JP7317590B2 - 白濁液状組成物 - Google Patents
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しかしながら、油剤は一般に水相よりも軽いため、水中油型化粧料においては、経時に伴い、油滴が化粧料表面近くに浮上するクリーミングや、油滴が合一して系から分離する現象が起きやすい。クリーミングや分離が起こると一般に化粧料の品質が低下するため、水中油型乳化化粧料においては、これらの現象を抑制するためのさまざまな工夫が行われている。
さらに、内油相比の引き上げや、固形油分の高配合も、液状化粧料の製造には不向きである。油滴の浮上スペースがほぼなくなるほど内油相比を上げたり、固形油分を高配合し過ぎると、系は必然的に乳液状またはクリーム状となるからである。
白濁化粧料は一般に、界面活性剤と油分を溶解したエタノールを水相に分散させて製造される。しかしながら、当該製造工程では、界面活性剤と油分のバランスの調整が難しく、白濁の程度が不十分であったり、経時安定性に優れる白濁化粧料を得ることは容易ではなかった。
さらに、当該成分(a)~(d)の混合物の比重が0.990~1.045の範囲内であり、(e)1価の低級アルコール、(f)多価アルコール、及び(g)水を含む水相の比重が前記成分(a)~(d)の混合物の比重の0.9910~1.0018倍の範囲内である場合に、平均乳化粒子径が0.5~3.0μmの範囲内で白濁した外観を有し、乳化安定性に優れ、30℃における粘度が500mPa・S以下である液状の水中油型組成物が得られることを見出した。
さらに、本発明者らは、成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が0.15~1.5の範囲内という条件下で、成分(a)~(c)を用いて(d)を乳化し、水相成分として(h)疎水基を有する水溶性高分子を配合することによっても、前記目的の水中油型組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1] (a)ポリオキシエチレンフィトステロール、(b)ジステアリン酸ポリエチレングリコール、(c)ポリオキシエチレンべへニルエーテル、(d)油剤、(e)1価の低級アルコール、(f)多価アルコール、(g)水
を含有し、
成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が、0.15~1.5の範囲内である、
白濁液状組成物。
[2] さらに、成分(a)~(c)の配合量比が、(a):(b):(c)=100:1:1~50:30:30の範囲内である、
前記[1]に記載の白濁液状組成物。
[3] さらに、成分(a)~(d)の混合物の比重が0.990~1.045の範囲内であり、成分(e)~(g)を含む水相の比重が、前記成分(a)~(d)の混合物の比重の0.9910~1.0018倍の範囲内であり、成分(a)~(d)を含む油滴の平均乳化粒子径が0.5~3.0μmの範囲内であり、30℃における粘度が500mPa・S以下である、
前記[1]または[2]に記載の白濁液状組成物。
[4] (a)ポリオキシエチレンフィトステロール、(b)ジステアリン酸ポリエチレングリコール、(c)ポリオキシエチレンべへニルエーテル、(d)油剤、(g)水、(h)疎水基を有する水溶性高分子、を含有し、
成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が、0.15~1.5の範囲内であり、
成分(a)~(d)を含む油滴の平均乳化粒子径が0.5~3.0μmの範囲内であり、
30℃における粘度が500mPa・S以下である、
白濁液状組成物。
[5] さらに、成分(a)~(c)の配合量比が、(a):(b):(c)=100:1:1~50:30:30の範囲内である、
前記[4]に記載の白濁液状組成物。
[6] (d)油剤として、比重が1より大きいシリコーン油を含むことを特徴とする、前記[1]~[5]のいずれかに記載の白濁液状組成物。
[7] 前記シリコーン油が、フェニル基を1以上有するシリコーン油である、前記[6]に記載の白濁液状組成物。
[8] 成分(h)の疎水基がアルキル基である、前記[4]~[7]のいずれかに記載の白濁液状組成物。
本開示に係る白濁液状組成物は、水相中に、成分(a)~(d)からなる乳化粒子が安定に分散した組成物である。当該乳化粒子は、(d)油剤の周囲を成分(a)~(d)からなるゲル相が取り囲んだ構造をしており、平均乳化粒子径は0.5~3.0μmである。本願組成物の白濁という特徴は、平均乳化粒子径が上記範囲内である巨大な乳化粒子が、水相中に安定に分散していることに起因すると考えられる。そして、粘度は、30℃において500mPa・S以下と極めて低く、常温(20℃)で液状の組成物である。
なお、前記「0.9910~1.0018倍」という範囲は、さらに「0.9944~0.9981倍」であってもよい。これにより、乳化安定性が一段と向上するからである。
なお、上記第三の態様では、さらに、成分(e)及び(f)を含有してもよい。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(a)ポリオキシエチレンフィトステロールとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のものが挙げられる。
好適な化合物の例としては、ポリオキシエチレン(5モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-5)、ポリオキシエチレン(10モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-10)、ポリオキシエチレン(20モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-20)、ポリオキシエチレン(30モル)フィトステロール(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BPS-30)等が挙げられる。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(b)ジステアリン酸ポリエチレングリコールとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が4~12のものが挙げられる。
好適な化合物の例としては、ポリオキシエチレン(4モル)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 200DIS)、ポリオキシエチレン(6モル)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 300DIS)、ポリオキシエチレン(8モル)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 400DIS)、ポリオキシエチレン(12モル)ジステアリン酸(例えば、日本エマルジョン社製、Emalex 600DIS)等が挙げられる。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(c)ポリオキシエチレンべへニルエーテルとしては、エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~20のものが挙げられる。
好適な化合物の例としては、ポリオキシエチレン(5モル)ベヘニルエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BB-5)、ポリオキシエチレン(10モル)ベヘニルエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BB-10)、ポリオキシエチレン(20モル)ベヘニルエーテル(例えば、日光ケミカルズ社製、Nikkol BB-20)等が挙げられる。
本開示に係る白濁液状組成物における(d)油剤は、内相としての油相を構成するものであり、油分や油性成分を包含する。本開示に係る白濁液状組成物に用いることができる(d)油剤は、特に限定されることはなく、化粧品や医薬部外品に通常用いられる油剤を適宜使用することができる。
そのような油分の例としては、液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、合成エステル油、シリコーン油等が挙げられる。また、油性成分の例としては、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、香料等が挙げられる。
特に、比重が1より大きいシリコーン油は、油滴の浮上を制限する効果も期待できるため、液状の水中油型組成物には積極的に配合したい成分である。そのようなシリコーン油の例としては、フェニル基を1以上有するシリコーン油が挙げられ、具体的な化合物としては、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、ジフェニルジメチコン等が挙げられる。
本開示に係る白濁液状組成物では、(d)油剤の0%、10%、20%、30%、40%、50%が、比重が1より大きいシリコーン油であってもよい。
本開示に係る白濁液状組成物では、成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が、0.15~1.5の範囲内であることが好ましい。当該値が0.15未満であると乳化が困難な場合があり、1.5を超えると白濁ではなくなる場合がある。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(e)1価の低級アルコールとしては、特に限定されることはなく、化粧料や医薬部外品に通常用いられるものを配合することができる。具体的な化合物の例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。このうち、エタノールを特に好適に用いることができる。
本開示に係る白濁液状組成物における(e)1価の低級アルコールの配合量は、1~30質量%であってよく、さらに5~20質量%であってもよい。また、成分(e)として、1種または2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(f)多価アルコールとしては、特に限定されることはなく、化粧料や医薬部外品に通常用いられるものを配合することができる。具体的な化合物の例としては、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解糖還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE-テトラハイドロフルフリルアルコール;POP-ブチルエーテル;POP・POE-ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテルリン酸;POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等が挙げられる。
このうち、2-3価のアルコールが好ましく、特に好ましくは、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンである。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(g)水としては、化粧料や医薬部外品に通常用いられるものを配合することができ、例えば、蒸留水、逆浸透水、イオン交換水等の精製水、及び水道水等が挙げられる。
本開示に係る白濁液状組成物に好適に用いることができる(h)疎水基を有する水溶性高分子としては、例えば、天然又は半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子に、アルキル基等の疎水基を導入したものが挙げられる。アルキル基としては、炭素数が6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上のものが好適である。
本開示に係る白濁液状組成物における前記界面活性剤の配合量は、0.001~1質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01~0.1質量%である。
本開示に係る液状組成物では、L値が45以下であることが好ましく、より好ましくは30以下程度、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。なお、本発明においては、L値が20以下である場合に、“白濁が高い”と判断する。
最初に、本願実施例で用いた評価方法について説明する。
各組成物を、室温(約20℃)で2週間保存した後、当該組成物の状態を目視で観察し、下記基準に従って乳化安定性を評価した。
A:クリーミングまたは分離が全く認められなかった。
B:クリーミングがごくわずかに認められた。
C:クリーミングが若干認められたが、すこし振ると容易に均一になった。
D:クリーミングまたは分離が少し認められた。
E:クリーミングまたは分離が顕著に認められた。
本発明では、A-Cである場合に乳化安定性に優れていると判断し、特にAである場合に乳化安定性に非常に優れると判断した。
製造直後の組成物について、粒子径測定装置LA-950V2(株式会社堀場製作所製)を用いて平均乳化粒子径を測定した。
色差計Spectrophotometer SE7700(日本電色工業株式会社製)を用いて、各組成物のL値を測定した。
各組成物を30℃で60分間保温した後、B型回転粘度計(ビスメトロン粘度計、芝浦システム株式会社製)を用いて粘度を測定した。
表1に記載した組成の油相パーツ6種類(X1~X6)と、表2及び表3に記載した組成の水相パーツ16種類(Y1~Y16)を製造し、各パーツの比重を測定した。油相パーツ1種類と水相パーツ1種類を組み合わせて、定法に従い、合計68通りの水中油型組成物を製造した。油相パーツと水相パーツの混合比(質量比)は、油相パーツ:水相パーツ=1:10である。
得られた組成物について、当該水相パーツの比重を当該油相パーツの比重で除した値(=水相パーツの比重/油相パーツの比重)を計算するとともに、前述した方法に従って乳化安定性(室温、2週間)を測定した。結果を表4及び表5に示す。
よって、成分(a)~(g)を配合し、成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が0.15~1.5の範囲内となるように調節することで、白濁度の高い液状組成物が得られることが示された。
表4及び表5において乳化安定性が“A”であった組成物のうち、油相パーツとしてX1~X4を用いて得られた9種類について、さらにL値、平均乳化粒子径、及び粘度を測定した結果を表6に示す。
次に、水溶性高分子の配合による効果を検討した。
表7に記載した処方の水中油型組成物を定法に従って製造し、表中の項目について前述の方法に従って評価した。結果を表7に合わせて示す。
Claims (6)
- (a)ポリオキシエチレンフィトステロール
(b)ジステアリン酸ポリエチレングリコール
(c)ポリオキシエチレンべへニルエーテル
(d)比重が1より大きい油剤
(e)1価の低級アルコール
(f)多価アルコール
(g)水
を含有し、
成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が、0.15~1.5の範囲内であり、
さらに、成分(a)~(d)の混合物の比重が0.990~1.045の範囲内であり、
成分(e)~(g)を含む水相の比重が、前記成分(a)~(d)の混合物の比重の0.9910~1.0018倍の範囲内であり、
成分(a)~(d)を含む油滴の平均乳化粒子径が0.5~3.0μmの範囲内であり、
30℃における粘度が500mPa・S以下である
白濁液状組成物。 - さらに、成分(a)~(c)の配合量比が、(a):(b):(c)=100:1:1~50:30:30の範囲内である、請求項1に記載の白濁液状組成物。
- (a)ポリオキシエチレンフィトステロール
(b)ジステアリン酸ポリエチレングリコール
(c)ポリオキシエチレンべへニルエーテル
(d)比重が1より大きい油剤
(e)1価の低級アルコール
(f)多価アルコール
(g)水
(h)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
を含有し、
成分(d)の配合量に対する成分(a)~(c)の配合量の総和({(a)+(b)+(c)}/(d))が、0.15~1.5の範囲内であり、
成分(a)~(d)を含む油滴の平均乳化粒子径が0.5~3.0μmの範囲内であり、
30℃における粘度が500mPa・S以下である、
白濁液状組成物。 - さらに、成分(a)~(c)の配合量比が、(a):(b):(c)=100:1:1~50:30:30の範囲内である、請求項3に記載の白濁液状組成物。
- (d)比重が1より大きい油剤として、比重が1より大きいシリコーン油を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の白濁液状組成物。
- 前記シリコーン油が、フェニル基を1以上有するシリコーン油である、請求項5に記載の白濁液状組成物。
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