特許文献1に開示されたスマートエントリーシステム(スマートキーシステム)は、新たに製造される車両に搭載することは可能であるが、既にスマートエントリーシステムが搭載された車両に後付けで組み込むことは困難である。
本発明の目的は、例えば、既にスマートエントリーシステム等が搭載された車両等において、リレーアタックによる盗難等の危険性を低下させることが可能なシステム等を提供することである。
本願の発明の目的はこれに限定されず、本明細書および図面等に開示される構成の部分から奏する効果を得ることを目的とする構成についても分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。例えば本明細書において「~できる」と記載した箇所を「~が課題である」と読み替えた課題が本明細書には開示されている。課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、この課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。課題が明細書の記載から黙字的に把握されるものであっても、本出願人は本明細書に記載の構成の一部を補正または分割出願にて特許請求の範囲とする意思を有する。またこれら独立の課題を組み合わせた課題も開示されている。
(1)車両からスマートキーに送信するリクエスト信号に対する前記スマートキーからのレスポンス信号に基づいて前記車両のアンロック及びエンジン始動の少なくとも一方の動作であるスマート動作を行う機能を備えた車両システムに対して後付けされるシステムであって、前記車両システムにおける前記スマート動作を禁止させる機能、及び前記スマート動作の一部が実行されたときに報知する機能の少なくとも一方を備えた後付け手段を有するシステムとするとよい。
車両システムに対してスマート動作を禁止させることにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。また、スマート動作の一部が実行されたときに報知することにより、運転者等の車両の利用者が、不審なスマート動作が行われたことに気付くことができる。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。
後付け手段は、例えば以下の3種類のいずれかの構成で実現することが可能である。第1の構成は、車両に搭載される車載装置と車両の利用者によって携帯される機器との両方で構成される。第2の構成は、車載装置を含み、車両の利用者によって携帯される機器を必要としない。第3の構成は、車両の利用者によって携帯される機器を含み、車載装置を必要としない。第1~第3の構成の例については後述する。
スマートキーは、車両からのリクエスト信号を受信すると、スマートキーが正規のものであることを示す識別情報をレスポンス信号に含めて車両に送信するとよい。リクエスト信号中に車両固有のIDコードを含め、スマートキーが、受信したリクエスト信号中のIDコードをスマートキーに固有のIDコードに基づいて変換し、変換されたコードをレスポンス信号に含めて車両に送信するようにすると特によい。このようにすると、車両盗難の危険性を、より低減させることができる。
スマート動作を禁止させる機能、またはスマート動作の一部が実行されたときに報知する機能は、例えば、所定のスマート動作禁止条件が成立しているときに実行するとよい。「スマート動作禁止条件」は、車両が盗難にあう危険性が高い状況が発生した時、車両の利用者がスマート動作を禁止する操作を行ったとき等に成立するようにするとよい。車両が盗難にあう危険性が高い状況として、例えば、車両の利用者が車両から一定の距離だけ離れた状況とするとよい。この場合には、車両の利用者が、車両から一定の距離以内に近づくと、スマート動作の禁止を解除するようにするとよい。例えば、「一定の距離」として、電波の強度がある値まで減衰する距離を採用するとよい。この場合には、車両と、車両の利用者が携帯するリモート装置との少なくとも一方が電波を放射する機能を持ち、他方がその電波を受信する機能を持つようにするとよい。また、「一定の距離」を、車両と車両の利用者との間の直線距離に基づいて特定してもよい。この直線距離は、車両の利用者が携帯するリモート装置と車両に搭載される車載装置とにGPS機能を持たせることにより測定することができる。車両の利用者がスマート動作を禁止させる操作を行うことによってスマート動作が禁止された場合には、車両の利用者がスマートキーを操作して車両のドアをアンロックしたときに、スマート動作の禁止を解除するようにするとよい。
「スマート動作を禁止させる機能」は、例えば、後付け手段が、車両のドアをアンロックする操作が行われたことを検出した時に、車両システムに対してアンロックさせないようにする機能とするとよい。または、常時、後付け手段が車両システムをスマート動作禁止状態に設定しておき、ドアをアンロックする操作が行われたときにスマート動作禁止状態を解除しない機能とするとよい。
車両システムをスマート動作禁止状態に設定する手法として、CAN等の車載ネットワーク及びOBDコネクタ等のコネクタを介して、車両システムにおけるスマート動作の有効無効状態を無効に設定するとよい。スマート動作の制御を行う装置(例えば照合ECU)への電源供給を遮断してもよい。ドアスイッチ、フットブレーキスイッチ、プッシュスタートスイッチ等の信号ラインをショートまたはオープンにしてもよい。
スマートエントリーシステムに関しては、自動車メーカによって種々の呼び方がある。例えば、スマートエントリー&スタートシステム、インテリジェントキーシステム、Hondaスマートキー・スマートカードキーシステム、キーレススタートシステム、キーレスアクセス&プッシュスタート、キーレスオペレーションシステム、キーフリーシステム、アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム、パッシブエントリー&スタートシステム、スマートエントリー&スタートシステム、アドバンストキーシステム、キーレスゴー&ハンズフリーアクセス、コンフォート・アクセス、パーソナル・カー・コミュニケーション&キーレスドライブ、インテリジェントアクセス&プッシュボタンスタート等の呼び方がある。一般的に、以下のような機能を提供するものがスマートエントリーシステムと呼ばれる。
スマートエントリーシステムは、車両に搭載される車載装置と、車両の利用者によって携帯される携帯機(スマートキー)とで構成される。車載装置とスマートキーとが相互に関連付けられており、車両の利用者がスマートキーを携帯して車両に近づくと、スマートキーに触れることなく車両のドアをアンロックすることができる。例えば、車両の利用者がドアノブを握ることにより車両のドアがアンロックされる。逆に、車両の利用者がスマートキーを携帯した状態で降車したときに、スマートキーに触れることなく車両のドアをロックすることができる。以下、本明細書において、車両のドアのロック及び車両のドアのアンロックを、単に「ロック」及び「アンロック」という。例えば、車両の利用者がドアノブの特定の箇所に触れることにより、ロックすることができる。さらに、車両の利用者がスマートキーを携帯して乗車すると、スマートキーに触れることなくエンジンを始動させることができる。例えば、車両の利用者がエンジン始動ボタンを操作することによりエンジンを始動させることができる。
(2)前記後付け手段は、前記車両に搭載されて使用される車載装置と、前記スマートキーと一緒に携帯されて電波を放射するリモート装置とを含み、
前記車載装置は、前記リモート装置からの電波の強度が判定レベル以下であるとき前記スマート動作を禁止させる機能を有するシステムとするとよい。
スマートエントリーシステムの車載装置とスマートキーとの間の無線信号を中継することによりリレーアタックが仕掛けられたとしても、後付け手段のリモート装置が車両から離れており、リモート装置からの電波の強度が判定レベル以下の場合には、スマート動作が禁止される。このため、リモート装置が発する電波の圏外に車両があるときは、車両がアンロックされることはなく、エンジンが始動されることもない。このため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。この後付け手段は、車両に搭載される車載装置と車両の利用者によって携帯される機器との両方で構成される第1の構成に相当する。
後付け手段の車載装置は、スマートキーからの電波を受信する電波受信部、及び電波の強度を判定する判定部を有するとよい。スマート動作を禁止させるには、例えば、後付け手段の車載装置を車両システムに接続し、車載装置から車両のスマート動作を制御している車両制御ユニット(以下、照合ECUという。)に対してスマート動作を禁止させる信号を送出するようにするとよい。後付け手段の車載装置は、例えばCAN等の車内ネットワークに接続するとよい。車内ネットワークへの接続は、OBDコネクタ等のコネクタを介して行うとよい。スマート動作が禁止されると、照合ECUは、スマート動作が許容されるまでスマート動作の禁止状態を継続するとよい。この車載装置の機能をOBDアダプタに組み込み、DIPスイッチ等でこれらの機能の有効無効を設定できるようにしてもよい。
後付け手段の車載装置は、リモート装置からの電波の強度があるレベルより大きくなると、スマート動作を許容させるようにするとよい。これにより、スマートキーと、後付け手段のリモート装置とを携帯している本来の車両の利用者が車両に近づいて、スマートエントリーシステムの機能を利用することができる。
後付け手段の車載装置とリモート装置とが送受する電波を中継され難くするために、後付け手段の車載装置とリモート装置との間の通信に用いる電波として、スマートエントリーシステムで用いられる電波の周波数帯とは異なる周波数帯のものを用いるとよい。
リモート装置として、ブルートゥースやWiFi等の近距離無線通信機能を備えたスマートフォン等の携帯端末を利用するとよい。この場合には、後付け手段の車載装置と、携帯端末とを関連付けておき、例えば関連付けられた携帯端末からのブルートゥースやWiFi等の電波の強度が判定レベル以下であるか否かを判定するとよい。例えば、ブルートゥースやWiFi等での通信が不可能な場合に、電波の強度が判定レベル以下であると判定するようにしてもよい。この場合、車両をロックした場所の位置情報を携帯端末に記憶しておき、車両をロックした場所の近くまで戻ってきたら、例えば携帯端末の現在位置からロックした場所までの距離が所定の距離以下となったら、通信の可不可の検出を開始するようにするとよい。これにより、無駄な通信によるバッテリの消費を抑制(バッテリセービング)することができる。
リモート装置から車載装置に対して、IDを含む信号を定期的に無線送信するようにするとよい。この信号の電界強度に基づいて、車載装置がリモート装置の接近離反を検知するようにするとよい。
(3)前記後付け手段は、
前記車両の現在位置情報を取得する機能と、
前記車両と関連付けられて前記スマートキーと一緒に携帯されて現在位置情報を送信する携帯端末から、前記携帯端末の現在位置情報を受け取る機能と、
前記車両の現在位置と前記携帯端末の現在位置との関係に基づいて、前記スマート動作を禁止させる機能と
を有するシステムとするとよい。
例えば、車両の現在位置と携帯端末の現在位置との関係に基づいて、車両の利用者が車両から所定の距離以上離れているか否かを判定するとよい。車両の利用者が車両から所定距離以上離れているときにスマート動作を禁止させるとよい。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低下する。この後付け手段は、車両に搭載される車載装置と車両の利用者によって携帯される機器との両方で構成される第1の構成に相当する。
車両の現在位置を取得する機能、車両の利用者の携帯する携帯端末の現在位置情報を受け取る機能は、車両に搭載した車載装置で実現するとよい。車両の利用者の携帯する携帯端末として、専用のアプリケーションソフトウェアをインストールした一般的なスマートフォン等を利用するとよい。また、車両の利用者の携帯する携帯端末として、専用の端末を準備してもよい。
スマート動作が禁止された状態で、車両の現在位置から携帯端末の現在位置までの距離が判定値未満になると、スマート動作を許容するようにするとよい。これにより、車両の利用者は、スマート動作によるアンロックを行うことができるようになる。
車両及び携帯端末は、GPS機能を利用して現在位置を取得するようにするとよい。GPS電波が届かないため前記車両の現在位置から前記携帯端末の現在位置までの距離を算出できない場合には、スマート動作を禁止させるようにするとよい。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。この場合、車両の利用者は、スマートキーを操作して車両をアンロックすることができる。スマートキーの操作によって車両がアンロックされた後は、スマート動作を許容するようにするとよい。スマート動作を許容した後は、スマート動作によるエンジン始動が可能になる。
(4)前記後付け手段は、
利用者が前記スマートキーを操作することによって前記車両をロックする操作であるリモコンロック操作を検知する機能と、
前記リモコンロック操作を検知すると、前記スマート動作を禁止させる機能と
を有するシステムとするとよい。
利用者がリモコンロック操作を行って車両をロックした場合には、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低下する。この後付け手段は、車載装置を含み、リモート装置を必要としない第2の構成に相当する。車両の利用者は、車両純正のスマートキー以外の機器を携帯する必要がない。
リモコンロック操作により車両をロックした場合には、スマート操作によるアンロックを行うことができない。この場合、利用者は、スマートキーを操作することによって車両をアンロックすることができる。スマートキーを操作することによって車両がアンロックされた後は、スマート動作を許容するようにするとよい。これにより、利用者は、スマート操作によるエンジン始動を行うことが可能になる。
リレーアタックが仕掛けられる可能性が低い場合、例えば自宅の駐車場に駐車している場合には、リモコンロック操作を行わず、スマート動作によるロックを行うようにするとよい。このようにすると、例えば自宅の駐車場に駐車している車両を、スマート動作によってアンロックすることができる。リレーアタックが仕掛けられる可能性が高い場合、例えばショッピングセンターの駐車場に駐車している場合には、リモコンロック操作によってロックするとよい。このようにすると、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。
(5)前記後付け手段は、
利用者が前記車両の降車時に規定の操作を行ったことを検知する機能と、
前記規定の操作及びスマート動作によるロックの操作の検知結果に基づいて、前記スマート動作を禁止させる機能と
を有するシステムとするとよい。
利用者が明示的に規定の操作を行うことにより、スマート動作を禁止させてリレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。この後付け手段は、車載装置を含み、リモート装置を必要としない第2の構成に相当する。車両の利用者は、車両純正のスマートキー以外の機器を携帯する必要がない。
規定の操作として、例えば車両に対する操作とするとよい。車両に対する操作として、例えば車両に後付けで取り付けられた操作ボタン、操作レバー、操作スイッチ等の操作、通常の降車時には行わないような操作とするとよい。例えば、車両に対する2つ以上の操作を組み合わせた操作とするとよい。2つ以上の操作を組み合わせた操作として、例えば、ドアを開けた状態でブレーキペダルを踏む操作等とするとよい。ドアを開けた状態でブレーキペダルが踏まれたか否かを検出するための基礎情報は、例えば後付け手段の車載装置がCAN等の車載ネットワーク及びOBDコネクタを介して車両から入手するとよい。
規定の操作とともにスマート動作による車両のロックを行った場合には、スマート操作によるアンロックを行うことができなくなる。この場合、利用者は、スマートキーを操作することによって車両をアンロックすることができる。スマートキーを操作することによって車両がアンロックされた後は、スマート動作を許容するようにするとよい。これにより、利用者は、スマート操作によるエンジン始動を行うことが可能になる。
利用者が規定の操作を行ったときにスマート動作を禁止させる処理とは反対に、利用者が規定の操作を行わなかったときにスマート動作を禁止させ、規定の操作を行ったときにスマート動作を許容させるようにしてもよい。
(6)前記後付け手段は、前記車両をロックした時点から規定の時間が経過するまでは、前記スマート動作を禁止させる機能を有するシステムとするとよい。
リレーアタックによる車両の窃盗犯は、車両から降車した利用者の後を付けて、利用者が車両から離れた時点でリレーアタックを仕掛ける傾向が強い。このため、利用者が降車して長時間が経過した後は、リレーアタックによる車両盗難の危険性は低下する。車両をロックした時点から規定の時間が経過するまでスマート動作を禁止させることにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。この後付け手段は、車載装置を含み、リモート装置を必要としない第2の構成に相当する。車両の利用者は、車両純正のスマートキー以外の機器を携帯する必要がない。また、車両の利用者は、スマート動作を禁止するための特別の操作を行う必要もない。
後付けの車載装置は、車両がロックされた情報を、CAN等の車載ネットワーク及びOBDコネクタ等のコネクタを介して取得し、直ちに照合ECUに対してスマート動作を禁止させる信号を送出するとよい。この車載装置はクロックを有しており、車両のロックから規定の時間が経過すると、照合ECUに対してスマート動作を許容させる信号を送信するようにするとよい。
後付け手段は、車両をロックした時点から規定の時間が経過するまでに、利用者によるスマートキーの操作によるアンロック信号を受信すると、車両をアンロックする機能を持つとよい。そうすると、車両のロックから規定の時間が経過するまでの間に利用者が車両に乗り込む場合には、利用者はスマートキーを操作することにより車両をアンロックすることができる。
(7)前記後付け手段は、
生体認証によって前記車両の利用者を登録する機能と、
生体認証によって前記車両の周囲の人物を識別し、登録された利用者が前記車両の周囲に存在すると判定できないとき、前記スマート動作を禁止させる機能と
を有するシステムとするとよい。
登録された利用者が車両の周囲に発見できないときスマート動作が禁止されるため、利用者が車両から離れている状況下においてリレーアタックによる車両盗難の危険性が低下する。利用者が車両に近づいて、生体認証によって利用者の存在が確認されると、利用者はスマート動作によるアンロックを行うことが可能になる。この後付け手段は、車載装置を含み、リモート装置を必要としない第2の構成に相当する。車両の利用者は、車両純正のスマートキー以外の機器を携帯する必要がない。また、車両の利用者は、スマート動作を禁止するための特別の操作を行う必要もない。
登録された利用者を発見する処理は、例えば、スマート動作によるアンロックの操作が行われたときに実行するとよい。例えば、常時、スマート動作禁止状態にしておき、登録された利用者を発見したらスマート動作禁止状態を解除するようにするとよい。
生体認証として、顔認証、指紋認証等を利用するとよい。顔認証を利用する場合は、車内に車両の周囲を撮像するカメラを設置するとよい。指紋認証を利用する場合には、ドアノブ等に指紋認証センサを取り付けるとよい。
(8)前記後付け手段は、前記スマートキーを収納することによって前記スマートキーから放射される電波をシールドした状態で、前記車両の利用者に携帯されるキー収納手段を有し、前記キー収納手段は、前記スマートキーからの前記レスポンス信号が前記車両に届かないようにすることで前記スマート動作を禁止させる機能を実現しているシステムとするとよい。
スマートキーをキー収納手段に収納することにより、リレーアタックによる車両盗難の危険性を低下させることができる。利用者が車両をアンロックしたい場合には、スマートキーをキー収納手段から取り出せばよい。この後付け手段は、車両の利用者によって携帯される機器を含み、車載装置を必要としない第3の構成に相当する。このシステムでは、何らかの装置を後付けで車両に装着する必要がない。
キー収納手段に、車両からのリクエスト信号を受信すると警報を発出する機能を持たせるとよい。スマート動作によって車両をアンロックする際には、車両からスマートキーに対してリクエスト信号が送信される。このリクエスト信号が届く距離は1m程度と短いため、通常、利用者が車両から離れているときにキー収納手段がリクエスト信号を受信することはない。利用者が車両から離れているにも関わらず、キー収納手段がリクエスト信号を受信した場合は、リレーアタックが仕掛けられている可能性が高い。車両の利用者は、キー収納手段からの警報により、自分の車両に対してリレーアタックが仕掛けられている可能性があることに気付くことができる。これにより、車両の盗難を未然に防止することが可能になる。
キー収納手段が電波をほぼ完全にシールドする代わりに、電波の到達距離を極短い距離に制限するように電波を減衰させる構成としてもよい。窃盗犯がリレーアタックを仕掛ける場合には、利用者が携帯しているスマートキーからの電波を受信して中継するために、窃盗犯が利用者に近づかなければならない。キー収納手段が電波を減衰させると、窃盗犯は電波を受信するために利用者に不自然な距離まで近づかなければならなくなる。窃盗犯は、通常のスマートキーからの電波を受信できる距離まで近づいても電波を受信できない場合、リレーアタックによる車両の窃盗をあきらめる可能性が高い。このため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低下する。
リレーアタックに用いられる送受信機がスマートキーからの電波を受信することができる距離が、利用者が第三者と不自然な距離まで接近したと考える程度になるように、キー収納手段が電波を減衰させるとよい。例えば、スマートキーからの電波の受信可能距離が50cm程度になるように電波を減衰させるとよい。利用者は、キー収納手段にスマートキーを収納したままでも、車両の極近傍まで近づくことにより、スマート動作によるアンロックを行うことができる。
キー収納手段が電波をほぼ完全にシールドする代わりに、スマートキーから放射された電波にキー収納手段が指向性を付与するようにしてもよい。例えば、利用者は、自分の前方に指向性を有するようにキー収納手段の姿勢を固定して携帯するとよい。一般的に、窃盗犯は利用者に後ろから近づく傾向が高い。利用者が、自分の前方に指向性を有するようにキー収納手段の姿勢を固定して携帯している場合には、利用者の後方にスマートキーからの電波が放射されないため、窃盗犯は利用者に後ろから近づいても、スマートキーからの電波を受信することができない。窃盗犯は、利用者に後ろから近づいても電波を受信できない場合、リレーアタックによる車両の窃盗をあきらめる可能性が高い。このため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低下する。
利用者の前方には電波が放射されるため、利用者は、キー収納手段にスマートキーを収納したままでも、車両の方を向いてスマート動作によるアンロックを行うことができる。
(9)前記後付け手段は、前記スマート動作によって前記車両をアンロックする操作の態様が異常であるか否かを判定し、異常であると判定した場合に前記スマート動作を禁止させる機能を有するシステムとするとよい。
窃盗犯は、通常のアンロックの操作とは異なる態様で車両に対してスマート動作によるアンロックの操作を行う場合が多い。車両をアンロックする操作の態様が異常な操作は、利用者がドアを開けるときに行う通常の操作とは異なる操作とするとよい。例えば、通常は、車両をアンロックするためにドアノブを1回握ればよいが、窃盗犯は、ドアノブを握る操作を短時間に複数回繰り返す傾向が高い。アンロックのための操作の態様が異常である場合にスマート動作を禁止させることにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。この後付け手段は、車載装置を含み、リモート装置を必要としない第2の構成に相当する。車両の利用者は、車両純正のスマートキー以外の機器を携帯する必要がない。
例えば、アンロックの操作を行った後、ドアが開くことなく再度アンロックの操作が複数回繰り返された場合、アンロックする操作の態様が異常であると判定するとよい。アンロックの操作は、車両に搭載されたスマートエントリーシステムの仕様に依存する。例えばドアノブを握る操作がアンロックの操作とされる。
(10)前記後付け手段は、前記スマートキーと一緒に携帯され、前記スマートキーからの前記レスポンス信号を検出すると警報を発出するキー付随装置を含むシステムとするとよい。
スマートキーを携帯している利用者が車両に近づくと、車両からのリクエスト信号に対してスマートキーからレスポンス信号が送信される。利用者が車両に近付いていないにもかかわらず警報が発出される場合には、リレーアタックが仕掛けられて、車両からスマートキーまでリクエスト信号の電波が中継されていると考えることができる。利用者は、キー付随装置が発する警報により、自分の車両にリレーアタックが仕掛けられている可能性が高いことに気付くことができる。これにより、車両の盗難を未然に防止することが可能になる。この後付け手段は、車両の利用者によって携帯される機器を含み、車載装置を必要としない第3の構成に相当する。
キー付随装置が発出する警報として、音、光等を用いるとよい。キー付随装置は、ポケットやカバンの中に収めされて携帯される場合が多いため、警報音を発出するようにすることが好ましい。スマートキーの中には、発光機能を有する素子(LED等)が取り付けられており、レスポンス信号を送信するときに発光素子を点灯または点滅させるものがある。このようなスマートキーに対応するキー付随装置は、スマートキーからの発光を検知して警報音を発出するようにするとよい。
(11)前記後付け手段は、
前記車両の車内及び周囲の少なくとも一方の画像を撮像する撮像手段と、
前記車両がロックされた時点またはスマート動作によるアンロックの操作を検出した時点から、前記撮像手段によって取得された画像データを記憶手段に格納または外部のサーバにアップロードする処理手段と
を有する請求項1~10のいずれか1項に記載のシステムとするとよい。
リレーアタックによる車両の窃盗犯は、車両から降りた運転者の後をつけて、車両が見えなくなったときに犯行に及ぶ傾向が強く、運転者のあとを長時間つけ回すようなことはしない。このため、車両がロックされてからある一定の期間内にリレーアタックによる盗難が発生する確率が高い。また、リレーアタックによる車両の窃盗が行われるときには、スマート動作によるアンロックの操作が検出される。車両がロックされた時点またはアンロックの操作を検出した時点から、撮像手段によって画像を取得すると、画像に窃盗犯が写り込んでいる可能性が高い。このため、記憶手段に格納された画像データ、またはサーバにアップロードされた画像データは、窃盗犯を特定するための重要な証拠になり得る。
車両がロックされた時点から所定時間が経過すると、リレーアタックによる盗難の危険性が低下するため、車両がロックされた時点から所定時間が経過した時点で、撮像手段による撮像を停止させるとよい。画像データを継続して常時取得する場合と比べて、バッテリの消費量を低減させることができる。この後付け手段は、車載装置を含み、リモート装置を必要としない第2の構成に相当する。
(12)前記車両は、前記スマート動作が禁止されたスマート動作禁止状態か、スマート動作が許容されたスマート動作許容状態かのいずれかの状態に設定される照合ECUを含み、
前記後付け手段は、前記照合ECUを前記スマート動作禁止状態に設定する請求項1~11のいずれか1項に記載のシステムとするとよい。
後付け手段が照合ECUをスマート動作禁止状態に設定することにより、スマート動作によるアンロック及びスマート動作によるエンジンの始動ができない状態にすることができる。照合ECUの状態がスマート動作禁止状態であるとき、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低くなる。
照合ECUは、スマート動作禁止状態のとき、車両からスマートキーに対するリクエスト信号を送信しないようにするとよい。リクエスト信号が送信されないと、スマートキーからレスポンス信号が返信されることもないため、スマート動作によるアンロックが行われることはない。
(13)前記車両は、前記リクエスト信号を無線送信するアンテナを有し、
前記後付け手段は、
前記アンテナの給電線の導通、非導通状態を切り替えるスイッチ手段と、
前記スイッチ手段を制御して前記給電線を非導通状態にすることにより、前記スマート動作を禁止させる処理手段と
を有するシステムとするとよい。
アンテナの給電線を非導通状態にすると、車両からリクエスト信号の電波が放射されなくなる。その結果、スマート動作が行われなくなり、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低くなる。後付け手段が照合ECUの状態を変化させることなく、スマート動作が禁止された状態にすることができる。スイッチ手段として、機械的に導通非導通を切り替えるリレー、または電気的に導通非導通を切り替える半導体スイッチング素子を用いるとよい。
(14)前記後付け手段は、スマート動作によって前記車両をアンロックする操作を検知するセンサを非稼働状態にすることにより、またはセンサからの検出結果の伝達を遮断することにより、前記スマート動作を禁止させるシステムとするとよい。
センサが非稼働状態になると、またはセンサからの検出結果の伝達が遮断されると、スマート動作によるアンロックができなくなる。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低くなる。このセンサは、例えばドアノブを握ったことを検知するものとするとよい。この場合、利用者がドアノブを握っても車両がアンロックされなくなる。
(15)前記後付け手段は、前記リクエスト信号の送信及び前記レスポンス信号の受信の制御を行う照合ECUへの電源供給を遮断することにより、前記スマート動作を禁止させるシステムとするとよい。
後付け手段は、所定のスマート動作禁止条件が成立した時に、照合ECUへの電源供給を遮断するようにするとよい。照合ECUへの電源供給を遮断することにより、スマート動作によるアンロック、及びスマート動作によるエンジンの始動ができなくなる。スマート動作禁止条件が成立しなくなると、照合ECUへの電源供給を再開するとよい。車両のバッテリと照合ECUとを専用アダプタを介して接続し、専用アダプタを制御することにより、照合ECUへの電源供給の遮断及び再開を行うようにするとよい。
(16)前記後付け手段は、前記スマートキーと一緒に携帯されるリモート装置を含み、前記リモート装置は、前記リクエスト信号の周波数帯の電波を検知すると前記リクエスト信号及び前記レスポンス信号の少なくとも一方の周波数帯の妨害電波を放射する機能を有するシステムとするとよい。
妨害電波が放射されることにより、スマートキーが窃盗犯の持つ中継器で中継されたリクエスト信号を検出できなくなるか、または窃盗犯の持つ中継器がスマートキーからのレスポンス信号を妨害電波とともに中継するため、車両がレスポンス信号を検出できなくなる。これにより、窃盗犯は、リレーアタックによって車両をアンロックすることができなくなる。
車両の利用者が車両に乗り込むときには、リモコンアンロック操作を行うことにより車両をアンロックすることができる。リモート装置に、妨害電波の放射機能を無効にさせるスイッチまたはボタンを設けるとよい。車両の利用者は、スイッチまたはボタンを操作して妨害電波の放射機能を無効にさせることにより、スマート動作によるアンロックの操作を行って車両をアンロックすることができる。この後付け手段は、車両の利用者によって携帯される機器を含み、車載装置を必要としない第3の構成に相当する。
リモート装置が放射する妨害電波の周波数がリクエスト信号の周波数帯である場合、スマートキーがリクエスト信号に含まれるデータをデコードできなくなる程度の時間、妨害電波を放射するとよい。例えば、妨害電波の放射の停止は、一般的なスマートエントリーシステムにおけるリクエスト信号の立ち下がり時点以降とするとよい。なお、リクエスト信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間のうち、リクエスト信号に含まれる一部のデータのデコードが不能になる程度の時間だけ妨害電波を放射してもよい。妨害電波の強度は、リモート装置と一緒に携帯されているスマートキーがリクエスト信号を検出できなくなる程度まで大きくするとよい。また、当該車両の利用者の周囲にいる第三者のスマートキーに対しては悪影響を及ぼさない程度まで小さくするとよい。
リモート装置が放射する妨害電波の周波数がレスポンス信号の周波数帯である場合、車両がスマートキーからのレスポンス信号に含まれるデータをデコードできなくなる程度の時間、妨害電波を放射するとよい。例えば、妨害電波の放射の停止は、一般的なスマートエントリーシステムにおけるレスポンス信号の立ち下がり時点以降とするとよい。なお、レスポンス信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間のうち、レスポンス信号に含まれる一部のデータのデコードが不能になる程度の時間だけ妨害電波を放射してもよい。妨害電波の強度は、車両がレスポンス信号を検出できなくなる程度まで大きくするとよい。
(17)前記リモート装置は、前記車両から前記リモート装置までの距離に依存する物理量を取得し、前記距離に依存する物理量と所定レベルとを比較し、前記車両から前記リモート装置までの距離が前記所定レベルに対応する距離以下であると判定した場合、前記妨害電波の放射を行わない機能をさらに有するシステムとするとよい。
利用者が自分の車両に、所定レベルに対応する距離以下の距離まで使づいて、スマート動作によるアンロックの操作を行うことにより、車両をアンロックすることができる。
車両からリモート装置までの距離に依存する物理量として、車両に搭載された車載装置からリモート装置に定期的に送信する信号の電波の電波強度を用いるとよい。この信号には、車両を識別する車両IDを含め、リモート装置を車両と関連付けておくとよい。リモート装置は、関連付けられた車両の車両IDを含む信号の電波のRSSI値を、車両からリモート装置までの距離に依存する物理量として利用するとよい。このような電波として、特定小電力無線の規格を満足する電波を用いるとよい。また、ブルートゥースローエナジー(BLE)規格に沿う電波を用いてもよい。
上述した(1)から(17)に示した発明は、任意に組み合わせることができる。例えば、(1)に示した発明の全てまたは一部の構成に、(2)以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、(1)に示した発明に、(2)以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、(1)から(17)に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。また「~の場合」「~のとき」という記載があったとしてもその場合やそのときに限られる構成として記載しているものではない。これらの場合やときでない構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。また順番を伴った記載になっている箇所もこの順番に限らない。一部の箇所を削除したり、順番を入れ替えたりした構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。
既にスマートエントリーシステム等が搭載された車両等において、リレーアタックによる盗難等の危険性を低下させることが可能になる。
本願の発明の効果はこれに限定されず、本明細書および図面等に開示される構成の部分から奏する効果についても開示されており、当該効果を奏する構成についても分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。例えば本明細書において「~できる」と記載した箇所などは奏する効果を明示する記載であり、また「~できる」と記載がなくとも効果を示す部分が存在する。またこのような記載がなくとも当該構成によって把握される効果が存在する。
[第1実施例]
図1A~図2Bを参照して、第1実施例によるシステムについて説明する。
図1A及び図1Bは、第1実施例によるシステムが適用される車両システムの概略図である。第1実施例によるシステムが提供される車両システムは、車両100及びスマートキー102を含む。車両100にスマートエントリーシステムの車載装置101が搭載されている。車載装置101とスマートキー102とが、いわゆるスマートエントリーシステムを構成する。スマートキー102は、車両100の運転者等の利用者によって携帯される。
スマートエントリーシステムに関しては、自動車メーカによって種々の呼び方がある。例えば、スマートエントリー&スタートシステム、インテリジェントキーシステム、Hondaスマートキー・スマートカードキーシステム、キーレススタートシステム、キーレスアクセス&プッシュスタート、キーレスオペレーションシステム、キーフリーシステム、アドバンストキーレスエントリー&スタートシステム、パッシブエントリー&スタートシステム、スマートエントリー&スタートシステム、アドバンストキーシステム、キーレスゴー&ハンズフリーアクセス、コンフォート・アクセス、パーソナル・カー・コミュニケーション&キーレスドライブ、インテリジェントアクセス&プッシュボタンスタート等の呼び方がある。一般的に、以下のような機能を提供するものがスマートエントリーシステムと呼ばれる。
車載装置101とスマートキー102とが相互に関連付けられており、車両100の利用者がスマートキー102を携帯して車両に近づくと、スマートキー102に触れることなく車両100のドアノブを握ることによりドアをアンロックすることができる。逆に、車両100の利用者がスマートキー102を携帯した状態で降車したときに、スマートキー102に触れることなく車両100のドアノブのロック用の特定の箇所に触れることにより、ドアをロックすることができる。さらに、車両100の利用者がスマートキー102を携帯して乗車すると、スマートキー102に触れることなくエンジン始動ボタンを操作することにより、エンジンを始動させることができる。このようなロック、アンロック、エンジンの始動をスマート動作ということとする。また、このようなロックの操作及びアンロックの操作を、それぞれ「スマートロック操作」及び「スマートアンロック操作」ということとする。
第1実施例によるシステムは、利用者によってスマートキー102と一緒に携帯されるリモート装置22、及び車両100に搭載される車載装置21とを含む。リモート装置22から定期的に電波が放射され、車載装置21がリモート装置22からの電波を受信する。リモート装置22からの電波強度が所定の閾値を超えている場合(車載装置21がリモート装置22の圏内にある場合(図1A))、車載装置21は車両システムのスマート動作を許容する。リモート装置22からの電波強度が所定の閾値未満である場合(車載装置21がリモート装置22の圏外にある場合(図1B))、車載装置21は車両システムのスマート動作を禁止する。本明細書において、車載装置21がリモート装置22の圏内または圏外にある状況を、車両100を基準にして、リモート装置22が圏内または圏外にあるという場合がある。
「所定の閾値」を大きく過ぎると、利用者がスマートアンロック操作を行うために、リモート装置22を車両100に過度に近づけなければならなくなる。「所定の閾値」を小さくし過ぎると、リモート装置22を携帯する利用者が車両100から遠く離れた状況でも、スマートアンロック操作によって車両100がアンロックされてしまう。「所定の閾値」は、利用者が通常のスマートアンロック操作を行うときに不便にならない程度まで小さくし、利用者が車両100の盗難に気付かないような距離だけ車両100から離れた場合には、スマート動作が禁止されるように設定される。
図2Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第1実施例によるシステム20のブロック図である。第1実施例によるシステム20は、車載装置21及びリモート装置22を含む。車両システム110は車両100とスマートキー102とを含み、第1実施例によるシステム20が車両システム110に後付けされる。車両100は、CAN107に接続された照合ECU103、受信機104、送信機105、及びOBDコネクタ106を含む。
照合ECU103は、スマートキー102が車両の近傍に存在するか否かを監視し、スマートキー102が車両100の近傍に存在すると判定した場合には車両100の状態をスマート動作許容状態に設定し、スマートキー102が車両100の近傍に存在しないと判定した場合には車両100の状態をスマート動作禁止状態に設定する。車両100の状態がスマート動作許容状態のとき、スマートロック操作、スマートアンロック操作、エンジン始動の操作が行われると、車両のロック、アンロック、エンジンの始動を実行する指令を、CAN107を介してこれらの制御を行う各ECUに送信する。車両100の状態がスマート動作禁止状態のとき、スマートロック操作、スマートアンロック操作、及びエンジン始動の操作が行われても、車両のロック、アンロック、エンジンの始動の動作を実行する指令を送信しない。
送信機105は、送信アンテナ108からスマートキー102にリクエスト信号を無線送信する。リクエスト信号の周波数は、例えばLF帯(例えば124kHz、134kHz等)であり、到達距離は約1mである。スマートキー102は、リクエスト信号を受信すると車両100に対してレスポンス信号を無線送信する。レスポンス信号の周波数は、例えばUHF帯(例えば312MHz~315MHz)である。照合ECU103は、車両100側のIDコードとスマートキー102側のIDコードとを電子的に照合し、両者が照合すれば車両100のロック、アンロック、及びエンジン始動等のスマート動作を可能にする。
後付けされるシステム20の車載装置21がOBDコネクタ106を介してCAN107に接続されている。車載装置21は、CAN107を流れる信号の取得、CANを介した照合ECU103との通信等を行う機能を有する。リモート装置22が定期的に確認信号を無線送信する。車載装置21は、確認信号の電波強度に応じて、リモート装置22が車両100を基準にして圏外にあるか圏内にあるかを判定する。判定結果に基づいて、照合ECU103に対してスマート動作禁止指令信号またはスマート動作許容指令信号を送信する。
図2Bは、車両システム110(図2A)及び後付けされるシステム20(図2A)の動作を説明するための状態遷移図である。車両システム110のイグニッションスイッチがオフにされると、照合ECU103は、車両100の状態をスマート動作許容状態に設定する。この状態は、照合ECU103が記憶する。車両100を基準にして、リモート装置22が圏内から圏外に移動すると、車載装置21が照合ECU103に対してスマート動作禁止信号を送信する。照合ECU103は、スマート動作禁止信号を受信すると、車両100をスマート動作禁止状態に設定する。
リモート装置22が圏外から圏内に移動すると、車載装置21が照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信する。照合ECU103は、スマート動作許容信号を受信すると、車両100をスマート動作許容状態に設定する。
次に、第1実施例によるシステムの持つ優れた効果について説明する。第1実施例によるシステム20を利用しない場合、リレーアタックが仕掛けられると、スマートキー102を携帯する利用者が車両100の圏外まで遠ざかっていても、リクエスト信号及びレスポンス信号が中継されてスマート動作によるアンロックが許容されてしまう。
第1実施例によるシステム20を利用する場合には、リモート装置22が車両100を基準として圏外にあるとき、車両100がスマート動作禁止状態に設定されている。このため、車両100とスマートキー102との間の通信を中継するリレーアタックが仕掛けられても、スマート動作による車両100のアンロックを行うことができない。また、窃盗犯が車内に侵入したとしても、スマート動作が禁止されているため、スマート動作によるエンジンの始動を行うことができない。これにより、リレーアタックによる車両100の盗難の危険性を低下させることができる。
リモート装置22を携帯する利用者が車両100に近づくと、照合ECU103が車両100の状態をスマート動作許容状態に設定するため、利用者は、通常のスマート動作によるアンロック、及びエンジンの始動を行うことができる。
次に、従来のオートキーレスシステム(ユピテル製)と呼ばれるシステムと比較したときの優れた効果について説明する。オートキーレスシステムは、スマートエントリーシステムが搭載されておらず、旧式のリモコンキーを用いてロック及びアンロックを行う車両に後付けされて使用される。オートキーレスシステムは、車載装置と、利用者が携帯するリモコン装置とで構成される。リモコン装置を携帯する利用者が車両に近づくと、車載装置がリモコン装置の接近を検知し、車両をアンロックする。リモコン装置が車両から遠ざかると、車載装置が車両をロックする。このため、利用者は、純正のリモコンキーを操作することなく、車両のロック、アンロックを行うことができる。
このようなオートキーレスシステムにおいては、リモコン装置が車両に接近したか否かを判定する閾値近辺でロックとアンロックとが繰り返される場合があった。第1実施例によるシステムを利用する場合には、車両のロック及びアンロックは、スマートロック操作及びスマートアンロック操作によって行われる。例えば、利用者がドアノブのロック用の所定の箇所に触れる操作、及びドアノブを握る操作によって車両のロック及びアンロックが行われる。このため、不要なロックとアンロックとが繰り返されることはない。
[第1実施例の変形例]
次に、第1実施例の変形例について説明する。第1実施例では、リモート装置22が定期的に確認信号を送信していたが、車両100を基準としてリモート装置22が明らかに圏外に位置する場合には、確認信号の定期的な送信を停止するとよい。これにより、バッテリの消耗を低減させることができる。この機能を実現させるために、リモート装置22にGPS機能を持たせるとよい。例えば、車両100をロックした時点の現在位置をリモート装置22が記憶し、車両をロックした位置からリモート装置22の現在位置までの距離が所定の判定閾値より長い場合、確認信号の定期的な送信を停止するとよい。「所定の判定閾値」として、利用者が通常のスマートロック操作、スマートアンロック操作を行う可能性が無い程度車両100から遠く離れているときの車両100から利用者までの距離とするとよい。
車載装置21が、リモート装置22の圏内圏外を判定する電波強度の閾値を調整する機能を持つとよい。これにより、スマート動作が可能となるエリアの大きさを変更することができる。
第1実施例によるシステム20の車載装置21の機能をOBDアダプタに組み込み、DIPスイッチ等の機械的スイッチでこれらの機能をオンオフできるようにするとよい。
リモート装置22として、WiFi、ブルートゥース等の近距離無線通信機能を持つ一般的なスマートフォン、タブレット端末等を利用するとよい。これらの端末に専用のアプリをインストールすることにより、これらの汎用端末を第1実施例によるシステム20のリモート装置22として動作させることが可能である。車載装置21は、端末からのブルートゥースやWiFi等の電波の強度が判定レベル以下であるか否かを判定するとよい。例えば、ブルートゥースやWiFi等での通信が不可能な場合に、電波の強度が判定レベル以下であると判定するようにしてもよい。この場合、車両をロックした場所の位置情報を端末に記憶しておき、車両をロックした場所の近くまで戻ってきたら、例えば端末の現在位置からロックした場所までの距離が所定の距離以下となったら、通信の可不可の検出を開始するようにするとよい。これにより、無駄な通信によるバッテリの消費を抑制(バッテリセービング)することができる。
車載装置21とリモート装置22とが送受する電波を中継され難くするために、車載装置21とリモート装置22との間の通信に用いる電波として、スマートエントリーシステムで用いられる電波の周波数帯とは異なる周波数帯のものを用いるとよい。
リモート装置22から車載装置21に対して、IDを含む信号を定期的に無線送信するようにするとよい。車載装置21は、このIDを含む信号の電波強度に基づいて、車載装置21がリモート装置22の接近離反を検知するようにするとよい。
[第2実施例]
次に、図3を参照して、第2実施例によるシステムについて説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。
図3は、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第2実施例によるシステム20のブロック図である。第2実施例によるシステム20の車載装置21及びリモート装置22には、それぞれGPS受信機が搭載されている。第1実施例では、リモート装置22から送信された確認信号の電波強度に基づいて、車載装置21がスマート動作を禁止させるか否かを判定した。第2実施例では、リモート装置22が、リモート装置22の現在位置を示す情報を含む確認信号を送信する。車載装置21は、車載装置21の現在位置とリモート装置22の現在位置とに基づいて、車載装置21が、スマート動作を禁止させるか否かを判定する。例えば、車載装置21からリモート装置22までの距離が判定閾値より長いとき、車載装置21がスマート動作を禁止させる処理を行う。
次に、第2実施例によるシステムの持つ優れた効果について説明する。第2実施例においても、第1実施例と同様に、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。また、第2実施例では、車両100からリモート装置22までの距離が判定閾値より遠い場合、リモート装置22から車載装置21に送信される確認信号が窃盗犯によって中継されても、リモート装置22の現在位置の情報が書き換えられない限り、スマート動作が許容されることはない。このため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を、より低下させることができる。
[第2実施例の変形例]
第2実施例によるシステム20のリモート装置22として、専用のアプリをインストールした一般的なスマートフォン、タブレット端末等を用いるとよい。車載装置21及びリモート装置22の少なくとも一方にGPS電波が届かないことにより、現在位置を特定できない場合には、車載装置21がスマート動作を禁止させるようにするとよい。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。このとき、車両100の利用者がスマートキー102のアンロックボタンを操作と、車両100をアンロックできるようにするとよい。
[第3実施例]
次に、図4A及び図4Bを参照して、第3実施例によるシステム20について説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。
図4Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第3実施例によるシステム20のブロック図である。スマートキー102に、ロックボタン102L及びアンロックボタン102Uが設けられている。車両100の利用者がロックボタン102Lを押す操作(リモコンロック操作)を行うと、照合ECU103がロックボタン102Lの操作が行われたことを検出し、車両100をロックする。同様に、車両100の利用者がアンロックボタン102Uを押す操作(リモコンアンロック操作)を行うと、照合ECU103がアンロックボタン102Uの操作が行われたことを検出し、車両100をアンロックする。照合ECU103は、車両100の状態がスマート操作禁止状態か許容状態かに関わらず、リモコンロック操作によるロック及びリモコンアンロック操作によるアンロックを行う。
第3実施例によるシステム20は車載装置21で構成される。第3実施例においては、第1実施例によるシステム20のリモート装置22に相当する機器は不要である。
図4Bは、車両システム110及び後付けされるシステム20の動作を説明するための状態遷移図である。車両100のイグニッションスイッチがオフにされると、照合ECU103は車両100の状態をスマート動作許容状態に設定する。利用者が車両から降りてスマートロック操作、例えばスマートキー102を操作することなくドアノブのロック用の所定の箇所に触れる操作を行うと、車載装置21は、照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信する。照合ECU103は、車両100の状態をスマート動作許容状態に維持する。
利用者が車両から降りてリモコンロック操作を行うと、この操作が行われたことを示す信号がCAN107に流れる。車載装置21が、CAN107及びOBDコネクタ106を介して、リモコンロック操作が行われたことを示す信号を検出すると、照合ECU103に対してスマート動作禁止信号を送信する。照合ECU103は、スマート動作禁止信号を受信すると、車両100の状態をスマート動作禁止状態に設定する。
車両100がスマート動作禁止状態のときに、スマートキー102のアンロックボタン102Uが操作されたことを照合ECU103が検出すると、照合ECU103は車両100をアンロックする。車載装置21は、CAN107及びOBDコネクタ106を介して、スマートキー102のアンロックボタン102Uが操作されたことを検出すると、照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信する。照合ECU103は、スマート動作許容信号を受信すると、車両100をスマート動作許容状態に設定する。
次に、第3実施例によるシステム20の持つ優れた効果について説明する。利用者が車両100を降りてリモコンロック操作を行うと、車載装置21が車両100をスマート動作禁止状態に設定するため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。利用者は、第1実施例のリモート装置22をスマートキー102とともに携帯する必要がない。
利用者は、リレーアタックが仕掛けられる危険性の高い駐車場、例えば不特定多数の第三者が車両100に近づく可能性のあるショッピングセンター等の駐車場に車両100を駐車する場合には、リモコンロック操作を行ってスマート動作禁止状態に設定するとよい。そうすると、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。利用者がリモコンアンロック操作を行って車両100に乗り込んだ後は、スマート動作によるエンジン始動を行うことができる。
自宅の駐車場等のように、リレーアタックが仕掛けられる可能性が低い駐車場に車両100を駐車する場合には、利用者はスマートロック操作を行うとよい。そうすると、スマートアンロック操作を行って車両100に乗り込むことができる。
[第3実施例の変形例]
第3実施例では降車時にリモートロック操作を行うことにより、車両100をスマート動作禁止状態に設定した。リモートロック操作を検知する機能に代えて、利用者が降車時に規定の操作を行ったことを検知する機能を持たせてもよい。規定の操作が行われたことを車載装置21が検知すると、スマート動作を禁止させるとよい。
規定の操作として、例えば車両に対する操作とするとよい。車両に対する操作として、例えば車両に後付けで取り付けられた操作ボタン、操作レバー、操作スイッチ等の操作、通常の降車時には行わないような操作とするとよい。例えば、車両に対する2つ以上の操作を組み合わせた操作とするとよい。2つ以上の操作を組み合わせた操作として、例えば、ドアを開けた状態でブレーキペダルを踏む操作等とするとよい。ドアを開けた状態でブレーキペダルが踏まれたか否かを検出するための基礎情報は、例えば車載装置21がCAN107及びOBDコネクタ106を介して車両100から入手するとよい。
利用者が規定の操作を行ったときにスマート動作を禁止させる処理とは反対に、利用者が規定の操作を行わなかったときにスマート動作を禁止させ、規定の操作を行ったときにスマート動作を許容させるようにしてもよい。
[第4実施例]
次に、図5を参照して第4実施例によるシステムについて説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。
図5は、車両システム110及び後付けされる第4実施例によるシステム20の動作を説明するための状態遷移図である。第4実施例によるシステム20は、図4Aに示した第3実施例によるシステム20と同様に、車載装置21を有し、利用者が携帯すべきリモート装置は必要としない。
イグニッションスイッチがオフにされると、車載装置21がCAN107及びOBDコネクタ106を介して、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出する。車載装置21は、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出すると、照合ECU103に対してスマート動作禁止信号を送信する。これにより、照合ECU103は車両100をスマート動作禁止状態に設定する。
その後車両100がロックされると、車載装置21はCAN107及びOBDコネクタ106を介して、車両100がロックされた情報を取得する。車載装置21は、車両100のロック時点からの経過時間を計測する。ロック時点から規定時間が経過すると、車載装置21は照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信する。これにより、照合ECU103は、車両100をスマート動作許容状態に設定する。
車両100がスマート動作禁止状態のときにリモコンアンロック操作が行われると、照合ECU103は車両100をアンロックする。車載装置21は、リモコンアンロック操作が行われたことを検出すると、照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信する。これにより、照合ECU103は車両100をスマート動作許容状態に設定する。
次に、第4実施例によるシステム20が持つ優れた効果について説明する。第4実施例では、車両100をロックしてから規定時間が経過するまで車両100の状態がスマート動作禁止状態に設定される。この期間中にリレーアタックが仕掛けられても、車両の盗難の危険性は低い。
リレーアタックによる車両の窃盗犯は、車両から降車した利用者の後を付けて、利用者が車両から離れた時点でリレーアタックを仕掛ける傾向が強い。このため、利用者が降車して長時間が経過した後は、リレーアタックによる車両盗難の危険性は低下する。従って、車両100がロックされた時点から規定の時間が経過した後にスマート動作を許容しても、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させる十分な効果が得られる。「規定時間」として、例えば、窃盗犯がリレーアタックの仕掛けをあきらめる程度の時間とするとよい。
[第5実施例]
次に、図6A及び図6Bを参照して第5実施例によるシステムについて説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。
図6Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第5実施例によるシステム20のブロック図である。第5実施例では、システム20の車載装置21が、処理装置23及びカメラ24を含む。カメラ24は、車両100の周囲を撮像し、画像データを生成する。処理装置23が、カメラ24で生成された画像データを顔認証アプリケーションにより解析し、予め登録された利用者が画像内に存在するか否かを判定する機能を有する。
図6Bは、車両システム110及び後付けされるシステム20の動作を説明するための状態遷移図である。イグニッションスイッチがオフにされると、処理装置23が、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出し、照合ECU103にスマート動作禁止信号を送信する。これにより、照合ECU103が車両100をスマート動作禁止状態に設定する。
スマートアンロック操作が行われると、スマートアンロック操作が行われたことを処理装置23が検出する。処理装置23は、カメラ24から画像データを取得し、予め登録された利用者が画像内に存在するか否かを判定する。予め登録された利用者が画像内に存在しないと判定した場合には、処理装置23は照合ECU103に対してスマート動作を許容する信号を送信することなく、スマート動作禁止状態を維持させる。処理装置23が、予め登録された利用者が画像内に存在すると判定した場合には、処理装置23は照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信する。これにより、照合ECU103が車両100をスマート動作許容状態に設定する。
次に、第5実施例によるシステム20が持つ優れた効果について説明する。通常、リレーアタックが仕掛けられるときは、利用者が車両100の近傍に存在しない。このため、リレーアタックが仕掛けられても、車両100はスマート動作禁止状態に維持される。従って、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低下させることができる。
予め登録された利用者が車両100のアンロック操作を行う場合には、カメラ24によって撮像された画像内に利用者が存在すると判定される。このため、利用者は、スマートアンロック操作を行うことにより、車両100をアンロックすることができる。通常、利用者は運転者側のドアの近傍に立ってスマートアンロック操作を行うため、カメラ24は、少なくとも運転者側のドアの外を撮像するように配置するとよい。
処理装置23は、スマートアンロック操作が行われたときに、カメラ24を制御して撮像を行い、顔認証アプリケーションを実行する。このため、定期的に撮像及び顔認証アプリケーションを実行する場合に比べて、バッテリの消費量を低減させることができる。
[第5実施例の変形例]
第5実施例では、利用者が存在するか否かの判定に顔認証を利用したが、その他の生体認証を利用してもよい。例えば、指紋認証等を利用するとよい。指紋認証を利用する場合には、ドアノブ等に指紋認証センサを取り付けるとよい。
第5実施例では、スマートアンロック操作が行われたことを契機にして、利用者が車両100の近傍に存在するか否かを判定したが、スマートアンロック操作の有無に関わらず、利用者が車両100の近傍に存在するか否かを定期的に判定するようにしてもよい。この場合、処理装置23は、利用者が車両100の近傍に存在すると判定したら照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信し、存在しないと判定したら、スマート動作禁止信号を送信するとよい。
[第6実施例]
次に、図7A及び図7Bを参照して第6実施例によるシステムについて説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。
図7Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第6実施例によるシステム20のブロック図である。第1実施例では、後付けされるシステム20が、車載装置21と、利用者によって携帯されるリモート装置22とで構成されていたが、第6実施例によるシステム20は、利用者によって携帯されるリモート装置22で構成され、車両100に搭載される車載装置を必要としない。
図7Bは、第6実施例によるシステム20を構成するリモート装置22のブロック図である。スマートキー収納部30にスマートキー102(図7A)が収納される。スマートキー収納部30は、電磁シールド31で被覆されている。電磁シールド31は、スマートキー収納部30に収納されているスマートキー102から放射される電波、及びスマートキー102に向かう電波を遮蔽する。
処理装置33が受信機32を介して、車両100(図7A)から送信されたリクエスト信号及びスマートキー102(図7A)から送信されたレスポンス信号を受信する機能を有する。利用者が登録解除ボタン35を操作することにより、リモート装置22を登録状態にすることができる。リモート装置22が登録状態のとき、処理装置33は、対応する車両100から送信されたリクエスト信号及び対応するスマートキー102から送信されたレスポンス信号を受信することにより、対応する車両100のID及びスマートキー102のIDを登録する機能を有する。利用者が登録解除ボタン35を操作することにより、登録されているIDを消去することもできる。処理装置33は、対応する車両100からのリクエスト信号または対応するスマートキー102からのレスポンス信号を受信すると、警報発出装置34から警報を発出させる。警報発出装置34として、例えばスピーカを用いるとよい。
次に、第6実施例によるシステム20が持つ優れた効果について説明する。車両100がリクエスト信号を送信しても、スマートキー102がスマートキー収納部30に収納されている場合には、スマートキー102までリクエスト信号が届かない。または、リクエスト信号がスマートキー102まで届き、スマートキー102がレスポンス信号を送信したとしても、レスポンス信号が車両100まで届かない。このため、リレーアタックが仕掛けられたとしても、車両100はアンロックされない。
利用者がリモート装置22を携帯して車両100から遠ざかると、車両100からのリクエスト信号はリモート装置22まで届かなくなる。例えば、リクエスト信号が届く距離は1m程度である。このため、利用者が、リクエスト信号が届く領域の外(圏外)にいるときは、リモート装置22は警報を発出しない。利用者が圏外にいるにもかかわらず警報が発出される場合には、リレーアタックが仕掛けられている可能性が高い。利用者は、発出された警報により、自分の車両100にリレーアタックが仕掛けられている可能性が高いことに気付くことができる。スマートキー102をスマートキー収納部30に収納し忘れている場合でも、この警報機能は有効に動作する。
[第6実施例の変形例]
図7Cを参照して、第6実施例の第1変形例について説明する。第6実施例では、スマートキー収納部30をほぼ完全に電磁シールドしたが、第1変形例では、図7Cに示すように、電磁シールドされていない箇所が設けられている。このため、スマートキー収納部30に収納されたスマートキー102に入射する電波、及びスマートキー102から放射される電波の感度に指向性が付与される。
利用者は、自分の前方に指向性を有するように、リモート装置22の姿勢を保って携帯するとよい。一般的に、窃盗犯は利用者に後ろから近づく傾向が高い。利用者が、自分の前方に指向性を有するようにリモート装置22を固定して携帯している場合には、リレーアタックの中継器を用いて利用者の後方から利用者に向けてリクエスト信号の電波を放射しても、リクエスト信号はスマートキー102に届かない。または、スマートキー102からレスポンス信号の電波が放射されたとしても、利用者の後方に近づいている窃盗犯の持つ中継器には、レスポンス信号の電波が届かない。窃盗犯は、利用者に後ろから近づいてもスマートキー102からの電波を受信できない場合、リレーアタックによる車両の窃盗をあきらめる可能性が高い。このため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低下する。
利用者の前方からの電波は、スマートキー102が受信可能であり、スマートキー102からの電波は利用者の前方に放射されるため、利用者は、車両の方を向いてスマートアンロック操作を行えば、車両をアンロックすることができる。
第6実施例の第2変形例では、リモート装置22が電波をほぼ完全にシールドする代わりに、電波の到達距離を極短い距離に制限するように電波を減衰させる。窃盗犯がリレーアタックを仕掛ける場合には、利用者が携帯しているスマートキー102からの電波を受信して中継するために、窃盗犯が利用者に近づかなければならない。リモート装置22が電波を減衰させると、窃盗犯は電波を受信するために利用者に不自然な距離まで近づかなければならなくなる。窃盗犯は、通常のスマートキー102からの電波を受信できる距離まで近づいても電波を受信できない場合、リレーアタックによる車両の窃盗をあきらめる可能性が高い。このため、リレーアタックによる車両の盗難の危険性が低下する。
リレーアタックに用いられる中継器がスマートキー102からの電波を受信するために、窃盗犯が利用者に不自然な距離まで接近しなければならなくなる程度に、リモート装置22が電波を減衰させるとよい。例えば、スマートキー102からの電波の受信可能距離が50cm程度になるように電波を減衰させるとよい。この場合、利用者は、リモート装置22にスマートキー102を収納したままでも、車両の極近傍まで近づくことにより、スマート動作によるアンロックを行うことができる。
[第7実施例]
次に、図8A及び図8Bを参照して第7実施例によるシステムについて説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。
図8Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第7実施例によるシステム20のブロック図である。第7実施例によるシステム20は車載装置21で構成される。第7実施例においては、第1実施例によるシステム20のリモート装置22に相当する機器は不要である。
図8Bは、車両システム110及び後付けされる第7実施例によるシステム20の動作を説明するための状態遷移図である。イグニッションスイッチがオフにされると、車載装置21が、イグニッションスイッチがオフにされたことを検出し、照合ECU103にスマート動作許容信号を送信する。これにより、照合ECU103が車両100をスマート動作許容状態に設定する。
車両のアンロック操作が行われると、車載装置21が、アンロック操作に対応する信号を受信する。車載装置21が、アンロック操作の態様が異常であるか否かを判定する。アンロック操作の態様が異常であると判定すると、車載装置21は照合ECU103に対してスマート動作禁止信号を送信する。照合ECU103は、スマート動作禁止信号を受信すると、車両100をスマート動作禁止状態に設定する。
次に、第7実施例によるシステム20の持つ優れた効果について説明する。窃盗犯は、通常のスマートアンロック操作とは異なる態様で車両100に対してアンロックの操作を行う場合が多い。例えば、通常は、車両100をアンロックするためにドアノブを1回握ればよいが、窃盗犯は、ドアノブを握る操作を短時間に複数回繰り返す傾向が高い。アンロックのための操作の態様が異常である場合にスマート動作を禁止させることにより、リレーアタックによる車両100の盗難の危険性を低下させることができる。
車両100をアンロックするためのスマートアンロック操作の態様が異常な操作は、利用者がドアを開けるときに行う通常の操作とは異なる操作とするとよい。例えば、スマートアンロック操作が行われた後、ドアが開くことなく再度スマートアンロック操作が複数回繰り返された場合、アンロックする操作の態様が異常であると判定するとよい。スマートアンロック操作は、車両100に搭載されたスマートエントリーシステムの仕様に依存する。例えばドアノブを握る操作がスマートアンロック操作とされる場合が多い。
[第8実施例]
次に、図9A~図9Cを参照して第8実施例によるシステムについて説明する。以下、第6実施例によるシステム20(図7A)と共通の構成については説明を省略する。
図9Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第8実施例によるシステム20のブロック図である。第6実施例によるリモート装置22は、スマートキーを収納するスマートキー収納部30(図7B)を有していたが、第8実施例によるリモート装置22は、スマートキー102とともに利用者によって携行される。必ずしもスマートキー102を容器に収容する必要はない。
図9Bは、第8実施例によるシステム20を構成するリモート装置22のブロック図である。リモート装置22は、受信機32、処理装置33、警報発出装置34、及び登録解除ボタン35を有する。処理装置33が受信機32を介して、スマートキー102から送信されたレスポンス信号を受信する機能を有する。利用者は、登録解除ボタン35を操作してリモート装置22を登録状態にすることができる。処理装置33は、登録状態になっている期間に、対応するスマートキー102から送信されたレスポンス信号を受信することにより、対応するスマートキー102のIDを登録する機能を有する。利用者が登録解除ボタン35を操作することにより、登録されているIDを消去することもできる。
図9Cは、リレーアタックが仕掛けられているときの信号の送受信シーケンスを示す図である。車両100から送信されたリクエスト信号が、リレーアタック用の中継器50、51によって中継されてスマートキー102まで伝送される。スマートキー102がレスポンス信号を送信すると、レスポンス信号が中継器51、50を経由して車両100まで伝送される。スマートキー102から送信されたレスポンス信号は、リモート装置22によっても受信される。リモート装置22の処理装置33が、スマートキー102からのレスポンス信号を受信すると、警報発出装置34から警報を発出させる。警報発出装置34として、例えばスピーカを用いるとよい。
次に、第6実施例によるシステム20が持つ優れた効果について説明する。車両100の利用者は、リモート装置22からの警報により、リレーアタックが仕掛けられている可能性が高いことに気付くことができる。利用者は、警報に気付いたら直ちに車両100まで戻る、または警察に通報する等の対応を行うことができる。
[第9実施例]
次に、図10A及び図10Bを参照して第9実施例によるシステムについて説明する。以下、第5実施例によるシステム20(図6A、図6B)と共通の構成については説明を省略する。
図10Aは、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第9実施例によるシステム20のブロック図である。システム20は、処理装置23、カメラ24、記憶装置25、及び送信回路26を含む。カメラ24は、車両100の車内及び車外の少なくとも一方の画像を撮像するように車両100内に設置されている。記憶装置25は、カメラ24で撮像された画像データを記憶する。送信回路26は、画像データを外部のサーバ等に無線送信する。
図10Bは、第9実施例によるシステム20の処理装置23の動作を示す図である。イグニッションスイッチがオフにされ、車両100のロックの操作、またはスマートアンロック操作を検出すると、処理装置23は、カメラ24を制御して撮像を開始する。撮像開始から所定時間が経過すると、撮像を停止させる。撮像された画像データは、記憶装置25に記憶させるとともに、送信回路26から外部のサーバにアップロードする。
次に、第9実施例によるシステム20の持つ優れた効果について説明する。リレーアタックによる車両の窃盗犯は、車両100から降りた運転者の後をつけて、車両100が見えなくなったときに犯行に及ぶ傾向が強く、運転者の後を長時間つけ回すようなことはしない。このため、車両100がロックされてからある一定の期間内にリレーアタックによる盗難が発生する確率が高い。また、リレーアタックによる車両100の窃盗が行われるときには、スマート動作によるアンロックの操作が検出される。車両100がロックされた時点またはスマートアンロック操作を検出した時点から、カメラ24によって画像を取得すると、画像に窃盗犯が写り込んでいる可能性が高い。このため、記憶装置25に格納された画像データ、またはサーバにアップロードされた画像データは、窃盗犯を特定するための重要な証拠になり得る。
車両100がロックされた時点から所定時間が経過すると、リレーアタックによる盗難の危険性が低下するため、車両100がロックされた時点から所定時間が経過した時点で、カメラ24による撮像を停止させてもよい。画像データを継続して常時取得する場合と比べて、バッテリの消費量を低減させることができる。「所定時間」として、利用者が車両100をロックしてから、リレーアタックによる車両盗難の危険性がほぼ無くなるまでの時間とするとよい。
次に、第9実施例の変形例について説明する。第9実施例では、画像データを記憶装置25に記憶させるとともに、送信回路26からサーバにアップロードしたが、いずれか一方の処理を実行するようにしてもよい。
[第10実施例]
次に、図11を参照して第10実施例によるシステム20について説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。第10実施例では、車両100をスマート動作禁止状態に設定する一手法について説明する。第10実施例は、後付けのシステム20が車載装置21を含む種々の実施例に適用することができる。
図11は、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第10実施例によるシステム20のブロック図である。システム20は車載装置21を含む。車両100の照合ECU103が、スマート動作禁止フラグ120を記憶する記憶装置を含む。車載装置21が照合ECU103に対してスマート動作禁止信号を送信すると、照合ECU103は、スマート動作禁止フラグをセットする。車載装置21が照合ECU103に対してスマート動作許容信号を送信すると、照合ECU103は、スマート動作禁止フラグをリセットする。
スマート動作禁止フラグ120がセットされている状態が、スマート動作禁止状態に対応し、スマート動作禁止フラグ120がリセットされている状態が、スマート動作許容状態に対応する。
第10実施例のように、スマート動作禁止フラグ120のセット、リセットにより、車両100の状態をスマート動作禁止状態またはスマート動作許容状態に設定するとよい。照合ECU103は、車両100がスマート動作禁止状態のとき、車両100からスマートキー102に対するリクエスト信号を送信しないようにするとよい。リクエスト信号が送信されないと、スマートキー102からレスポンス信号が返信されることもないため、スマート動作によるアンロックが行われることはない。
[第11実施例]
次に、図12を参照して第11実施例によるシステム20について説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。第11実施例では、車両100をスマート動作禁止状態に設定する一手法について説明する。第11実施例は、後付けのシステム20が車載装置21を含む種々の実施例に適用することができる。
図12は、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第11実施例によるシステム20のブロック図である。システム20は、処理装置23及びリレー27により構成される。リレー27は、送信機105から送信アンテナ108までの給電線路に挿入されている。処理装置23がリレー27のオンオフを制御する。
処理装置23がリレー27をオフにすると、リクエスト信号が送信アンテナ108から放射されなくなる。このため、スマート動作によるロック及びアンロックが実行されなくなる。リレー27がオフにされている状態が、スマート動作禁止状態に対応し、リレー27がオンにされている状態が、スマート動作許容状態に対応する。
[第12実施例]
次に、図13を参照して第12実施例によるシステム20について説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。第12実施例では、車両100をスマート動作禁止状態に設定する一手法について説明する。第12実施例は、後付けのシステム20が車載装置21を含む種々の実施例に適用することができる。
図13は、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第12実施例によるシステム20のブロック図である。車両システム110のセンサ109がCAN107を介して照合ECU103に接続されている。センサ109は、車両100の利用者によるスマートアンロック操作、例えば、利用者がドアノブを握る操作を検出する。アンロック操作が行われると、照合ECU103がセンサ109から、アンロック操作が行われたことを通知する信号を受信する。
システム20は、処理装置23及びリレー28により構成される。リレー28は、センサ109とCAN107との間の通信線に挿入されている。処理装置23がリレー28のオンオフ制御を行う。リレー28がオフにされると、スマートアンロック操作が行われことを通知する信号が照合ECU103まで届かない。このため、スマートアンロック操作を行っても車両100はアンロックされない。リレー28がオフにされている状態が、スマート動作禁止状態に対応し、リレー28がオンにされている状態が、スマート動作許容状態に対応する。
[第13実施例]
次に、図14を参照して第13実施例によるシステム20について説明する。以下、第1実施例によるシステム20(図2A)と共通の構成については説明を省略する。第13実施例では、車両100をスマート動作禁止状態に設定する一手法について説明する。第13実施例は、後付けのシステム20が車載装置21を含む種々の実施例に適用することができる。
図14は、車両システム110、及び車両システム110に後付けされる第13実施例によるシステム20のブロック図である。システム20は、アダプタ29により構成される。車両100のバッテリ113から照合ECU103にアダプタ29を経由して電源を供給する。アダプタ29は、バッテリ113から照合ECU103への電源の供給のオンオフを行う。アダプタ29が照合ECU103への電源の供給をオフにすると、照合ECU103が動作しなくなるため、スマート動作によるロック及びアンロックを行うことができない。アダプタ29が電源の供給を遮断している状態が、スマート動作禁止状態に対応し、アダプタ29を経由して照合ECU103に電源が供給されている状態が、スマート動作許容状態に対応する。
アダプタ29にスピーカ等の警報装置を設けるとよい。例えば、スマート動作禁止状態のときにスマートアンロック操作が行われたことをアダプタ29が検知すると、警報装置から警報音を出力するようにするとよい。これにより、リレーアタックによる車両100の盗難抑止効果が得られる。
[第14実施例]
次に、図15A~図15Cを参照して、第14実施例によるシステム20について説明する。以下、第1実施例によるシステム20と共通の構成については説明を省略する。第14実施例によるシステムは、利用者によってスマートキー102(図2A)とともに携帯されるリモート装置22(図2A)を含み、車載装置21(図2A)は必ずしも必要ではない。
図15Aは、リレーアタックが仕掛けられているときの信号の送受信シーケンスを示す図である。車両100から送信されたリクエスト信号が、リレーアタック用の中継器50、51によって中継されてスマートキー102まで伝送される。中継されたリクエスト信号の周波数帯(例えば124kHz、134kHz等のLF帯)の電波が、利用者が携帯するリモート装置22で検知される。
リモート装置22は、リクエスト信号の周波数帯の電波を検知すると、リクエスト信号の周波数帯の妨害電波を放射する。この妨害電波がスマートキー102まで伝搬するため、スマートキー102は、リクエスト信号を検出することができなくなる。このように、リモート装置22がジャマーとして機能する。
図15Bは、一般的なスマートエントリーシステムにおける車両100とスマートキー102との間の信号のタイミングチャートである。車両100が定期的にウェイク信号を送信する。ウェイク信号は、スマートキー102の動作を開始させるための信号である。スマートキー102は、ウェイク信号を受信するとACK信号を車両100に返信する。車両100は、ACK信号を受信すると、スマートキー102に対して車両ID等の情報を含むリクエスト信号を送信する。スマートキー102は、リクエスト信号を受信すると、車両に対してレスポンス信号を送信する。なお、ウェイク信号は、スマートキー102に対して動作の開始を要求するリクエスト信号と考えることもできる。このため、本明細書において、図15Bに示したウェイク信号とリクエスト信号とを合わせてリクエスト信号という。なお、スマートエントリーシステムによっては、スマートキー102がウェイク信号に対してACK信号を返信することなく、車両100がリクエスト信号を送信する場合もある。
図15Cは、第14実施例によるシステムを利用している場合の、車両100とスマートキー102とリモート装置22との間の信号のタイミングチャートである。リモート装置22が、ウェイク信号(リクエスト信号)の周波数帯の電波を検出すると、同一周波数帯の妨害電波を放射する。このため、スマートキー102はウェイク信号を検出することができない。さらに、妨害電波が放射されている期間は、ウェイク信号後のリクエスト信号を検出することもできない。
次に、第14実施例によるシステムの持つ優れた効果について説明する。第14実施例では、リモート装置22から妨害電波が放射されることにより、スマートキー102が車両100からのリクエスト信号を検出できなくなる。このため、スマートキー102はレスポンス信号を返信しない。車両100にレスポンス信号が返信されないため、窃盗犯は、リレーアタックによって車両をアンロックすることができなくなる。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低減することができる。車両100の利用者は、妨害電波が放射されている場合でも、リモコンアンロック操作を行うことにより車両をアンロックすることができる。
[第14実施例の変形例]
次に、第14実施例の変形例について説明する。
リモート装置22に、妨害電波の放射機能を無効にさせるスイッチを設けるとよい。車両の利用者は、スイッチを操作して妨害電波の放射機能を無効にさせることにより、スマートアンロック操作を行って車両をアンロックすることができる。
リモート装置22が、車両100からリモート装置22までの距離に依存する物理量のレベルに応じて、妨害電波の放射機能を無効にする機能を持つとよい。例えば、この距離に依存する物理量と所定レベルとを比較し、車両100からリモート装置22までの距離が所定レベルに対応する距離以下であると判定した場合、妨害電波の放射を行わないようにするとよい。リモート装置22にこの機能を持たせると、利用者が自分の車両に近づいて、スマートアンロック操作を行って車両をアンロックすることができる。「所定レベル」は、利用者が通常のスマート動作によるアンロックの操作を行うときに不便にならない程度の距離を確保し、かつ利用者が車両100の盗難に気付くことができる程度の距離の範囲内に対応するレベルとするとよい。
車両100からリモート装置22までの距離に依存する物理量として、車両100に搭載された車載装置21(図2A)からリモート装置22に定期的に送信する信号の電波の電波強度を用いるとよい。この信号には、車両100を識別する車両IDを含め、リモート装置22を車両100と関連付けておくとよい。リモート装置22は、関連付けられた車両100の車両IDを含む信号の電波のRSSI値を、車両100からリモート装置22までの距離に依存する物理量として利用するとよい。このような電波として、特定小電力無線の規格を満足する電波を用いるとよい。また、ブルートゥースローエナジー(BLE)規格に沿う電波を用いてもよい。
スマートキー102がリクエスト信号に含まれるデータをデコードできなくなる程度の時間、リモート装置22が妨害電波を放射するとよい。例えば、妨害電波の放射の停止は、一般的なスマートエントリーシステムにおけるリクエスト信号の立ち下がり時点以降とするとよい。なお、リクエスト信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間のうち、リクエスト信号に含まれる一部のデータのデコードが不能になる程度の時間だけ妨害電波を放射してもよい。妨害電波の強度は、リモート装置22と一緒に携帯されているスマートキー102がリクエスト信号を検出できなくなる程度を下限値とし、当該車両100の利用者の周囲にいる第三者のスマートキーに対しては悪影響を及ぼさない程度を上限値とするとよい。
[第15実施例]
次に、図16を参照して、第15実施例によるシステムについて説明する。以下、第14実施例によるシステム20(図15A)と共通の構成については説明を省略する。第14実施例では、リモート装置22が、リクエスト信号の周波数帯の妨害電波を放射したが、第16実施例では、リモート装置22がレスポンス信号の周波数帯(例えば312MHz~315MHz等のUHF帯)の妨害電波を放射する。
図16は、リレーアタックが仕掛けられているときの信号の送受信シーケンスを示す図である。車両100から送信されたリクエスト信号が、リレーアタック用の中継器50、51によって中継されてスマートキー102まで伝送される。中継されたリクエスト信号の周波数帯(例えば124kHz、134kHz帯)の電波が、利用者が携帯するリモート装置22及びスマートキー102で検知される。
スマートキー102は車両100に対してレスポンス信号を送信する。リクエスト信号の周波数帯の電波を検出したリモート装置22は、レスポンス信号の周波数帯の妨害電波を放射する。このため、窃盗犯が携帯する中継器51がレスポンス信号を中継できなくなる。その結果、リレーアタックによって車両をアンロックすることができなくなる。これにより、リレーアタックによる車両の盗難の危険性を低減することができる。車両100の利用者は、妨害電波が放射されている場合でも、リモコンアンロック操作を行うことにより車両をアンロックすることができる。
[第15実施例の変形例]
第15実施例においても、第14実施例の変形例と同様に、車両100からリモート装置22までの距離に応じて、妨害電波の放射を無効にする機能を備えるとよい。
車両100がスマートキー102からのレスポンス信号に含まれるデータをデコードできなくなる程度の時間、リモート装置22が妨害電波を放射するとよい。例えば、妨害電波の放射の停止は、一般的なスマートエントリーシステムにおけるレスポンス信号の立ち下がり時点以降とするとよい。なお、レスポンス信号の立ち上がりから立ち下がりまでの期間のうち、レスポンス信号に含まれる一部のデータのデコードが不能になる程度の時間だけ妨害電波を放射してもよい。妨害電波の強度は、中継器51がレスポンス信号を正常に検出できなくなる程度まで大きくするとよい。
レスポンス信号に用いられる電波の周波数は、車両のメーカごとに異なる。第15実施例によるシステムは、種々のメーカで用いられている電波のすべての周波数帯をカバーするようにするとよい。また、メーカごとに、第15実施例によるシステムを構築してもよい。
本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求の範囲とする意思を有する。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。また、「~の場合」「~のとき」という記載があったとしてもその場合やそのときに限られる構成として記載しているものではない。これらの場合やときでない構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。また順番を伴った記載になっている箇所もこの順番に限らない。一部の箇所を削除したり、順番を入れ替えたりした構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としても良いし、その部材の部分としても良い。全体意匠はもちろんのこと、図面の実線部分のうち任意の部分を破線部分とした部分意匠を、権利化する意思を有する。