本発明に係る素子実装装置及び実装方法の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1の実施形態)
(概略構成)
第1の実施形態に係る素子実装装置について説明する。図1は、素子実装装置の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、素子実装装置1内にはキャリアCと基板Sとが搬入されている。キャリアCは、素子Eをアレイ状にストックした素子供給体である。アレイ状とは、決められたパターンに従って複数行複数列に素子Eが配列された状態をいい、行方向と列方向の間隔が同一又は相違しており、例えば碁盤の目状の配置、蜂の巣模様のような千鳥状の配置等である。素子Eは、電子回路に使用される部品であり、MEMS、半導体素子、抵抗及びコンデンサ等のチップが含まれ、半導体素子にはトランジスタ、ダイオード、LED及びサイリスタ等のディスクリート半導体、並びにICやLSI等の集積回路が含まれる。LEDには所謂ミニLED及びマイクロLEDが含まれる。特に、素子Eには、一辺が200μm以下の所謂微小部品が含まれる。基板Sは回路パターンが形成されて成り、例えばミニLEDが整列するバックライト用の照明基板、RGBの各マイクロLEDが画素として配列される表示基板である。
この素子実装装置1は、多行多列の素子Eを一括してキャリアCからピックアップし、ピックアップした多行多列の素子Eを基板Sに一括して移し替える。そして、この素子実装装置1は、多行多列の素子Eを基板Sに複数回移し替えることで、素子Eがアレイ状に配列された素子実装基板を製造する。また、この素子実装装置1は、移し替えた素子Eを基板Sに電気的及び機械的に接合する。このような素子実装装置1は、ダイボンディング装置又はチップボンディング装置とも呼ばれる。
素子実装装置1は、キャリア台3、実装台4及び移送部5を備えている。キャリア台3は、キャリアCが載置される載置面を有するキャリアCの供給台であり、ピックアップポジション21で停止する。すなわち、キャリア台3は、キャリアC上でアレイ状の配列でストックされた素子Eのうちピックアップ対象となる多行多列の素子E群を、その中央位置がピックアップポジション21に位置するように停止させる。実装台4は、基板Sが載置される載置面を有する基板Sの供給台であり、実装ポジション22で停止する。すなわち、実装台4は、基板S上の回路パターンにおいて、移送部5によって多行多列の素子E群が実装される回路パターンを、その中央位置が実装ポジション22に位置するように停止させる。
移送部5は、素子EをキャリアCから基板Sに移し替える。この移送部5は、ピックアップポジション21と実装ポジション22との間を移動する。そして、移送部5は、ピックアップポジション21でキャリア台3に載置されたキャリアCと対面し、キャリアCから多行多列の素子Eを一括してピックアップする。また、移送部5は、実装ポジション22で実装台4に載置された基板Sと対面し、保持している多行多列の素子Eを一括して基板Sに渡す。
移送部5による素子Eのピックアップ方法は例えば貼着である。移送部5には、平坦な保持面51aが設けられ、この保持面51aに粘着シートAが装着される。粘着シートAは、図2に示すように、多行多列の素子Eが配列された領域と同じか若干広い粘着領域A1を片面に備えている。粘着領域A1内は隈無く粘着力を有している。換言すれば、多行多列の素子Eの全てを各々ピンポイントに位置合わせする必要はなく、粘着シートAは、各素子Eが粘着シートAの何れかの領域に接触すれば粘着力を発揮し、各素子Eを貼着する。若干広い粘着領域A1とは、ピックアップ予定の素子E群と、その素子E群の一つ外側に隣接する素子Eとの間のスペースにまでは及ぶが、当該隣接する素子Eには未達である範囲である。
移送部5は、この粘着シートAを、ピックアップポジション21にて粘着領域A1が素子Eを臨み、実装ポジション22にて粘着領域A1が基板Sを臨むように保持面51aに装着している。移送部5は、粘着シートAをキャリアC上の素子Eに押し付けることで、粘着領域A1内の全素子Eを一括してキャリアCから粘着シートAに移す。また、移送部5は、保持している全素子Eを一括して基板Sに接触させてから粘着シートAの粘着力を喪失或いは低下させ、全素子Eを粘着シートAから基板Sへ一括して離脱させる。基板S上には予め導電性接合材料が形成されている。導電性接合材料は、合金接合、導電粒子圧着、バンプ圧接等により、基板Sと素子Eを電気的及び機械的に接続し、加熱により硬化する。例えば、導電性接合材料としてACF、ACP、NCF、NCP又は均質共晶半田が基板Sに形成されている。
尚、キャリアCが載置されるキャリア台3は、載置面の傾き調整が可能となっており、予め、移送部5の保持面51aと平行に合わせられる。また素子Eを保持する移送部5は、傾き調整が可能となっており、予め、基板Sが載置される実装台4の載置面と保持面51aとが平行に合わせられる。そのため、キャリアCから粘着領域A1に収まる全素子Eを取りこぼしなく、また一部の素子Eに過大な荷重をかけること無く、一括ピックアップできる。また、保持した全素子Eを基板Sへ精度良く接合し、また一部の素子Eに過大な荷重をかけること無く、一括して離脱させることができる。
粘着シートAの一例を示しておく。粘着シートAは、例えば、規定温度の熱により粘着力が喪失或いは低下する熱剥離シートである。図3に示すように、粘着シートAは基材A2と粘着層A3の二層構造を有する。粘着層A3は接着剤及び発泡フィラーA4を含む。発泡フィラーA4は、弾性を有する殻内に熱によりガス化して膨張する物質を充填させて成る。この粘着シートAでは、熱により発泡フィラーA4の体積が膨張し、素子Eとの接着面積が減少することで、素子Eに対する粘着力が喪失又は低下する。即ち、移送部5は、基板Sに素子Eを接触させた上で粘着シートAを加熱することで、粘着シートAから素子Eを剥離させて基板Sに渡す。熱剥離シートの例としては、接着層内で固体から液体への相転移が生じるものであってもよく、熱によって粘着力が制御できればよい。
(詳細構成)
以上の素子実装装置1を更に詳細に説明する。図4は、素子実装装置1の詳細構成を示す正面図であり、図5は、素子実装装置1の詳細構成を示す側面図である。
図4及び図5に示すように、素子実装装置1は架台6を有する。架台6は、上面が平坦なテーブルであり、キャリア台3、実装台4、移送部5及び昇降部9が設置される。架台6内部には、素子実装装置1の各部を制御するCPU、ROM、RAM及び信号送信回路を有するコンピュータ又はマイコン等の制御手段11が収容されている。また、移送部5は吸着により粘着シートAを保持するが、架台6には、吸引力となる負圧を移送部5へ供給する空気圧回路12が収容され、制御手段11は空気圧回路12内の電磁弁を制御して負圧発生及び負圧解除を切り替える信号送信回路が設けられている。
以下、架台6の上面と平行な1軸方向をX軸方向と呼ぶ。Y軸方向は、架台6上面と平行でX軸と直交する方向であり、Z軸方向は、X軸及びY軸方向と直交する高さ方向であり、θ回転とは、Z軸回りの回転を指す。また、架台6の上面から架台6の外側にZ軸方向に沿って離れる方向を上方と言い、架台6の上面から架台6の内部方向にZ軸方向に沿って向かう方向を下方と言う。
キャリア台3は、X軸及びY軸方向に2次元状に拡がる載置面を有する。このキャリア台3は、X軸駆動機構31とY軸駆動機構32とチルト機構33を備え、X軸方向及びY軸方向に可動であり、また載置面の傾きを変更可能となっている。X軸方向の可動範囲には、ピックアップポジション21とキャリア台3に対してキャリアCを搬入及び排出する搬入/排出ポジションとを含む。このX軸駆動機構31は、キャリアCと移送部5のX軸方向の位置合わせに用いられる。また、Y軸駆動機構32は、キャリアCと移送部5のY軸方向の位置合わせに用いられる。また、チルト機構33は、移送部5との平行度調整に用いられ、キャリア台3の載置面を傾動対象とする。
X軸駆動機構31とY軸駆動機構32としては、例えばボールネジ機構が採用できる。レールとボールネジは、各々の可動方向に沿って延ばされる。ボールネジは、回転モータ、ネジ軸及びスライダにより構成され、スライダをネジ軸に螺合させ、回転モータでネジ軸を軸回転させる。X軸駆動機構31は、Y軸駆動機構32のスライダに固定し、Y軸駆動機構32のレールに乗せる。キャリア台3は、X軸駆動機構31のスライダに固定し、X軸駆動機構31のレールに乗せる。
チルト機構33は、ボールネジ機構とカムフォロア機構を組み合わせて成り、モータを動力源として傾動対象を傾ける電動チルト機構である。図6に、このチルト機構33の詳細な構成を示す。図6の(a)は、キャリア台3を上から見た図であり、チルト機構33のうちのキャリア台3に隠れた箇所は破線で示してある。図6の(b)は、キャリア台6を側方から見た図である。
図6に示すように、このチルト機構33は、回転モータ331、ネジ軸332、カム333及びカムフォロア334を備えている。ネジ軸332は、ステッピングモータ等の回転モータ331によって軸回転する。このネジ軸332は、軸受け337によって軸方向の移動が規制されている。カム333は、ネジ軸332に沿って長い筒状体であり、筒内周面にネジ溝が穿設され、ネジ軸332に螺合している。このカム333は傾斜部335を備えている。傾斜部335は、カム333の外周面から立ち上がっており、概略直角三角形形状を有し、軸方向に沿って連続的に高くなる傾斜面336を有する。カムフォロア334は、Z軸方向に可動となっている。このカムフォロア334は、カム333の傾斜面336に例えば引張りバネ等により押し付けられ、カム333の傾斜面336を従動する。
このチルト機構33では、回転モータ331が駆動すると、ネジ軸332は軸回転する。ネジ軸332が軸回転すると、カム333はネジ軸332が延びる方向に移動する。カム333が移動すると、カムフォロア334は、傾斜面336を登ってネジ軸332との直交方向へ押し上げられたり、傾斜面336を下ってネジ軸332との直交方向へ降ろされたりする。この傾斜部335の傾斜面336は、平行度調整の精度向上及び高い剛性を両立すべく、水平方向10mmの移動に対し、高さが1mm以下で上がる傾斜を有することが好ましい。
キャリア台3は、このチルト機構33を3組備え、3つのカムフォロア334で支持されている。即ち、チルト機構33は、X軸駆動機構31とY軸駆動機構32の並びとキャリア台3との間に配置される。そして、3つのカムフォロア334を正三角形の角位置に配置し、キャリア台3を傾動対象として支持する。このように構成することにより、チルト機構33はキャリア台3の載置面を移送部5の保持面51aに平行に調整可能とする。尚、3つのカムフォロア334の配置は、正三角形の配置に限らず、二等辺三角形の配置でも良い。例えば、図6(a)において手前側中央のカムフォロア334の位置を二等辺三角形の頂角とし、二等辺三角形の両底角の位置に残りの2つのカムフォロア334が配置されればよい。二等辺三角形配置とする場合、二等辺三角形の底辺は、頂角のカムフォロア334の配置されたキャリア台3の縁辺よりも、その縁辺に対向する縁辺に近い位置とすることが望ましい。
図4及び図5に戻り、実装台4は、X軸及びY軸方向に2次元状に拡がる載置面を有する。この実装台4についてもX軸方向及びY軸方向に可動であり、ボールネジ機構により成るX軸駆動機構41とY軸駆動機構42を備えている。Y軸駆動機構42は、主に実装台4に載置された基板Sの搬入及び排出に用いられ、また基板Sと移送部5のY軸方向の位置合わせに用いられる。また、X軸駆動機構41は、移送部5と基板SのX軸方向の位置合わせに用いられる。
移送部5は、嵩上げ台61に設置され、X軸方向に間隔を空けて設けられたピックアップポジション21と実装ポジション22とを結ぶ直線に沿って自走し、またピックアップポジション21と実装ポジション22に位置するキャリア台3と実装台4に向けてZ軸方向に下降可能となっている。
ここで、嵩上げ台61は、架台6上面よりも一段高く、ピックアップポジション21と実装ポジション22の並びに沿って延在する。嵩上げ台61には、X軸方向に沿ってレール63が敷設されている。レール63は、ピックアップポジション21と実装ポジション22との間を移動する移送部5のガイドである。レール63は、ピックアップポジション21に位置したキャリア台3と実装ポジション22に位置した実装台4とに届く長さを有する。レール63は支持部64によって把持されている。支持部64は、移送部5を支持するブロック体であり、更に、回転モータ、回転モータで軸回転させられるネジ軸により構成されるボールネジ65によって駆動する。
支持部64は、ピックアップポジション21と実装ポジション22とを結ぶ直線上に向かってY軸方向に延びる。移送部5は、この支持部64の延び先端面67に取り付けられている。この延び先端面67には、Z軸方向に延びるレール66が敷設されている。移送部5は、このレール66をスライダ591で把持することで支持部64に取り付けられ、Z軸方向に摺動可能となっている。
昇降部9は、Z軸方向に摺動可能となっている移送部5を押し下げることで、ピックアップポジション21に位置した移送部5をキャリア台3へ向けて下降させ、また実装ポジション22に位置した移送部5を実装台4に向けて下降させる。まず、架台6には、嵩上げ台61の後方に位置し、移送部5よりも高く延びる支柱62が立設されている。この支柱62は、上端がY軸方向に屈曲し、移送部5の移動軌跡直上まで迫り出している。昇降部9は、この支柱62の延び先端面69に設置されている。
即ち、支柱62の延び先端面69には、Z軸方向に延びるレール91が敷設されている。また支柱62の延び先端面69には、回転モータ92によって軸回転するネジ軸93がレール91に平行して設置されている。更に、このレール91を把持して、またネジ軸93に螺合して、当接ブロック94が取り付けられている。この当接ブロック94は、回転モータ92の駆動により移送部5に向けて下降し、移送部5の上端に当接し、更に移送部5を押し下げる。移送部5は、不図示のばね等を例とする付勢手段によって上方に付勢されており、当接ブロック94は、この付勢手段に抗して移送部5を押し下げる。当接ブロック94が移送部5から離れることで、当接ブロック94による押圧力が解除されると、移送部5は、付勢手段によって図4及び図5に示される上昇位置に戻されることになる。
尚、移送部5は、レール63に沿ってピックアップポジション21と実装ポジション22の直上まで移動可能となっている。そのため、当接ブロック94は、少なくともピックアップポジション21及び実装ポジション22の両方を範囲内に収めるようにX軸方向に長く、移送部5が何れの位置に存在しようとも、移送部5と当接して押し下げ可能となっている。また、移送部5は当接ブロック94に対してX軸方向に移動可能な状態で連結されていてもよい。
図7は、移送部5の詳細構成を示す模式図である。移送部5は、ブラケット59に各部を搭載して成る。ブラケット59は、レール66を把持するスライダ591を有し、またブラケット59には当接ブロック受け54が搭載されている。当接ブロック受け54は、当接ブロック94と接触する部材である。この当接ブロック受け54が当接ブロック94によって押圧されることにより、移送部5はレール66に沿って昇降する。
移送部5の下降方向先端には、ヘッド51が設けられ、ヘッド51にはシリンダ52が連接している。ヘッド51は、保持面51aで粘着シートAを保持する保持部であり、また発熱することで粘着シートA及び基板Sに形成された導電性接合材料を加熱する。保持面51aは、キャリア台3及び実装台4と平行に拡がる矩形であり、平坦である。ヘッド51には負圧がかけられ、ヘッド51は負圧により粘着シートAを保持面51aで吸着保持する。シリンダ52は、例えばエアシリンダ等の加圧源であり、ヘッド51に荷重をかけることで、ヘッド51を介して粘着シートAを素子Eに押し付け、また実装ポジション22でヘッド51を介して素子Eを基板Sに押し付ける。
ここで、ヘッド51は、多孔質構造を有し、若しくは吸着穴51bを有し、又は多孔質構造と吸着穴51bの両方を有する。例えば、ヘッド51は、多孔質構造を有する窒化アルミや窒化ケイ素を主材とするセラミックである。その他、ヘッド51は例えばステンレス製であってもよい。ヘッド51の多孔質構造内部又は吸着穴51bは、空気圧回路12と接続されており、ヘッド51の多孔質構造を通じて、またヘッド51に設けられた貫通穴51bを通じて、保持面51aに負圧が発生し、粘着シートAを吸着保持する。
更に、このヘッド51内には、ヒータ56及びブロア57が設置されている。ヒータ56は、例えばパルスヒータ等の加熱源であり、ヘッド51を加熱し、ブロア57は空気の噴出によってヘッド51を空冷する。このヒータ56は、制御手段11によって制御される。ヒータ56は、制御手段11による制御の下、素子Eが基板Sに接触している間はヘッド51を加熱する。また、ヒータ56は、素子Eが基板Sに接触しているとき以外は、加熱を中断又は弱め、ブロア57は、素子Eが基板Sに接触しているとき以外はヘッド51を冷却している。
この移送部5は、ヘッド51の位置ズレを検出して当該ヘッド51を回転補正するカメラ55とθ回転部53を備え、またヘッド51の粘着シートAの保持面51aの向きを変更するチルト機構58a及び58bを備えている。カメラ55は、ヘッド51とシリンダ52の列の脇に設置され、移送部5とキャリアC、及び移送部5と基板Sとの相対的な位置ズレを検出する。θ回転部53は、ヘッド51をZ軸回りに回転させ、キャリアC上の素子Eと基板S上の回路パターンとを位置合わせする。
チルト機構58a及び58bは、シリンダ52とθ回転部53との間に連接され、手動操作によって傾動対象を傾ける手動チルト機構であり、ヘッド51の向きを変化させる。このチルト機構58aとチルト機構58bとを図8及び図9を参照して更に詳細に説明する。図8は、XZ平面の直交方向から移送部のチルト機構を見た詳細構成を示す図であり、図9は、YZ平面の直交方向から移送部のチルト機構を見た詳細構成を示す図である。尚、図8においてはチルト機構58aの詳細構成のみを図示し、図9においてはチルト機構58bの詳細構成のみを図示している。尚、このチルト機構58aとチルト機構58bの傾動対象は、ヘッド51の保持面51aである。
図8及び図9に示すように、このチルト機構58a及び58bの各々は、凹状曲面582を有するベース581、及び凸状曲面584を有する摺動部583を備えている。XZ平面傾動用のチルト機構58aの摺動部583はシリンダ52に固定され、XZ平面傾動用のチルト機構58aのベース581とYZ平面傾動用のチルト機構58bの摺動部583が固定され、YZ平面傾動用のチルト機構58bのベース581がθ回転部53の回転軸に固定される。
各チルト機構58a及び58bのベース581と摺動部583は、同じ曲率の凹状曲面582と凸状曲面584を有し、凹状曲面582と凸状曲面584とで摺り合わせられている。凹状曲面582と凸状曲面584の円中心は保持面51aの中心に位置する。凸状曲面584が凹状曲面582を摺りながら、摺動部583がヘッド51の保持面51aを中心に回転することで、ヘッド51の向きが変更される。
XZ平面傾動用のチルト機構58aは、凹状曲面582及び凸状曲面584が円弧を描いてX軸方向に延在するように、ベース581及び摺動部583が位置する。XZ平面に沿った断面での凹状曲面582及び凸状曲面584の形状は山形、YZ平面に沿った断面での凹状曲面582及び凸状曲面584の形状は平坦である。従って、チルト機構58aによって、ヘッド51はXZ平面に沿って揺動する。
また、YZ平面傾動用のチルト機構58bは、凹状曲面582及び凸状曲面584が円弧を描いてY軸方向に延在するようにベース581及び摺動部583が位置する。YZ平面に沿った断面での凹状曲面582及び凸状曲面584の形状は山形、XZ平面に沿った断面での凹状曲面582及び凸状曲面584の形状は平坦である。従って、チルト機構58bによって、ヘッド51はYZ平面に沿って揺動する。このように、チルト機構58a及び58bは、ヘッド51をXZ平面及びYZ平面に沿って移動させることで、保持面51aを実装台4の載置面に平行に調整可能とする。
これらチルト機構58a及び58bは、更に調整部585を備えている。調整部585は、例えばマイクロメータと同じ構造を有し、ツマミ586とフレーム587とスピンドル588とを備える。ツマミ586はマイクロメータのシンブルに対応し、周面に目盛りが付されている。1目盛り単位でツマミ586を手動で回すと、スピンドル588は、フレーム587から1目盛り単位に応じて進退し、フレーム587を基端として突出量が変化する。例えば、ツマミ586を時計回りに回転させると、スピンドル588は延びる。ツマミ586を反時計回りに回転させると、スピンドル588は縮む。フレーム587は、引張バネ589によりベース581の方向に付勢されており、スピンドル588の先端はベース581の側面に常に押し付けられている。
そのため、スピンドル588が延びると、フレーム587はベース581から離れる方向に押し出される。また、スピンドル588が縮むと、フレーム587はベース581に近づく。フレーム587は摺動部583に直接又は間接的に固定されている。従って、スピンドル588が伸縮し、フレーム587がベース581へ接近又は離反すると、摺動部583は、フレーム587の位置の変位と変位方向に応じてフレーム587に引き摺られ、凸状曲面584が凹状曲面582を摺りながら移動し、向きを変える。このように、このチルト機構58a及び58bは、ツマミ586の手動操作によって傾動対象、つまり保持面51aを傾ける。
このチルト機構58a及び58bにおいては、ツマミ586が1回転すると、摺動部583の向き、換言すると保持面51aの向きが0.0003°以上0.15°以下で変位することが望ましい。即ち、保持面51aの一辺の長さを例えば20mmとした場合、ツマミ586を1回転させたときに、保持面51aの対向辺の高低差が0.1μm以上50μm以下で変位することが望ましい。この範囲を下回ると、保持面51aの傾きの調整効率が損なわれ、またこの範囲を上回ると、ツマミ586の操作に対して保持面51aが大きく変わり、保持面51aを所望の傾きに調整することが困難となる。
0.0003°以上0.15°以下という範囲は次の理由による。まず、鋭意研究の結果、キャリア台3の載置面に対して1辺が20mmの保持面51aの最小距離と最大距離との差を2μm以下に抑えることで、粘着領域A1に収まる素子Eのうち、98%以上の素子Eをピックアップできるとの知見を得た。具体的には、粘着領域A1に収まる256個(16行×16列)の素子Eのうち、251個がピックアップされた。従って、キャリア台3の載置面に対して保持面51aの最小距離と最大距離との差が1μmであれば、素子Eの全てがより確実にピックアップされることになる。
従って、保持面51aは、1辺が20mm幅である場合、最小距離と最大距離の差を1μm以下の単位で変更できることが最も効率的である。換言すると、保持面51aの1辺とキャリア台3の載置面とが成す角は、0.003°単位で変更できることが最も効率的である。ツマミ586の周りには50目盛りが付されているため、1目盛で0.003°変更できるようにするためには、ツマミ586を1回転当たりに換算すると、1回転当たり最大0.15°変更できればよい。
また、1μm変更するために、ツマミ586の回転操作が凡そ10回転以下に収まれば、調整効率の観点で実用上耐え得る。換言すると、ツマミ586を1回転させると0.1μm変化する場合、実用上耐え得る。換算すれば、ツマミ586を1回転させると、最低0.0003°変更できればよい。
尚、回転モータ331で駆動する電動のチルト機構33においても、傾きの調整効率の観点から、回転モータ331の回転軸1回転につき、キャリア台3の載置面が0.0003°以上0.15°以下で変位できればよい。
(動作)
(調整動作)
このような素子実装装置1の動作を説明する。まず、素子Eの実装処理に先立って、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面との平行度調整、及び移送部5の保持面51aとキャリア台3の載置面との平行度調整を行う。
実装台4の載置面には例えば感圧紙を載せておき、圧力分布を検出可能としておく。実装台4の載置面に感圧紙を載せた後、移送部5を実装台4に向けて降下させ、移送部5の保持面51aを感圧紙に押し付ける。移送部5を上昇させた後、感圧紙を取り出し、圧力分布を観察する。保持面51aの外形痕が感圧紙に均一に残っていれば、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面は平行に保たれている。
一方、保持面51aの外形痕の一部が欠けていれば、欠けた領域は、保持面51aと実装台4の載置面が接触できていない領域であり、移送部5の保持面51aは、欠けた領域が実装台4の載置面から離れるように、実装台4の載置面に対して大きく傾斜している。痕が薄い領域は、保持面51aと実装台4の載置面とが接触しているものの、荷重が過小な領域であり、移送部5の保持面51aは、痕が薄い領域が実装台4の載置面から離れるように、実装台4の載置面に対して未だ傾斜している。痕が濃い領域は、保持面51aと実装台4の載置面とが過大に接触しており、過大な荷重がかかっており、移送部5の保持面51aは、痕が濃い領域が実装台4の載置面から近づくように、実装台4の載置面に対して傾斜している。
この感圧紙の圧痕を参照しながら、オペレータは、調整部585のツマミ586を回し、ヘッド51をXZ平面に沿って、又はYZ平面に沿って傾動させる。この圧痕表示と傾動調整とを、保持面51aの外形痕が感圧紙に均一に残るまで繰り返す。これにより、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面とが高精度に平行に保たれる。ここで、平行には、完全な平行の他、多行多列の素子Eを一括して実装できる範囲でのズレも含まれる。尚、圧力分布が検出可能であれば、感圧紙に限らず、歪みセンサを配列した圧力分布計や多点同時検出可能なタッチパネルを載置するようにしてもよい。
次に、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面との平行度調整が完了した後、キャリア台3の載置面には感圧紙を載せ、圧力分布を検出可能としておく。キャリア台3の載置面に感圧紙を載せた後、移送部5をキャリア台3に向けて降下させ、移送部5の保持面51aを感圧紙に押し付ける。移送部5を上昇させた後、感圧紙を取り出し、圧力分布を観察する。この感圧紙の圧痕を参照しながら、オペレータは、キャリア台3の傾動操作を行う。
例えば、キャリア台3のチルト機構33は、外部から入力された操作信号に従って、カムフォロアを上昇又は下降させる。例えば、制御手段11には、ティーチングペンダント等の操作手段が接続されており、ユーザは、XZ平面傾動用及びYZ平面傾動用のボタンの押下、及び押下回数や押下時間によって、チルト機構33に傾動指示を入力する。例えば、押下されたボタンに応じて傾動方向が決定し、押下回数や押下時間によって傾動量が決定する。制御手段11は、押下されたボタンと、押下回数や押下時間に従って、3組のチルト機構33の動作量を演算し、各チルト機構33に駆動を指示する制御信号を出力する。
これにより、移送部5の保持面51aとキャリア台3の載置面とが高精度に平行に保たれる。ここで、平行には、完全な平行の他、多行多列の素子Eを一括してピックアップできる範囲でのズレも含まれる。尚、オペレータによる操作に応じてチルト機構33の傾動駆動する例を説明したが、オペレータの操作に依らず、チルト機構33が自動で傾動動作するようにしてもよい。例えば、移送部5に設けられたカメラ55によって感圧紙の圧痕検出を行い、または移送部5に多点計測可能に変位センサを設置して、移送部5の保持面51aの各所とキャリア台3の載置面の各所との各距離を検出してもよい。
カメラ55による圧痕検出では、制御手段11は、カメラ55から出力される画像を参照し、痕の有無及び痕の濃淡を各画素の輝度値により判定する。輝度値は、接触の有無及び接触荷重を示しており、制御手段11は、相対的に輝度値の小さい箇所を、その値に応じて移送部5側に近づけ、相対的に輝度値の大きい箇所を、その値に応じて移送部5から遠ざける制御信号を生成し、チルト機構33に出力する。変位センサを用いる場合、制御手段11は、距離が相対的に遠い箇所を、その距離値に応じて移送部5に近づけ、距離が相対的に近い箇所を、その距離値に応じて移送部5から遠ざける制御信号を生成し、チルト機構33に出力する。チルト機構33では、3つの回転モータが制御信号に従った方向に、制御信号に従った回転角度だけ回転し、各カムフォロア334が上下する。
また、移送部5のチルト機構58a及び58bを操作する際にも、カメラ55又はレーザ測定器を利用してもよい。制御手段11には、少なくとも文字列が表示可能な有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等のモニタが接続される。制御手段11は、カメラ55又は変位センサによる結果を、ツマミ586の回転方向及び回転量に換算し、モニタに表示する。オペレータは、ツマミ586の回転方向及び回転量の情報を参照して、チルト機構58a及び58bの各ツマミ586を操作すればよい。
(実装動作)
次に素子実装装置1の実装動作を説明する。図10は、素子実装装置1の動作を示すフローチャートである。まず、移送部5のヘッド51に粘着シートAを装着する(ステップS01)。粘着シートAを保持した移送部5は、ピックアップポジション21に移動する(ステップS02)。ピックアップポジション21には、キャリア台3がキャリアCを載せて待機している。すなわち、キャリアC上でアレイ状にストックされた素子Eのうち今回移送部5でピックアップされる多行多列の素子E群(以下「ピックアップ予定の素子E群」と称す。)の中央位置がピックアップポジション21に位置付けられた状態で待機している。
移送部5がピックアップポジション21に到達すると、移送部5とキャリアC、つまりピックアップ予定の素子E群との位置合わせを行う(ステップS03)。ステップS03において、カメラ55はピックアップ予定の素子E群を撮影する。カメラ55の画像が制御手段11によって解析されて、移送部5とピックアップ予定の素子E群とのX軸方向及びY軸方向の位置ズレ及びZ軸回りの向きのズレが検出されると、移送部5とキャリア台3は、それらズレを解消するように相対的に移動する。X軸方向のズレにおいては、移送部5及びキャリア台3が何れもX軸方向に移動可能であるので、一方又は両方が稼働する。
ズレの検出においては、画像内に写った素子E群のうちの一つの対角上に位置する2つの素子Eの位置を画像処理により検出することで行う。画像処理では、二値化や輪郭強調を行い、素子E群の対角を明瞭にしてもよい。そして、対角の中点を演算し、演算結果と画像内の基準点との差分を取る。この差分が移送部5とピックアップ予定の素子E群とのX軸方向及びY軸方向の位置ズレとなる。また、Z軸回りの向きのズレに関しては、画像内に写った素子E群のうちの一つの対角と基準線とが一致するようにθ回転部53が作動することで解消される。
移送部5とピックアップ予定の素子E群との位置合わせが完了すると、移送部5によるキャリアCからのピックアップ予定の素子E群のピックアップを行う(ステップS04)。このステップS04において、昇降部9は、移送部5をキャリア台3のキャリアCに向けて下降させ、装着された粘着シートAをピックアップ予定の素子E群に押し付ける。粘着シートAは粘着領域A1が隈無く粘着力を有している。そのため、粘着シートAの投影領域に収まる素子Eの全て、つまり、ピックアップ予定の素子E群全てが粘着シートAに貼り付く。
ここで、キャリア台3を傾動させるチルト機構33により、移送部5の保持面51aとキャリア台3の載置面とは、上述したように高精度に平行が保たれている。従って、ピックアップ予定の素子E群の全ての素子Eを粘着シートAに確実に押し付けることができる。このため、キャリアCから粘着領域A1に収まる全素子Eは取りこぼされることなく、また一部の素子Eに過大な荷重がかかって破損することも無く、全素子Eは、高確度で一括ピックアップされる。
粘着シートAへ素子E群が移ると、移送部5はピックアップポジション21から実装ポジション22へ移動する(ステップS05)。このとき、実装台4は、基板Sを載せて実装ポジション22で待機している。すなわち、基板S上に形成された回路パターンのうち今回移送部5で多行多列の素子E群が実装される領域(以下、「実装予定領域」と称す。)の中央位置が実装ポジション22に位置付けられた状態で待機している。移送部5が実装ポジション22に到達すると、移送部5と基板S上の実装予定領域との位置合わせを行う(ステップS06)。カメラ55は、実装予定領域の回路パターンを撮影する。そして、制御手段11は、移送部5と実装予定領域とのX軸方向及びY軸方向の位置ズレ及びZ軸回りの向きのズレを検出し、それらズレを解消するように、移送部5と実装台4とを相対的に移動させる。ズレ検出においては、例えば実装予定領域の対角に存在する回路パターン上の電極パッドを基準に位置ズレ及び向きのズレを算出すればよい。
移送部5と基板Sの位置合わせが完了すると、移送部5による基板S上への素子E群の実装を行う(ステップS07)。
ステップS07では、昇降部9は移送部5を下降させ、移送部5は素子E群を一括して基板Sに押し付ける。即ち、回転モータ92が作動し、当接ブロック94が移送部5に向けて下降する。当接ブロック94は移送部5の当接ブロック受け54に当接し、移送部5全体を基板Sに向けて押し下げ、素子E群を基板Sに当接させる。このとき、シリンダ52には押し付けに必要な圧力が供給されているので、素子E群は所定圧力で基板Sに押し付けられることとなる。
また、ステップS07では、素子E群が基板Sに当接した際、ヒータ56はヘッド51を粘着シートAの剥離温度T1よりも高い、導電性接合材料で素子E群を基板Sに接合するためのプロセス温度T2まで加熱する。素子E群が基板Sに接触する前から加熱を開始し、素子E群が基板Sに接触した直後にヘッド51の温度が剥離温度T1を通過するようにしてもよい。ヘッド51の熱は粘着シートAに伝熱し、更に粘着シートAから素子E群を介して導電性接合材料に伝熱する。そのため、粘着シートAの粘着力は喪失又は低下し、粘着シートAから素子E群が剥離し、基板S側に素子E群が載置される。即ち、粘着シートAに貼り付いた素子E群は、粘着シートAに残ることなく、全て粘着シートAから基板Sへ転写される。更に、ヘッド51がプロセス温度T2に到達することで、導電性接合材料で素子E群が基板Sに接合される。
しかも、移送部5のヘッド51を傾動させるチルト機構58a及び58bにより、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面とは、上述したように高精度に平行が保たれている。従って、粘着シートAに保持された全ての素子Eを基板Sに対して確実に押し付けることができる。このため、保持した全素子Eは基板Sに精度良く接合され、また一部の素子Eに過大な荷重がかかって破損することも無く、全素子Eは高確度で一括して基板Sに離脱する。
移送部5が保持する粘着シートAは、m行n列の素子Eを包含するサイズ及び形状を有するものとする。キャリアCには、a×m行b×n列の素子Eがストックされているものとする。また、基板Sには、c×m行d×n列の素子Eが実装される余地があるものとする。a、b、c及びdは正の実数、望ましくは自然数である。この場合、移送部5は、キャリアCから全ての素子Eをピックアップし終えるまで、又は基板Sの実装余地に全ての素子Eを配置し終えるまで、ピックアップポジション21と実装ポジション22との間を往復し、素子Eの実装を繰り返す。粘着シートAは、素子Eのピックアップと実装の一連の処理完了ごとに交換される。なお、移送部5がキャリアCから余すことなく素子Eを取り切り、基板Sの回路パターンに余すことなく素子Eを実装し切ることを考慮すると、a、b、c及びdは自然数とすることが好ましい。
(効果)
以上のように、この素子実装装置1は、キャリア台3と実装台4と移送部5とチルト機構33、58a及び58bを備えるようにした。キャリア台3は、素子Eがアレイ状に並べられたキャリアCが載置される供給台である。実装台4は、素子Eがアレイ状に配置される基板Sが載置される。移送部5は、キャリア台3と実装台4との間を移動すると共に、キャリアCから多行多列の素子Eを一括してピックアップして、ピックアップした多行多列の素子Eを基板Sに一括して移す。チルト機構33、58a及び58bは、キャリア台3の載置面と移送部5の保持面51aと実装台4の載置面を平行となるように調整可能とする。
これにより、キャリアCから全素子Eを取りこぼしなく、また一部の素子Eに過大な荷重をかけること無く、一括ピックアップすることができる。また、保持した全素子Eを基板Sへ精度良く接合し、また一部の素子Eに過大な荷重をかけること無く、一括して離脱させることができる。
また、移送部5には手動チルト機構であるチルト機構58a及び58bを備えるようにした。チルト機構58a及び58bは、回転モータ等の動力源を備えないため、移送部5を小型・軽量化できる。これにより、移送部5を高速移動させることができ、素子Eの実装速度が向上する。また、移送部5をキャリア台3及び実装台4に停止させる際の慣性力を小さくすることができ、移送部5は、高精度でピックアップポジション21及び実装ポジション22に停止できる。従って、素子Eのピックアップミスや実装ミスが低下し、歩留まりが良くなる。
更に、このチルト機構58a及び58bは、ツマミを1回転させると、保持面51aを0.0003°以上0.15°以下傾けるようにした。これにより、平行度の調整時間の短縮と移送部5の移動速度の向上を高度に両立させることができ、生産効率が向上する。また、平行度の調整精度の向上と素子Eのピックアップミスや実装ミスの低減が高度に両立し、歩留まりが更に良くなる。
また、キャリア台3には電動チルト機構であるチルト機構33を備えるようにした。これにより、移送部5の保持面51aとキャリア台3の載置面とを高精度で平行に調整することができ、素子Eのピックアップミスを低下させることができる。また、平行度調整が短時間で完了するので、速やかに実装工程に移ることができ、生産効率が向上する。
更に、このチルト機構33は、回転モータ331を1回転させると、キャリア台3の載置面を0.0003°以上0.15°以下の範囲で傾けるようにした。これにより、平行度の調整時間の短縮と精度の向上を高度に両立させることができ、素子Eのピックアップミスや実装ミスの低減が高度に両立し、歩留まりが良くなる。また、傾斜部335の傾斜面336は、水平方向10mmの移動に対し、高さが1mm以下で上がる傾斜を有するようにした。これにより、平行度調整の精度向上及び高い剛性が両立する。
尚、キャリア台3の載置面と移送部5の保持面51aと実装台4の載置面を平行となるように調整できれば、移送部5とキャリア台3に対して、手動チルト機構であるチルト機構58a及び58bと電動チルト機構であるチルト機構33の何れを搭載させるようにしてもよい。また、手動チルト機構であるチルト機構58a及び58bと電動チルト機構であるチルト機構33の一方を実装台4に搭載してもよい。
例えば、キャリア台3が搭載したチルト機構33を実装台4が備えるようにしてもよい。この場合、移送部5のチルト機構58a及び58bにより、キャリア台3の載置面と移送部5の保持面51aの平行度を調整する。また、実装台4のチルト機構33により、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面の平行度を調整する。
また、移送部5には、手動チルト機構であるチルト機構58a及び58bに代えて、電動チルト機構であるチルト機構33を搭載するようにしてもよい。即ち、制御手段11は、移送部5がピックアップポジション21に位置したときの、保持面51aの傾き情報を記憶しておく。そして、移送部5がピックアップポジション21に位置したとき、この保持部51aの傾き情報に従ってチルト機構33を稼働させ、移送部5の保持面51aとキャリア台3の載置面を平行にする。また、制御手段11は、移送部5が実装ポジション22に位置したときの、保持面51aの傾き情報を記憶しておく。そして、移送部5が実装ポジション22に位置したとき、この保持部51aの傾き情報に従ってチルト機構33を稼働させ、移送部5の保持面51aと実装台4の載置面を平行にする。
この場合、キャリア台3と実装台4を傾ける機構は排除することができ、素子実装装置のコスト低減となる。また、この素子実装装置には、反りやうねりが生じたキャリアCや反りやうねりが生じた基板Sが搬入されることも考えられる。この場合であっても、移送部5に電動チルト機構であるチルト機構33を搭載するようにすれば、予めキャリアCの反りやうねりの情報を取得して記憶しておくことで、素子Eがピックアップされる予定の領域に生じているキャリアCの反りやうねりの具合に応じて、保持面51aを傾けることができる。また、移送部5に電動チルト機構であるチルト機構33を搭載するようにすれば、予め基板Sの反りやうねりの情報を取得して記憶しておくことで、素子Eを実装する予定の領域に生じている基板Sの反りやうねりの具合に応じて、保持面51aを傾けることができる。
キャリアCの反りやうねりの具合や基板Sの反りやうねりの具合は、カメラ55で撮影した画像や移送部5に設置した多点計測のレーザ光により測位する変位センサによって検出すればよい。画像に基づく反り具合の検出方法としては、例えば、照明を設置し、キャリアC及び基板Sを照光し、生じた影の向きや長さを検出すればよい。尚、キャリアCや基板S以外にも、キャリア台3の載置面や実装台4の載置面に反りやうねりが生じている場合にも、同様の対応が可能である。
更に、キャリア台3が搭載したチルト機構33と同様のチルト機構を実装台4にも備えるようにし、移送部5のチルト機構58a、58bを排除することもできる。この場合、移送部5の保持面51aに、キャリア台3の載置面と実装台4の載置面とがそれぞれ平行になるように、それぞれのチルト機構33を調整する。このように構成すると、キャリア台3と実装台4との間で移動する移送部5の重量を、チルト機構58a、58bの分だけ軽量化することができるので、移送動作の安定化および高精度化を図れる。
実装台4にチルト機構33を備える場合、傾斜部335の傾斜面336が、水平方向10mmの移動に対し、高さが1mm以下で上がる傾斜を有することは、素子Eの実装精度の点で特に有用となる。まず、実装台4には、素子Eが実装される際、移載部5によって数百ニュートンの荷重が付与される。この荷重は、傾斜部335とカムフォロア334とが相対的に水平方向に移動させる力を生む。但し、傾斜部335は、ネジ軸332の回転で移動する構成であるから、外力を受けても水平方向に移動し難い。そのため、水平方向に移動させる力は、カムフォロア334と、カムフォロア34が取り付けられた載置台4の載置面に作用してしまう。素子Eを実装する際に、この水平方向に移動させる力によって載置面が水平方向に位置ずれしてしまうと、実装精度の低下の原因となる。そして、この水平方向に移動させる力は、傾斜面336の傾きが大きいほど大きくなる。しかしながら、発明者等は、鋭意研究の結果、傾斜部335の傾斜面336を、水平方向10mmの移動に対し高さが1mm以下で上がる傾きとすることを実験により見出した。これにより、素子Eの実装時にかかる荷重によって生じる載置面の位置ずれが素子Eの実装精度に影響しない程度に抑えることができることが確認された。
また、電動チルト機構としてはチルト機構33を説明したが、ツマミ586に接続された回転モータを備えたチルト機構58a及び58bは、ツマミ586を電動で回転させるものであり、電動チルト機構に含まれる。
また、保持面51aの保持態様として粘着シートAを用いた例を説明したが、これに限ることなく、例えば真空吸着や静電吸着等の方法を採用してもよい。真空吸着が採用される場合、移送部5の保持面51aには多行多列の吸引穴が形成される。吸引穴にはコンプレッサやエジェクタを有する空気圧回路12に接続されており、吸引穴には負圧が発生する。移送部5は、負圧により吸引穴に素子を吸い付けることで、素子Eをピックアップし、真空破壊や大気開放等による負圧解除によって基板Sにて素子Eを離す。静電吸着が採用される場合、保持面51aに多行多列のメサ形構造体が形成される。メサ形構造体には電極及び誘電体層が設けられる。このメサ形構造体を有する静電力発生部が素子Eに対する局所的な吸着点となる。
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る素子実装装置1の概略構成図である。図11中、第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付しており、第2の実施形態において特徴的な部分の寸法や形状等は、実際よりも強調して描いてある。
この素子実装装置1は、キャリア台3に搭載されるチルト機構33を実装台4にも備えている。また、移送部5のチルト機構58a及び58bはそれぞれ電動チルト機構である。即ち、このチルト機構58a及び58bは、ツマミ558に接続された回転モータを備え、ツマミ586を電動で回転させる。更に、素子実装装置1は、変位センサの例としてレーザ測定器7を備えている。レーザ測定器7は、キャリア台3、実装台4及び移送部5に備えられている。レーザ測定器7は、レーザ光を測定対象物に向けて出射し、測定対象物からの反射光を受光する。そして、レーザ測定器7は、例えば受光に要した時間から距離測定対象の距離を算出し、又は出入光の位相差から距離測定対象の距離を算出する。変位センサは、当該センサから離間した距離測定対象物が測位可能であれば、これに限らず、例えば超音波により測位するセンサであってもよい。
これらレーザ測定器7は、ピックアップポジション21と実装ポジション22での移送部5の保持面51aの傾き、キャリア台3の載置面の傾き、及び実装台4の載置面の傾きを測定するために用いられる。そして、素子実装装置1では、測定結果に基づいて、保持面51aとキャリア台3の載置面との平行度が調整され、また保持面51aと実装台4の載置面との平行度が調整される。
まず、移送部5のレーザ測定器7は、ピックアップポジション21でキャリア台3の載置面内の各所を測位し、また実装ポジション22で実装台4内の載置面の各所を測位する。測位結果は制御手段11に入力され、キャリア台3の載置面と実装台4の載置面の傾き計算のパラメータとなる。即ち、移送部5のレーザ測定器7は、ピックアップポジション21と実装ポジション22とを結んだ線分上に設置され、移送部5のX軸方向の移動によってピックアップポジション21及び実装ポジション22に到達可能となっている。レーザ測定器7はZ軸に沿って下向きにレーザ光を出射するように、ブラケット59(図7参照)に固定されている。ブラケット59に固定されたレーザ測定器7は、θ回転部53、チルト機構58a及び58bによる回転及び傾き変更に影響されない。レーザ測定器7は、素子Eのピックアップ及び実装の邪魔にならないように、ヘッド51の脇に位置し、また最下端部が保持面51aより高い位置にある。
キャリア台3及び実装台4のレーザ測定器7は、キャリア台3及び実装台4に各々備えられる水平板34に設置される。キャリア台3の水平板34は、XY平面に沿って水平に拡がり、キャリア台3と共にX軸駆動機構31とY軸駆動機構32によってXY平面に沿って平行移動する。また、実装台4の水平板34も、XY平面に沿って水平に拡がり、実装台4と共にX軸駆動機構41とY軸駆動機構42によってXY平面に沿って平行移動する。
キャリア台3のレーザ測定器7は、ピックアップポジション21にて保持面51a内の各所を測位し、また実装台4のレーザ測定器7は、実装ポジション22にて保持面51a内の各所を測位する。測位結果は制御手段11に入力され、ピックアップポジション21及び実装ポジション22での保持面51aの傾き計算のパラメータとなる。即ち、キャリア台3のレーザ測定器7は、X軸駆動機構31及びY軸駆動機構32の駆動によって、ピックアップポジション21に到達可能な位置に固定され、実装台4のレーザ測定器7は、X軸駆動機構41及びY軸駆動機構42の駆動によって、実装ポジション22に到達可能な位置に固定される。また、これらレーザ測定器7は、Z軸方向に沿って上向きにレーザ光を出射するように水平板34に固定されている。
制御手段11は、レーザ測定器7の測位結果から各傾きを計算する。そして、制御手段11は、保持面51aの傾き角度に基づいてチルト機構58a及び58bを制御して保持面51aの傾きを調整し、また、キャリア台3や実装台4の載置面の傾き角度に基づいて各チルト機構33を制御して各載置面の傾きを調整する。なお、制御手段11は表示部11aを備えることができる。表示部11aは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等であり、視覚により情報を表示する。
図12は、実装ポジション22において、制御手段11による保持面51aの傾きを検出及び調整する動作を示すフローチャートである。尚、ピックアップポジション21で保持面51aの傾きを検出及び調整する動作は、位置がピックアップポジション21である点、及びキャリア台3のレーザ測定器7を用いる点を除き同一であり、説明を省略する。
まず、図13に示すように、制御手段11は、ボールネジ65を制御して、移送部5の保持面51aを実装ポジション22に位置させる(ステップS11)。また、制御手段11は、X軸駆動機構41及びY軸駆動機構42を制御して、実装ポジション22に位置した保持面51aに対し、実装台4のレーザ測定器7を正対させる(ステップS12)。次に、制御手段11は、実装台4をX軸方向に移動させつつ(ステップS13)、実装台4のレーザ測定器7を用いて保持面51a内の複数点に向けてレーザ光を当てる(ステップS14)。そして、制御手段11は、複数点の距離を測位する(ステップS15)。
ステップS13及びS14において、例えば図14の(a)に示すように、保持面51aの各辺縁領域のうち、X軸方向に延びる両辺縁領域に各3点のレーザ光照射点Lpを設定する。3点のレーザ光照射点Lpは、できるだけ離れていることが望ましく、辺縁の両端の角及び辺中心に設定されるとよい。
即ち、ステップS12において、最初は、保持面51aの角の一つとレーザ測定器7とが正対するように、実装台4を移動させる。制御手段11は、保持面51aの角の一つとレーザ測定器7とが正対するために必要なX軸方向移動距離及びY軸方向移動距離を予め記憶している。制御手段11は、このX軸方向移動距離及びY軸方向移動距離をアナログ又はパルスの電流又は電圧信号に変換してX軸駆動機構41及びY軸駆動機構42に出力する。例えば、実装台4の原点位置を始点とするX軸方向移動距離及びY軸方向移動距離が記憶されている。この場合は、まず実装台4を原点位置に復帰させ、それからX軸方向移動距離及びY軸方向移動距離に従って制御すればよい。または、実装台4の現在位置を記憶している場合、X軸方向移動距離及びY軸方向移動距離と現在位置との差を演算し、その差に従って制御すればよい。
X軸方向に並ぶ3点のレーザ光照射点Lpの離間距離についても、制御手段11は予め記憶している。保持面51aの角の一つとレーザ測定器7とを正対させ、最初にレーザ光を出射させた後は、次のレーザ光照射点Lpに向けてX軸方向に予め記憶した離間距離だけ、実装台4のレーザ測定器7を移動させる。そして、制御手段11は、実装台4のレーザ測定器7によって次のレーザ光照射点Lpに向けてレーザ光を出射させる。更に、辺中心のレーザ光照射点Lpにレーザ光を照射した後、制御手段11は、反対の角にある次のレーザ光照射点Lpに向けてX軸方向に予め記憶した離間距離だけ、実装台4のレーザ測定器7を移動させる。そして、制御手段11は、実装台4のレーザ測定器7によってレーザ光を出射させる。
片側の辺に沿ってレーザ光照射点Lpを変更した後は、対向辺に沿って更に3点のレーザ光照射点Lpを設定する。制御手段11は、対向辺のY軸方向離間距離について予め記憶している。制御手段11は、このY軸方向離間距離だけ、実装台4のレーザ測定器7を移動させてレーザ光出射を制御し、対向辺の3点のレーザ光照射点Lpにレーザ光を照射させていく。
レーザ光を照射した複数点を測位すると(ステップS15)、制御手段11は、測位結果から保持面51aのX軸に対する傾きを計算する(ステップS16)。傾き計算においては、3点のレーザ光照射点Lpにレーザ光を照射するために移動したX軸方向距離と、3点のレーザ光照射点LPを測位結果の違いに基づけばよい。尚、レーザ光照射点Lpの並びが2ライン分得られているので、例えば各々のラインを利用して各々の傾き角度を求めて平均してもよい。更に、多くの角度情報を得て精度を上げるべく、ステップS13~15を所定回数分繰り返し、複数の角度の平均をとってもよい。Y軸に対する傾きによっては、1ライン分の測定結果が得られない場合もあるため、レーザ光照射点Lpを2ライン分測位することは冗長化のメリットも享受できる。
保持面51aのX軸方向の傾き算出が終了すると、制御手段11は、実装台4をY軸方向に沿って変更させつつ(ステップS17)、実装台4のレーザ測定器7を用いて保持面51a内の複数点にレーザ光を当てる(ステップS18)。そして、制御手段11は、複数点の各距離を測位する(ステップS19)。そして、各複数点の距離を測位すると、制御手段11は、測位結果から保持面51aのY軸に対する傾きを計算する(ステップS20)。
ステップS17及びS18において、例えば図14の(b)に示すように、保持面51aの各辺縁領域のうち、Y軸方向に延びる両辺縁領域に各3点のレーザ光照射点Lpを設定する。3点のレーザ光照射点Lpは、できるだけ離れていることが望ましく、辺縁の両端の角及び辺中心に設定されるとよい。制御手段11は、X軸方向に延びる両辺縁領域の計6個のレーザ光照射点Lpのうちの最終照射点を出発点とし、Y軸方向に並ぶ3点のレーザ光照射点Lpの離間距離に従って実装台4のレーザ測定器7を移動させ、また対向辺のY軸方向離間距離に従って2ライン目に実装台4のレーザ測定器7を移動させればよい。
保持面51aのX軸及びY軸に対する傾き角度を各々計算すると、制御手段11は、X軸及びY軸に対する各傾き角度を表示部11aに表示させる(ステップS21)。水平板34に対する保持面51aの傾きが大きければ、つまり許容できる傾きを超えていれば(ステップS22,Yes)、制御手段11は、計算結果に従ってチルト機構58a及び58bを制御し、保持面51aの傾き角度を変更し(ステップS23)、ステップS12からやり直す。保持面51aの傾きが小さい、つまり許容できる傾きの範囲内である場合には(ステップS22,No)、保持面51aの傾き角度を記憶し(ステップS24)、保持面51aの傾き検出と調整は終了する。
尚、保持面51aの傾き角度は厳密に修正される必要はない。平行度を調整する必要があるのは、あくまで保持面51aと実装台4の載置面との関係であり、また保持面51aとキャリア台3の載置面との関係であり、少なくとも、実装台4の載置面とキャリア台3の載置面の傾き変更限度内に収まっていればよい。
保持面51aが水平板34に対して平行に調整されると、次に、実装台4の載置面と保持面51aとの平行度を調整する。図15は、実装ポジション22において、制御手段11による実装台4の載置面の傾きを検出及び調整する動作を示すフローチャートである。尚、ピックアップポジション21でキャリア台3の載置面の傾きを検出及び調整する動作は、位置がピックアップポジション21である点を除き同一であるため、説明を省略する。
まず、図16に示すように、制御手段11は、ボールネジ65を制御して、移送部5のレーザ測定器7を実装ポジション22に位置合わせする(ステップS31)。また、制御手段11は、X軸駆動機構41及びY軸駆動機構42を制御して、実装台4の載置面を移送部5のレーザ測定器7と正対させる(ステップS32)。次に、制御手段11は、実装台4をX軸方向に移動させつつ(ステップS33)、移送部5のレーザ測定器7を用いて実装台4の載置面内の複数点に向けてレーザ光を当てる(ステップS34)。そして、制御手段11は、複数点の距離を測位する(ステップS35)。
ステップS33及びS34において、例えば図17の(a)に示すように、実装台4の載置面の各辺縁領域のうち、X軸方向に延びる両辺縁領域に各3点のレーザ光照射点Lpを設定する。3点のレーザ光照射点Lpは、できるだけ離れていることが望ましく、辺縁の両端の角及び辺中心に設定されるとよい。最初は、実装台4の載置面の角の一つとレーザ測定器7とが正対するように、実装台4を移動させる。制御手段11は、実装台4の載置面の角の一つとレーザ測定器7とが正対するために必要なX軸方向移動距離及びY軸方向移動距離を予め記憶している。また、X軸方向に並ぶ3点のレーザ光照射点Lpの離間距離についても、制御手段11は予め記憶している。
レーザ光を照射した複数点を測位すると(ステップS35)、制御手段11は、測位結果から実装台4の載置面のX軸に対する傾きを計算する(ステップS36)。傾き計算においては、3点のレーザ光照射点Lpにレーザ光を照射するために移動したX軸方向距離と、3点のレーザ光照射点Lpの測位結果の違いに基づけばよい。
X軸に対する傾き算出が終了すると、制御手段11は、実装台4をY軸方向に沿って変更させつつ(ステップS37)、移送部5のレーザ測定器7を用いて実装台4の載置面内の複数点にレーザ光を当てる(ステップS38)。そして、制御手段11は、複数点の各距離を測位する(ステップS39)。そして、各複数点の距離を測位すると、制御手段11は、測位結果から実装台4の載置面のY軸方向の傾きを計算する(ステップS40)。
ステップS37及びS38において、例えば図17の(b)に示すように、実装台4の載置面の各辺縁領域のうち、Y軸方向に延びる両辺縁領域に各3点のレーザ光照射点Lpを設定する。3点のレーザ光照射点Lpは、できるだけ離れていることが望ましく、辺縁の両端の角及び辺中心に設定されるとよい。尚、このステップS32~S40までは、傾き角度の検出精度のために複数回繰り返し、平均等の統計的手法によって最終的な傾き角度を計算するようにしてもよい。
実装台4の載置面のX軸及びY軸に対する傾き角度を計算すると、保持面51aのX軸及びY軸に対する傾き角度を読み出し(ステップS41)、実装台4の載置面が有する傾き角度から保持面51aの傾き角度を差分する(ステップS42)。そして、制御手段11は、実装台4に設けられたチルト機構33を駆動させて実装台4を傾け、差分を解消させる(ステップS43)。即ち、制御手段11は、このX軸方向の差分及びY軸方向の差分から各チルト機構33の動作方向及び動作量を演算し、演算結果をアナログ又はパルスの電流又は電圧信号に変換して各チルト機構33に出力する。
以上のように、移送部5の保持面51a及び実装台4の載置面は水平を基準として各々の傾き角度が検出され、両傾き角度の差分を解消するようにチルト機構33で傾きが調整されるため、実装台4の載置面の傾きが保持面51aに倣い、両者は平行となる。同じように、ピックアップポジション21にて保持面51aの傾きをキャリア台3のレーザ測定器7を用いて検出し、またキャリア台3の載置面の傾きを移送部5のレーザ測定器7を用いて、両者の差分を解消させることで、ピックアップポジション21において保持面51aの傾きにキャリア台3の載置面が倣う。
ここで、ピックアップポジション21と実装ポジション22における保持面51aの傾き角度の違いが無視できる程度である場合、ピックアップポジション21又は実装ポジション22の何れかで保持面51aの傾きを検出した後は、他方において差分演算をするときにその傾き角度を流用するようにしてもよい。無視できる程度とは、傾き角度を流用することで一方の平行度の精度が落ちたとしても、素子Eのピックアップ又は実装に支障がない場合をいう。この場合、傾き角度の検出工数が減るので、素子実装装置1の稼働効率が向上する。
また、一方のポジションでの保持面51aの傾き角度から他方のポジションでの保持面51aの傾き角度が推測できる場合、即ち一方のポジションでの保持面51aの傾き角度から他方のポジションでの保持面51aの傾き角度を算出する算出式が存在する場合には、同じように、一方のポジションでの保持面51aの傾き角度を流用するようにしてもよい。
移送部5のレーザ測定器7はヘッド51に固定されるようにしてもよい。レーザ測定器7をヘッド51に固定すると、θ回転部53、チルト機構58a及び58bの駆動に影響されず、保持面51aとレーザ光とは常に直交関係を保つ。従って、移送部5のレーザ測定器7を用いて検出された両載置面の傾き角度は、保持面51aが基準となる。そうすると、保持面51aの傾きと比較をすることなく、両載置面の傾き角度の分だけ、チルト機構33を駆動させれば良い。しかも、保持面51aの傾きがチルト機構33による角度変更の許容範囲内であれば、保持面51aの傾きを検出する必要はなく、キャリア台3と実装台4のレーザ測定器7を省略できる。
但し、移送部5のブラケット59にレーザ測定器7を設けることで、θ回転、X軸方向角度変更及びY軸方向角度変更をさせる重量物を軽くすることができ、これらθ回転及び角度変更の精度を更に向上させることができるため、望ましい。
また、本実施形態では、水平を傾きの基準とすべく、移送部5、キャリア台3及び実装台5のレーザ測定器7がZ軸に沿ってレーザ光を出射できるように設置した。但し、移送部5のレーザ測定器7が出射するレーザ光とキャリア台3及び実装台5のレーザ測定器7が出射するレーザ光が平行であればよく、水平を基準とする必要はない。また、移送部5の保持面51aの傾きが、ピックアップポジション21と実装ポジション22を含む線分上で一律であるか、または変動が無視できる程度である場合には、キャリア台3と実装台5に搭載したレーザ測定器7を共通にして、例えば架台6の上面であって、キャリア台3と実装台5の間に配置することもできる。
尚、レーザ測定器7の測位結果の精度向上のため、移送部5は測位時に昇降部9によって下げられ、移送部5のレーザ測定器7と各載置面との距離、及びキャリア台3のレーザ測定器7と保持面51aとの距離を近づけることが望ましい。測位精度が向上するまで、移送部5のレーザ測定器7を載置面に近づけることができない場合には、図18に示すように、移送部5のレーザ測定器7とは別にレーザ測定器7を例えばピックアップポジション21上に設置しておくようにしてもよい。
即ち、架台6には、レーザ測定器7が逆L字支柱81に支持されて設置されている。逆L字支柱81は、架台6の上面から立ち上がり、途中でピックアップポジション22に向けて屈曲して延びている。逆L字支柱81の延び先端面には、昇降部82が設けられている。昇降部82は、例えばZ軸方向に延びるレール及びボールネジである。レーザ測定器7は昇降部82を介して逆L字支柱81に支持されている。そして、このレーザ測定器7は、ピックアップポジション21を通るZ軸に沿って下方にレーザ光を照射する。
キャリア台3の載置面にレーザ光を照射する際、移送部5の代わりに、ピックアップポジション21の上方に常設されているレーザ測定器7を下降させる。移送部5はピックアップポジション21から待避しておく。一方、ピックアップポジション21において保持面51aの傾きを検出する際には、逆L字支柱81のレーザ測定器7を上方に待避させておく。実装ポジション22において移送部5を十分に近づけることができない場合には、実装ポジション22側に逆L字支柱81、昇降部82、及びレーザ測定器7を常設する。
以上の本素子実装装置1では、主にキャリア台3の載置面と実装台4の載置面を保持面51aに対して平行になるように調整するようにした。これに限らず、例えばキャリア台3に載置されるキャリアCと実装台4に載置される基板Sの各領域と保持面51aとの平行度を調整するようにしてもよい。
この場合、キャリアCと基板Sの領域ごとに複数点の距離をレーザ測定器7で測位しておき、領域毎に傾き角度を算出しておく。そして、領域内の素子Eをピックアップするごとに、その領域の傾き角度から平行度をチルト機構33で調整し、また領域内に素子Eを実装するごとに、その領域の傾き角度から平行度をチルト機構33で調整するようにしてもよい。これにより、キャリアCと基板Sの反りや厚みのバラツキ等を考慮し、素子をより良好にピックアップ及び実装することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
例えば、X軸駆動機構31、41、Y軸駆動機構32、42、及びチルト機構33等のように、素子実装装置1が備える駆動機構の具体例としてボールネジ機構を用いて説明したが、これに限られるものではなく、リニアモータ機構やベルト駆動機構等、他の公知の駆動機構を用いることができる。