子や有機架橋ポリマービーズのような突起形成が出来なくなり、アンチブロッキング剤としての機能が十分でなくなるだけでなく、透明性などの外観、フィルムの機械的強度、あるいはヒートシール性に影響を及ぼす。
また、粘度平均分子量が250万を超えると、溶融混合し、押出ししフィルムを形成する時に粒子形状を維持しやすくなるが、その場合は適したフィルム表面突起を形成するのが難しくなる傾向がある。
さらに、これも驚くべきことであるが、粘度平均分子量が150万以上のポリエチレン系樹脂からなる粒子は凝集しにくいという性質があるにもかかわらず、それと混合される他のポリエチレン系樹脂からは無機粒子よりも脱落しにくいという特徴をもつことがわかった。
またポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量が150万以上であると粒子自身が潤滑性を持ち、耐ブロッキングや滑り性の向上に寄与し、しかもポリエチレン系樹脂からなる粒子は軟らかいため、耐スクラッチ性も向上すると考えられる。
それに加えて、粒径が25μm以上の粒子を含まないことが好ましい。平均粒径が20μm以下であっても、粒径が25μm以上の粒子が1%以上含むとフィルム表面の最大山高さが15μmを超えやすくなる、そうするとフィルム表面を目視すると、後述するチラツキが発生する。
また25μm以上の粒子は、欠点となり品質が低下するという点でも好ましくない。
本発明における、「ポリエチレン系樹脂からなる粒子」以外のポリエチレン系樹脂とは、エチレン単量体の単独重合体、エチレン単量体とα-オレフィンとの共重合体及びこれらの混合物であり、α-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、デセン-1等が挙げられる。
密度が940kg/m3より大きいポリエチレン系樹脂は、ヒートシール開始温度が高く、製袋加工が困難であり、透明性にも劣るが、密度が940kg/m3より大きいポリエチレン系樹脂を使用した場合、重量物などを包装する強度に優れたポリエチレン系樹脂フィルムをフィルターの交換頻度を下げて製造したり、欠点の少ないフィルムを製造するのには本発明は非常に有効である。
耐ブロッキング性はフィルムの測定面同士を重ね合わせたサンプルを、ヒートプレス(テスター産業社製 形式:SA-303)において、大きさ7cm×7cm、温度50℃、圧力440kgf/cm2、時間15分の加圧処理を行う。この加圧処理でブロッキングしたサンプルとバー(径6mm 材質:アルミ)をバーと剥離面は水平となるように、オートグラフ(島津製作所製 形式:UA-3122)へ装着し、バーが速度(100m/分)でブロッキング部を剥離する時の力を4回測定し、その平均をとった値を指標とするものであるが、密度が0.940g/m3より大きいポリエチレン系樹脂を使用した場合は、4回測定のそれぞれの測定値で変動しやすいだけでなく、ヒートシール開始温度が高くなる傾向が認められた。4回測定のそれぞれの測定値の変動は無機粒子を使用した場合と同等のレベルであることが好ましい。
測定サンプル毎に測定値が変動しやすい理由については現在のところ定かではないが、高い密度のポリエチレン系樹脂がベースとなるとポリエチレン系樹脂からなる粒子の粘度平均分子量低下やポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂との分子鎖の絡み合い等による粒径変化が生じ、その結果形成される表面の突起がより不均一なものになることによるものと推察している。
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等も本発明の目的と効果を損なわない範囲において混合して使用してもよい。
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムの製造方法としては、例えば、ポリエチレン系樹脂からなる粒子、及びポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂組成物を溶融混練する工程、溶融混練した樹脂組成物を溶融押出しして溶融樹脂組成物シートとする工程、溶融樹脂組成物シートを冷却固化する工程を採用するのが好ましい。
本発明におけるポリエチレン系樹脂フィルムは、単層でもよく、積層でもよい。積層の場合は、ポリエチレン系樹脂からなる粒子を含有し、少なくとも片側の表面層の最大山高さが2μm以上、15μm以下である層とは異なる他の層を設けることができる。
単層の場合のフィルムの厚みとしては3μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、20μm以上が特に好ましい。また、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。3μm未満ではポリエチレン系樹脂からなる粒子の効果が低下し、耐ブロッキング性や滑り性の効果が出にくい。
積層の場合の、ポリエチレン系樹脂からなる粒子を含有し、少なくとも片側の表面層の最大山高さが2μm以上、15μm以下である層の厚みとしては3μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、20μm以上が特に好ましい。また、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下が特に好ましい。3μm未満ではポリエチレン系樹脂からなる粒子の効果が低下し、耐ブロッキング性や滑り性の効果が出にくい。
ポリエチレン系樹脂からなる粒子と、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂を混合する場合、これらが均一に混合される方法であれば良く、マスターバッチを使用する場合であれば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等を用いて混合する方法等が挙げられる。直添であれば添着剤をつけたレジンにポリエチレン系樹脂からなる粒子を付着させても良いし、サイドフィードなどで直接押出機に添加しても良い。
ポリエチレン系樹脂からなる粒子を高濃度で、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂と混合してなるマスターバッチ少量を、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂と混合して用いる方法は分散性もよく簡便である。ただし、ポリエチレン系樹脂からなる粒子をマスターバッチを使用せずに、直接直鎖状低密度ポリエチエン、エチレン単量体の単独重合体、エチレン単量体とα-オレフィンとの共重合体と混合する場合は高い分散性が得られる為、コスト的にはサイドフィード方式などによる直添が好ましい。
まず、フィルム原料として、ポリエチレン系樹脂からなる粒子と、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂の水分率が1000ppm未満となるように、乾燥あるいは熱風乾燥する。次いで、各原料を計量、混合して押し出し機に供給し、溶融混練する。
ポリエチレン系樹脂組成物に上述の酸化防止剤を含有する場合は、より高温での溶融押し出しが可能になるが、270℃以下にするのが好ましい。
溶融混練工程では、溶融したポリエチレン系樹脂組成物中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことができる。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、いわゆるゲルなどの異物に加え、触媒などの添加物に由来するSi、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物の除去性能に優れ好適である。また、その濾過精度は100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは80μm以下であり、特に好ましくは70μm以下である。
本発明におけるポリエチレン系樹脂からなる粒子は、溶融混練中に溶融するため、高精度濾材で濾過出来るだけでなく、粗大粒子も少ないことから目詰まりによる昇圧が無機粒子と比較して少ないという利点がある。さらに、ポリエチレン系樹脂からなる粒子の平均粒径を小さくしたり、粒度分布を狭くすることで、例えば濾過精度60μm以下という高精度濾材で工業的に生産しても目詰まりが少なく、異物の除去ができ、しかもポリエチレン系樹脂からなる粒子による得られる耐ブロッキン性を損なわないこともないという利点がある。
ここでいう濾過精度とは、公称濾過精度であり、表示濾過精度以上の大きさの粒子(例えば濾過精度60μmとした場合は60μm以上の粒子)を60%以上捕捉する性能を有する。絶対濾過精度は表示濾過精度以上の大きさの粒子を99.9%以上補足する性能であるが公称濾過精度であっても性能として絶対濾過精度に近いものが好ましい。
ポリエチレン系樹脂組成物を溶融混練中の昇圧量は小さい方が好ましい。昇圧量の測定方法は実施例記載の方法で行った。
次に、溶融したポリエチレン系樹脂組成物シートを例えばT型ダイスから溶融押出しし、冷却ロール上にキャスティングし、冷却固化して未延伸シートを得る。このための具体的な方法としては、冷却ロール上へキャストすることが好ましい。
本発明で使用するポリエチレン系樹脂からなる粒子はもともと疎水性樹脂である為、溶融混練、押出工程を経てもその粒子の表面の疎水性が変わらず、表面を疎水化処理した無機粒子で見られるT型ダイスのリップでの熱劣化物、いわゆる目ヤニの堆積が極めて発生し難い。
溶融したポリエチレン系樹脂組成物シートを溶融押出しして物をTダイ法やインフレーション法でフィルムにする方法等が挙げられるが樹脂組成物の溶融温度を高くすることができる点でTダイ法が特に望ましい。
ポリエチレン系樹脂組成物をT型ダイスから溶融押出しする際のT型ダイスのリップ口の汚れは少ない方が好ましい。リップ汚れの測定方法は実施例記載の方法で行った。
例えば、T型ダイスから溶融押出ししたポリエチレン系樹脂組成物の溶融シートを冷却ロール上にキャスティングし冷却を行うのが好ましい。冷却ロール温度の下限は好ましくは10℃である。上記未満であると結晶化抑制の効果が飽和することがあるだけでなく結露などの問題が発生し好ましくない。冷却ロール温度の上限は好ましくは70℃以下である。上記を越えると結晶化度が高くなりすぎて外観が悪くなることがある。また冷却ロールの温度を上記の範囲とする場合、結露防止のため冷却ロール付近の環境の湿度を下げておくことが好ましい。
キャスティングでは、表面に高温の樹脂が接触するため冷却ロール表面の温度が上昇する。通常、冷却ロールは内部に配管を通して冷却水を流して冷却するが、充分な冷却水量を確保する、配管の配置を工夫する、配管にスラッジが付着しないようメンテナンスを行う、などして、冷却ロール表面の幅方向の温度差を少なくする必要がある。このとき、未延伸シートの厚みは3~200μmの範囲が好適である。
本発明におけるポリエチレン系樹脂フィルムは多層構成でもよい。多層の場合は、上述したポリエチレン系樹脂からなる粒子を含有し、少なくとも片側の表面層の最大山高さが2μm以上、15μm以下である層に加えて、他の層を1層あるいは2層以上設けることができる。
このように多層化する具体的な方法として、一般的な多層化装置(多層フィードブロック、スタティックミキサー、多層マルチマニホールドなど)を用いることができる。
例えば、二台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂をフィードブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。また、一台の押出機のみを用いて、押出機からT型ダイまでのメルトラインに上述の多層化装置を導入することも可能である。
最外層はそれぞれA層、C層である。
これらのポリエチレン系樹脂より得られるフィルムは、優れたヒートシール強度、ホットタック性、夾雑物シール性、耐衝撃性を有し、該ポリエチレン系樹脂は、これらの特性を阻害しない範囲で、他の樹脂、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用してもよい。
中間層(B層))、及びラミネート層(C層)の密度の上限は好ましくは960kg/m3であり、より好ましくは940kg/m3であり、さらに好ましくは935kg/m3である。
中間層(B層)のエルカ酸アミド濃度の上限は好ましくは2000ppmであり、より好ましくは1500ppmである。上記を越えると滑りすぎて巻きズレの原因となることがある。
本発明ポリエチレン系樹脂フィルムの少なくとも片側の表面層の最大山高さが2μm以上、15μm以下であることが必要である。最大山高さRzが15μmを超える場合は外観不良を発生させる為好ましくない。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
本発明におけるポリエチレン系樹脂フィルムは前記表面の最大山高さが2μm以上、15μm以下である表面層における15μmを超える突起の数(個/0.2mm2)が0以下であることが好ましい。この数が少ないほどチラツキ感やヘイズといった外観が劣る。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)をラミネートしたポリエチレン系樹脂フィルムのヒートシール開始温度の上限は好ましくは130℃であり、より好ましくは120℃である。上記を超えるとシール加工がしにくくなることがある。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)をラミネートしたポリエチレン系樹脂フィルムの120℃における到達ヒートシール強度の下限は好ましくは30N/15mmであり、より好ましくは35N/15mmである。上記未満であると製袋後に袋が破れやすくなることがある。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)をラミネートしたポリエチレン系樹脂フィルムの120℃における到達ヒートシール強度の上限は好ましくは70N/15mmであり、より好ましくは65N/15mmである。上記を越えると製袋後に袋が開封しにくくなることがある。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)をラミネートしたポリエチレン系樹脂フィルムのブロッキング強度の下限は好ましくは0mN/20mmであり、より好ましくは10mN/20mmであり、さらに好ましくは15mN/20mmである。
ブロッキング強度の上限は好ましくは150mN/20mmであり、より好ましくは50mN/20mmであり、さらに好ましくは40mN/20mmである。上記を超えると、巻き出し直後の滑り性が悪化することがある。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)をラミネートしたポリエチレン系樹脂フィルムのラミネート後の静摩擦係数の下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.08である。上記未満であると巻取りの際にフィルムが滑りすぎて巻きズレの原因となることがある。
ラミネート後の静摩擦係数の上限は好ましくは0.50であり、より好ましくは0.4である。上記を越えると製袋後の口開き性が悪く、加工時のロスが増加することがある。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムのヘイズの下限は好ましくは3%であり、より好ましくは4%であり、さらに好ましくは5%である。上記未満であるとアンチブロッキング剤が少ない恐れがあり、ブロッキングの原因となることがある。
ヘイズの上限は好ましくは15%であり、より好ましくは12%であり、さらに好ましくは10%である。上記を越えると内容物の視認がしにくいとなることがある。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは、ほとんどチラツキを感じないか、細かいチラツキはあるが均一で特に気にならないのが好ましい。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
従来のデンプンなどの粉をフィルム表面に振りかけずとも耐ブロッキング性を有する、いわゆるノンパウダータイプでは、従来は平均粒径が10μm程度の無機粒子を添加したものがあるが、チラツキ感が劣る場合がある。
二軸延伸ナイロンフィルム(15μm)をラミネートしたポリエチレン系樹脂フィルムは、そのシール面同士が重なるように指でつまんで10回こすった後も、傷がほとんどつかないか、細いスジ状の傷がつくが白化はしないのが好ましい。測定方法は実施例に記載の方法で行う。
従来のデンプンなどの粉をフィルム表面に振りかけずとも耐ブロッキング性を有する、いわゆるノンパウダータイプでは、従来は平均粒径が10μm程度の無機粒子を添加したものがあるが、耐スクラッチ性が劣る。
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムのヤング率(MD)の下限は好ましくは100MPaであり、より好ましくは200MPaである。上記未満であると腰が弱すぎて加工しにくいことがある。ヤング率(MD)の上限は好ましくは800MPaであり、より好ましくは600MPaである。
ヤング率(TD)の上限は好ましくは1000MPaであり、より好ましくは600MPaである。
(1)ポリエチレン系樹脂からなる粒子の測定方法
ポリエチレン系樹脂からなる粒子は加工前の原料樹脂の各物性を測定した。
なお、フィルム成形したあとでも、デカンを溶媒として、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレンが完全に溶解する温度でフィルムを溶解させ、フィルターのろ過精度2μmのフィルターで残留物をろ過することや、デカン中で粒子を完全に溶融させた後、GPC等で分子量の高い部分を分離するなどの方法でポリエチレン系樹脂からなる粒子を分離し、測定することも可能である。
ASTM-D4020に準拠して測定した。
使用前のポリエチレン樹脂からなる粒子の平均粒子径は下記のようにして測定した。
高速攪拌機を使用して所定の回転速度(約5000rpm)で攪拌したイオン交換水中に粒子を分散させ、その分散液をイソトン(生理食塩水)に加えて超音波分散機で更に分散した後に、コールカウンター法によって粒度分布を求め体積平均粒子径として算出した。
使用前のポリエチレン樹脂からなる粒子のうち25μm以上の粒子径のものの割合はコールカウンター法で求めた粒度分布から算出した。
使用前のポリエチレン樹脂からなる粒子の融点はSII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分で測定した。ここで検知された融解吸熱ピーク温度を融点とした。
フィルム成形前の原料をそれぞれ下記の方法で測定した。
なお、ポリエチレン系樹脂からなる粒子を含む層を形成する、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレン系樹脂は単層であれば全層、積層であれば層構成を電子顕微鏡等で確認した後、表面を表面層未満の厚みで削り取り上記(1)で得られたろ過した溶液から溶媒を除去したもので同様に測定出来る。積層から削り取る場合はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどにラミネートした後にカミソリ等で削りとることで比較的容易に行なうことが出来る。
JIS-K7112に従って密度勾配管法により測定した。
JIS-K7210に準拠し、温度190℃で測定した。
SII製示差走査型熱量計(DSC)を用い、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分で測定した。ここで検知された融解吸熱ピーク温度を融点とした。
無機粒子のフィルム中の含有量は加工前の原料樹脂組成物中の添加量から計算した。
なお、フィルム成形したあとでも、デカンを溶媒として、ポリエチレン系樹脂からなる粒子以外のポリエチレンが完全に溶解する温度でフィルムを溶解させ、フィルターのろ過精度2μmのフィルターで残留物をろ過するなどの方法で無機粒子を分離し、測定することも可能である。
シール層に使用する樹脂組成物をろ過精度60μmのナスロン焼結フィルターに230℃の樹脂温でトラウトン試験機を使用し、ろ過面積81π平方ミリに1kg/時間の吐出量で5時間放流した場合の昇圧量(ΔMPa)を基準(△)として、それぞれ下記◎、○、△、×に分類した。
◎:昇圧量が比較例1の85%以下である。
○:昇圧量が比較例1の90%以下である。
△:昇圧量が比較例1と同等である。
×:昇圧量が比較例1より高い。
シール層に使用する樹脂組成物を5時間押出機でストランドダイを利用し230℃で押出した場合のリップの汚れを目視で観察し、それを基準(△)として下記◎、○、△、×に分類した。
◎:ほとんどリップ汚れが確認出来ない。
○:リップ汚れがわずかにみられる。
△:リップ汚れが明らかに確認できる。
×:リップ汚れが成長しストランドに筋状のくぼみが生じた。
三次元表面粗さSRaは接触式表面粗さ(小坂研究所製・型式ET4000A)を用い、3cm×3cm四方のフィルム片から任意に測定面1mm×0.2mmの個所の表面粗さを測定し最大山高さRzを求めた。上記方法で測定したRzをn=3で測定し平均値を求めた。
15μm以上の突起数は接触式表面粗さ(小坂研究所製・型式ET4000A)を用い、3cm×3cm四方のフィルム片から任意に測定面1mm×0.2mmの個所のシール層の表面粗さを測定し最大山高さRzが15μm以上の突起をマーキングし求めた。Rzが15μm以上に相当する突起数カウントしn=3測定値の平均から求めた。
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)のコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/m2になるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層サンプルにシール圧力0.1MPa、シール時間0.5秒、シール温度を90~160℃で10℃ピッチで10mm幅のヒートシールを行った。
ヒートシールしたサンプルをヒートシール幅が15mmになるように短冊状にカットしてオートグラフ(島津製作所製 形式:UA-3122)にセットして200mm/分の速度でシール面を剥離した強度の最大値をn数3で測定し、各温度でのヒートシール強度とヒートシール温度をプロットした。各プロット間を直線で結んだグラフから4.9N/15mmとなるヒートシール温度を読み取りヒートシール開始温度とした。
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)のコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/m2になるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層サンプルにシール圧力0.1MPa、シール時間0.5秒、シール温度を120~190℃で10℃ピッチで10mm幅のヒートシールを行った。
ヒートシールしたサンプルをヒートシール幅が15mmになるように短冊状にカットしてオートグラフ(島津製作所製 形式:UA-3122)にセットして200mm/分の速度でシール面を剥離した強度の最大値をn数3で測定し、最も平均値の高いヒートシール強度を到達シール強度とした。
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)との積層フィルムを下記のようにして作成した。
ナイロンフィルムのコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/m2になるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。
測定面同士を重ね合わせたサンプル(10cm×15cm)を、ヒートプレス(テスター産業社製、形式:SA-303)において、サンプル幅(10cm)の中央で長さ方向(15cm)の内側1cmの位置に大きさ7cm×7cmのアルミ板(2mm厚)の端を合わせるように乗せ、温度50℃、圧力440kgf/cm2、時間15分の加圧処理を行う。
この加圧処理でブロッキングしたサンプルとバー(径6mm 材質:アルミ)をオートグラフ(島津製作所製 形式:UA-3122)へ装着し、バーが速度(100m/分)でブロッキング部を剥離する時の力を測定した。
この場合、バーと剥離面は水平であることが前提である。同一サンプルにつき4回の測定をして平均値で表示した。
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)との積層フィルムを下記のようにして作成した。
ナイロンフィルムのコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/m2になるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層フィルムのポリエチレン系樹脂フィルム面同士の静止摩擦係数をJIS-K7125に準拠し、23℃65%RH環境下で測定した。
ポリエチレン系樹脂フィルムのみを(株)東洋精機製作所社製の直読ヘイズメーターを使用し、JIS-K7105に準拠し測定した。
ヘイズ(%)=〔Td(拡散透過率%)/Tt(全光線透過率%)〕x 100
ポリエチレン系樹脂フィルムのみを目視で観察し、チラツキ感を下記◎、○、△、×に分類した。
◎:ほとんど輝点を感じない。
○:細かい輝点はあるが均一で特に気にならない。
△:部分的に輝点があり異物感を感じる。
×:全面に輝点があり透明性が損なわれる。
(18)経時外観
全層60μmのろ過精度のフィルター交換後に製膜開始し、実施例に記載の製膜方法で7日後のポリエチレン系樹脂フィルムのみをA4サイズでn=3で目視観察し、1000cm2辺りの異物数に換算した平均値を下記◎、○、△、×に分類した。
◎:0.2mmφ以上1mm以下のゲル状異物が1個/1000cm2未満
○:0.2mmφ以上1mm以下のゲル異物が2個/1000cm2未満
△:0.2mmφ以上1mm以下のゲル異物が2個以上、4個/1000cm2未満
×:0.2mmφ以上1mm以下のゲル異物が4個/1000cm2以上
ナイロンフィルム(東洋紡製二軸延伸ナイロンフィルム:N1100、15μm)との積層フィルムを下記のようにして作成した。
ナイロンフィルムのコロナ面に東洋モートン製ドライラミネート用接着剤(TM569、CAT-10L)を固形分が3g/m2になるように塗布し80℃のオーブンで溶剤を揮発除去した後、ポリエチレン系樹脂フィルムのコロナ面と接着剤の塗布面とを60℃の温調ロール上でニップしラミネートした。ラミネートした積層フィルムは40℃で2日間エージングした。作成した積層フィルムのポリエチレン系樹脂フィルム面同士が重なるように指でつまんで10回こすり、目視で観察し、傷のつきやすさを下記◎、○、△、×で分類した。
◎:傷がほとんどつかない。
○:細いスジ状の傷がつくが白化はしない。
△:細いスジ状の密集と部分的に白化が見られる。
×:こすった箇所がほぼ白化する。
実施例及び比較例では下記の原料を使用した。
(ポリエチレン系樹脂)
(1)0540F(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)社製、密度904kg/m3、MFR4.0、融点111℃)
(2)FV402(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、住友化学(株)社製、密度913kg/m3、MFR3.8g/10min、融点115℃)
(3)FV405(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、住友化学(株)社製、密度923kg/m3、MFR3.8g/10min、融点118℃)
(4)FV407(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、住友化学(株)社製、密度930kg/m3、MFR3.2g/10min、融点124℃)
(5)3540F(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)社製、密度931kg/m3、MFR4.0g/10min、融点123℃)
(6)4540F(メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、宇部丸善ポリエチレン(株)社製、密度944kg/m3、MFR4.0g/10min、融点128℃)
(7)リュブマーLS3000(高分子量ポリエチレン、三井化学(株)社製、密度
969kg/m3、MFR14g/10min、熱変形温度(4.6Kg/cm2)80℃)
(1)ミペロンXM220(超高分子量ポリエチレン粒子、三井化学(株)社製、密度940kg/m3、融点136℃、粘度平均分子量200万、ショア硬度65D、体積平均粒径30μm、30μmを超える粒径の重量割合55%)
(2)ミペロンPM220改良品(超高分子量ポリエチレン粒子、三井化学(株)社製、密度940kg/m3融点135℃、粘度平均分子量180万、ショア硬度65D、体積平均粒径10μm、25μmを超える粒径の重量割合1%以下)
(1)KMP-130-10(球状シリカ粒子、信越シリコン社製、平均粒径10μm)
(2)ダイカライトWF(珪藻土、Grefco.Inc.,製、ピンミル粉砕機で平均粒径5μmに加工して使用)
(1)エチレンビスオレイン酸アミド(住友化学製エチレンビスオレイン酸アミド2%マスターバッチEMB11を使用した)
(2)エルカ酸アミド(住友化学製エルカ酸アミド4%マスターバッチEMB10を使用した)
表1に示す樹脂、添加剤をシール層、ラミネート層、中間層用の原料として使用し、それぞれ3つの押し出し機を用いて、それぞれ240℃で溶融し、ろ過精度60μmの焼結フィルターでろ過した後、Tダイからシート状に共押し出しし、シール層、中間層、ラミネート層の厚み比率が1:3:1になるように溶融押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、得られたシートのラミネート層表面にコロナ放電処理を施した後、速度150m/分でロール状に巻取り、厚み50μm、ラミネート層表面の濡れ張力が45N/mのポリエチレン系樹脂フィルムを得た。
表2に示す樹脂、添加剤をシール層、ラミネート層、中間層用の原料として使用し、それぞれ3つの押し出し機を用いて、それぞれ240℃で溶融し、ろ過精度60μmの焼結フィルターでろ過した後、Tダイからシート状に共押し出しし、シール層、中間層、ラミネート層の厚み比率が1:3:1になるように溶融押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、得られたシートのラミネート層表面にコロナ放電処理を施した後、速度150m/分でロール状に巻取り、厚み50μm、ラミネート層表面の濡れ張力が45N/mのポリエチレン系樹脂フィルムを得た。
比較例2で得られたフィルムは耐ブロッキング性と滑り性は優れていたものの、チラツキ感があり、外観に劣るものであった。
比較例3で得られたフィルムは耐ブロッキング性と透明性は優れていたものの、チラツキ感がひどく、外観が著しく劣るものであった。
比較例4で得られたフィルムは表面に溶融ムラが発生し、チラツキ感もあり、外観が著しく劣るものであった。また、耐ブロッキング性、滑り性、耐スクラッチ性も劣るものであった。
比較例5で得られたフィルムは耐ブロッキング性は優れていたもののチラツキ感があり、外観が劣るものであった。また、耐スクラッチ性や製膜加工性が劣るものであった。
表2に示す樹脂、添加剤をシール層、ラミネート層、中間層用の原料として使用し、それぞれ3つの押し出し機を用いて、それぞれ240℃で溶融し、ろ過精度200μm、並びに120μmの焼結フィルターでろ過した後、Tダイからシート状に共押し出しし、シール層、中間層、ラミネート層の厚み比率が1:3:1になるように溶融押出し、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、得られたシートのラミネート層表面にコロナ放電処理を施した後、速度150m/分でロール状に巻取り、厚み50μm、ラミネート層表面の濡れ張力が45N/mのポリエチレン系樹脂フィルムを得た。
結果を表1、表2に示す。
Claims (3)
- ポリエチレン系樹脂からなる粒子と、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン樹脂組成物を溶融混練する工程、ポリエチレン樹脂組成物を溶融押出しし、溶融ポリエチレン樹脂組成物シートとする工程、溶融ポリエチレン樹脂組成物シートを冷却固化する工程を含み、前記ポリエチレン樹脂組成物を溶融混練する工程においてろ過精度100μm以下のフィルターを用いてろ過する工程を含むポリエチレン系樹脂フィルムの製造方法であって、
前記ポリエチレン系樹脂フィルムにおける架橋有機粒子の割合は0.2重量%以下であり、無機粒子の割合は0.2重量%以下であり、前記ポリエチレン系樹脂からなる前記粒子の割合は0.1~2重量%であり、
前記ポリエチレン系樹脂からなる前記粒子は粒径が25μm以上の粒子を含まず、
前記ポリエチレン系樹脂からなる前記粒子は、粘度平均分子量が150万~250万である製造方法。 - 前記ポリエチレン系からなる粒子のDSCによる融点ピーク温度が150℃以下である請求項1に記載のポリエチレン系樹脂フィルムの製造方法。
- 前記フィルターのろ過精度が80μm以下である請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂フィルムの製造方法。
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