(実施形態1)
(1)概略
図1、図2及び図3は、本実施形態の耐火構造1として外壁構造2を示す。外壁構造2は、化粧材10と耐火材20と下地材30と断熱材40及び支持材50を備える。化粧材10と耐火材20と下地材30と断熱材40及び支持材50は、この順で前後方向に並んでいる。すなわち、断熱材40及び支持材50の前方に下地材30が配置されている。また下地材30の前方に耐火材20が配置されている。さらに耐火材20の前方に化粧材10が配置されている。本明細書において、前記前後方向は外壁構造2の厚み方向であって、屋内外方向と同じである。また前記前後方向と直交する方向で略水平な方向を左右方向とし、前記前後方向と直交する方向で略鉛直な方向を上下方向とする。
(2)化粧材10
化粧材10は耐火構造1の外装材であって、化粧材10によって耐火構造1が化粧される。外壁構造2の場合、化粧材10は外壁材であって、例えば、窯業系サイディングである。窯業系サイディングは、セメントを含む水硬性材料の硬化物である。化粧材10は、略平板状に形成されるが、その表面に凹凸模様や塗膜を備えて意匠性を有している。化粧材10の厚みは、例えば、10mm以上30mm以下に形成されるが、これに限定されるものではない。化粧材10の形状も任意であるが、例えば、正面視(前方から見た場合)で矩形板状に形成される。化粧材10は実を有している。化粧材10の上端部には実凹部101が設けられている。化粧材10の下端部には実凸部102が設けられている。上下に隣接して施工される化粧材10は実凹部101と実凸部102とが嵌合することにより接続される。なお、化粧材10としては、金属板を成形して得られる金属系サイディング材であってもよい。
(3)耐火材20
耐火材20は耐火構造1の耐火性を向上させる。耐火材20は火災の熱で発泡して、火災前の初期状態よりも体積を増加させる。ここで、耐火性とは、熱が前後方向に伝わるのを抑制することを意味する。
耐火材20は複数のシート部材27で形成することができる。シート部材27は、例えば、正面視で矩形状の発泡性耐火シートで形成することができ、この場合、合成樹脂、多価アルコール、及び難燃性発泡剤などを含有するものが好ましい。
合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン/酢ビ樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸/アクリル樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、ポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。なお、ポリオレフィンとしてはポリエチレン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等が例示される。
難燃性発泡剤としては、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マグネシウムリン酸塩等のリン酸塩が好適に用いられるが、スルファミン酸塩(スルファミンアンモニウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アンモニウム等)等を例示することができる。
耐火材20における合成樹脂、多価アルコール、難燃性発泡剤の含有比率は、合成樹脂100質量部に対して、多価アルコールが10質量部以上50質量部以下、難燃性発泡剤が50質量部以上200質量部以下であることが好ましい。シートの耐火材20の厚みは、0.1mm以上5mm以下であることが好ましくは、0.3mm以上3mm以下であることがより好ましく、さらに0.4mm以上1mm以下が好ましい。
発泡後の耐火材20の遮熱性を高めるに、耐火材20は発泡前の体積に比べて発泡後の体積が10~30倍の発泡倍率であることが好ましい。例えば、化粧材10と下地材30の間に形成される15mmの通気層に、厚み0.6mmのシート状の耐火材20を用いることによって、発泡倍率が25倍となり、比較的安価に耐火性を高められる。また耐火性能を高める部位には、例えば、1.2mmのシート状の耐火材20を用いて発泡倍率12.5倍として使用すると更に耐火性が高まる。
(4)下地材30
下地材30は不燃性であり、また平板状で、耐火材20よりも硬質に形成される。下地材30は複数の下地部材35で形成される。下地部材35としては、例えば、正面視で矩形状で、石膏ボード及び珪酸カルシウム板などが使用される。下地部材35の厚みは、例えば、5mm以上30mm以下にすることができ、好ましくは9mm以上21mm以下にすることができるが、これに限定されない。下地部材35は、建築基準法第68条の26第1項の規定に基づき、同法第2条第九号及び同法施行令第108条の2(不燃材料)の規定に適合するものであることについて、国土交通大臣の認定を受けているものが好ましい。
(5)断熱材40
断熱材40は耐火構造1の断熱性を向上させる。すなわち。耐火構造1を前後方向で通過する熱量を低減するためのものである。ここで、断熱性とは熱の出入りを低減する性能のことを意味する。
断熱材40としては、耐火性及び不燃性の高い材料で形成されていることが好ましい。例えば、断熱材40としては人造鉱物繊維系断熱材(例えば、ロックウール又はグラスウール)などの繊維系断熱材を材料として形成される。断熱材40の形態はボード又は綿状などであるが、これに限定されるものではない。断熱材40の密度は10kg/m3以上32kg/m3以下、好ましくは15kg/m3以上25kg/m3以下で、厚みが50mm以上150mm以下、好ましくは80mm以上120mm以下である。断熱材40の密度及び厚みが上記所定の範囲であれば、断熱性能が損なわれにくく、且つ熱が内部に保留されるのを低減することができる。
(6)支持材50
図2に示すように、支持材50は、化粧材10及び下地材30が取り付けられて、これらを支持する。支持材50は上下方向に長い部材であって、例えば柱及び間柱などとして形成される。支持材50は金属製であって、例えば、C形鋼(リップ付き溝形鋼)を使用することができる。この他に、支持材50としては、各種の断面形状の形鋼が使用でき、例えば、角型鋼管、溝形鋼、H形鋼、ハット形鋼などが挙げられる。
支持材50は取付部51を有している。取付部51は上下方向に長い平板状に形成されている。取付部51には、下地材30が取り付けられる。支持材50は対向部52を有している。対向部52は上下方向に長い平板に形成されている。対向部52は取付部51の後方に位置し、取付部51と対向している。支持材50は結合部53を有している。結合部53は上下方向に長い平板に形成されている。結合部53の短手(幅)方向の一端は取付部51の短手(幅)方向の一端と全長にわたって結合されている。結合部53の短手(幅)方向の他端は対向部52の短手(幅)方向の一端と全長にわたって結合されている。取付部51の結合部53側とは反対側の端部、及び対向部52の結合部53側とは反対側の端部には、補強部55が支持材50の上下方向の全長にわたって設けられている。
(7)全体構成
耐火構造1として形成される外壁構造2は以下のように構成される。
図4に示すように、複数の支持材50が基礎63の上側に土台64を介して設けられている。複数の支持材50は一つずつ所定の間隔を介して左右方向に並べられている。また二つ以上の支持材50を組み合わせて配置してもよい。二つの支持材50を組み合わせる場合は、各結合部53の外面同士を接合することができる。
複数の支持材50の前方には複数の下地部材35が取り付けられる。複数の下地部材35は上下方向及び左右方向に並べて配置されている。上下方向に隣接する下地部材35は、上側の下地部材35の下端と下側の下地部材35の上端とが突付けて取り付けられている。また左右方向に隣接する下地部材35は、右側の下地部材35の左端と左側の下地部材35の右端とが突付けて取り付けられている。すなわち、上下に並ぶ下地部材35は隣接部分31を介しては隣接し、左右方向に並ぶ下地部材35は隣接部分32を介しては隣接している。各下地部材35はビスや釘などの固定具33で支持材50の取付部51に取り付けて固定される。
左右方向に並ぶ下地部材35の隣接部分32は、支持材50の取付部51の前方に位置させることが望ましい。これにより、火災時に下地部材35が変形し、隣接部分32に隙間が生じても、取付部51により塞がれているため、耐火性能を向上させることができる。また、本実施形態では、矩形状の下地部材35を横長に施工しているが、縦長に施工しても良いものである。
断熱材40は下地材30の後面に配置される。複数の断熱材40はそれぞれ隣り合う支持材50の間に配置される。断熱材40は接着剤などで下地材30の後面に接着されて固定されてもよい。また断熱材40は接着の他に、粘着テープで下地材30に固定することも可能である。なお、断熱材40は、下地材30の裏面に密着するのが好ましい。これにより、下地材30と断熱材40との間に上下に連通する空間が形成されず、下地材30から伝わる熱が下地材30と断熱材40との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また支持材50が木材である場合は、タッカー止めなどで支持材50に固定してもよい。また、断熱材40は粘着テープで支持材50に固定することも可能である。
図5に示すように、下地材30の前側には耐火材20が配置される。耐火材20は複数のシート部材27で形成されているため、複数のシート部材27が上下左右に並べて配置される。シート部材27はタッカーなどの固定具23で下地材30に固定される。ここで、図6に示すように、シート部材27の表面にはマーク部22が設けられている。マーク部22はシート部材27を下地材30に取り付ける際の目安になる。例えば、マーク部22は左右方向に長く線状に形成されており、作業者がマーク部22と隣接部分31とを位置合わせしながら固定具23でシート部材27を固定していく。またマーク部22を目安にして隣り合うシート部材27の重ね寸法を調整することもできる。またマーク部22を破線で形成し、その破線の間隔を例えば100mmピッチなど等間隔にすることができる。この場合、破線の間隔を目安にしてシート部材27を施工することができる。さらにシート部材27の幅方向中央を中心として線対称となる位置にもマーク部22の破線をもう一方のマーク部22の破線と幅方向に一致して形成し、線対称となるマーク部22の破線同士を一致させ、シート部材27を直角での切断加工する際の目安にすることもできる。
図9Aに示すように、上下に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応する位置において、厚肉部21が形成されている。厚肉部21は、シート部材27の端部26同士を重ねて形成している。またこれに限られず、例えば、図9Bに示すように、シート部材27の端部26を折り返すことにより、シート部材27が二重に重なった部分を厚肉部21として形成することができる。また図9Cに示すように、耐火材20の表面に短片状の他の耐火材(耐火シート部材)25を重ね、二枚のシート状の耐火材20が重なった部分を厚肉部21として形成することができる。なお、この他、例えばシート状の耐火材20の一部を他の部分よりも厚肉に形成し、この厚肉部分が下地部材35の隣接部分31に設けられてもよい。また、上記厚肉部21は、上下に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応する部分だけではなく、左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32に対応する部分に形成されてもよい。すなわち、厚肉部21は、耐火材20において、隣接する下地部材35同士の境目に対応する部分に形成され、少なくとも支持材50と対向しない部分に設けられるのが好ましい。
なお、耐火材20(シート部材27)としてロール状の長尺シートを一例として説明してきたが、これに限らず、下地部材35より僅かに大きなサイズの耐火材20(シート部材27)であっても良い。例えば、図6Bに示すように、矩形状の下地部材35と矩形状のシート部材27からなり、下地部材35を横長に施工する場合で説明する。矩形状の下地部材35と矩形状のシート部材27は、長辺が略同寸法、短辺が矩形状の下地部材35より矩形状のシート部材27を長くしている。一例として、矩形状の下地部材35が1820mm(長辺)×606mm(短辺)、矩形状のシート部材27が1820mm(長辺)×700mm(短辺)である。この矩形状の下地部材35と矩形状のシート部材27を用いた施工について説明する。なお、矩形状の下地部材35および以下に説明する透湿防水シート65の施工については、同様であるので省略する。
支持材50の前方に複数の矩形状の下地部材35が縦横突き付けて取り付けられており、左右方向に並ぶ下地部材35の隣接部分32は、支持材50の取付部51の前方に位置させることが望ましい。そして、矩形状の下地部材35の前方に矩形状のシート部材27をタッカーで固定する。その際、矩形状の下地部材35の短辺と矩形状のシート部材27の短辺とを略一致させる。一方、矩形状の下地部材35の長辺と矩形状のシート部材27の長辺とは一致しておらず、矩形状のシート部材27の上下の長辺がそれぞれ、矩形状の下地部材35の上下の長辺から上下に略同寸法はみださせる。すなわち、矩形状のシート部材27の上端部26aが矩形状の下地部材35の上側の長辺よりも上方に位置し、矩形状のシート部材27の下端部26bが矩形状の下地部材35の下側の長辺よりも下方に位置する。なお、最下部の矩形状のシート部材27を施工する場合は、矩形状の下地部材35の下側の長辺は、矩形状のシート部材27の下側の長辺と一致させて、矩形状のシート部材27を矩形状の下地部材35の上側の長辺よりも上方にのみはみださせてもよい。このように矩形状のシート部材27を矩形状の下地部材35の表面に施工するにあたっては、上記と同様に、矩形状のシート部材27に設けたマーク部22を下地材30に取り付ける際の目安にすることができる。なお、図7に示すように、左右方向に並ぶシート部材27の隣接位置(境目)29が支持材50及び左右方向に並ぶ下地部材35の隣接部分32から左右にずれていてもよい。
矩形状のシート部材27は、下段から上方に施工していくことで、はみだし部分を前方(表面側)2枚重ねることができる。この重なり部分は厚肉部21として形成され、矩形状の下地部材35の隣接部分31の前方に位置することになり、耐火性を向上することができる。また、本実施形態では、矩形状の下地部材35の短辺の突き付け部分と矩形状のシート部材27の短辺の突付け部分を前後方向で略一致させたが、これに限らず、それぞれの突き付け部分を左右方向に位置ずれさせても良い。
このように、下地部材35とシート部材27のサイズを近いものにすることで、施工、梱包、運搬などを向上させることができる。なお、本実施形態では矩形状の下地部材35を横長に施工する場合について説明したが、縦長に施工しても良い。この場合、矩形状のシート部材27は、短辺が矩形状の下地部材35の短辺と略同寸法であり、長辺が矩形状の下地部材35の長辺より長くしている。
上記では厚肉部21を設けることにより、耐火材20における下地部材35の隣接部分31,32に対応する箇所が、他の箇所よりも耐火性が高くなる高耐火部24を形成したが、これに限られない。すなわち、高耐火部24は耐火材20の一部に他の部分よりも耐火性が高ければよい。したがって、耐火材20の上記隣接部分31,32に対応する箇所が、例えば、他の箇所よりも熱伝導率が低ければよく、耐火材20の上記隣接部分31,32に対応する箇所に、他の箇所よりも熱伝導率が低い材質の耐火材が設けられて、熱伝導率が低い材質の耐火材を設けた部分が高耐火部24として形成されてもよい。または、耐火材20が発泡シート材の場合、耐火材20の上記隣接部分31,32に対応する箇所が他の箇所よりも厚肉でなくてもよく、例えば、発泡時、耐火材20の上記隣接部分31,32に対応する箇所における独立気泡の割合が、他の箇所における独立気泡の割合よりも高くなるよう構成されることにより、耐火材20の上記隣接部分31,32に対応する箇所を高耐火部24として形成することができる。また、例えば、耐火材20の上記隣接部分31,32に対応する箇所における発泡倍率が、他の箇所における発泡倍率よりも高くなるように構成されてもよい。
耐火材20を下地材30に全面にわたって取り付けた後、透湿防水シート65を耐火材20の前側に取り付ける。透湿防水シート65は湿気を通し、水滴は通さないシートである。透湿防水シート65もタッカーなどの固定具で取り付けられる。透湿防水シート65は耐火材20の全面にわたって取り付けられる。透湿防水シート65の前側には複数の留め具80が配置される。留め具80は透湿防水シート65の前面に配置され、ビスなどの固定具86で支持材50に固定される。
図8に示すように、化粧材10は留め具80により透湿防水シート65の前方に取り付けられる。化粧材10は複数配置され、各化粧材10が複数の留め具80に保持される。すなわち、化粧材10の上端はその化粧材10の上側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持され、化粧材10の下端はその化粧材10の下側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持される。また上下に隣接する化粧材10は実凸部102と実凹部101の実接合で接続される。また、図2及び図8に示すように、左右方向に隣接する化粧材10の間には目地材81が配置されている。目地材81の前側にはシーリング材83が設けられている。また最も下側の化粧材10の下方には水切り材84が設けられている。そして、化粧材10の後方には通気層85が形成されている。すなわち、化粧材10の後面と透湿防水シート65の前面との間に通気層85が形成される。
隣接する化粧材10の目地と、隣接する下地部材35の目地とは、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。すなわち、左右方向に隣接する化粧材10の間のシーリング材83の位置と、左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。また上下方向に隣接する化粧材10の隣接部分11の位置と、上下方向に隣接する下地部材35の隣接部分31の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。この場合、隣接する化粧材10の目地及び隣接部分11に前方から炎が侵入しても、その炎が隣接する下地部材35の目地及び隣接部分31に直接侵入しにくくなって、耐火性を向上させることができる。ただし、左右方向に隣接する化粧材10の目地と、左右方向に隣接する下地部材35の目地とが、正面視において、支持材50に一致する場合は、両目地をずらさなくてもよい。
上記のように形成される耐火構造1(外壁構造2)では、耐火材20を備えることにより、火災発生の際に、化粧材10の屋外側から加熱されて、耐火材20が発泡して膨張することにより通気層85内で膨張する。すなわち、通気層85は耐火材20が発泡して膨張するための発泡空間88として形成される。そして、これにより、発泡膨張した耐火材20の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋外から屋内へと侵入するのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができると共に、発泡膨張した耐火材20によって化粧材10と下地材30との間に上下に連通する空間が形成されず、熱がこれら化粧材10と下地材30との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また化粧材10の後方に耐火材20を設けることにより、耐火材20に高い耐候性や耐水性は要求されず、耐火性を向上させることができる。また耐火材20は、火災がなければ薄い材料なので、通常時は通気層85を阻害せず、また、耐火構造1の前後方向の寸法(化粧材10から下地材30までの寸法)は、従来のものと比べても大きくなりにくい。さらに断熱材40を備えることにより、下地材30よりも後方(屋内側)に熱が伝わりにくくなり、これにより、耐火性を向上させることができる。
(実施形態2)
図10に示す本実施形態の耐火構造1は、支持材50に充填材54を設けたものである。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成と適宜組み合わせて適用可能である。
充填材54は支持材50の内側の空間である中空部56に充填することによって、中空部56は充填材54で閉塞される。すなわち、支持材50の取付部51と対向部52と結合部53及び補強部55で囲まれる空間である中空部56の上下方向の連通を充填材54で閉塞する。このように支持材50の中空部56を充填材54で充填して閉塞することによって、中空部56を通じて熱が移動することが少なくなり、耐火性を向上させることができる。
充填材54は断熱材40を延長して形成することができる。すなわち、充填材54は断熱材40と同じ材料のロックウール又はグラスウールなどの繊維系断熱材で形成される。この場合、火災発生時の熱が充填材54で断熱されて伝わりにくくなり、屋内側への熱の伝わりが低減されて耐火性を向上させることができる。また断熱材40を下地材30へ取り付ける作業と一連の作業で、充填材54も施工することができ、部材の共通化や作業の簡素化によるコストダウンを図ることができる。
(実施形態3)
本実施形態に係る耐火構造200は、下地材30よりも屋内側(室内側)の構成が実施形態1または2に係る耐火構造1と相違する。以下、実施形態1または2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。実施形態3で説明した構成は、実施形態1または2で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
図13及び図14に示すように、本実施形態に係る耐火構造200は、室内側から室外側に向かって、内側耐火ボード210、金属製の支持材220、外側耐火ボード230、熱発泡性シート240、及び発泡空間250を介して化粧材260を順次配置する。
ここで、本実施形態における「室内側」及び「室外側」とは、実施形態1及び2における「屋内側」及び「屋外側」に、各々、相当する。
内側耐火ボード210は、実施形態1及び2における「下地部材35」と同等のものである。
金属製の支持材220は、縦支持材221と、ランナー222と、内側縦支持材(スタッド)223とを備える。縦支持材221は、実施形態1及び2における「支持材50」と同等のものであり、支持材50と同様に施工される。なお、図13ではC形鋼を用いているが、これに限られることなく角型鋼管など一般に用いるものであってもよい。
ランナー222は、縦支持材221よりも室内側に位置する。ランナー222は上ランナー(図示省略)と下ランナー225とを備えている。上ランナーは天井面に配置されている。下ランナー225は床面に配置されている。上ランナーは下方に開口する断面略コ字状のチャンネル材(レール材)で形成される。下ランナー225は上方に開口する断面略コ字状のチャンネル材(レール材)で形成されている。各ランナー222は、耐火構造200の室内側面又は室外側面を正面視した場合の左右方向(略水平方向)に長く形成されている。なお、上ランナーは天井面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。下ランナーは床面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。
内側縦支持材223は複数あって、各内側縦支持材223は側方に開口する断面略コ字状のチャンネル材(レール材)で形成されている。各内側縦支持材223は上下方向(略鉛直方向)に長く形成されている。各内側縦支持材223はランナー222に端部が保持されている。各内側縦支持材223の上端部は上ランナーに挿入されて保持されている。各内側縦支持材223の下端部は下ランナー225に挿入されて保持されている。なお、内側縦支持材223は断面略ロ字状であってもよい。
外側耐火ボード230は、実施形態1及び2における「下地部材35」と同等のものであり、下地部材35と同等に施工される。なお、外側耐火ボード230としては、好ましくは、厚さ15mm以上の石膏ボードである。
熱発泡性シート240は、実施形態1及び2における「シート部材27」と同等のものであり、シート部材27と同等に施工される。なお、シート部材27のサイズとしては、外側耐火ボード230の外形寸法よりも一回り大きく、縦辺および横辺の重ね合わせが可能であればよい。
発泡空間250は、実施形態1及び2における「発泡空間88」と同等のものであり、発泡空間88と同等に形成される。
化粧材260は、実施形態1及び2における「化粧材10」と同等のものであり、化粧材10と同等に形成される。
本実施形態の耐火構造200は、実施形態1及び2の構造から、下地材30よりも屋内側(室内側)にある断熱材40を除いた構成で、かつ、ランナー222と内側支持材223とを付加した構成である。その他の構成においては、本実施形態の耐火構造200と実施形態1及び2の耐火構造1とはほぼ同等である。
本実施形態の耐火構造200は、複数の縦支持材221が基礎63の上側に土台64を介して設けられている。複数の縦支持材221は一つずつ所定の間隔を介して左右方向に並べられている。複数の縦支持材221の前方(室外側)には複数の外側耐火ボード230が取り付けられる。複数の外側耐火ボード230は上下方向及び左右方向に並べて配置されている。上下方向に隣接する外側耐火ボード230は、上側の外側耐火ボード230の下端と下側の外側耐火ボード230の上端とが突付けて取り付けられている。また左右方向に隣接する外側耐火ボード230は、右側の外側耐火ボード230の左端と左側の外側耐火ボード230の右端とが突付けて取り付けられている。各外側耐火ボード230はビスや釘などの固定具で縦支持材221の取付部51に取り付けて固定される。複数の外側耐火ボード230により、図4に示す場合と同様の下地材30が形成される。
左右方向に並ぶ外側耐火ボード230は縦辺231同士を突付けて縦辺突付け部234が形成される。縦辺突付け部234は、縦支持材221の取付部51の前方に位置させることが望ましい。これにより、火災時に外側耐火ボード230が変形し、縦辺突付け部234に隙間が生じても、取付部51により塞がれているため、耐火性能を損なわないようにすることができる。なお、本実施形態では、矩形状の外側耐火ボード230を横長に施工しているが、縦長に施工してもよい。 縦支持材221に固定した外側耐火ボード230の室外側には、図5に示す場合と同様にして、熱発泡性シート240が配置される。熱発泡性シート240は上下左右に並べて配置される。熱発泡性シート240はタッカーなどの固定具で外側耐火ボード230に固定される。ここで、熱発泡性シート240の表面には、図6及び図7に示されているマーク部22と同様のマーク部が設けられていることが好ましい。これにより、熱発泡性シート240を外側耐火ボード230に取り付ける際の目安になる。
上下に隣接する外側耐火ボード230の横辺突付け部233に対応する位置において、上下に位置する熱発泡性シート240の横辺端部241同士を重ね合わせる。これにより、上記厚肉部21が形成されている。厚肉部21の上下方向の寸法(横辺端部241同士を重ね合わせ寸法)L1は、90mm以上とすることができる。上記厚肉部21は、上下に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分に対応する部分だけではなく、左右方向に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分に対応する部分にも形成されてもよい。厚肉部21は、上下方向はもちろんのこと左右方向に隣接する外側耐火ボード230同士の境目(突付け部分)に対応する部分に形成されてもよい。
図12に示す場合と同様に、矩形状の外側耐火ボード230の長辺と矩形状の熱発泡性シート240の長辺とは一致しておらず、矩形状の熱発泡性シート240の上下の長辺がそれぞれ、矩形状の外側耐火ボード230の上下の長辺から上下に略同寸法はみださせることができる。この場合、矩形状の熱発泡性シート240の上端部が矩形状の外側耐火ボード230の上側の長辺よりも上方に位置し、矩形状の熱発泡性シート240の下端部が矩形状の外側耐火ボード230の下側の長辺よりも下方に位置する。
なお、最下部の矩形状の熱発泡性シート240を施工する場合は、矩形状の外側耐火ボード230の下側の長辺は、矩形状の熱発泡性シート240の下側の長辺と一致させて、矩形状の熱発泡性シート240を矩形状の外側耐火ボード230の上側の長辺よりも上方にのみはみださせてもよい。また最下部の熱発泡性シート240の室外側には、土台水切り84を配置し、土台水切り84の上部の室外側に、防水層270の下端部を位置させる。防水層270は透湿防水性シート271を熱発泡性シート240の室外側にタッカーなどの固定具で固定して配置される。
矩形状の外側耐火ボード230の短辺と矩形状の熱発泡性シート240の短辺とを略一致させてもよいが、左右方向に隣接する熱発泡性シート240の縦辺端部242同士を重ね合わせてもよい。この場合、熱発泡性シート240の縦辺端部242同士の重ね合い部分で厚肉部21が形成される。厚肉部21の左右方向の寸法(縦辺端部242同士を重ね合わせ寸法)L2は、50mm以上とすることができる。これにより、火災時等に発泡した際に、左右の発泡層に隙間を生じにくくなり、耐火性を向上することができる。
このように矩形状の熱発泡性シート240を矩形状の外側耐火ボード230の表面に施工するにあたっては、上記と同様に、矩形状の熱発泡性シート240に設けたマーク部22を外側耐火ボード230に取り付ける際の目安にすることができる。なお、左右方向に並ぶ熱発泡性シート240の隣接位置が縦支持材221及び左右方向に並ぶ外側耐火ボード230の隣接部分から左右にずれていてもよい。
矩形状の熱発泡性シート240は、下段から上方に施工していくことで、はみだし部分を前方(表面側)2枚重ねることができる。この重なり部分が厚肉部21として形成され、矩形状の外側耐火ボード230の隣接部分の室外側に位置することになり、耐火性を向上することができる。また、本実施形態では、矩形状の外側耐火ボード230の短辺の突き付け部分と矩形状の熱発泡性シート240の短辺の突付け部分を前後方向で略一致させたが、これに限らず、それぞれの突き付け部分を左右方向に位置ずれさせても良い。
上記では隣接する熱発泡性シート240の端部同士を重ね合わせた厚肉部21を設けることにより、熱発泡性シート240における外側耐火ボード230の隣接部分に対応する箇所が、他の箇所よりも耐火性が高くなる高耐火部24を形成したが、これに限られない。高耐火部24は熱発泡性シート240の一部に他の部分よりも耐火性が高ければよい。したがって、熱発泡性シート240の隣接部分に対応する箇所が、例えば、他の箇所よりも熱伝導率が低ければよく、熱発泡性シート240の隣接部分に対応する箇所に、他の箇所よりも熱伝導率が低い材質の耐火材が設けられて、熱伝導率が低い材質の耐火材を設けた部分が高耐火部24として形成されてもよい。または、熱発泡性シート240が発泡シート材の場合、熱発泡性シート240の隣接部分に対応する箇所が他の箇所よりも厚肉でなくてもよく、例えば、発泡時、熱発泡性シート240の隣接部分に対応する箇所における独立気泡の割合が、他の箇所における独立気泡の割合よりも高くなるよう構成されることにより、熱発泡性シート240の隣接部分に対応する箇所を高耐火部24として形成することができる。また、例えば、熱発泡性シート240の隣接部分に対応する箇所における発泡倍率が、他の箇所における発泡倍率よりも高くなるように構成されてもよい。
熱発泡性シート240を下地材30に全面にわたって取り付けた後、図8の場合と同様にして、透湿防水シート65を熱発泡性シート240の室外側に取り付ける。透湿防水シート65は湿気を通し、水滴は通さないシートである。透湿防水シート65もタッカーなどの固定具で取り付けられる。透湿防水シート65は複数の熱発泡性シート240の全面にわたって取り付けられる。透湿防水シート65の室外側には複数の留め具80が配置される。留め具80は透湿防水シート65の室外側に配置され、ビスなどの固定具82で縦支持材221に固定される。
化粧材260は留め具80により透湿防水シート65の室外側に取り付けられる。化粧材260は複数配置され、各化粧材260が複数の留め具80に保持される。化粧材260の上端はその化粧材260の上側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持され、化粧材260の下端はその化粧材260の下側に配置される留め具80に引っ掛けられて保持される。また上下に隣接する化粧材260は実凸部と実凹部の実接合で接続される。また、図2及び図8に示す場合と同様に、左右方向に隣接する化粧材260の間には目地材81が配置されている。目地材81の室外側にはシーリング材83が設けられている。また最も下側の化粧材260の下方には水切り材84が設けられている。そして、化粧材260の室内側には通気層85が形成されている。化粧材260の後面(室内側面)と透湿防水シート65の前面(室外側面)との間に通気層85が形成される。
上下方向に隣接する化粧材260の隣接部分の位置と、上下方向に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。また隣接する化粧材260の目地と、隣接する外側耐火ボード230の目地とは、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。すなわち、左右方向に隣接する化粧材260の間のシーリング材83の位置と、左右方向に隣接する外側耐火ボード230の隣接部分の位置とが、正面視において、重ならないようにずらすことが好ましい。この場合、隣接する化粧材260の目地及び隣接部分に室外側から炎が侵入しても、その炎が隣接する外側耐火ボード230の目地及び隣接部分に直接侵入しにくくなって、耐火性を向上させることができる。なお、左右方向に隣接する化粧材260の目地と、左右方向に隣接する外側耐火ボード230の縦辺突付け部は、正面視において、縦支持材221に一致させることが好ましく、前記目地と前記縦辺突付け部とを同じ縦支持材221に一致させてもよく、また前記目地と前記縦辺突付け部とを異なる縦支持材221に一致させてもよい。
縦支持材221の室内側には、ランナー222と複数の内側縦支持材223とが配置される。ランナー222のうち、上ランナーは天井面に配置され、下ランナー225は床面に配置される。各内側縦支持材223の上端部は上ランナーに挿入されて保持されている。各内側縦支持材223の下端部は下ランナー225に挿入されて保持されている。そして、ランナー222と複数の内側縦支持材223との少なくとも一方に、複数の内側耐火ボード210がビス又は釘などの固定具224で固定される。複数の内側耐火ボード210は上下方向及び左右方向に並べて配置される。上下方向及び左右方向に隣接する内側耐火ボード210は端部同士が突付けて配置される。なお、上ランナーは天井面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。下ランナーは床面に固定してもよく、また、縦支持材221に固定してもよい。
上記のように形成される耐火構造200では、実施形態1及び2と同様の効果が得られる。つまり、耐火構造200では、熱発泡性シート240を備えることにより、火災発生の際に、化粧材260の屋外側から加熱されて、熱発泡性シート240が発泡して膨張することにより通気層85内で発泡層が形成される。通気層85は熱発泡性シート240が発泡して膨張するための発泡空間250として利用される。これにより、発泡膨張した熱発泡性シート240の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋外から屋内へと侵入するのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができると共に、発泡膨張した熱発泡性シート240によって化粧材260と外側耐火ボード230との間に上下に連通する空間が形成されず、熱がこれら化粧材260と外側耐火ボード230との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また化粧材260の後方に熱発泡性シート240を設けることにより、熱発泡性シート240に高い耐候性や耐水性は要求されず、耐火性を向上させることができる。また熱発泡性シート240は、火災がなければ薄い材料なので、通常時は通気層85を阻害せず、また、耐火構造200の前後方向の寸法(化粧材260から外側耐火ボード230までの寸法)は、従来のものと比べても大きくなりにくい。また、熱発泡性シート240は、外側耐火ボード230に比べて比較的軽量なため、施工時の負担を軽減することができる。また、耐火構造200では、熱発泡性シート240を備えることにより、火災発生の際に、内側耐火ボード210の屋内側から加熱されて、熱発泡性シート240が発泡して膨張することにより通気層85内で発泡層が形成される。これにより、発泡膨張した熱発泡性シート240の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋内から屋外へと放出されるのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができる。
なお、実施態様3は、断熱材40を用いない構造として説明したが、必要に応じて実施態様1または2のように断熱材40を設けてもよい。
(変形例)
実施形態1~3は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1~3は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(1)耐火構造について
上記では、実施形態1~3の耐火構造1として外壁構造を説明したが、これに限られない。耐火構造1は、例えば、内壁構造、屋根構造、天井構造などに適用可能である。内壁構造の場合、化粧材10は合板などの内壁材となる。屋根構造の場合、化粧材10は屋根材となる。天井構造の場合、化粧材10は天井板となる。
また、上記実施形態1~2では、断熱材40が設けられているが、これに限定されず、断熱材40が設けられていなくてもよい。また、上記実施形態3では、断熱材40が設けられていないが、これに限定されず、断熱材40が設けられていてもよい。
また、上記実施形態1~3では、例えば図4に示すように、下地部材35の左右方向の隣接部分32が支持材50と一致しているが、これに限定されず、当該隣接部分32が支持材50と一致していなくてもよい。この場合、耐火材20の上記隣接部分32に対応する部分が当該耐火材20の他の部分よりも厚肉に形成されていてもよい。
また、上記実施形態1~3では、化粧材10の長手方向が水平となるように設けられた「横張り」構造であったが、これに限定されず、化粧材10の長手方向が鉛直となるように設けられた「縦張り」構造であってもよい。なお、上記実施形態が屋根構造の場合は、化粧材が屋根材であって、横葺き構造及び縦葺き構造のいずれであってもよい。
また、上記実施形態1~3では、複数の下地部材35を施工して下地材30を形成した後、複数のシート部材27を施工して耐火材20を形成したが、これに限られず、下地部材35とシート部材27とを予め(施工前に)一体化してシート付き下地部材36を形成した後、複数のシート付き下地部材36を施工してもよい。
図11A及び図11Bは、シート付き下地部材36の一例を示している。シート付き下地部材36は、上記と同様の横長の矩形状の下地部材35の片面(表面)に、上記と同様の横長の矩形状のシート部材27が設けられている。下地部材35の左右方向の寸法とシート部材27の左右方向の寸法は同じであり、正面視において、下地部材35の左端とシート部材27の左端とが一致し、下地部材35の右端とシート部材27の右端とが一致している。シート部材27の上下方向の寸法は下地部材35の上下方向の寸法よりも長く形成されている。シート部材27の上端部26aの先端は、下地部材35の上端面よりも上側に突出している。シート部材27の下端部26bの先端は、下地部材35の下端面よりも下側に突出している。下地部材35の表面とシート部材27とは、ほぼ全面にわたって接着等されているが、図11Aのように、下地部材35の表面の下部とシート部材27の下端部26bとは剥離可能に形成されている。
上記と同様の下地材30と耐火材20は、図11Cのように、複数のシート付き下地部材36を上下方向及び左右方向に並べ、支持材50に取り付けることによって形成される。すなわち、複数の下地部材35で下地材30が形成され、複数のシート部材27で耐火材20が形成される。上下方向に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応して、耐火材20の厚肉部21が形成される。厚肉部21は、下側のシート付き下地部材36のシート部材27の上端部26aと、上側のシート付き下地部材36のシート部材27の下端部26bとが重なって形成される。すなわち、下側の下地部材35の上端と、上側の下地部材35の下端とを突付けた後、上側の下地部材35の表面から上側のシート部材27の下端部26bを剥離した状態にし、次に、下側のシート部材27の上端部26aを上側の下地部材35の下部と上側のシート部材27の下端部26bとの間に差し入れる。この後、上側のシート部材27の下端部26bを下側のシート部材27の上端部26aに重ねる。このようにして二つのシート部材27の上端部26aと下端部26bとの重なりにより厚肉部21が形成される。なお、左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32に対応する部分では、左右方向に隣接するシート部材27の側端部同士が隣接する。
図12Aは、シート付き下地部材36の他例を示している。図11A及び図11Bのものに比べて、シート部材27が下地部材35に対して左右方向の一方にずれている。すなわち、例えば、シート部材27の右端部が覆い部28として下地部材35の右端面よりも側方(外側)に突出している。したがって、下地部材35の表面の左端部はシート部材27で覆われていない被覆い部37として形成されている。また逆に、シート部材27の左端部が覆い部28として下地部材35の左端面よりも側方(外側)に突出し、下地部材35の表面の右端部がシート部材27で覆われていない被覆い部37として形成されていてもよい。
図12Bのように、このようなシート付き下地部材36は、上記と同様に、上下方向及び左右方向に並べ、支持材50に取り付けることによって施工される。そして、上記と同様に、下側のシート付き下地部材36のシート部材27の上端部26aと、上側のシート付き下地部材36のシート部材27の下端部26bとが重なることにより、上下方向に隣接する下地部材35の隣接部分31に対応して、耐火材20の厚肉部21が形成される。
また左右方向に隣接するシート付き下地部材36は、下地部材35の側端部同士が突付けられて施工されるが、このとき、一方の下地部材35は覆い部28が突出した方の側端部であり、他方の下地部材35は被覆い部37側の側端部である。そして、下地部材35の側端部同士を突付けた後、一方のシート付き下地部材36の覆い部28を他方のシート付き下地部材36の被覆い部37の表面に配置する。この場合、左右方向に隣接するシート部材27の隣接位置(境目)29と隣接部分32とが正面視で一致せず、両者は左右方向にずれている。したがって左右方向に隣接する下地部材35の隣接部分32に対応する部分は、シート部材27の覆い部28で覆われて隣接部分32の隙間から炎や熱が侵入しにくくなる。
そして、シート付き下地部材36を使用した場合は、下地部材35とシート部材27とを一度の作業で同時に施工することができ、施工性が向上する。また下地部材35とシート部材27とを別々に梱包、搬送する必要がなく、作業性が向上する。
(2)耐火材について
上記実施形態1~3では、耐火材20は複数のシート部材27で形成されているが、一枚のシート部材27で耐火材20が形成されていてもよい。
またシート部材27には、水平位置を示すように、左右方向に長く線状に形成されたマーク部22だけでなく、鉛直位置を示すように、上下方向に長く線状に形成されたマーク部を設けてもよい。
また、シート部材27は、左右に隣接する下地部材35の隣接部分32に対応する位置にも厚肉部21を備えてもよい。
また耐火材20は塗膜で形成することができ、この場合、下地材30の前面に耐火材20となる塗料を塗布して乾燥・硬化させることができる。また、塗膜における下地材30の隣接部分31,32に対応する部分が他の部分よりも厚く形成されてもよい。
塗膜の耐火材20は、例えば、合成樹脂エマルション、多価アルコール、含窒素発泡剤、及び難燃性発泡剤を含有する発泡耐火塗料で形成されるのが好ましい。
合成樹脂エマルションに用いられる合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン-酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ソルビトール、レゾルシノール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどが使用できる。
含窒素発泡剤としては、ジシアンジアミド、アゾジカルボンアミド、メラミンおよびその誘導体、尿素、グアニジン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどが使用できる。
難燃性発泡剤としては、分解温度が多価アルコールの分解温度の範囲内にあるリン酸アンモニウム及び/又はポリリン酸アンモニウムを用いることが好ましい。
合成樹脂エマルション、多価アルコール、含窒素発泡剤、及び難燃性発泡剤の配合割合は、多価アルコールの配合量を100質量部としたときに、合成樹脂エマルションの不揮発分が200質量部以上500質量部以下、含窒素発泡剤が80質量部以上150質量部以下、難燃性発泡剤が280質量部以上450質量部以下であることが好ましい。乾燥硬化後の塗膜の耐火材20の厚みは、0.3mm以上10mm以下の範囲となるのが好ましい。
(3)支持材について
支持材50は、上下方向に長い縦胴縁であってもよいし、左右方向に長い横胴縁であってもよい。
(まとめ)
第1の態様に係る耐火構造(1)は、化粧材(10)と、複数の下地部材(35)と、該複数の下地部材(35)の化粧材(10)側に設けられた耐火材(20)とを備える。複数の下地部材(35)のうち、隣り合う下地部材(35)は端部同士が隣接する。耐火材(20)は、その一部分に他部分よりも耐火性の高い高耐火部(24)を有する。高耐火部(24)は、下地部材(35)の端部同士の隣接部分(31)の少なくとも一部に対応する位置に配置される。
この態様では、隣接部分(31)を通じて火炎や熱が屋外側から屋内側へと侵入するのを高耐火部(24)で低減しやすくなり、耐火性を向上させることができる。
第2の態様に係る耐火構造(1)は、第1の態様において、耐火材(20)が発泡性を有する。化粧材(10)と下地部材(35)との間に発泡空間(88)が形成されている。
この態様では、耐火材(20)が発泡空間(88)において発泡しやすくなり、火災発生時に耐火材(20)による熱の伝わりを低減しやすくなる。
第3の態様に係る耐火構造(1)は、第1又は2の態様において、耐火材(20)は、シート部材(27)で構成されている。高耐火部(24)はシート部材(27)が重ね合わされた厚肉部(21)である。
この態様によれば、シート部材(27)を重ね合わせるだけで耐火性の高い厚肉部(21)を形成することができ、簡単な作業で耐火性を向上することができる。
第4の態様に係る耐火構造(1)は、第3の態様において、正面視において、シート部材(27)は下地部材(35)よりも大きく形成されている。複数のシート部材(27)は各端部(26)を重ねて施工可能である。
この態様によれば、隣接する下地部材(35)同士の境目をシート部材(27)の端部(26)で覆うことができ、しかも複数のシート部材(27)の端部(26)同士を重ねることにより、火災時に生じる炎や熱が前記境目に生じる隙間を通りにくくして、耐火性能を向上することができる。
第5の態様に係る耐火構造(1)は、第3又は4の態様において、厚肉部(21)は、隣接するシート部材(27)の端部(26)同士が重ねられて形成される。
この態様によれば、隣接するシート部材(27)の端部(26)同士を重ね合わせるだけで厚肉部(21)を形成することができ、簡単な作業で耐火性を向上することができる。
第6の態様に係る耐火構造(1)は、第3又は4の態様において、厚肉部(21)は、シート部材(27)が折り返しにより重ねられて形成される。
この態様によれば、シート部材(27)を折り返して重ね合わせるだけで厚肉部(21)を形成することができ、簡単な作業で耐火性を向上することができる。
第7の態様に係る耐火構造(1)は、第3~6のいずれか1つの態様において、シート部材(27)は、隣接部分(31)の位置の目安となるマーク部(22)を有する。
この態様によれば、シート部材(27)はマーク部(22)を目安にして配置することができ、シート部材(27)の位置決めを容易に行うことができる。
第8の態様に係る耐火構造(1)は、第7の態様において、マーク部(22)は、隣接部分(31)の長手方向に沿って配置される線状に形成されている。
この態様によれば、シート部材(27)は線状のマーク部(22)を目安にして隣接部分(31)に沿って配置することができ、シート部材(27)の位置決めを容易に行うことができる。
第9の態様に係る耐火構造(1)は、第1~8のいずれか1つの態様において、下地部材(35)の耐火材(20)とは反対側に断熱材(40)を更に備える。
この態様では、火災発生時の熱の伝わりを耐火材(20)により低減できるのに加えて、断熱材(40)によっても火災発生時の熱の伝わりを低減することができ、簡易に施工可能な断熱材(40)を利用して耐火性能を向上することができる。
第10の態様に係る耐火構造(200)は、室内側から室外側に向かって、内側耐火ボード(210)、金属製の支持材(220)、外側耐火ボード(230)、熱発泡性シート(240)、及び発泡空間(250)を介して化粧材(260)を順次配置する。左右方向に隣り合う外側耐火ボード(230)の縦辺(231)同士を突付けて支持材(220)である縦支持材(221)の室外側に固定する。上下方向に隣り合う外側耐火ボード(230)の横辺(232)同士を突付けて横辺突付け部(233)を形成する。上下に位置する熱発泡性シート(240)の横辺端部(241)同士を横辺突付け部(233)に対応する位置で重ね合わせる。
この態様では、横辺突付け部(233)を通じて火炎や熱が室外側から室内側へと侵入するのを、または室内側から室外側へと放出されるのを熱発泡性シート(240)の横辺端部(241)同士の重ね合わせで低減しやすくなり、耐火性を向上させることができる。すなわち、火災時等に発泡した際に、横辺突付け部(233)付近が発泡層によりしっかりと保護される。
第11の態様に係る耐火構造(200)は、第10の態様において、左右に位置する熱発泡性シート(240)の縦辺端部(242)同士を重ね合わせる。
この態様によれば、左右に位置する熱発泡性シート(240)の縦辺端部(242)同士だけで耐火性の高い部分を形成することができ、簡単な作業で耐火性を向上することができる。また、火災時等に発泡した際に、左右の発泡層に隙間を生じにくくなり、耐火性を向上することができる。
第12の態様に係る耐火構造(200)は、第10又は11の態様において、熱発泡性シート(240)の少なくとも一面側に、防水層(270)を備える。
この態様によれば、防水層(270)で熱発泡性シート(240)への水の接触を低減することができ、水による熱発泡性シート(240)の劣化を少なくすることができる。また、別途透湿防水シートを設けなくてもよく、施工性を向上することができる。
第13の態様に係る耐火構造(200)は、第10~12のいずれか1つの態様において、支持材(220)が、縦支持材(221)よりも前記室内側に位置するランナー(222)と、ランナー(222)に端部が保持される内側縦支持材(223)とを更に備える。内側縦支持材(223)に内側耐火ボード(210)を固定する。
この態様によれば、縦支持材(221)とは別の内側縦支持材(223)に内側耐火ボード(210)を固定することができ、内側耐火ボード(210)の施工が縦支持材(221)よりも室外側の施工とは独立して単独で行うことができる。 第14の態様に係る耐火構造(200)は、金属製の支持材(220)が、縦支持材(221)と、縦支持材(221)よりも室内側に位置するランナー(222)と、ランナー(222)に端部が保持される内側縦支持材(223)と、を備える。内側縦支持材(223)の室内側に、左右方向および上下方向に隣り合う内側耐火ボード(210)の縦辺同士および横辺同士を突付けてランナー(222)と内側縦支持材(223)との少なくとも一方に固定して配置する。縦支持材(221)の室外側に、左右方向に隣り合う外側耐火ボード(230)の縦辺(231)同士を突付けて縦支持材(221)に固定して配置する。上下方向に隣り合う外側耐火ボード(230)の横辺(232)同士を突付けて横辺突付け部(233)を形成する。外側耐火ボード(230)の室外側に、上下に位置する熱発泡性シート(240)の横辺端部(241)同士を横辺突付け部(233)に対応する位置で重ね合わせて配置する。左右に位置する熱発泡性シート(240)の縦辺端部(242)同士を重ね合わせて配置する。熱発泡性シート(240)の室外側に、透湿防水性シート(271)を配置する。透湿防水性シート(271)の室外側に、縦支持材(221)に固定される留め具(80)を配置する。留め具(80)に化粧材(260)を取り付けて透湿防水性シート(271)と化粧材(260)との間に発泡空間(250)を備える。
この態様では、横辺突付け部(233)を通じて火炎や熱が室外側から室内側へと侵入するのを、または室内側から室外側へと放出されるのを熱発泡性シート(240)の横辺端部(241)同士の重ね合わせで低減しやすくなり、耐火性を向上させることができるものであり、火災時等に発泡した際に、横辺突付け部(233)付近が発泡層によりしっかりと保護することができる。更に、左右に位置する熱発泡性シート(240)の縦辺端部(242)同士だけで耐火性の高い部分を形成することができ、簡単な作業で耐火性を向上することができるものであり、火災時等に縦支持材(221)等の変形により熱発泡性シート(240)が引っ張られても、発泡した際に左右の発泡層に隙間を生じにくくなり、耐火性を向上することができる。更に、縦支持材(221)とは別の内側縦支持材(223)に内側耐火ボード(210)を固定することができるものであり、内側耐火ボード(210)の施工が縦支持材(221)よりも室外側の施工とは独立して単独で行うことができる。なお、内側支持材(223)と内側耐火ボード(210)の間に、防湿シート(図示せず)を介在させてもよく、特に、断熱材(40)を設けた場合には、室内側の湿気が断熱材(40)に移行するのを抑制することができる。