JP7316560B2 - 洗浄用編布 - Google Patents
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Description
たとえば、下記特許文献1には、ウレタンフォーム等の樹脂発泡体からなるスポンジの洗浄性を改善するために、袋状に形成された編布(ネット)に当該スポンジを収納してなる洗浄具が提案されている。
また、スポンジを収納せず、編布だけで洗浄具を構成する場合もある。
またスリット糸から構成される洗浄用具は、スリット糸の断面両端が角度の小さいエッジになっているため、手で握った際の感触(ホールド感)が良くない。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明または本明細書において、特段の断りがない場合には、洗浄用編布に用いられる糸に関し断面とは、当該糸の横断面を指す。
以下に、本発明の洗浄用編布100の第一実施形態について図1から図3を用いて説明する。図1は、洗浄用編布100の一実施態様を示す斜視図である。図2は、異型性糸10の一例を示す断面図である。図3は、異型性糸10の変形例を示す断面図であり、図3(a)は断面30において突出部22を4つ有する異型性糸40の断面図であり、図3(b)は断面32が三角形状である異型性糸42の断面図であり、図3(c)は断面44が扁平であり、かつ多数の突出部22を有する異型性糸44の断面図である。
ただし、かかる形状は本発明を限定するものではなく、図示省略するが、たとえば本願発明の洗浄用編布は、図1に示される開口110が閉じられた二重または三重以上の積層編布体であってもよいし、一枚の編布から構成されてもよい。
図2に示す突出部22は、いずれもその長さが略同等であり、各頂点20を結んで示される外円15と最大内円14とは相似しているか、あるいは概ね相似している。
図3(a)は、異型性糸40の断面30が、3つを超える突出部22を有する態様を示すものであり、具体的には突出部22を4つ有した例を示している。このように最大内円14の中心から放射方向に延在する突出部22は、3つ以上任意の数であってよい。ただし、異型性糸40の構成樹脂の種類や突出高さ等にもよるが、あまり突出部22の数が多くなり過ぎると各突出部22が小さくなり掻き取り性が十分でなくなる場合もある。かかる観点からは、一つの断面30における突出部22の数は、6つ以下であることが好ましく、5つ以下であることがより好ましい。
即ち、図2に示すとおり、異型形状である断面12において、一の突出部22aの第一頂点20aと、一の突出部22aに隣り合う第二の突出部22bの第二頂点20bとを結ぶ断面12の外縁24の中間部が、第一頂点20aと第二頂点20bとを直線で結んでなる仮想直線16に対し、最大内円14寄りに存在している態様が好ましい。かかる態様は、第一頂点20aと第二頂点20bとに対し上記中間部が凹部となり、外縁24における凹凸が顕著となることから、特に掻き取り性に優れる。
図3(a)および図3(c)も、図2と同様に、断面12の外縁24の中間部が、第一頂点20aと第二頂点20bとを直線で結んでなる仮想直線16に対し、最大内円14寄りに存在しており、掻き取り性に特に優れる。
ここで、繊度とは、異型性糸10の太さを示し、より詳しくは、糸の単位長さあたりの重さであり、所謂恒長式番手を指す。「1dtex」は10000メートルの重さが1.0gである。上記繊度の測定方法は「JIS L 1023 化学繊維フィラメント糸試験方法」に準拠する。
一方、上記繊度が750dtex以下であることにより、製造工程における機械への糸の引っ掛かりを防止することができ良好な生産性が示される。かかる観点からは、上記繊度は、725dtex以下であることが好ましく、700dtex以下であることがより好ましい。
ここで非異型性モノフィラメントとは、異型性モノフィラメントではない糸を指し、具体的には、断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部が2つ以下である糸を指す。非異型性モノフィラメントの例としては、例えば上記突出部を実質的に有しない、断面円形、断面楕円形または断面長形等の糸が挙げられる。
横編機で連続的に洗浄用編布100を作成する際、異型性糸10の使用は、スリット糸のように糸の長さに制限を受けずに、掻き取り性等に優れる洗浄用編布100を提供することができるため、好ましい。上記横編みとは、編目が横方向に連続しており、所謂経編と区別される。また上記横編機とは、平らな針床を用いて編布を編む編機であり、例えば、株式会社島精機製作所製ホールガーメント横編機SWG021が挙げられるがこれに限定されない。
以下に、本発明の洗浄用編布の第二実施形態について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第二実施形態である洗浄用編布200の斜視図である。
非異型性糸90は、非異型性モノフィラメントおよび非異型性マルチフィラメントのいずれも含む。非異型性モノフィラメントは、第一実施形態において説明したものと同様であり、非異型性マルチフィラメントは、非異型性モノフィラメントが合わされて構成されたものをいう。
異型性糸10と非異型性糸90とを混合させて洗浄用編布200を編成する場合であって、二本以上の異型性糸10を用いる場合には、複数の異型性糸10が全て同一の糸であってもよいし、断面形状および/または構成部材が異なる異種の異型性糸10が組み合わされてもよい。また、異型性糸10と非異型性糸90とを混合させて洗浄用編布200を編成する場合であって、二本以上の非異型性糸90を用いる場合には、複数の非異型性糸90が全て同一の糸であってもよいし、断面形状および/または構成部材が異なる異種の非異型性糸90が組み合わされてもよい。
以下に、本発明の洗浄用編布300の第三実施形態について図5から図8を用いて説明する。第三実施形態では、洗浄用編布300と、洗浄用編布300の内部に配置されたスポンジ400を備える洗浄具450を例に説明する。
図5は、本発明の第三実施形態における洗浄用編布300の一例を示す概略斜視図である。図5では、第一編布320および第二編布330を構成する第一糸360、第二糸362(図6参照)の図示を省略している。図6は、図5に示す洗浄用編布300のVI-VI断面図である。VI-VI断面図は、第一編布320および第二編布330の編方向Aに対し、平行する方向において切断した際の断面を示している。図6において、破線は、第一編布320および第二編布330で構成される洗浄用編布300の外形を示す。図7は、図5に示す洗浄用編布300における第一編布320の部分上面図である。図8は、第三実施形態にかかる洗浄具450の断面図である。
第一編布320に設けられた凸部340と第二編布330に設けられた凸部340とが対向するとともに、第一編布320に設けられた凹部350と第二編布330に設けられた凹部350とが対向している。
第一編布320および第二編布330は、それぞれ、第一糸360および第二糸362により編成されており、第一糸360の第二糸362少なくともいずれか一方が、異型性糸であり、適宜、非異型性糸と組み合わせて編成することもできる。
即ち、洗浄用編布300は、構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、上記異型形状は、上記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ異型性糸の繊度が110dtex以上750dtex以下である。本実施形態における異型性糸および非異型性糸は、他の実施形態において説明する異型性糸および非異型性糸と同様であり、それらの説明を適宜参照することができる。
洗浄用編布300は、この状態で、洗浄具として用いられることもできるが、本実施形態では、図8に示すように、洗浄用編布300の内部にスポンジ400を配置し、開口部12を閉じて閉部314とした洗浄具450の例を示す。
少なくとも凸部340または、凹部350のいずれかに異形性糸が用いられる洗浄用編布300は、異型性糸により繰り返し使用による糸の疎密が生じにくいため、繰り返し使用においても、良好な泡立ちを維持することができる。また凸部340に異型性糸が用いられる洗浄用編布300は、特に掻き取り性に優れる。
尚、上記いずれの態様の洗浄用編布300も、非異型性糸の領域が設けられる態様、および異型性糸とともに複数本取りして編成される態様を包含する。
このように横方向の編目(コース)に沿って連続する凸部340と凹部350を備える洗浄用編布300によれば、空間部370も横方向に連続して形成されるため、空間部370の体積が充分に確保され、泡立ち性が良好である。
換言すると、第一糸360が集中する領域(第二領域352)と第二糸362が集中する領域(第一領域342)を交互に設けることで、相対的に曲げ弾性の大きい第一糸360の張りの影響により、第二領域352が内方向に盛り上がり凹部350が形成される。この結果、第二領域352間における第一領域342は、相対的に外方向に突出し、凸部340をなす。
尚、本実施形態に変形例として、第一糸360は、凹部350よりも凸部340に多く配置された態様であってもよい。
また、本実施形態では、凹部350が、第一糸360および第二糸362を用いた二本取りで編成されているが、変形例として、凹部350を第一360のみで編成してもよい。
また、第三実施例において用いる洗浄用編布300のように凸部340と凹部350とを備える編布320、編布330を図5に示すとおり、少なくとも一辺に開口312を備える袋状の態様において、凸部340を異型性糸で構成し、凹部350を非異型性糸で構成してもよい。かかる態様の洗浄用編布300は、開口312を有するため、袋状の表裏を変更しリバーシブルで使用することができ、異型性糸で構成された凸部340が外側面に表出している状態では、掻き取り性に優れた洗浄が可能であり、表裏をひっくり返して、非異型性糸で構成された凹部350(ひっくり返した状態では凹部350が実質的に凸部となり得る)が外側面に表出している状態では、拭き取り性に優れた洗浄が可能である。したがって、1つの洗浄用編布300で、被洗浄物の材質などを勘案し表裏を使い分けることができる。
以下に示す異型性糸1本および非異型性糸1本を用いて二本取りし、横編機(株式会社島精機製作所製ホールガーメント横編機SWG021)を用いて、図4に示す袋状の編布を編み、次いで開口部を熱融着させて閉止し、縦15cm、横10cmの長方形状の洗浄用編布を作成し、これを実施例1とした。
<異型性糸>繊度440dtexのポリエチレンテレフタレートモノフィラメントであり、突出部を3つ有する異型性糸を用いた。実施例1に用いた異型性糸の断面の実態顕微鏡写真(倍率200倍)を図9に示す。
<非異型性糸>断面略円形のポリエチレンテレフタレートモノフィラメントが36本合されて作成されたポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントであって、繊度75dtexの非異型性糸を用いた。
異型性糸の繊度を表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に洗浄用編布を作成し、これを実施例2、3とした。
使用糸として、ポリエチレンテレフタレートフィルムを細条に裁断して作られた断面が38μm×760μmであるスリット糸を用いたこと以外は、実施例1と同様に洗浄用編布を作成し、これを比較例1とした。
異型性糸の繊度を表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に洗浄用編布を作成し、これを比較例2~4とした。
試験者は、洗浄用編布の左右の短辺近傍をそれぞれ右手および左手で握り、左手の拳の位置を固定し、右手の拳を左手の拳に接した状態で、上下方向に動かし、握った洗浄用編布をしごいた。上述において、右手を上下に一往復させる動作を1回とカウントし、これを50回繰り返した。この繰り返し試験を行った後、以下のとおり洗浄用編布を評価した。
外観評価:
繰り返し耐性試験前の洗浄用編布の縦寸法に対する当該試験後の洗浄用編布の縦寸法の変化率を測定し、以下のとおり評価した。尚、各実施例および各比較例において、寸法変化率の大きいものほど、編目の疎密が肉眼で顕著に観察された。
○:縦寸法の変化率が10%以下であった
×:縦寸法の変化率が10%を上回った
洗浄性評価:
繰り返し耐性試験後の洗浄用編布を用い、後述する掻き取り試験と同内容の試験を行い、以下のとおり評価した。
○:10回以下でご飯粒が全て落とせた
△:11回以上20回以下でご飯粒が全て落とせた
×:21回でも落とせなかった
平らな皿の中央において約100cm2の領域にご飯粒5gを指で擦りつけ、室内において24時間放置した。その後、流水下においてご飯粒を擦り付けた領域に洗浄用編布を当てて一方方向に擦った。これを繰り返し、目視でご飯粒が落ちているかどうかを観察し、以下のとおり評価した。尚、試験者は、なるべく擦る力が試験毎に変化しないよう、留意して試験を行った。
○:10回以下でご飯粒が全て落とせた
△:11回以上20回以下でご飯粒が全て落とせた
×:21回でも落とせなかった
洗浄用編布を学振摩耗試験機(安田精機製作所製、学振形摩耗試験機No.428に供し、200g荷重、摩擦距離100mm、摩擦速度60往復/分の条件で学振摩耗試験を行い、洗浄用編布が破れるまでの回数を測定し、以下のとおり評価した。回数は、一往復を1回とカウントした。尚、下記において△評価は、実質用上の強度としては充分である範囲と判断される。
○:50回以上で破けた
△:11回以上50回未満で破けた
×:11回未満で破けた
連続生産の観点からは、実施例1~3、および比較例2、3は、紡糸された糸を用いているため、糸の長さに制限がなく、かかる観点からの生産性はよいと判断された。また実施例1~3、および比較例2、3は、横編機での生産途中に、装置への糸のひっかかりなども観察されなかった。そのため、これらの実施例、比較例の生産性は良好(○)と評価された。
一方、比較例1はスリット糸であるため、糸の長さに制限があり、生産性は不良(×)と評価された。
また比較例4は、糸の長さには制限されないが、繊度が大きいため、横編機での生産途中に、装置への糸のひっかかりが生じ編みにくかったため、生産性は不良(×)と判断した。
(1)構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、
前記異型形状は、前記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ
前記異型性糸の繊度が110dtex以上750dtex以下であることを特徴とする洗浄用編布。
(2)前記異型形状である前記断面において、
一の突出部の第一頂点と、前記一の突出部に隣り合う第二の突出部の第二頂点とを結ぶ前記断面の外縁の中間部が、前記第一頂点と前記第二頂点とを直線で結んでなる仮想直線に対し、前記最大内円寄りに存在している上記(1)に記載の洗浄用編布。
(3)横編みによる編目で構成されている上記(1)または(2)に記載の洗浄用編布。
(4)実質的に前記異型性糸のみからなる上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の洗浄用編布。
(5)前記異型性糸と、断面形状が非異型性である非異型性糸とを含む上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の洗浄用編布。
12、30、32、34・・・断面
14・・・最大内円
15・・・外円
16・・・仮想直線
20・・・頂点
20a・・・第一頂点
20b・・・第二頂点
22・・・突出部
22a・・・一の突出部
22b・・・第二の突出部
24、25・・・外縁
90・・・非異型性糸
100、200、300・・・洗浄用編布
110・・・開口
112・・・第一面
114・・・第二面
312 開口部
314 閉部
318 輪
320 第一編布
330 第二編布
340 凸部
342 第一領域
344 凸部頂点
350 凹部
352 第二領域
360 第一糸
362 第二糸
370 空間部
400 スポンジ
450 洗浄具
A 編方向
C1 外方向
C2 内方向
h・・・突出高さ
l・・・接線
m・・・垂線
r・・・半径
t1、t2 破線
Claims (3)
- 構成糸として、断面が異型形状である異型性糸を含み、
前記異型形状は、前記断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部を3つ以上有する形状であり、かつ
前記異型性糸のモノフィラメントの繊度が110dtex以上750dtex以下であり、
前記異型性糸1本以上および断面において描かれる最大内円より外側方向に突出した頂点を有する突出部が2つ以下である非異型性糸1本以上を複数本取して編成されることを特徴とする洗浄用編布。 - 前記異型形状である前記断面において、
一の突出部の第一頂点と、前記一の突出部に隣り合う第二の突出部の第二頂点とを結ぶ前記断面の外縁の中間部が、前記第一頂点と前記第二頂点とを直線で結んでなる仮想直線に対し、前記最大内円寄りに存在している請求項1に記載の洗浄用編布。 - 横編みによる編目で構成されている請求項1または2に記載の洗浄用編布。
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