JP7313267B2 - 水解性清掃物品 - Google Patents

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Description

本発明は水解性清掃物品に関する。
使用後に水に流して廃棄するタイプの水解性清掃物品として、木材パルプ等の繊維を水溶性バインダで結着させた水解性シートに、水性薬剤が含浸されたウエットタイプの水解性清掃物品が知られている(例えば特許文献1)。
特許文献2には、ウエットタイプの水解性清掃物品の一種であるトイレ掃除用物品として、パルプ紙を複数層積層した全層パルプシートに所定量の洗浄水溶液を含浸せしめたものが記載され、該パルプ紙として故紙パルプ紙を用いることも記載されている。特許文献1に記載のトイレ掃除用物品によれば、故紙パルプ紙の使用により、高バルク感があって拭き取り時のしっかり感や拭き易さに優れ、且つ環境問題に対応することができるとされている。
特許文献3には、抗菌・抗カビ性、消臭性等の機能が付与されたウエットタイプのワイパー用シートとして、無機粒子と繊維との複合繊維を含むものが記載されている。特許文献3の[0021]には、前記複合繊維の灰分量について、JIS P8251:2003に準じて測定した値として、10重量%以上とすることが可能であり、40重量%以上が好ましい旨記載されている。また、特許文献3の[0068]には、同文献に記載のワイパー用シートの灰分量について、JIS P8251:2003に準じて測定した値として20~50重量%が好ましく、これにより高い抗菌・防カビ性及び消臭性を備えたワイパー用シートが得られるとされている。
特開2008-291409号公報 特開2001-161599号公報 特開2018-183586号公報
近年、地球環境保全の観点から森林資源の保護が進められ、その一環として古紙の再生利用の促進が推進されており、古紙の再生利用範囲を拡大することが重要な課題となっている。繊維の供給源として古紙を使用しつつ、実用上十分な水解性を有するウエットタイプの水解性清掃物品は未だ提供されていない。
本発明の課題は、実用上十分な水解性を有し、更に、古紙の使用により環境に配慮された水解性清掃物品を提供することに関する。
本発明は、繊維及び水溶性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シートと、該繊維シートに保持された水性薬剤とを含む水解性清掃物品であって、前記繊維として古紙由来のセルロース繊維を含み、前記繊維のJIS P8252に則して測定される灰分量が、10質量%以下である水解性清掃物品である。
本発明によれば、実用上十分な水解性を有し、更に、古紙の使用により環境に配慮された水解性清掃物品が提供される。
図1は、本発明の水解性清掃物品の一実施形態の模式的な斜視図である。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
図1には、本発明の水解性清掃物品の一実施形態である水解性清掃物品1が示されている。水解性清掃物品1は、繊維及び水溶性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シート2と、該繊維シート2に保持された水性薬剤とを含む。水解性清掃物品1は、繊維シート2に水性薬剤が保持されていることで、常温常圧において湿潤状態にあるウエットタイプの水解性清掃物品である。したがって水解性清掃物品1は、別途に洗浄剤を併用することなく、そのままの状態で手軽に清掃操作に供することができる。
本発明の水解性清掃物品において、繊維シートの数は特に制限されず、1枚でもよく、2枚以上の複数でもよい。本実施形態の水解性清掃物品1は、図1に示すように、繊維シート2を2枚備え、その複数(2枚)の繊維シート2が厚み方向に積層されてなる積層構造20を有している。積層構造20を構成する複数の繊維シート2どうしは、互いに種類が同一でもよく、異なっていてもよい。ここでいう繊維シート2の「種類」とは、材質、坪量、厚みなど、繊維シート2を特定するための材料や物性値の少なくとも1つを意味する。
水解性清掃物品1は、図1に示すように、シート状の形態をなし、第1の面1aとその反対側に位置する第2の面1bとを有している。両面1a,1bの何れも、水解性清掃物品1の使用時に被清掃物と接触する面、すなわち被清掃物に付着した汚れ等を拭き取る面であり、それぞれ、水解性清掃物品1を構成する繊維シート2の片面からなる。本実施形態の水解性清掃物品1は、複数(2枚)の繊維シート2の積層構造20を有するため、第1の面1aは、積層構造20の厚み方向の一端側に位置する繊維シート2の片面からなり、第2の面1bは、積層構造20の厚み方向の他端側に位置する別の繊維シート2の片面からなる。なお、本発明の水解性清掃物品には、繊維シート2を1枚だけ含む形態が包含されるところ、斯かる形態においては、その1枚の繊維シート2の一方の面が第1の面1a、他方の面が第2の面1bである。
本実施形態の水解性清掃物品1は、図1に示すように、使用時に被清掃物と接触する面1a,1bに凹凸が形成されている。より具体的には、水解性清掃物品1の第1の面1aには、繊維シート2(積層構造20)が第2の面1b側から第1の面1a側に突出してなる凸部3が、一方向(典型的には繊維シート2の長手方向)及び該一方向に直交する方向(典型的には繊維シート2の幅方向)の両方向に列をなすように一定の間隔で複数間欠配置されているとともに、隣り合う2個の該凸部3,3間に凹部4が形成されている。また、水解性清掃物品1の第2の面1bには、繊維シート2(積層構造20)が第1の面1a側から第2の面1b側に突出してなる凸部3が、一方向(典型的には繊維シート2の長手方向)及び該一方向に直交する方向(典型的には繊維シート2の幅方向)の両方向に列をなすように一定の間隔で複数間欠配置されているとともに、隣り合う2個の該凸部3,3間に凹部4が形成されている。つまり、本実施形態の水解性清掃物品1では、第1の面1a及び第2の面1bの双方において、凸部3と凹部4とが一方向又はこれに直交する方向の双方において交互に配置され、全体として千鳥格子状のパターンをなしている。本実施形態の水解性清掃物品1は、このように両面1a,1bが凹凸を有していることで、その全体が嵩高な三次元形状となっている。凸部3及び凹部4は、それぞれ、略半球の形状をしている。
水解性清掃物品1は、清掃に際してその両面1a,1bが同様な性能を有することが好ましく、斯かる観点から、第1の面1aと第2の面1bとで、凸部3(凹部4)のパターン、すなわち凸部3(凹部4)の平面視形状及び配置が同じであることが好ましい。同様の観点から、第1の面1aに存する凸部3は、第2の面1bに存する凹部4と表裏の関係にあり、また、第1の面1aに存する凹部4は、第2の面1bに存する凸部3と表裏の関係にあることが好ましい。更に、凸部3の形状は、凹部4の形状を反転したものであることが好ましい。図1に示す水解性清掃物品1は、以上の条件をすべて満たしている。
水解性清掃物品1の両面1a,1bそれぞれにおいて、凹凸のパターンは特に制限されず任意に設定できるが、例えば以下のように設定することができる。
凸部3のピッチ(隣り合う2個の凸部3,3それぞれの平面視における中心間の距離)は、好ましくは3.5mm以上、より好ましくは5.0mm以上、そして、好ましくは14.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下である。凹部4のピッチ(隣り合う2個の凹部4,4それぞれの平面視における中心間の距離)も、凸部3のピッチと同じに設定することができる。
凸部3の頂点と凹部4の底点(最深部)との差(溝深さ)は、水解性清掃物品1を嵩高にする観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mm以上、そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4.5mm以下、更に好ましくは4mm以下である。
水解性清掃物品1の少なくとも一方の面(第1の面1a、第2の面1b)において、任意の10cm四方の平面視正方形形状の領域に存在する凸部3の数は、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上、そして、好ましくは850個以下、より好ましくは600個以下である。水解性清掃物品1の少なくとも一方の面における凸部3の数が斯かる範囲にあることで、水解性清掃物品1の使用時に被清掃物と接触する面1a,1bにおいて凸部3と凹部4とがバランスよく配されるため、水解性清掃物品1は汚れの除去性に一層優れたものとなる。
繊維シート2の坪量(繊維シート1枚当たりの坪量)は特に制限されないが、柔らかさと十分な湿潤強度とのバランスの点から、好ましくは20g/m以上、より好ましくは40g/m以上、そして、好ましくは120g/m以下、より好ましくは60g/m以下である。
本発明の水解性清掃物品は、繊維シートに含有されている繊維(繊維シートの構成繊維)として、古紙由来のセルロース繊維を含有する。例えば前述の水解性清掃物品1に係る繊維シート2は、古紙由来のセルロース繊維を含んで構成されている。本発明において繊維原料として古紙を使用する主な理由は環境負荷の低減であり、古紙を積極的に使用することで、地球温暖化防止や廃棄物削減などのさまざまな環境問題の防止・解決に少しでも貢献することを目指したものである。また、古紙を繊維原料として使用することで、水解性清掃物品の製造コストの低減が期待できる。
本発明では、古紙として、製紙原料として回収されたものを用いることができる。我が国では、資源有効利用促進法(平成3年10月25日施行)運用通達で、古紙を以下のように定義している。本発明では以下の定義に当てはまる古紙を用いることができる。
古紙の定義:紙、紙製品、書籍等その全部又は一部が紙である物品であって、一度使用され、又は使用されずに収集されたもの、又は廃棄されたもののうち、有用なものであ って、紙の原料として利用することができるもの(収集された後に輸入されたものも含む。)又はその可能性があるもの。ただし、紙製造事業者の工場又は事業場(以下「工場等」という。)における製紙工程で生じるもの及び紙製造事業者の工場等において加工等を行う場合(当該紙製造事業者が、製品を出荷する前に委託により、他の事業者に加工を行わせる場合を含む)に生じるものであって、商品として出荷されずに当該紙製造事業者により紙の原材料として利用されているものは除く。
本発明で使用可能な古紙として、例えば、新聞、雑誌、段ボール、「上白・カード」(例えば、上白、クリーム上白、罫白)、特白、中白、「模造・色上」(例えば、模造、色上、ケント、白アート、チラシ、飲料用パック、オフィスペーパー)、「切符・中更反古」(例えば、特上切、別上切、中更反古)、茶模造紙(例えば、切茶・無地茶、雑袋、クラフト段ボール)、「台紙・地券・ボール」(例えば、ワンプ、上台紙、台紙、雑がみ)等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる古紙由来のセルロース繊維は、天然セルロース繊維でもよく、非天然セルロース繊維でもよい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)に代表される針葉樹由来のパルプや広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)に代表される広葉樹由来のパルプ等の木材パルプ;綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプが挙げられる。非天然セルロース繊維としては、例えば、カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;キュプラ、レーヨン等の再生セルロース繊維が挙げられる。本発明で用いる古紙由来のセルロース繊維は、典型的には、木材パルプ(NBKP、LBKPなど)である。
本発明に係る繊維シート(例えば図1に示す繊維シート2)は、典型的には、古紙由来のセルロース繊維を主体とする。本発明に係る繊維シートにおける古紙由来のセルロース繊維の含有量は、該繊維シートの全質量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは100%質量%、すなわち全繊維が古紙由来のセルロース繊維である。
本発明に係る繊維シートは、古紙由来のセルロース繊維以外の他の繊維を含有してもよい。他の繊維としては、例えば、バージンパルプ等の、古紙由来ではないセルロース繊維;ポリ乳酸等からなる生分解性繊維;ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の合成繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明に係る繊維シートに含有される全ての繊維に占める、古紙由来のセルロース繊維以外の他の繊維の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
本発明の水解性清掃物品は、前述のとおり、繊維シートの構成繊維として古紙由来のセルロース繊維を含有する点に加えて更に、該水解性清掃物品に含まれる繊維(繊維シートの構成繊維)のJIS P8252に則して測定される灰分量が、10質量%以下である点で特徴付けられる。
前記の「繊維の灰分量」は、水解性清掃物品に含まれる繊維(繊維シートの構成繊維)のみの灰分量であり、水性薬剤などの、水解性清掃物品に含まれる非繊維成分の灰分量を含まない。そのため後述するように、繊維の灰分量の測定に供する測定サンプルとしては、繊維シートを洗浄し、非繊維成分の影響を排除したものを用いる。
また、前記の「繊維の灰分量」は、繊維シートに含まれる全繊維の灰分量である。例えば、本発明に係る繊維シートには、1)繊維として古紙由来のセルロース繊維のみを含む形態、及び2)繊維として古紙由来のセルロース繊維と他の繊維とを含有する形態が包含されるところ、前記1)の形態の場合は、古紙由来のセルロース繊維の灰分量が10質量%以下ということであり、前記2)の形態の場合は、古紙由来のセルロース繊維及び他の繊維それぞれの灰分量の合計が10質量%以下ということである。
繊維の灰分量は、具体的には以下の方法で測定される。
<繊維の灰分量の測定方法>
測定対象の水解性清掃物品を構成する繊維シートを洗浄し、該繊維シートに付着している水性薬剤等の非繊維成分を除去したものを測定サンプルとして用いる。具体的には、次の手順で測定サンプルを調製する。すなわち、JIS P8222に記載の角型手漉き機及び多孔板かき混ぜ機を用いて、水解性清掃物品を再度水分散し、手漉き機下部から排水し金網上に残存する繊維成分のみを取り出す。この操作を、1つの測定対象につき5回繰り返した後、取り出した繊維成分を105±5℃で1.5時間、乾燥機で乾燥し、測定サンプルとする。そしてJIS P8252に記載の900℃燃焼法に準じて、マッフル炉を用いて測定サンプルを加熱し、その加熱前後の測定サンプルの質量から、測定サンプルの灰分量を算出する。灰分量の測定条件は、例えば以下のように設定する。
・測定サンプルを加熱する際の測定サンプルの収容容器:シリカ製の耐熱るつぼ
・測定サンプルの加熱温度(マッフル炉の炉内温度):900℃
・測定サンプルの加熱時間(前記加熱温度を維持する時間):4時間
本発明に係る繊維シートは、古紙由来のセルロース繊維を必須成分として含有し、典型的には、古紙由来のセルロース繊維を主体とするので、該繊維シートの構成繊維の灰分量は、該繊維シートに含まれる古紙由来のセルロース繊維の灰分量と密接に関連する。古紙由来のセルロース繊維は、リサイクルに供される前の使用状況が互いに異なり、使用状況によって品質に大きなばらつきがあり、全てがリサイクルに適しているわけではない。まして、実用上十分な水解性を有する水解性清掃物品の主原料として古紙由来のセルロース繊維を用いるとなれば、選択可能な古紙由来のセルロース繊維はごく限られたものとなることが予想される。本発明者は斯かる背景の下、水解性清掃物品に含まれる繊維(繊維シートの構成繊維)の灰分量に着目し、種々検討した結果、該繊維として古紙由来のセルロース繊維を使用し、且つ該繊維の灰分量を10質量%以下とすることで、古紙由来のセルロース繊維を用いながらも、水解性物品として必要な水解性を満たすことができることを見出した。
本発明では、水解性清掃物品に求める水解性のレベルとして、下記方法により測定される水解時間が3600秒以下となるレベルを求めている。水解時間が3600秒以下の水解性清掃物品(繊維シート)であれば、多量の水中に投入した場合に速やかに崩壊分散し得るからである。つまり本発明の水解性清掃物品は、JIS P8252に則して測定される繊維シートの構成繊維の灰分量が10質量%以下であることに起因して、下記方法により測定される水解時間が、好ましくは3600秒以下、より好ましくは100秒以下である。
<水解性の測定方法>
水300ml(水温20±5℃)及び回転子(直径35mm、厚さ12mmの円盤状)が入った容量300mlのビーカーをマグネチックスターラーに載せ、該回転子の回転数を600±10回転/分に設定する。このビーカーの中に、70mm×60mmの平面視四角形形状の試験片(繊維シート)を投入し、ストップウォッチを押す。回転子の回転数は、水中に存在する試験片の抵抗によって一旦は約500回転に減少するが、試験片の崩壊分散が進行するに従って増加する。回転子の回転数が540回転まで回復した時点でストップウォッチを止め、その時間を1秒単位で測定する。以上の測定を1種類の測定対象物(湿潤状態の繊維シート)につき5回行い、それらの測定値の平均を当該測定対象物の水解時間とする。水解時間が短いほど、水解性に優れ水中で容易に崩壊分散しやすいと評価される。
本発明において、水解性清掃物品に含まれる繊維(繊維シートの構成繊維)の灰分量は前述したとおり少なくとも10質量%以下であり、好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。繊維の灰分量が10質量%を超えると、水解性清掃物品(繊維シート)の水解性が著しく低下するおそれがあり、前記方法により測定される水解時間が3600秒を超えるおそれがある。一方、水解性清掃物品に含まれる繊維の灰分量の下限は特に制限されないが、本発明者の知見によれば水解性の向上の観点から、好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。
同様の観点から、本発明の水解性清掃物品は、JIS P8252に則して測定される灰分量が、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、そして、好ましくは0.08質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。ここでいう、「水解性清掃物品の灰分量」は、繊維シートの構成繊維の灰分量のみならず、水性薬剤などの、水解性清掃物品に含まれる非繊維成分の灰分量を含むものである。水解性清掃物品の灰分量は、前記<繊維の灰分量の測定方法>において、測定対象の水解性清掃物品を構成する繊維シートを洗浄せずに、そのまま測定サンプルとして用いることで、測定することができる。
前記の「繊維(繊維シートの構成繊維)の灰分量」及び「水解性清掃物品の灰分量」をそれぞれ前記特定範囲に調整することは、例えば、該繊維の必須成分である古紙由来のセルロース繊維として適切なものを選択することで達成し得る。本発明者の知見によれば、古紙に含まれる灰分の主な供給源は、炭酸カルシウムなどの各種製紙用填料やインキであることから、古紙由来のセルロース繊維としては、製紙用填料及びインキが比較的少ない古紙を由来とするものが好ましい。斯かる観点から、本発明で好適な古紙由来のセルロース繊維の一例として、新聞、雑誌、模造・色上からなる群から選択される1種以上の古紙由来のセルロース繊維を例示できる。また、ここでいう「模造・色紙」の具体例として、インキのついている上質紙、牛乳パックなどの飲料用紙パックが挙げられる。
水解性清掃物品には、水解性を有し、多量の水中に投入された場合に速やかに崩壊分散することが要望されるだけでなく、実用上十分な湿潤強度を有し、水性薬剤が含浸された湿潤状態において通常の拭き取り作業などに使用しても破れにくいことも要望される。斯かる要望に応え、湿潤強度と水解性とをより高いレベルで両立させる観点から、本発明の水解性清掃物品に含まれる古紙由来のセルロース繊維は、フィブリル度が1.6%未満のものが好ましい。古紙由来のセルロース繊維を含む、水解性清掃物品に含まれるセルロース繊維(繊維シートの構成繊維としてのセルロース繊維)の平均繊維長が前記範囲にあると尚良い。フィブリル度は、セルロース繊維のフィブリル化(特に外部フィブリル化)の程度を示す指標となるもので、フィブリル度の数値が大きいほど、セルロース繊維のフィブリル化が進行していることを示す。フィブリル度は下記方法により測定される。
<フィブリル度の測定方法>
本発明でいう「フィブリル度」は、繊維画像分析アナライザーを用いて測定する。具体的には、市販の繊維画像分析アナライザー(バルメットオートメーション製Valmet FS5)を用い、そのマニュアルに従って測定する。測定原理は、測定対象の繊維の水分散液を調製し、この水分散液を内径0.5mmの管に注入して一方向に流し、その流れる様子を光源の存在下でCCDカメラ等の撮像手段によって撮像し、得られた画像に基づき、各繊維について、繊維のフィブリル部分と、それ以外の部分とに識別する。そして、「繊維の全体面積に対する、フィブリル部分の面積の割合」(以下、「フィブリル面積率」ともいう。)を測定するというものである。このフィブリル面積率がフィブリル度である。フィブリル度が小さいということは、フィブリル面積率が小さい、すなわち、外部フィブリル化があまり進行していないことを意味する。
相対的にフィブリル度の数値が大きいセルロース繊維は、相対的にフィブリル度の数値が小さいセルロース繊維に比べて、外部フィブリル化が進行しており、繊維の外側のフィブリルが毛羽立っていて比表面積が増大しているため、繊維どうしのフィブリルによる物理的絡み合いが生じやすい。したがって、繊維シートに含有されるセルロース繊維がフィブリル度の数値の大きなものであると、湿潤強度の強い繊維シートとなる。しかし、このフィブリル度の数値が大きすぎると、フィブリルによる物理的絡み合いが促進され、繊維シートの構成繊維どうしの結合が強まる結果、繊維シートの水解性が低下してしまい、多量の水中に投入しても崩壊分散し難い繊維シートとなってしまう。
本発明では、水解性清掃物品に求める湿潤強度のレベルとして、下記方法により測定される湿潤引張強度(MDの湿潤引張強度)が400cN/25mm以上となるレベルを求めている。湿潤引張強度が400cN/25mm以上の水解性清掃物品(繊維シート)であれば、通常の清掃又は清拭作業で破損し難く実用上問題ないからである。また本発明では前述したとおり、水解性清掃物品に求める水解性のレベルとして、前記方法により測定される水解時間が3600秒以下となるレベルを求めている。本発明者の知見によれば、水解性清掃物品に含まれるセルロース繊維(古紙由来のセルロース繊維を含む。以下、特に断らない限り同じ。)のフィブリル度が1.6%未満であることにより、該水解性清掃物品に含まれる繊維(繊維シートの構成繊維)のJIS P8252に則して測定される灰分量が10質量%以下であることと相俟って、前記の水解性及び湿潤強度の要求レベルに一層確実に対応することが可能となり、水解性物品としての品質が一層向上し得る。水解性清掃物品に含まれるセルロース繊維のフィブリル度は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.9%以上、そして、好ましくは1.55%以下、より好ましくは1.2%以下である。
<湿潤引張強度の測定方法>
JIS P8113に基づき、測定対象物(湿潤状態の繊維シート)の製造時の流れ方向(MD)の湿潤引張強度を測定する。測定対象物から、MDに70mm、MDと直交する方向(CD)に25mmの平面視長方形形状を切り出し、試験片とする。この試験片を、該試験片のMDが引張方向となるように引張試験機(島津製作所製オートグラフAG-1kN)のチャックに無張力で取り付ける。チャック間距離は50mmとする。チャックに取り付けられた試験片を300mm/分の引張速度でMDに引っ張り、該試験片が破断するまでの最大強度(単位:cN/25mm)を測定する。以上の測定を1種類の測定対象物(湿潤状態の繊維シート)につき10回行い、それらの測定値の平均を当該測定対象物の湿潤引張強度とする。湿潤引張強度の数値が大きいほど、湿潤強度が強く通常の使用では破れにくいと評価される。
セルロース繊維のフィブリル度は、セルロース繊維の叩解の度合いを調整することで調整可能である。叩解とは、水の存在下で木材パルプ等のセルロース繊維を機械的に叩き、磨砕する操作であり、公知の叩解機を用いて行うことができる。叩解によって、含水状態のセルロース繊維に機械的なずり応力が与えられる結果、繊維内部のミクロフィブリル間に空隙が作られ(内部フィブリル化)、繊維の外側のフィブリルが毛羽立ち(外部フィブリル化)、比表面積が増大して繊維の水に対する膨潤性が向上し、同時に、繊維の部分的な切断と、繊維の外周面が剥離された微細繊維が発生し得る。一般に、叩解の度合いを強めると、フィブリル度の数値が大きくなり、叩解の度合いを弱めると、フィブリル度の数値が小さくなる。叩解の度合い(叩解度)は、JIS P8121に規定するカナダ標準ろ水度(カナディアンスタンダードフリーネス:CSF)を指標とすることができ、このフリーネスの数値が大きいほど、叩解の度合いは弱いと評価される。
同様に、強度と水解性との両立を図り水解性物品としての品質を一層向上させる観点から、本発明の水解性清掃物品に含まれる古紙由来のセルロース繊維の平均繊維長は、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上、そして、好ましくは1.6mm以下、より好ましくは1.3mm以下である。古紙由来のセルロース繊維を含む、水解性清掃物品に含まれる繊維(繊維シートの構成繊維)の平均繊維長が前記範囲にあると尚良い。セルロース繊維の平均繊維長は、前述のフィブリル度の測定で使用可能な測定機器(Valmet FS5)を用い、そのマニュアルに従って測定することができる。
本発明に係る繊維シートには、古紙由来のセルロース繊維を含む繊維に加えて更に、水溶性バインダが含有されている。繊維シートは水性薬剤を保持していることにより常温常圧で湿潤状態であるところ、水溶性バインダは、湿潤状態の繊維シートの湿潤強度の発現に寄与する他、繊維シートの水解性に影響を及ぼし得る。また、本発明の水解性清掃物品の一実施形態である水解性清掃物品1は、前述したとおり図1に示す如くに、使用時に被清掃物と接触する面1a,1bに凹凸が形成されていて、全体として嵩高な凹凸形状をなしているところ、水溶性バインダは、斯かる嵩高な凹凸形状の維持にも寄与し得る。
繊維シートに含有される水溶性バインダとしては、繊維シートが水性薬剤を保持して湿潤状態にあるときに、該バインダが一時的に不溶化することで、繊維シートの構成繊維どうしの結合を維持する結合剤として機能し、水解性清掃物品の使用時の強度維持の役割を果たすものが好ましく、このような機能を有する水溶性バインダとして、天然多糖類、多糖誘導体、合成高分子を例示できる。なお、前記の「水溶性バインダの一時的な不溶化」は、典型的には、繊維シートの保持される水性薬剤中のバインダ不溶化成分(例えばバインダの架橋剤)の作用によって起こる。
天然多糖類としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプランが挙げられる。
多糖誘導体としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンブン又はその塩、デンプン、メチルセルロース、エチルセルロースが挙げられる。
合成高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩が挙げられる。また、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸が挙げられる。
前述した水溶性バインダの中でも、カルボキシル基を有する水溶性バインダが、バインダとしての性能が良好となる点、及び後述する架橋剤との親和性が良好である点から好ましい。カルボキシル基を有する水溶性バインダとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース又はそれらの塩を例示できる。
繊維シートにおける水溶性バインダの含有量は、使用するバインダの種類等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、特に前述したように、水解性清掃物品に含まれるセルロース繊維(古紙由来のセルロース繊維)のフィブリル度が1.6%未満である場合、及び/又は、水解性清掃物品に含まれる繊維(古紙由来のセルロース繊維)の平均繊維長が0.5mm以上1.6mm以下である場合には、そうでない場合に比べて繊維シートの湿潤強度が向上しているため、従来に比べて低減することが可能である。繊維シートにおける水溶性バインダの含有量が低減されると、この種の水解性清掃物品において従来問題となっていた、「バインダに起因する表面のぬるつき感ないしべたつき感」が抑制され、結果として、水解性清掃物品の使用感が向上するというメリットが得られる。また、この種のバインダは一般に高価であることから、繊維シートにおける水溶性バインダの含有量が低減されると、製造コストの低減に繋がり、経済的に有利である。
繊維シートにおける水溶性バインダの含有量は、該バインダの含有量を必要最低限に抑えつつ、繊維シートの湿潤強度と水解性とのバランスをとる観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。なお、ここでいう、「繊維シートにおける水溶性バインダの含有量」は、1枚の繊維シートにおける水溶性バインダの含有量を意味し、本実施形態の水解性清掃物品1のように、水解性清掃物品中に繊維シートが複数含まれている、その複数の繊維シートそれぞれにおける水溶性バインダの含有量が前記範囲にあることが好ましい。
本発明に係る繊維シートは種々の方法で製造することができる。例えば、古紙由来のセルロース繊維を含む繊維の分散液中に、水溶性バインダと、必要に応じ該バインダのパルプ繊維への定着剤とを添加して抄紙原料を得、該抄紙原料を用いて公知の湿式抄紙法を実施することにより、繊維シートを製造することができる。この製造方法は、水溶性バインダを内添する方法である。また例えば、古紙由来のセルロース繊維を含む繊維の分散液から公知の湿式抄紙法により湿潤状態のシートを製造し、該シートにプレス脱水処理及び/又は熱風吹き付け等の加熱処理を施して乾燥ないし半乾燥状態とした後、該シートの片面に水溶性バインダを噴霧又は塗布する等して付与し、更に乾燥することで、繊維シートを製造することができる。この製造方法は、水溶性バインダを外添する方法である。繊維シートは、特許文献1に記載の繊維シートの製造方法によって製造することもできる。
また例えば、前述の湿式抄紙法(内添法、外添法)以外の方法で繊維シートを製造することもできる。具体的には例えば、古紙由来のセルロース繊維を含む繊維を、水無しで乾式によって解繊してウェブを形成した後、該ウェブに水溶性バインダを噴霧する等して付与し乾燥することで、繊維シートを製造することができる。この製造方法はエアレイド製法である。
本発明の水解性清掃物品の一実施形態である水解性清掃物品1(図1参照)のように、使用時に被清掃物と接触する面1a,1bに凹凸を形成する場合には、前述の方法で製造した繊維シートの一方の面又は両面に凹凸を付与する。この繊維シートへの凹凸付与は、公知の方法を利用して実施することができ、例えば、繊維シートに熱を伴うか又は伴わないエンボス加工を施すことで実施することができる。エンボス加工は、例えば、周面に互いに噛み合う凹凸(歯溝)を有する一対の凹凸ロール間に、繊維シートを供給することで実施することができる。水解性清掃物品1は、例えば、前述の方法で製造された2枚の繊維シート2を重ね合わせて積層構造20を得、該積層構造20を、周面が所定温度に加熱された一対の凹凸ロール間に供給することで製造することができる。
本発明の水解性清掃物品の好ましい一実施形態として、下記<1>ないし<3>の全てを満たすものが挙げられる。
<1>バインダが、カルボキシル基を有する水溶性バインダである。
<2>繊維シートにおけるバインダの含有量が、好ましくは2質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
<3>複数(図1に示す形態では2枚)の繊維シートの積層構造を有し、該積層構造において厚み方向に隣り合う2枚の繊維シートのうちの少なくとも一方における他方との対向面に、カルボキシル基を有する水溶性バインダが付与されている。
前記<1>ないし<3>の全てを満たす水解性清掃物品1(図1参照)は、湿潤強度と水解性とが高いレベルで両立し、且つ第1の面1a及び第2の面1bにおいて繊維が毛羽立ち易く、被清掃物の汚れの拭き取り性能に優れる。前記<3>の「積層構造において厚み方向に隣り合う2枚の繊維シートのうちの少なくとも一方における他方との対向面に、カルボキシル基を有する水溶性バインダが付与」することは、前述した水溶性バインダを内添する方法によって実現可能である。
本発明の水解性清掃物品において、繊維シートは水性薬剤を保持している。水性薬剤は、典型的には常温常圧で液体であり、繊維シートに含浸されることで保持されている。
水性薬剤は、典型的には、繊維シートが含有する水溶性バインダを不溶化させるバインダ不溶化成分を含有する。その理由は以下のとおりである。すなわち、繊維シートは水解性を有するため、これに水性薬剤の如き水性液を含浸させると容易に崩壊してしまうおそれがあるので、繊維シートの保形性を向上し、少量の水の存在下では繊維シートが崩壊しないようにするために、繊維シートに保持される水性薬剤中にバインダ不溶化成分を含有させ、繊維シートに含有されている水溶性バインダの不溶化を促進するのである。例えば、繊維シートが保持する水性薬剤中にバインダ不溶化成分として架橋剤を含有させた場合には、その架橋剤によって水溶性バインダが架橋して不溶化するため、少量の水では水溶性バインダが溶解しなくなり、その結果、繊維シートの保形性が向上し、繊維シートに少量の水がかかっても崩壊し難くなる。しかし、繊維シートを多量の水中に投入した場合には、不溶化が一時的に抑制されていた水溶性バインダが再び水に溶解するようになるため、繊維シートは速やかに且つ繊維レベルでばらばらに崩壊し得る。
架橋剤(バインダ不溶化成分)としては、使用する水溶性バインダの種類等に応じて適切なものを選択すればよく、特に制限されないが、例えば前述したCMCなどの、カルボキシル基を有する水溶性バインダを繊維シートに含有させる場合には、その架橋剤として多価金属イオンを用いることが好ましい。特にアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の二価の金属イオンを用いることが、繊維シートにおいて繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る強度が発現する点、及び繊維シートの水解性が十分になる点から好ましい。これらの二価の金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。二価の金属イオンは、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩などの水溶性金属塩の形で水性薬剤に添加される。
水性薬剤における架橋剤等のバインダ不溶化成分の含有量は、使用するバインダ不溶化成分の種類等に応じて適宜調整すればよい。例えば、バインダ不溶化成分(架橋剤)として前述の「二価の金属イオン」を使用する場合、繊維シートが含有する水溶性バインダにおけるカルボキシル基1モルに対して、二価の金属イオンが好ましくは1/4モル以上、より好ましくは1/2モル以上となるように、水性薬剤における二価の金属イオンの含有量を調整することが、十分な架橋反応を起こさせる点から好ましい。
水性薬剤は、バインダ不溶化成分としての架橋剤に加えて更に、水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。これにより、水溶性バインダと架橋剤との架橋コンプレックスの生成が著しく増大し、そのコンプレックスが不溶化した状態で存在するので、繊維シートが保持する水性薬剤中の水性液の量が多くても、使用に耐え得る十分な強度が発現し得る。水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;前記グリコール類とメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールとのモノ又はジエーテル;前記グリコール類と低級脂肪酸とのエステル;グリセリンやソルビトール等の多価アルコール等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。水性薬剤における水溶性有機溶剤の含有量は、該水性薬剤の全質量に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは10~50質量%である。
水性薬剤は、前述のバインダ不溶化成分(架橋剤)及び水溶性有機溶剤に加えて更に、水性薬剤自体の清掃ないし清拭性能の向上等を目的として、界面活性剤、殺菌剤、除菌剤、キレート剤、漂白剤、消臭剤、香料等の他の成分を含有してもよい。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられる。特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、アルキル炭素数8~24の両性界面活性剤が好適に用いられる。
繊維シートにおける水性薬剤の保持量(含浸量)は、繊維シートに含有される水溶性バインダの不溶化、清掃ないし清拭性能の向上等の観点から、繊維シートの乾燥質量に対して、好ましくは100質量%以上、より好ましくは150質量%以上、そして、好ましくは500質量%以下、より好ましくは300質量%以下である。本発明の水解性清掃物品の好ましい一実施形態として、水性薬剤が二価の金属イオン及び水溶性有機溶剤を含有し、且つ繊維シートにおける該水性薬剤の保持量が、前記の好ましい範囲にあるものが挙げられる。斯かる好ましい水解性清掃物品は、実用上十分な水解性を有することに加え、水性薬剤の保持量が前記範囲にあることなどに起因して、液滑り効果による清掃性が向上している。
本発明の水解性清掃物品は、物品の清掃に使用することもできるし、人体の清拭に使用することもできる。前者の具体例として、トイレ、洗面所、台所などの水回り用清掃物品が挙げられる。後者の具体例として、おしり拭き、介護用からだ拭き、メーク落し用シートが挙げられる。本発明の水解性清掃物品を使用した後は、そのまま水に流して廃棄すればよく、そうすることで速やかに崩壊するので排水管を詰まらせることはない。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図1に示す水解性清掃物品1は、使用時に被清掃物と接触する面1a,1bの両方に凹凸が形成されていたが、片面のみに凹凸が形成されていてもよく、両面の何れもが実質的に凹凸の無い平坦面であってもよい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1~7、比較例1~2〕
古紙由来のセルロース繊維を所定量含む繊維を水に分散させたスラリー(繊維濃度約0.3質量%)に、水溶性バインダとしてCMCを所定量添加し、該スラリーを常法に従って湿式抄紙することにより、坪量40g/mの繊維シートを得た。得られた繊維シートは、セルロース繊維の含有量が95質量%、CMCの含有量が固形分換算で5質量%であった。この繊維シートを水性薬剤中に浸漬することにより、該繊維シートに該水性薬剤を保持させた。水性薬剤としては以下の処方の水性薬剤を用い、繊維シートにおける水性薬剤の保持量(含浸量)は210質量%であった。こうして、繊維シートと水性薬剤とを含む清掃物品を製造した。
〔水性薬剤の処方〕
・アルキルグルコシド 0.2質量%
・硫酸亜鉛 3質量%
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 13質量%
・1,2-プロパンジオール 7質量%
・水 バランス(合計100質量%)
各実施例及び比較例の清掃物品について、前記方法により、繊維(繊維シートの構成繊維)の灰分量、清掃物品の灰分量、古紙由来のセルロース繊維の平均繊維長、古紙由来のセルロース繊維のフィブリル度、水解性及び湿潤引張強度をそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示す。なお、下記表1の「古紙の種類」の欄に関し、古紙の種類としては同じであるが入手元が異なる場合は、「A」、「B」の表記を付して区別した。
水解性の評価に関し、水解時間が100秒以下の場合を「◎」(最高評価)、100秒を超えて3600秒以下の場合を「〇」、3600秒を超える場合を「×」(最低評価)とした。湿潤引張強度の評価に関し、400cN/25mm以上の場合を「◎」(最高評価)、300cN/25mm以上400cN/25mm未満の場合を「〇」、300cN/25mm未満の場合を「×」(最低評価)とした。
Figure 0007313267000001
1 水解性清掃物品
1a 第1の面
1b 第2の面
2 繊維シート
20 積層構造
3 凸部
4 凹部

Claims (6)

  1. 繊維及び水溶性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シートと、該繊維シートに保持された水性薬剤とを含む水解性清掃物品であって、
    前記繊維として古紙由来のセルロース繊維を含み、
    前記繊維のJIS P8252に則して測定される灰分量が、10質量%以下である水解性清掃物品。
  2. 前記古紙由来のセルロース繊維のフィブリル度が1.6%未満である、請求項1に記載の水解性清掃物品。
  3. 前記古紙由来のセルロース繊維の平均繊維長が0.5mm以上1.6mm以下である、請求項1又は2に記載の水解性清掃物品。
  4. 前記水溶性バインダが、カルボキシル基を有する水溶性バインダであり、
    前記繊維シートにおける前記水溶性バインダの含有量が、2質量%以上20質量%以下であり、
    複数の前記繊維シートの積層構造を有し、該積層構造において厚み方向に隣り合う2枚の該繊維シートのうちの少なくとも一方における他方との対向面に、前記水溶性バインダが付与されている、請求項1~3の何れか1項に記載の水解性清掃物品。
  5. 前記水性薬剤が、二価の金属イオン及び水溶性有機溶剤を含有し、
    前記繊維シートにおける前記水性薬剤の保持量が、該繊維シートの乾燥質量に対して100質量%以上500質量%以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の水解性清掃物品。
  6. 使用時に被清掃物と接触する面に凹凸が形成されている、請求項1~5の何れか1項に記載の水解性清掃物品。
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