JP7324817B2 - 研磨液組成物 - Google Patents
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Description
特許文献2には、有機酸と、含窒素複素環化合物と、酸化剤と、コロイダルシリカ等の砥粒と、ポリカルボン酸等の水溶性高分子とを含む化学機械研磨用水系分散体が開示されている。
特許文献3には、バリア除去を促進するための酸化剤と、砥粒と、配線金属の除去を低減するためのインヒビタ-と、少なくとも2つのカルボン酸官能基を含むポリマーの繰り返し単位の少なくとも1つを有するカルボン酸ポリマーとを含むケミカルメカニカルプラナリゼーション組成物が開示されている。
nは0~20であり、m+n=1~20の関係を満たす。但し、R1及びR2は同時に水素原子とはならない。
式(II)中、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は疎水性基であり、k及びlは0~20であり、k+l=1~20の関係を満たす。但し、R3及びR4は同時に水素原子とはならない。R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。但し、R5及びR6は同時に水素原子とはならない。
成分Bである化合物は、その末端に有する疎水性基と基板表面とが相互作用することで基板表面に吸着する。一方、マレイン酸もしくは無水マレイン酸を由来とする繰り返し単位、又は、マレイン酸、無水マレイン酸もしくはマレイン酸アルキルエステルを由来とする繰り返し単位を含む主鎖が基板表面のニッケル原子をキレートすることで、結果的に、基板表面の溶解性が向上し、研磨速度が向上すると考えられる。さらに、成分Bにより基板表面を均一にエッチングできるため、研磨後の基板表面のスクラッチを低減できると考えられる。また、基板がエッチングされることで、基板最表層が脆弱・軟質化し、研磨パッドと接触する際に軟質化部位がスムーズに切削されやすくなり、平坦性が向上し、うねりが低減できると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示において、基板の「うねり」とは、粗さよりも波長の長い基板表面の凹凸をいう。本開示において、例えば、60~160μmの波長により観測されるうねりを「超短波長うねり」といい、例えば、50~500μmの波長により観測されるうねりを「短波長うねり」という。研磨後の基板表面のうねり(超短波長うねり、短波長うねり)が低減されることにより、磁気ディスクドライブにおいて磁気ヘッドの浮上高さを低くすることができ、磁気ディスクの記録密度の向上が可能となる。昨今の磁気ディスクの高記録密度化により、「超短波長うねり」は特に重要な指標となっており、記録密度の向上だけでなく、長時間の使用における耐久性にも影響を与えることが分かっている。基板表面のうねり(超短波長うねり、短波長うねり)は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。本開示において、「うねりの低減」とは、超短波長うねり及び短波長うねりの少なくとも一方が低減されることをいう。
本開示の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子(以下「成分A」ともいう)としては、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、粉砕シリカ、それらを表面修飾したシリカ等が挙げられるが、コロイダルシリカが好ましい。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
本開示の研磨液組成物は、化合物(以下、「成分B」ともいう)を含む。成分Bは、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、一又は複数の実施形態において、マレイン酸又は無水マレイン酸を由来とする繰り返し単位を主鎖として含み、その少なくとも一方の末端に疎水性基(以下、「末端疎水性基」ともいう)を有する化合物(以下、「成分B1」ともいう)、及び、マレイン酸、無水マレイン酸又はマレイン酸アルキルエステルを由来とする繰り返し単位を主鎖として含み、その少なくとも一方の末端に末端疎水性基を有する化合物(以下、「成分B2」ともいう)から選ばれる少なくとも1種である。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
末端疎水性基は、特に限定されるものではないが、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香環含有炭化水基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が挙げられる。芳香環含有炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~3のアルキルベンジル基、ナフチル基、又は炭素数1~3のアルキルナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、好ましくは芳香環含有炭化水素基、より好ましくはベンジル基又は炭素数1~3のアルキルベンジル基であり、更に好ましくは炭素数1~3のアルキルベンジル基である。炭素数1~3のアルキルベンジル基としては、例えば、メチルベンジル基等が挙げられる。本開示において、「末端」とは、ポリマー主鎖の末端を示す。末端疎水性基は、一又は複数の実施形態において、ポリマーの構成単位(繰り返し単位)ではない。
成分Bが成分B1である場合、成分B1を構成する全構成単位中に占めるマレイン酸又は無水マレイン酸を由来とする繰り返し単位の含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
式(I)において、mは、研磨液組成物中における保存安定性確保、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。mは、同様の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。mは、同様の観点から、1以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましく、3以上10以下が更に好ましい。
式(I)において、nは、研磨液組成物中における保存安定性確保及び研磨特性確保の観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
成分Bが成分B2である場合、成分B2を構成する全構成単位中に占めるマレイン酸、無水マレイン酸又はマレイン酸アルキルエステルを由来とする繰り返し単位の含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
式(II)において、R5及びR6はそれぞれ独立に、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又はプロピル基である。但し、R5及びR6は同時に水素原子とはならない。
式(II)において、平均付加モル数がkである繰り返し単位の一部は、隣接する2つのカルボキシル基(-COOH)が脱水縮合して環構造を形成していてもよい。
式(II)において、kは、研磨液組成物中における保存安定性確保、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねり低減の観点から、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。kは、同様の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。kは、同様の観点から、1以上20以下が好ましく、2以上15以下がより好ましく、3以上10以下が更に好ましい。
式(II)において、lは、研磨液組成物中における保存安定性確保および研磨特性確保の観点から、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
成分B2の製造方法としては、例えば、マレイン酸又は無水マレイン酸とマレイン酸アルキルエステルをキシレン等の溶媒に溶解させ、重合開始剤を添加し、反応を開始する。所定の時間反応させ、所定の化合物を得ることにより製造できる。
本開示においてニッケル溶解促進定数Kは、下記式(III)により表されるものであり、具体的には、実施例に記載の方法により測定できる。
K=S/S0×100 (III)
式(III)中、S0は、ニッケルを含む被研磨基板を、過酸化水素 0.5質量%、リン酸 2.0質量%を含む水溶液100gに25℃で120分間浸漬したときの該水溶液中のニッケル溶解量(ng)を示す。Sは、前記被研磨基板を、成分B 0.1質量%、過酸化水素 0.5質量%及びリン酸 2.0質量%を含む水溶液100gに25℃で120分間浸漬したときの該水溶液中のニッケル溶解量(ng)を示す。
本開示の研磨液組成物は、酸(成分C)を含有する。本開示において、酸の使用は、酸又はその塩の使用を含む。成分Cは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。水系媒体が、水と溶媒との混合溶媒の場合、混合媒体全体に対する水の割合は、本開示の効果が妨げられない範囲であれば特に限定されなくてもよく、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。被研磨基板の表面清浄性の観点から、水系媒体としては、イオン交換水及び超純水が好ましい。本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A、成分B、成分C、及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
本開示の研磨液組成物は、研磨速度の確保、並びにスクラッチ及びうねりの更なる低減の観点から、酸化剤(以下、「成分D」ともいう)をさらに含有してもよい。成分Dは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
本開示の研磨液組成物は、スクラッチの更なる低減の観点から、複素環芳香族化合物(その塩も含む)(成分E)をさらに含有してもよい。成分Eは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
これらの中でも、スクラッチの更なる低減の観点から、成分Eとしては、1H-ベンゾトリアゾール(BTA)、1H-トリルトリアゾール、2-アミノベンゾトリアゾール、3-アミノベンゾトリアゾールがより好ましく、1H-ベンゾトリアゾール(BTA)が更に好ましい。
本開示の研磨液組成物は、スクラッチの更なる低減の観点から、脂肪族アミン化合物又は脂環式アミン化合物(成分F)をさらに含有してもよい。スクラッチの更なる低減の観点から、成分Fの分子内の窒素原子数又はアミノ基若しくはイミノ基の併せた数は、2個以上4個以下が好ましい。成分Fは1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、必要に応じてさらにその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、成分B以外の高分子化合物、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、界面活性剤、可溶化剤等が挙げられる。
本開示の研磨液組成物中の成分A、成分B及び成分Cの含有量は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の確保、並びに、スクラッチ及びうねり低減の観点から、成分Aの含有量が、SiO2換算で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であり、且つ、成分Bの含有量が、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.008質量%以上、そして、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.09質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以下であり、且つ、成分Cの含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度の確保及びスクラッチの更なる低減の観点から、3以下であって、2.5以下が好ましく、2以下がより好ましく、2未満が更に好ましく、1.9以下が更に好ましく、1.8以下が更に好ましく、1.7以下が更に好ましく、1.6以下が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましい。同様の観点から、本開示の研磨液組成物のpHは、0.5以上3以下が好ましく、0.5以上2.5以下がより好ましく、0.5以上2以下が更に好ましく、0.8以上1.9以下が更に好ましい。pHは、上述した酸(成分C)や公知のpH調整剤等を用いて調整することができる。本開示において、上記pHは、25℃における研磨液組成物のpHであり、pHメータを用いて測定でき、例えば、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して2分後の数値とすることができる。
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、成分B、成分C及び水系媒体と、さらに所望により任意成分(成分D、成分E、成分F及びその他の成分)とを公知の方法で配合することにより製造できる。すなわち、本開示は、その他の態様において、少なくとも成分A、成分B、成分C及び水系媒体を配合する工程を含む、研磨液組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、成分C及び水系媒体、並びに必要に応じて任意成分(成分D、成分E、成分F及びその他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。成分Aは、濃縮されたスラリーの状態で混合されてもよいし、水等で希釈してから混合されてもよい。成分Aが複数種類のシリカ粒子からなる場合、複数種類のシリカ粒子は、同時に又はそれぞれ別々に配合できる。成分Bが複数種類の化合物からなる場合、複数種類の化合物は同時に又はそれぞれ別々に配合できる。成分Cが複数種類の酸からなる場合、複数種類の酸は、同時に又はそれぞれ別々に配合できる。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。研磨液組成物の製造方法における各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
本開示における研磨液組成物中の各成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、各成分の配合量とみなすことができる。
本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を製造するためのキット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。本開示の研磨液キットとしては、例えば、成分A及び水系媒体を含むシリカ分散液と、成分B及び成分Cを含む添加剤水溶液と、を相互に混合されない状態で含み、これらが使用時に混合され、必要に応じて水系媒体を用いて希釈される、研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記シリカ分散液に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の全量でもよいし、一部でもよい。前記添加剤水溶液には、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の一部が含まれていてもよい。前記シリカ分散液及び前記添加剤水溶液にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分(成分D~F及びその他の成分)が含まれていてもよい。本開示の研磨液キットによれば、研磨速度を確保しつつ、研磨後の基板表面のスクラッチ及びうねりを低減できる研磨液組成物が得られうる。
被研磨基板は、一又は複数の実施形態において、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である。一又は複数の実施形態において、被研磨基板の表面を本開示の研磨液組成物を用いて研磨する工程の後、スパッタ等でその基板表面に磁性層を形成する工程を行うことにより磁気ディスク基板を製造できる。
一般に、磁気ディスクは、研削工程を経た被研磨基板が、粗研磨工程、仕上げ研磨工程を経て研磨され、記録部形成工程にて磁気ディスク化されて製造される。本開示における研磨液組成物は、磁気ディスク基板の製造方法における、被研磨基板を研磨する研磨工程、好ましくは仕上げ研磨工程に使用されうる。すなわち、本開示は、その他の態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、磁気ディスク基板の製造方法(以下、「本開示の基板製造方法」ともいう)に関する。本開示の基板製造方法は、とりわけ、垂直磁気記録方式用磁気ディスク基板の製造方法に適している。
本開示は、その他の態様として、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨することを含む、基板の研磨方法(以下、「本開示の研磨方法」ともいう)に関する。本開示の研磨方法を使用することにより、研磨後の基板表面のスクラッチ及びうねりが低減された、高品質の磁気ディスク基板を高収率で、生産性よく製造できるという効果が奏されうる。本開示の研磨方法における前記被研磨基板としては、上述のとおり、磁気ディスク基板の製造に使用されるものが挙げられ、なかでも、垂直磁気記録方式用磁気ディスク基板の製造に用いる基板が好ましい。本開示の研磨方法における、研磨の方法及び条件は、上述した本開示の基板製造方法と同じ方法及び条件とすることができる。
表1に示す化合物B1~B6には、以下のものを用いた。
B1:下記のようにして合成した、末端に疎水性基を有するマレイン酸系重合体(I)[末端にキシレン基(メチルベンジル基)を有するマレイン酸/無水マレイン酸共重合体、重量平均分子量:700](式(I)中、R1=水素原子、R2=キシレン基(メチルベンジル基)、m及びnは後述する「3.各パラメータの測定」の「(4)平均付加モル数m、n、k、l、及びモル比の測定」に示す通りである。)
B2:下記のようにして合成した、末端に疎水性基を有するマレイン酸系重合体(II)[末端にキシレン基(メチルベンジル基)を有するマレイン酸/マレイン酸ジエチル共重合体、重量平均分子量:700](式(II)中、R3=水素原子、R4=キシレン基(メチルベンジル基)、R5=エチル基、R6=エチル基、k及びlは後述する「3.各パラメータの測定」の「(4)平均付加モル数m、n、k、l、及びモル比の測定」に示す通りである。)
B3:ポリアクリル酸[花王株式会社製、重量平均分子量:30,000]
B4:アクリル酸/マレイン酸共重合体(モル比:83/17)[花王社製、商品名:カオーセラ2110、重量平均分子量:24,000]
B5:スチレンスルホン酸/マレイン酸共重合体(モル比:50/50)[アクゾノーベル社製、商品名:YE-920、重量平均分子量:20,000]
B6:マレイン酸/イソブチレン共重合体(モル比50/50)[クラレ社製、商品名:イソバン104、重量平均分子量:60,000]
攪拌羽根、温度計、ジムロート冷却器、50mLの容量の滴下ろうと、窒素ガスの吹込み管、バブラー管、を接続した300mLの容量の3つ口ガラスフラスコに無水マレイン酸(東京化成工業株式会社製、30g)、キシレン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬一級、100g)を加え、オイルバスを用いて100度に昇温し溶解させる。次に過酸化ベンゾイル(東京化成工業株式会社製、5g)をキシレン(20g)に溶解させ、上記の滴下漏斗に加える。窒素ガスを流し、ジムロート冷却器に水道水を流し、攪拌羽根で回転させながら、上記の滴下漏斗から過酸化ベンゾイル/キシレンを60分かけて均一な速度で滴下する。滴下後、100℃で3時間攪拌したのち、25℃に冷却する。ポリマーが沈殿物として得られるため、沈殿物を取り出し、水100gを加え溶解させる。次にエバポレーターを用いてキシレンを減圧除去することで、成分B1を得た。
<成分B2の合成例>
攪拌羽根、温度計、ジムロート冷却器、50mLの容量の滴下ろうと、窒素ガスの吹込み管、バブラー管、を接続した300mLの容量の3つ口ガラスフラスコに無水マレイン酸(東京化成工業株式会社製、30g)、マレイン酸ジエチル(東京化成工業株式会社製、2g)、キシレン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬一級、100g)を加え、オイルバスを用いて100℃に昇温し溶解させる。次に過酸化ベンゾイル(東京化成工業株式会社製、5g)をキシレン(20g)に溶解させ、上記の滴下漏斗に加える。窒素ガスを流し、ジムロート冷却器に水道水を流し、攪拌羽根で回転させながら、上記の滴下漏斗から過酸化ベンゾイル/キシレンを60分かけて均一な速度で滴下する。滴下後、100℃で3時間攪拌したのち、25℃に冷却する。ポリマーが沈殿物として得られるため、沈殿物を取り出し、水100gを加え溶解させる。次にエバポレーターを用いてキシレンを減圧除去することで、成分B2を得た。
(実施例1~6、実施例10~15、比較例1~5の研磨液組成物)
成分A(コロイダルシリカ)、成分B又は非成分B(表1に示す化合物B1~B6)、成分C(リン酸)、成分D(過酸化水素)、及びイオン交換水を配合して撹拌することにより、表2に示す実施例1~6、実施例10~15及び比較例1~5の研磨液組成物を調製した。各研磨液組成物中の各成分の含有量(有効量)は、表2に示すとおりである。イオン交換水の含有量は、成分A、成分B又は非成分B、成分C、及び成分Dを除いた残余である。
(実施例7~9、実施例16~18の研磨液組成物)
成分A(コロイダルシリカ)、成分B(表1に示す化合物B1、B2)、成分C(リン酸)、成分D(過酸化水素)、添加剤(成分E:BTA、成分F:HEP、その他の成分:BisS/PhS)、及びイオン交換水を配合して撹拌することにより、表2に示す実施例7~9及び実施例16~18の研磨液組成物を調製した。各研磨液組成物中の各成分の含有量(有効量)は、表2に示すとおりである。イオン交換水の含有量は、成分A、成分B、成分C、成分D、及び添加剤(成分E、成分F、その他の成分)を除いた残余である。
リン酸[和光純薬工業社製、特級](成分C)
過酸化水素水[濃度35質量%、ADEKA社製](成分D)
BTA[1,2,3-ベンゾトリアゾール、東京化成工業社製](成分E)
HEP[N-ヒドロキシエチルピペラジン、和光純薬工業社製](成分F)
BisS/PhS[ビスフェノールS/フェノールスルホン酸ホルマリン縮合物、小西化学社製、比率:20/80、重量平均分子量:5,000](その他の成分)
(1)コロイダルシリカ(成分A)の平均粒径
研磨液組成物の調製に用いた成分A(コロイダルシリカ)と、成分C(リン酸)とをイオン交換水に添加し、撹拌することにより、標準試料を作製した。標準試料中における成分A及び成分Cの含有量はそれぞれ、1質量%、2質量%とした。この標準試料を動的光散乱装置(大塚電子社製DLS-6500)により、同メーカーが添付した説明書に従って、200回積算した際の検出角90°におけるCumulant法によって得られる散乱強度分布の面積が全体の50%となる粒径を求め、コロイダルシリカの平均粒径とした。結果を表2に示す。
成分B及び非成分Bの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により下記条件で測定した。結果を表1及び表2に示す。
<測定条件>
カラム:TSKgel GMPWXL+TSKgel GMPWXL(東ソー社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=7/3(体積比)
温度:40℃
流速:1.0mL/分
試料サイズ:2mg/mL
検出器:RI
標準物質:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(重量平均分子量:1,100、3,610、14,900、152,000、POLMER STANDARDS SERVICE社製)
研磨液組成物のpHは、pHメータ(東亜ディーケーケー社製)を用いて25℃にて測定し、電極を研磨液組成物へ浸漬して2分後の数値を採用した。結果を表2に示す。
[成分B1の平均付加モル数m、n及びモル比の測定]
測定試料(成分B1)20mgをメタノール10mLに溶解させ、下記条件のもと液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)による測定を行った。測定の結果、成分B1は、式(I)においてm=3、n=1の化合物と、式(I)においてm=4、n=0の化合物と、式(I)においてm=5、n=0の化合物と、式(I)においてm=6、n=0の化合物との混合物であった。それぞれのピーク強度から成分B1のm、nの含有比率を計算すると、成分B1における、平均付加モル数がmである繰り返し単位の含有比率は98.5モル%、平均付加モル数がnである繰り返し単位の含有比率は1.5モル%だった。
[成分B2の平均付加モル数k、l及びモル比の測定]
測定試料(成分B2)20mgをメタノール10mLに溶解させ、下記条件のもと液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)による測定を行った。測定の結果、成分B2は、式(II)においてk=3、l=1の化合物と、式(II)においてk=4、l=1の化合物と、式(II)においてk=5、l=1の化合物との混合物であった。それぞれのピーク強度から成分B2のk、lの含有比率を計算すると、成分B2における、平均付加モル数がkである繰り返し単位の含有比率は96モル%、平均付加モル数がlである繰り返し単位の含有比率は4モル%だった。
<分析条件>
装置: Thermo 社製Q-Exactive
カラム: L-column2 ODS(2.1 × 150 mm)
A: 10 mM 酢酸アンモニウム水溶液
B: 10 mM 酢酸アンモニウムメタノール溶液
オーブン温度: 40℃
注入量: 5 μL
流量:0.2 mL/min
B%(min): 5(0)-5(3)-100(15)-100(20)-5(20.1)-5(30)
検出器:MS(ESI) positive, negative
スキャン範囲: m/z 500-1000
前記のように調製した実施例1~18及び比較例1~5の研磨液組成物を用いて、以下に示す研磨条件にて下記被研磨基板を研磨した。次いで、研磨速度及びスクラッチ数を測定した。その結果を表2に示す。
被研磨基板として、Ni-Pメッキされたアルミニウム合金基板を予めアルミナ研磨材を含有する研磨液組成物で粗研磨した基板を用いた。この被研磨基板は、厚さが0.8mm、外径が95mm、内径が25mmであり、AFM(Digital Instrument NanoScope IIIa Multi Mode AFM)により測定した中心線平均粗さRaが1nmであった。Ni-Pメッキ中におけるNiとPの比率は質量比で88:12であった。
研磨試験機:スピードファム社製「両面9B研磨機」
研磨パッド:フジボウ社製スエードタイプ(発泡層:ポリウレタンエラストマー、厚さ0.9mm、平均開孔径10μm)
研磨液組成物供給量:100mL/分(被研磨基板1cm2あたりの供給速度:0.076mL/分)
下定盤回転数:32.5rpm
研磨荷重:13.0kPa
研磨時間:6分間
基板の枚数:10枚
[研磨速度の評価]
研磨前後の各基板1枚当たりの重さを計り(Sartorius社製、「BP-210S」)を用いて測定し、各基板の質量変化から質量減少量を求めた。全10枚の平均の質量減少量を研磨時間で割った値を研磨速度とし、下記式により算出した。研磨速度の測定結果を、比較例1を100とした相対値として表2に示す。
質量減少量(g)={研磨前の質量(g)- 研磨後の質量(g)}
研磨速度(mg/min)=質量減少量(mg)/ 研磨時間(min)
測定機器:KLA・テンコール社製、「Candela OSA7100」
評価:研磨試験機に投入した基板のうち、無作為に4枚を選択し、各々の基板を10,000rpmにてレーザーを照射してスクラッチ数を測定した。その4枚の基板の各々両面にあるスクラッチ数(本)の合計を8で除して、基板面当たりのスクラッチ数を算出した。スクラッチ数の評価結果を、比較例1を100とした相対値として表2に示す。
研磨後の10枚の基板から任意に3枚の基板を選択し、選択した各基板の両面を任意の
4点(計24点)について、下記の条件で測定した。その24点の測定値の平均値を基板
の超短波長うねり及び短波長うねりとして算出した。そして、比較例1を100とした相対値を表2に示した。
<測定条件>
測定機:New View 7300(Zygo社製)
レンズ:2.5倍
ズーム:0.5倍
超短波長領域:60~160μm
短波長領域:50~500μm
解析ソフト:Zygo Metro Pro(Zygo社製)
富士フィルム和光純薬株式会社製のニッケル標準液(Ni1000)をイオン交換水で希釈することによって、ニッケルの濃度を10ppm、20ppm、50ppmとしたニッケル水溶液を調製し、下記の分析条件で測定を行うことで検量線を作成した。
次に成分B 0.1質量%、過酸化水素0.5質量%、リン酸2.0質量%を含む水溶液I(pH1.6、残部はイオン交換水)100gに対して実施例に記載の被研磨基板(表面積は131.9cm2)1枚を25℃、常圧で120分間、前記基板全体に均一に液が接触するようにして撹拌せずに開放系で静置浸漬した。120分経過後、前記基板を取り出し、残った水溶液Iに含まれるニッケルの量を下記の分析条件で測定し、作成した検量線を用いて補正を行うことで水溶液I中のニッケル濃度を測定した。得られたニッケル濃度と水溶液Iの質量から、水溶液I中のニッケル溶解量(ng)を算出し、これをS(ng)とした。
また、過酸化水素0.5質量%、リン酸2.0質量%を含む水溶液II(pH1.6、残部はイオン交換水)100gに対して上記と同様の条件で実験を行い、水溶液II中のニッケル溶解量(ng)を算出し、これをS0(ng)とした。
そして、ニッケル溶解促進定数Kを下記式から算出し、比較例1を100とした相対値を表2に記載した。
K=S/S0×100
<分析条件>
装置:ICP-OES 5110(Agilent Technologies)
リードタイム:5s
補助ガス:1.0 L/min
RFパワー:1.2 kW
ネブライザー流量:0.7 L/min
安定化時間:15s
プラズマ流量:12.0 L/min
観測モード:アキシャル
観測元素:Ni
観測波長:231.604nm
Claims (10)
- シリカ粒子(成分A)と、化合物(成分B)と、酸(成分C)と、水系媒体と、を含有し、
成分Bは、下記式(I)又は下記式(II)で表される化合物であり、
pHが3以下である、研磨液組成物。
式(II)中、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子又は芳香環含有炭化水素基であり、k及びlは0~20であり、k+l=1~20の関係を満たす。但し、R3及びR4は同時に水素原子とはならない。R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。但し、R5及びR6は同時に水素原子とはならない。 - 成分Bは、下記式(III)で表されるニッケル溶解促進定数Kが105以上である、請求項1に記載の研磨液組成物。
K=S/S0×100 (III)
式(III)中、S0は、ニッケルを含む被研磨基板を、過酸化水素 0.5質量%及びリン酸 2.0質量%を含む水溶液100gに25℃で120分間浸漬したときの該水溶液中のニッケル溶解量(ng)を示す。Sは、前記被研磨基板を、成分B 0.1質量%、過酸化水素 0.5質量%及びリン酸 2.0質量%を含む水溶液100gに25℃で120分間浸漬したときの該水溶液中のニッケル溶解量(ng)を示す。 - 成分Bの重量平均分子量は200以上2,000以下である、請求項1又は2に記載の研磨液組成物。
- 成分Bの含有量は、0.001質量%以上0.1質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の研磨液組成物。
- 成分Aの動的光散乱法により測定される散乱強度分布に基づく平均粒径は100nm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の研磨液組成物。
- 酸化剤をさらに含有する、請求項1から5のいずれかに記載の研磨液組成物。
- 複素環芳香族化合物、脂肪族アミン化合物及び脂環式アミン化合物から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する、請求項1から6のいずれかに記載の研磨液組成物。
- 前記研磨液組成物が磁気ディスク基板用研磨液組成物である、請求項1から7のいずれかに記載の研磨液組成物。
- 請求項1から8のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨する研磨工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法。
- 請求項1から8のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨基板を研磨することを含み、前記被研磨基板は、磁気ディスク基板の製造に用いられる基板である、基板の研磨方法。
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