JP6932285B1 - 制電性経編地 - Google Patents
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Abstract
Description
つまり、これら合成繊維は低湿度下では非常に静電気を発生しやすく、作業中に加工物がその静電気によって破壊されるという、加工物への静電気破壊などの問題があり、静電気防止対策として過去に種々の制電性繊維及び織編物等の提案がなされてきた。
特許文献1には、この基準を満足する制電性を有する作業用衣服として、電子デバイス、電子部品、又は電子材料を取り扱う作業者等の作業用衣服として好適な制電作業着が提案されている。特許文献1に記載された制電作業着は、導電繊維を含んで構成される導電性複合糸を格子状に織編した布帛を用いて縫製されたものである。
すなわち、本発明は、以下の1.〜8.を要旨とするものである。
1.導電糸と非導電糸(非導電糸1)からなる複合糸、及び非導電糸(非導電糸2)で編成された経編地であって、以下の(1)〜(4)の要件を同時に満足することを特徴とする制電性経編地。
(1)該複合糸は、経編地の表面、裏面の少なくともいずれかの面を編成する糸に含まれている
(2)該複合糸は、隣り合う複合糸同士が少なくとも1つの組織点を共有してループの重なりを生じている
(3)経編地のヨコ方向における表面摩擦の変動値(MMD)が0.01〜0.10である
(4)家庭洗濯10洗後にIEC61340−5−1により測定されるタテ方向、ヨコ方向、バイアス方向の表面抵抗値がいずれも1.0×1010Ω以下である
2.該複合糸は、導電糸と非導電糸(非導電糸1)からなる合撚糸、カバーリング糸、インターレース加工糸のいずれかである、1.記載の制電性経編地。
3.経編地の全質量中、導電糸の含有量が0.5〜10.0質量%である、1.又は2.に記載の制電性経編地。
4.家庭洗濯100洗後にIEC61340−5−1により測定されるタテ方向、ヨコ方向、バイアス方向の表面抵抗値がいずれも1.0×1011Ω以下である、1.〜3.のいずれかに記載の制電性経編地。
5.複合糸同士が少なくとも1つの組織点を共有してループの重なりを生じている部分のループに編み込まれている糸の総繊度(A)と、それ以外の部分のループに編み込まれている糸の総繊度のうち最小の総繊度(B)との差(A−B)が200dtex以下である、1.〜4.のいずれかに記載の制電性経編地。
6.隣り合う複合糸同士が組織点を共有してループの重なりを生じている部分は、経編地のヨコ方向において2cmごとに1か所以上の割合で含まれる、1.〜5.のいずれかに記載の制電性経編地。
7.衣料用途に用いられる、1.〜6.のいずれかに記載の制電性経編地。
8.1.〜7.のいずれかに記載の制電性経編地を用いてなる作業用衣服。
まず、導電糸について説明する。導電糸は、本発明の制電性経編地に制電性能を発現させるものである。
導電糸としては、導電性ポリマーを用いて構成された合成繊維(導電性合成繊維)が好ましい。導電性ポリマーとは、通常繊維を形成するのに用いられる熱可塑性樹脂に、導電性微粒子を配合して得られたポリマーのことである。導電性微粒子としては、導電性カーボンブラックや金属粉末、硫化銅、硫化亜鉛、沃化銅等の金属化合物等を挙げることができ、中でも導電性カーボンブラックが好ましく用いられる。
そして、複合型断面を有する導電性合成繊維の場合、導電性ポリマー部を形成するポリマーと非導電性ポリマー部を形成するポリマーとの組み合わせとしては、同系のポリマーの組み合わせでも、異系のポリマーの組み合わせでもよいが、相溶性の面から同系のポリマーの組み合わせが好ましい。中でも熱可塑性樹脂としてはポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマーを用いることが好ましい。
カバーリング糸としては、芯糸に導電糸を使用し、鞘糸に非導電糸1を使用したシングルカバーリング糸やダブルカバーリング糸であって、撚糸回数が200〜700t/Mのものが好ましい。
さらには、表面の凹凸が少なく、表面が滑らかであることにより、着用時の着心地にも優れる経編地となる。
より具体的には、本発明の制電性経編地は、導電糸と非導電糸(非導電糸1)からなる複合糸と非導電糸(非導電糸2)で編成されたものであるが、編地を構成するループに編み込まれている糸の総繊度のうち、最大の総繊度(A)と最小の総繊度(B)との差(A−B)が200dtex以下であることが好ましく、中でも(A−B)が150dtex以下であることが好ましく、さらには、(A−B)が100dtex以下であることが好ましい。
具体的には、家庭洗濯10洗後に、IEC61340−5−1により測定されるタテ方向、ヨコ方向、バイアス方向の表面抵抗値が1.0×1010Ω以下である。
また、タテ方向、ヨコ方向、バイアス方向に加えて、経編地を縫製した際の縫目間の表面抵抗値が初期、10洗後、100洗後ともに上記範囲内を満足することが好ましい。
上記のような作業用衣服は、本発明の制電性経編地を少なくとも一部に用いて、通常の編成技術や縫製技術により得ることができる。
〔スナッグ〕
JIS L 1058 2011 D−3法に従い、得られた経編地から4枚の試験片を採取して、4枚の試験結果を判定し、その平均値を算出した。
3級以上を合格とした。
〔表面摩擦の変動値〕
前記の方法にて測定した。なお、タテ方向とヨコ方向の変動値(MMD)の測定を行った。
〔表面抵抗値〕
得られた経編地の初期、家庭洗濯10洗後、家庭洗濯100洗後の3種類の経編地において、タテ方向、ヨコ方向、バイアス方向のそれぞれの表面抵抗値を、IEC61340−5−1により測定した。家庭洗濯は、JIS L 0217 103法に従って行った。このとき、得られた経編地を長辺方向が35cm、短辺方向が30cmの長方形のサンプルを下記の(a)〜(c)に示す条件でカットした3種類のサンプルを用意した。
(a)長辺方向がタテ方向、短辺方向がヨコ方向
(b)長辺方向がヨコ方向、短辺方向がタテ方向
(c)長辺方向がバイアス方向、短辺方向がバイアス方向
そして、(a)、(b)、(c)の順で載置し、(a)、(b)の長辺方向同士と(b)、(c)の長辺方向同士の2か所を片倒しダブルステッチで縫製し、サンプル(d)とした。
タテ方向の表面抵抗値は、(a)のサンプルを使用し、長辺方向に測定間距離を25cmで測定を行った。
ヨコ方向の表面抵抗値は、(b)のサンプルを使用し、長辺方向に測定間距離を25cmで測定を行った。
バイアス方向の表面抵抗値は、(c)のサンプルを使用し、長辺方向に測定間距離を25cmで測定を行った。
縫目間の表面抵抗値は、(d)のサンプルを使用し、片倒しダブルステッチで縫製した2か所の縫目を含むようにし、短辺方向に長さ60cmの測定間距離で測定を行った。
(糸使い)
L1筬:ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルマルチフィラメント(56dtex/36f)
L2筬:(A):以下に示す非導電糸と導電糸からなる複合糸(撚り数(Z撚)400T/mの合撚糸)
非導電糸;ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルマルチフィラメント(30dtex/12f)
導電糸;KBセーレン社製「ベルトロン」(33dtex/6f、鞘部の導電性ポリマーが外周長の100%を占める)
(B) :ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルマルチフィラメント(56dtex/36f)
(A)を6コースに1本配列し、それ以外は(B)を配列し、フルセットとした。
L3筬:(A)、(B)ともにL2筬と同糸を用い、同じ配列とした。
(編組織)
L1筬にバック糸、L2筬にミドル糸、L3筬にフロント糸を配し、これらの糸を用いて、28ゲージのトリコット編機(Karl MAYER社製)にて、図1(A)に示す組織(L2筬、L3筬のみ図示)にて経編地を編成した。
得られた経編地をサーキュラー染色試験機、界面活性剤(日華化学株式会社製、サンモールFL)を1g/リットルの濃度で使用し、リラックス精練を90℃で30分行った。次いで、上記と同じサーキュラー染色試験機にて、130℃、30分間の吸水・染色加工を行った後、仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
L2、L3筬の配列を、(A)を14コースに1本配列し、それ以外は(B)糸を配列、フルセットとし、図1(B)に示す組織(L2筬、L3筬のみ図示)とした以外は実施例1と同様にして経編地を編成した。
得られた経編地を実施例1と同様に吸水・染色加工・仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
L2、L3筬の配列を、(A)を14コースに1本配列し、(B)糸を配列しない以外は実施例2と同様にして経編地を編成した。
得られた経編地を実施例1と同様に吸水・染色加工・仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
(糸使い)
L2筬、L3筬:(A):実施例1と同じ合撚糸
(B) :実施例1と同じポリエステルマルチフィラメント(56dtex/36f)
(A)を6コースに1本配列し、それ以外は(B)を配列し、フルセットとした。
(編組織)
L2筬にミドル糸、L3筬にフロント糸を配し、これらの糸を用いて、28ゲージのトリコット編機(Karl MAYER社製)にて、図2に示す組織にて経編地を編成した。
得られた経編地を実施例1と同様に吸水・染色加工・仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
なお、得られた経編地は、組織点を共有してループの重なりを生じる箇所がタテ方向において2cmごとに10カ所の割合で含まれていた。
L1筬をポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルマルチフィラメント(84dtex/36f)とし、
L2筬:(A):以下に示す非導電糸と導電糸からなる複合糸(撚り数(Z撚)400T/mの合撚糸)とし、
非導電糸;ポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルマルチフィラメント(84dtex/36f)
導電糸;KBセーレン社製「ベルトロン」(33dtex/6f、鞘部の導電性ポリマーが外周長の100%を占める)
(B)糸を配列しないものとし、L3筬を、L2筬と同糸を用い、同じ配列とした。
それ以外は実施例1と同様にして経編地を編成した。
得られた経編地を実施例1と同様に吸水・染色加工・仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
L2、L3筬の(A) を導電糸のみを用い、非導電糸との複合糸としなかった以外は、実施例3と同様にして経編地を編成した。
得られた経編地を実施例1と同様に吸水・染色加工・仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
図3のように、L2、L3において隣り合う複合糸同士が組織点を共有しない組織に変更した以外は実施例3と同様にして経編地を編成した。
得られた経編地を実施例1と同様に吸水・染色加工・仕上げセットを行い、制電性経編地を得た。
比較例2で得られた経編地は、導電糸を単糸使いしている(導電糸と非導電糸からなる複合糸としていない)ため、洗濯を繰り返すと制電性能が低下するものであり、(4)の条件を満足しないものであった。また、整経及び編立時にも導電糸の糸切れが生じ、操業性にも劣るものであった。
比較例3で得られた経編地は、複合糸同士の組織点の共有がないものであり、(2)の条件を満足しないものであったため、ヨコ及びバイアス方向の表面抵抗値(初期値)が高いものとなり、(4)の条件を満足しないものであった。
Claims (8)
- 導電糸と非導電糸(非導電糸1)からなる複合糸、及び非導電糸(非導電糸2)で編成された経編地であって、以下の(1)〜(4)の要件を同時に満足することを特徴とする制電性経編地。
(1)該複合糸は、経編地の表面、裏面の少なくともいずれかの面を編成する糸に含まれている
(2)該複合糸は、隣り合う複合糸同士が少なくとも1つの組織点を共有してループの重なりを生じている
(3)経編地のヨコ方向における表面摩擦の変動値(MMD)が0.01〜0.10である
(4)家庭洗濯10洗後にIEC61340−5−1により測定されるタテ方向、ヨコ方向、バイアス方向の表面抵抗値がいずれも1.0×1010Ω以下である - 該複合糸は、導電糸と非導電糸(非導電糸1)からなる合撚糸、カバーリング糸、インターレース加工糸のいずれかである、請求項1記載の制電性経編地。
- 経編地の全質量中、導電糸の含有量が0.5〜10.0質量%である、請求項1又は2に記載の制電性経編地。
- 家庭洗濯100洗後にIEC61340−5−1により測定されるタテ方向、ヨコ方向、バイアス方向の表面抵抗値がいずれも1.0×1011Ω以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の制電性経編地。
- 複合糸同士が少なくとも1つの組織点を共有してループの重なりを生じている部分のループに編み込まれている糸の総繊度(A)と、それ以外の部分のループに編み込まれている糸の総繊度のうち最小の総繊度(B)との差(A−B)が200dtex以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の制電性経編地。
- 隣り合う複合糸同士が組織点を共有してループの重なりを生じている部分は、経編地のヨコ方向において2cmごとに1か所以上の割合で含まれる、請求項1〜5のいずれかに記載の制電性経編地。
- 衣料用途に用いられる、請求項1〜6のいずれかに記載の制電性経編地。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の制電性経編地を用いてなる作業用衣服。
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