JP7328671B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
[1]少なくとも一部の表面に複数の微細な凸部を有する銅部材の、前記表面上に、誘電率が3.8以下の樹脂基材が積層されている、積層体であって、
前記銅部材と前記樹脂基材との積層面のフラクタル次元が1.25以上である、積層体
。
[2]前記積層面のフラクタル次元が1.4より大きい、[1]に記載の積層体。
[3]前記銅部材の少なくとも一部の表面が酸化銅層を含む、[1]または[2]に記載
の積層体。
[4]前記銅部材の少なくとも一部の表面に銅以外の金属層が形成されており、前記銅以外の金属が、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、AuおよびPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属である、[1]または[2]に記載の積層体。
[5]前記銅以外の金属層の垂直方向の平均の厚さが10nm以上150nm以下である、[4]に記載の積層体。
[6]前記積層体の垂直断面において、前記凸部の高さが平均50nm以上500nm以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の積層体。
[7]前記積層体の垂直断面において、断面幅3.78μmあたり前記凸部を平均30個以上有する、[6]に記載の積層体。
[8]前記樹脂基材は、ポリフェニレンエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、またはパラヒドロキシ安息香酸を含む液晶ポリマーを含有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の積層体。
[9]前記樹脂基材と前記複合銅部材とを剥離すると、剥離モードが凝集破壊であることを特徴とする[8]に記載の積層体。
[10]耐熱試験において劣化率が50%以下であることを特徴とする、[9]に記載の積層体。
[11]1GHz以上の高周波回路用である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の積層体。
[12][1]~[11]のいずれか一項に記載の積層体を使用して作製された電子部品。
本発明の一態様は、表面に複数の微細な凸部を有する銅部材上に、誘電率が3.8以下の樹脂基材が積層されている、積層体である。
銅部材と樹脂基材は、密着していることが好ましい。例えば、集束イオンビーム(FIB)によって作成された積層体の断面を観察した、走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像(倍率30000倍、解像度1024x768)において、銅部材と樹脂基材の層との間に空隙が検出できない程度であることが好ましい。
ポリエチレンテレフタレート (PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート
(GF-PET)、ポリブチレンテレフタレート (PBT)、環状ポリオレフィン (COP)、ポリフェ
ニレンスルファイド (PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン (PSF)、ポリエーテルサルフォン (PES)、非晶ポリアリレート (PAR)、液晶ポリマー (LCP)(例えば、パラヒドロキシ安息香酸とエチレンテレフタレートを含む重縮合体;パラヒドロキシ安息香酸、フェノールおよびフタル酸の重縮合体;パラヒドロキシ安息香酸と2,6-ヒドロキシナフトエ酸の重縮合体等)、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)、熱可塑性ポ
リイミド (PI)、ポリアミドイミド (PAI)及びこれらの混合物を含む基材が挙げられる。
樹脂基材はさらに無機フィラーやガラス繊維を含んでいてもよい。
このような樹脂基材の誘電率は公知の方法で測定することができ、例えば、IPC TM(The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits Test Method)-650 2.5.5.5やIPC TM-650 2.5.5.9といった規格に従って測定することができる。樹脂基材の一例としては、ポリフェニレンエーテル(PPE)20~70重量%、シリカ0~20重量%、ガラス繊維30~70%からなるMEGTRON6(パナソニック社製;誘電率3.71(1GHz))が挙げられる。
ある図形Fを、一辺の大きさδの正方形のボックスで覆うために必要なボックスの個数をNδ(F)とすると、フラクタル次元は下記式で定義される。
積層面が現れている曲線のフラクタル次元の値は1.250以上または1.250より大きい値であり、或いは1.300以上または1.300より大きい値であることが好ましく、1.350以上または1.350より大きい値であることがより好ましく、1.400以上または1.400より大きい値であることがさらに好ましい。
酸化処理とは、酸化剤により、純銅を酸化銅(II)に変化させる工程を含む。
溶解処理とは、溶解剤により、酸化処理によって酸化した酸化銅(II)を溶解する工程を含む。
還元処理とは、還元剤により、酸化処理によって酸化した酸化銅(II)を酸化銅(I)又は純銅に還元する工程を含む。
酸化処理、溶解処理、および還元処理は、銅部材表面に微細な凸部(すなわち微細毛)を形成する工程及びその微細な凸部の形状や数を調整する工程を含んでもよい。樹脂基材と金属層の積層面の複数の微細な凸部は、これらの処理により形成された微細な凸部に起因してもよい。
厚さの測定方法としては、例えば、12%硝酸に銅部材を溶解させ、得た液をICP発
光分析装置5100 SVDV ICP-OES(アジレント・テクノロジー社製)を用いて金属成分の濃度を測定し、金属の密度、金属層の表面積を考慮することで層状としての金属層の厚みを算出できる。
本発明の一態様において、積層体のSEM断面画像において積層面が現れている曲線の、高さ50nm以上の凸部の数は、断面幅3.78μmあたり、平均25、30又は35個以上有してもよい。あるいは、高さ100nm以上の凸部が、断面幅3.78μmあたり平均6、10又は12個以上有してもよい。あるいは、高さ150nm以上の凸部が、断面幅3.78μmあたり2又は3個以上有してもよい。
凸部の高さが大きいほどアンカー効果による機械的接着力が大きくなるため、ピール強度の観点からは好ましいが、表皮効果現象の影響が大きくなってしまう。表皮効果とは、導体を流れる電流が周波数の増加と共に導体表面に集中し、内部の電流密度が減る現象である。電流が流れる表皮部分の厚さ(表皮深さ)は、周波数の平方根に反比例する。この表皮効果現象により、周波数がGHz帯の高周波信号を導体回路に伝送すると、表皮深さは2μm程度あるいはそれ以下となり、電流は導体のごく表層しか流れない。そのため、高周波回路では銅部材表面の凸部が大きいと、この銅部材により形成される導体の伝送経路は表皮効果現象の影響で長くなり、伝送損失が増加する。それ故、高周波回路に用いる銅部材表面の凸部は小さいことが望ましいが、小さすぎると十分なピール強度が得られないため、上記程度の凸部であることが好ましい。
本発明の一実施態様は、積層体の製造方法であって、
銅部材表面に凸部を形成する第1の工程と、
凸部を形成した銅表面又はめっき処理された表面の上に樹脂基材を加熱密着させる第3の工程を含む、積層体の製造方法である。この製造方法は、第1工程の後で、凸部を形成した銅表面にめっき処理する第2の工程を含んでもよい。
ましく、1~10分であることがより好ましい。
還元用薬液)を用いて還元し、凸部の数や高さを調整してもよい。
誘電率3.8以下の高周波回路向けの樹脂基材は誘電率3.8より大きい配線板向け樹脂基材(例えば、FR-4)よりもプレス温度が高温になる傾向にあり、微細凹凸がより変化を受けやすい状態となる。銅は熱による影響を受けるが、凹凸が微細であるほど影響は大きい。同程度の熱による変化が生じた場合でも、影響を受ける対象が小さいほど、その寄与度が大きくなるためである。例えば、微細凹凸の場合、プレス後は凹凸形状が損なわれて十分なピール強度を発揮しないことがある。それ故、凹凸部にはプレス時の温度に耐え、積層後も十分なピール強度を発揮できる凹凸形状が存在することが求められる。
本発明に係る積層体は、プリント配線板の製造に用いられてもよく、あるいはプリント配線板と電子部品類を含む電子部品の製造に用いられてもよい。
この積層体を用いて作製されるプリント配線板は、特に信号周波数1GHz以上の高周波帯域用の基板として好適である。
また、この積層体は積層面に凹凸形状が存在するため、密着力に優れており、フレキシブル基板にも好適である。
実施例1及び2、比較例1及び2では、銅箔としてDR-WS(古河電工株式会社製、厚み:18μm)を用いた。
[アルカリ脱脂処理]
銅箔を、液温50℃、40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、水洗を行った。
[酸洗浄処理]
アルカリ脱脂処理を行った銅箔を、液温25℃、10重量%の硫酸水溶液に2分間浸漬した後、水洗を行った。
[プレディップ処理]
1.2g/Lの水酸化ナトリウム水溶液で40℃、1分間、プレコンディショニングを行った。これは、酸化処理のムラを軽減することを目的とした脱脂洗浄のためである。
アルカリ処理を行った銅箔を、酸化処理用水溶液(NaClO2 130g/L;NaOH 12g/L)で45℃、1分間、酸化処理を行った。これらの処理後、銅箔を水洗した。比較例1及び2は、酸化処理後、室温で1分間、還元剤(ジメチルアミンボラン 5g/L;水酸化ナトリウム 5g/L)に浸漬し、還元処理を行った。
実施例1及び2については、酸化処理を行った銅箔のシャイニー面(光沢面。反対面と比較したときに平坦である面。)にニッケルめっき用電解液(スルファミン酸ニッケル470g/L-ホウ酸40g/L)を用いて電解めっきを施した。条件は、50度で電流密度0.5A/dm2 × 30秒 (=15C/dm2 銅箔面積あたり)とした。
実施例1及び比較例1については、各銅箔に対し、MEGTRON6(プリプレグ R5670KJ、パナソニック社製、誘電率 3.71(1GHz)、厚さ100μm)を積層し、真空高圧プレス機を用いてプレス圧2.9MPa、温度210℃、プレス時間120分の条件で加熱圧着することにより、積層体を得た。
実施例2及び比較例2については、各銅箔に対し、PTFE基材(NX9255、パークエレクトロケミカル社製、誘電率2.55(10GHz)、厚さ0.762mm)を積層し、真空高圧プレス機を用いてプレス圧1.5MPa、温度385℃、プレス時間10分の条件で加熱圧着することにより、積層体を得た。
実施例及び比較例について、各々同じ条件で複数の試験片を作製した。
1.方法
得られた積層体(実施例1及び2;比較例1及び2)の断面は、加速電圧30kV、プローブ電流4nAの条件でFIB(集束イオンビーム)加工することで得た。集束イオンビーム走査電子顕微鏡(Auriga、Carl Zeiss社製)を用いて倍率30000倍、解像度1024x768の条件で、得られた断面を観察し、SEM断面画像の取得を行った。得られたSEM断面画像を図1に示す。この断面の画像に基づき、フラクタル次元の値、凸部の高さ計測、凸部先端部の内接円半径の計測を行った。凸部の高さ計測、凸部先端部内接
円半径の計測については、画像解析ソフトWinROOF2018(三谷商事株式会社、Ver4.5.5)
を用いて行った。凸部先端部の内接円半径の計測例を図2Bに示す。
結果を以下の表1~3に示す。
1.方法
実施例1及び2並びに比較例1及び2の積層体について、90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)に準じてピール強度を測定した。
結果を表4に示す。
比較例では実施例よりもピール強度が低く、破壊モードも界面剥離または一部界面剥離であるのに対し、実施例では樹脂凝集破壊であった。このように、本発明に係る積層体は、比較例に比べ、ピール強度に優れている。
1.方法
実施例1及び比較例1の積層体について、耐熱試験前後のピール強度を測定した。耐熱試験は、125℃、4時間でベイキングした後、288℃のはんだ浴で10秒フロートをすることによって行った(IPC TM-650 2.4.8準拠)。耐熱試験前後のピール強度の差を耐熱試験前のピール強度で除して、割合を算出した。
結果を表5及び図3に示す。
常態と耐熱試験後のピール強度を比較した際、比較例1では53%の劣化が生じたが、実施例1では19%しか劣化が生じなかった(表5)。さらに、耐熱試験後、比較例は銅部材に変色が確認された(図3において赤線枠で強調)。これは、銅部材表面の凹凸が耐熱試験によって溶解したためである。このように、本発明に係る積層体は、比較例に比べ、ピール強度及び耐熱性に優れている。
1.方法
実施例1及び比較例3として銅箔FV-WS(古河電工株式会社製、厚み:18μm、Rz:1.2μm)に、樹脂基材としてMEGTRON6(プリプレグ R5670KJ、パナソニック社製、厚さ100μm)を熱加圧成形により積層した後に、伝送特性測定用のサンプルを作製して高周波帯域における伝送損失を測定した。伝送特性の評価には、0~50GHz帯域の測定に適する公知のストリップライン共振器法を用いて、計測した。具体的には、S21パラメータを、以下の条件でカバーレイフィルムなしの状態で測定した。
測定条件:マイクロストリップ構造;基材MEGTRON6;回路長さ150mm;導体幅250μm;導体厚み18μm;基材厚み100μm;特性インピーダンス50Ω
結果を図4に示す。
比較例3に使用した銅箔FV-WSは低粗度であり、ハイエンドルータ・サーバーなどの情報通信機器や通信基地局用アンテナ用基板向けの低伝送損失が求められる高周波基板用銅箔であるが、実施例1の伝送損失は比較例3よりも小さい。このように、本発明に係る積層体は、高周波特性に優れている。
Claims (10)
- 少なくとも一部の表面に複数の微細な凸部を有する銅部材の、前記表面上に、誘電率が3.8以下の樹脂基材が積層されている、積層体であって、
前記銅部材と前記樹脂基材との積層面のフラクタル次元が1.25以上であり、前記銅部材の少なくとも一部の表面が酸化銅層を含み、
前記酸化銅層の少なくとも一部の表面が銅以外の金属層で形成されており、前記銅以外の金属層が、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Au、Pt、および合金からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属である、積層体。 - 少なくとも一部の表面に複数の微細な凸部を有する銅部材の、前記表面上に、誘電率が3.8以下の樹脂基材が積層されている、積層体であって、
前記銅部材と前記樹脂基材との積層面のフラクタル次元が1.25以上であり、
前記銅部材の少なくとも一部の表面が銅以外の金属層で形成されており、前記銅以外の金属層が、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Au、およびPtからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属であり、
前記銅以外の金属層の垂直方向の平均の厚さが10nm以上150nm以下である、積層体。 - 前記積層面のフラクタル次元が1.4より大きい、請求項1または2に記載の積層体。
- 前記積層体の垂直断面において、前記凸部の高さが平均50nm以上500nm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
- 前記積層体の垂直断面において、断面幅3.78μmあたり前記凸部を平均30個以上有する、請求項4に記載の積層体。
- 前記樹脂基材は、ポリフェニレンエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、またはパラヒドロキシ安息香酸を含む液晶ポリマーを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
- 前記樹脂基材と前記銅部材とを剥離すると、剥離モードが凝集破壊であることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
- 耐熱試験において劣化率が50%以下であって、
前記劣化率は、125℃、4時間でベイキングした後に288℃のはんだ浴で10秒フロートをする処理(IPC TM-650 2.4.8準拠)を行う前後で90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)に準じてピール強度を測定し、前記ピール強度を用いて以下の式で計算される、請求項7に記載の積層体。
[式]
劣化率={(処理後のピール強度)-(処理後のピール強度)}x100/(処理前のピール強度) - 1GHz以上の高周波回路用である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体。
- 請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体を使用して作製された電子部品。
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