JP2004332005A - α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材およびその製造方法 - Google Patents

α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】特定の中間層を形成することなく、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜を、様々な種類の基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上に形成する方法を提供する。
【解決手段】基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)表面にメタルイオンボンバード処理を施した後、表面を酸化処理し、その後にアルミナ皮膜を形成する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法、該アルミナ皮膜で被覆された部材およびその製造方法に関するものであり、詳細には、切削工具、摺動部材、金型等の如き耐摩耗部材に被覆される耐摩耗性及び耐熱性に優れたα型結晶構造主体のアルミナ皮膜を、上記切削工具や摺動部材等の基材の特性を損なうことのない低温条件で形成することのできる有用な製造方法と、該α型結晶構造主体のアルミナ皮膜の被覆された部材およびその製造方法(以下、これらの方法を単に「本発明法」ということがある)に関するものである。
【0002】
尚、本発明のα型結晶構造主体のアルミナ皮膜は、上記した様々な用途の部材に適用できるが、以下では代表例として切削工具に適用する場合を中心に説明を進める。
【0003】
【従来の技術】
一般に、優れた耐摩耗性や摺動特性が求められる切削工具や摺動部材として、高速度鋼製や超硬合金製等の基材表面に、チタン窒化物やチタンアルミニウム窒化物等の硬質皮膜が、物理蒸着法(以下、PVD法という)や化学蒸着法(以下、CVD法という)等の方法で形成されたものが用いられている。
【0004】
特に切削工具として使用する場合、前記硬質皮膜には耐摩耗性と耐熱性(高温での耐酸化性)が特性として要求されるので、該両特性を有するものとして、特にチタンアルミニウム窒化物(TiAlN)が、切削時の刃先温度が高温となる超硬工具等への被覆材料として近年多く使用されている。この様にTiAlNが優れた特性を発揮するのは、皮膜に含まれるアルミニウムの作用により耐熱性が向上し、800℃程度の高温まで安定した耐摩耗性と耐熱性を維持できるからである。該TiAlNとしては、TiとAlの組成比の異なる様々なものが使用されているが、その大半は、上記両特性を備えたTi:Alの原子比が50:50〜25:75のものである。
【0005】
ところで切削工具等の刃先は、切削時に1000℃以上の高温となる場合がある。この様な状況下、上記TiAlN皮膜のみでは十分な耐熱性を確保できないため、例えば、特許文献1に示されるように、TiAlN皮膜を形成した上に、更にアルミナ層を形成して耐熱性を確保することが行われている。
【0006】
アルミナは、温度によって様々な結晶構造をとるが、いずれも熱的に準安定状態にある。しかし、切削工具の如く切削時における刃先の温度が、常温から1000℃以上にわたる広範囲で著しく変動する場合には、アルミナの結晶構造が変化し、皮膜に亀裂が生じたり剥離する等の問題を生じる。ところが、CVD法を採用し、基材温度を1000℃以上に高めることによって形成されるα型結晶構造(コランダム構造)のアルミナだけは、一旦形成されると、以後の温度に関係なく熱的に安定な構造を維持する。したがって、切削工具等に耐熱性を付与するには、α型結晶構造のアルミナ膜を被覆することが有効な手段とされている。
【0007】
しかしながら、上述した通りα型結晶構造のアルミナを形成するには、基材を1000℃以上にまで加熱しなければならないため、適用できる基材が限られる。基材の種類によっては、1000℃以上の高温にさらされると軟質化し、耐摩耗部材用基材としての適性が失われる可能性が生じるからである。また、超硬合金の様な高温用基材であっても、この様な高温にさらされると変形等の問題が生じる。更には、耐摩耗性を発揮する膜として基材上に形成されたTiAlN皮膜等の硬質皮膜の実用温度域は一般に最高で800℃程度であり、1000℃以上の高温にさらされると、皮膜が変質し、耐摩耗性が劣化するおそれがある。
【0008】
この様な問題に対し、特許文献2には、上記アルミナと同レベルの高硬度を有する(Al,Cr)混合結晶が、500℃以下の低温域で得られた旨報告されている。しかしながら、被削材が鉄を主成分とするものである場合、前記混合結晶皮膜の表面に存在するCrが、切削時に被削材中の鉄と化学反応を起こし易いため、皮膜の消耗が激しく寿命を縮める原因となる。
【0009】
また、O.Zywitzki,G.Hoetzschらは、非特許文献1で、高出力(11−17kW)のパルス電源を用いて反応性スパッタリングを行うことで、750℃でα型結晶構造の酸化アルミニウム皮膜を形成できた旨報告している。しかし、この方法でα型結晶構造の酸化アルミニウムを得るには、パルス電源の大型化が避けられない。
【0010】
この様な問題を解決した技術として、特許文献3には、格子定数が4.779Å以上5.000Å以下で、膜厚が少なくとも0.005μmであるコランダム構造(α型結晶構造)の酸化物皮膜を下地層とし、該下地層上にα型結晶構造のアルミナ皮膜を形成する方法が開示されている。上記酸化物皮膜の成分は、Cr、(Fe,Cr)又は(Al,Cr)のいずれかであることが好ましく、該酸化物皮膜の成分が(Fe,Cr)である場合には、(Fe,Cr(1−x)(ただし、xは0≦x≦0.54)を採用することがより好ましく、また、該酸化物皮膜の成分が(Al,Cr)である場合には、(Al,Cr(1−y)(ただし、yは0≦y≦0.90)を採用することがより好ましいと示されている。
【0011】
また上記特許文献3には、硬質皮膜としてTi、Cr、Vよりなる群から選択される1種以上の元素とAlとの複合窒化皮膜を形成した上に、中間層として(Al,Cr(1−z))N(ただし、zは0≦z≦0.90)からなる皮膜を形成し、さらに該皮膜を酸化処理してコランダム構造(α型結晶構造)の酸化物皮膜を形成した後、該酸化物皮膜上にα型アルミナを形成することが有用である旨示されており、この方法によれば、低温の基材温度でα型結晶構造のアルミナが形成できるとされている。
【0012】
しかし上記方法では、α型結晶構造のアルミナ膜を形成するにあたり、例えばCr等の別の酸化物皮膜や、窒化物と酸化物の複合皮膜(例えば、CrN+Cr)を形成する必要があり、追加の成膜工程が必要となるため、皮膜の形成効率を高めるうえでは、なお改善の余地が残されている。また、中間膜として形成されたCrや(CrN+Cr)等のCr含有皮膜は、切削工具用として汎用されている材料でないため、切削性能の低下が懸念される。従って、上記技術を切削工具に適用する場合には、切削性能を高める観点からも改善の余地を残すものと考えられる。
【0013】
【特許文献1】
特許第2742049号公報
【特許文献2】
特開平5−208326号公報
【特許文献3】
特開2002−53946号公報
【非特許文献1】
Surf.Coat.Technol. 86−87 1996 p. 640−647
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定の中間層を形成することなく、耐摩耗性及び耐熱性に優れたα型結晶構造主体のアルミナ皮膜を、様々な種類の基材上に形成することのできる有用な方法、および該アルミナ皮膜で被覆された部材およびその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るα型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法とは、基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上にα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜を形成する方法であって、基材表面にメタルイオンボンバード処理を施した後、表面を酸化処理し、その後にアルミナ皮膜を形成するところに要旨がある。
【0016】
前記メタルイオンボンバード処理は、真空チャンバー中で基材に電圧を印加しつつ金属プラズマを発生させて行えばよく、また、前記酸化処理は、酸化性ガス含有雰囲気下で基材温度を650〜800℃に保持して行うのがよい。
【0017】
前記金属プラズマとして、CrまたはTiのプラズマを真空アーク蒸発源から発生させるのがよい。
【0018】
本発明は、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材についても規定するものであって、該部材は、基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上にα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜が形成された部材であって、基材表面近傍は、メタルイオンボンバード処理に使用した金属が表層側に行くにつれて高濃度となる濃度勾配層であり、該濃度勾配層の表面側に、酸化物含有層およびα型結晶構造主体のアルミナ皮膜が順次形成されているところに特徴がある。
【0019】
また本発明は、上記α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材の製造方法も規定するものであって、該方法は、基材上に下地皮膜を形成しない場合、
▲1▼基材表面にメタルイオンボンバード処理を施す工程、
▲2▼メタルイオンボンバード処理後の基材表面を酸化処理する工程、
▲3▼次いでα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜を形成する工程
を、同一装置内で順次実施するところに特徴を有する。
【0020】
また基材上に予め下地皮膜を形成する場合には、
▲1▼基材上に下地皮膜を形成する工程、
▲2▼該下地皮膜の表面にメタルイオンボンバード処理を施す工程、
▲3▼メタルイオンボンバード処理後の下地皮膜の表面に酸化処理を施す工程、
▲4▼次いでα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜を形成する工程
を、同一装置内で順次実施するところに特徴を有する方法である。
【0021】
前記下地皮膜としては、周期律表の4a族,5a族および6a族の元素、Al、Si、Cu並びにYよりなる群から選択される1種以上の元素とC、N、B、Oの中の1種以上の元素との化合物、これら化合物の相互固溶体、またはC、N、Bの中の1種以上の元素からなる単体または化合物、のいずれか1種以上を形成するのが好ましい。前記基材としては、鋼材、超硬合金、サーメット、cBN焼結体、、セラミックス焼結体、結晶ダイヤモンドまたはSiウエハを用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜(以下、単に「α型主体アルミナ皮膜」ということがある)を、下地皮膜であるTiAlN等の硬質皮膜上や超硬合金やSiウエハ等の様々な基材上に、複雑な中間層を形成することなく、該基材や下地皮膜(以下、特に断りのない限り「基材」には、基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含める)の特性を維持できる約800℃以下の温度域で形成するための方法について研究を進めた。
【0023】
その結果、アルミナ皮膜を形成するにあたり、基材表面にメタルイオンボンバード処理を施したのち表面を酸化処理すればよいことを見出し、上記本発明に想到した。
【0024】
まず、本発明のアルミナ皮膜の製造方法について概説する。成膜プロセスの温度に耐え得る基材として、例えば超硬工具(未コーティング)、Siウエハ等の基材、または該基材上に下地皮膜としてCrN,TiN,TiAlN,ダイヤモンド等の硬質皮膜を被覆したものに、後述する様な条件でメタルイオンボンバード処理を施すと、加速された金属イオンが基材に衝突し、図1(a)の拡大図に示すように、金属イオン(M)による基材表面のエッチング、金属イオン(M)の堆積、および金属イオンの基材への注入(図示せず)が同時に生じる。その結果、メタルイオンボンバード処理後の基材表面近傍には、メタルイオンボンバード処理に使用した金属が表層側に行くにつれて高濃度となる濃度勾配層12が形成される[図1(b)]。
【0025】
そして上記濃度勾配層12の表面を酸化処理して、図1(c)に示すような酸化物含有層13を濃度勾配層12の表面に形成してから、アルミナ皮膜14の形成を行うことで、図1(d)に示す様な前記濃度勾配層12の表面側に、酸化物含有層13およびα型結晶構造主体のアルミナ皮膜14が順次形成された部材を得ることができる。
【0026】
この様なα型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法は、特許文献3に示される従来の方法と比較して以下の様な特長を有する。
【0027】
(1)メタルイオンボンバード処理で形成される濃度勾配層は、その表面が、窒化されていない金属層であるか、または窒素等が少量固溶した金属層であるため、窒化物皮膜を酸化する従来法と比較して酸化しやすく、結果として、酸化処理に要する時間を短縮することができる他、加熱による装置の負担を軽減することもできる。
【0028】
(2)形成される濃度勾配層は、上記図1(b)に示す通り、基材材料との混合層となっており、基材上に窒化物皮膜を設ける従来法よりもアルミナ皮膜以外の層の厚さを薄くでき、結果として、アルミナ皮膜以外の層による部材特性への悪影響を抑制することができる。
【0029】
また、形成される濃度勾配層は、基材と金属の混合層であるので、基材と該混合層との間には明瞭な界面が存在せず、本質的に密着性に優れている。これに対し、従来の方法で形成される中間層は、基材上に形成される層であるため、該基材との密着性に劣る懸念がある。
【0030】
(3)また、メタルイオンボンバード処理を、次工程の酸化処理に適した基材温度で行うことで、追加の輻射加熱等を行って基材温度を高めなくとも、雰囲気を酸化性にするだけで速やかに酸化処理を行うことができ、生産性を高めることができる。
【0031】
以下では、本発明法を実施するにあたり適用可能な条件や好適な条件について詳述する。
【0032】
<メタルイオンボンバード処理について>
本発明法は、上述の通り、アルミナ皮膜の形成において、まず基材表面に、メタルイオンボンバード処理を施したのち表面を酸化処理することを特徴とするものであり、該メタルイオンボンバード処理の詳細な条件まで規定するものではないが、以下の条件を採用すれば、α型結晶構造のアルミナを効率よく形成することができる。
【0033】
金属イオンの発生源として、コランダム構造を有する酸化物を形成する金属材料を使用すれば、α型結晶構造のアルミナを容易に形成できるので好ましく、該金属材料として、例えば、Al、Cr,Fe、またはこれら金属の合金や、これらの金属を主成分とする合金等が挙げられる。また、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属を選択してもよく、例えばTi等を使用することができる。
【0034】
金属イオンの発生に真空アーク蒸発源を使用する場合には、ドロップレット放出が多いことが欠点として挙げられる。このような問題点を解消するには、比較的高融点を有する金属材料(例えば、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素)を用いることが好ましい。尚、金属イオンを発生させる方法として、真空アーク蒸発源を用いずに行う方法であれば、上記問題は生じないので、融点に関係なく金属材料を選択することができる。
【0035】
以上のような観点から、金属イオンの発生源には、Cr、Tiまたはこれらを含む合金を用いることが特に好ましい。
【0036】
また、下地皮膜を形成する場合には、該下地皮膜を構成する金属を含むターゲットをメタルイオンボンバード処理に使用すれば、成膜装置の構成をより簡単にすることができる。例えば、下地皮膜としてTiNを形成する場合に、Tiターゲットを用いてメタルイオンボンバード処理を行う方法が挙げられる。
【0037】
金属イオンの発生は、高イオン化金属プラズマを生成できる方法で行えばよく、例えば真空アーク蒸発源を用い、真空アーク放電により金属ターゲット材を蒸発させる方法が挙げられる。真空アーク蒸発源としては、フィルターの機構を具備してマクロパーティクルを低減できるものが特に望ましい。
【0038】
上記真空アーク蒸発源を用いて前記金属プラズマを発生させる他、例えば、坩堝式のイオンプレーティング法に金属イオン化機構を付加する方式や、スパッタリング蒸発源にRF(ラジオ周波数)コイルを付加してイオン化率を向上させる方式や、短時間に高パワーを集中させて蒸気のイオン化を促進する高パワーパルススパッタリング法等を採用することができる。
【0039】
メタルイオンボンバード処理を行う場合には、基材に負のバイアス電圧を印加する必要がある。該バイアス電圧を基板に印加することで、真空アーク蒸発源で生成した金属イオンにエネルギーを与えて基材表面に高速で衝突させ、前記図1(a)の拡大図に示すような基材のエッチング等を行うことができる。
【0040】
上記エッチング等は、−100V程度と低電圧でも実現できるが、好ましくは−300V以上とする。より好ましくは−600V以上のバイアス電圧を印加する。該バイアス電圧の上限は特に設けないが、高い電圧を印加しすぎると、アーク放電が発生して基材に損傷が生じるといった不具合や、X線が発生するため、装置のX線遮断対策が必要となるので、バイアス電圧の上限は−2000V程度とするのが現実的であり、−1000V以下でも上記濃度勾配層の形成を十分に行うことができる。バイアス電圧の印加は、連続的に行っても良いし、断続的に行っても良い。
【0041】
尚、メタルイオンボンバード処理を施す表面がダイヤモンド、cBN、窒化物等の絶縁性の素材である場合には、上記バイアス電圧を有効に印加することが難しく、メタルイオンボンバード処理を十分に行うことができない。従ってこのような場合には、基材表面に導電性の層を形成してからバイアス電圧を印加するか、低バイアス電圧(約数十V)で金属イオンを照射して、基材表面に導電性の金属含有層を形成した後、前記レベルのバイアス電圧を印加すればよい。
【0042】
上記の通り、直流電圧を連続的または断続的に印加する他、バイアス電圧を高い周波数(1〜数百kHz)でパルス的に印加したり、RFを印加する方法を採用してもよく、これらの方法を、絶縁性の表面へのバイアス電圧の印加に採用してもよい。
【0043】
真空アーク蒸発源を用いる場合には、雰囲気ガスを導入せずにメタルイオンボンバード処理を行うのが一般的である。しかし、真空アーク蒸発源の動作安定性を確保するという観点から、Ar等の不活性ガス雰囲気や窒素雰囲気としてもよい。
【0044】
また、真空アーク蒸発源を使用する場合、該真空アーク蒸発源から発生するマクロパーティクルが形成層に混入することを防止するため、少量の反応性ガスとして例えば窒素を導入し、窒素雰囲気下で処理を行ってもよい。しかし、この様に反応性ガス雰囲気とする場合、反応性ガスの分圧が1Pa超になると、窒化物皮膜の形成時と同様の雰囲気となり、上記エッチング作用が弱まるので好ましくない。従って、反応性ガスは0.5Pa以下、好ましくは0.2Pa以下、より好ましくは0.1Pa以下の分圧となるようにするのが良い。
【0045】
メタルイオンボンバード処理は、基材を300℃以上に加熱して行うのがよい。具体的には、例えば、後述する図2に示す成膜装置内の遊星回転治具4に基材2をセットした後、真空となるまで排気を行い、その後、遊星回転治具4を回転させながら、(輻射)ヒーター5で基材2の温度を高めることが挙げられる。
【0046】
この様に基材温度を高めることによって、メタルイオンボンバード処理開始前に、基材表面に吸着したガスを放出できるので、メタルイオンボンバード処理時のアーク発生等を抑制することができ、安定化した操業を行うことができる。
【0047】
尚、メタルイオンボンバード処理時の基板温度は、前記ヒーターによる加熱と、メタルイオンボンバード処理中に基材に与えられるバイアス電圧に相当するエネルギーによるので、該メタルイオンボンバード処理中の温度上昇を考慮した上で、予めヒーターによる加熱温度の上限を決定すれば、エネルギー等のロスを抑えることができる。
【0048】
<基材および下地皮膜について>
本発明法では、基材として、切削工具等の部材を構成する基材をそのまま使用する他、耐摩耗性等の特性を付与すべく、該基材上に予め単層または多層の下地皮膜を形成したものを用いることもできる。該基材や下地皮膜の具体的な種類まで規定するものではないが、優れた耐熱性や耐摩耗性等の要求される切削工具、摺動部材、金型等の製造に本発明法を適用するには、該基材や下地皮膜として下記のものが好ましく使用される。
【0049】
基材としては、高速度鋼等の鋼系材料、超硬合金、サーメット、cBN(立方晶窒化ほう素)やセラミックスを含有する焼結体、または結晶ダイヤモンド等の硬質材料や、電子部材用のSiウエハ等の各種基材を用いることができる。
【0050】
基材上に下地皮膜を形成させたものを用いる場合には、例えば、周期律表の4a族,5a族および6a族の元素、Al、Si、Cu並びにYよりなる群から選択される1種以上の元素とC、N、B、Oの中の1種以上の元素との化合物、これら化合物の相互固溶体、およびC,N、Bの中の1種以上の元素からなる単体または化合物(例えば、気相成長させたダイヤモンド、cBN等)、よりなる群から選択される1種以上からなる皮膜を下地皮膜として形成することができる。
【0051】
上記下地皮膜の代表的なものとして、Ti(C,N)、Cr(C,N)、TiAl(C,N)、CrAl(C,N)、TiAlCr(C,N)、即ち、Ti、Cr、TiAl、CrAl、またはTiAlCrの、それぞれの炭化物、窒化物、炭・窒化物が挙げられ、切削工具等に汎用されている硬質皮膜として、例えばTiN、TiC、TiCN、TiAlN、CrN、CrAlN、TiAlCrNを単層または多層形成することができる。
【0052】
また、酸化物セラミックス(例えばYttrium Stabilized Zirconia)等のいわゆるサーマルバリアコーティングを下地皮膜として形成してもよい。
【0053】
下地皮膜の膜厚は、該皮膜に期待される耐摩耗性や耐熱性等を十分に発揮させるため、0.5μm以上とするのがよく、より好ましくは1μm以上である。しかし下地皮膜が耐摩耗性の硬質皮膜の場合は、膜厚が厚すぎると、切削時に該皮膜に亀裂が生じ易くなり長寿命化が図れなくなるので、下地皮膜の膜厚は20μm以下、より好ましくは10μm以下に抑えるのがよい。下地皮膜が上記の様な硬質皮膜でない場合は、膜厚の上限を特に設けなくてもよい。
【0054】
上記下地皮膜の形成方法は特に限定されないが、耐摩耗性の良好な下地皮膜を形成するには、PVD法で形成することが好ましく、該PVD法としてAIP法や反応性スパッタリング法を採用することがより好ましい。また、PVD法で下地皮膜を形成する方法を採用すれば、下地皮膜と後述するα型主体アルミナ皮膜を同一装置内で成膜することができるので、生産性向上の観点からも好ましい。
【0055】
<酸化処理方法について>
本発明では、前記メタルイオンボンバード処理後に下地表面の酸化処理を行う。該酸化処理の条件についても特に限定されないが、α型結晶構造のアルミナ結晶核の生成に有利な酸化物含有層を効率よく形成するには、下記の条件で酸化を行うことが好ましい。
【0056】
即ち、前記酸化は、酸化性ガス含有雰囲気で行うことが好ましい。その理由は効率よく酸化できるからであり、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスを含有する雰囲気が挙げられ、その中には大気雰囲気も勿論含まれる。
【0057】
また前記酸化は、基材温度を650〜800℃に保持して熱酸化を行うことが望ましい。基材温度が低過ぎると十分に酸化が行われないからであり、好ましくは700℃以上に高めて行うことが望ましい。基材温度を高めるにつれて酸化は促進されるが、基材温度の上限は、本発明の目的に照らして1000℃未満に抑えることが必要である。本発明では、800℃以下でも後述するα型主体アルミナ皮膜の形成に有用な酸化物含有層を形成することができる。
【0058】
尚、酸化処理は、前記メタルイオンボンバード処理時に加熱された基材を冷却することなく続けて行えば、加熱に要する時間やエネルギーを抑えることができる。そのためには、メタルイオンボンバード処理後すぐに、装置内を酸化性雰囲気にして酸化処理を行うことが推奨される。
【0059】
本発明では、上記酸化処理のその他の条件について格別の制限はなく、具体的な酸化方法として、上記熱酸化の他、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスをプラズマ化して照射する方法を採用することも勿論有効である。
【0060】
<アルミナ皮膜の形成方法について>
α型主体アルミナ皮膜の形成方法は特に限定されないが、CVD法では1000℃以上の高温域で行う必要があるので好ましくなく、低温域で成膜することのできるPVD法を採用することが望ましい。PVD法としてスパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法等が挙げられるが、その中でも、スパッタリング法が好ましく、特に反応性スパッタリングは、安価なメタルターゲットを用いて高速成膜を行うことができるので好ましい。
【0061】
また、アルミナ皮膜形成時の基材温度も特に規定しないが、約650〜800℃の温度域で行うと、α型主体アルミナ皮膜が形成され易いので好ましい。また、酸化処理時の基材温度を一定に保ってアルミナ皮膜を形成すれば、基材や硬質皮膜の特性を維持できる他、生産性にも優れているので好ましい。
【0062】
形成するアルミナ皮膜の膜厚は、0.1〜20μmとすることが望ましい。該アルミナ皮膜の優れた耐熱性を持続させるには、0.1μm以上確保することが有効だからであり、より好ましくは1μm以上である。しかしアルミナ皮膜の膜厚が厚すぎると、該アルミナ皮膜中に内部応力が生じて亀裂等が生じ易くなるので好ましくない。従って、前記膜厚は20μm以下とするのがよく、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0063】
<成膜プロセスについて>
前記メタルイオンボンバード処理、前記酸化処理、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜の形成の全ての工程を、同一装置内で行えば、処理物を移動させることなく連続して処理を行うことができるので、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材を効率よく製造することができる。
【0064】
また、基材として下地皮膜の形成されたものを用いる場合には、下地皮膜の形成、前記メタルイオンボンバード処理、前記酸化処理、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜の形成の全ての工程を、同一装置内で行えば、下地皮膜形成時の基材温度(約350〜600℃程度)を低下させることなく、続けて前記メタルイオンボンバード処理、前記酸化処理、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜の形成を行うことができるので、基材の加熱に要する時間やエネルギーを抑えて、効率よくα型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材を製造することができる。
【0065】
具体的には、例えばAIP蒸発源、マグネトロンスパッタリングカソード、ヒーター加熱機構、基材回転機構等を備え、後述する実施例で示す様な装置に、例えば超硬合金製の基材を設置し、まず下地皮膜としてTiAlN等の硬質皮膜をAIP法等を採用して形成した後、真空チャンバー内でCrイオンによるメタルイオンボンバード処理を行い、次に、前述した様な酸素、オゾン、H等の酸化性ガス雰囲気中で該硬質皮膜の表面を熱酸化させ、その後に反応性スパッタリング法等を採用して、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜を形成することが挙げられる。
【0066】
<α型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材について>
本発明は、上記方法で形成された、基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む)上にα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜が形成された部材であって、図1(d)に模式的に示す様に、基材表面近傍が、メタルイオンボンバード処理に使用した金属が表層側に行くにつれて高濃度となる濃度勾配層であり、該濃度勾配層の表面側に酸化物含有層およびα型結晶構造主体のアルミナ皮膜が順次形成されている部材も規定する。
【0067】
この様な本発明の部材として、具体的には、例えば、基材が超硬合金製であり、下地皮膜(硬質皮膜)としてTiN、TiCN、TiAlN、多結晶ダイヤモンド、またはcBNを形成した旋削用やフライス用のスローアウェイチップや、基材が超硬合金製であり、下地皮膜(硬質皮膜)としてTiN、TiCNを形成したドリルやエンドミル、基材がサーメット製であり、下地皮膜(硬質皮膜)としてTiN、TiCNを形成したスローアウェイチップ等の切削工具、その他、基材がSiウエハである半導体構成部品、cBN焼結体工具、ダイヤモンド工具、基材が超硬合金製の金型または該基材上に下地皮膜の形成された金型、基材が耐熱合金の高温用部材または該基材上に下地皮膜の形成された金型を挙げることができる。
【0068】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
<実施例1>
実験では、下記▲1▼〜▲3▼の基材を用いて、図2に示す真空成膜装置(神戸製鋼所製 AIP−S40複合機)で、メタルイオンボンバード処理、酸化処理およびアルミナ皮膜の形成を順に行った。
【0070】
<基材の種類>
▲1▼超硬基材(12mm×12mm×5mm)
▲2▼Siウエハ(シリコンウエハ)(20mm角)
▲3▼超硬基材(12mm×12mm×5mm)上に、
AIP法で膜厚が約2μmのTiAlN皮膜を形成したもの
まず、前記メタルイオンボンバード処理は次の様にして行った。即ち、試料(基材)2をチャンバー1内の回転テーブル3上の遊星回転治具4にセットし、チャンバー1内を真空に排気した後、チャンバー1内部の側面に2箇所と中央部に設置したヒーター5で試料を600℃となるまで加熱し、該温度で30分間保持した。
【0071】
その後、加熱ヒータの電力を、基材温度を定常状態で750℃に保持可能なレベルにまで上昇させてから、Crターゲットを取り付けたAIP蒸発源7に80Aのアーク電流を流してCrイオンを含むプラズマを発生させ、この状態で、回転テーブル3および遊星回転治具4を通じて、バイアス電源8によって直流のバイアス電圧を基材に印加し、Crイオンを基材に照射させてメタルイオンボンバード処理を行った。前記バイアス電圧は−600Vで2分間、−700Vで2分間、更に−800Vで5分間の、合計9分間印加した。尚、メタルイオンボンバード処理終了時の基材温度は約760℃であった。
【0072】
上記メタルイオンボンバード処理、後述する酸化処理およびアルミナ皮膜の形成は、前記図2における回転テーブル3を回転(公転)させるとともに、その上に設置した遊星回転治具4(基材保持用パイプ)も回転(自転)させながら行った。
【0073】
メタルイオンボンバード処理後は、アーク放電とバイアス電圧の印加を停止して酸化処理を行った。酸化処理は、メタルイオンボンバード処理後のチャンバー1内に、酸素ガスを流量300sccm、圧力0.75Paとなるよう導入し、30分間加熱保持して行った。尚、この工程で、酸化処理終了時の基材温度は750℃であった。
【0074】
そして上記酸化処理表面にアルミナ皮膜を形成した。該アルミナ皮膜の形成は、アルゴンと酸素雰囲気中で、基材温度を前記酸化処理工程とほぼ同程度(750℃)とし、図2における2台のアルミニウムターゲットを装着したスパッタリングカソード6に約2.5kWのパルスDC電力を加え、反応性スパッタリング法を採用して行った。該アルミナ皮膜の形成は、放電電圧およびアルゴン−酸素の流量比率をプラズマ発光分光法を利用して制御し、放電状態をいわゆる遷移モードにして行った。この様にして膜厚が約2μmのアルミナ皮膜を形成した(後述する表1のNo.1〜3)。
【0075】
<実施例2>
メタルイオンボンバード処理に際して0.05Paの分圧となるよう窒素をチャンバー1内に導入して、窒素雰囲気下でメタルイオンボンバード処理を行う以外は、前記実施例1と同様にして、メタルイオンボンバード処理、酸化処理およびアルミナ皮膜の形成を行った(後述する表1のNo.4〜6)。
【0076】
<実施例3>
メタルイオンボンバード処理における金属イオンの発生源として、AIP蒸発源に取り付けるターゲット材料をCrの代わりにTiとする以外は、前記実施例1と同様にして、メタルイオンボンバード処理、酸化処理およびアルミナ皮膜の形成を行った(後述する表1のNo.7〜9)。
【0077】
<比較例>
前記メタルイオンボンバード処理を行わず、酸化処理を行った後にアルミナ皮膜の形成を行った。尚、従来の方法として、前記基材▲3▼のTiAlN皮膜上に更にCrN皮膜を形成したものを酸化処理した後、アルミナ皮膜を形成する方法も実施した。前記酸化処理およびアルミナ皮膜の形成は、前記実施例1と同様にして行った。
【0078】
<得られたアルミナ皮膜の薄膜X線回折分析結果>
上記実施例1〜3および比較例の方法で形成されたアルミナ皮膜の表面を、薄膜X線回折装置で分析してアルミナ皮膜の結晶構造を特定した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
Figure 2004332005
【0080】
表1から、上記実施例1〜3の結果を示すNo.1〜9では、▲1▼超硬合金、▲2▼Siウエハ、▲3▼超硬基材上にAIP法で膜厚が約2μmのTiAlN皮膜を形成したもの、のいずれを用いた場合でも、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜が形成されていることがわかる。尚、No.1〜6とNo.7〜9の結果を比較すると、本実施例では、TiよりもCrをメタルイオンボンバード処理に用いれば、ほぼα型結晶構造のみからなるアルミナ皮膜を形成できることがわかる。
【0081】
これに対し比較例では、超硬合金上にTiAlN皮膜およびCrN皮膜を形成させたものを用いた場合(No.13)には、ほぼα型結晶構造のみからなるアルミナ皮膜が形成できたが、超硬合金のみからなるものを用いた場合(No.10)または超硬合金上にTiAlN皮膜のみ形成したものを用いた場合(No.12)には、α型結晶構造とγ型結晶構造の混合したアルミナ皮膜となった。また、基材としてSiウエハを用いた場合(No.11)には、α型結晶構造のアルミナが形成されず、ほぼγ型結晶構造のみからなるアルミナ皮膜が得られた。
【0082】
これらの結果から、本発明法によれば、基材の種類に限定されることなくα型結晶構造主体のアルミナ皮膜を形成できることがわかる。
【0083】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、特別な中間層を形成せずとも、アルミナ皮膜の成膜対象である基材や下地皮膜の種類を問わず、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜を該基材や下地皮膜上に形成することができる。また本発明法は、全ての工程を同一装置内で行うことが可能であるので、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜を効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法を模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の実施に用いる装置例を示す概略説明図(上面図)である。
【符号の説明】
1 チャンバー
2 試料(基材)
3 回転テーブル
4 遊星回転治具
5 ヒーター
6 スパッタリングカソード
7 AIP蒸発源
8 バイアス電源
11 基材
12 濃度勾配層
13 酸化物含有層
14 アルミナ皮膜
15 基材表面の位置

Claims (9)

  1. 基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む。以下同じ)上にα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜を形成する方法であって、基材表面にメタルイオンボンバード処理を施した後、表面を酸化処理し、その後にアルミナ皮膜を形成することを特徴とするα型結晶構造主体のアルミナ皮膜の製造方法。
  2. 前記メタルイオンボンバード処理は、真空チャンバー中で基材に電圧を印加しつつ金属プラズマを発生させて行う請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記金属プラズマは、真空アーク蒸発源から発生するCrまたはTiのプラズマである請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記酸化処理は、酸化性ガス含有雰囲気下で基材温度を650〜800℃に保持して行う請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 基材(基材上に予め下地皮膜が形成されたものを含む。以下同じ)上にα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜が形成された部材であって、基材表面近傍は、メタルイオンボンバード処理に使用した金属が表層側に行くにつれて高濃度となる濃度勾配層であり、該濃度勾配層の表面側に酸化物含有層およびα型結晶構造主体のアルミナ皮膜が順次形成されていることを特徴とするα型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材。
  6. 基材表面にメタルイオンボンバード処理を施す工程、表面を酸化処理する工程、次いでα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜を形成する工程を、同一装置内で順次実施することを特徴とするα型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材の製造方法。
  7. 基材上に下地皮膜を形成する工程、該下地皮膜表面にメタルイオンボンバード処理を施す工程、表面を酸化処理する工程、次いでα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜を形成する工程を、同一の成膜装置内で順次実施することを特徴とするα型結晶構造主体のアルミナ皮膜で被覆された部材の製造方法。
  8. 前記下地皮膜が、周期律表の4a族,5a族および6a族の元素、Al、Si、Cu並びにYよりなる群から選択される1種以上の元素とC、N、B、Oの中の1種以上の元素との化合物、これら化合物の相互固溶体、またはC、N、Bの中の1種以上の元素からなる単体または化合物、のいずれか1種以上である請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記基材が、鋼材、超硬合金、サーメット、cBN焼結体、、セラミックス焼結体、結晶ダイヤモンドまたはSiウエハである請求項7または8に記載の製造方法。
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