JP7307907B2 - cBN膜の製造方法 - Google Patents
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Description
第1の実施形態について説明する。
1-1.第1のcBN形成体
図1は、第1のcBN形成体100の概略構成を示す図である。cBN形成体100は、基板110と、下地層120と、ホウ素層130と、混合層140と、cBN膜150と、を有する。
図2は、第2のcBN形成体200の概略構成を示す図である。cBN形成体200は、基板210と、ホウ素層130と、混合層140と、cBN膜150と、を有する。基板210はSi基板である。基板210は、もちろん金属を含有していない。そのため、cBN形成体200は、金属原子の拡散を防止する下地層120を形成しなくてもよい。
図3は、本実施形態のcBN膜の製造方法に用いられるプラズマ処理装置1000の概略構成を示す図である。プラズマ処理装置1000は、電子ビーム励起プラズマ発生装置である。プラズマ処理装置1000は、電子ビームを用いて原子および分子を励起させてプラズマを発生させるとともに、電子ビームの電圧値および電流値を調整することによりプラズマを制御する。そして、プラズマ処理装置1000は、基板110等の上にcBN膜150等を成膜する。
ここで、cBN膜の製造方法について説明する。本実施形態のcBN膜の製造方法は、下地層形成工程と、ホウ素層形成工程と、混合層形成工程と、cBN膜形成工程と、を有する。ホウ素層形成工程および混合層形成工程およびcBN膜形成工程では、プラズマ処理装置1000の内部でプラズマを発生させた状態で成膜を実施する。cBN膜形成工程では、基板の中心の直上20mmの位置におけるプラズマの電子密度を2×1011cm-3以上とする。本実施形態では、この基板の中心の真上20mmの位置はプラズマの中心である。また、その電子密度は3×1011cm-3以下であるとよい。また、ホウ素層形成工程および混合層形成工程およびcBN膜形成工程では、0.01Pa以上1Pa以下の内圧下でプラズマを発生させる。
まず、基材を準備する。基材は基板110または基板210である。もしくはこれら以外の材料であってもよい。ここでは、基材として基板110を用いる場合について説明する。
次に、基板110の上に下地層120を形成する。ここでは下地層120としてTiN層を形成する。そのために、例えば、反応性スパッタリング法を用いるとよい。もちろん、その他の方法を用いてもよい。この段階では、基板110は、プラズマ処理装置1000の外部にある。
次に、下地層120を形成済みの基板110をプラズマ処理装置1000の載置台1310の上に配置する。プラズマ処理装置1000の内圧は0.01Pa以上1Pa以下の範囲内である。このときの基板110の温度は250℃以上400℃以下である。基板110はプラズマにより加熱されているためである。そして、N2 を供給せずにB2 H6 を供給する。これにより、基板110の上の下地層120の上にホウ素層130を形成する。そして、ホウ素層130の膜厚を、200nm以上500nm以下とする。
次に、ホウ素層130の上にホウ素原子と窒素原子とを含有する混合層140を形成する。このとき、B2 H6 とN2 とArとを基板に向けて供給する。窒素ガスの流量とArの流量との合計の流量を一定としつつ窒素ガスの流量を増加させる。これにより、好適な混合層140を成膜することができる。このようにして、基板110から遠ざかるほど窒素原子の割合が多い混合層140を形成する。ホウ素原子を含むガス(B2 H6 )の流量を一定としつつ窒素ガスの流量を増加させるとよい。混合層140を好適に成膜することができるからである。なお、N2 の供給量は、供給開始時から時間の経過とともにステップ状に増やしていく。基板110の温度は300℃以上450℃以下である。
次に、混合層140の上にcBN膜150を形成する。cBN膜形成工程は、基板110の温度を上昇させながらcBN膜を成膜する温度上昇期間を有する。温度上昇期間の経過後の基板110の温度は、500℃以上900℃以下である。
本実施形態では、ホウ素層130および混合層140を好適なプラズマ密度で成膜する。また、混合層140におけるホウ素原子と窒素原子との割合を成膜するにつれて徐々に変化させている。そのため、基材からcBN膜150にかけて残留応力が緩和されている。そして、cBN膜150が基材に十分強固に密着しているcBN形成体100が製造される。
5-1.チタン
ホウ素層130は、2at%以上6at%以下のチタンを含有してもよい。そのため、ホウ素層形成工程では、2at%以上6at%以下のチタンを含有するホウ素層を形成する。混合層140は、2at%以上6at%以下のチタンを含有してもよい。そのため、混合層形成工程では、2at%以上6at%以下のチタンを含有する混合層を形成する。
混合層140では、窒素原子の組成が、基板110から1nm遠ざかるごとに0.3at%以上0.6at%以下の割合で増加している。そのため、混合層形成工程では、1nmあたり0.3at%以上0.6at%以下の割合で窒素原子の組成を上昇させて混合層を形成する。
本実施形態の基材は、基板110もしくは基板210である。基材の形状は平面形状でなくともよい。基材は、もちろん、工具や摺動部材そのものであってもよい。つまり、本実施形態の技術を用いることにより、ドリルやエンドミル等の工具の表面にcBN膜を成膜することができる。また、ピストンリングやボア等の摺動部材の表面にcBN膜を成膜することができる。つまり、cBN形成体100、200は、工具および摺動部品を含む。
本実施形態の製造方法は、基板110の上にcBN膜150を成膜する方法である。しかし、基板210の上にcBN膜150を成膜してもよい。基板210はSi基板であるため、金属原子の拡散を防止する下地層120を成膜する必要はない。つまりこの場合、下地層形成工程については実施しなくてよい。
プラズマ処理装置1000の内部に供給するガスは、Arの他にその他の希ガスを用いることができる。
上記の変形例を自由に組み合わせてもよい。
1.基材の種類
基材として、超硬合金(H10(JIS))の基板を用いた。
プラズマ処理装置1000における条件は次のようであった。定電流電源1150における放電電流は15Aから20Aの間であった。加速部1200における加速電圧は85Vから105Vの間であった。その周波数は50kHzであった。デューティー比は60%から80%の間であった。混合層形成時における反応室1301の内圧は0.09Paであった。cBN膜形成時における反応室1301の内圧は0.13Paであった。チャンバーコイル1330に15Aから60Aまでの範囲の電流を流した。反応室1301の内部で発生するプラズマの電子温度は、基板の中心の直上20mmの位置で5.0eV以上6.1eV以下であった。そのプラズマの電子密度は、基板の中心の直上20mmの位置で2×1011cm-3以上3×1011cm-3以下であった。ここで、プラズマの電子密度は、加速部1200で加速された電子からの寄与を含んでいない。加速部1200で加速された電子は、プラズマ内の電子に比べて十分に運動量が高いため、プラズマ内の電子と明確に区別できるからである。
3-1.サンプルの製作
まず、ホローカソード型イオンプレーティング法により超硬合金(H10:使用分類記号)の上にTiN層を成膜した。この後、TiN層を成膜済みの超硬合金をプラズマ処理装置1000の載置台1310の上に載置した。
図5は、cBN膜を成膜する際の基板の温度を示す温度プロファイルである。図5に示すように、温度プロファイルPr1からPr6までの6通りを実施した。図5の温度プロファイルPr5が、図4の温度プロファイルに相当する。図5では、第1の温度が450℃であり、第2の温度が700℃である。なお、基板等の温度を測定するために放射温度計(チノー社製 IR-CAP3CN)を用いた。そのため、cBN膜等の温度は実際の測定値である。
図6は、温度プロファイルとcBN膜の物性値との関係を示す表である。硬度の測定にはナノインデンター(エリオニクス社製 ENT-1100a)を用いた。cBNの剥離強度(密着力)は、スクラッチ試験機(CSM Instruments社製 Revetest)により測定した。
4-1.サンプルの製作
cBN膜の成膜温度(第2の温度)を変えることを除いて、実験1と同様にサンプルを製作した。実験1の温度プロファイルPr5を採用し、成膜温度(第2の温度)を500℃から900℃までの範囲で変えて実験を行った。
図7は、cBN膜の成膜温度とcBN膜の硬度との関係を示すグラフである。図7の横軸はcBN膜の成膜温度(第2の温度)である。図7の縦軸はcBN膜の硬度である。
図8は、cBN膜の成膜温度とcBN膜の密着力との関係を示すグラフである。図8の横軸はcBN膜の成膜温度(第2の温度)である。図8の縦軸はcBN膜の密着力である。
cBN比率はcBN/(cBN+hBN)である。cBN比率についてはFTIRにより測定した。
図6に示すように、温度プロファイルPr3からPr6のように温度上昇期間を設定すると、cBN膜の硬度は高くなる。
第1の態様におけるcBN膜の製造方法は、基材の上にホウ素層を形成するホウ素層形成工程と、ホウ素層の上にホウ素原子と窒素原子とを含有する混合層を形成する混合層形成工程と、混合層の上にcBN膜を形成するcBN膜形成工程と、を有する。ホウ素層形成工程および混合層形成工程およびcBN膜形成工程では、プラズマを発生させた状態で成膜を行う。混合層形成工程では、ホウ素原子を含むガスと窒素ガスと希ガスとを基材に供給する。そして、窒素ガスの流量と希ガスの流量との合計の流量を一定としつつ窒素ガスの流量を増加させ、基材から遠ざかるほど窒素原子の割合の多い混合層を形成する。cBN膜形成工程は、基材の温度を上昇させながらcBN膜を成膜する温度上昇期間を有する。
110、210…基板
120…下地層
130…ホウ素層
140…混合層
150…cBN膜
200…第2のcBN形成体
Claims (3)
- 基材の上にホウ素層を形成するホウ素層形成工程と、
前記ホウ素層の上にホウ素原子と窒素原子とを含有する混合層を形成する混合層形成工程
と、
前記混合層の上にcBN膜を形成するcBN膜形成工程と、
を有し、
前記ホウ素層形成工程および前記混合層形成工程および前記cBN膜形成工程では、
それぞれ、前記ホウ素層、前記混合層、および前記cBN膜の原料となるガスを励起させて、 プラズマを発生させた状態で成膜を行い、
前記混合層形成工程では、
ホウ素原子を含むガスと窒素ガスと希ガスとを前記基材に供給し、
窒素ガスの流量と希ガスの流量との合計の流量を一定としつつ窒素ガスの流量を増加
させ、
前記基材から遠ざかるほど窒素原子の割合の多い前記混合層を形成し、
前記cBN膜形成工程は、
前記基材の温度を上昇させながら前記cBN膜を成膜する温度上昇期間を有すること
を含むcBN膜の製造方法。 - 請求項1に記載のcBN膜の製造方法において、
前記温度上昇期間の経過後の前記基材の温度は、
500℃以上900℃以下であること
を含むcBN膜の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のcBN膜の製造方法において、
前記cBN膜形成工程は、
第1の期間と、前記第1の期間の後の第2の期間と、前記第2の期間の後の第3の期間と、を有し、
前記第1の期間では、
前記基材の温度を第1の温度として前記cBN膜を成膜し、
前記第2の期間では、
前記基材の温度を前記第1の温度から前記第1の温度より高い第2の温度に上昇させながら前記cBN膜を成膜し、
前記第3の期間では、
前記基材の温度を第2の温度として前記cBN膜を成膜すること
を含むcBN膜の製造方法。
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