JP7319454B2 - 磁極位置検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁極位置検出装置に関する。
同期モータにおいては、dq座標制御系を用いてロータの磁極位置に応じて適切な励磁位相巻線に電流を流し、所望のトルクを発生させる。同期モータには、ロータの磁極位置を検出するためのエンコーダなどの磁極位置センサを有する同期モータと、磁極位置センサを有しない同期モータがある。
このうち磁極位置センサを有しない同期モータの場合、同期モータの電源投入(始動)の度に磁極位置検出処理を行って磁極の初期位置(以下、「磁極初期位置」と称する。)を検出し、この磁極初期位置を基準とした磁極位置に基づいて同期モータの回転を制御する。磁極初期位置の検出方式として、例えば、同期モータに電流位相を固定して一定の励磁電流を流し続け、最終的に停止した位置を磁極初期位置とする直流励磁方式がある。
同期モータの磁極位置検出に関し、特許文献1は、「これを利用して本実施形態では、まず、ステータ励磁位相180度に直流電流を流しロータの回転方向を検出する。正方向に回転すれば、ロータ磁極位置(磁束Φの位置)はステータ励磁位相の180~360度の領域幅内にあり、負方向に回転すれば、ロータ磁極位置は0~180度の領域幅内にあることになる。次にロータ磁極位置がある領域(180~360度の領域か、0~180度の領域)の中間の励磁位相に直流電流を同様に流し、ロータの回転方向を検出し、ロータの磁極位置のある領域を検出する。以下これを繰り返し、このロータ磁極位置のある領域を順次小さな領域とすることによって、このロータ磁極位置を最終的に検出するものである。」と記載する(段落0014)。
同期モータの磁極位置検出に関し、特許文献2は、「正弦波と余弦波のような2つのアナログ信号を出力し、モータ300の電気角度1周期中に複数周期を有する回転センサ330を用いる。起動時、回転センサ信号から得られる複数の絶対角度候補に対応する複数の電気角をモータ初期位置として、それぞれ所定時間通電し、モータ加速度が最大となる電気角を絶対角度と判定する。」と記載する(要約)。
特許第3971741号公報 特開2010-220472号公報
直流励磁方式による磁極初期位置検出処理では、例えば、同期モータを磁極0度で直流励磁し、同期モータのロータの停止を待ち、停止した後の位置を磁極初期位置として取得している。このように同期モータに対して直流励磁を開始してから同期モータのロータが停止するまでの時間は非常に長く、磁極初期位置の取得には時間がかかる。特に、静圧軸受を有する同期モータなどのように摩擦が非常に小さく加速性能の高い同期モータでは、磁極初期位置の取得に数分程度かかることもある。同期モータのロータの磁極初期位置の検出時間を短縮することができる磁極位置検出装置が望まれている。
本開示の一態様は、同期モータのロータの磁極位置を検出する磁極位置検出装置であって、前記同期モータを励磁するための励磁電流の電流位相を予め設定された初期値から変更させながら前記同期モータを励磁する励磁指令部と、前記同期モータに前記励磁電流が流れているときにおいて前記ロータに発生するトルクがゼロになったか否かを判定するトルクゼロ判定部と、を備え、前記励磁指令部は、前記電流位相の前記初期値で前記同期モータを励磁した後、前記トルクゼロ判定部により前記トルクがゼロになったと判定されるまでの間、前記電流位相の前記初期値での前記同期モータに対する励磁の開始時点からの前記ロータの移動量の累積値に相当する位相角を、前記初期値から減算する減算処理により得られた値を前記励磁電流の前記電流位相として前記同期モータを励磁する動作を継続的に実行し、前記トルクゼロ判定部により前記トルクがゼロになったと判定されたときに前記減算処理により得られた値を磁極初期位置として取得する、磁極位置検出装置である。
上記構成によれば、固定した電流位相で励磁を行い磁極初期値を検出する場合よりも磁極位置の検出に要する時間を短縮することができる。
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
本実施形態に係る磁極位置検出装置の構成を表すブロック図である。 磁極位置検出装置における磁極位置の検出動作について説明するための図である。 同期モータに係るdq座標系と同期モータを制御するモータ制御装置に係るdq座標系との関係を示す図である。 突極性を有する同期モータの磁極初期位置を取得するために流す励磁電流の大きさを説明する図である。 突極性を有する同期モータの磁極初期位置を取得するために流す励磁電流の大きさを説明する図である。 同期モータに設けられる永久磁石の温度と同期モータの主磁束の磁束密度との関係を例示する図である。 磁極位置検出動作における、励磁電流、励磁位相、ロータの加速度及び速度の変化の一例を表す波形図である。 本実施形態に係る磁極位置検出動作におけるロータの加速度、速度、総移動量(累積移動量)の推移をそれぞれ表すと共に、比較例として、電流位相を固定したままで励磁を行う場合におけるロータの加速度、速度、総移動量(累積移動量)の推移をそれぞれ表すグラフである。 磁極位置検出動作の処理を表すフローチャートである。 誤差補正動作の第1の例を説明するための図である。 誤差補正動作の第2の例を説明するための図である。 本実施形態に係る磁極位置検出装置を含むモータ制御装置を示すブロック図である。 磁極位置検出装置の他の構成例を表すブロック図である。 電流位相を固定して一定の励磁電流を同期モータに流し続けたときにおける同期モータのロータの挙動を例示する図である。 図13Aを時間軸方向に拡大した図である。
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
図1は、本開示の実施形態に係る磁極位置検出装置1の構成を表すブロック図である。また、図2は、磁極位置検出装置1における磁極位置の検出動作について説明するための図である。磁極位置検出装置1による磁極位置の検出動作を説明するに当たり、同期モータにおいて電流位相を固定して一定の励磁電流を流し続けた(直流励磁を行った)場合におけるロータの挙動について図13A及び図13Bを参照して説明する。
図13A及び図13Bは、電流位相を固定して一定の励磁電流を同期モータに流し続けたときにおける同期モータのロータの挙動を例示する図である。図13Aはロータの速度及び位置の時間経過を例示する図であり、図13Bは図13Aを時間軸方向に拡大した図である。図13A及び図13Bにおいて、実線は同期モータのロータ実位置の時間経過を示し、一点鎖線は同期モータの速度(回転角速度)を示す。電流位相を固定して一定の励磁電流を同期モータに流し続けると、図13A及び図13Bに例示するように、同期モータのロータは回転方向に振動する。同期モータの振動は徐々に減衰していき、ロータは最終的には励磁位相に一致した位相角位置にて停止する。
このように直流励磁を行いロータが停止するのを待つことで磁極初期位置の取得を行うことは可能であるが、ロータが停止するまでには非常に長い時間を要する。本実施形態に係る磁極位置検出装置1は、このような電流位相を固定した励磁による(直流励磁方式による)場合よりも、磁極初期位置の取得に要する時間を大きく短縮する。
図1に示すように、磁極位置検出装置1は、励磁指令部10と、トルクゼロ判定部12とを備える。励磁指令部10は、同期モータ2を励磁するための励磁電流の電流位相を予め設定された初期値から変更させながら同期モータ2を励磁する。トルクゼロ判定部12は、同期モータ2に励磁電流が流れているときにおいてロータに発生するトルクがゼロになったか否かを判定する。詳細には後述するように、励磁指令部10は、電流位相の初期値で同期モータ2を励磁した後、トルクゼロ判定部12によりトルクがゼロになったと判定されるまでの間、電流位相の初期値での同期モータ2に対する励磁の開始時点からのロータの移動量の累積値に相当する位相角(電気角)を、初期値から減算する減算処理により得られた値を励磁電流の電流位相として同期モータ2を励磁する動作を継続的に実行し、トルクゼロ判定部12によりトルクがゼロになったと判定されたときに上記減算処理により得られた値を磁極初期位置として取得する。
図1に示すように、励磁指令部10は、磁極検出動作における電流位相の演算を行う励磁位相演算部13と、同期モータ2に対する励磁指令を生成する励磁指令生成部11とを有する。励磁位相演算部13は、励磁位相の初期値である初期励磁位相を記憶する記憶部13aを有し、磁極検出動作における励磁位相の初期値を初期励磁位相とすると共に、磁極検出動作の開始後、トルクゼロ判定部12よりトルクがゼロになったと判定されるまでの間、磁極検出動作の開始時点からのロータの移動量の累積値に相当する位相角(電気角)を、初期励磁位相から減算する減算処理により得られた値を励磁電流の電流位相として出力する動作を継続する。励磁指令生成部11は、励磁電流振幅の設定値を記憶する記憶部11aを有し、励磁位相演算部13から出力される励磁位相で、励磁電流振幅の設定値の電流を流すための励磁指令を生成する。励磁位相演算部13は、極対数を記憶する記憶部13cも有している。
励磁指令生成部11により生成された指令は、同期モータ2の駆動を制御するためのモータ制御装置1000内の電流制御部33へ送られる(図11参照)。モータ制御装置1000内の電流制御部33は、励磁指令生成部11から受信した指令と固定された電流位相で変換される電流フィードバックとに基づいて電圧指令を生成し、電力変換部35は、受信した電圧指令に基づいて同期モータ2に電圧を印加することで、電流位相を固定した一定の励磁電流を生成する。
図1及び図2を参照して磁極位置検出装置1による励磁動作について更に詳細に説明する。図2は励磁位相演算部13により生成される励磁位相の推移をモータ制御装置側に係るdq座標系上で示す図である。ここでは、ロータ(磁束φ0)が、符号201が付された初期位置にあるものとする。励磁位相演算部13における切替部13bは、トルクゼロ判定部12により同期モータ2のロータに発生するトルクがゼロになると判定されていない間は、出力端13b3を入力端13b2に接続し、トルクゼロ判定部12によりロータに発生するトロクがゼロになったと判定されると出力端13b3の接続を入力端13b1側に切り換えるように動作する。
この構成により、励磁位相演算部13は、トルクゼロ判定部12によりロータに発生するトルクがゼロになったと判定されるまでの間は、以下の数式で表される位相角を励磁位相として出力する。

励磁位相(θ)=初期励磁位相値-ΣΔθ ・・・(A1)

上記数式(A1)においてΔθは、ロータの移動量に極対数を乗じて得られる位相角(電気角)増分量であり、ΣΔθは、磁極検出動作の開始時点からのロータの移動量の累積値である。この数式(A1)は、励磁位相が、ロータの移動に伴って初期励磁位相値から減算されることを表す。このような励磁位相の更新は、例えば、所定の周期で行うようにしても良い。ここでは一例として、初期励磁位相値を0°とする。この場合、図2に示されるように、磁極位置検出動作の開始時に位相角0°の一定の励磁電流(励磁電流振幅値)による励磁が行われる。このときの励磁電流Ieを図2では符号301で表している。なお、図2中では、左回り方向をプラス方向とし、右回り方向をマイナス方向とする。励磁電流(符号301)による励磁によりロータに作用するトルクにより、ロータは励磁電流(符号301)の位相位置に向けて吸引され回転移動をはじめる(図2の例ではプラス方向に回転する)。ロータの移動に伴い、励磁位相は減算され、励磁電流の電流位相は図2中に符号302、303で示すように図2中マイナス方向に回転する。このとき、ロータはプラス方向への回転移動を続け、ロータの位相角位置と励磁電流の位相角位置とは互いに接近する。
励磁電流が符号302で示す位置にある状態では、ロータはまだ励磁電流に対してマイナス方向の位置(符号202)にあるので、ロータはプラス方向への回転を継続する。そして、励磁電流が符号303で示す位置まで来たときに、ロータの位置(符号203で示す)と励磁電流の位置(位相角)が一致する。ロータの位相角と励磁電流Ieの位相角が一致する状態はトルクゼロの状態としてトルクゼロ判定部12により検出される。
トルクゼロ判定部12によりトルクゼロが検出されたときの数式(A1)により表される励磁位相(θ)が、磁極位置(ロータの実際の位置)を表すことになる。すなわち、磁極位置検出装置1は、上記動作においてトルクゼロを検出することによって、磁極位置を検出する。このようにトルクゼロを検出することによって得られた磁極位置を磁極初期位置とする。
トルクゼロ判定部12によりトルクゼロが検出されると、切替部13bによる入力端の選択が切り替わる。これにより、励磁位相演算部13は、磁極初期位置に対して、ロータの移動量(センサ51からのインクリメンタルパルス量を極対数倍した値)の累積値を加算した値を磁極位置として出力する(下記、数式(A2))。

磁極位置=磁極初期位置+ΣΔθ ・・・(A2)

すなわち、磁極初期位置が検出された以降は、励磁位相演算部13は、磁極位置カウンタとして機能する。
ここで、トルクゼロ判定部12におけるトルクゼロの判定の手法について詳細に説明する。図3は、同期モータに係るdq座標系と同期モータを制御するモータ制御装置に係るdq座標系との関係を示す図である。同期モータに係るdq座標系の座標軸をdm及びqm、同期モータを制御するモータ制御装置に係るdq座標系の座標軸をdc及びqcとする。また、各座標系間のd軸のずれ量(すなわち座標軸dmと座標軸dcとのなす角)をθとする。なお、ずれ量θは、各座標系間のq軸のずれ量(すなわち座標軸qmと座標軸qcとのなす角)でもある。
電流位相をモータ制御装置に係るdq座標系において0度に固定した一定の励磁電流をIeとする。このとき、励磁電流Ieは、同期モータに係るdq座標系では、式(1)のように表される。
Figure 0007319454000001
同期モータ2の極対数をpp、主磁束をΦ、d相インダクタンスをLd、q相インダクタンスをLqとしたとき、突極性を有する同期モータに励磁電流Ieを流したときに発生するトルクTrは式(2)のように表される。
Figure 0007319454000002
また、非突極性の同期モータ(すなわち突極性を有さない同期モータ)では、d相インダクタンスLdとq相インダクタンスLqとは等しい。したがって、非突極性の同期モータに励磁電流Ieを流したときに発生するトルクTrは、式(2)を変形して式(3)のように表される。
Figure 0007319454000003
上述したように、同期モータに励磁電流を流すとロータが回転方向に移動し、ずれ量θが刻々と変化する。式(2)及び式(3)には「sinθ」が含まれるが、ずれ量θがゼロのとき「sinθ」はゼロになり、したがってトルクTrはゼロとなる。逆に言えば、トルクTrがゼロのとき、式(2)及び式(3)における「sinθ」がゼロであり、すなわちずれ量θがゼロとなり得る。よって、一定の励磁電流を同期モータに流しているときにおいて、トルクTrがゼロとなった時点を検出することで、磁極初期位置を取得することができる。
ただし、突極性を有する同期モータの場合は、励磁電流Ieの大きさによっては、θがゼロ以外のときに式(2)における「{Φ-(Lq-Ld)・Ie・cosθ}」がゼロになり、すなわち式2で表されるトルクTrがゼロとなる可能性がある。つまり、突極性を有する同期モータの場合は、トルクTrがゼロであるからといっても必ずしもずれ量θがゼロであるとは限らない。したがって、突極性を有する同期モータに本実施形態を適用する際には、「{Φ-(Lq-Ld)・Ie・cosθ}」がゼロになるような励磁電流Ieを流さないようにする必要がある。一方、非突極性の同期モータの場合は、トルクTrは式(3)で表されるので、トルクTrがゼロとなるのはずれ量θがゼロのときに限られる。よって、非突極性の同期モータに本実施形態を適用する際には、電流位相を固定した一定の励磁電流Ieに上限値を設ける必要はない。
ここで、突極性を有する同期モータの磁極初期位置を取得するために流すべき励磁電流Ieの大きさについて、図4A、図4B及び図5を参照して説明する。
図4A及び図4Bは、突極性を有する同期モータの磁極初期位置を取得するために流す励磁電流の大きさを説明する図である。図4Aにおいて、横軸はずれ量θを示し、縦軸はトルクTrを示す。図4Bにおいて、横軸はずれ量θを示し、縦軸は発生トルクの式をq相電流で除したものを示す。また、図4A及び図4Bにおいて、二点鎖線は励磁電流Ieが30Armsの場合を示し、一点鎖線は励磁電流Ieが60Armsの場合を示し、実線は励磁電流Ieが80Armsの場合を示す。なお、図4A及び図4Bに示した励磁電流Ieの大きさはあくまでも一例である。
励磁電流Ieが30Armsの場合及び60Armsの場合は、図4Aに示すようにずれ量θがゼロのときのみ、トルクTrがゼロになっている。これに対し、励磁電流Ieが80Armsの場合はずれ量θがゼロのときのみならず「-44度」付近でもトルクTrがゼロになっている。このように励磁電流Ieが80Armsの場合において、ずれ量θがゼロ以外のときにもトルクTrがゼロになる状態が発生するのは、図4Bに示すように発生トルクの式をq相電流で除したものに負の領域が発生するからである。よって、突極性を有する同期モータに本実施形態を適用する際には、ずれ量θがゼロである以外の全ての場合において、式2で表されるトルクTrが正(すなわちゼロよりも大きい)となるような励磁電流Ieを設定する必要がある。具体的には次の通りである。
式2において「Tr>0」かつ「θ≠0」を適用し、整理すると、不等式4が得られる。
Figure 0007319454000004
不等式4において「-1≦cosθ≦1」が成り立つので、不等式4から不等式5が得られる。
Figure 0007319454000005
不等式5を整理すると、不等式6が得られる。
Figure 0007319454000006
よって、突極性を有する同期モータに本実施形態を適用する際には、電流位相を固定した一定の励磁電流Ieは、不等式6を満たす大きさに設定すべきである。本実施形態では、磁極初期位置が取得されるべき同期モータが突極性を有する同期モータである場合は、励磁指令生成部11は、上限値「Φ/(Lq-Ld)」未満の励磁電流Ieを同期モータ2へ流すような指令を生成する。
なお、主磁束Φは、同期モータ2に設けられる永久磁石の温度の上昇に従って、低下する。よって、突極性を有する同期モータ2の駆動時に想定される永久磁石の温度上昇を考慮して、励磁電流Ieの上限値を設定してもよい。ここで、突極性を有する同期モータの永久磁石の温度上昇を考慮した磁極初期位置を取得するために流すべき励磁電流Ieの大きさについて、図5を参照して説明する。
図5は、同期モータに設けられる永久磁石の温度と同期モータの主磁束の磁束密度との関係を例示する図である。図5において、横軸は同期モータ2に設けられる永久磁石の温度を示し、縦軸は永久磁石が20℃のとき磁束密度を100%としたときの磁束密度の比率を示す。なお、図5に示す数値はあくまでも一例であって、その他の数値であってもよい。例えば、突極性を有する同期モータ2の駆動時に想定される永久磁石の最高温度が160度である場合、永久磁石が160度のときでもずれ量θがゼロ以外で発生トルクがゼロとなることがないように、想定される同期モータ2の永久磁石の最高温度における磁束Φmin(もっとも小さくなる磁束密度)を考慮して、励磁電流Ieを制限する。すなわち、不等式6から不等式7を得ることができる。
Figure 0007319454000007
よって、突極性を有する同期モータに本実施形態を適用する際には、電流位相を固定した一定の励磁電流Ieは、同期モータの駆動時に想定される永久磁石の温度上昇を考慮して、不等式7を満たす大きさに設定してもよい。この場合、励磁指令生成部11は、上限値「Φmin/(Lq-Ld)」未満の励磁電流Ieを同期モータ2へ流すような指令を生成する。
同期モータ2のロータに発生するトルクTrがゼロとなるとき、同期モータ2のロータの加速度がゼロとなる。加速度がゼロとなることは、加速度の極性が、正から負へ、または負から正へ変化した時点として検出することができる。また、同期モータ2の加速度の極性が正から負へ変化した時点において同期モータ2の速度は最大(極大)を示し、同期モータ2の加速度の極性が負から正へ変化した時点において同期モータ2の速度は最小(極小)を示す。よって、本実施形態では、トルクゼロ判定部12は、同期モータ2(ロータ)の加速度を取得し、同期モータ2の加速度の極性が変化した時点を、トルクがゼロになった時点と判定する。またあるいは、トルクゼロ判定部12は、同期モータ2(ロータ)の速度を取得し、同期モータ2の速度が最大または最小となった時点を、トルクがゼロになった時点と判定する。同期モータ2の加速度は、センサ51からのインクリメンタルパルス量によって表されるロータ実位置を2階微分することにより取得することができる。また、同期モータ2の速度は、センサ51からインクリメンタルパルス量によって表されるロータ実位置を1階微分することにより取得することができる。ロータ実位置の微分計算処理は、トルクゼロ判定部12において実行される。
図6は、図2を参照して上述した磁極位置検出動作における、励磁電流、励磁位相、ロータの加速度及び速度の変化の一例を表す波形図である。図6において、励磁電流を表す波形に符号61を付し(以下、励磁電流61と記す)、励磁位相の変化を表す波形に符号62を付し(以下、励磁位相62と記す)、ロータの加速度の変化を表す波形に符号63を付し(以下、加速度63と記す)、ロータの速度の変化を表す波形図に符号64を付す(以下、速度64と記す)。なお、図6には、磁極初期位置が検出されたことを示す検出完了信号65(アクティブハイの信号)も示している。図6において横軸は時間を示し、縦軸はそれぞれの物理量の大きさを表す。図6において、時刻t0は磁極位置検出動作が開始した時刻であり、時刻t1は磁極位置検出動作が完了した時刻である。
上述した通り、磁極位置検出動作の開始時(時刻t0)、初期励磁位相で一定の励磁電流による励磁が行われる(励磁電流61、励磁位相62を参照)。励磁位相62はロータの移動に伴って初期励磁位相値から徐々に変化する。図6では、ロータの初期位置が初期励磁位相値よりもプラス側にあることにより、励磁位相62が初期励磁位相値(0度)からプラス方向に徐々に変化する場合の動作例を示している。励磁電流61の印加に伴ってロータに対するトルクが発生し、ロータは移動を始める。それにより、加速度63が生じる。励磁位相62の変化によりやがて励磁位相62と、ロータの位置とが一致し、加速度がゼロとなる(時刻t1)。トルクゼロ判定部12は、例えば時刻t1近傍における加速度の反転を検出することで、トルクがゼロになったと判定する。トルクゼロ判定部12は、トルクゼロを判定したら、検出完了信号65を生成しても良い。この検出完了信号65を、切替部13bの切り替えに用いることができる。
また、図13Bに示されるように加速度極性が反転するタイミングでロータ速度はピークを示す。このような速度のピーク(最大値又は最小値)を検出することで、トルクゼロを検出しても良い。
図7は、本実施形態に係る磁極位置検出動作(すなわち、励磁位相を可変とした励磁動作)におけるロータの加速度、速度、総移動量(累積移動量)の推移をそれぞれ表すと共に、比較例として、電流位相を固定したままで励磁を行う場合におけるロータの加速度、速度、総移動量(累積移動量)の推移をそれぞれ表している。なお、ここでは、磁極位置検出動作の開始時における励磁位相とロータの初期位置との関係を、本実施形態と比較例との間で一致させている。
図7の加速度特性70Aにおける実線のグラフ371は、本実施形態に係る磁極位置検出動作における加速度の時間推移の例を表し、破線のグラフ372は、比較例におけるロータの加速度の時間推移の例を表している。図7の加速度特性70Aに示されるように、比較例の場合には最初に加速度がゼロとなるまでに80ms程度の時間を要しているのに対して、本実施形態に係る磁極位置検出動作の場合には、60ms程度で加速度がゼロになり(励磁位相とロータ位置とが一致し)、磁極初期位置の取得に要する時間が比較例の場合(励磁位相を固定したままとする場合)よりも短縮されることが理解される。
図7の速度特性70Bにおける実線のグラフ381は、本実施形態に係る磁極位置検出動作におけるロータの速度の時間推移を表し、破線のグラフ382は、比較例の場合におけるロータの速度の時間推移を表している。図7の速度特性70Bから、本実施形態に係る磁極位置検出動作の場合には磁極初期値の検出時点におけるロータの速度を比較例の場合よりも低減できることを理解することができる。
図7の総移動量特性70Cにおける実線のグラフ391は、本実施形態に係る磁極位置検出動作におけるロータの累積移動量の時間推移を表し、破線のグラフ392は、比較例の場合におけるロータの累積移動量の時間推移を表している。図7の総移動量特性70Cから、本実施形態に係る磁極位置検出動作の場合には、磁極初期値検出時点におけるロータの累積移動量を比較例の場合よりも低減できることを理解することができる。
図8は、図1を参照して上述した磁極位置検出動作を実現する処理を表すフローチャートである。はじめのステップS1では、センサ51からのインクリメンタルパルス信号に基づき、ロータの移動量(図8において励磁位相帰還分と記す)、ロータの速度及び加速度の計算が実行される。次に、変数STAGEの値の確認が行われる(ステップS2)。変数STAGEは、はじめにゼロに初期化されているものとする。この場合、処理はステップS3に進み、磁極検出の実行の可否が判定される。磁極位置検出動作を中断又は非実行とする要因が特に生じていない限り処理はステップS4に進む(S3:実行)。なお、磁極位置検出動作を中断又は非実行とする要因がある場合、本処理フローを抜ける。
次にステップS4では、変数STAGEの値の確認が行われる。最初の段階ではSTAGE=0であるため、処理はステップS5に進む。ステップS5では、時間経過を表す変数TIMEがゼロに初期化されると共に、変数EPOFSに初期励磁位相値0°を表す値ゼロが代入される。次に、ステップS6では、励磁位相がゼロに初期化され、励磁位相帰還分の累積値(ΣΔθ)を表す変数SUMFBがゼロに初期化される。次に、dc軸励磁電流指令を表す変数IDCMDに、記憶部11aに保持された励磁電流振幅値が代入され、qc軸励磁電流指令を表す変数IQCMDにゼロが代入され、励磁が実行される(ステップS7)。すなわち、初期励磁位相値0°での励磁が開始される。その後、変数STAGEは1に更新され(ステップS8)、本処理フローを抜け、再びステップS1からの処理が実行される。
変数STAGE=1にてステップS1からの処理が実行されると、ステップS4において変数STAGEが1であると判定され、処理はステップS9に進む。ステップS9では、dc軸励磁電流指令を表す変数IDCMDに、記憶部11aに保持された励磁電流振幅値が代入され、qc軸励磁電流指令を表す変数IQCMDにゼロが代入される。また、ここでは、変数SUMFBには、ステップS1で求められた励磁位相帰還分(Δθ)の累積値ΣΔθの値が変数SUMFBに代入され、励磁位相は、
励磁位相=EPOFS-SUMFB
により更新される。すなわち、励磁位相は、初期励磁位相値からロータの移動量に相当する位相角を減算処理した値とされる。ステップS9において、これらの励磁指令による励磁が実行される。
次に、ステップS10では、変数STAGEの値が確認される。この段階では、変数STAGE=1であるため処理はステップS11に進む。ステップS11では、ロータの速度が所定の速度閾値を超えているか否かが判定される。ロータの速度が速度閾値を超えていない場合(S11:NO)、処理はステップS17に進む。ロータの速度が速度閾値を超えている場合(S11:YES)、処理はステップS12に進む。ここでは、ロータの速度は未だ速度閾値を超えていないとする(S11:NO)。
ステップS17では、変数TIMEがインクリメントされる。そして、ステップS18では、変数TIMEが所定の時間閾値を超えているか否かが判定される。ここでは、変数TIMEは時間閾値を超えていないため(S18:NO)、本処理フローを抜け、ステップS1からの処理が続行される。
ステップS18でNOと判定されてから、ステップS1からの処理が開始された場合、ステップS4では変数STAGE=1と判定される。そして、ステップS9において、ロータの移動量に相当するΣΔθにて更新された励磁位相にて励磁が行われる。次に、ステップS10では、変数STAGTE=3ではないと判定され(S10:NO)、処理はステップS11に進む。ここでは、ロータの速度の上昇によりロータの速度が速度閾値を超えたと判定されたとする(S11:YES)。この場合、処理はステップS12に進み、変数STAGEが3に更新される。
次に、ステップS13では、ロータの加速度がゼロになったか否か(すなわち、ロータの加速度の極性が反転したか否か)が判定される。加速度ゼロが判定された場合(S13:YES)、処理はステップS14に進む。加速度ゼロが未だ検出されない場合(S13:NO)、本処理フローを抜け、ステップS1からの処理が続行される。加速度ゼロが未だ検出されない場合には(S13:NO)、ステップS1からの処理の開始の後、ステップS10にてYESの判定がなされ、再び、ステップS13の判定が行われることとなる。
ロータの移動に伴いロータの加速度ゼロが判定されたとする(S13:YES)。この場合、ステップS14において、励磁位相を更新するための算出式が下記のように励磁位相に励磁位相帰還分(ΣΔθ)を加える式に切り換えられる。
励磁位相=励磁位相+励磁位相帰還分
この式によって表される励磁位相は、ロータの磁極位置(現在値)を表す。
次に、ステップS15では、dc軸励磁指令を表す変数IDCCMD=0とされ、また、qc軸励磁指令を表す変数IQCCMD=0とされる。これにより、磁極位置検出が完了し、変数STAGEは4に更新される(ステップS16)。磁極位置検出が完了状態で本処理がステップS1から実行される場合はステップS2においてSTAGE=4であると判定され、励磁位相=励磁位相+励磁位相帰還分により更新する処理(すなわち、磁極位置を示すカウンタをロータの移動に伴い更新する処理)が継続的に実行されることとなる(ステップS23)。
なお、ステップS11でNOと判定され更にステップS18で変数TIMEが時間閾値を超えたと判定される(S18:YES)のは、ロータの磁極位置が励磁位相に対し180°反転した位置にありロータが移動しない場合や、ロータが拘束状態にあり移動不可となっている場合であるとみなすことができる。この場合、初期励磁位相(EPOFS)を0°から90°に変更し、変数TIME、変数SUMFBをそれぞれに0に初期化する(ステップS19)。そして、変数STAGEが1である場合には(S20:YES)、初期励磁位相90°での磁極位置検出動作を開始するため、変数STAGEを2に更新して(ステップS21)、本処理フローを抜け、ステップS1からの処理を続行する。
他方、ステップS20において変数STAGEが1ではないと判定されるのは、ロータが留め具で固定されるなど何らかの拘束状態にあると考えられるため、変数STAGEを7としてアラームを発し本処理フローを抜ける(ステップS22)。変数STAGEが7である場合にはステップS2での判定により本磁極位置検出動作は実行されないこととなる。
上述のように磁極位置検出装置1により検出される磁極位置(磁極初期位置)は、例えば、センサ51からの信号のサンプリング周期等に依存して誤差を持ち得る。磁極位置検出装置1は、検出された磁極位置に含まれる誤差を解消する動作を行う誤差補正部14を備えていても良い。誤差補正部14は、以下で説明する誤差補正動作1-2の少なくともいずれかを実行する。
(誤差補正動作1)
誤差補正動作1では、上述した磁極位置検出動作により検出された磁極位置を仮確定値として、以下の手順により誤差補正を行う。
(手順A1)磁極位置検出動作による磁極位置の検出の完了後、速度ゼロを指令してロータを停止させる。
(手順A2)ロータの停止後、停止した電流位相に固定して励磁電流を流し、停止して所定時間経過後、固定された電流位相の励磁位置を磁極初期位置として用いる。
図9は、誤差補正動作1を説明するための図である。図9では、速度ゼロで停止した位置の位相をθとする。磁極位置検出の誤差により、主磁束φ0の方向(符号211)は、固定した励磁電流の方向(dc軸方向)からΔθずれているとする。この場合、停止したdc軸位相に固定して励磁電流Ie(符号311)を流すと、主磁束φ0はdc軸に吸い寄せられてΔθ動いて停止する。そして、ある程度の時間(所定時間)経過したら誤差補正完了とする。これにより、磁極位置の誤差Δθが解消される。
(誤差補正動作2)
誤差補正動作2では、上述した磁極位置検出動作により検出された磁極位置を仮確定値として、以下の手順により誤差補正を行う。
(手順B1)磁極位置検出動作による磁極位置の検出の完了後、一定速度でロータを回転させる。
(手順B2)同期モータ2に備えられたセンサ51からの1回転信号を検出した時点の磁極位置を、予め設定した磁極位置オフセット(θofs)で置き換える。
図10は、誤差補正動作2を説明するための図である。図10中左側に示すグラフ470は、実磁極位置とセンサ51が発生する1回転信号の発生位置との関係を表している。グラフ470に示されるように、センサ51は、実磁極位置0°の位置を基準として所定の磁極オフセット(θofs)で1回転信号を発生する。この磁極オフセット(θofs)の値は、誤差補正部14に予め記憶されている。
図10中の右側のグラフ471は、磁極位置の時間推移を表すグラフであり、破線のグラフ361は補正処理がない場合の磁極位置の時間推移を表している。補正処理がない場合、磁極位置は上述の磁極位置検出動作の完了時の磁極検出位置θ1から開始して、誤差を含んだ状態のまま破線のグラフ361で示すように推移する。上記手順B2により、1回転信号が発生する時刻T1の時点で磁極位置がθofsに補正されるので、それ以降は磁極位置が実線362で示すように、誤差が補正された状態で推移することになる。
図11は、本開示の実施形態による磁極位置検出装置1を含むモータ制御装置1000を示すブロック図である。モータ制御装置1000は、磁極位置検出装置1と、速度制御部31と、電流指令生成部32と、電流制御部33と、dq三相変換部34と、電力変換部35と、三相dq変換部36と、速度取得部37とを備える。速度制御部31は、速度指令ωcmdと速度取得部37によって取得された同期モータ2のロータの速度ωmとに基づいて、トルク指令Tcmdを生成する。電流指令生成部32は、トルク指令Tcmdと速度取得部37によって取得された同期モータ2のロータの速度ωmとに基づいて、d軸電流指令Idc及びq軸電流指令Iqcを生成する。
三相dq変換部36は、電力変換部35から出力された三相電流Iu、Iv、Iwを磁極位置検出装置1で検出された磁極位置に基づいて三相dq変換し、d軸電流Id及びq軸電流Iqを電流制御部33へ出力する。電流制御部33は、通常のモータ制御時には、d軸電流指令Idc及びq軸電流指令Iqcとd軸電流Id及びq軸電流Iqとに基づいて、d軸電圧指令Vdc及びq軸電圧指令Vqcを生成する。また、電流制御部33は、磁極位置検出動作時には、磁極位置検出装置1から出力された励磁指令(例えば、Id=Ie,Iq=0)に基づいて、一定の励磁電流を流すためのd軸電圧指令Vdc及びq軸電圧指令Vqcを生成する。dq三相変換部34は、d軸電圧指令Vdc及びq軸電圧指令Vqcを磁極位置検出装置1で検出された磁極位置に基づいてdq三相変換し、三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcを電力変換部35へ出力する。
電力変換部35は、例えば半導体スイッチング素子のフルブリッジ回路からなる逆変換器(三相インバータ)で構成され、受信した三相電圧指令Vuc、Vvc、Vwcに基づいて半導体スイッチング素子のオンオフを制御し同期モータ2を駆動するための三相電流Iu、Iv、Iwを出力する。
上述した励磁指令生成部11、トルクゼロ判定部12、速度制御部31、電流指令生成部32、電流制御部33、dq三相変換部34、三相dq変換部36、速度取得部37、及び磁極位置更新部41は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは、各種電子回路又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを主体とした構成により実現されても良い。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1000内にあるCPU(中央処理装置)をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。
以上説明したように励磁位相を可変とした方式により励磁を行い磁極位置を検出する本実施形態に係る磁極位置検出装置によれば、固定した電流位相で励磁を行い磁極初期値を検出する場合よりも磁極位置の検出に要する時間を短縮することができる。
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
上述した磁極位置検出動作においてはロータの加速度がゼロとなる時点を検出することによりトルクゼロを判定する動作を行っているが、このような動作に付加的に以下のような動作を実行させてトルクゼロを検出するようにしても良い。ここでは、励磁位相の初期値(初期励磁位相)と、磁極検出動作の開始時点におけるロータ(磁極)の初期位置とが90°以上離れている場合を想定する。ロータに発生するトルクを改めて記載すると以下の数式で表される。ここでは簡単のため非突極性の同期モータを考える。また、励磁位相はθeであるとする。θはロータの位置である。

トルク=φ0・Ie・sin(θe-θ)

上記トルクの式から、(θe-θ)が90°又は-90°のときトルクの絶対値が極大となることが理解できる。すなわち、ロータの位置が励磁位相の初期値よりも90°以上離れた位置から上述の磁極位置検出動作が開始される場合には、ロータの加速度がゼロになる前に極大値が生じる。よって、ロータの加速度が極大値になる時点を検出することで、磁極初期位置が-90°(ロータの加速度がプラスの場合)又は+90°(ロータの加速度がマイナスの場合)であることを検出することが可能である。
図7の加速度特性70Aに示したロータの加速度変化のグラフ371は、磁極位置検出動作の開始時において、ロータの初期位置が初期励磁位相に対してマイナス方向に90°以上離れている場合の加速度の時間推移を表している。この場合、加速度は磁極位置検出動作の開始後、ゼロになるまでの間に極大値を示している。この極大値が生じる時点が、磁極位置が-90°となる時点である(初期励磁位相が0°の場合)。
図12は、このような動作を実現する磁極位置検出装置1Aの構成を表している。この場合、トルクゼロ判定部12a内に、同期モータ2に励磁電流が流れているときにおけるロータの加速度のピークを検出する加速度ピーク判定部112を付加する。これにより、トルクゼロ判定部12aは、トルクゼロが検出される前にロータの加速度の絶対値の極大値を検出した場合にも、切替部13bの出力端13b3の接続を入力端13b1側に切り換えるように構成する。励磁位相算出部13Dは、加速度ピーク判定部112によりロータの加速度のピークが検出された時点で、ロータの加速度の極性に応じて初期励磁位相値に-90°又は+90°を加算した値を磁極初期位置として取得するように構成する。
上述した実施形態における磁極位置検出動作等の各種の処理を実行するプログラムは、コンピュータに読み取り可能な各種記録媒体(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気記録媒体、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク)に記録することができる。
1、1A 磁極位置検出装置
2 同期モータ
10 励磁指令部
11 励磁指令生成部
12、12a トルクゼロ判定部
13、13D 励磁位相演算部
13b 切替部
14 誤差補正部
31 速度制御部
32 電流指令生成部
33 電流制御部
34 dq三相変換部
35 電力変換部
36 三相dq変換部
37 速度取得部
51 センサ
112 加速度ピーク判定部

Claims (5)

  1. 同期モータのロータの磁極位置を検出する磁極位置検出装置であって、
    前記同期モータを励磁するための励磁電流の電流位相を予め設定された初期値から変更させながら前記同期モータを励磁する励磁指令部と、
    前記同期モータに前記励磁電流が流れているときにおいて前記ロータに発生するトルクがゼロになったか否かを判定するトルクゼロ判定部と、を備え、
    前記励磁指令部は、
    前記電流位相の前記初期値で前記同期モータを励磁した後、前記トルクゼロ判定部により前記トルクがゼロになったと判定されるまでの間、前記電流位相の前記初期値での前記同期モータに対する励磁の開始時点からの前記ロータの移動量の累積値に相当する位相角を、前記初期値から減算する減算処理により得られた値を前記励磁電流の前記電流位相として前記同期モータを励磁する動作を継続的に実行し、
    前記トルクゼロ判定部により前記トルクがゼロになったと判定されたときに前記減算処理により得られた値を磁極初期位置として取得する、磁極位置検出装置。
  2. 前記励磁指令部は、前記トルクゼロ判定部により前記トルクがゼロになったと判定された以降は、前記磁極初期位置に、前記トルクがゼロになったと判定された時点以降の前記ロータの移動量の累積値に相当する位相角を加算することで磁極位置の現在値を取得する、請求項1に記載の磁極位置検出装置。
  3. 前記磁極初期位置の取得の完了後に前記同期モータに対して速度ゼロを指令して停止させ、前記同期モータの停止後、前記同期モータが停止した電流位相に固定して前記同期モータに対する励磁を行い、所定時間経過後に、前記固定された電流位相を前記同期モータの前記磁極位置の前記現在値とする誤差補正部を更に備える、請求項2に記載の磁極位置検出装置。
  4. 前記磁極初期位置の取得の完了後に前記同期モータを一定速度で回転させ、前記同期モータに設けられたセンサから前記ロータが1回転するごとに出力されるパルス信号を受信した時点で、前記磁極位置の前記現在値を、前記同期モータ内で前記パルス信号が発生する前記ロータの位置に対応する所定値で置き換える誤差補正部を更に備える、請求項2に記載の磁極位置検出装置。
  5. 前記同期モータに前記励磁電流が流れているときにおける前記ロータの加速度のピークを検出する加速度ピーク判定部を更に備え、
    前記励磁指令部は、前記加速度ピーク判定部により前記ロータの加速度のピークが検出された時点で、前記ロータの加速度の極性に応じて前記電流位相の前記初期値に-90°又は+90°を加算した値を前記磁極初期位置として取得する、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁極位置検出装置。
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