JP7326030B2 - 石英ガラスルツボの製造方法 - Google Patents
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Description
この原料シリコン融液を収容するための石英ガラスルツボには、熱性に優れた天然シリカガラスにより形成された外側層と、高純度の合成シリカガラスにより形成された内側層とを有する2層構造の石英ガラスルツボが用いられるのが一般的である。
この回転モールド法では、回転するルツボ成型用モールドの側壁及び底面に、合成シリカガラスおよび天然シリカガラスの原料粉末の夫々を遠心力で積層形成し、これを石英ガラスルツボの内側からアーク放電で加熱溶融した後、冷却することにより、合成シリカガラス層および天然シリカガラス層が形成される(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、ルツボ成型用モールドの表面に接する原料粉末まで溶融した際、ルツボ成型用モールドまで高温に晒されることになり、ルツボ成型用モールドから石英ガラスルツボへ不純物が拡散し、またルツボ成型用モールドが損傷する等、新たな課題を招来させるものであった。
その結果、アーク放電の加熱溶融時間のバラツキ、原料粉末の熱分布のバラツキ等の作業条件のバラツキ、原料粉末のバラツキを吸収することができ、石英ガラスルツボの外形寸法のばらつきを抑制できる。
また、第1原料粉末層が形成されているため、ルツボ成型用モールドを保護し、またルツボ成型用モールドから石英ガラスルツボへ不純物の拡散を抑制することができる。
前記第1原料粉末は、メッシュ値が35以上70未満の粒度であることがより望ましく、50以上70未満の粒度であることが更に望ましい。
このように積層することにより、石英ガラスルツボの外形寸法の設計値を超えた位置で溶融の進行が遅くなるため、外形寸法が設計値に近い石英ガラスルツボを得ることができる。
また、前記内側部材12と保持体14との間には、前記貫通孔(多孔質の孔)が連通する通気路13が形成されている。この通気路13は吸引部16および排気路17を介して、ポンプ等の減圧機構18に接続されている。
前記アーク電極19は、ルツボ成型用モールド11内に積層された石英ガラスの原料粉末を加熱溶融するためのものであり、例えばカーボン電極が用いられる。
前記第1原料粉末および第2原料粉末は、どちらも天然シリカガラスからなる粉末であるが、第1原料粉末の方が第2原料粉末よりも粒度が粗い(大きい)。
また、第3原料粉末供給ノズル22は、合成シリカからなる第3原料粉末をルツボ成型用モールド11内に供給するためのものである。
ここで、メッシュ値とは、ふるいの目開きの大きさで粒度を示す値であり、1インチ当たりの網目数を示している。したがって、例えばメッシュ値が60以上80未満の粉末は、メッシュ値が60(公称目開き250μm)のふるいを通過し、メッシュ値が80(公称目開き180μm)を通過しない粉末として得ることができる。
図2は、本発明の実施形態に係る石英ガラスルツボの製造方法の手順を示すフローチャートである。図3から図6は、本発明の実施形態に係る石英ガラスルツボの製造方法の各工程を示す図である。
第1原料粉末供給ノズル20から供給される第1原料粉末2は、回転するルツボ成型用モールド11の遠心力および内側部材12を介した減圧機構18の吸引などその他の成型手段によって崩落しない程度の固さでルツボ成型用モールド11の表面に積層される。
具体的には、第1原料粉末2を石英ガラスルツボの外形寸法の設計値に相当する位置まで積層することが好ましい。
図4に示すように、この第2積層工程では、第2原料粉末供給ノズル21から第2原料粉末3が供給される。第2原料粉末供給ノズル21から供給される第2原料粉末3は、回転するルツボ成型用モールド11の遠心力および内側部材12を介した減圧機構18の吸引などその他の成型手段によって崩落しない程度の固さで第1原料粉末2の層の表面に積層される。
図5に示すように、この第3積層工程では、第3原料粉末供給ノズル22から第3原料粉末4が供給される。第3原料粉末供給ノズル22から供給される第3原料粉末4は、回転するルツボ成型用モールド11の遠心力および内側部材12を介した減圧機構18の吸引などその他の成型手段によって崩落しない程度の固さで第2原料粉末3の層の表面に積層される。
ここで、天然シリカガラスとは、水晶等の天然質原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味し、合成シリカガラスとは、例えばシリコンアルコキシドの加水分解により合成された合成原料を溶融して製造されるシリカガラスを意味する。
完成後の石英ガラスルツボにおいて、第3原料粉末4から形成される合成シリカガラス層は最内面となるため、不純物が少ない第3原料粉末4(合成シリカ粉末)が用いられる。
図6に示すように、溶融工程では、アーク電極19を用いたアーク放電の発熱によって、ルツボ成型用モールド11の内側から第3原料粉末4の層を加熱し、積層された原料粉末の層を順次加熱溶融する。
このとき、アーク放電による加熱時間は、少なくとも、第2原料粉末3の層と第1原料粉末2の層の界面(設計値)まで溶融する時間とする。即ち、第3原料粉末の層から第1原料粉末の層の一部までが溶融する時間とする。
また、ルツボ成型用モールドから石英ガラスルツボ(第2原料粉末3の層)へ不純物が拡散するのを抑制できる。
尚、前記後処理(ステップS6)として、前記冷却工程(ステップS5)の後、石英ガラスルツボの外周面に付着した、前記第1原料粉末層の未溶融粉末を除去するのが好ましい。
具体的には、石英ガラスルツボの外周面に付着した、前記第1原料粉末層の未溶融粉末を石英粉あるいは氷を含む、高圧の空気あるいは水を吹き付けることで除去する。
尚、図7は、アーク放電による加熱溶融の状態を示す模式図であって、(a)第1原料粉末が積層されていない場合(従来の方法)、(b)第1原料粉末が積層されている場合(本発明にかかる方法)を示している。
そして、第3原料粉末4から、第2原料粉末3における石英ガラスルツボの外形寸法の設計値に相当する位置Dまで溶融し、石英ガラスルツボを製造する。
このとき、作業者による、アーク放電(アーク電極19)からの加熱時間のバラツキ、また第2原料粉末3のバラツキ(原料粉末のバラツキ)による溶け易さの差などによって、溶融範囲のバラツキが生じ、例えば図中R1領域のように、設計値を超えて溶融し、石英ガラスルツボの外形寸法にバラツキが生じる。
そのため、石英ガラスルツボの外形寸法の設計値に相当する位置Dの内側及び外側の溶融速度(溶融の進行度)は同じであり、僅かな加熱時間のバラツキが、石英ガラスルツボの外形寸法のバラツキの原因になる。
即ち、第1原料粉末2の溶融速度(溶融の進行度)は、第2原料粉末3溶融速度(溶融の進行度)よりも遅いため、加熱時間にバラツキが生じても、第1原料粉末2が溶融する度合いは小さい。
実験条件:
第1原料粉末の粒度を、メッシュ値が#60以上80未満(実施例)、メッシュ値が#80以上150未満(参考例)とし、第1原料粉末を7mm積層した。また、前記第1原料粉末層の上に、粒度(メッシュ値)#80以上150未満の第2原料粉末を21mm積層した。また、前記第2原料粉末層の上に、粒度(メッシュ値)#40以上325以下の第3原料粉末を2.5mm積層し、成形体を得た。
同じ溶融条件でも外径の狙い値809mmを超えた外径を基準として、メッシュ値が#60以上80未満である原料粉末は、メッシュ値が#80以上150未満である原料粉末よりも、溶融の進行速度が遅い。
よって、第1原料粉末を第2原料粉末よりも粗いものとすれば、第1原料粉末の層と第2原料粉末の層との境界で溶融の進行速度が遅くなるので、作業条件、原料粉末のバラツキを吸収し、石英ガラスルツボの外形寸法のばらつきを抑制できる。
また、第2原料粉末とルツボ成型用モールド(内側部材)の間に、第1原料粉末が存在することにより、ルツボ成型用モールド(内側部材)を保護でき、またルツボ成型用モールドから石英ガラスルツボへ不純物の拡散を抑制することができる。
3 第2原料粉末
4 第3原料粉末
10 製造装置
11 ルツボ成型用モールド
12 内側部材
13 通気路
14 保持体
15 回転軸
16 吸引部
17 排気路
18 減圧機構
19 アーク電極
20 第1原料粉末供給ノズル
21 第2原料粉末供給ノズル
22 第3原料粉末供給ノズル
Claims (4)
- 回転するモールド内に積層された石英ガラスの原料粉末をアーク放電によって加熱溶融し、その後、冷却することによって製造される、少なくとも合成シリカガラス層と天然シリカガラス層を備える石英ガラスルツボの製造方法において、
前記モールドの表面に、天然シリカガラスからなる第1原料粉末を積層し、前記第1原料粉末はメッシュ値が80未満の粒度である第1積層工程と、
前記第1原料粉末層の表面に、前記第1原料粉末よりも粒度が細かい天然シリカガラスからなる第2原料粉末を積層し、前記第2原料粉末はメッシュ値が80以上200未満の粒度である第2積層工程と、
前記第2原料粉末層の表面に、合成シリカガラスからなる第3原料粉末を積層する第3積層工程と、
前記第3原料粉末層から前記第1原料粉末の層の一部までをアーク放電によって加熱溶融し、その後冷却し、少なくとも、第3原料粉末の合成シリカガラス層と前記第2原料粉末の天然シリカガラス層を形成する、溶融・冷却工程と、
を含み、
前記第1積層工程では、前記第1原料粉末を石英ガラスルツボの外形寸法の設計値に相当する位置まで積層することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法。 - 前記第1原料粉末は、メッシュ値が60以上80未満の粒度であることを特徴とする請求項1に記載の石英ガラスルツボの製造方法。
- 前記第2原料粉末は、メッシュ値が80以上150未満の粒度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石英ガラスルツボの製造方法。
- 前記溶融・冷却工程の後、石英ガラスルツボの外周面に付着した、前記第1原料粉末層の未溶融粉末を除去する工程が含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の石英ガラスルツボの製造方法。
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