JP7313114B2 - 複合膜 - Google Patents
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Description
そして、様々な産業用途に使用する際の機能向上を目的として、膜構造部分の薄膜化が検討されている。
しかしながら、膜構造部分を薄膜化しようとする場合、膜構造部分の強度が弱いため寸法変化あるいは亀裂や破断が生じやすいという物性上の問題、例えば、膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を製造するのが困難であるという製造上の問題、そして、ハンドリング性が悪いという取り扱い上の問題などが発生すると考えられた。
特開2016-182701号公報(特許文献1)には、基材上に繊維堆積層を備えた積層体の該繊維堆積層へ、熱硬化性樹脂溶液を付与することで製造されたフィルム材が開示されている。特許文献1の膜構造部分は、繊維堆積層を構成する繊維によって補強されてなるため、膜構造部分を薄膜化した場合であっても、上述の問題が発生し難いと考えられる。
なお、特許文献1には、その具体的な態様として、
・基材の材質として、樹脂シート、紙シート、布シート、ガラス繊維シートなどを用いることができ、基材の厚さは10~100μmであるのが好ましいこと、
・繊維堆積層の構成繊維は、特に限定されず各種樹脂を使用して製造できるものであり、電界紡糸法により繊維堆積層を製造する場合、使用する樹脂はPESが好ましいこと、
・繊維堆積層の平均繊維径は例えば1μm以下であり、繊維堆積層の厚さは1~3μmであるのが好ましいこと、
・熱硬化性樹脂の種類は特に限定されないものであり、使用する樹脂はエポキシ樹脂が好ましいこと、
・膜材における、繊維堆積層の空隙中に熱硬化性樹脂溶液が浸透してなる層の厚さは5~100μmであること、
が開示されている。
しかし、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を備えた複合膜を提供しようとした際に、調製した複合膜における第一繊維層側の主面に、膜化していない部分(例えば、繊維形状が存在している部分や意図せず開孔が存在している部分があるなど)があった。
そして、この問題は上述のとおり、第一繊維層と第二繊維層を備える積層体と膜構成樹脂を用いて複合膜を提供しようとする際に生じ易いものであった。
そのため従来技術を参照する限りでは、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えることで、様々な産業用途に有用な複合膜を提供することが困難であった。
「第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有しており、
前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する、複合 膜であって、
複合膜における前記第一繊維層側の主面に前記膜構造部分が存在しており、
複合膜における前記第一繊維層側の主面を1000倍で撮影した電子顕微鏡写真に写る前記膜構造部分には、繊維形状が存在している部分および開孔が存在している部分は認められないものであって、
前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下であり、
前記第一繊維層は前記 第二繊維層よりも親水性が低い、
複合膜。」
である。
また、本発明の請求項2に係る発明は、
「(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別 の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体 を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与 する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊 維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与 する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊 維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在す る前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、請求項1に記載の複合膜の製造方法。」
である。
そして、「第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下」であることによって、第一繊維層の厚さが均一かつ薄いものであるため、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を備えた複合膜を提供できる。
更に、本願発明者らは上述の課題を解決するため検討を続けた結果、第一繊維層と第二繊維層の関係性が、「前記第一繊維層は前記第二繊維層よりも親水性が低い」という組み合わせを満足するときに、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できることを見出した。
以上から、本発明は、様々な産業用途に有用な複合膜を提供できる。
つまり、本発明の複合膜は、以下の機能が発揮される複合膜であると考えられる。
・複合膜を構成している積層体のうち第一繊維層は親水性が低く、親水性の流体によって溶解や膨潤あるいは収縮などの変形が発生し難い構成部材である。そのため、変形が発生し難い第一繊維層により複合膜を構成する膜構造部分が補強されていることで、複合膜が親水性の流体に曝されても、複合膜に寸法変化あるいは亀裂や破断が生じやすいという物性上の問題や、ハンドリング性が悪いという取り扱い上の問題などが発生するのを防止できる。
・第二繊維層は繊維で構成されている部材であるため、通気性と通液性を備えている。そして、複合膜を構成している積層体のうち第二繊維層は親水性が高く、親水性の流体との親和性が高い構成部材である。そのため、第二繊維層は親水性の流体を保持しやすく膜構造部分へ流体を供給しやすい。
更に、第二繊維層は膜構造部分を外側からも補強する役割を担うことができる部材であり、複合膜に寸法変化あるいは亀裂や破断が生じやすいという物性上の問題や、ハンドリング性が悪いという取り扱い上の問題などが発生するのを防止できる。
本製造方法は、「(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在する前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、前記積層体における前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する複合膜の製造方法」に係る発明である。
そして、「前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下」であることによって、厚さが均一かつ薄い第一繊維層を調製できるため、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を備えた複合膜を提供できる。
更に、本発明の製造方法は「前記第一繊維層は前記第二繊維層よりも親水性が低い」という製造条件を有していると共に、上述した複合膜の製造方法において(3)と(4)および(7)の製造工程を上述した工程順で備えているため、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
つまり、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体は、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂が存在していることで、膜構成樹脂溶液が第二繊維層の構成繊維間に進入し難い態様を備えている。
そのため、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体における、第一繊維層が露出している主面に膜構成樹脂溶液を付与する工程(5)において、膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのが防止されており、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
特に、本効果は、第二繊維層よりも第一繊維層に対する親和性が高い膜構成樹脂溶液を採用した場合のみならず、例えば、第一繊維層と第二繊維層の双方に対し同等に親和性を有する膜構成樹脂溶液や、第一繊維層よりも第二繊維層に対する親和性が高い膜構成樹脂溶液を採用した場合であっても(換言すれば、第一繊維層から第二繊維層へ移動し易い膜構成樹脂溶液を採用した場合であっても)、膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのが防止されていることで、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
そのため、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液が十分かつ潤沢に存在した状態で、膜構成樹脂溶液が付与された積層体を、次の工程である溶媒を除去して膜構造部分を形成する工程(6)へ供することができる。その後、親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、第二繊維層の構成繊維間に存在する親水性樹脂を除去する工程(7)を経ることで、本発明にかかる複合膜を提供できる。
その結果、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂が十分に存在していることで、膜化していない部分が存在するのを防止して、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
本発明でいう第一繊維層および第二繊維層(以降、合わせて各繊維層と称することがある)とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などのシート状の布帛由来の繊維からなる層である。
構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウエブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、カレンダーロールにより加熱加圧する方法、熱風乾燥機により加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている有機樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
なお、直接紡糸法を用いて紡糸した繊維を捕集することで、平均繊維径が細いと共に繊維径の均一な繊維からなる繊維ウェブや不織布を調製でき好ましい。特に、静電紡糸法を用いることで、より平均繊維径が細いと共により繊維径の均一な繊維からなる繊維ウェブや不織布を調製でき好ましい。
静電紡糸法を採用する場合には、曳糸性を有する紡糸液を用いるのが好ましい。曳糸性を有する紡糸液を用いることで、より繊維径が均一かつ細い繊維を調製でき好ましい。なお、紡糸溶液が曳糸性を有するか否かは、特開2017-053078号公報に記載の方法で判別することができる。
第一繊維層を構成する繊維は、膜化していない部分が存在するのを防止し、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を実現できるよう、その平均繊維径は3μm以下であり、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのが好ましい。平均繊維径の下限値は適宜選択するが、10nm以上であるのが現実的である。
第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径は適宜選択でき、平均繊維径が細いほど薄い複合膜を提供し易いことから、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径は、15μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのが好ましく、5μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが好ましく、800nm以下であるのが好ましい。平均繊維径の下限値は適宜選択するが、10nm以上であるのが現実的である。
第一繊維層に含まれている繊維端部の数が少ないことで、表面が平滑で厚さが均一かつ薄い膜構造部分を実現し易いことから、第一繊維層は構成繊維として連続長を有する繊維を含んでいるのが好ましく、第一繊維層の構成繊維が連続長を有する繊維のみであるのがより好ましい。
また、第二繊維層に含まれている繊維端部の数が少ないことで、厚さが均一かつ薄い複合膜を提供し易いことから、第二繊維層は構成繊維として連続長を有する繊維を含んでいるのが好ましく、第二繊維層の構成繊維が連続長を有する繊維のみであるのがより好ましい。
このような連続長を有する繊維は、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を用いて調製することができる。
これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でもよい。また、樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
各繊維層を構成する繊維は横断面の形状が、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維であってもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維を例示できる。
第一繊維層と第二繊維層の積層態様は適宜選択でき、第一繊維層と第二繊維層がただ重ね合わされているだけの態様、第一繊維層と第二繊維層の層間がバインダで一体化している態様、第一繊維層と第二繊維層の構成繊維同士が両繊維層間を超え絡合する(例えば、ニードルパンチ処理、水流絡合処理、第二繊維層の主面上に第一繊維層を構成する繊維を抄き上げることで、第一繊維層の構成繊維を第二繊維層中へ入り込ませる方法など)ことで一体化している態様、構成繊維が熱溶融することで繊維間接着がなされ第一繊維層と第二繊維層の層間が一体化している態様、第一繊維層と第二繊維層の層間が超音波接着などにより一体化している態様などであることができる。
特に、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を用いて紡糸した繊維を第二繊維層の一方の主面上に捕集することで第一繊維層を形成して積層体を調製すると、バインダによる接着や構成繊維の熱溶融による接着をすることなく第一繊維層と第二繊維層の層間が一体化してなる積層体を調製できることから、バインダや溶融した構成繊維により通気度など物性が意図せず変化するのを防止して、第一繊維層と第二繊維層の層間を一体化でき好ましい。
膜構成樹脂の種類は、複合膜やその膜構造部分に求める特性、第一繊維層の構造やその構成繊維との親和性などによって、適宜選択することができる。例えば、各繊維層を構成可能な樹脂として挙げた上述の樹脂を、単体樹脂あるいは混合樹脂で膜構成樹脂として使用できる。また、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でもよい。更に、樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
粒子形状も適宜選択でき、繊維状、扁平状、球状、数珠状、棒状などであることができる。また、粒子は中実粒子でも中空粒子でもよく、多孔を有する粒子形状であってもよい。
(膜状の態様をなしているか否かの判断方法(ピンホール簡易検査))
(1) 複合膜の一方の主面を上面にして、メッシュ基材上に複合膜を配置する。
(2) 先端に円形(直径:25mm)の吸気部を有する、0mlの目盛り位置から10mLの目盛り位置まで1mlごとに目盛りのある10mLシリンジを用意する。シリンジの吸気部の円周には、Oリングが付属されている。
(3) 吸気部を複合膜の主面に40Nの力で密着させた状態でシリンジのピストンに力を作用させ、ピストンにおける複合膜側端部を、0mlの目盛り位置から10mLの目盛り位置まで引き上げる。
(4) シリンジのピストンに作用させている力を解放する。
(5) 上述した(1)~(4)の工程を、測定対象の複合膜における両主面に対し各々行った結果、両主面のうち少なくとも一方の主面において、シリンジのピストンに作用させている力を解放した後に、ピストンにおける複合膜側端部が0ml~1mlの目盛り範囲まで戻った場合には、複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有している(換言すれば、複合膜は膜化していない部分が存在するのが防止されてなる膜構造部分を有している)と判断する。
一方、両主面のいずれにおいても、ピストンにおける複合膜側端部が0ml~1mlの目盛り範囲まで戻らなかった場合には、複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有していない(換言すれば、複合膜は膜化していない部分が存在するのが防止されてなる膜構造部分を有していない)と判断する。
(親水性の判断方法)
(1)導電率が10μS/cm以下の水(以降、水と称する)を用意する。
(2)第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面上に、水を3μL滴下し、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角を、接触角装置(DM500、協和界面科学(株)製)を用い、θ/2法により測定する。
(3)第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し、(2)の項目の方法を用いて接触角を測定し、各測定結果を比較する。
上述した方法において、第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し水が為す接触角が、第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し水が為す接触角よりも大きい場合、第一繊維層は第二繊維層よりも親水性が低いと判断する。
(親和性の判断方法)
(1)膜構成樹脂を溶解可能な溶媒に濃度1~20質量%となるように溶解させ、膜構成樹脂溶液を用意する。
(2)第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面上に、膜構成樹脂溶液を3μL滴下し、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角を、接触角装置(DM500、協和界面科学(株)製)を用い、θ/2法により測定する。
(3)第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し、(2)の項目の方法を用いて接触角を測定し、各測定結果を比較する。
上述した方法において、第一繊維層あるいは第一繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し膜構成樹脂溶液が為す接触角が、第二繊維層あるいは第二繊維層を構成する繊維集合体の主面に対し膜構成樹脂溶液が為す接触角よりも小さい場合、第一繊維層は第二繊維層よりも膜構成樹脂溶液と親和性が高いと判断する。
特に、膜構成樹脂溶液が第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)に浸透し易いほど、更に、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供し易い。そのため、上述した(2)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が0°である、換言すれば、液滴設置後15秒経過後には膜構成樹脂溶液が浸透して、主面上に膜構成樹脂溶液の液滴が存在しなくなる第一繊維層(第一繊維層を構成する繊維集合体)であるのが最も好ましい。
また、膜構成樹脂溶液が第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)に浸透し難いほど、更に、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供し易い。そのため、上述した(3)の工程において、液滴設置後15秒経過後における液滴がなす接触角が80°以上の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのが好ましく、90°以上の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのがより好ましく、100°以上の第二繊維層(第二繊維層を構成する繊維集合体)であるのが最も好ましい。
複合膜における膜構造部分の厚さは適宜選択するが、10μm以下であることができ、8μm以下であることができ、6μm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、0.1μm以上であるのが現実的である。
複合膜における第二繊維層の厚さは適宜選択するが、30μm以下であることができ、20μm以下であることができ、10μm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、1μm以上であるのが現実的である。
また、複合膜における該反対側の主面から、該反対側の主面を構成する繊維のみからなる部分の、厚さ方向の長さを測定し、これを複合膜における第二繊維層の厚さとする。
なお、厚さ方向とは、一方の主面(最も広い面)と対抗する反対側の主面間の最短距離をなす方向をいい、厚さとは両主面間における厚さ方向の長さをいう。
(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在する前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、前記積層体における前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する複合膜の製造方法であって、
前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下であり、
前記第一繊維層は前記第二繊維層よりも親水性が低い、複合膜の製造方法を挙げることができる。
繊維集合体は積層体における第二繊維層を構成可能な部材であって、例えば、繊維ウェブや不織布、織物や編み物などのシート状の布帛を使用することができる。
繊維集合体は、乾式絡合や湿式抄造あるいは直接紡糸法を用いて形成することができるが、表面が平滑な布帛であることによって、厚さが均一かつ薄い複合膜を提供し易いことから、湿式抄造や直接紡糸法を用いてなる布帛であるのが好ましい。特に、直接紡糸法としては静電紡糸法を用いてなる布帛であると、平均繊維径が細いと共に繊維径の均一な繊維からなる繊維ウェブや不織布を調製でき、より厚さが均一かつ薄い複合膜を提供し易いため好ましい。
別の繊維集合体は積層体における第一繊維層を構成可能な部材であって、例えば、繊維ウェブや不織布、織物や編み物などのシート状の布帛を使用することができる。
・繊維集合体における少なくとも一方の主面上に、別途調製した別の繊維集合体を積層する方法、
・繊維集合体の一方の主面上に、別の繊維集合体を構成可能な繊維を抄造するあるいは直接紡糸することで堆積させ、該繊維の堆積層(別の繊維集合体)を形成する方法、
などの方法によって、積層体を調製することができる。
このうち、直接紡糸法(特に、静電紡糸法)を用いて紡糸した繊維を繊維集合体の一方の主面上に捕集することで積層体を調製すると、バインダによる接着や構成繊維の熱溶融による接着をすることなく繊維集合体と別の繊維集合体の層間が一体化してなる積層体を調製できることから、バインダや溶融した構成繊維により透気度など物性が意図せず変化するのを防止して、繊維集合体と別の繊維集合体の層間を一体化でき好ましい。更に、厚さが均一かつ薄い膜構造部分を供える複合膜を提供でき好ましい。
この理由は完全に明らかになっていないが、後述する工程(5)および(6)において、以下の効果が発揮されているためだと考えられる。
つまり、第一繊維層と第二繊維層を備える積層体に対し、後述の第一繊維層が露出している主面に膜構成樹脂溶液を付与する工程(5)において、第二繊維層よりも親和性が高い第一繊維層に対して膜構成樹脂溶液を付与することになり、膜構成樹脂溶液が第一繊維層に留まり易い。
そのため、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液が十分かつ潤沢に存在した状態で、膜構成樹脂溶液が付与された積層体を、次の工程である溶媒を除去する工程(6)へ供することができる。
親水性樹脂溶液は、親水性樹脂を溶解可能な溶媒に溶解させてなる溶液である。溶媒の種類は、親水性樹脂の種類に伴い適宜選択できる。なお、該溶媒は第一繊維層や第二繊維層に含まれている成分を溶解し難い溶媒であるのが好ましく、該成分を溶解しない溶媒であるのがより好ましい。このような溶媒を採用すると、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生するのを防止して複合膜を提供でき好ましい。なお、本発明において溶解するとは25℃の溶媒100gに対して測定対象物が0.5gよりも多く飽和して溶けることを指す。
具体的には親水性樹脂として、水溶性多糖類(例えば、プルラン、アミロース、デンプン、変性デンプン、ヒアルロン酸、キサンタンガムなど)、水溶性高分子たんぱく質(例えば、コラーゲン、ゼラチンなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、水溶性ポリアミド、水溶性ポリアミドイミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルメチルエーテルなどのエーテル結合した水溶性高分子、ポリアクリル酸などを採用することができる。なお、後述する親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いる工程(7)において、該溶媒による親水性樹脂の除去に伴い膜構成樹脂が除去されるのが防止されるよう、親水性樹脂は膜構成樹脂と異なる樹脂であるのが好ましい。
親水性樹脂溶液の温度は、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生し難いよう、適宜選択できる。具体的には、25℃の親水性樹脂溶液を採用することができる。
このようにして、積層体における第二繊維層の主面側から親水性樹脂溶液を吸液させることで、第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂溶液を存在させる。
膜構成樹脂溶液は、膜構成樹脂を溶解可能な溶媒に溶解させてなる溶液である。溶媒の種類は、膜構成樹脂の種類に伴い適宜選択できる。なお、該溶媒は第一繊維層や第二繊維層、親水性樹脂に含まれている成分を溶解し難い溶媒であるのが好ましく、該成分を溶解しない溶媒であるのがより好ましい。このような溶媒を採用すると、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生するのを防止して複合膜を提供でき好ましい。
膜構成樹脂溶液を付与する方法は適宜選択できるが、スプレーやスピンコート、グラビアコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、ロールコーティング、リップコート、フロートコート、コンマロールコート、キスコート、スクリーン印刷、インクジェット印刷、などを用いて膜構成樹脂溶液を散布あるいは塗布する方法、積層体における第一繊維層が露出している主面側を膜構成樹脂溶液中に浸漬する方法などを採用することができる。
このようにして、積層体における第一繊維層の主面側から膜構成樹脂溶液を吸液させることで、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液を存在させる。
本工程で使用する溶媒は親水性樹脂を溶解可能なものであれば良く、適宜選択できるが、工程(3)で使用した親水性樹脂溶液を構成している溶媒を採用するのが好ましい。溶媒の具体例として、上述した(親水性の判断方法)の項目で使用した導電率が10μS/cm以下の水を採用できる。
なお、該溶媒は複合膜の構成部材(第一繊維層や第二繊維層、膜構成樹脂など)に含まれている成分を溶解し難い溶媒であるのが好ましく、該成分を溶解しない溶媒であるのがより好ましい。このような溶媒を採用し親水性樹脂を除去すると、構成部材の形状変形や機能低下などが意図せず発生するのを防止して複合膜を提供でき好ましい。好ましい態様としては、該溶媒が水の場合、複合膜の構成部材が非水溶性の成分のみから構成されているのが好ましい。
また、第二繊維層および/または第二繊維層を構成可能な布帛を親水化処理工程などの親水化加工工程へ供してもよい。この親水化処理工程としては、例えば、スルホン化処理、フッ素ガス処理、ビニルモノマーのグラフト重合処理、界面活性剤処理、放電処理、あるいは親水性樹脂付与処理などを挙げることができる。
本発明の製造方法が、膜化していない部分が存在するのを防止し、例えば、厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を製造できる理由は完全に明らかになっていないが、以下の効果が発揮されているためだと考えられる。
そのため、上述の工程(3)(4)を経た後の積層体における、第一繊維層が露出している主面に膜構成樹脂溶液を付与する工程(5)において、膜構成樹脂溶液が第一繊維層から第二繊維層へ移動するのが防止されており、付与された膜構成樹脂溶液は第一繊維層の構成繊維間に留まり易いという効果が発揮される。
そのため、第一繊維層の構成繊維間に膜構成樹脂溶液が十分かつ潤沢に存在した状態で、膜構成樹脂溶液が付与された積層体を、次の工程である溶媒を除去して膜構造部分を形成する工程(6)へ供することができる。その後、親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、第二繊維層の構成繊維間に存在する親水性樹脂を除去する工程(7)を経ることで、本発明にかかる複合膜を提供できる。
例えば、
・厚さが10μm以下の第一繊維層を備える積層体を用いると共に、第二繊維層の構成繊維間全体に親水性樹脂が存在してなる積層体を用いて複合膜を製造することで、あるいは、
・第二繊維層の構成繊維間全体に親水性樹脂が存在していると共に、第一繊維層における第二繊維層側にも親水性樹脂が存在していることで、親水性樹脂が存在していない部分の厚さが10μm以下の第一繊維層を備える積層体を用いて複合膜を製造することで、
厚さが均一で膜厚が10μm以下の極めて薄い膜構造部分を供えた複合膜を提供できる。
ポリビニルアルコール樹脂(完全鹸化、重合度:900~1000、和光純薬社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させることで、ポリビニルアルコール樹脂濃度が15質量%の水溶液aを調製した。また、メチルビニルエーテル―無水マレイン酸コポリマー樹脂(ALDRICH社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させることで、メチルビニルエーテル―無水マレイン酸コポリマー樹脂濃度が濃度15質量%の水溶液bを調製した。
水溶液a80質量部と水溶液b20質量部を混合して、第一紡糸液を調製した。
また、第一紡糸液に対し濃度が1質量%となるように疎水化剤であるドデシルアミン塩酸塩を混合して、第二紡糸液を調製した。
・金属製ノズル(紡糸液吐出部分)における、紡糸液吐出部分の形状:内径0.44mmの円形状
・金属製ノズルの先端と、ドラム(繊維捕集体)との距離:8cm
・紡糸液へ印加した電圧:15~25kV
・金属製ノズルから吐出された紡糸液:1cc/時間
・静電紡糸環境の雰囲気:温度25℃、湿度50%RH
上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を形成した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ1μm、目付0.2g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は105°、繊維集合体の接触角は0°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が低いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが1μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μmであった。
親水性樹脂溶液として、プルラン(林原工業社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させてなる、プルラン濃度が20質量%のプルラン水溶液を用意した。
スリット塗工装置(クリアランス:60μm)を用いて、表面平滑なガラス板の一方の主面上に25℃に調整したプルラン水溶液を塗工した。そして、積層体における第二繊維層の露出している主面を、該プルラン水溶液と接触させることで、積層体における第二繊維層が露出している主面にプルラン水溶液を付与した。
ガラス板と積層体が積層した態様のまま、80℃雰囲気下に30分間静置することで、プルラン水溶液の溶媒である水を除去し、積層体における第二繊維層の構成繊維間に親水性樹脂としてプルランを存在させた。
次いで、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、積層体における第一繊維層が露出している主面にスリット塗工装置(クリアランス:30μm)を用いて、膜構成樹脂溶液として25℃に調整したスルホン化ポリエーテルスルホンのジメチルアセトアミド溶液(スルホン化ポリエーテルスルホン濃度:20質量%)を塗布することで付与した。
そして、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、膜構成樹脂溶液を塗布した積層体を120℃雰囲気下に30分間静置し、その後、140℃雰囲気下に30分間静置することで、膜構成樹脂溶液の溶媒であるジメチルアセトアミドを除去した。
最後に、上述のジメチルアセトアミドを除去した後の積層体をガラス板から剥離し、得られた積層体を60℃に調整した導電率が10μS/cm以下の水中へ浸漬させることで、第二繊維層の構成繊維間に存在するプルランを水中へ溶出させ除去した。
水中から積層体を取り出した後、80℃雰囲気下に30分間静置することで水を除去して、複合膜(厚さ:10μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
図1に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められなかった。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、実施例1に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有しているものであった。
なお、実施例1の複合膜における、膜構造部分の平均厚さは1.8μm(膜構造部分の最大厚さ:2.1μm、膜構造部分の最小厚さ:1.6μm)であった。
上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を形成した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ2μm、目付0.5g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は112°、繊維集合体の接触角は0°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が低いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが2μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μmであった。
このようにして調製した積層体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合膜(厚さ:10μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
図2に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められなかった。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、実施例2に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有しているものであった。
なお、実施例2の複合膜における、膜構造部分の平均厚さは3.2μm(膜構造部分の最大厚さ:3.6μm、膜構造部分の最小厚さ:2.7μm)であった。
上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を形成した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ4μm、目付1.1g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は118°、繊維集合体の接触角は0°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が低いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが4μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.2μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.2μmであった。
このようにして調製した積層体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複合膜(厚さ:12μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
図3に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められなかった。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、実施例3に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有しているものであった。
なお、実施例3の複合膜における、膜構造部分の平均厚さは4.8μm(膜構造部分の最大厚さ:5.2μm、膜構造部分の最小厚さ:4.2μm)であった。
上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.3g/m2の繊維集合体を調製した。なお、繊維集合体由来の繊維層を構成する繊維の平均繊維径は0.3μmであった。
親水性樹脂溶液として、プルラン(林原工業社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させてなる、プルラン濃度が20質量%のプルラン水溶液を用意した。
スリット塗工装置(クリアランス:60μm)を用いて、表面平滑なガラス板の一方の主面上に25℃に調整したプルラン水溶液を塗工した。そして、繊維集合体における一方の露出している主面を、該プルラン水溶液と接触させることで、繊維集合体における該一方の露出している主面にプルラン水溶液を付与した。
ガラス板と繊維集合体が積層した態様のまま、80℃雰囲気下に30分間静置することで、プルラン水溶液の溶媒である水を除去し、繊維集合体における該一方の露出している主面側の構成繊維間に親水性樹脂としてプルランを存在させた。
次いで、ガラス板と繊維集合体が積層した態様のまま、繊維集合体におけるもう一方の露出している主面にスリット塗工装置(クリアランス:30μm)を用いて、膜構成樹脂溶液として25℃に調整したスルホン化ポリエーテルスルホンのジメチルアセトアミド溶液(スルホン化ポリエーテルスルホン濃度:20質量%)を塗布することで付与した。
そして、ガラス板と繊維集合体が積層した態様のまま、膜構成樹脂溶液を塗布した繊維集合体を120℃雰囲気下に30分間静置し、その後、140℃雰囲気下に30分間静置することで、膜構成樹脂溶液の溶媒であるジメチルアセトアミドを除去した。
最後に、上述のジメチルアセトアミドを除去した後の繊維集合体をガラス板から剥離し、得られた繊維集合体を60℃に調整した導電率が10μS/cm以下の水中へ浸漬させることで、繊維集合体における該一方の露出している主面側の構成繊維間に存在するプルランを水中へ溶出させ除去した。
水中から積層体を取り出した後、80℃雰囲気下に30分間静置することで水を除去して、複合膜(厚さ:9μm、繊維集合体におけるもう一方の露出している主面側の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
図4に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められた。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、比較例1に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有していないものであった。
上述した静電紡糸条件のもと第二紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラムの主面上に捕集することで、ドラムの主面上に厚さ10μm、目付2.2g/m2の繊維集合体を調製した。
次いで、上述した静電紡糸条件のもと第一紡糸液を用いて静電紡糸を行い、紡糸された繊維をドラム上の繊維集合体における露出している主面上に捕集することで、繊維集合体の主面上に厚さ1μm、目付0.2g/m2の別の繊維集合体を形成した。
このようにして形成した繊維集合体と別の繊維集合体を備えた積層体をドラムから剥離し、上述した「親水性の判断方法」へ供した結果、液滴設置後15秒経過後における別の繊維集合体の接触角は0°、繊維集合体の接触角は105°であり、別の繊維集合体は繊維集合体よりも親水性が高いことが判明した。
なお、積層体の構成は、別の繊維集合体由来の第一繊維層の厚さが1μm、繊維集合体由来の第二繊維層の厚さが10μm、第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μm、第二繊維層を構成する繊維の平均繊維径が0.3μmであった。
親水性樹脂溶液として、プルラン(林原工業社製)を導電率が10μS/cm以下の水へ完全に溶解させてなる、プルラン濃度が20質量%のプルラン水溶液を用意した。
スリット塗工装置(クリアランス:60μm)を用いて、表面平滑なガラス板の一方の主面上に25℃に調整したプルラン水溶液を塗工した。そして、積層体における第二繊維層の露出している主面を、該プルラン水溶液と接触させることで、積層体における第二繊維層が露出している主面にプルラン水溶液を付与した。
ガラス板と積層体が積層した態様のまま、80℃雰囲気下に30分間静置することで、プルラン水溶液の溶媒である水を除去た。
次いで、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、積層体における第一繊維層が露出している主面にスリット塗工装置(クリアランス:30μm)を用いて、膜構成樹脂溶液として25℃に調整したスルホン化ポリエーテルスルホンのジメチルアセトアミド溶液(スルホン化ポリエーテルスルホン濃度:20質量%)を塗布することで付与した。
そして、ガラス板と積層体が積層した態様のまま、膜構成樹脂溶液を塗布した積層体を120℃雰囲気下に30分間静置し、その後、140℃雰囲気下に30分間静置することで、膜構成樹脂溶液の溶媒であるジメチルアセトアミドを除去した。
最後に、上述のジメチルアセトアミドを除去した後の積層体をガラス板から剥離し、得られた積層体を60℃に調整した導電率が10μS/cm以下の水中へ浸漬させることで、第二繊維層の構成繊維間に存在するプルランを水中へ溶出させ除去した。
水中から積層体を取り出した後、80℃雰囲気下に30分間静置することで水を除去して、複合膜(厚さ:9μm、別の繊維集合体由来の第一繊維層の構成繊維間にスルホン化ポリエーテルスルホンが存在している)を調製した。
図5に示した電子顕微鏡写真を確認したところ、複合膜における膜構成樹脂溶液を付与した側の主面には、繊維形状が存在している部分および意図せず開孔が存在している部分の存在が認められた。
調製した複合膜を、上述した「膜状の態様をなしているか否かの判断方法」へ供した結果、比較例2に係る複合膜は膜状の態様をなす膜構造部分を有していないものであった。
Claims (2)
- 第一繊維層と第二繊維層を備える積層体、および、膜構成樹脂を有しており、
前記第一繊維層の構成繊維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を有する、複合 膜であって、
複合膜における前記第一繊維層側の主面に前記膜構造部分が存在しており、
複合膜における前記第一繊維層側の主面を1000倍で撮影した電子顕微鏡写真に写る前記膜構造部分には、繊維形状が存在している部分および開孔が存在している部分は認められないものであって、
前記第一繊維層を構成する繊維の平均繊維径は3μm以下であり、
前記第一繊維層は前記 第二繊維層よりも親水性が低い、
複合膜。 - (1)繊維集合体を用意する工程、
(2)前記繊維集合体における一方の主面上に別の繊維集合体を形成することで、前記別 の繊維集合体由来の第一繊維層ならびに前記繊維集合体由来の第二繊維層を備える積層体 を調製する工程、
(3)前記積層体における前記第二繊維層が露出している主面に、親水性樹脂溶液を付与 する工程、
(4)前記付与した親水性樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第二繊維層の構成繊 維間に前記親水性樹脂を存在させる工程、
(5)前記積層体における前記第一繊維層が露出している主面に、膜構成樹脂溶液を付与 する工程、
(6)前記付与した膜構成樹脂溶液から溶媒を除去することで、前記第一繊維層の構成繊 維間に前記膜構成樹脂が存在してなる膜構造部分を形成する工程、
(7)前記親水性樹脂を溶解可能な溶媒を用いて、前記第二繊維層の構成繊維間に存在す る前記親水性樹脂を除去する工程、
を備える、請求項1に記載の複合膜の製造方法。
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