JP7316560B2 - 洗浄用編布 - Google Patents

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Description

本発明は、編布を用いた洗浄具に関する。
従来、編布は、衣類だけでなく、袋体、または洗浄具等の種々の用途に用いられている。
たとえば、下記特許文献1には、ウレタンフォーム等の樹脂発泡体からなるスポンジの洗浄性を改善するために、袋状に形成された編布(ネット)に当該スポンジを収納してなる洗浄具が提案されている。
また、スポンジを収納せず、編布だけで洗浄具を構成する場合もある。
一般的に、洗浄用編布は、洗浄用織物に比べて嵩高いため、空気や液体の含有率が高く、泡立ち性に優れる。
実開平01-168251号公報
一般に、編布は、断面円形の糸で構成されており、被洗浄物の表面の汚れを拭き取るようにして除去することに適している。換言すると、従来の編布を用いて構成された洗浄用具は、被洗浄物の表面の汚れを掻き取ることによって洗浄する性能(掻き取り性)が充分ではなかった。したがって、従来の編布では、被洗浄物の表面にこびり付いた汚れは取れ難かった。
これに対し、掻き取り性を向上させるため、フィルムを細条に裁断してなる断面縦長のスリット糸を用いる場合がある。スリット糸であれば、縦長の断面両端において汚れを掻き取ることが可能であるため、スリット糸で構成された洗浄用編布は、断面円形の糸で構成された洗浄用編布に比べ、掻き取り性に優れる。尚、ここでいう縦長とは、長軸方向に顕著に長いことを意味し、特定の方向を指すものではない。
しかし、スリット糸は、上述のとおりフィルムを裁断して製造される。そのため、その長さは原料となるフィルムの長さに依存し、一般的には、裁断物を繋ぎ合わせて数千メートルのスリット糸が構成され、最長でも1万メートル程度がスリット糸の長さの限度であった。したがって、編布を連続生産する場合には、糸の切り替えが多くなってしまい、生産性が悪いという問題があった。加えて、断面円形の糸に比べ、スリット糸は断面のアスペクト比が極端に大きい。そのため、編機に用いる際にボビンから繰り出されたスリット糸に捩れが生じると切れやすく生産性に問題があった。
またスリット糸から構成される洗浄用具は、スリット糸の断面両端が角度の小さいエッジになっているため、手で握った際の感触(ホールド感)が良くない。
ところで、断面円形の糸を用いてなる洗浄用編布には、さらに以下の問題点があった。即ち、一般的に編物は、織物に比べて糸同士の相互間隔がずれやすい。特に糸の断面が円形であると、隣り合う糸同士が係り合わないため、使用時の外圧によって糸同士の位置がずれやすい。したがって従来の洗浄用編布を繰り替えし使用すると、荷重のかかる方向に糸が寄ってしまい、編目において糸が疎の部分と密な部分と(以下、単に疎密ともいう)が生じ易く、その結果、外観が悪くなるという問題、および洗浄性の低下の虞があった。
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、被洗浄物の表面の汚れを掻き取る掻き取り性に優れるとともに生産性に優れ、かつ繰り返し使用した場合であっても編目に疎密が生じ難い洗浄用編布を提供するものである。
本発明の洗浄用編布は、構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、上記異型形状は、上記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ上記異型性糸のモノフィラメントの繊度が110dtex以上750dtex以下であり、上記異型糸1本以上および断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部が2つ以下である非異型性糸1本以上を複数本取して編成されることを特徴とする。
上記構成を有する本発明の洗浄用編布は、被洗浄物の表面の汚れに対する掻き取り性に優れるとともに生産性に優れ、かつ繰り返し使用した場合であっても編目に疎密が生じ難い。本発明の効果の詳細は、以下において明らかにする。
本発明の洗浄用編布の一実施態様を示す斜視図である。 本発明に用いられる異型性糸の一例を示す断面図である。 本発明に用いられる異型性糸の他の例を示す断面図であり、図3(a)は断面において突出部を4つ有する異型性糸の断面図であり、図3(b)は断面が三角形状である異型性糸の断面図であり、図3(c)は断面が扁平であり、かつ多数の突出部を有する異型性糸の断面図である。 本発明の洗浄用編布の他の実施態様を示す斜視図である。 本発明の第三実施形態における洗浄用編布の一例を示す概略斜視図である。 図5に示す洗浄用編布のVI-VI断面図である。 図5に示す洗浄用編布における第一編布の部分上面図である。 本発明の第三実施形態にかかる洗浄具の断面図である。 実施例1に用いた異型性糸の断面の顕微鏡写真である。
本発明者らは、断面円形の糸またはスリット糸を用いてなる従来の洗浄用編布および洗浄用織物の課題を詳細に分析し、これを解決し、改善された洗浄用編布を提供する。洗浄用編布は、一般的には、水などの液体および洗剤を用いて被洗浄物を洗浄する際に用いられる。本発明者らは、断面が異型性である異型性糸に着眼し、これを用いて洗浄用編布を構成することで、従来の洗浄用編物または洗浄用織物が有する複数の課題を解決し、優れた洗浄用編物を提供することを可能とした。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
尚、本発明または本明細書において、編布とは、糸でループを連続して作成し、上記ループに他の糸または同じ糸の続きを引っ掛けることで繰り返し作られた編目で構成された布地である。また、一方方向にループを連続して形成する方向を横方向といい、横方向に連続する編目をコースといい、コースが配列する方向(即ち、横方向に対し略垂直方向)を編方向という。
本発明または本明細書において、特段の断りがない場合には、洗浄用編布に用いられる糸に関し断面とは、当該糸の横断面を指す。
<第一実施形態>
以下に、本発明の洗浄用編布100の第一実施形態について図1から図3を用いて説明する。図1は、洗浄用編布100の一実施態様を示す斜視図である。図2は、異型性糸10の一例を示す断面図である。図3は、異型性糸10の変形例を示す断面図であり、図3(a)は断面30において突出部22を4つ有する異型性糸40の断面図であり、図3(b)は断面32が三角形状である異型性糸42の断面図であり、図3(c)は断面44が扁平であり、かつ多数の突出部22を有する異型性糸44の断面図である。
図1に示すように、本実施形態にかかる洗浄用編布100は、第一面112と第二面114とが長辺において連続するとともに、短辺の一方に開口110を備える袋状の形状をなす。第一面112と第二面114との連続部分は、任意の手段で接合されてもよいし、または連続的に編まれたことにより輪をなしていてもよい。かかる形状の洗浄用編布100は、開口110から使用者の指または手のひらを挿入した状態で洗浄作業を行うことができ、被洗浄物の細部や曲面等を良好に洗浄することができる。
ただし、かかる形状は本発明を限定するものではなく、図示省略するが、たとえば本願発明の洗浄用編布は、図1に示される開口110が閉じられた二重または三重以上の積層編布体であってもよいし、一枚の編布から構成されてもよい。
洗浄用編布100は、構成糸として、断面12が異型形状である異型性糸10(図2参照)を含んで構成されている。本発明において異型形状とは、図2に示すとおり、断面12において描かれる最大内円14より外側方向に突出した頂点20を有する突出部22を3つ以上有する形状を指す。最大内円14とは、断面12の外縁24内に描かれ得る最大面積の仮想円を意味する。また最大内円14より外側方向に突出した頂点20とは二本の直線からなる尖った凸部の頂点だけではなく、曲線上における頂点も含む。突出部22は、断面12の一部であって、最大内円14の外側に位置し頂点20を備える凸部である。
異型性糸10を用いて編まれた洗浄用編布100が被洗浄物の表面に擦りつけられた場合、突出部22の側面や頂点20近傍が上記表面に当たり、上記表面に付着する汚れが掻き取られる。したがって洗浄用編布100は掻き取り性に優れる。
本実施形態における断面12は、図2に示すとおり3つの突出部22を有する。図2に示す断面12において、3つの突出部22は、最大内円14の中心から放射方向に延在するとともに、互いの間隔が略等しく配置されている。突出部22の基端は、いずれも最大内円14の外縁に接している。掻き取り性が良好であるという観点からは、最大内円14の半径rに対し、突出部22の突出高さhは、0.8倍以上4倍以下が好ましく、1.0以上3倍以下がより好ましく、1.2倍以上2.5倍以下がさらに好ましい。ここで突出高さhとは、頂点20から最大内円14の外縁24まで伸長する、頂点20の接線lに対する垂線mの長さであって、一つの断面12において確認される各突出部22の上記垂線mの長さの算術平均値を指す。
図2に示す突出部22は、いずれもその長さが略同等であり、各頂点20を結んで示される外円15と最大内円14とは相似しているか、あるいは概ね相似している。
洗浄用編布100は、異型性糸10を有することにより、掻き取り性が良好であるとともに、繰り返しの使用によっても外観が不良になり難い等の長所を有する。これは、洗浄用編布100を構成する構成糸に異型性糸10を含むため、使用時に構成糸に力がかかった際に、編目を構成する糸同士が互いに滑り難いことに起因する。つまり、断面が異型の糸同士、または断面が異型の糸と断面が非異型の糸とは、互いに係り合い易く、互いの位置ずれが起こり難い。そのため、繰り返しの使用によっても、編目において疎密が生じ難く、外観が良好に維持され易い。
また、編目に疎密が生じると、洗浄用編布100の洗浄性が低下する虞があるが、そのような洗浄性の低下も洗浄用編布100では起こり難い。
図3に異型性糸10の変形例を示す。
図3(a)は、異型性糸40の断面30が、3つを超える突出部22を有する態様を示すものであり、具体的には突出部22を4つ有した例を示している。このように最大内円14の中心から放射方向に延在する突出部22は、3つ以上任意の数であってよい。ただし、異型性糸40の構成樹脂の種類や突出高さ等にもよるが、あまり突出部22の数が多くなり過ぎると各突出部22が小さくなり掻き取り性が十分でなくなる場合もある。かかる観点からは、一つの断面30における突出部22の数は、6つ以下であることが好ましく、5つ以下であることがより好ましい。
図3(b)は、異型性糸42の断面32が、多角形である態様を示すものであり、具体的には断面32が三角形である態様を例示している。このように断面多角形の糸は、断面32における最大内円14に対し、外方向に頂点20が突出しているため、断面円形の糸に比べて掻き取り性が良い。但し、あまり角が多くなり過ぎると、一つの突出部22が小さくなるため、掻き取り性が十分でなくなる虞がある。かかる観点からは、多角形である断面32としては、三角形、四角形、または五角形であることが好ましい。異型性糸42は、仮想直線16と外縁25とが重なっている。
図2、図3(a)、図3(b)は、いずれも、各頂点20を結んだ外円15(図2参照)が略真円である。略真円とは、完全な真円だけでなく、概ね円であると確認される程度の円状を含む。このように外円15が略真円である異型性糸は、断面において最大内円14の中心から放射方向にバランスが取れており、掻き取り性が糸の外周において偏りなく発揮されるため、好ましい。
図3(c)は、異型性糸44の断面34が、扁平形状であり、かかる扁平形状の断面34において示される最大内円14に対し、突出する複数の突出部22を備える態様を例示している。具体的には、突出部22を7つ有する扁平形状である断面34を示している。異型性糸44は、基端が最大内円14の外縁に接触しない突出部22を含んでいる。
以上に述べるとおり、本発明に用いられる異型性糸の断面形状は種々の態様を含むが、特に掻き取り性に優れるという観点では、下記態様が好ましい。
即ち、図2に示すとおり、異型形状である断面12において、一の突出部22aの第一頂点20aと、一の突出部22aに隣り合う第二の突出部22bの第二頂点20bとを結ぶ断面12の外縁24の中間部が、第一頂点20aと第二頂点20bとを直線で結んでなる仮想直線16に対し、最大内円14寄りに存在している態様が好ましい。かかる態様は、第一頂点20aと第二頂点20bとに対し上記中間部が凹部となり、外縁24における凹凸が顕著となることから、特に掻き取り性に優れる。
図3(a)および図3(c)も、図2と同様に、断面12の外縁24の中間部が、第一頂点20aと第二頂点20bとを直線で結んでなる仮想直線16に対し、最大内円14寄りに存在しており、掻き取り性に特に優れる。
上記構成糸とは、洗浄用編布100を構成するための糸を意味する。本実施形態にかかる洗浄用編布100は、実質的に異型性糸10のみから構成されてもよい。かかる構成によれば、特に掻き取り性に優れる洗浄用編布100を提供することができる。
次に、異型性糸10の繊度について説明する。本発明において上記繊度は、110dtex以上750dtex以下である。
ここで、繊度とは、異型性糸10の太さを示し、より詳しくは、糸の単位長さあたりの重さであり、所謂恒長式番手を指す。「1dtex」は10000メートルの重さが1.0gである。上記繊度の測定方法は「JIS L 1023 化学繊維フィラメント糸試験方法」に準拠する。
上記繊度が110dtex以上であることにより、繰り返し使用した場合であっても良好な外観が維持され易く、耐摩耗性も良好である。かかる観点から、上記繊度は、115dtex以上であること好ましく、120dtex以上であることがより好ましく、200dtexであることがさらに好ましく、300dtex以上であることが特に好ましい。
一方、上記繊度が750dtex以下であることにより、製造工程における機械への糸の引っ掛かりを防止することができ良好な生産性が示される。かかる観点からは、上記繊度は、725dtex以下であることが好ましく、700dtex以下であることがより好ましい。
異型性糸10は、異型性の断面形状を有する異型性モノフィラメント、および異型性の断面形状を有するモノフィラメントを含む異型性マルチフィラメントのいずれも包含する。異型性マルチフィラメントは、実質的に複数の異型性モノフィラメントが合わされてなる態様および異型性モノフィラメントと、非異型性モノフィラメントが合わされてなる態様のいずれであってもよい。尚、本明細書においてモノフィラメントが合わされてマルチフィラメントをなすという場合には、モノフィラメントを互いに縒り合せて一本のマルチフィラメントをなす態様、およびモノフィラメントを束ねて一本のマルチフィラメントをなす態様のいずれも含む。
ここで非異型性モノフィラメントとは、異型性モノフィラメントではない糸を指し、具体的には、断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部が2つ以下である糸を指す。非異型性モノフィラメントの例としては、例えば上記突出部を実質的に有しない、断面円形、断面楕円形または断面長形等の糸が挙げられる。
異型性糸10の製造方法は特に限定されないが、一般的な紡糸方法において、所望の断面形状となるよう吐出孔の形状が設計された口金を用いることによって異型性糸10を製造することができる。上記紡糸方法は、溶融紡糸方法、湿式紡糸方法、または乾燥紡糸方法のいずれの方法であってもよい。
上述するとおり異型性糸10は、スリット糸とは異なり、一般的な紡糸方法により製造され得るため、異型性糸10を所望の長さに設計することができる。したがって、編機において連続的に編物を編む場合には、途中で糸の切り替えを行うことなく、または糸の切り替え回数を減らすことができる。そのため、洗浄用編布100は、スリット糸を用いてなる従来の洗浄用編布に比べて生産性が良い。また、本発明に用いられる異型性糸の断面は、スリット糸のように断面が縦長ではないため、編機に供与される際に糸が捩じれても切れ難く、この点においても生産性に優れる。
異型性糸10の紡糸に用いられる原料は、紡糸に使用可能な樹脂材料から適宜選択される。上記樹脂材料の例としては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、若しくはビニロンなどの一種またはこれらの2以上の混合樹脂を挙げることができるが、これに限定されない。
洗浄用編布100を作成する手段は特に制限されず、機械編または手編みのいずれの手段であってもよい。たとえば、洗浄用編布100は、横編機で編成されてもよい。
横編機で連続的に洗浄用編布100を作成する際、異型性糸10の使用は、スリット糸のように糸の長さに制限を受けずに、掻き取り性等に優れる洗浄用編布100を提供することができるため、好ましい。上記横編みとは、編目が横方向に連続しており、所謂経編と区別される。また上記横編機とは、平らな針床を用いて編布を編む編機であり、例えば、株式会社島精機製作所製ホールガーメント横編機SWG021が挙げられるがこれに限定されない。
洗浄用編布100の編み方は特に制限されず、平編み、ゴム編み、パール編、またはメリヤス編み等の一般的に知られるいずれの編み方が採用されてもよい。また 図1では異型性糸10を一本取りして編まれた洗浄用編布100を例示したが、異型性糸10を2本以上用いて複数本取りし、洗浄用編布100を編成してもよい。異型性糸10を複数本取りする場合には、複数の異型性糸10が全て同一の糸であってもよいし、断面形状および/または構成部材が異なる異種の異型性糸10が組み合わされてもよい。
<第二実施形態>
以下に、本発明の洗浄用編布の第二実施形態について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第二実施形態である洗浄用編布200の斜視図である。
洗浄用編布200は、異型性糸10と、断面形状が非異型性である非異型性糸90とを含んで構成されていること以外は、洗浄用編布100と同様に構成されている。断面形状が非異型性であるとは、断面形状が上述する異型性ではない形状であることを意味する。
非異型性糸90は、断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部が2つ以下である(図示省略)。非異型性糸90の具体例としては、例えば断面において、上記突出部を実質的に有しない、断面円形、断面楕円形、または断面長形等の糸等が挙げられる。
非異型性糸90は、非異型性モノフィラメントおよび非異型性マルチフィラメントのいずれも含む。非異型性モノフィラメントは、第一実施形態において説明したものと同様であり、非異型性マルチフィラメントは、非異型性モノフィラメントが合わされて構成されたものをいう。
上述するとおり、異型性糸10を含む編布は、掻き取り性に優れる。一方、断面の外縁に顕著な凹凸のない非異型性糸90を含む編布は、掻き取り性の点では不充分であるが、糸の表面がスムーズであるため、被洗浄物の表面に対する拭き取り性に優れる。したがって、異型性糸10と非異型性糸90とを含んで構成される洗浄用編布200は、掻き取り性および拭き取り性のいずれにも優れる。
洗浄用編布200において、異型性糸10と非異型性糸90との混合のさせ方は特に限定されない。図4では、異型性糸10と非異型性糸90とを二本取りして構成された洗浄用編布200を示している。このように一本以上の異型性糸10と一本以上の非異型性糸90とを複数本取りして編成された洗浄用編布200は、洗浄面全体にバランスよく異型性糸10と非異型性糸90とが配置される。そのため、被洗浄物に対する洗浄性が良好であるとともに、繰り返しの使用により断面円形などの非異型性糸90と隣り合う糸との位置がずれて編目に疎密が生じることを防止することができる。
異型性糸10と非異型性糸90とを混合させて洗浄用編布200を編成する場合であって、二本以上の異型性糸10を用いる場合には、複数の異型性糸10が全て同一の糸であってもよいし、断面形状および/または構成部材が異なる異種の異型性糸10が組み合わされてもよい。また、異型性糸10と非異型性糸90とを混合させて洗浄用編布200を編成する場合であって、二本以上の非異型性糸90を用いる場合には、複数の非異型性糸90が全て同一の糸であってもよいし、断面形状および/または構成部材が異なる異種の非異型性糸90が組み合わされてもよい。
本発明は、異型性糸10と非異型性糸90とを混合させて洗浄用編布200を編成する変形例(図示省略)として、異型性糸10を用いて編成した異型性糸領域と、非異型性糸90を用いて編成した非異型性糸領域とを備える洗浄用編布を包含する。かかる変形例の洗浄用編布は、洗浄用編布200の面上に上記異型性糸領域と上記非異型性糸領域とが規則的または不規則的に配置される。より具体的には、例えば、所定幅の異型性糸領域と所定幅の非異型性糸領域とがストライプ状に交互に配置される態様、異型性糸領域が主面となり、当該異型性糸領域に規則的もしくは不規則的な柄として非異型性糸領域が配置される態様、または非異型性糸領域が主面となり、当該非異型性糸領域に規則的もしくは不規則的な柄として非異型性糸領域が配置される態様などが例示される。
洗浄用編布200の用途によって、洗浄用編布200における異型性糸10と非異型性糸90の割合は適宜決定することができる。
<第三実施形態>
以下に、本発明の洗浄用編布300の第三実施形態について図5から図8を用いて説明する。第三実施形態では、洗浄用編布300と、洗浄用編布300の内部に配置されたスポンジ400を備える洗浄具450を例に説明する。
図5は、本発明の第三実施形態における洗浄用編布300の一例を示す概略斜視図である。図5では、第一編布320および第二編布330を構成する第一糸360、第二糸362(図6参照)の図示を省略している。図6は、図5に示す洗浄用編布300のVI-VI断面図である。VI-VI断面図は、第一編布320および第二編布330の編方向Aに対し、平行する方向において切断した際の断面を示している。図6において、破線は、第一編布320および第二編布330で構成される洗浄用編布300の外形を示す。図7は、図5に示す洗浄用編布300における第一編布320の部分上面図である。図8は、第三実施形態にかかる洗浄具450の断面図である。
尚、本実施形態におけるいくつかの用語は下記のとおり定義される。即ち、編布の面内方向とは、編布の表面に形成された凹凸を無視し、略平面状に延在する編布を平面ととらえたときの当該平面の延在方向を意味する。凹部350とは、編布面に意図的に形成された凹部、および凸部340が隣り合うことによってこれら凸部340間が相対的に凹状となることで形成された凹部を包含する。凸部340とは、編布面に意図的に形成された凸部、および凹部350が隣り合うことによってこれら凹部350間が相対的に凸状となることで形成された凸部を包含する。洗浄用編布300において、第一編布320が第二編布330に対向する方向を内方向といい、第二編布330に対向する方向と反対の方向を外方向といい、第二編布330が第一編布320に対向する方向を内方向といい、第一編布320に対向する方向と反対の方向を外方向という。凸部340とは、第一編布320および第二編布330の外方向に突出する部分を意味し、凹部350とは、隣り合う凸部340間に形成され凸部340に対し相対的に凹状の部分を意味する。
洗浄用編布300は、互いに対向する第一編布320と第二編布330とを備える。図6に示すように、第一編布320および第二編布330それぞれは、面内方向に対し交差方向かつ外方向(外方向C1、C2)に突出する複数の凸部340と、隣り合う凸部340間に設けられた凹部350とを有している。即ち、第一編布320は外方向C1に向かって突出する凸部340を有し、また第二編布330は外方向C2に向かって突出する凸部340を有している。
第一編布320に設けられた凸部340と第二編布330に設けられた凸部340とが対向するとともに、第一編布320に設けられた凹部350と第二編布330に設けられた凹部350とが対向している。
第一編布320および第二編布330は、それぞれ、第一糸360および第二糸362により編成されており、第一糸360の第二糸362少なくともいずれか一方が、異型性糸であり、適宜、非異型性糸と組み合わせて編成することもできる。
即ち、洗浄用編布300は、構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、上記異型形状は、上記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ異型性糸の繊度が110dtex以上750dtex以下である。本実施形態における異型性糸および非異型性糸は、他の実施形態において説明する異型性糸および非異型性糸と同様であり、それらの説明を適宜参照することができる。
本実施形態における洗浄用編布300は、図5に示すとおり、実質的に第一編布320および第二編布330から構成されている。図5には、第一編布320および第二編布330が、外縁の一部を開口する開口部312を備える袋状の状態を示している。本実施形態における洗浄用編布300における開口部312を有しない辺は、第一編布320と第二編布330が連続する輪318を構成している。
洗浄用編布300は、この状態で、洗浄具として用いられることもできるが、本実施形態では、図8に示すように、洗浄用編布300の内部にスポンジ400を配置し、開口部12を閉じて閉部314とした洗浄具450の例を示す。
上記構成を有する洗浄用編布300によれば、図6から理解容易なとおり、第一編布320と第二編布330との間に有意な空間部370が形成される。ここで有意な空間部370とは、凹凸を有さず略平坦に編まれた2枚の編布を互いに略当接する程度に対向させて袋状の編物体を形成した場合に比べ、編布間に有意な体積の空間が形成されることを意味する。洗浄用編布300は、対向する第一編布320と第二編布330とが互いに接近したとき、対向する凹部350同士が当接することで、さらなる接近が規制される。そのため、対向する凸部340間の距離が適度に維持され空間部370が良好に保持される。
第一編布320に設けられた凸部340と第二編布330に設けられた凸部340とが互いに対向するとは、図6に示すように一方側の凸部340の頂点とこれに対向する凸部340の頂点を結ぶ破線t1が、面内方向に対し略垂直に交差する態様が好ましい。しかし本発明は、これに限定されず、凸部340の頂点と凹部350の頂点を結ぶ破線t2が、面内方向に対し略垂直に交差する態様を除き、破線t1が面内方向に対し90度以外の角度で交差する態様も含む。
空間部370を有する洗浄用編布300は、付加された洗剤を泡立てる際、空間部370に含まれる空気および/または水と洗剤との混合によって、良好な泡立ちが実現される。
少なくとも凸部340または、凹部350のいずれかに異形性糸が用いられる洗浄用編布300は、異型性糸により繰り返し使用による糸の疎密が生じにくいため、繰り返し使用においても、良好な泡立ちを維持することができる。また凸部340に異型性糸が用いられる洗浄用編布300は、特に掻き取り性に優れる。
尚、上記いずれの態様の洗浄用編布300も、非異型性糸の領域が設けられる態様、および異型性糸とともに複数本取りして編成される態様を包含する。
上述するとおり、本実施形態における編物には、凸部340および凹部350が設けられている。凸部340及び凹部350の形状や配置は特に限定されないが、本実施形態では、一の凸部340と、一の凸部340に隣り合う他の凸部340は、それぞれ横方向において連続している。即ち、図5に示されるように、第一編布320の表面には、凸部340の凸部頂点344が横方向(図面では編方向Aと略垂直方向)において連続している。
このように横方向の編目(コース)に沿って連続する凸部340と凹部350を備える洗浄用編布300によれば、空間部370も横方向に連続して形成されるため、空間部370の体積が充分に確保され、泡立ち性が良好である。
本実施形態における洗浄用編布300のように、凸部340および凹部350を備える編布の製造方法は特に限定されない。たとえば、一例として以下のような製造方法が挙げられる。即ち、本実施形態における第一編布320および第二編布330それぞれは、所定の曲げ弾性である第一糸360と、第一糸360よりも曲げ弾性の小さい第二糸362を含んで構成されている。図6において、第一糸360の断面を黒丸、第二糸362の断面を白丸で示している。本実施形態では、第一糸360が、凸部340よりも凹部350に多く配置されている。より具体的には、本実施形態では、凹部350には第一糸360が一本以上配置されており、凸部340には、第一糸360は、配置されていない。
換言すると、第一糸360が集中する領域(第二領域352)と第二糸362が集中する領域(第一領域342)を交互に設けることで、相対的に曲げ弾性の大きい第一糸360の張りの影響により、第二領域352が内方向に盛り上がり凹部350が形成される。この結果、第二領域352間における第一領域342は、相対的に外方向に突出し、凸部340をなす。
尚、本実施形態に変形例として、第一糸360は、凹部350よりも凸部340に多く配置された態様であってもよい。
本実施形態では、第一糸360が凸部340よりも凹部350に多く配置された態様を示したが、変形例として、第一糸360は、凹部350よりも凸部340に多く配置された態様であってもよい。
また、本実施形態では、凹部350が、第一糸360および第二糸362を用いた二本取りで編成されているが、変形例として、凹部350を第一360のみで編成してもよい。
以上に本発明の第一実施態様から第三実施態様を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。たとえば、図示省略する変形例として、洗浄用編布100、200において、第一面112と第二面114との間に多孔質体が配置されてもよい。即ち、袋状に構成された洗浄用編布100、200の内部に多孔質体を内包させてもよい。内部に多孔質体を備えることで、泡立ち性やクッション性を高めることができる。上記多孔質体とは、洗剤と水を含みうる程度の孔を複数有し、適度な弾性を有する固体であって、たとえばウレタンフォーム等の樹脂発泡体(所謂、スポンジ)、不織布体、またはヘチマスポンジ等の植物の繊維体等が挙げられる。洗浄用編布100、200の内部に多孔質体を配置する態様では、適宜、開口を熱融着などで閉止してもよい。
また、第三実施例において用いる洗浄用編布300のように凸部340と凹部350とを備える編布320、編布330を図5に示すとおり、少なくとも一辺に開口312を備える袋状の態様において、凸部340を異型性糸で構成し、凹部350を非異型性糸で構成してもよい。かかる態様の洗浄用編布300は、開口312を有するため、袋状の表裏を変更しリバーシブルで使用することができ、異型性糸で構成された凸部340が外側面に表出している状態では、掻き取り性に優れた洗浄が可能であり、表裏をひっくり返して、非異型性糸で構成された凹部350(ひっくり返した状態では凹部350が実質的に凸部となり得る)が外側面に表出している状態では、拭き取り性に優れた洗浄が可能である。したがって、1つの洗浄用編布300で、被洗浄物の材質などを勘案し表裏を使い分けることができる。
(実施例1)
以下に示す異型性糸1本および非異型性糸1本を用いて二本取りし、横編機(株式会社島精機製作所製ホールガーメント横編機SWG021)を用いて、図4に示す袋状の編布を編み、次いで開口部を熱融着させて閉止し、縦15cm、横10cmの長方形状の洗浄用編布を作成し、これを実施例1とした。
<異型性糸>繊度440dtexのポリエチレンテレフタレートモノフィラメントであり、突出部を3つ有する異型性糸を用いた。実施例1に用いた異型性糸の断面の実態顕微鏡写真(倍率200倍)を図9に示す。
<非異型性糸>断面略円形のポリエチレンテレフタレートモノフィラメントが36本合されて作成されたポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントであって、繊度75dtexの非異型性糸を用いた。
(実施例2、3)
異型性糸の繊度を表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に洗浄用編布を作成し、これを実施例2、3とした。
(比較例1)
使用糸として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを細条に裁断して作られた断面が38μm×760μmであるスリット糸を用いたこと以外は、実施例1と同様に洗浄用編布を作成し、これを比較例1とした。
(比較例2~4)
異型性糸の繊度を表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に洗浄用編布を作成し、これを比較例2~4とした。
上述のとおり得られた各実施例および各比較例を以下のとおり評価した。評価結果は、表1に示す。
<繰り返し耐性試験>
試験者は、洗浄用編布の左右の短辺近傍をそれぞれ右手および左手で握り、左手の拳の位置を固定し、右手の拳を左手の拳に接した状態で、上下方向に動かし、握った洗浄用編布をしごいた。上述において、右手を上下に一往復させる動作を1回とカウントし、これを50回繰り返した。この繰り返し試験を行った後、以下のとおり洗浄用編布を評価した。
外観評価:
繰り返し耐性試験前の洗浄用編布の縦寸法に対する当該試験後の洗浄用編布の縦寸法の変化率を測定し、以下のとおり評価した。尚、各実施例および各比較例において、寸法変化率の大きいものほど、編目の疎密が肉眼で顕著に観察された。
○:縦寸法の変化率が10%以下であった
×:縦寸法の変化率が10%を上回った
洗浄性評価:
繰り返し耐性試験後の洗浄用編布を用い、後述する掻き取り試験と同内容の試験を行い、以下のとおり評価した。
○:10回以下でご飯粒が全て落とせた
△:11回以上20回以下でご飯粒が全て落とせた
×:21回でも落とせなかった
<掻き取り性試験>
平らな皿の中央において約100cmの領域にご飯粒5gを指で擦りつけ、室内において24時間放置した。その後、流水下においてご飯粒を擦り付けた領域に洗浄用編布を当てて一方方向に擦った。これを繰り返し、目視でご飯粒が落ちているかどうかを観察し、以下のとおり評価した。尚、試験者は、なるべく擦る力が試験毎に変化しないよう、留意して試験を行った。
○:10回以下でご飯粒が全て落とせた
△:11回以上20回以下でご飯粒が全て落とせた
×:21回でも落とせなかった
<耐摩耗試験>
洗浄用編布を学振摩耗試験機(安田精機製作所製、学振形摩耗試験機No.428に供し、200g荷重、摩擦距離100mm、摩擦速度60往復/分の条件で学振摩耗試験を行い、洗浄用編布が破れるまでの回数を測定し、以下のとおり評価した。回数は、一往復を1回とカウントした。尚、下記において△評価は、実質用上の強度としては充分である範囲と判断される。
○:50回以上で破けた
△:11回以上50回未満で破けた
×:11回未満で破けた
<生産性評価>
連続生産の観点からは、実施例1~3、および比較例2、3は、紡糸された糸を用いているため、糸の長さに制限がなく、かかる観点からの生産性はよいと判断された。また実施例1~3、および比較例2、3は、横編機での生産途中に、装置への糸のひっかかりなども観察されなかった。そのため、これらの実施例、比較例の生産性は良好(○)と評価された。
一方、比較例1はスリット糸であるため、糸の長さに制限があり、生産性は不良(×)と評価された。
また比較例4は、糸の長さには制限されないが、繊度が大きいため、横編機での生産途中に、装置への糸のひっかかりが生じ編みにくかったため、生産性は不良(×)と判断した。
Figure 0007316560000001
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、
前記異型形状は、前記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ
前記異型性糸の繊度が110dtex以上750dtex以下であることを特徴とする洗浄用編布。
(2)前記異型形状である前記断面において、
一の突出部の第一頂点と、前記一の突出部に隣り合う第二の突出部の第二頂点とを結ぶ前記断面の外縁の中間部が、前記第一頂点と前記第二頂点とを直線で結んでなる仮想直線に対し、前記最大内円寄りに存在している上記(1)に記載の洗浄用編布。
(3)横編みによる編目で構成されている上記(1)または(2)に記載の洗浄用編布。
(4)実質的に前記異型性糸のみからなる上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の洗浄用編布。
(5)前記異型性糸と、断面形状が非異型性である非異型性糸とを含む上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の洗浄用編布。
10、40、42、44・・・異型性糸
12、30、32、34・・・断面
14・・・最大内円
15・・・外円
16・・・仮想直線
20・・・頂点
20a・・・第一頂点
20b・・・第二頂点
22・・・突出部
22a・・・一の突出部
22b・・・第二の突出部
24、25・・・外縁
90・・・非異型性糸
100、200、300・・・洗浄用編布
110・・・開口
112・・・第一面
114・・・第二面
312 開口部
314 閉部
318 輪
320 第一編布
330 第二編布
340 凸部
342 第一領域
344 凸部頂点
350 凹部
352 第二領域
360 第一糸
362 第二糸
370 空間部
400 スポンジ
450 洗浄具
A 編方向
C1 外方向
C2 内方向
h・・・突出高さ
l・・・接線
m・・・垂線
r・・・半径
t1、t2 破線

Claims (3)

  1. 構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、
    前記異型形状は、前記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ
    前記異型性糸のモノフィラメントの繊度が110dtex以上750dtex以下であり、
    前記異型糸1本以上および断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部が2つ以下である非異型性糸1本以上を複数本取して編成されることを特徴とする洗浄用編布。
  2. 前記異型形状である前記断面において、
    一の突出部の第一頂点と、前記一の突出部に隣り合う第二の突出部の第二頂点とを結ぶ前記断面の外縁の中間部が、前記第一頂点と前記第二頂点とを直線で結んでなる仮想直線に対し、前記最大内円寄りに存在している請求項1に記載の洗浄用編布。
  3. 横編みによる編目で構成されている請求項1または2に記載の洗浄用編布。
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