以下、種々の例示的実施形態について説明する。
一つの例示的実施形態において、基板処理方法が提供される。基板処理方法は、表面に段差を有する基板上における、炭素を主成分とし、光による架橋反応によって硬化される塗布膜の形成に係る基板処理方法であって、前記基板表面に塗布された前記塗布膜を硬化させる前に、前記基板表面の各部における露光量が前記塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量となるように前記基板表面を露光する露光工程と、前記露光工程後の前記基板表面に対して硬化前の前記塗布膜を溶解可能な第1の除去液を供給することで、前記塗布膜の一部を除去する除去工程と、を有する。
上記の基板処理方法では、光による架橋反応によって硬化される塗布膜を硬化させる前に、塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量で基板表面を露光した後、基板表面に対して第1の除去液を供給して塗布膜の一部を除去する。このような構成とすることで、露光量に応じた塗布膜の架橋反応の進行状態に応じて塗布膜が除去される。そのため、露光量を制御することで塗布膜の高さ位置を調整することが可能となるため、基板上に形成された炭素を主成分とする有機膜からなる塗布膜の表面形状を適切に加工することができる。
前記露光工程において、前記塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を減少させる態様としてもよい。
塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を減少させることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど塗布膜の架橋反応の進行を抑制することができる。架橋の進行が抑制されることによって、第1の除去液による塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記の構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。
別の例示的実施形態において、基板処理方法が提供される。基板処理方法は、表面に段差を有する基板上における、炭素を主成分とし、架橋反応によって硬化される塗布膜の形成に係る基板処理方法であって、前記基板表面に塗布された前記塗布膜を硬化させる前に、前記塗布膜上に光反応性を有する阻害膜を形成する阻害膜形成工程と、前記阻害膜を形成した前記基板表面の各部における露光量が前記塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量となるように前記基板表面を露光する露光工程と、前記露光工程後の前記基板表面に対して少なくとも硬化前の前記塗布膜を溶解可能な第1の除去液を供給することで、前記阻害膜と前記塗布膜の一部とを除去する除去工程と、を有する。
上記の基板処理方法では、架橋反応によって硬化される塗布膜を硬化させる前に、塗布膜上に光反応性を有する阻害膜を形成した後、塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量で基板表面を露光する。その後、基板表面に対して第1の除去液を供給して阻害膜と塗布膜の一部とを除去する。このような構成とすることで、露光量に応じた阻害膜の光に対する反応の進行状態に応じて阻害膜の特性が変化する。したがって、第1の除去液を基板表面に供給する際には阻害膜の特性の変化に応じて溶解状況が変化し、溶解量が変化する。したがって、露光量を制御することで塗布膜の高さ位置を調整することが可能となるため、基板上に形成された炭素を主成分とする有機膜からなる塗布膜の表面形状を適切に加工することができる。
前記阻害膜は、ネガ型フォトレジスト膜であって、前記露光工程において、前記塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を減少させる態様としてもよい。
阻害膜がネガ型フォトレジスト膜である場合、塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を減少させることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど阻害膜の溶解性を高くすることができる。阻害膜の溶解性が高い場所では阻害膜の溶解が促進されると共に、塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記の構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。
前記阻害膜は、SAM、または、ポジ型フォトレジスト膜であって、前記露光工程において、前記塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を増大させる態様としてもよい。
阻害膜がSAM、または、ポジ型フォトレジスト膜である場合、塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を増大させることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど阻害膜の溶解性を高くすることができる。阻害膜の溶解性が高い領域ほど阻害膜の溶解が促進されると共に、塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記の構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。
前記阻害膜が前記ポジ型フォトレジスト膜である場合に、前記除去工程の前に、前記露光工程後の前記塗布膜表面に対して前記阻害膜を溶解可能な第2の除去液を供給することで、前記阻害膜のうちの一部を除去する阻害膜除去工程をさらに有する態様としてもよい。
阻害膜がポジ型フォトレジストである場合には、第1の除去液とは異なる第2の除去液を用いて阻害膜の一部を除去する構成とすることで、ポジ型フォトレジストの除去をより短時間で行うことができる。したがって、塗布膜の表面形状の加工に係る処理をより短時間で行うことができる。
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。基板処理装置は、表面に段差を有する基板上における、炭素を主成分とし、光による架橋反応によって硬化される塗布膜の形成に係る基板処理装置であって、前記基板表面に塗布された前記塗布膜を硬化させる前に、前記基板表面の各部における露光量が前記塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量となるように前記基板表面を露光する露光処理部と、前記露光処理部による露光後の前記基板表面に対して硬化前の前記塗布膜を溶解可能な第1の除去液を供給することで、前記塗布膜の一部を除去する除去処理部と、を有する。
上記の基板処理装置では、光による架橋反応によって硬化される塗布膜を硬化させる前に、塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量で基板表面を露光した後、基板表面に対して第1の除去液を供給して塗布膜の一部を除去する。このような構成とすることで、露光量に応じた塗布膜の架橋反応の進行状態に応じて塗布膜が除去される。そのため、露光量を制御することで塗布膜の高さ位置を調整することが可能となるため、基板上に形成された炭素を主成分とする有機膜からなる塗布膜の表面形状を適切に加工することができる。
別の例示的実施形態において、基板処理装置が提供される。基板処理装置は、表面に段差を有する基板上における、炭素を主成分とし、架橋反応によって硬化される塗布膜の形成に係る基板処理装置であって、前記基板表面に塗布された前記塗布膜を硬化させる前に、前記塗布膜上に光反応性を有する阻害膜を形成する阻害膜形成部と、前記阻害膜を形成した前記基板表面の各部における露光量が前記塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量となるように前記基板表面を露光する露光処理部と、前記露光処理部による露光後の前記基板表面に対して少なくとも硬化前の前記塗布膜を溶解可能な第1の除去液を供給することで、前記阻害膜と前記塗布膜の一部とを除去する除去処理部と、を有する。
上記の基板処理装置では、架橋反応によって硬化される塗布膜を硬化させる前に、塗布膜上に光反応性を有する阻害膜を形成した後、塗布膜表面の高さ位置に対応させた露光量で基板表面を露光する。その後、基板表面に対して第1の除去液を供給して阻害膜と塗布膜の一部とを除去する。このような構成とすることで、露光量に応じた阻害膜の光に対する反応の進行状態に応じて阻害膜の特性が変化する。したがって、第1の除去液を基板表面に供給する際には阻害膜の特性の変化に応じて溶解状況が変化し、溶解量が変化する。したがって、露光量を制御することで塗布膜の高さ位置を調整することが可能となるため、基板上に形成された炭素を主成分とする有機膜からなる塗布膜の表面形状を適切に加工することができる。
一つの例示的実施形態において、記憶媒体が提供される。記憶媒体は、上記の基板処理方法を装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
以下、種々の例示的実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
まず、図1~図8を参照して第1実施形態に係る基板処理システムを説明する。
[基板処理システム]
まず、図1及び図2を参照して基板処理システム1(基板処理装置)の概略構成を説明する。基板処理システム1は、基板の表面にSOC(Spin on Carbon)膜を形成するシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウエハWである。ウエハWの表面に形成されるSOC膜とは、炭素を主成分とした薄膜である。より具体的には、SOC膜は、例えば、炭素の含有割合が80~90%である有機膜である。このSOC膜は、塗布膜の前駆体を含む薬液をウエハWの表面にスピンコーティング等で塗布した後、架橋反応により硬化させることにより得ることができる。すなわち、SOC膜は、光または熱等によって生じる架橋反応によって膜が硬化する性質を有する。上記のSOC膜は、ウエハWの表面に形成されたパターンの所定の部位をエッチングするエッチングマスクとして用いられ得る。第1実施形態では、SOC膜が光によって架橋することで硬化する光架橋型のSOC膜に対する適用を想定している。なお、この光架橋型SOC膜には、光及び熱によって架橋が進行するSOC膜も含まれる。
基板処理システム1は、塗布・現像装置2と、露光装置3と、制御装置100とを備える。露光装置3は、ウエハW(基板)上に形成されたSOC膜を露光する装置である。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりSOC膜に対して露光用のエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウエハW(基板)の表面にSOC膜を形成するための薬液を塗布してSOC膜を形成する処理を行う。また、塗布・現像装置2は、露光処理後にSOC膜の除去処理及び架橋処理を行う。
(塗布・現像装置)
図1及び図2に示されるように、塗布・現像装置2(基板処理装置)は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6とを備える。
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウエハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウエハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウエハW用の複数のキャリアYを支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアYは、例えば円形の複数枚のウエハWを収容する。搬送装置A1は、キャリアYからウエハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウエハWを受け取ってキャリアY内に戻す。処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。
処理モジュール11は、塗布ユニットU1(膜形成部)と、熱処理ユニットU2と、現像ユニットU3(除去処理部)と、照射ユニットU5(露光処理部)と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウエハWの表面上に下層膜を形成する。塗布ユニットU1は、下層膜形成用の処理液をウエハW上に塗布する。熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。現像ユニットU3は、露光後のウエハWの表面上に除去液(第1の除去液)を塗布する(供給する)ことによって、SOC膜を部分的に除去する。現像ユニットU3は、除去液を洗い流すためにウエハWの表面にリンス液を供給する。なお、本実施形態で説明するSOC膜は、この下層膜に相当する。したがって、SOC膜の形成に係る処理が処理モジュール11で行われる。
処理モジュール12は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール12は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。塗布ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液として、レジストを下層膜の上に塗布する。熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。これにより、ウエハWの表面にレジスト膜が形成される。
処理モジュール13は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール13は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。塗布ユニットU1は、上層膜形成用の処理液をレジスト膜の上に塗布する。熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
処理モジュール14は、現像ユニットU3と、熱処理ユニットU4と、照射ユニットU5と、これらのユニットにウエハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU3、熱処理ユニットU4、及び照射ユニットU5により、露光後のレジスト膜の現像処理を行う。現像ユニットU3は、露光済みのウエハWの表面上に現像液を塗布する(供給する)ことによって、レジスト膜を部分的に除去する。現像ユニットU3は、現像液を洗い流すためにウエハWの表面にリンス液を供給する。熱処理ユニットU4は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。現像処理に伴う熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウエハWを昇降させる。
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウエハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたウエハWを露光装置3に渡す。搬送装置A8は、露光装置3からウエハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
(塗布ユニット及び現像ユニット)
続いて、図3を参照して、処理モジュール11における複数の塗布ユニットU1のそれぞれの構成の一例を説明する。図3に示される塗布ユニットU1は、処理液をウエハWの表面Waに塗布するように構成されている。この塗布ユニットU1は、回転保持部20と、液供給部30と、を備える。
回転保持部20は、回転駆動部21と、シャフト22と、保持部23とを有する。回転駆動部21は、制御装置100からの動作信号に基づいて動作し、シャフト22を回転させる。回転駆動部21は、例えば電動モータ等を動力源として内蔵している。保持部23は、シャフト22の先端部に設けられている。保持部23上にはウエハWが配置される。保持部23は、例えば吸着等によりウエハWを略水平に保持する。すなわち、回転保持部20は、ウエハWの姿勢が略水平の状態で、ウエハWの表面Waに対して垂直な中心軸(回転軸)周りでウエハWを回転させる。図3の例では、回転保持部20は、上方から見て反時計回りにウエハWを所定の回転数で回転させる。
液供給部30は、ウエハWの表面Waに処理液L1を供給する。処理液L1は、ウエハWの表面WaにSOC膜を形成するための薬液である。
SOC膜を形成するための薬液とは、例えば、SOC膜の前駆物質となる有機材料を溶剤に溶解した液である。有機材料としては、炭素化合物を含む有機膜原料、例えば、ポリエチレン構造((-CH2-)n)の骨格を持つポリマー原料を溶解させた液体が用いられる。また、有機材料には、例えば光を照射することによって架橋が進行しSOC膜の硬度が高められる架橋剤が含まれている。このように光架橋型の架橋剤を添加することで、SOC膜が光架橋型となる。なお、架橋剤として、例えば300℃に加熱することにより架橋が進行する架橋剤を添加してもよい。
液供給部30は、液源31と、バルブ33と、ノズル34と、配管35と備える。液供給部30の液源31は、バルブ33及び配管35を介してノズル34に薬液をそれぞれ供給する。ノズル34は、吐出口がウエハWの表面Waに向かうようにウエハWの上方に配置されている。ノズル34は、ウエハWの表面Waに向けて液源31から供給される薬液を吐出する。配管35は、液源31とノズル34との間を接続している。バルブ33は、配管35内の流路を開状態と閉状態とに切り替える。なお、塗布ユニットU1は、ノズル34を水平方向に往復移動させる駆動機構(不図示)を備えていてもよい。
なお、処理モジュール11における現像ユニットU3は、塗布ユニットU1と略同一の構造を有している。すなわち、現像ユニットU3においては、ウエハWの表面Waに対して、表面のSOC膜を除去するための除去液と、除去液を洗い流すためのリンス液と、が供給される。除去液としては、例えば、SOC膜を形成するための薬液に使用される溶剤(有機溶剤)を用いることができる。このような処理液としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられる。ただし、SOC膜を形成するための薬液に応じて、当該SOC膜を溶解可能な処理液を選択することができる。
現像ユニットU3では、ウエハWに供給する液体の数に応じて、液供給部30の数を変更してもよい。すなわち、ウエハWに供給する液の種類毎に液供給部30を設ける構成としてもよい。ウエハWに供給する液の種類毎に液供給部30を設ける構成としてもよい点は、塗布ユニットU1でも同様である。
(照射ユニット)
続いて、図4を参照して、照射ユニットU5の一例について説明する。図4に示されるように、照射ユニットU5は照射部42を備える。
照射部42は、ウエハWの表面Waに光を照射し、ウエハWを露光させる。ウエハWに対して照射する光としては、例えば、波長が100nm~400nmである紫外線が挙げられる。照射する光の波長は、170nm~180nmであってもよい。なお、照射する光の波長は上記の値に限定されるものではなく、例えばSOC膜に含まれる成分等に応じて使用する光の波長が選択されてもよい。すなわち、SOC膜の光による架橋反応の進行を制御可能となるように照射部42において用いる光の波長が選択される。
照射ユニットU5は、水平に支持したウエハWに対して、照射部42により上方から紫外線を出射する。例えば、照射部42は、紫外線を出射する光源を有している。光源の具体例としては、波長172nmの紫外線を出射するエキシマランプが挙げられる。また、波長193nmの紫外線を出射するフッ化アルゴンエキシマレーザー、及び波長248nmの紫外線を出射するフッ化クリプトンエキシマレーザー等が用いられてもよい。ただし、光源は紫外線を出射可能であればよく、その種類は特に限定されない。照射部42は、光源から出射されたエネルギー線をウエハWに向けて下方に出射するように構成されている。
なお、照射ユニットU5において、薬液塗布後のウエハWに対して紫外線を照射する際には、照射部42とウエハWの表面Waとの間にマスクMが配置される。これは、ウエハWの表面Waが受ける光の量を場所に応じて変化させるためのものである。この点については後述する。
(制御装置)
続いて、制御装置100の具体的な構成を例示する。制御装置100は、基板処理システム1を部分的又は全体的に制御する。制御装置100は、表面Waに凹凸パターンが形成されているウエハWに対して、SOC膜を形成するための各処理を実行する。すなわち、薬液を塗布することと、薬液を塗布した後のウエハWに対して露光処理を行うことと、露光処理後のウエハWに対してSOC膜を一部除去するための処理液を供給することと、SOC膜の架橋反応をさらに進めることと、を実行する。
図5に示されるように、制御装置100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、膜形成制御部101と、露光制御部102と、現像制御部103と、硬化制御部104と、を備える。膜形成制御部101は、塗布ユニットU1の液供給部30のバルブ33及び回転駆動部21を制御する。また、熱処理ユニットU2を制御し得る。露光制御部102は、照射ユニットU5内の照射部42を制御する。現像制御部103は、現像ユニットU3内の液供給部30のバルブ33及び回転駆動部21を制御する。硬化制御部104は、照射ユニットU5内の照射部42及び熱処理ユニットU2を制御する。各部の処理内容の詳細については後述する。
制御装置100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、図6に示される回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124とを有する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板処理手順を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート124は、プロセッサ121からの指令に従って、制御対象の部材との間で電気信号の入出力を行う。
制御装置100が複数の制御用コンピュータで構成される場合、膜形成制御部101、露光制御部102、現像制御部103、及び、硬化制御部104がそれぞれ個別の制御用コンピュータによって実現されていてもよい。あるいは、これらの各機能モジュールがそれぞれ、2つ以上の制御用コンピュータの組み合わせによって実現されていてもよい。これらの場合、複数の制御用コンピュータは、互いに通信可能に接続された状態で、後述する基板処理手順を連携して実行してもよい。なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
[基板処理手順]
続いて、基板処理方法の一例として、基板処理システム1において実行される基板処理手順を説明する。制御装置100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を含む基板処理を実行するように基板処理システム1を制御する。まず制御装置100は、キャリアY内のウエハWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このウエハWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウエハWを処理モジュール11内の塗布ユニットU1、熱処理ユニットU2、現像ユニットU3、及び、照射ユニットU5に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウエハWの表面Wa上に下層膜としてのSOC膜を形成するように上記の各ユニットを制御する。SOC膜の形成に係る処理の手順について詳細は後述する。その後制御装置100は、下層膜が形成されたウエハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウエハWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウエハWを処理モジュール12内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウエハWの下層膜上にレジスト膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウエハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウエハWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウエハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウエハWのレジスト膜上に上層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウエハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU11に収容されたウエハWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。そして、露光装置3において、ウエハWに形成されたレジスト膜に露光処理が施される。その後制御装置100は、露光処理が施されたウエハWを露光装置3から受け入れて、当該ウエハWを棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウエハWを処理モジュール14の熱処理ユニットU4に搬送するように搬送装置A3を制御する。そして、制御装置100は、現像処理に伴う熱処理、及び現像処理を含む処理手順を実行するように制御を行う。これにより、ウエハWの表面Waにレジストパターンが形成される。その後、制御装置100は、レジストパターンをマスクとしてウエハWに対してプラズマを用いたエッチング処理を施すようにプラズマ処理装置(図示せず)を制御する。以上で塗布・現像処理を含む基板処理が完了する。
(SOC膜形成手順)
続いて、図7~図10を参照して、SOC膜の形成手順の一例について説明する。図7は、SOC膜の形成に係る手順の一例を示すフローチャートである。まず、制御装置100は、ウエハWを塗布ユニットU1に搬送するように搬送装置A3を制御した後、ステップS01(SOC膜の形成:膜形成工程)を実行する。ステップS01では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、SOC膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。また、必要に応じて、薬液の塗布によって形成された塗布膜中の溶剤を揮発させるための加熱処理を行ってもよい。この場合、膜形成制御部101は、ウエハWを熱処理ユニットU2へ搬送し、塗布膜において架橋反応が進行しない状態での加熱処理(例えば、100℃程度)を行う。これにより、ウエハW上に硬化前のSOC膜である塗布膜が形成される。
SOC膜を形成する前のウエハWには、図8(a)に示すように、例えば、SiO2膜からなるパターン91が形成される。ウエハWの表面Waにおいて、パターン91は疎密に形成されている。例えば、図8(a)に示す例では、パターン91のみにより形成される第1領域Aと、パターン91とパターン91が形成されていない窪み部92とが交互に形成された第2領域B(B1,B2)と、窪み部92のみにより構成される第3領域Cと、が示されている。第2領域Bについては、パターン91の疎密状態が互いに異なる2つの領域B1,B2が示されている。このようにパターン91による凹凸が形成されたウエハWの表面に、SOC膜を形成するための薬液を供給すると、図8(a)の塗布膜95として示すように、ウエハWの表面の凹凸に応じて薬液の表面Wbの高さ位置が互いに異なるようになる。なお、塗布膜95は加熱による溶剤揮発後の状態を示している。SOC膜を形成するための薬液は一般的に粘度が低く、ウエハWの面内に均一に供給された場合、ウエハW表面の凹凸が反映される。したがって、例えば、第1領域Aでは、パターン91上に塗布膜95が形成されるため、その表面Wbの高さ位置が高くなる。一方、例えば、第3領域Cでは、パターン91が形成されていないため、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が低くなる。また、第2領域Bでは、塗布膜95の表面Wbの高さ位置は塗布直後には高いが、塗布膜中の溶剤が揮発するとともに、パターン91の疎密に応じて第1領域Aにおける高さ位置と第3領域Cにおける高さ位置との間で変化する。具体的には、パターン91が占める割合が低い(パターン91が疎である)領域B2よりもパターン91が占める割合が高い(パターン91が密である)領域B1における高さ位置が高い状態となる。
このように、塗布ユニットU1において、SOC膜を形成する薬液をウエハWに塗布した状態では、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が異なる。このまま、この薬液について架橋反応を進行させてSOC膜を硬化させた場合、SOC膜の表面がパターン91の影響を受けた凹凸を有する状態となる。
次に、制御装置100は、ウエハWを照射ユニットU5へ搬送した後に、次にステップS02(露光処理:露光工程)を実行する。ステップS02では、露光制御部102が、ウエハWの表面(塗布膜95の表面Wb)に対して光を照射するように、照射ユニットU5を制御する。
ステップS02では、ウエハWに形成されたパターン91の疎密に由来する塗布膜95の表面Wbの高さ位置に対応させて、ウエハW表面の各位置における露光量を変化させる。具体的には、概略パターン91が密である領域に対しては光の照射量を少なくし、パターン91が疎である領域に対しては光の照射量を多くする。図8(b)は、図8(a)に示したウエハWにおける各位置での露光量(光の照射量)の一例を示したものである。図8(b)に示す例では、第1領域Aに対しては光の照射量を0としている一方で、パターン91が徐々に疎になる第2領域B1,B2及び第3領域Cについては、この順で露光量が増えるように光の照射量を調整している。このように、各領域において露光量を変化させることで、各領域に塗布された薬液の架橋反応の進行状態を互いに異ならせている。すなわち、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が高い領域では架橋反応が進行しないように露光量を少なくする一方、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が低い領域では架橋反応が進行するように露光量を多くしている。この結果、図8(c)の例においてグレースケールで示すように、第1領域Aでは塗布膜95の架橋反応が進行していないのに対して、第3領域Cでは塗布膜95の架橋反応が進行した状態とすることができる。また、第2領域B1,B2では、パターン91が疎な領域B2のほうが領域B1と比較して架橋反応が進行した状態となっている。このように、ステップS02では、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じて塗布膜95における架橋反応の進行状態を変化させる。
なお、図8(b)に示す光の照射量の制御例では、例えば、第3領域Cにおいては、中央付近の露光量が最大となり、第1領域Aまたは第2領域B1へ向かって露光量が減少するような制御をしている。これは、第1領域Aと第3領域Cとの境界部分、及び、第3領域Cと第2領域B1との境界部分では、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が徐々に変化していることに由来する。このように、本実施形態に示す光の照射量の制御例は、図8(a)に示すように、塗布膜95の表面Wbの傾斜を反映して露光量を徐々に変化させたものとすることができる。ただし、光の照射量の制御は塗布膜95の表面Wbの高さ位置を完全に反映させたものがよいが、次の工程で許容し得る範囲で表面Wbの凹凸を平坦にする程度となるように、光の照射量の詳細な制御を減らすことで、露光処理を簡便にすることができる。つまり、塗布膜95の表面Wbの高さ位置を数グループに区分けし、それに応じて架橋反応の進行状態を変化可能となるように各グループの光の照射量を個別に設定する構成としてもよい。
ウエハW表面の位置に応じて(塗布膜95の凹凸を考慮して)露光量を変更させる方法としては、例えば、図4に示したように照射ユニットU5においてマスクMを利用する方法が挙げられる。ウエハWに形成されるパターン91の形状及び場所は事前に把握することができるので、ウエハW上のパターン91に基づいて予めウエハWに対応するマスクMを作成することができる。このようにして作成されたマスクMをウエハW上に配置した状態で光の照射を行うことで、ウエハW表面の位置に応じて露光量を変更することができる。また、上記のマスクMを用いない方法として、補助露光装置を用いる方法が挙げられる。補助露光装置とは、レーザ光源、レーザ光源からの光をウエハWに向けて照射する反射部材、ウエハWを移動させる移動機構等を組み合わせることで、ウエハWの位置に応じて光の照射量を変更することが可能な装置である。このような装置を用いることで、ウエハW表面の位置に応じて露光量を変化させる構成としてもよい。このように、ウエハW表面の位置に応じて露光量を変更させる方法は特に限定されない。
次に、制御装置100は、現像ユニットU3へウエハWを搬送した後、ステップS03(除去処理:除去工程)を実行する。ステップS03では、現像制御部103が、露光処理を行った後のウエハWの表面Wa(塗布膜95の表面Wb)に対して処理液を供給するように、現像ユニットU3を制御する。さらに、ステップS03では、現像制御部103が、ウエハWの表面Waに対してリンス液を供給することで処理液を洗い流すように、現像ユニットU3を制御する。上記の処理により、ウエハWにおいてSOC膜となる塗布膜95の一部を除去することができる。
露光処理(ステップS02)を行った結果、ウエハWの塗布膜95では、その表面Wbの高さ位置に応じて塗布膜95における架橋反応の進行状態が異なっている。そこで、ステップS03では、架橋反応が一部進行した塗布膜95を溶解可能な処理液をウエハWの表面Waに供給することで、塗布膜95の一部を除去する処理を行う。
除去処理で用いられる処理液とは、上述のように架橋反応が一部進行している塗布膜95(SOC膜)を溶解可能な処理液である。例えば、SOC膜用薬液の溶剤としてPGMEAが用いられている場合、除去処理で用いられる処理液としてもPGMEAを用いることができる。ただし、塗布膜95を溶解可能な処理液であれば、幅広く有機溶剤の中から選べ、特に複数の溶剤を混合し、その比率を調整することにより任意の溶解性を持たせることで処理のマージンを広くすることができる。
ウエハWの表面Waに処理液を供給した後、所定時間溶解処理することでウエハWの表面Waでは処理液による塗布膜95の一部溶解が進行する。このとき、ステップS02(露光処理)による架橋反応の進行状況に応じて、塗布膜95の溶解量が変化する。具体的には、図8(d)に示すように、架橋反応が進行していない第1領域Aでは塗布膜95の溶解量が多くなり、架橋反応が進行している第3領域Cでは塗布膜95の溶解量が少なくなる。また、第2領域B1,B2においても、架橋反応の進行度に応じて塗布膜95の溶解量が変化する。その結果、図8(e)に示すように、パターン91の形状によらず、処理液による溶解後の塗布膜95の表面Wbの高さ位置の差を小さくすることができる。第1領域Aのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを小さくし、第3領域Cのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを大きくすることができる。そのため、ウエハW全体で見ると、パターン91に由来して設けられていた塗布膜95の凹凸を小さくすることができる。
なお、塗布膜95の表面Wbをより平坦にする(表面Wbの高さを一定とする)ための各処理を実施するための条件は、予備試験等によって予め定めておくことで把握することができる。具体的な条件としては、露光処理(ステップS02)での各位置の露光量(光の照射量)、除去処理(ステップS03)において所定量の塗布膜95を除去するために適切な溶解処理時間、等が挙げられる。予備試験等を通じて適切な条件を特定しておき、ウエハWに対して上記の処理を行う場合には、特定された条件に基づいて各工程での各種パラメータを設定することができる。
その後、制御装置100は、ステップS04(硬化処理)を実行する。ステップS04では、硬化制御部104が、除去処理を行った後のウエハWの表面の塗布膜95を硬化させるように、照射ユニットU5及び/または熱処理ユニットU2を制御する。ステップS02においても塗布膜95に対して光を照射することによって塗布膜95の一部が架橋反応によって硬化するが、ステップS04では、塗布膜95が硬化してSOC膜となるまで、十分に硬化に係る処理を行う。なお、硬化処理を行うユニットは、SOC膜の架橋特性に応じて選択される。以上の処理によってウエハWのパターン91上にSOC膜が形成される。
上記実施形態で説明した基板処理装置及び基板処理方法では、光による架橋反応によって硬化される塗布膜を硬化させる前に、硬化前の塗布膜に対応する塗布膜95の表面の高さ位置に対応させた露光量で基板表面を露光する。その後に、基板表面に対して除去液(第1の除去液)としての処理液を供給して塗布膜95の一部を除去する。このような構成とすることで、露光量に応じた塗布膜の架橋反応の進行状態に応じて塗布膜が除去される。そのため、露光量を制御することで塗布膜の高さ位置を調整することが可能となるため、基板上に形成された炭素を主成分とする有機膜からなる塗布膜の表面形状を適切に加工することができる。
また、上記のように塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を減少させる構成とすることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど塗布膜の架橋反応の進行を抑制することができる。架橋の進行が抑制されることによって、除去液を用いた塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記の構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。すなわち、上記の構成とすることで、基板表面の塗布膜(SOC膜)の表面の凹凸を小さくし、平坦化を促進することができる。
従来から、半導体等におけるパターンの微細化やデバイスの積層化に伴って、基板表面に形成される下地膜の平坦化に対する要求が高まっている。下地膜が炭素を主成分とする有機膜(SOC膜)である場合、研磨装置等を用いて表面を研磨することによって下地膜の平坦化を実現する検討が進められている。しかしながら、基板の表面を研磨する際には基板に対して物理的な力を与えることになるため、基板が受ける力が下地膜またはその下方に形成されたパターン等に影響を与える場合がある。
これに対して、上記の基板処理装置及び基板処理方法によれば、基板表面に対する露光及び除去液(第1の除去液)を用いた化学反応(溶解)を利用して、基板表面の平坦化が行われる。そのため、基板表面を平坦化する際に例えば下部のパターンが変形する等のリスクを低減することも可能となる。また、研磨装置による基板表面の平坦化と比較して、1枚の基板に対する処理時間を短くすることも可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るSOC膜の形成手順について、図9及び図10を参照しながら説明する。図9は、SOC膜の形成に係る手順の一例を示すフローチャートである。第2実施形態で説明するSOC膜の形成手順は、第1実施形態で説明した手順と比較して、以下の点が相違する。すなわち、SOC膜となる塗布膜の上に光の照射によるSOC膜の架橋反応を阻害する光反応性の阻害膜を形成した後に、露光工程を行う。すなわち、SOC膜となる塗布膜の上に阻害膜を形成した上で、阻害膜が光を受けることによる特性の変化を利用してSOC膜の厚さを調整する処理を行う点が第1実施形態とは異なる。第2実施形態では、除去液によるSOC膜の溶解を阻害する阻害膜として、光反応性を有するSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)を用いる場合について説明する。光反応性を有するとは、光によって特性が変化することを指し、特に、分解性または(特定の溶剤に対する)溶解性が変化することを指す。なお、図9に示すフローチャートは、以降の第3及び第4実施形態に係るSOC膜の形成手順を説明する際にも利用する。第2実施形態では、SOC膜は架橋によって硬化する膜であるが、光によって架橋する光架橋型と、熱によって架橋することで硬化する熱架橋型とのSOC膜を用いることができる。しかしながら、阻害膜の光反応性を発揮する露光波長と、光架橋型SOC膜の光反応性を発揮する波長が同一となった場合、二つの効果が相殺される場合があり、所望の溶解特性が得られにくい条件があり得る。そのため、光架橋型のSOCを第2、第3および第4実施形態で用いる場合は、阻害膜の光反応とSOCの光架橋する露光波長が異なる条件であることが望ましい。なお、熱架橋型のSOC膜とは、光によっては架橋が進行しないSOC膜を指す。
まず、制御装置100は、ステップS11(SOC膜の形成:膜形成工程)を実行する。ステップS11では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、SOC膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。なお、制御装置100は、溶剤を揮発させるため等の熱処理ユニットU2における加熱処理に係る制御も併せて行うことができる。
SOC膜を形成する前のウエハWの表面は第1実施形態で説明した状態と同様にパターン91が形成されている。したがって、SOC膜用の薬液を供給した後の状態も図10(a)に示すように、第1実施形態で示した状態(図7(a)参照)と同様になる。すなわち、パターン91による凹凸が形成されたウエハWの表面に、SOC膜を形成するための薬液を供給することによって、ウエハWの表面の凹凸に応じて塗布膜95の表面Wbの高さ位置が互いに異なるようになる。
次に、制御装置100は、ステップS12(阻害膜の形成:阻害膜形成工程)を実行する。ステップS12では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、阻害膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。この結果、図10(a)に示すように、塗布膜95の上にSAM97が形成される。塗布ユニットU1は、阻害膜を形成する阻害膜形成部としても機能する。
SAM97を形成するための薬液としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。なお、SAM97としては、少なくとも後段のSOC膜に係る薬液層の一部除去に用いられる除去液に対してある程度耐性を有し、且つ、光分解性を有する材料が用いられる。「除去液に対してある程度耐性を有する」とは、SOC膜(塗布膜95)よりは除去液に対する耐性を有するものである。ただし、耐性が高すぎる材料(除去液に対して全く反応しない材料等)は阻害膜としては用いることが難しい。なお、塗布ユニットU1における薬液の塗布に代えて、例えば、ガス状の薬液をウエハWに対して噴霧することでSAM97を形成することとしてもよい。このように、SAM97の形成方法は特に限定されない。SAM97は、塗布膜95上に略同一の厚さで形成されることになるので、塗布膜95と同様に表面の凹凸が形成された状態となる。
次に、制御装置100は、次にステップS13(露光処理:露光工程)を実行する。ステップS13では、照射ユニットU5にウエハWを搬送した後に、露光制御部102が、ウエハWの表面(SAM97の表面)に対して光を照射するように、照射ユニットU5を制御する。そして、制御装置100は、照射処理後のウエハWを現像ユニットU3に搬送するように搬送装置A3を制御する。
ステップS13では、ウエハWに形成されたパターン91の疎密に由来する塗布膜95の表面Wbの高さ位置に対応させて、ウエハW表面の各位置における露光量を変化させる。この点は、第1実施形態と同様である。ただし、第1実施形態と比べると、パターン91の疎密(塗布膜95の表面Wbの高さ位置)と露光量との関係を逆転して照射する。具体的には、パターン91が密であって塗布膜95の表面Wbが高くなっている領域に対しては光の照射量を多くし、パターン91が疎であって塗布膜95の表面Wbが低くなっている領域に対しては光の照射量を少なくする。図10(b)は、図10(a)に示したウエハWにおける各位置での露光量(光の照射量)の一例を示したものである。図10(b)に示す例では、第1領域Aに対しては光の照射量を最大としている。一方で、図10(b)に示す例では、パターン91が徐々に疎になって塗布膜95の表面Wbの高さ位置も低くなる第2領域B1,B2及び第3領域Cについては、この順で露光量が少なくなるように光の照射量を調整している。このように、各領域において露光量を変化させることで、各領域に形成されたSAM97における光の照射による光分解の進行状態を互いに異ならせている。すなわち、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が高い領域ではその上のSAM97の光分解が進行するように露光量を増やしている。一方、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が低い領域ではSAM97の光分解の進行が抑制されるように露光量が少なくされている。
この結果、図10(c)に示すように、各領域におけるSAM97の分解量はウエハWに対する露光量に対応した状態となる。また、露光処理を行った後のウエハWは、図10(d)に示す状態となる。すなわち、第1領域A等ではSAM97の分解が促進されるため、残存するSAM97がほぼゼロとなるのに対して、第3領域C等ではSAM97の分解が抑制されるため、露光前とほぼ変わらない状態となる。また、第2領域B1,B2では、パターン91が疎な領域B2のほうが領域B1と比較してSAM97の光分解が抑制された状態となっている。このように、ステップS13では、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じてSAM97の光分解の進行状態を変化させる。なお、ウエハW表面の位置に応じて露光量を変更させる方法は、第1実施形態と同様に特に限定されない。
次に、制御装置100は、ステップS14(除去処理:除去工程)を実行する。ステップS14では、ウエハWを現像ユニットU3に搬送した後に、現像制御部103が、露光処理を行った後のウエハWの表面に対して処理液(除去液)を供給するように、現像ユニットU3を制御する。さらに、ステップS14では、現像制御部103が、ウエハWの表面に対してリンス液を供給することで処理液を洗い流すように、現像ユニットU3を制御する。上記の処理により、ウエハWにおいてウエハW表面に残存するSAM97と、SOC膜となる塗布膜95の一部とを除去することができる。
露光処理(ステップS13)を行った結果、ウエハWでは、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じてSAM97の光分解の進行度が異なり、その結果、SAM97の残存量が異なっている。そこで、ステップS14では、SAM97及び塗布膜95を溶解可能な処理液をウエハWの表面Waに供給することで、残存するSAM97と、塗布膜95の一部と、を除去する処理を行う。
除去処理で用いられる除去液(第1の除去液)とは、SAM97を溶解可能であると共に架橋反応が一部進行している塗布膜95(SOC膜)を溶解可能である処理液である。このような処理液としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられる。ただし、SAM97の材料及びSOC膜の種類によっては、処理液として、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤からを選択することもできる。また、溶解性の調整のために複数の薬液を混合したものを使うことで処理のマージンを大きくすることができる。
ウエハWの表面Waに処理液を供給した後、所定時間溶解処理することでウエハWの表面Waでは処理液によるSAM97の溶解及び塗布膜95の一部溶解が進行する。このとき、図10(e)に示すように、SAM97の残存量に応じてSOC膜となる塗布膜95の溶解量が変わることになる。具体的には、第3領域CのようにSAM97が残存する領域(図10(c)参照)では、より上層に設けられたSAM97が処理液によって溶解した後に塗布膜95の溶解が進行することになるため、塗布膜95の溶解の進行が抑制される。一方、第1領域Aのように前段の処理でSAM97が概ね除去されている領域(図10(c)参照)では、処理液による塗布膜95の溶解が早くから始まるため、塗布膜95の溶解の進行が抑制される。その結果、図10(f)に示すように、パターン91の形状によらず、処理液による溶解後の塗布膜95の表面Wbの高さ位置の差を小さくすることができる。第1領域Aのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを小さくし、第3領域Cのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを小さくしない(除去処理よりも前から変化しない)ように制御することができる。そのため、ウエハW全体で見ると、パターン91に由来して形成されていた塗布膜95の凹凸を小さくすることができる。
なお、塗布膜95の表面Wbをより平坦にする(表面Wbの高さを一定とする)ための各処理を実施するための条件は、予備試験等によって予め定めておくことで把握することができる。この点は第1実施形態と同様である。
その後、制御装置100は、ウエハWを熱処理ユニットU2へ搬送し、ステップS15(硬化処理)を実行する。ステップS15では、硬化制御部104が、除去処理を行った後のウエハWの表面の塗布膜95を硬化させるように、熱処理ユニットU2を制御する。以上の処理によってウエハWのパターン91上にSOC膜が形成される。
このように、第2実施形態で説明した方法においても、一連の処理を行った後のSOC膜の凹凸を小さくすることができる。また、第2実施形態で説明した方法の場合、SAM97の光分解の進行を露光工程(S13)において制御することで、除去工程(ステップS14)におけるSAM97の下部に形成されるSOC膜(塗布膜95)の除去量を制御することができる。また、第2実施形態で説明したように阻害膜を用いる構成とした場合、SOC膜(塗布膜95)が光架橋型ではない場合でも表面の凹凸を少なくし平坦化することができる。
また、阻害膜がSAMである場合、塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を増大させることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど阻害膜の溶解性を高くすることができる。すなわち、阻害膜の溶解性が高い領域ほど阻害膜の溶解が促進されると共に、塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記実施形態で説明した構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るSOC膜の形成手順について、図9、図11、及び図12を参照しながら説明する。第3実施形態で説明するSOC膜の形成手順は、第2実施形態で説明した手順と同様に阻害膜を使用する。ただし、阻害膜としてネガ型のフォトレジストを使用する点が第2実施形態と相違する。なお、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、SOC膜は架橋によって硬化する膜であるが、光によって架橋する光架橋型に限定されず、熱によって架橋することで硬化する熱架橋型のSOC膜であってもよい。
まず、制御装置100は、ステップS11(SOC膜の形成)を実行する。ステップS11では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、SOC膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。なお、制御装置100は、溶剤を揮発させるため等の熱処理ユニットU2における加熱処理に係る制御も併せて行うことができる。
SOC膜を形成する前のウエハWの表面状態は第1実施形態及び第2実施形態で説明した状態と同様である。したがって、SOC膜用薬液を供給した後の状態も図11(a)に示すように、第1実施形態で示した状態(図7(a)参照)及び第2実施形態で示した状態(図10(a)参照)と同様になる。すなわち、パターン91による凹凸が形成されたウエハWの表面に、SOC膜を形成するための薬液を供給することによって、ウエハWの表面の凹凸に応じて塗布膜95の表面Wbの高さ位置が互いに異なるようになる。
次に、制御装置100は、ステップS12(阻害膜の形成)を実行する。ステップS12では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、阻害膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。この結果、図11(a)に示すように、塗布膜95の上にネガ型フォトレジストによるネガレジスト膜98が形成される。ネガレジスト膜98を形成するための薬液としては、一般的なネガ型フォトレジストであれば特に限定されない。ただし、後述の処理を考慮してSOC膜の溶解に適した除去液を用いることでSOC膜と同様に溶解可能であるネガ型フォトレジストが選択される。なお、塗布ユニットU1における薬液の塗布に代えて、他の方法を用いてもよい。ネガレジスト膜98は、塗布膜95上に略同一の厚さで形成されることになるので、塗布膜95と同様に表面の凹凸が形成された状態となる。
次に、制御装置100は、次にステップS13(露光処理)を実行する。ステップS13では、照射ユニットU5にウエハWを搬送した後に、露光制御部102が、ウエハWの表面(ネガレジスト膜98の表面)に対して光を照射するように、照射ユニットU5を制御する。
ステップS13では、ウエハWに形成されたパターン91の疎密に由来する塗布膜95の表面Wbの高さ位置に対応させて、ウエハW表面の各位置における露光量を変化させる。この点は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。本実施形態では、第1実施形態と同様にパターン91が密あって塗布膜95の表面Wbが高くなっている領域に対しては光の照射量を少なくし、パターン91が疎であって塗布膜95の表面Wbが低くなっている領域に対しては光の照射量を多くする。図11(b)は、図11(a)に示したウエハWにおける各位置での露光量(光の照射量)の一例を示したものである。図11(b)に示す例では、第1領域Aに対しては光の照射量を0としている一方で、パターン91が徐々に疎になる第2領域B1,B2及び第3領域Cについては、この順で露光量が増えるように光の照射量を調整している。そして、第3領域Cでは、光の照射量を最大としている。このように、各領域において露光量を変化させることで、各領域に塗布されたネガレジスト膜98は後述の除去液(現像液)に対する溶解性を変化させる。ネガ型フォトレジストは、露光によって除去液(現像液)に対する溶解性が低下する。したがって、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が高い領域ではネガレジスト膜98の溶解性が低下しないように露光量を少なくする一方、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が低い領域ではネガレジスト膜98の溶解性が低下するように露光量を多くする。この結果、図11(c)の例においてグレースケールで示すように、第1領域Aのネガレジスト膜98と比べて第3領域Cのネガレジスト膜98は露光によって溶解性が低下した状態となる。また、第2領域B1,B2では、パターン91が疎な領域B2のほうが領域B1と比較して溶解性が低下した状態となっている。このように、ステップS13では、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じてネガレジスト膜98の溶解性を変化させる。なお、ネガレジスト膜98は後段の処理で全て塗布膜95の表面から除去される必要があるため、ステップS13では後述の処理液(除去液)による溶解が可能な程度の溶解性となるように露光量を調整する。
次に、制御装置100は、ステップS14(除去処理)を実行する。ステップS14では、ウエハWを現像ユニットU3に搬送した後に、現像制御部103が、露光処理を行った後のウエハWの表面Wbに対して処理液を供給するように、現像ユニットU3を制御する。さらに、ステップS14では、現像制御部103が、ウエハWの表面Waに対してリンス液を供給することで処理液を洗い流すように、現像ユニットU3を制御する。上記の処理により、ウエハWにおいてウエハWの表面Waに残存するネガレジスト膜98と、SOC膜となる塗布膜95の一部とを除去することができる。
露光処理(ステップS13)を行った結果、ウエハWでは、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じてその上に形成されたネガレジスト膜98の溶解性が異なった状態となっている。したがって、同一の処理液(除去液)を供給した際のウエハWの各位置におけるネガレジスト膜98の溶解の進行度が異なる。この結果、図12(a)に示すように、ある時点での各領域におけるネガレジスト膜98の溶解量はウエハWに対する露光量に概ね反比例した状態となる。
除去処理で用いられる処理液とは、ネガレジスト膜98を溶解可能であると共に塗布膜95(硬化前のSOC膜)を溶解可能である処理液である。このような処理液としては、例えば、酢酸ブチル、NMP、及び、キシレン等が挙げられる。ただし、ネガレジスト膜98の材料及びSOC膜を形成するための薬液に応じた処理液を勘案し、SOC膜を溶解するための処理液(第1の除去液)と、ネガレジスト膜98を溶解するための処理液(第2の除去液)と、を選択してもよい。このような構成とした場合、除去処理でのマージンを広くすることができる。
ウエハWの表面Waに処理液を供給した後、所定時間溶解処理することでウエハWの表面Waでは処理液によるネガレジスト膜98の溶解及び塗布膜95の一部溶解が進行する。図12(a)の例はその途中段階を示すものである。処理液による溶解反応をそのまま進行させると、ネガレジスト膜98は全て除去され、その後塗布膜95の溶解が進行する。ただし、ネガレジスト膜98の溶解性に応じて、ネガレジスト膜98が全て溶解するまでの時間が変わる。そのため、上部のネガレジスト膜98の溶解性に応じてSOC膜となる塗布膜95の溶解量が変わることになる。具体的には、第3領域Cのようにネガレジスト膜98の溶解性が低下している領域(図12(a)参照)では、ネガレジスト膜98が処理液によって溶解した後に塗布膜95の溶解が進行することになるため、塗布膜95の溶解の進行が抑制される。一方、第1領域Aのようにネガレジスト膜98の溶解性が高くなっている領域(図12(a)参照)では、ネガレジスト膜98の溶解が早く進行する結果、処理液による塗布膜95の溶解が早くから始まるため、塗布膜95の溶解が促進される。この結果、各領域に応じて、塗布膜95の溶解量が互いに異なることになり、図12(b)に示すように、ネガレジスト膜98の溶解性に応じてSOC膜となる塗布膜95の溶解量が変わることになる。
したがって、除去処理(ステップS14)を経ることで、図12(c)に示すように、パターン91の形状によらず、処理液による溶解後の塗布膜95の表面Wbの高さ位置の差を小さくすることができる。第1領域Aのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを小さくし、第3領域Cのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを大きくすることができる。そのため、ウエハW全体で見ると、パターン91に由来して設けられていた塗布膜95の凹凸を小さくすることができる。
なお、塗布膜95の表面Wbをより平坦にする(表面Wbの高さを一定とする)ための各処理を実施するための条件は、予備試験等によって予め定めておくことで把握することができる。この点は第1実施形態と同様である。
その後、制御装置100は、ウエハWを熱処理ユニットU2へ搬送し、ステップS15(硬化処理)を実行する。ステップS15では、硬化制御部104が、除去処理を行った後のウエハWの表面の塗布膜95を硬化させるように、熱処理ユニットU2を制御する。以上の処理によってウエハWのパターン91上にSOC膜が形成される。
このように、第3実施形態で説明した方法においても、一連の処理を行った後のSOC膜の凹凸を小さくすることができる。また、第3実施形態で説明した方法の場合、ウエハW上の各位置でのネガレジスト膜98の溶解性を露光工程(S13)において制御する。これにより、除去工程(ステップS14)におけるネガレジスト膜98の下部に形成されるSOC膜(塗布膜95)の除去量を制御することができる。また、第3実施形態でも阻害膜を用いる構成としているため、SOC膜(塗布膜95)が光架橋型ではない場合でも表面の凹凸を少なくし平坦化することができる。なお、ネガレジストでは、露光波長としてg線(436nm)等に光反応性を持つ材料が使えるため、比較的安価な露光装置を用いることができ、設備コストを下げることができる。
なお、阻害膜がネガ型フォトレジスト膜である場合、塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を減少させることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど阻害膜の溶解性を高くすることができる。阻害膜の溶解性が高い場所では阻害膜の溶解が促進されると共に、塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記実施形態で説明した構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係るSOC膜の形成手順について、図9、図13、及び図14を参照しながら説明する。第4実施形態で説明するSOC膜の形成手順は、第2実施形態及び第3実施形態で説明した手順と同様に阻害膜を使用する。ただし、阻害膜として、ポジ型のフォトレジストを使用する点が第2実施形態及び第3実施形態と相違する。なお、第4実施形態においても、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、SOC膜は架橋によって硬化する膜であるが、光によって架橋する光架橋型に限定されず、熱によって架橋することで硬化する熱架橋型のSOC膜であってもよい。
まず、制御装置100は、ステップS11(SOC膜の形成)を実行する。ステップS11では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、SOC膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。なお、制御装置100は、熱処理ユニットU2における加熱処理に係る制御も併せて行うことができる。
SOC膜を形成する前のウエハWの表面状態は第1~第3実施形態で説明した状態と同様である。したがって、SOC膜用薬液を供給した後の状態も図13(a)に示すように、他の実施形態で示した状態と同様になる。すなわち、パターン91による凹凸が形成されたウエハWの表面に、SOC膜を形成するための薬液を供給することによって、ウエハWの表面の凹凸に応じて薬液の表面Wbの高さ位置が互いに異なるようになる。
次に、制御装置100は、ステップS12(阻害膜の形成)を実行する。ステップS12では、膜形成制御部101が、表面に凹凸を有するウエハWに対して、阻害膜用の薬液を塗布するように塗布ユニットU1を制御する。この結果、図13(a)に示すように、塗布膜95の上にポジ型フォトレジストによるポジレジスト膜99が形成される。ポジレジスト膜99を形成するための薬液としては、一般的なポジ型フォトレジストであれば特に限定されない。なお、塗布ユニットU1における薬液の塗布に代えて、他の方法を用いてもよい。ポジレジスト膜99は、塗布膜95上に略同一の厚さで形成されることになるので、塗布膜95と同様に表面の凹凸が形成された状態となる。
次に、制御装置100は、次にステップS13(露光処理)を実行する。ステップS13では、照射ユニットU5にウエハWを搬送した後に、露光制御部102が、ウエハWの表面(ポジレジスト膜99の表面)に対して光を照射するように、照射ユニットU5を制御する。
ステップS13では、ウエハWに形成されたパターン91の疎密に由来する塗布膜95の表面Wbの高さ位置に対応させて、ウエハW表面の各位置における露光量を変化させる。この点は、第1~第3実施形態と同様である。本実施形態では、第2実施形態と同様にパターン91が密であって塗布膜95の表面Wbが高くなっている領域に対しては光の照射量を多くし、パターン91が疎であって塗布膜95の表面Wbが低くなっている領域に対しては光の照射量を少なくする。図13(b)は、図13(a)に示したウエハWにおける各位置での露光量(光の照射量)の一例を示したものである。図13(b)に示す例では、第1領域Aに対しては光の照射量を多くしている一方で、パターン91が徐々に疎になる第2領域B1,B2及び第3領域Cについては、この順で露光量が少なくなるように光の照射量を調整している。このように、各領域において露光量を変化させることで、各領域に塗布されたポジレジスト膜99は後述の除去液(現像液)に対する溶解性を変化させる。ポジ型フォトレジストは、露光によって除去液(現像液)に対する溶解性が増大する。したがって、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が高い領域ではポジレジスト膜99の溶解性が増大する露光量を多くする一方、塗布膜95の表面Wbの高さ位置が低い領域ではポジレジスト膜99の溶解性が増大しないように露光量を少なくする。この結果、図13(c)の例においてグレースケールで示すように、第1領域Aのポジレジスト膜99は第3領域Cのポジレジスト膜99と比べて、露光によって溶解性が増大した状態となる。また、第2領域B1,B2では、パターン91が疎な領域B2のほうが領域B1と比較して溶解性が低い状態となっている。このように、ステップS13では、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じてポジレジスト膜99の溶解性を変化させる。なお、ポジレジスト膜99は後段の処理で全て塗布膜95の表面から除去される必要があるため、ステップS13では後述の処理液(現像液)による溶解が可能な程度に溶解性を調整しておく。
次に、制御装置100は、ウエハWを現像ユニットU3に搬送した後に、ステップS14(除去処理)を実行する。ステップS14では、現像制御部103が、露光処理を行った後のウエハWの表面に対して処理液を供給するように、現像ユニットU3を制御する。さらに、ステップS14では、現像制御部103が、ウエハWの表面Waに対してリンス液を供給することで処理液を洗い流すように、現像ユニットU3を制御する。上記の処理により、ウエハWにおいてウエハW表面に残存するポジレジスト膜99と、SOC膜となる塗布膜95の一部とを除去することができる。
第4実施形態では、2種類の処理液を用いて上記の処理を行う態様とすることができる。すなわち、第1段階として、ポジレジスト膜99を溶解するための処理液(第2の除去液:現像液)を用いて、ポジレジスト膜99をある程度溶解させた後に、一度リンス液を供給してウエハW表面の処理液を洗い流す(阻害膜除去工程)。その後、第2段階として、他の実施形態と同様にSOC膜を溶解するための処理液(第1の除去液)を用いて、ポジレジスト膜99の残存分、及び、SOC膜となる塗布膜95の一部を溶解する。そして、リンス液を供給してウエハW表面の処理液を洗い流す。ポジ型フォトレジストは一般的に有機アルカリ溶液を用いたアルカリ現像によって溶解される。したがって、SAM及びネガ型フォトレジストの溶解に用いられる処理液と比較して、SOC膜となる薬液層の除去に適していない場合がある。したがって、アルカリ現像を行うことができる処理液を用いた後に、塗布膜95の除去に適した処理液を用いる2段階の処理が行われる。
前段の露光処理を行った結果、ウエハWでは、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じてポジレジスト膜99の溶解性が異なっている。したがって、同一の処理液(除去液)を供給した場合のポジレジスト膜99の溶解の進行度が異なる。この結果、図13(d)に示すように、第2の除去液を用いたポジレジスト膜99の溶解を行った結果、各領域におけるポジレジスト膜99の溶解量はウエハWに対する露光量に比例した状態となる。
ポジレジスト膜99の溶解に用いられる処理液(第2の除去液)としては、アルカリ現像に適した処理液(現像液)であれば特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等を用いることができる。
図14(a)では第2の除去液を用いたポジレジスト膜99の溶解を行った後(阻害膜除去工程後)のウエハWの状態を示している。図14(a)に示すように、第2の除去液を用いたポジレジスト膜99の溶解は、第1領域Aのように塗布膜95の表面Wbが高い位置のポジレジスト膜99がある程度完全に除去される程度まで行うことができる。その後、第1の除去液を用いたSOC膜となる塗布膜95の溶解に係る処理が行われる。
第1の除去液として用いられる処理液とは、塗布膜95(硬化前のSOC膜)を溶解可能である処理液である。また、第2の除去液を用いた処理の後に残存するポジレジスト膜99を除去可能な程度にポジレジスト膜99を溶解可能である処理液を用いることができる。第1の除去液としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられる。ただし、ポジレジスト膜99の材料及びSOC膜を形成するための薬液に応じた処理液を選択することができる。
ウエハWの表面Waに処理液(第2の除去液)を供給した後、所定時間溶解処理することでウエハWの表面Waでは処理液によるポジレジスト膜99の溶解及び塗布膜95の一部溶解が進行する。なお、ポジレジスト膜99の残存量に応じてSOC膜となる塗布膜95の溶解量が変わることになる。具体的には、第3領域Cのようにポジレジスト膜99の溶解性が相対的に低い領域(図13(c)参照)では、第2の除去液によってポジレジスト膜99が溶解した後に塗布膜95の溶解が進行することになるため、塗布膜95の溶解の進行が抑制される。一方、第1領域Aのようにポジレジスト膜99の溶解性が増大された領域(図13(c)参照)では、ポジレジスト膜99の溶解が早く進行する結果、第2の除去液による塗布膜95の溶解が早くから始まるため、塗布膜95の溶解の進行が抑制される。この結果、各領域に応じて、塗布膜95の溶解量が互いに異なることになり、図14(b)に示すように、ポジレジスト膜99の溶解性に応じてSOC膜となる塗布膜95の溶解量が変わることになる。
その結果、図14(c)に示すように、パターン91の形状によらず、処理液による溶解後の塗布膜95の表面Wbの高さ位置の差を小さくすることができる。第1領域Aのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを小さくし、第3領域Cのようにパターン91が形成されている領域では、塗布膜95の厚さを大きくすることができる。そのため、ウエハW全体で見ると、パターン91に由来して設けられていた塗布膜95の凹凸を小さくすることができる。
なお、塗布膜95の表面Wbをより平坦にする(表面Wbの高さを一定とする)ための各処理を実施するための条件は、予備試験等によって予め定めておくことで把握することができる。この点は第1実施形態と同様である。
その後、制御装置100は、ウエハWを熱処理ユニットU2へ搬送し、ステップS15(硬化処理)を実行する。ステップS15では、硬化制御部104が、除去処理を行った後のウエハWの表面の塗布膜95を硬化させるように、熱処理ユニットU2を制御する。以上の処理によってウエハWのパターン91上にSOC膜が形成される。
このように、第4実施形態で説明した方法においても、一連の処理を行った後のSOC膜の凹凸を小さくすることができる。また、第4実施形態で説明した方法の場合、ウエハW上の各位置でのポジレジスト膜99の溶解性を露光工程(S13)において制御する。これにより、除去工程(ステップS14)におけるポジレジスト膜99の下部に形成されるSOC膜(塗布膜95)の除去量を制御することができる。また、第4実施形態でも阻害膜を用いる構成としているため、SOC膜(塗布膜95)が光架橋型ではない場合でも表面の凹凸を少なくし平坦化することができる。ポジレジストを阻害膜として用いることのメリットは、阻害膜の溶解処理に使うアルカリ処理液ではSOCを溶解させることがないため、阻害膜の溶解量とSOC膜の溶解量とを別々に設定することができ、膜厚の制御がしやすくなる点がある。
また、阻害膜がポジ型フォトレジストである場合、塗布膜表面の高さ位置が高くなるにつれて露光量を増大させることで、塗布膜表面の高さ位置が高い領域ほど阻害膜の溶解性を高くすることができる。すなわち、阻害膜の溶解性が高い領域ほど阻害膜の溶解が促進されると共に、塗布膜の溶解が促進される。したがって、上記実施形態で説明した構成とすることで、除去工程後の塗布膜表面における凹凸を小さくすることができる。
また、阻害膜がポジ型フォトレジストである場合には、上記実施形態で説明したように、第1の除去液とは異なる第2の除去液を用いて阻害膜の一部を除去する構成とする。このように構成することで、ポジ型フォトレジストの除去を露光量に応じた溶解量として制御することができる。
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
例えば、上記の第1~第4実施形態では、SOC膜を平坦化するための露光量の調整及び露光後の処理液(除去液)による処理について説明した。ただし、上記実施形態で説明した処理は、SOC膜(塗布膜)を平坦化するのではなく、SOC膜を位置に応じて互いに異なる厚さにするための処理にも適用することができる。例えば、第1実施形態では、SOC膜の塗布膜95の表面Wbの高さ位置が高いところに対して露光量を少なくし、SOC膜の塗布膜95の表面Wbの高さ位置が低いところに対して露光量を多くする場合について説明した。この結果、高さ位置が高いところは除去工程における塗布膜95の溶解量が増大し塗布膜95の表面Wbの凹凸が小さくなる。しかしながら、例えば、高さ位置が高いところに対する露光量を多くし、低いところに対して露光量を少なくすると、塗布膜95の表面Wbの凹凸が大きくなるように塗布膜95が溶解される。このように高さ位置と露光量との関係を入れ替えることで、塗布膜95の表面の凹凸を小さくすることもできるし、大きくすることもできる。この特徴を利用して、処理後の塗布膜95の表面Wbの高さ位置が所望の状態となるように、塗布膜95の表面Wbの高さ位置に応じて基板表面への露光量を変更する構成としてもよい。なお、上記では第1実施形態を参照して説明したが、第2~第4実施形態についても同様の拡張が可能である。
また、上記実施形態(特に、第2実施形態及び第3実施形態)では、SOC膜(塗布膜95)を溶解可能な1種類の除去液(第1の除去液)を用いて2種類の膜を両方除去する場合について説明した。具体的には、第2実施形態ではSAM97及び塗布膜95、第3実施形態ではネガレジスト膜98及び塗布膜95を、それぞれ除去している場合について説明した。しかしながら、第4実施形態と同様に、2種類、またはそれ以上の処理液を使用して、阻害膜及びSOC膜(薬液層)を除去する構成としてもよい。さらに、阻害膜は2種類以上の膜を組み合わせて使用してもよい。
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。