以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るレーザー加工装置の構成例について説明する。図1は、レーザー加工装置2を示す斜視図である。
レーザー加工装置2は、レーザー加工装置2を構成する各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の表面(上面)4aは、X軸方向(加工送り方向、左右方向、第1水平方向)及びY軸方向(割り出し送り方向、前後方向、第2水平方向)と概ね平行に形成されている。また、基台4の後方には、直方体状の支持構造6がZ軸方向(鉛直方向、上下方向)に沿って配置されている。
基台4の表面4a上には、移動ユニット(移動機構)8が設けられている。移動ユニット8は、Y軸移動ユニット(Y軸移動機構)10と、X軸移動ユニット(X軸移動機構)20とを備える。
Y軸移動ユニット10は、基台4の表面4a上にY軸方向と概ね平行に配置された一対のY軸ガイドレール12を備える。一対のY軸ガイドレール12には、板状のY軸移動テーブル14が、一対のY軸ガイドレール12に沿ってY軸方向にスライド可能な状態で装着されている。
Y軸移動テーブル14の裏面(下面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のY軸ガイドレール12と概ね平行に配置されたY軸ボールねじ16が螺合されている。また、Y軸ボールねじ16の一端部には、Y軸ボールねじ16を回転させるY軸パルスモータ18が連結されている。Y軸パルスモータ18でY軸ボールねじ16を回転させると、Y軸移動テーブル14が一対のY軸ガイドレール12に沿ってY軸方向に移動する。
X軸移動ユニット20は、Y軸移動テーブル14の表面(上面)側にX軸方向と概ね平行に配置された一対のX軸ガイドレール22を備える。一対のX軸ガイドレール22には、板状のX軸移動テーブル24が、一対のX軸ガイドレール22に沿ってX軸方向にスライド可能な状態で装着されている。
X軸移動テーブル24の裏面(下面)側には、ナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、一対のX軸ガイドレール22と概ね平行に配置されたX軸ボールねじ26が螺合されている。また、X軸ボールねじ26の一端部には、X軸ボールねじ26を回転させるX軸パルスモータ28が連結されている。X軸パルスモータ28でX軸ボールねじ26を回転させると、X軸移動テーブル24が一対のX軸ガイドレール22に沿ってX軸方向に移動する。
X軸移動テーブル24の表面(上面)側には、レーザー加工装置2によって加工される被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)30が配置されている。チャックテーブル30の上面は、被加工物11を保持する保持面30aを構成する。この保持面30aは、水平方向(XY平面方向)と概ね平行に形成されており、チャックテーブル30の内部に形成された吸引路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
移動ユニット8は、チャックテーブル30を保持面30aと平行な方向(XY平面方向)に沿って移動させる。具体的には、X軸移動ユニット20はチャックテーブル30を保持面30aと平行な第1の方向(X軸方向)に沿って移動させ、Y軸移動ユニット10はチャックテーブル30を保持面30aと平行で且つ第1の方向と垂直な第2の方向(Y軸方向)に沿って移動させる。
なお、移動ユニット8には、Y軸移動テーブル14のY軸方向における位置を検出するY軸検出ユニット(不図示)と、X軸移動テーブル24のX軸方向における位置を検出するX軸検出ユニット(不図示)とが設けられている。このX軸検出ユニット及びY軸検出ユニットによってX軸移動テーブル24及びY軸移動テーブル14の位置を検出することにより、チャックテーブル30のX軸方向及びY軸方向における位置(移動距離)が特定される。
また、チャックテーブル30は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されている。この回転駆動源は、チャックテーブル30をZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。さらに、チャックテーブル30の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム19を把持して固定する複数のクランプ32が設けられている。
基台4の後方に配置された支持構造6には、支持構造6から前方に向かって突出する柱状の支持アーム40が固定されている。支持アーム40の先端部には、レーザービームを照射するレーザー照射ユニット42が配置されている。レーザー照射ユニット42から照射されたレーザービームが、チャックテーブル30によって保持された被加工物11に照射されることにより、被加工物11が加工される。
レーザー照射ユニット42に隣接する位置には、チャックテーブル30によって保持された被加工物11のZ軸方向における位置(高さ)を測定する一対の高さ測定ユニット(高さ測定器)44,46が設けられている。一対の高さ測定ユニット44,46は、X軸方向でレーザー照射ユニット42を挟むように配置されている。
高さ測定ユニット44は、レーザー照射ユニット42の一方の側方側(X軸の一端側)に配置され、高さ測定ユニット46は、レーザー照射ユニット42の他方の側方側(X軸の他端側)に配置されている。すなわち、レーザー照射ユニット42、高さ測定ユニット44、高さ測定ユニット46は、X軸方向に沿う同一直線上に配列されている。
また、支持アーム40には、チャックテーブル30によって保持された被加工物11等を撮像する撮像ユニット(カメラ)48が固定されている。例えば、撮像ユニット48によって取得された画像に基づいて、チャックテーブル30によって保持された被加工物11と、レーザー照射ユニット42及び高さ測定ユニット44,46との位置合わせが行われる。
レーザー加工装置2の前方側には、レーザー加工装置2による被加工物11の加工に関する各種の情報を表示する表示ユニット(表示部)50が設けられている。例えば表示ユニット50は、ユーザーインターフェースとなるタッチパネルによって構成される。この場合、表示ユニット50には、レーザー加工装置2を操作するための操作画面や、加工中の被加工物11の画像等が表示される。レーザー加工装置2のオペレーターは、表示ユニット50を操作してレーザー加工装置2に加工条件等を入力する。
レーザー加工装置2を構成する各構成要素(移動ユニット8、チャックテーブル30、クランプ32、レーザー照射ユニット42、高さ測定ユニット44,46、撮像ユニット48、表示ユニット50等)は、レーザー加工装置2を制御する制御ユニット(制御部)60に接続されている。制御ユニット60は、コンピュータ等によって構成され、レーザー加工装置2の各構成要素の動作を制御する。
図2は、チャックテーブル30によって保持された被加工物11を示す斜視図である。被加工物11は、例えば円盤状に形成されたシリコンウェーハであり、表面11a及び裏面11bを備える。また、被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されており、複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。
被加工物11の裏面11b側には、柔軟な樹脂等でなり被加工物11よりも径の大きい円形のテープ17が貼付される。テープ17は、被加工物11が加工される際に被加工物11の裏面11b側を保護する保護部材である。また、テープ17の外周部には、中央部に被加工物11よりも直径の大きい円形の開口19aを備える環状のフレーム19が貼付されている。被加工物11及びフレーム19にテープ17が貼付されると、被加工物11は開口19aの内側で、テープ17を介してフレーム19によって支持される。
なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、SiC、InP、GaN等)、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなるウェーハであってもよい。また、被加工物11に形成されるデバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイスが形成されていなくてもよい。
レーザー加工装置2によって被加工物11を加工する際は、テープ17を介して被加工物11をチャックテーブル30上に配置する。このとき被加工物11は、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側がチャックテーブル30の保持面30a(図1参照)と対向するように配置される。また、フレーム19が複数のクランプ32(図1参照)によって把持され、固定される。この状態で、チャックテーブル30の保持面30aに吸引源の負圧を作用させると、被加工物11がテープ17を介してチャックテーブル30によって吸引保持される。
そして、レーザー照射ユニット42から照射されるレーザービームにより、被加工物11が加工される。例えば、レーザー照射ユニット42から被加工物11にレーザービームを分割予定ライン13に沿って照射することにより、被加工物11の内部に改質(変質)された領域(改質層(変質層)11c、図3参照)が分割予定ライン13に沿って形成される。
被加工物11に改質層11cを形成すると、改質層11cから被加工物11の表面11a又は裏面11bに向かって、被加工物11の厚さ方向に延びるクラック(割れ目)が発生する。このクラックは、例えば改質層11cから被加工物11の表面11a及び裏面11bに達するように形成される。
被加工物11の改質層11cが形成された領域は、被加工物11の他の領域よりも脆くなる。そのため、分割予定ライン13に沿って改質層11cが形成された被加工物11に外力を付与すると、被加工物11は改質層11cを起点として分割予定ライン13に沿って破断し、分割される。すなわち、改質層11cは被加工物11の分割起点(分割のきっかけ)として機能する。
レーザービームの照射によって被加工物11に改質層11cを形成する場合、レーザービームの波長は、レーザービームが被加工物11を透過する(被加工物11に対して透過性を有する)ように設定される。また、レーザービームの他の照射条件(パワー、スポット径、繰り返し周波数等)は、多光子吸収によって被加工物11の内部に改質層11cが形成されるように設定される。
被加工物11に改質層11cを形成する際は、まず、被加工物11に設定された一の分割予定ライン13の長さ方向が、加工送り方向(X軸方向)と一致するように、チャックテーブル30を回転させる。また、レーザー照射ユニット42から照射されるレーザービームの集光点を、該一の分割予定ライン13の延長線上に位置づける。なお、レーザービームの集光点の高さは、被加工物11の表面11aよりも下方で且つ裏面11bよりも上方に位置付けられる。
この状態で、レーザー照射ユニット42からレーザービームを照射しながら、チャックテーブル30を加工送り方向(X軸方向)に沿って移動させる(加工送り)。これにより、チャックテーブル30によって保持された被加工物11とレーザー照射ユニット42とが相対的に移動し、レーザービームが一の分割予定ライン13に沿って照射される。その結果、被加工物11の内部には一の分割予定ライン13に沿って改質層11cが形成される。
その後、同様の動作を繰り返すことにより、被加工物11に設定された全ての分割予定ライン13に沿って改質層11cが形成される。なお、改質層11cは、被加工物11の厚さ、材質等に応じて、被加工物11の厚さ方向に2段以上形成されてもよい。
その後、例えば被加工物11に外力を付与することにより、被加工物11を分割予定ライン13に沿って分割する。被加工物11への外力の付与は、例えばテープ17を半径方向外側に向かって引っ張り、テープ17を拡張することによって行われる。この場合、テープ17として、外力の付与によって拡張可能なテープ(エキスパンドテープ)が用いられる。
なお、被加工物11を適切に分割するためには、被加工物11の表面11aから改質層11cまでの距離が一定になるように、改質層11cが分割予定ライン13に沿って形成されることが好ましい。しかしながら、改質層11cが形成される被加工物11には、厚さの面内ばらつきが存在することがある。また、チャックテーブル30の保持面30aが、意図せず僅かに傾いていることがある。
このような場合、レーザービームの集光点の高さを一定に保って被加工物11に改質層11cを形成すると、被加工物11の表面11aから改質層11cまでの距離(改質層11cが形成される深さ)にばらつきが生じる。そして、被加工物11に形成された改質層11cの深さにばらつきがある状態で被加工物11に外力を付与すると、被加工物11の破断位置がずれる、被加工物11の破断が生じない等の現象が生じ、被加工物11が適切に分割されない恐れがある。
そこで、被加工物11に改質層11cを形成する際には、被加工物11のZ軸方向における位置(高さ)を測定し、その測定結果に基づいてレーザービームの集光点の高さを調節しながら、被加工物11にレーザービームを照射することが好ましい。被加工物11の高さの測定は、レーザー照射ユニット42に隣接して設置された一対の高さ測定ユニット44,46を用いて行うことができる。
図3は、レーザー照射ユニット42及び一対の高さ測定ユニット44,46を模式的に示す一部断面正面図である。なお、図3では、レーザー加工装置2の構成要素の一部をブロックで示している。
レーザー照射ユニット42は、レーザービームをパルス発振するレーザー発振器80を備える。レーザー発振器80としては、例えばYAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー等が用いられる。レーザー発振器80によってパルス発振されたレーザービームは、照射位置調整ユニット82を通過して、ミラー84に照射される。そして、ミラー84で反射したレーザービームが加工ヘッド86に入射する。なお、照射位置調整ユニット82の構成及び機能については後述する。
加工ヘッド86は、中空の柱状に形成された筐体88を備える。筐体88の内部には、集光レンズ92を支持して収容するレンズホルダ90が設けられている。ミラー84で反射したレーザービームは、集光レンズ92に入射し、集光レンズ92によって所定の位置で集光される。
レンズホルダ90には、レンズホルダ90を集光レンズ92とともにZ軸方向に沿って移動させる駆動ユニット94が接続されている。例えば駆動ユニット94は、アクチュエータ(代表的にはピエゾアクチュエータ)によって構成される。この駆動ユニット94によって、集光レンズ92のZ軸方向における位置(高さ)が制御され、レーザービームの集光点の高さが調整される。
このようにしてレーザー照射ユニット42から照射されたレーザービームは、チャックテーブル30によって保持された被加工物11を加工するための加工用レーザービーム96として用いられる。この加工用レーザービーム96が被加工物11の内部で集光されると、被加工物11の内部に改質層11cが形成される。
加工ヘッド86の両側方には、一対の高さ測定ユニット44,46が設けられている。一対の高さ測定ユニット44,46は、X軸方向で加工ヘッド86を挟むように配置されており、加工ヘッド86、高さ測定ユニット44,46は、X軸方向に沿う同一直線上に配列されている。なお、高さ測定ユニット44,46は、加工ヘッド86に固定されていてもよいし、支持アーム40(図1参照)に固定されていてもよい。
高さ測定ユニット44,46はそれぞれ、チャックテーブル30によって保持された被加工物11のZ軸方向における位置(高さ)を非接触で測定する。例えば高さ測定ユニット44,46は、レーザービームの照射によって被加工物11の高さを測定するレーザー変位センサ等によって構成される。
以下では一例として、高さ測定ユニット44,46が反射型のレーザー変位センサである場合について説明する。高さ測定ユニット44,46はそれぞれ、レーザービームを照射する光源(投光部)と、被加工物11で反射したレーザービームを受光する受光素子(受光部)とを備える。
高さ測定ユニット44は、被加工物11に向かって測定用レーザービーム98を照射し、被加工物11の表面11aで反射した測定用レーザービーム98を受光する。そして、高さ測定ユニット44は、受光した測定用レーザービーム98の強度(受光量)に基づき、被加工物11の表面11aの高さを測定する。
同様に、高さ測定ユニット46は、被加工物11に向かって測定用レーザービーム100を照射し、被加工物11の表面11aで反射した測定用レーザービーム100を受光する。そして、高さ測定ユニット46は、受光した測定用レーザービーム100の強度(受光量)に基づき、被加工物11の表面11aの高さを測定する。
被加工物11に改質層11cを形成する際には、高さ測定ユニット44,46の一方によって被加工物11の高さを測定しながら、被加工物11に加工用レーザービーム96を照射する。このとき、被加工物11の高さの測定は、加工用レーザービーム96が被加工物11の所定の領域に照射される前に、該領域に測定用レーザービーム98,100が照射されるように行われる。
具体的には、被加工物11の加工時にチャックテーブル30が矢印Aで示す方向に移動する場合は、レーザー照射ユニット42から加工用レーザービーム96が照射されるとともに、レーザー照射ユニット42(加工ヘッド86)よりもチャックテーブル30の進行方向の後方側(図3では右側)に設けられた高さ測定ユニット44から測定用レーザービーム98が照射される。そのため、測定用レーザービーム98が照射される領域は、加工用レーザービーム96が照射される領域よりも、チャックテーブル30の進行方向の後方側に位置付けられる。
これにより、測定用レーザービーム98が被加工物11の分割予定ライン13(図2参照)に沿って照射されるとともに、その測定用レーザービーム98が照射された領域に沿って加工用レーザービーム96が照射される。すなわち、加工用レーザービーム96は測定用レーザービーム98に追従しながら被加工物11に照射される。
一方、被加工物11の加工時にチャックテーブル30が矢印Bで示す方向に移動する場合は、レーザー照射ユニット42から加工用レーザービーム96が照射されるとともに、レーザー照射ユニット42(加工ヘッド86)よりもチャックテーブル30の進行方向の後方側(図3では左側)に設けられた高さ測定ユニット46から測定用レーザービーム100が照射される。そのため、測定用レーザービーム100が照射される領域は、加工用レーザービーム96が照射される領域よりも、チャックテーブル30の進行方向の後方側に位置付けられる。
これにより、測定用レーザービーム100が被加工物11の分割予定ライン13(図2参照)に沿って照射されるとともに、その測定用レーザービーム100が照射された領域に沿って加工用レーザービーム96が照射される。すなわち、加工用レーザービーム96は測定用レーザービーム100に追従しながら被加工物11に照射される。
そして、高さ測定ユニット44,46によって高さが測定された領域(測定用レーザービーム98,100が照射された領域)に加工用レーザービーム96が照射される際、測定された被加工物11の高さに基づいて、加工用レーザービーム96の集光点の高さが駆動ユニット94によって逐次調整される。これにより、被加工物11の表面11aと加工用レーザービーム96の集光点との高さの差が一定に保たれ、被加工物11の所定の深さ位置に改質層11cが形成される。
ここで、高さ測定ユニット44,46によって測定された被加工物11の高さに基づいて、加工用レーザービーム96の集光点の高さを適切に調整するためには、測定用レーザービーム98,100が照射される経路と、加工用レーザービーム96が照射される経路とが一致する必要がある。そのため、高さ測定ユニット44,46を装着する際には、加工用レーザービーム96が照射される領域と、測定用レーザービーム98,100が照射される領域とがX軸方向に沿って並ぶように、高さ測定ユニット44,46の取り付け位置や角度が調節される。
しかしながら、高さ測定ユニット44,46の取り付け位置を手動で機械的に調整する方法では、調整作業に手間がかかり、調整の精度にも限界がある。特に、近年ではデバイスチップの微細化が進み、被加工物11に形成されたデバイス15間の距離(分割予定ライン13の幅)が狭くなっている。そのため、測定用レーザービーム98,100の照射領域の調整にも、より高い精度が求められている。
ここで、本実施形態に係るレーザー加工装置2では、図3に示すように、レーザー照射ユニット42に、加工用レーザービーム96が照射される領域をY軸方向に沿って移動させる照射位置調整ユニット82が備えられている。そして、この照射位置調整ユニット82は、加工用レーザービーム96が照射される領域を調整することにより、加工用レーザービーム96が照射される領域と測定用レーザービーム98,100が照射される領域とのY軸方向における差を縮める。これにより、加工用レーザービーム96が照射される領域と測定用レーザービーム98,100が照射される領域との位置合わせを、簡易且つ高精度に実施することができる。
照射位置調整ユニット82は、加工用レーザービーム96の光路中(図3ではレーザー発振器80とミラー84との間)に設けられており、加工用レーザービーム96が照射される領域(集光点)のY軸方向における位置を制御する。例えば照射位置調整ユニット82は、空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)を備えたレーザースキャニングユニットによって構成され、この空間光変調器によって加工用レーザービーム96が照射される領域の位置を制御する。
照射位置調整ユニット82に用いることが可能な空間光変調器の例としては、LCOS-SLM(Liquid Crystal On Silicon - Spatial Light Modulator)、音響光学素子(AOD:Acousto-Optic Deflector)等が挙げられる。ただし、加工用レーザービーム96の光路を制御し、加工用レーザービーム96が照射される領域のY軸方向における位置を制御可能であれば、照射位置調整ユニット82の構成に制限はない。
レーザー照射ユニット42による加工用レーザービーム96の照射と、高さ測定ユニット44,46による測定用レーザービーム98,100の照射とは、制御ユニット60によって制御される。レーザー照射ユニット42が備えるレーザー発振器80、照射位置調整ユニット82、及び駆動ユニット94と、高さ測定ユニット44,44とはそれぞれ、制御ユニット60に接続されており、制御ユニット60によって動作が制御される。
制御ユニット60は、レーザー加工装置2の制御に必要な各種の演算等の処理を行う処理部62と、処理部62による処理に用いられる各種のデータ、プログラム等が記憶される記憶部64とを備える。処理部62は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成され、記憶部64は、例えばRAM(Random Access Memory)等のメモリによって構成される。処理部62と記憶部64とは、バスを介して互いに接続されている。
また、図3には、処理部62の機能的な構造を示している。処理部62は、レーザー発振器80によるレーザービームの発振を制御する発振制御部66、照射位置調整ユニット82を制御することによって加工用レーザービーム96が照射される領域の位置を制御する照射位置制御部68、駆動ユニット94を制御することによってレンズホルダ90及び集光レンズ92の高さを調整し、加工用レーザービーム96の集光点の高さを制御する高さ制御部70、被加工物11の高さの測定に用いられる高さ測定ユニット44,46の一方を選択して作動させる選択部72を備える。
制御ユニット60によってレーザー照射ユニット42及び高さ測定ユニット44,46を制御することにより、加工用レーザービーム96の照射位置と測定用レーザービーム98,100の照射位置とのY軸方向における位置のズレが低減される(ズレ補正)。以下、ズレ補正を実施し、その後に被加工物11に改質層11cを形成する、被加工物の加工方法の具体例について説明する。
ズレ補正を行う際は、まず、加工用レーザービーム96が照射される領域と、測定用レーザービーム98,100が照射される領域との、Y軸方向における差(ズレ量)が測定される。そして、測定されたズレ量が、制御ユニット60の記憶部64に記憶される(ズレ量記憶ステップ)。
図4は、加工用レーザービーム96が照射される領域と、測定用レーザービーム98,100が照射される領域とを示す平面図である。図4における照射領域96aは、加工用レーザービーム96が照射される領域(加工用レーザービーム96のビームスポット)である。また、照射領域98a,100aは、測定用レーザービーム98,100が照射される領域(測定用レーザービーム98,100のビームスポット)である。また、ΔY1は照射領域96aと照射領域98aとのY軸方向における位置の差(ズレ量)を示し、ΔY2は照射領域96aと照射領域100aとのY軸方向における位置の差(ズレ量)を示す。
本実施形態に係る被加工物の加工方法では、まず、ズレ量ΔY1,ΔY2が測定される。ズレ量ΔY1,ΔY2の測定方法に制限はないが、例えば、加工用レーザービーム96でテスト部材(テストウェーハ)21を加工するとともに、高さ測定ユニット44,46によってテスト部材21の表面21aの高さを測定することによって実施される。
具体的には、まず、テスト部材21がチャックテーブル30(図1、図2参照)によって保持される。このときテスト部材21は、表面21aが上方に露出するように、チャックテーブル30上に配置される。なお、テスト部材21は、ズレ量の測定に用いられるテスト用の部材である。テスト部材21の材質や形状に制限はなく、例えば被加工物11と同様の材質や形状の部材を用いることができる。
次に、レーザー照射ユニット42からテスト部材21の表面21a側に加工用レーザービーム96を照射しながら、チャックテーブル30をX軸方向に沿って移動させる(加工送り)。これにより、テスト部材21の表面21a側に、加工用レーザービーム96が線状(帯状)に照射される。図4に示す照射領域96aは、テスト部材21の表面21aのうち加工用レーザービーム96が照射されている領域に相当する。
このとき、加工用レーザービーム96の照射条件は、テスト部材21の表面21a側に加工痕21bが形成されるように設定される。例えば、加工用レーザービーム96がテスト部材21に照射された際に、テスト部材21にアブレーション加工が施されるように、加工用レーザービーム96の照射条件が設定される。そのため、テスト部材21に加工用レーザービーム96を照射すると、テスト部材21の表面21a側には線状(帯状)の加工痕21bが形成される。
次に、チャックテーブル30のY軸方向における位置を変えずに、チャックテーブル30をX軸方向に沿って移動させ、加工痕21bが形成されたテスト部材21を、高さ測定ユニット44,46の下側に配置する。そして、高さ測定ユニット44,46から測定用レーザービーム98,100がそれぞれテスト部材21の表面21aに照射される。図4における照射領域98a,100aはそれぞれ、テスト部材21の表面21aのうち測定用レーザービーム98,100が照射されている領域に相当する。
ここで、照射領域96aと照射領域98a,100aとのY軸方向における位置ズレがない場合(ΔY1=0、ΔY2=0)、又は位置ズレが所定の範囲内である場合には、照射領域98a,100aと加工痕21bとが重なり、測定用レーザービーム98,100が加工痕21bに照射される。すると、測定用レーザービーム98,100は加工痕21bが形成された領域で不規則に反射する。そのため、高さ測定ユニット44,46が受光する測定用レーザービーム98,100の強度分布は不安定になる。
具体的には、測定用レーザービーム98,100がテスト部材21の表面21aのうち加工痕21bが形成されていない平坦な領域に照射された場合に得られる強度分布(非加工パターン)とは異なる強度分布(加工パターン)が検出される。そのため、高さ測定ユニット44,46によって加工パターンが検出された場合には、照射領域96aと照射領域98a,100aとのY軸方向における位置ズレがない、又は位置ズレが所定の範囲内であることが確認される。
一方、ズレ量ΔY1、ΔY2の値が所定の範囲を超えている場合は、照射領域98a,100aがテスト部材21の表面21aのうち加工痕21bが形成されていない領域に照射される(図4参照)。そして、高さ測定ユニット44,46によって非加工パターンが検出される。これにより、照射領域96aと照射領域98a,100aとのY軸方向における位置ズレが所定の範囲を超えていることが確認される。
非加工パターンが検出された場合は、高さ測定ユニット44,46から測定用レーザービーム98,100を照射しながら、チャックテーブル30をY軸方向に沿って移動させる。このチャックテーブル30の移動は、チャックテーブル30の移動量を記録しながら行われる。そして、チャックテーブル30をY軸方向に沿って移動させていくと、あるタイミングで測定用レーザービーム98,100がテスト部材21のうち加工痕21bが形成された領域に照射される。このとき、高さ測定ユニット44,46によって加工パターンが検出される。
高さ測定ユニット44によって加工パターンが検出された際のチャックテーブル30のY軸方向における移動距離が、ズレ量ΔY1に相当する。また、高さ測定ユニット46によって加工パターンが検出された際のチャックテーブル30のY軸方向における移動距離が、ズレ量ΔY2に相当する。そして、このズレ量ΔY1,ΔY2はそれぞれ、制御ユニット60の記憶部64(図3参照)に記憶される。測定されるズレ量ΔY1,ΔY2の精度は、測定用レーザービーム98,100のスポット径や加工痕21bの幅を制御することによって調整できる。
なお、上記ではズレ量ΔY1,ΔY2の測定にテスト部材21を用いたが、テスト部材21の代わりに被加工物11を用いてもよい。図2に示す被加工物11のデバイス15が形成されていない外周部(外周余剰領域)は、後に被加工物11を複数のデバイスチップに分割した後に除去される。そのため、この外周余剰領域に加工用レーザービーム96を照射して加工痕を形成し、この加工痕を基準としてズレ量ΔY1,ΔY2を測定してもよい。
次に、記憶部64に記憶されたズレ量ΔY1,ΔY2に基づいて、照射領域96aを照射位置調整ユニット82(図3参照)によってY軸方向に沿って移動させ、照射領域96aと照射領域98a,100aとのY軸方向における差を縮める(照射位置調整ステップ)。図5(A)は加工用レーザービーム96の照射領域96aと測定用レーザービーム98の照射領域98aとの位置ズレが補正される様子を示す平面図であり、図5(B)は加工用レーザービーム96の照射領域96aと測定用レーザービーム100の照射領域100aとの位置ズレが補正される様子を示す平面図である。
照射位置調整ステップでは、まず、後に実施される被加工物11に改質層11cを形成する工程(後述の改質層形成ステップ)で使用される高さ測定ユニット44,46の一方が選択される。そして、照射領域96aのY軸方向における位置が、選択された高さ測定ユニット(高さ測定ユニット44,46の一方)から照射される測定用レーザービームの照射領域(照射領域98a,100aの一方)に近づくように調整される。
例えば、改質層11cの形成時にチャックテーブル30が図3の矢印Aで示す方向に加工送りされる場合は、高さ測定ユニット44が選択される。そして、制御ユニット60の処理部62は記憶部64にアクセスし、記憶部64に記憶されているズレ量ΔY1を読み出す。また、照射位置制御部68は、照射領域96aがY軸方向の照射領域98a側(図5(A)の上側)にズレ量ΔY1分だけ移動するように、照射位置調整ユニット82を制御する。これにより、照射領域96aと照射領域98aとのY軸方向における位置が一致し、照射領域96aと照射領域98aとがX軸方向に沿う同一直線上に配置される。
一方、改質層11cの形成時にチャックテーブル30が図3の矢印Bで示す方向に加工送りされる場合は、高さ測定ユニット46が選択される。そして、制御ユニット60の処理部62が記憶部64にアクセスし、記憶部64に記憶されているズレ量ΔY2を読み出す。そして、照射位置制御部68は、照射領域96aがY軸方向の照射領域100a側(図5(B)の下側)にズレ量ΔY2分だけ移動するように、照射位置調整ユニット82を制御する。これにより、照射領域96aと照射領域100aとのY軸方向における位置が一致し、照射領域96aと照射領域100aとがX軸方向に沿う同一直線上に配置される。
このようにして、照射領域96aと照射領域98a,100aとの位置ズレの補正が行われる。なお、照射位置調整ステップでは、必ずしも照射領域96aと照射領域98a,100aとのY軸方向における位置を完全に一致させる必要はなく、位置の差が所定の範囲内に納まればよい。この所定の範囲は、被加工物11に設定された分割予定ライン13(図2参照)の幅等に応じて適宜設定される。
次に、測定用レーザービーム98,100を被加工物11に照射して被加工物11の高さを測定するとともに、加工用レーザービーム96を被加工物11に照射して被加工物11に改質層11cを形成する(改質層形成ステップ)。
改質層形成ステップでは、前述の通り、レーザー照射ユニット42から被加工物11に向かって加工用レーザービーム96を照射しながら、チャックテーブル30をX軸方向に沿って移動させる。これにより、加工用レーザービーム96が分割予定ライン13(図2参照)に沿って照射され、改質層11cが形成される。また、改質層形成ステップでは、高さ測定ユニット44,46によって測定された被加工物11の高さに基づいて、加工用レーザービーム96の集光点の高さを調整しながら、被加工物11に加工用レーザービーム96を照射する。
例えば、チャックテーブル30を図3の矢印Aで示す方向に移動させながら改質層11cを形成する場合は、高さ測定ユニット44から測定用レーザービーム98が分割予定ライン13に沿って照射され、被加工物11の高さが測定される。そして、被加工物11のうち測定用レーザービーム98が照射された領域に、続いて加工用レーザービーム96が照射され、分割予定ライン13に沿って改質層11cが形成される。
一方、チャックテーブル30を図3の矢印Bで示す方向に移動させながら改質層11cを形成する場合は、高さ測定ユニット46から測定用レーザービーム100が分割予定ライン13に沿って照射され、被加工物11の高さが測定される。そして、被加工物11のうち測定用レーザービーム100が照射された領域に、続いて加工用レーザービーム96が照射され、分割予定ライン13に沿って改質層11cが形成される。
また、被加工物11に加工用レーザービーム96が照射される際、加工用レーザービーム96の集光点のZ軸方向における位置(高さ)が、高さ測定ユニット44,46によって測定された被加工物11の高さに基づいて調整される。具体的には、被加工物11の表面11aのうち測定用レーザービーム98,100が照射された領域の高さが高さ測定ユニット44,46によって測定された後、その領域に加工用レーザービーム96が照射される際、制御ユニット60の処理部62が備える高さ制御部70は、駆動ユニット94を制御し、レンズホルダ90及び集光レンズ92の高さを調整する。
このとき、高さ制御部70は、加工用レーザービーム96の集光点の高さと、高さ測定ユニット44,46によって測定された被加工物11の表面11aの高さとの差が所定の値となるように、すなわち、加工用レーザービーム96の集光点が被加工物11の表面11aから所定の深さに位置付けられるように、駆動ユニット94を制御する。これにより、実際に測定された被加工物11の表面11aの高さに基づいて加工用レーザービーム96の集光点の高さが制御され、改質層11cが被加工物11の表面11aから所定の深さに形成される。
なお、測定用レーザービーム98,100は、各分割予定ライン13に沿って連続的に照射される。そして、高さ測定ユニット44,46による被加工物11の高さの検出も、各分割予定ライン13に沿って連続的に行われる。そのため、各分割予定ライン13上における被加工物11の表面11aの連続的な高さ位置のデータが、高さ測定ユニット44,46によって取得される。
また、測定された被加工物11の高さに基づく加工用レーザービーム96の集光点の高さの調整は、各分割予定ライン13上で複数回実施される。すなわち、加工用レーザービーム96が一の分割予定ライン13に沿って照射される間に、加工用レーザービーム96の集光点の高さは、被加工物11の表面11aの高さに応じて複数回調整される。これにより、一の分割予定ライン13上で被加工物11の厚さのばらつきがある場合にも、改質層11cが形成される深さを一定に保つことができる。
なお、加工用レーザービーム96の集光点の高さを調整する頻度(間隔)は、被加工物11の厚さのばらつきの程度、チャックテーブル30の移動速度(加工送り速度)等に応じて適宜設定できる。例えば、加工用レーザービーム96の集光点の高さの調整が、一の分割予定ライン13上で所定の間隔(例えば0.5mm間隔)で行われるように、集光点の高さの調整の頻度が設定される。
また、加工用レーザービーム96の集光点の高さを調整するタイミングは、加工用レーザービーム96が照射される領域と測定用レーザービーム98,100が照射される領域とのX軸方向における距離、及び、チャックテーブル30の移動速度(加工送り速度)に基づいて決定される。具体的には、被加工物11のある地点に測定用レーザービーム98,100が照射されて高さの測定が行われた場合、その後に加工用レーザービーム96が該地点に照射されるタイミングで、加工用レーザービーム96の集光点の高さが測定結果に基づいて調整される。
上記の被加工物11への改質層11cの形成は、例えば、加工用レーザービーム96を被加工物11に対して加工送り方向に往復走査することによって行われる。具体的には、まず、チャックテーブル30を矢印Aで示す方向に移動させながら、一の分割予定ライン13に沿って加工用レーザービーム96及び測定用レーザービーム98を照射する(第1改質層形成ステップ)。
次に、移動ユニット8(図1参照)によってチャックテーブル30を、Y軸方向に分割予定ライン13の間隔分移動させる(割り出し送り)。その後、チャックテーブル30を図3の矢印Bで示す方向に移動させながら、他の一の分割予定ライン13に沿って加工用レーザービーム96及び測定用レーザービーム100を照射する(第2改質層形成ステップ)。
加工用レーザービーム96を往復走査する場合は、第1改質層形成ステップの実施前と第2改質層形成ステップの実施前とにそれぞれ、照射位置調整ステップを実施する。具体的には、加工用レーザービーム96の照射領域96aと測定用レーザービーム98の照射領域98aとの位置ズレの補正(図5(A)参照)を行った後、第1改質層形成ステップを実施する。そして、加工用レーザービーム96の照射領域96aと測定用レーザービーム100の照射領域100aとの位置ズレの補正(図5(B)参照)を行った後、第2改質層形成ステップを実施する。
上記の第1改質層形成ステップと第2改質層形成ステップとを交互に実施し、被加工物11に含まれる全ての分割予定ライン13に沿って改質層11cが形成されると、レーザー加工装置2による被加工物11の加工が完了する。
以上の通り、本実施形態に係るレーザー加工装置2では、レーザー照射ユニット42に、加工用レーザービーム96が照射される領域をY軸方向に沿って移動させる照射位置調整ユニット82が備えられている。そして、この照射位置調整ユニット82は、加工用レーザービーム96が照射される領域の位置を調整することにより、加工用レーザービーム96が照射される領域と測定用レーザービーム98,100が照射される領域とのY軸方向における差を縮める。
これにより、加工用レーザービーム96が照射される領域と測定用レーザービーム98,100が照射される領域との位置合わせを、簡易且つ高精度に実施することができる。そして、加工用レーザービーム96が照射される経路と、測定用レーザービーム98,100が照射される経路とが一致した状態で被加工物11が加工され、被加工物11の厚さに基づく加工用レーザービーム96の集光点の高さの調整が高精度に行われる。
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。