JP7318885B2 - サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末及びサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石 - Google Patents

サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末及びサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石 Download PDF

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本発明は、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末及びサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石に関する。
サマリウム-鉄-窒素磁石は、キュリー温度が477℃という高い値であること、磁気特性の温度変化が小さいこと、保磁力の理論値とされる異方性磁界が260kOeという非常に高い値であることから、高性能磁石として期待されている。
ここで、高性能磁石を作製するためには、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末を焼結させることが必要である。
しかしながら、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末は、分解温度が620℃である。
そこで、焼結することが可能な永久磁石用粉末として、表面がビスマスで被覆されているサマリウム-鉄-窒素磁石粉末が知られている(特許文献1参照)。
特開平5-326229号公報
しかしながら、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末の表面をビスマスで被覆する際に、主相が分解し、保磁力が低くなるという問題がある。
本発明の一態様は、保磁力及び分解温度が高い磁石粉末を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末において、サマリウム、鉄及びビスマスを含む主相を有し、サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が3.0at%以下であり、サマリウム、鉄及びビスマスを含み、鉄族元素に対する希土類元素の原子数比が、前記主相の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比よりも大きい被覆層により、前記主相の表面の少なくとも一部が被覆されている。
本発明の一態様によれば、保磁力及び分解温度が高い磁石粉末を提供することができる。
実施例1のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の窒素放出温度の測定結果を示すグラフである。 実施例1のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の分解温度の測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。また、以下の実施形態に記載した構成要素には、当該構成要素に基づいて、当業者が容易に想定できるもの、当該構成要素と実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下の実施形態に記載した構成要素は、適宜組み合わせることが可能である。
サマリウム-鉄-窒素磁石粉末は、分解温度が620℃であるが、これは、結晶格子間に窒素が侵入している侵入型化合物であるため、結晶構造の安定性が低いことが影響していると考えられる。
発明者らは、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末に所定量のビスマスを添加し、かつ、ビスマスを含む主相を有する磁石粉末、即ち、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末とすることにより、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末の高い保磁力を保持しながら、分解温度が高くなることを見出した。
これは、主相がビスマスを含むことにより、結晶構造の安定性が向上するためであると考えられる。この理由は定かではないが、ビスマスが主相の結晶構造が安定化する方向に格子定数を伸縮させている可能性や、ビスマスが主相の表面近傍の酸素や窒素と反応して主相の表面近傍における分解を抑制している可能性が考えられる。
実際に、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、ビスマスの添加量が増大すると、格子定数aが小さくなり、格子定数cが大きくなることが確認されている。これは、主相に含まれるサマリウム及び/又は鉄の所定量がビスマスにより置換されることで、結晶構造の安定性が向上し、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の分解を抑制すると考えられる。
また、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、窒素放出温度が高いことが好ましい。主相におけるビスマスの適切な配置は、窒化条件、窒素の含有量、窒素の分布等によって変化するため、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の窒素放出温度を測定することで判断することができる。
さらに、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、サマリウム、鉄及びビスマスを含み、鉄族元素に対する希土類元素の原子数比が、主相の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比よりも大きい被覆層(以下、被覆層という)により、主相の表面の少なくとも一部が被覆されていることが好ましい。これにより、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の分解をさらに抑制すると考えられる。
このように、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、結晶構造の安定性が高いため、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末の高い保磁力を保持しながら、分解温度を向上させることができる。
[サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末]
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、サマリウム、鉄及びビスマスを含む主相を有する。このため、サマリウム-鉄-窒素系磁石粉末の高い保磁力を保持することができる。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末のサマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比は、3.0at%以下であり、0.68at%以下であることが好ましい(ただし、0at%を除く。)。サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末のサマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が3.0at%を超えると、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の分解温度が低くなる。これは、過剰のビスマスにより、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の結晶構造が不安定になったり、α-Fe等の副相が多く生成したりするためであると考えられる。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の窒素放出温度は、610℃以上であることが好ましく、630℃以上であることがさらに好ましい。サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の窒素放出温度が610℃以上であると、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の分解温度がさらに高くなる。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の熱処理前の保磁力は、20kOe以上であることが好ましい。サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の熱処理前の保磁力が20kOe以上であると、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を高温用途でも使用することができる。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の主相の結晶構造は、ThZn17構造及びTbCu構造のいずれであってもよいが、ThZn17構造であることが好ましい。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、主相以外に、被覆層等の副相を含んでいてもよい。
なお、サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比における、サマリウム、鉄及びビスマスの総量、ビスマスの量とは、主相及び副相を含むサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末全体に含まれる量を意味する。
ここで、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、軟磁性を示す鉄を含むと、磁気特性が低下するため、製造時にサマリウムを量論比よりも過剰に加える。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、ネオジム、プラセオジム等のサマリウム以外の希土類元素、コバルト等の鉄以外の鉄族元素をさらに含んでいてもよい。
なお、全希土類元素中のサマリウム以外の希土類元素の含有量、全鉄族元素中の鉄以外の鉄族元素の含有量は、異方性磁界や磁化の面から、それぞれ30at%未満であることが好ましい。
また、サマリウム以外の希土類元素、鉄以外の鉄族元素は、主相及び副相の両方に含まれていてもよいし、主相及び副相の一方に含まれていてもよい。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、サマリウム、鉄及びビスマスを含み、鉄族元素に対する希土類元素の原子数比が、主相の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比よりも大きい被覆層により、主相の表面の少なくとも一部が被覆されていることが好ましい。これにより、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の分解温度がさらに高くなる。
[サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の製造方法]
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の製造方法は、サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末を不活性ガス雰囲気下で還元拡散して、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を作製する工程と、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を窒化する工程を有する。
なお、不活性ガスとしては、アルゴン等が挙げられる。ここで、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の窒化量を制御する必要があるため、還元拡散時の窒素ガスの使用を避ける必要がある。
また、不活性ガス雰囲気は、ガス精製装置等によって、酸素濃度を1ppm以下にすることが好ましい。
以下、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の製造方法を具体的に説明する。
[サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末]
サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末としては、還元拡散することにより、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を生成することが可能であれば、特に限定されないが、サマリウム-鉄-ビスマス系酸化物粉末、サマリウム-鉄-ビスマス系水酸化物粉末等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
以下、サマリウム-鉄-ビスマス系酸化物粉末及び/又はサマリウム-鉄-ビスマス系水酸化物粉末を、サマリウム-鉄-ビスマス系(水)酸化物粉末という。
また、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末とは、サマリウム、鉄及びビスマスを含む合金の粉末を意味する。
サマリウム-鉄-ビスマス系(水)酸化物粉末は、共沈法により作製することができる。具体的には、まず、サマリウム塩、鉄塩及びビスマス塩を含む溶液にアルカリ等の沈澱剤を添加して、沈澱させた後、ろ過、遠心分離等により沈殿物を回収する。次に、沈殿物を洗浄した後、乾燥させる。さらに、沈殿物をブレードミル等で粗粉砕した後、ビーズミル等で微粉砕することで、サマリウム-鉄-ビスマス系(水)酸化物粉末が得られる。
ここで、ビスマス塩を添加する際には、pHを酸性側に調整して、ビスマス塩を溶解させる。
pHを酸性側に調整する際には、硝酸等の強酸を用いることが好ましい。
なお、サマリウム塩、鉄塩及びビスマス塩における対イオンは、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の無機イオンであってもよいし、アルコキシド等の有機イオンであってもよい。
サマリウム塩、鉄塩及びビスマス塩を含む溶液に含まれる溶媒としては、水を用いることができるが、エタノール等の有機溶媒を用いてもよい。
アルカリとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアを用いることができるが、尿素等の熱等の外的作用で分解して沈澱剤としての作用を示す化合物を用いてもよい。
洗浄した沈殿物を乾燥させる際には、熱風オーブンを用いてもよいし、真空乾燥機を用いてもよい。
なお、サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末を作製した後の工程は、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末が得られるまで、グローブボックス等で大気に曝すことなく、実施される。
[予還元]
サマリウム-鉄-ビスマス系(水)酸化物粉末を還元拡散する前に、水素雰囲気等の還元性雰囲気中で予還元することが好ましい。これにより、カルシウムの使用量を低減することができると共に、粗大なサマリウム-鉄-ビスマス系合金粒子の発生を抑制することができる。
サマリウム-鉄-ビスマス系(水)酸化物粉末を予還元する方法としては、特に限定されないが、水素雰囲気等の還元性雰囲気中、400℃以上の温度で熱処理する方法等が挙げられる。
平均粒径が3μm以下で粒径の揃ったサマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を得るためには、500℃~800℃で、サマリウム-鉄-ビスマス系(水)酸化物粉末を予還元する。これにより、サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末を得ることができる。
[還元拡散]
サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末を不活性ガス雰囲気下で還元拡散する方法としては、特に限定されないが、カルシウム又は水素化カルシウムと、サマリウム-鉄-ビスマス系合金の前駆体粉末を混合した後、カルシウムの融点以上の温度(約850℃)に加熱する方法等が挙げられる。このとき、カルシウムにより還元されたサマリウムがカルシウム融液中を拡散し、鉄及びビスマスと反応することで、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末が生成する。
還元拡散の温度と、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末の粒径との間には相関があり、還元拡散の温度が高い程、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末の粒径が大きくなる。
平均粒径が3μm以下で粒径の揃ったサマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を得るためには、サマリウム-鉄-ビスマス系酸化物粉末を、不活性ガス雰囲気下、850℃~1050℃で1分間~2時間程度還元拡散する。
サマリウム-鉄-ビスマス系酸化物粉末は、還元拡散の進行に伴って結晶化が進行し、ThZn17構造を有する主相が形成される。このとき、主相の表面の少なくとも一部に、被覆層が形成される。
なお、被覆層は、例えば、希酢酸水溶液で処理することにより、除去することができる。
[窒化]
サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を窒化する方法としては、特に限定されないが、アンモニア、アンモニアと水素の混合ガス、窒素、窒素と水素の混合ガス等の雰囲気下、300℃~500℃で、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を熱処理する方法等が挙げられる。
一般に、サマリウム-鉄-窒素系磁石粉末の主相は、高い磁気特性を発現するために、SmFe17の組成が適していることが知られている。このため、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の主相は、SmFe17のSm及び/又はFeがBiにより置換されている組成が最適である。
なお、アンモニアを用いる場合、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を短時間で窒化することが可能であるが、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末中の窒素含有量が最適値よりも高くなる可能性がある。この場合は、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を窒化した後に、水素中でアニールすることで過剰な窒素を結晶格子から排出させることができる。
例えば、アンモニア-水素混合雰囲気下、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を350℃~450℃で10分~2時間熱処理した後、水素雰囲気下、350℃~450℃で30分~2時間アニールする。これにより、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末中の窒素含有量を適正化することができる。
[洗浄]
サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、酸化カルシウム、未反応の金属カルシウム、金属カルシウムが窒化した窒化カルシウム、水素化カルシウム等のカルシウム化合物を含む。この場合、カルシウム化合物を溶解させることが可能な溶媒で、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を洗浄して、カルシウム化合物を除去することが好ましい。
カルシウム化合物を溶解させることが可能な溶媒としては、特に限定されないが、水、アルコール等が挙げられる。これらの中でも、コストやカルシウム化合物の溶解性の点で、水が好ましい。
例えば、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末に水を加えた後、撹拌及びデカンテーションを実施する操作を繰り返すことで、大部分のカルシウム化合物を除去することができる。
なお、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を窒化する前に、サマリウム-鉄-ビスマス系合金粉末を洗浄して、カルシウム化合物を除去してもよい。
[真空乾燥]
洗浄されたサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末は、カルシウム化合物を溶解させることが可能な溶媒を除去するために、真空乾燥させることが好ましい。
洗浄されたサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を真空乾燥させる温度は、常温~100℃であることが好ましい。これにより、洗浄されたサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の酸化を抑制することができる。
なお、洗浄されたサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末をアルコール類等の揮発性が高く、水と混和することが可能な有機溶媒で置換した後、真空乾燥させてもよい。
[脱水素]
サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を洗浄する際に、結晶格子間に水素が侵入する場合がある。この場合、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を脱水素することが好ましい。
サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を脱水素する方法としては、特に限定されないが、真空下又は不活性ガス雰囲気下、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を熱処理する方法等が挙げられる。
例えば、アルゴン雰囲気下、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を150℃~450℃で0~1時間熱処理する。
[解砕]
サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を解砕してもよい。これにより、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の残留磁化及び最大エネルギー積が向上する。
サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を解砕する際には、ジェットミル、乾式及び湿式のボールミル、振動ミル、媒体撹拌ミル等を用いることができる。
なお、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を解砕する代わりに、サマリウム-鉄-ビスマス合金系粉末を解砕してもよい。
[サマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石及びその製造方法]
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石は、サマリウム、鉄及びビスマスを含む主相を有し、サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が3.0at%以下であるが、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を用いて、製造することができる。このため、高性能磁石を製造することができる。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石の製造方法は、例えば、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を所定の形状に成形した後、焼結する。
[成形]
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末を成形するとき、磁場を印加しながら、成形してもよい。これにより、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の成形体が特定の方向に配向するため、磁気特性の高い異方性磁石が得られる。
[焼結]
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の成形体を焼結すると、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石が得られる。
本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の成形体を焼結する方法としては、特に限定されないが、放電プラズマ法、ホットプレス法等が挙げられる。
なお、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の成形と、本実施形態のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末の成形体の焼結は、同一の装置を用いて、実施することもできる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)
硝酸鉄九水和物63.99g、硝酸ビスマス五水和物0.78g、硝酸サマリウム六水和物12.93gを水800mlに溶解させた後、硝酸10mlを加えて3時間撹拌した。次に、撹拌しながら、2mol/L水酸化カリウム水溶液120mlを滴下した後、室温下で一晩撹拌し、懸濁液を作製した。次に、懸濁液をろ過し、濾物を洗浄した後、熱風オーブンを用いて、空気雰囲気下、120℃で一晩乾燥させた。次に、濾物を、ブレードミルにより粗粉砕した後、ステンレスボールを用いる回転ミルにより、エタノール中で微粉砕した。次に、微粉砕した濾物を遠心分離した後、真空乾燥させ、サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末を作製した。
(予還元)
サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末を、水素雰囲気下、600℃で6時間熱処理することにより予還元し、サマリウム-鉄-ビスマス酸化物粉末を作製した。
(還元拡散)
サマリウム-鉄-ビスマス酸化物粉末5gと金属カルシウム2.5gを鉄製るつぼに入れた後、900℃で1時間加熱することにより還元拡散し、サマリウム-鉄-ビスマス合金粉末を作製した。
(窒化)
サマリウム-鉄-ビスマス合金粉末を常温まで冷却した後、水素雰囲気下、380℃まで昇温した。次に、体積比が1:2のアンモニア-水素混合雰囲気下、420℃まで昇温し、1時間保持することで、サマリウム-鉄-ビスマス合金粉末を窒化し、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。次に、水素雰囲気下、420℃で1時間アニールした後、アルゴン雰囲気下、420℃で0.5時間アニールすることで、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の窒素含有量を適正化した。
(洗浄)
窒素含有量を適正化したサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を純水で5回洗浄し、カルシウム化合物等を除去した。
(真空乾燥)
洗浄されたサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末に残留する水を2-プロパノールで置換した後、常温で真空乾燥させた。
(脱水素)
真空乾燥したサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を、真空下、200℃で3時間脱水素した。
なお、予還元以降の工程は、グローブボックスの中で、アルゴン雰囲気下、大気に曝すことなく、実施した。
[実施例2]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物及び硝酸ビスマス五水和物の添加量を、それぞれ58.18g及び7.76gとした以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。
[実施例3]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物及び硝酸ビスマス五水和物の添加量を、それぞれ55.47g及び11.01gとした以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。
[実施例4]
硝酸ビスマス五水和物を予め硝酸水溶液に溶解させ、硝酸ビスマス溶液(硝酸ビスマスの濃度:1g/100ml)を作製した。
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物の添加量を64.63gとし、硝酸ビスマス五水和物の代わりに、硝酸ビスマス溶液0.8mlを添加した以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。
[実施例5]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物の添加量を64.58gとし、硝酸ビスマス五水和物の代わりに、硝酸ビスマス溶液(実施例4参照)7.8mlを添加した以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。
[実施例6]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物及び硝酸ビスマス五水和物の添加量を、それぞれ57.53g及び0.78gとし、硝酸コバルト六水和物4.66gをさらに添加した以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-コバルト-窒素磁石粉末を作製した。
[実施例7]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物及び硝酸ビスマス五水和物の添加量を、それぞれ51.71g及び7.76gとし、硝酸コバルト六水和物4.66gをさらに添加した以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-コバルト-窒素磁石粉末を作製した。
[実施例8]
(洗浄)と(真空乾燥)の間に、以下のように、被覆層を除去した以外は、実施例2と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。
(被覆層の除去)
洗浄されたサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末に希酢酸水溶液を加えてpHを5.5とし、15分間保持することにより、被覆層を除去した。
[比較例1]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物の添加量を64.64gとし、硝酸ビスマス五水和物を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末を作製した。
[比較例2]
(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)において、硝酸鉄九水和物及び硝酸ビスマス五水和物の添加量を、それぞれ51.71g及び15.52gとした以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末を作製した。
[比較例3]
サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末を作製する代わりに、以下のように、サマリウム-鉄-チタン(水)酸化物粉末を作製した以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-チタン-窒素磁石粉末を作製した。
(サマリウム-鉄-チタン(水)酸化物粉末の作製)
硝酸鉄九水和物62.35g、硝酸サマリウム六水和物12.93gを水800mlに溶解させた後、チタンテトライソプロポキシド1.61gを2-プロパノールに溶解させた溶液を加えて、3時間撹拌した以外は、(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)と同様にして、サマリウム-鉄-チタン(水)酸化物粉末を作製した。
[比較例4]
サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末を作製する代わりに、以下のように、サマリウム-鉄-銅(水)酸化物粉末を作製した以外は、実施例1と同様にして、サマリウム-鉄-銅-窒素磁石粉末を作製した。
(サマリウム-鉄-銅(水)酸化物粉末の作製)
硝酸鉄九水和物62.35g、硝酸銅三水和物1.37g、硝酸サマリウム六水和物12.93gを水800mlに溶解させた後、硝酸10mlを加えて3時間撹拌した以外は、(サマリウム-鉄-ビスマス(水)酸化物粉末の作製)と同様にして、サマリウム-鉄-銅(水)酸化物粉末を作製した。
[比較例5]
(サマリウム-鉄-窒素磁石粉末の作製)
比較例1と同様にして、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末を作製した。
(ビスマスによる被覆)
サマリウム-鉄-窒素磁石粉末2g、金属カルシウム1g、酸化ビスマス0.95gを鉄製るつぼに入れた後、860℃で1時間加熱することにより還元し、サマリウム-鉄-窒素磁石粉末の表面をビスマスで被覆した。ここで、主相の分解温度(620℃)、還元反応の効率を考慮して、還元温度を、カルシウムの融点(842℃)より少し高い860℃とした。
その後、実施例1と同様にして、(洗浄)、(真空乾燥)、(脱水素)を実施し、表面がビスマスで被覆されているサマリウム-鉄-窒素磁石粉末を作製した。
次に、実施例1~8、比較例1~4の磁石粉末のX線回折(XRD)スペクトルを測定したところ、実施例1~8、比較例1~4の磁石粉末は、主相がThZn17構造を有することを確認した。また、不活性ガス融解-熱伝導度法により、実施例1~8、比較例1~4の磁石粉末の窒素含有量を測定したところ、いずれも3.3質量%程度であり、実施例1~8、比較例1~4の磁石粉末は、窒素含有量が高い磁気特性を発現するために適していることを確認した。
次に、実施例1~8、比較例1~5の磁石粉末の組成を分析した。
[組成]
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により、磁石粉末の組成を分析した。
なお、本分析において、サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が0at%を超えて、0.01at%未満である場合は、検出することはできるが、分析誤差が大きいため、表1中に、「<0.01」と記載した。
次に、実施例1~8、比較例1~5の磁石粉末の窒素放出温度及び分解温度、保磁力を測定した。
[窒素放出温度及び分解温度]
質量分析計が接続されている熱重量測定装置により、磁石粉末の窒素放出温度及び分解温度を測定した。測定条件は、アルゴン雰囲気下、5℃/分の昇温速度とした。
図1に、実施例1のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の窒素放出温度の測定結果を示す。図1は、質量電荷比(m/z)が28のN に由来するイオン電流の温度変化を示しており、2本の補助線を引き、その交点から、窒素放出温度を求めた。
ここで、2本の補助線は、500℃~550℃のイオン電流の値を用いて引いた直線と、傾きの値が最も大きくなる、所定の点±10℃のイオン電流の値を用いて引いた直線である。ただし、500℃~550℃のイオン電流の値を用いて直線が引けない場合には、450℃~500℃のイオン電流の値を用いて直線を引いた。
図2に、実施例1のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の分解温度の測定結果を示す。図2は、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末の加熱による重量変化を示しており、2本の補助線を引き、その交点から、分解温度を求めた。
ここで、2本の補助線は、500℃~550℃の重量の値を用いて引いた直線と、傾きの絶対値が最も大きくなる、所定の点±10℃の重量の値を用いて引いた直線である。ただし、500℃~550℃の重量の値を用いて直線が引けない場合には、450℃~500℃の重量の値を用いて水平な補助線を引いた。
[熱処理前の保磁力]
磁石粉末を、熱可塑性樹脂と混合し、20kOeの磁場中で配向させ、試料を作製した。次に、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、温度27℃、最大印加磁場90kOeの条件で、磁化容易軸方向に試料を設置し、磁石粉末の熱処理前の保磁力を測定した。
[被覆層]
磁石粉末の一部を採取し、熱硬化性エポキシ樹脂と混錬し、熱硬化させた後、集束イオンビーム(FIB)を照射してエッチング加工することにより、断面を露出させ、試料を作製した。
走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、試料を観察し、被覆層の有無を確認した。
なお、エネルギー分散型X線分光法(EDS)により、被覆層が有る磁石粉末の主相と被覆層の組成を分析したところ、被覆層の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比が、主相の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比よりも大きいことがわかった。
ここで、主相と被覆層は、FE-SEM反射電子像又はEDSマッピングにより、区別することができる。
表1に、磁石粉末の組成、コバルト、チタン、銅の有無、窒素放出温度、熱処理前の保磁力、分解温度、被覆層の有無を示す。
Figure 0007318885000001
表1から、実施例1~6のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、熱処理前の保磁力及び分解温度が高いことがわかる。
これに対して、比較例1のサマリウム-鉄-窒素磁石粉末は、ビスマスを含まないため、分解温度が低い。
比較例2のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が8.26at%であるため、分解温度が低い。
比較例3のサマリウム-鉄-チタン-窒素磁石粉末は、ビスマスを含まず、チタンを含むため、熱処理前の保磁力及び分解温度が低い。
比較例4のサマリウム-鉄-銅-窒素磁石粉末は、ビスマスを含まず、銅を含むため、熱処理前の保磁力及び分解温度が低い。
比較例5の表面がビスマスで被覆されているサマリウム-鉄-窒素磁石粉末は、熱処理前の保磁力が極めて小さく、窒素放出温度及び分解温度を確認することができなかった。比較例5の表面がビスマスで被覆されているサマリウム-鉄-窒素磁石粉末のX線回折(XRD)スペクトルを測定したところ、SmN相とα-Fe相が確認されたことから、主相が分解していると考えられる。
次に、実施例1、2、比較例1、2の磁石粉末の格子定数を測定した。
[格子定数]
内径0.3mmのボロシリケートガラスキャピラリーに、磁石粉末を充填した。次に、SPring-8(高輝度光科学研究センター(JASRI)製)のビームラインBL02B2において、大型デバイ・シェラーカメラを用いて、放射光X線回折法(透過法)により、X線回折を測定した。このとき、X線の波長を0.495046Åとし、検出器としては、イメージングプレートを用い、露光時間を10分間とし、測定温度を室温とした。
表2に、磁石粉末の格子定数の測定結果を示す。
Figure 0007318885000002
表2から、サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比の増大に伴って、磁石粉末の格子定数aが小さくなり、格子定数cが大きくなることがわかる。このことは、主相に含まれるサマリウム及び/又は鉄の一部がビスマスで置換されていることを示唆している。
次に、実施例1~5、比較例1、2、5の磁石粉末の熱処理後の保磁力を測定した。
[熱処理後の保磁力]
グローブボックスの中に設置した熱処理装置を用いて、磁石粉末の一部を採取し、真空雰囲気下、550℃で5分間熱処理した後、熱可塑性樹脂と混合し、20kOeの磁場中で配向させ、試料を作製した。次に、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、温度27℃、最大印加磁場90kOeの条件で、磁化容易軸方向に試料を設置し、磁石粉末の保磁力を測定した。
次に、実施例1~5、比較例1、2、5の磁石粉末を用いて、焼結磁石を作製した。
[焼結磁石の作製]
ここでは、等方性の焼結磁石を作製した。
具体的には、グローブボックスの中で、縦5.5mm、横5.5mmの超硬合金製の直方体型ダイに磁石粉末0.5gを充填した後、大気に曝すことなく、サーボ制御型プレス装置による加圧機構を備えた放電プラズマ焼結装置内に設置した。次に、放電プラズマ焼結装置内を真空(圧力2Pa以下及び酸素濃度0.4ppm以下)に保持した状態で、圧力1200MPa、温度550℃の条件で、磁石粉末を1分間通電焼結し、焼結磁石を作製した。ここで、磁石粉末を通電焼結した後は、不活性ガスで大気圧に戻し、温度が60℃以下になってから、焼結磁石を大気中に取り出した。
高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法により、焼結磁石の組成を分析し、焼結磁石の組成が磁石粉末と同等であることを確認した。
走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、焼結磁石の断面を観察し、焼結磁石の被覆層の組成、主相の組成及び被覆層による主相の表面の被覆が磁石粉末と同等であることを確認した。
[焼結磁石の保磁力]
振動試料型磁力計(VSM)を用いて、温度27℃、最大印加磁場90kOeの条件で、焼結磁石の保磁力を測定した。
Figure 0007318885000003
表3から、実施例1~5の磁石粉末は、熱処理後の保磁力及び焼結磁石の保磁力が高いことがわかる。
ここで、磁石粉末の熱処理後の保磁力が磁石粉末の熱処理前の保磁力よりも低下しているのは、表面酸化層の影響であると考えられる。
これに対して、比較例1、2、5の磁石粉末は、熱処理後の保磁力及び焼結磁石の保磁力が低い。これは、比較例1、2、5の磁石粉末が550℃における熱処理または焼結によって、主相の表面近傍において、局所的な分解が発生したためであると考えられる。
サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、ネオジム磁石に対し、キュリー温度が高く、温度に対する保磁力の変化が小さいため、高い磁気特性と耐熱性を併せ持つサマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石を製造することが可能である。サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石は、例えば、エアコン等の家電製品、生産ロボット、自動車等に搭載される。また、サマリウム-鉄-ビスマス-窒素磁石粉末は、高い磁性特性と耐熱性が求められるモーター、センサー等に使用される焼結磁石及びボンド磁石の原料として利用することができる。

Claims (3)

  1. サマリウム、鉄及びビスマスを含む主相を有し、
    サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が3.0at%以下であり、
    サマリウム、鉄及びビスマスを含み、鉄族元素に対する希土類元素の原子数比が、前記主相の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比よりも大きい被覆層により、前記主相の表面の少なくとも一部が被覆されていることを特徴とするサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末。
  2. 窒素放出温度が610℃以上であることを特徴とする請求項1に記載のサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系磁石粉末。
  3. サマリウム、鉄及びビスマスを含む主相を有し、
    サマリウム、鉄及びビスマスの総量に対するビスマスの比が3.0at%以下であり、
    サマリウム、鉄及びビスマスを含み、鉄族元素に対する希土類元素の原子数比が、前記主相の鉄族元素に対する希土類元素の原子数比よりも大きい被覆層により、前記主相の表面の少なくとも一部が被覆されていることを特徴とするサマリウム-鉄-ビスマス-窒素系焼結磁石。
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