JP7329961B2 - 鉄心部材の熱処理方法、熱処理用治具 - Google Patents
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Description
そのため、鉄心部材には、これらの製造過程、特に打ち抜きやフレームへの圧入により、図6(a)、(b)に矢印で示すように、ヨークには周方向の、ティースには径方向の圧縮応力が残留する。
一般に、電磁材料は圧縮応力の方向に対して鉄損等の磁気特性が悪化することが知られている。そのため、磁気特性の改善・向上には、鉄心部材に残留した圧縮応力を低減・除去する必要がある。圧縮応力を低減する方法としては熱処理が一般的であるが、単純に熱処理を行うだけでは残留応力を一定程度低減させるに留まり、十分な磁気特性の改善には至らない。
円筒状のヨークと、前記ヨークからその径方向内側に突出した複数のティースと、前記複数のティースの間に形成され、径方向内側が開口した複数のスロットと、有し、電磁鋼板を積層させて構成される鉄心部材の熱処理方法であって、
内筒部と、前記内筒部の外周面から径方向外側に突出した複数の突起部と、を有し、前記鉄心部材よりも線膨張係数の大きい熱処理用治具を用い、
前記内筒部を前記鉄心部材の径方向内側に挿嵌して前記ティースの内周面を覆い、前記複数の突起部を前記複数のスロット内に個別に挿嵌して、前記ティースの突出方向と直交する方向における当該ティースの両側に前記熱処理用治具の前記突起部を配置した状態で、前記鉄心部材を所定の加熱温度まで加熱するものである。
円筒状のヨークと、前記ヨークからその径方向内側に突出した複数のティースと、前記複数のティースの間に形成され、径方向内側が開口した複数のスロットと、有し、電磁鋼板を積層させて構成される鉄心部材の熱処理に用いる熱処理用治具であって、
前記鉄心部材よりも線膨張係数の大きい材料で構成され、
前記鉄心部材の径方向内側に挿嵌されて前記ティースの内周面を覆う内筒部と、
前記内筒部の外周面から径方向外側に突出され、前記複数のスロット内に個別に挿嵌されて、前記ティースの突出方向と直交する方向における当該ティースの両側に配置される複数の突起部と、を有するように構成した。
まず、本実施形態に係る鉄心部材について説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄心部材10の斜視図である。
この図に示すように、本実施形態に係る鉄心部材10は、モータ用のステータコアであり、ヨーク11と、複数のティース12と、複数のティース12の間に形成される複数のスロット13とを有する。ヨーク11は、略円筒状に形成されている。複数のティース12は、ヨーク11の内周部からその径方向内側に向かって突出(延出)しており、隣り合うティース12間のスロット13は、内径側が開口したオープンスロットとなっている。鉄心部材10は、ヨーク11の中心軸に沿った方向において略一様な断面形状に形成されている。
なお、以下の説明では、ヨーク11の中心軸(円筒の中心軸)に沿った方向を「軸方向」、当該中心軸に垂直な方向を「径方向」、当該中心軸を中心とする回転方向を「周方向」という。
続いて、鉄心部材10の熱処理方法について説明する。
この熱処理では、鉄心部材10の加工歪を除去するとともに、所定の方向に引張応力を残留させて、その磁気特性(鉄損等)を改善させる。
図2(a)は、後述の熱処理用治具20を組み付けた状態の鉄心部材10の平面図であり、図2(b)は、図2(a)のA部を拡大した図である。図3(a)は、熱処理用治具20を組み付けるときの鉄心部材10を示す図であり、図3(b)は、熱処理用治具20を組み付けた鉄心部材10を熱処理炉30に入れた状態を示す図である。図4は、熱処理後の鉄心部材10に生じる残留応力の方向を説明するための図である。図5は、この残留応力を解析した解析結果を示す図であって、(a)がヨーク11についてのもの、(b)がティース12についてのものである。なお、図2では、図示の分かり易さのために、鉄心部材10及び熱処理用治具20にハッチングを施している。
治具20は、鉄心部材10に所定の方向の引張応力を残留させるためのものであり、軸方向に略一様な断面形状に形成されるとともに、少なくとも鉄心部材10よりも長い軸方向長さに形成されている。具体的に、治具20は、内筒部21と複数の突起部22とを有する形状に形成されている。内筒部21は、鉄心部材10の内径よりも小さい外径を有する円筒状に形成されている。複数の突起部22は、鉄心部材10の複数のスロット13に対応しており、内筒部21の外周面からその径方向外側に向かって突出(延出)している。より詳しくは、複数の突起部22は、鉄心部材10の複数のスロット13内に個別に挿嵌可能なように、各突起部22がスロット13よりもやや小さく形成されている。
熱処理炉30内を真空引き又は不活性ガスで充填した後、熱処理炉30を動作させて鉄心部材10を所定の加熱温度まで加熱する。この加熱温度は、鉄心部材10に所望の引張応力を残留させる温度であれば特に限定はされないが、鉄心部材10の歪取り焼鈍を兼ねることができる鉄心部材10の再結晶温度以上であることが好ましい。本実施形態では、このような加熱温度として約750℃まで鉄心部材10を加熱する。そして、所定時間(例えば2時間)の保持の後、鉄心部材10を常温まで冷却する。
その後、鉄心部材10から治具20を取り外し、スロット13内にコイルを巻く巻線処理の後に、鉄心部材10を所定のフレームに嵌合などすることにより、モータステータが完成する。
具体的に、鉄心部材10のヨーク11は、その内径側の複数のスロット13内に配置された治具20の突起部22によって、内径側から押圧される。その結果、図4に示すように、ヨーク11の径方向には圧縮応力(破線で図示)が残留し、周方向には引張応力(実線で図示)が残留する。
一方、各ティース12は、その周方向両側のスロット13内に配置された治具20の突起部22によって、周方向の両側から押圧される。その結果、各ティース12の径方向には引張応力(図4に実線で図示)が残留し、周方向には圧縮応力(図4に破線で図示)が残留する。
このように、ヨーク11に周方向の引張応力が生じ、ティース12に径方向の引張応力が生じることは、図5(a)、(b)に示すように、FEM解析によっても確認することができた。このFEM解析では、治具20を取り付けた鉄心部材10に750℃の温度荷重を負荷したときの応力を確認した。
以上のように、本実施形態によれば、ティース12の周方向の両側に、鉄心部材10よりも線膨張係数の大きい治具20(の突起部22)が配置された状態で、鉄心部材10が所定の加熱温度まで加熱される。
これにより、ティース12は治具20によって周方向の両側から押圧され、当該ティース12の磁場方向である径方向に引張応力が残留する。したがって、煩雑な分割型のコア構造としていた従来と比べて簡便に、鉄心部材10の磁気特性を向上させることができる。
そのため、治具20を組み付けた状態で鉄心部材10を加熱することにより、各ティース12が治具20の突起部22によって周方向の両側から押圧されるとともに、ヨーク11が治具20の突起部22によって内径側から押圧される。これにより、各ティース12及びヨーク11には、各々に生じる磁場方向と一致する径方向及び周方向に、引張応力がそれぞれ残留する。したがって、鉄心部材10の磁気特性をより一層向上させることができる。
そのため、内筒部21により複数の突起部22を内径側で支持して、当該複数の突起部22を径方向外側に好適に加熱延伸させることができる。
これにより、鉄心部材10の加熱時に、複数の突起部22を支持する内筒部21がティース12を径方向に押圧してしまうことを避けることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、治具20の形状が、内筒部21から複数の突起部22が突出した形状であることとした。しかし、治具20は、鉄心部材10の複数のスロット13内に個別に挿嵌される複数の突起部22と、これを支持する部分とを有していればよい。したがって、例えば鉄心部材10がクローズドスロットの場合などには、治具20は、内筒部21に代えて、複数の突起部22を軸方向の少なくとも一方の端部で支持する部分を有するものであってもよい。
さらに、治具20の形状(特に突起部22の形状)は、加熱温度や、鉄心部材10及び治具20の線膨張係数、所望の残留応力等に応じて適宜設定・調整することとしてよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
11 ヨーク
12 ティース
13 スロット
20 熱処理用治具
21 内筒部
22 突起部
30 熱処理炉
G 隙間
Claims (5)
- 円筒状のヨークと、前記ヨークからその径方向内側に突出した複数のティースと、前記複数のティースの間に形成され、径方向内側が開口した複数のスロットと、有し、電磁鋼板を積層させて構成される鉄心部材の熱処理方法であって、
内筒部と、前記内筒部の外周面から径方向外側に突出した複数の突起部と、を有し、前記鉄心部材よりも線膨張係数の大きい熱処理用治具を用い、
前記内筒部を前記鉄心部材の径方向内側に挿嵌して前記ティースの内周面を覆い、前記複数の突起部を前記複数のスロット内に個別に挿嵌して、前記ティースの突出方向と直交する方向における当該ティースの両側に前記熱処理用治具の前記突起部を配置した状態で、前記鉄心部材を所定の加熱温度まで加熱する、
鉄心部材の熱処理方法。 - 前記加熱温度は、前記鉄心部材の再結晶温度以上の温度である、
請求項1に記載の鉄心部材の熱処理方法。 - 前記内筒部の外周面と、前記鉄心部材の各ティースの内径側先端との間に、所定の隙間が介在している、
請求項1に記載の鉄心部材の熱処理方法。 - 前記電磁鋼板は無方向性電磁鋼板である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の鉄心部材の熱処理方法。 - 円筒状のヨークと、前記ヨークからその径方向内側に突出した複数のティースと、前記複数のティースの間に形成され、径方向内側が開口した複数のスロットと、有し、電磁鋼板を積層させて構成される鉄心部材の熱処理に用いる熱処理用治具であって、
前記鉄心部材よりも線膨張係数の大きい材料で構成され、
前記鉄心部材の径方向内側に挿嵌されて前記ティースの内周面を覆う内筒部と、
前記内筒部の外周面から径方向外側に突出され、前記複数のスロット内に個別に挿嵌されて、前記ティースの突出方向と直交する方向における当該ティースの両側に配置される複数の突起部と、を有する、
熱処理用治具。
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JP2003319618A (ja) | 2002-04-17 | 2003-11-07 | Nippon Steel Corp | 低鉄損電動機用固定子およびその製造方法 |
JP2015126625A (ja) | 2013-12-26 | 2015-07-06 | 新日鐵住金株式会社 | 積層コアの焼鈍方法 |
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