本発明に係る活性線硬化型インクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう。)は、活性線硬化性化合物および白色顔料を含有する活性線硬化型インクジェットインクであって、上記活性線硬化性化合物として、一般式(1)で表される化合物と、エチレンオキサイド(EO)変性部位を有する3官能以上の(メタ)アクリレート、または、プロピレンオキサイド(PO)変性部位を有する3官能以上の(メタ)アクリレート(以下、単に「変性多官能(メタ)アクリレ―ト」ともいう。)と、を含む。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートまたはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイルまたはメタクリロイル」を意味する。
本発明者らの知見によれば、本発明によって上記の課題が解決できる理由は以下のように考えられる。
画像の光沢性は、活性線硬化型インクジェットインクが硬化してなる硬化膜の表面の平滑性の影響を受ける。ここで、重合後にテトラヒドロフラン環(THF環)を形成する一般式(1)の化合物は、平面構造を有する上記THF環が硬化膜内で規則的に配向するため、硬化膜の表面の平滑性を高めて画像の光沢性を高めやすい。このとき、一般式(1)の化合物は、上記THF環の配向によって強固な疑似結晶構造を形成するため、硬化膜の硬化性をも高め得る。
しかし、典型的には無機顔料である白色顔料を含む活性線硬化型インクジェットインクでは、白色顔料と一般式(1)の化合物とが反発しあうため、硬化膜内で白色顔料およびTHF環がきれいに配向しにくく、これらが乱雑に配置されやすい。そのため、白色顔料を含む白色の活性線硬化型インクジェットインクに一般式(1)の化合物を配合すると、当該インクジェットインクにより形成される画像の光沢性が高まりにくく、かえって低下することがあるものと考えられる。また、このとき、同様に硬化膜の硬化性も低下してしまうと考えられる。
これに対し、本発明では、一般式(1)の化合物に加えて、変性多官能(メタ)アクリレ―トをも活性線硬化型インクジェットインクに配合する。変性多官能(メタ)アクリレ―トは、一般式(1)の化合物との親和性が高い(メタ)アクリロイル基を有し、かつ、EO変性部位またはPO変性部位が白色顔料と相互作用するため、一般式(1)の化合物、変性多官能(メタ)アクリレ―ト、および白色顔料の間の相互作用を良好に生じさせ、THF環および白色顔料を硬化膜内で規則的に配向させやすくし、画像の光沢性および硬化性を高め得ると考えられる。
なお、(メタ)アクリレートがEO変性部位またはPO変性部位を有するのみでは、一般式(1)の化合物と白色顔料との間の親和性を十分に仲介できない。これに対し、それぞれが十分な長さを有する分岐鎖を分子内に有し得る3官能以上の(メタ)アクリレートを、変性多官能(メタ)アクリレ―トとして用いることで、(メタ)アクリロイル基がTHF環の配向性をより高め、変性部位が白色顔料の配向性を高めて、画像の光沢性を十分に高め得ると考えられる。また、上記変性多官能(メタ)アクリレ―トは、THF環の配向性をより高めることにより、THF環に疑似結晶構造を形成させやすくし、硬化膜の硬化性をもより十分に高めることができると考えられる。また、上記変性多官能(メタ)アクリレ―トは、活性線の照射の直後からTHF環による疑似結晶構造の形成を促進するため、硬化時に活性線硬化型インクジェットインクの内部への酸素を侵入させにくくすると考えられる。これにより、上記変性多官能(メタ)アクリレ―トは、活性線の照射による重合が進行するにつれ、一般式(1)の化合物および変性多官能(メタ)アクリレートの酸素による重合阻害を生じにくくさせて、硬化膜の硬化性をさらに高めると考えられる。
[活性線硬化性化合物]
本発明の実施形態に係るインクは、活性線硬化性化合物を含む。活性線硬化性化合物とは、活性線の照射により重合または架橋する化合物である。活性線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線およびエックス線などが含まれる。上記活性線のうち、紫外線および電子線が好ましい。
(一般式(1)の活性線硬化性化合物)
本発明の実施形態に係るインクは、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
(式中、R
1は水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数が20以下の炭化水素基を表す。)
本発明の実施形態に係るインクは、形成される画像の光沢性および硬化性を良好にするという観点から、上記一般式(1)の化合物を、インクの全質量に対して10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがさらに好ましく、25質量%以上含むことがさらに好ましい。一般式(1)の化合物の含有量の上限は、硬化膜の物性のバランスを良くするという観点から、例えば、インクの全質量に対して80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
上記の置換基を有していてもよい炭素数が20以下の炭化水素基は、炭素数が10以下の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が5以下の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が3以下の炭化水素基であることがより好ましい。
炭素数が20以下の炭化水素基は直鎖でも分岐していてもよく、二重結合を含んでいてもよく、脂環式および芳香環などの環構造を含んでいてもよく、エーテル基または環状エーテル構造を有していてもよく、これらの構造が組み合わされていてもよい。また、上記炭化水素基の水素原子はハロゲン原子、またはアミノ基もしくはカルボキシル基などの置換基で置換されていてもよい。ハロゲン原子には、フッ素、塩素および臭素が含まれる。
炭素数が20以下の炭化水素基の例には、鎖式飽和炭化水素基および環式飽和炭化水素基が含まれる。鎖式飽和炭化水素の例には、アルキル基が含まれ、アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が含まれる。環式飽和炭化水素の例には、シクロアルキル基が含まれ、シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が含まれる。
式(1)で表される化合物の例には、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸エチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-プロピル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸イソプロピル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ブチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸sec-ブチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸tert-ブチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-アミル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸sec-アミル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸tert-アミル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ネオペンチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ヘキシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸sec-ヘキシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ヘプチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-オクチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸sec-オクチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸tert-オクチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸2-エチルヘキシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸カプリル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ノニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸デシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ウンデシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ラウリル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸トリデシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ミリスチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ペンタデシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸セチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ヘプタデシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ステアリル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ノナデシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸エイコシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸セリル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メリシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸クロチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸1,1-ジメチル-2-プロペニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸2-メチルブテニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸3-メチル-2-ブテニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸3-メチル-3-ブテニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸2-メチル-3-ブテニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸オレイル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸リノール、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸リノレン、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロペンチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロペンチルメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸4-メチルシクロヘキシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸トリシクロデカニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸イソボルニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸アダマンチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジシクロペンタニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジシクロペンテニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸フェニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルフェニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジメチルフェニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸トリメチルフェニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸4-tert-ブチルフェニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ベンジル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジフェニルメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジフェニルエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸トリフェニルメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シンナミル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ナフチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸アントラニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メトキシエトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸メトキシエトシキエトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸3-メトキシブチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸エトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸エトキシエトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロペントキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルオキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロペントキシエトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルオキシエトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸フェノキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸フェノキシエトキシエチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸グリシジル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸β-メチルグリシジル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸β-エチルグリシジル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸2-オキセタンメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸3-メチル-3-オキセタンメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸3-エチル-3-オキセタンメチル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸テトラヒドロフラニル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、α-(アリルオキシメチル)アクリル酸テトラヒドロピラニル、α-(アリルオキシメチル)ジオキサゾラニルおよびα-(アリルオキシメチル)アクリル酸ジオキサニルが含まれる。
(変性多官能(メタ)アクリレ―ト)
本発明の実施形態に係るインクは、エチレンオキサイド(EO)変性部位を有する3官能以上の(メタ)アクリレート、または、プロピレンオキサイド(PO)変性部位を有する3官能以上の(メタ)アクリレート(変性多官能(メタ)アクリレ―ト)を含む。
変性多官能(メタ)アクリレ―トは、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有すればよい。上記(メタ)アクリロイル基の数の上限は特に限定されないものの、硬化膜の硬度を高めすぎず、形成される画像の耐折り割れ性および密着性を十分にする観点からは、6個とすることができる。
変性多官能(メタ)アクリレ―トは、1個以上のEO変性部位またはPO変性部位を有すればよい。上記EO変性部位またはPO変性部位の数は特に限定されないものの、形成される画像の光沢性および硬化性を十分に高める観点からは、3個以上12個以下であることが好ましく、3個以上9個以下であることが好ましい。
本発明の実施形態に係るインクは、形成される画像の光沢性および硬化性を良好にするという観点から、変性多官能(メタ)アクリレ―トを、インクの全質量に対して10質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがさらに好ましい。変性多官能(メタ)アクリレ―トの含有量の上限は、例えば、インクの全質量に対して80質量%以下であることが好ましい。
変性多官能(メタ)アクリレ―トの例には、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールEO変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールPO変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールPO変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンEO変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンPO変性テトラ(メタ)アクリレート、グリセリンEO変性トリ(メタ)アクリレートおよびグリセリンPO変性トリ(メタ)アクリレートが含まれる。
(その他の活性線硬化性化合物)
本発明の実施形態に係るインクは、その他の活性線硬化性化合物を含んでもよい。その他の活性線硬化性化合物は、活性線の照射により架橋または重合する化合物であれば特に制限されない。
本発明の実施形態に係るインクは、一般式(1)の化合物および変性多官能(メタ)アクリレ―トにより形成される画像の光沢性および硬化性を十分に高める観点から、上記その他の活性線硬化性化合物を、インクの全質量に対して10質量%以上77質量%以下含むことが好ましい。また、本発明の実施形態に係るインクは、一般式(1)の化合物、変性多官能(メタ)アクリレ―トおよび上記その他の活性線硬化性化合物を合計して、インクの全質量に対して10質量%以上97質量%以下含むことが好ましく、30質量%以上90質量%以下とすることがより好ましい。
その他の活性線硬化性化合物の例には、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、またはそれらの混合物が含まれる。上記その他の活性線硬化性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。上記インク中に含まれる一般式(1)の化合物以外のラジカル重合性化合物は、一種のみであってもよいし、二種以上であってもよい。なお、上記ラジカル重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーおよびこれらの混合物のいずれであってもよい。
上記ラジカル重合性化合物は、分子中にエチレン性不飽和二重結合基を有し、活性線の照射によりラジカル重合する化合物であればよい。上記ラジカル重合性化合物は、単官能モノマーまたは多官能モノマーでありうる。上記ラジカル重合性化合物は、一般式(1)の化合物および変性多官能(メタ)アクリレ―トとの親和性が高いことから、(メタ)アクリレートであることが好ましい。
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートなどの2官能の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのEO変性部位またはPO変性部位を有さない3官能の(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどのEO変性部位またはPO変性部位を有さない4官能以上の(メタ)アクリレート、ならびにポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するがEO変性部位またはPO変性部位を有さないオリゴマーが含まれる。
上記カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物などが含まれる。
上記エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
上記ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
上記オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
[白色顔料]
本発明の実施形態に係るインクは、白色顔料を含む。本発明の実施形態に係るインクは、白色顔料を、インクの全質量に対して5質量%以上30質量%以下の量で含むことが好ましく、5質量%以上20質量%以下の量で含むことがより好ましく、5質量%以上15質量%以下の量でさらに好ましい。
白色顔料の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム等が含まれる。
上記酸化チタンの結晶形態には、ルチル型、アナターゼ型およびブルーカイト型などがある。比重が小さく、小粒径化しやすい観点からは、結晶形態は、アナターゼ型が好ましく、可視光領域における屈折率が大きく、隠蔽性が高い観点からは、ルチル型が好ましい。本発明の実施形態に係るインクには、上記結晶形態の酸化チタンから1種類を用いてもよいし、結晶形態の異なる酸化チタンを組み合わせて用いてもよい。
上記酸化チタンの重量平均粒子径は、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。酸化チタンの重量平均粒子径を50nm以上とすることで、十分な隠蔽性を有するインクが得られる。一方、酸化チタンの重量平均粒子径を500nm以下とすることで、酸化チタンを安定して分散させることができ、インクの保存性や射出安定性を高めることができる。
また、本発明では、市販の酸化チタンを用いてもよい。本発明に用いることのできる市販の酸化チタンの例には、CR-EL、CR-50、CR-80、CR-90、R-780およびR-930(いずれも石原産業株式会社製)、TCR-52、R-310およびR-32(いずれも堺化学工業株式会社製)、KR-310、KR-380およびKR-380N(いずれもチタン工業株式会社)等が含まれる。
[分散剤]
本発明の実施形態に係るインクは、分散剤を含んでもよい。
本発明の実施形態に係るインクは、分散剤を、白色顔料の全質量に対して1質量%以上50質量%以下含むことが好ましい。
上記分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートなどが含まれる。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズなどが含まれる。
[重合開始剤]
本発明の実施形態に係るインクは、重合開始剤を含んでもよい。
本発明の実施形態に係るインクは、活性線の照射によってインクを十分に硬化させ、かつインクの吐出性を低下させない観点から、重合開始剤を、白色顔料の全質量に対して0.1質量%以上20質量%以下含むことが好ましく、1.0質量%以上12質量%以下含むことがより好ましい。
重合開始剤は、活性線硬化性化合物の重合を開始できるものであれば、特に限定されない。本発明の実施形態に係るインクは、ラジカル重合性の化合物である一般式(1)の化合物および変性多官能(メタ)アクリレ―トを含むことから、これらの化合物による重合および架橋を開始させることができる、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。なお、上記インクは、カチオン重合性化合物を有するときは、重合開始剤としてカチオン開始剤(酸発生剤)を含むことができる。なお、電子線の照射により上記インクを硬化させるときなど、重合開始剤がなくてもインクが十分に硬化できるときは、重合開始剤は不要である。
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン類、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ならびに、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
カチオン系の重合開始剤の例には、光酸発生剤が含まれる。光酸発生剤の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、およびホスホニウムなどを含む芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-塩など、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、ならびに鉄アレン錯体などが含まれる。
[増感剤]
本発明の実施形態に係るインクは、増感剤を含んでもよい。
上記増感剤の例には、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセンおよび9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセンを含むアントラセン誘導体が含まれる。市販の増感剤の例には、川崎化成工業社製、DBAおよびDEAが含まれる。
[重合禁止剤]
本発明の実施形態に係るインクは、重合禁止剤を含んでもよい。
上記重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシムが含まれる。
[界面活性剤]
本発明の実施形態に係るインクは、界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
上記界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アニオン界面活性剤、および上記不飽和脂肪酸エステル以外のノニオン界面活性剤が含まれる。
[ゲル化剤]
本発明の実施形態に係るインクは、ゲル化剤を含んでもよい。
ゲル化剤は、常温では固体であるが、加熱すると液体となることにより、インクを温度変化に応じてゾルゲル相変移させることができる有機物である。
本発明の実施形態に係るインクは、ゲル化剤が結晶構造をつくることでTHF環由来の構造が強固になり、画像の硬化性を高めるという観点から、ゲル化剤を、インクの全質量に対して0.3質量%以上8.0質量%以下含むことが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下含むことがより好ましく、0.8質量%以上3.5質量%以下含むことがさらに好ましい。
上記ゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸、ダイマージオール、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスなどが含まれる。
また、ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ここで、ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却していったときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、例えば、レオメータ MCR300(AntonPaar社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
また、インクの液滴をインクジェットヘッドから安定して吐出するためには、ゾル状のインク(高温時、たとえば80℃程度)において、ラジカル重合性化合物とゲル化剤との相溶性が良好であることが必要である。
上記ゲル化剤がインク中で結晶化すると、板状に結晶化した上記ゲル化剤によって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という)。カードハウス構造が形成されると、液体の活性線硬化性化合物が上記空間内に保持されるため、インクが付着して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、インクが記録媒体に付着して形成されたドット同士が合一しにくくなる。
カードハウス構造の形成に適した上記ゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドなどが含まれる。これらのうち、インクのピニング性をより高める観点からは、ケト基またはエステル基を挟んで両側に配置された炭素鎖の炭素数がいずれも9以上25以下であるケトンワックスまたはエステルワックスが好ましい。
[物性]
本発明の実施形態に係るインクは、インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、ゲル化剤を含まないインクであるとき、40℃における粘度が3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。また、ゲル化剤を含むインクであるとき、80℃における粘度が3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。
本発明の実施形態に係るインクは、ゲル化剤を含むとき、40℃以上70℃以下にゾルゲル相転移する相転移温度を有することが好ましい。インクの相転移温度が40℃以上であると、基材に着弾した後にインクが速やかに増粘するため、濡れ広がりの程度をより調整しやすくなる。インクの相転移温度が70℃以下であると、通常80℃程度であるインクジェットヘッドからのインクの射出時に上記インクがゲル化しにくいため、より安定してインクを射出することができる。
インクの40℃における粘度、80℃における粘度および相転移温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。
[画像形成方法]
(第1の画像形成方法)
本発明の実施形態に係る第1の画像形成方法は、前述の活性線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、記録媒体の表面に着弾させる工程(第1の工程)と、着弾した液滴に活性線を照射して、液滴を硬化させる工程(第2の工程)と、を有する。
〈第1の工程〉
第1の工程では、活性線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、記録媒体の表面に着弾させる。
インクジェットヘッドのノズルからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型などの電気-熱変換方式などのいずれでもよい。
インクの液滴は、加熱した状態でインクジェットヘッドから吐出することで、吐出安定性を高めることができる。吐出される際のインクの温度は、35℃以上100℃以下であることが好ましく、吐出安定性をより高めるためには、35℃以上80℃以下であることがより好ましい。特には、インクの粘度が7mPa・s以上15mPa・s以下、より好ましくは8mPa・s以上13mPa・s以下となるようなインク温度において出射を行うことが好ましい。
上記活性線硬化型インクジェットインクがゲル化剤を含むときは、インクジェットヘッドのノズルからのインクの吐出性を高めるために、インクジェットヘッドに充填されたときのインクの温度を、当該インクのゲル化温度+10℃以上、ゲル化温度+30℃以下に設定することが好ましい。インクジェットヘッド内のインクの温度が、ゲル化温度+10℃未満であると、インクジェットヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化して、インクの吐出性が低下しやすい。一方、インクジェットヘッド内のインクの温度がゲル化温度+30℃を超えると、インクが高温になりすぎるため、インク成分が劣化することがある。
インクの加熱方法は、特に制限されない。例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンクなどのインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッドなどの少なくともいずれかをパネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水などによって加熱することができる。
吐出される際のインクの液滴量は、記録速度および画質の面から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
記録媒体は、インクジェット法で画像を形成できる媒体であればよく、たとえば、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙およびキャスト紙を含む塗工紙ならびに非塗工紙を含む吸収性の媒体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレートを含むプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体、中間転写体ならびに金属類およびガラス等の非吸収性の無機記録媒体とすることができる。各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PPフィルム、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムが使用できる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類等が使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。なお、本発明のインクは、従来のインクよりも光沢度の高い画像を形成しうるものであるため、光沢が比較的高いコート紙などに好適である。
なお、インクがゲル化剤を含む場合、インクの液滴が着弾する際の記録媒体の温度は、20℃以上40℃以下に制御されていることが、インクのゲル化の観点から好ましい。
〈第2の工程〉
第2の工程では、記録媒体の表面に着弾した液滴に活性線を照射して、液滴を硬化させる。
活性線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などから選択することができるが、好ましくは紫外線であり、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光をLED光源から照射することが好ましい。LED光源の例として、Phoseon Technology社製の水冷LED(ピーク波長395nm)が挙げられる。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ない。したがって、活性線照射時に、インクが溶け難く、光沢ムラなどを生じさせ難い。
ここで、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光を照射する場合、記録媒体表面もしくは液滴表面におけるピーク照度を、0.5W/cm2以上10.0W/cm2以下とすることが好ましく、1.0W/cm2以上5.0W/cm2以下とすることが好ましい。
活性線の照射は、インクが記録媒体に着弾してから0.001秒から1.0秒までの間に行うことが好ましく、高精細な画像を形成するためには、0.001秒から0.5秒までの間に行うことがより好ましい。
一方、活性線の照射は、2段階に分けて行ってもよい。この場合、インクが記録媒体に着弾してから0.001秒から2.0秒までの間に活性線を照射してインクを仮硬化させ、全印字終了後、さらに活性線を照射してインクを本硬化させることができる。活性線の照射を2段階に分けることで、インクの硬化収縮が生じ難くなる。
(第2の画像形成方法)
本発明の実施形態に係る第2の画像形成方法は、前述の活性線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、中間転写体に付着させる工程(第1工程)と、中間転写体に付着させた液滴を、記録媒体に転写させる工程と(第2工程)、記録媒体に転写させた液滴に活性線を照射して、液滴を硬化させる工程(第3工程)と、を有する。
〈第1の工程〉
第1の工程では、活性線硬化型インクジェットインクの液滴をインクジェットヘッドのノズルから吐出して、中間転写体に付着させる。インクは、上述した活性線硬化型インクジェットインクである。中間転写体にインクを付着させる工程に用いる装置は、上記の第1画像形成方法の装置と同様とすることができる。中間転写体は、インクジェット法による画像形成に用いられる公知の中間転写体であればよい。
中間転写体の調温方法は特に制限がない。例えば中間転写体の内部に、冷却装置および加熱装置を配設し、中間転写体の内側から調温してもよく、中間転写体の外周に、冷媒やヒーター等を配設し、外部から調温してもよい。中間転写体の表面温度は例えば60℃とすることができる。
中間転写体の形状は、インク着弾面が平滑であれば特に制限はない。中間転写体の形状は、例えば、無端ベルト状であってもよく、ドラム状であってもよい。
中間転写体は、通常、基材と、その表面に形成された離型層とを有する。中間転写体の基材の材質は、中間転写体の形状や強度等を考慮して、適宜選択される。基材の材質の例には、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属;ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミドアミド(PIA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等の樹脂;エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のエラストマー等が含まれる。基材の表面に形成される離型層は、活性線硬化型インクジェットインクに対して離型性を有する層であることが好ましい。離型層は、シリコーン樹脂層、またはフッ素樹脂層でありうる。
〈第2の工程〉
第2の工程では、中間転写体に付着させた液滴を、記録媒体に転写させる。本工程では、例えば、上記中間転写体の活性線硬化型インクが付着した面と、記録媒体の画像を形成すべき面とを接触させ、中間転写体側から記録媒体側へ押圧すればよい。
記録媒体は、上記の第1画像形成方法の装置と同様とすることができる。
〈第3の工程〉
第3の工程では、上記記録媒体に転写させた液滴に活性線を照射して、上記液滴を硬化させる。
活性線は、例えば、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などから選択することができる。これらのうち、取り扱いの容易さおよび人体への影響の少なさの観点から、紫外線を照射することが好ましく、活性線硬化型インクを硬化させやすくする観点からは、電子線を照射することが好ましい。光源の輻射熱によって活性線硬化型インクが溶けることによる活性線硬化型インクの硬化不良の発生を抑制する観点から、紫外線の光源は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。インクを硬化させるための活性線を照射することができるLED光源の例には、395nm、水冷LED、PhoseonTechnology社製、Heraeus社製、京セラ株式会社製、HOYA株式会社製、およびIntegrationTechnology社製が含まれる。
照射される活性線のエネルギーは、200mJ/cm2以上1000mJ/cm2であることが好ましい。上記エネルギーが200mJ/cm2以上だと、活性線重合性化合物を十分に重合および架橋させることができる。上記エネルギーが1000mJ/cm2以下だと、照射される活性線の熱によるワックスの再溶解によるピニング性の低下が生じにくくなる。上記観点からは、照射される活性線のエネルギーは300mJ/cm2以上800mJ/cm2以下であることがより好ましく、350mJ/cm2以上500mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。
その他の第3の工程における、活性線の照射条件等は、上記の第1の画像形成方法と同様とすることができる。
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、上述したインクジェット用の活性線硬化型インクを用いて画像を形成する、画像形成装置である。具体的には、本発明の画像形成装置は、インクジェットヘッドから、40~120℃に加熱されたインクジェット用の活性線硬化型インクを吐出する、インク吐出部と、吐出されたインクジェット用の活性線硬化型インクを着弾させる記録媒体を搬送して、その表面温度が60℃以下である記録媒体または中間転写体の表面に上記インクを着弾させる、搬送路と、前記着弾したインクジェット用の活性線硬化型インクに活性線を照射する照射部と、を含む、画像形成装置である。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット用の画像形成装置の例示的な構成を示す模式図である。
画像形成装置100は、記録媒体110を搬送する搬送路120と、搬送路120の記録媒体110が搬送される面に対向して配置された、中間転写体130の表面に活性線硬化型インクを付与して中間画像を形成する中間画像形成部140と、活性線硬化型インクを含む中間画像を記録媒体に転写する転写部150と、を有する。画像形成装置100は、さらに、無端状ベルトの形状を有する中間転写体130を張架する3つの支持ローラ160、161および162と、中間画像を構成する活性線硬化型インクを硬化(本硬化)させるための活性線を搬送路120の表面に向けて照射する照射部170と、記録媒体110に転写されずに中間転写体130の表面に残存した活性線硬化型インクを中間転写体130の表面から除去するクリーニング部180と、を有する。
搬送路120は、たとえば金属ドラムで構成され、中間画像を転写される記録媒体110を搬送する。搬送路120は、中間転写体130の一部の表面に接して配置され、支持ローラ161よって中間転写体130の上記接する表面が加圧されることで、転写ニップが形成される。搬送路120は、記録媒体110の先端を固定する爪(不図示)を有してもよい。搬送路120は、当該爪に記録媒体110の先端を固定し、図1における反時計回り方向に回転することで、記録媒体110を転写ニップに搬送する。
中間転写体130は、3つの支持ローラ160、161および162を有する。中間転写体130は無端状ベルトで構成され、3つの支持ローラ160、161および162によって逆三角形状に張架され、中間画像形成部140によって中間転写体130の表面に形成された中間画像を転写部150に搬送する。
3つの支持ローラ160、161および162のうち、少なくとも1つのローラは、駆動ローラであり、中間転写体130をA方向に回転させる。
中間転写体130は、芳香族ポリイミド(PI)、芳香族ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、芳香族ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、芳香族ポリカーボネート、および芳香族ポリエーテルケトンなどのベンゼン環を含む構造単位を有する樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ならびにこれらの混合物または共重合物などを含む基材層を有する。中間転写体130は、基材層に加えて、インクの着弾面側に、シリコーンゴム(SR)、クロロプンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)およびエピクロルヒドリンゴム(ECO)などのゴム、エラストマーおよび弾性樹脂など含む弾性層、ならびに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂ならびにアクリル樹脂などを含む表面層、の双方またはいずれかを有してもよい。
あるいは、中間転写体130は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、1,4-ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレン(PS)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、およびアイオノマーフィルムなどの樹脂フィルム、セロハン、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体から形成されていてもよい。
中間転写体130における、逆三角形状の左右の頂点部分に位置する支持ローラ160、162に張架された部分は、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されたインクの着弾面となっている。中間転写体130における、逆三角形状の下側の頂点部分に位置する支持ローラ161は、中間転写体130を搬送路120に向けて所定のニップ圧により加圧する加圧ローラであり、それぞれのインクジェットヘッドから吐出されたインクが着弾して形成された中間画像を記録媒体110に転写する転写部として機能する。
インク吐出部でもある中間画像形成部140は、インクジェット法により中間画像を形成するインク付与部であり、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の活性線硬化型インクをノズルから吐出して中間転写体130の表面に着弾させる、インクジェットヘッド140Y、140M、140Cおよび140Kを有する。インクジェットヘッド140Y、140M、140Cおよび140Kは、40~120℃に加熱された上記各色の活性線硬化型インクを、中間転写体130の表面のうち形成されるべき画像に応じた位置に着弾させて、中間画像を形成する。
転写部150は、中間転写体130と搬送路120とが最接近した転写ニップを含む部分であって、支持ローラ161によって中間転写体130が搬送路120の方向に付勢されることにより、中間転写体130が接する搬送路120の表面を加圧する。中間転写体130の表面に形成されて搬送されてきた中間画像と、搬送路120の表面に配置されて搬送されてきた記録媒体110とは、転写ニップにおいて接触され、支持ローラ161を介して中間転写体130から搬送路120側に加圧されることで、記録媒体に転写される。
照射部170は、搬送路120による記録媒体110の搬送方向における、転写部150より下流側に配置され、搬送路120の表面に向けて活性線を照射する。これにより、照射部170は、記録媒体110に転写された中間画像を構成する活性線硬化型インクに活性エネルギー線を照射して、中間画像を構成する活性線硬化型インクを硬化(本硬化)させる。これにより、記録媒体110の表面に、目的とする画像が形成される。
クリーニング部180は、ウェブローラやスポンジローラ等のクリーニングローラであり、転写部150の下流側で、中間転写体130の表面に接触する。クリーニング部180は、上記クリーニングローラが駆動回転することで、転写部150において記録媒体110に転写されずに中間転写体130の表面に残存した残インク(残塗布物)を除去する。
なお、図示しないものの、画像形成装置100は、中間転写体130のうちインクが着弾する位置の表面温度を60℃以下に調整する温度調整部を有してもよい。
また、上記説明では中間転写体を有する画像形成装置について説明したが、本発明の画像形成装置は、中間転写体を有さず、インク吐出部から吐出された活性線硬化型インクを搬送路を搬送される記録媒体に直接に着弾させる構成であってもよい。
以下、本実施形態の具体的な実施例を比較例とともに説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
1. 活性線硬化型インクジェットインクの調整
[活性線硬化性化合物]
インクジェットインクに含まれる活性線硬化性化合物は以下のものを用いた。
(一般式(1)の化合物)
・2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル
(変性多官能(メタ)アクリレ―ト)
・トリメチロールプロパン3PO変性トリアクリレート(3PO TMPTA)
・トリメチロールプロパン3EO変性トリアクリレート(3EO TMPTA)
・トリメチロールプロパン9EO変性トリアクリレート(9EO TMPTA)
(PO変性部位またはEO変性部位を有する、2官能の(メタ)アクリレート)
・ポリエチレングリコール(300)ジアクリレート(6EO PEGDA、EO変性部位数:6)
・トリプロピレングリコール3PO変性ジアクリレート(3PO TPGDA、PO変性部位数:3)
(PO変性部位またはEO変性部位を有さない、2官能の(メタ)アクリレート)
・ジオキサングリコールジアクリレート(DOGDA)
(PO変性部位またはEO変性部位を有さない、3官能の(メタ)アクリレート)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
(その他の活性線硬化性化合物)
・ポリエステルアクリレートオリゴマー(CN2270)
[重合開始剤]
インクジェットインクに含まれる重合開始剤は以下のものを用いた。
・フェニル-ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Irgacure 819、チバスペシャリティーケミカルズ社)
[増感剤]
・イソプロピルチオキサントン(Speedcure ITX、LAMBSON社)
[重合禁止剤]
インクジェットインクに含まれる重合禁止剤は以下のものを用いた。
・IrgastabUV10(チバ・ジャパン社製)
[顔料]
インクジェットインクに含まれる顔料は以下のものを用いた。
(白色顔料)
・酸化チタン(R32、堺化学工業社製)
(マゼンタ顔料)
・V19/PR202混晶顔料 Ink JET magenta E7B LV3958(クラリアント社製)
[分散剤]
インクジェットインクに含まれる分散剤は以下のものを用いた。
・Solsperse 28000(Lubrizol社製)
[界面活性剤]
インクジェットインクに含まれる界面活性剤として、以下のものを用いた。
・TSF-4452(MOMENTIVE社製)
2. 混合調製および評価
[顔料分散液の調製]
(白色顔料分散液)
上記分散剤を24質量部、溶媒として活性線硬化性化合物であるジプロピレングリコールジアクリレートを28質量部、ステンレスビーカーに入れ、これを65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌した。混合液を室温まで冷却し、さらに、上記白色顔料を48質量部加えた。この溶液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去し、分散液を得た。
(マゼンタ顔料分散液)
上記分散剤を8質量部、溶媒として活性線硬化性化合物であるジプロピレングリコールジアクリレートを76質量部、ステンレスビーカーに入れ、これを65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱攪拌した。混合液を室温まで冷却し、さらに、上記マゼンタ顔料を16質量部加えた。この溶液を、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れて密栓し、ペイントシェーカーにて5時間分散処理した。その後、ジルコニアビーズを除去し、分散液を得た。
[インクの調製]
上記の各成分を下記の表1および表2の組成にしたがって混合し、80℃に加熱して攪拌した。加熱下において、ADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで得られた溶液の濾過を行い、インク1~インク17を得た。なお、各成分の量について、下記の表1および表2中の数値は質量%である。
[画像形成]
インク1~インク17を、それぞれ、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するシングルパスのインクジェット記録装置に装填した。インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、インクジェットヘッドの温度は80℃に設定した。
記録媒体に、インクジェットヘッドのノズルから吐出した各インクの液滴を着弾させた。着弾した液滴には、インクジェットヘッドよりも下流側に配置したLEDランプ(Phoseon Technology社製、395nm、水冷LED)で、画像に紫外線を照射してインクを硬化した。
吐出用記録ヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数1024ノズル(512ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ600dpi)のピエゾヘッドを用いた。
[光沢性評価]
インク1~インク17のそれぞれのインクを、1滴の液滴量が3.0plとなる吐出条件で、液滴速度約6m/sで射出させて、1200dpi×1200dpiの解像度で記録した。画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。記録媒体としてPODグロスコート(王子製紙社製)を用い、上記の記録装置および画像形成条件で画像を形成した。形成した画像について、日本電色PG-1Mハンディ型光沢計PG-IIを用い、20°光沢、60°光沢を測定し、20°光沢/60°光沢の比を算出した。光沢比を以下のように評価した。
◎ 0.8以上
○ 0.6以上0.8未満
△ 0.3以上0.6未満
× 0.3未満
なお、○以上を合格とした。
[硬化性評価]
記録媒体として蒸着紙(アルブライトFXF190、平和紙業社製)を用い、上記の記録装置および画像形成条件で、インク1~インク17のそれぞれのインクにより、9g/m2の付量で画像を形成した。画像形成後、「JIS規格 K5701-16.2.3 耐摩擦性試験」に記載された方法に準じて、2cm2となる大きさに切り取った印刷用コート紙(OK金藤 米坪量104.7g/m2 王子製紙社製)を載せて、800gの荷重をかけて擦り合わせた後に、印刷用コート紙への色移りの程度を目視し、さらに画像の表面をさわって以下のように評価した。
◎ 色移りがなく、表面のべたつきもない。
○ わずかに色移りがあるが、表面のべたつきはない。
△ わずかに色移りがあり、やや表面のべたつきがある。
× 色移りがあり、さらに表面のべたつきがある。
なお、△以上を合格とした。
インク1~17の組成と評価を以下の表1および表2に示す。
活性線硬化性化合物として、一般式(1)の化合物と、変性多官能(メタ)アクリレートと、を含み、かつ白色顔料を含む、インク1~インク9は、形成された画像の光沢性および硬化性がともに良好だった。これは、EO変性部位またはPO変性部位と、分岐構造と、を有する変性多官能(メタ)アクリレートによって、一般式(1)の化合物と白色顔料とが良好に相互作用し、一般式(1)の化合物が重合して形成されたTHF環および白色顔料が良好に配向したからだと考えられる。また、このとき、変性多官能(メタ)アクリレートによりTHF環の配向が促進されて、重合時の酸素の侵入が阻害されたため、硬化膜の内部でも活性線硬化性化合物が十分に重合して、形成された画像の硬化膜がより高まったと考えられる。
さらに、一般式(1)の化合物の含有量がインクの全質量に対して20質量%以上であるインク2~インク9は、形成された画像の硬化性がより高くなっていた。これは、配向して疑似結晶構造を形成したTHF環の数が多くなったためだと考えられる。
さらに、変性多官能(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以上であるインク7~インク9は、形成された画像の光沢性および硬化性がさらに高くなっていた。これは、変性多官能(メタ)アクリレートが一般式(1)の化合物と白色顔料との間の相互作用をより良好に仲介して、THF環および白色顔料を硬化膜内で規則的に配向させやすくしたためだと考えられる。
さらに、ゲル化剤を含むインク6は、形成された画像の硬化性がさらに高くなっていた。これはゲル化剤が結晶構造をつくることでTHF環由来の構造が強固になり、画像の硬化性が高まるためだと考えられる。
これに対し、一般式(1)の化合物を含むが変性多官能(メタ)アクリレートを含まないインク10は、形成された画像の光沢性が低下していた。これは、白色顔料の表面と一般式(1)の化合物との親和性が低いため、硬化膜内で白色顔料およびTHF環がきれいに配向しにくく乱雑に配置されやすいためだと考えられる。
また、一般式(1)の化合物と、EO変性部位またはPO変性部位を有するが官能基数が2である(メタ)アクリレートとを含むインク13およびインク14は、形成された画像の光沢性および硬化性が低下していた。これは、十分な長さの分岐鎖を有さない2官能の(メタ)アクリレートでは、THF環の配向性を十分には高められなかったためと考えられる。
また、一般式(1)の化合物と、EO変性部位またはPO変性部位を有さない(メタ)アクリレートとを含むインク15およびインク16は、形成された画像の光沢性および硬化性が低下していた。これは、EO変性部位またはPO変性部位を有さない(メタ)アクリレートでは、一般式(1)の化合物、変性多官能(メタ)アクリレ―ト、および白色顔料の間の相互作用が十分に生じなかったためと考えられる。
なお、マゼンタ顔料を含むインク17では、一般式(1)の化合物を配合しても、形成した画像の光沢性および硬化性は低下しなかった。そのため、一般式(1)の化合物による光沢性および硬化性の低下は、白色顔料を含む活性線硬化型インクジェットインクに特有の現象であることがわかる。