JP7307178B2 - 改善された安定性およびリガンド結合親和性を有するrage融合タンパク質ならびにその使用 - Google Patents

改善された安定性およびリガンド結合親和性を有するrage融合タンパク質ならびにその使用 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2018年9月14日に出願された米国仮出願第62/731,663号の優先権を主張し、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
配列表
本願は、EFS-Webを通じて提出された配列表を含有し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。20XX年XX月に作成された前記ASCIIコピーは、XXXXXUS_sequencelisting.txtと名付けられ、サイズはX,XXX,XXXバイトである。
終末糖化産物受容体(RAGE)のウシ型およびヒト型の両方をコードする遺伝子が1992年に報告された。オープンリーディングフレーム(ORF)は、22アミノ酸残基の突出したシグナル配列、約321残基のN末端エキソドメイン、19残基の膜貫通ドメインおよび41残基の細胞内ドメインに(N末端からC末端へ)組織化された404アミノ酸残基からなった。エキソドメインは、可変ドメインと2つの定常領域を含む、3つの免疫グロブリン(Ig)様ドメインを有することが示された。シグナル配列は、残基1~22であると考えられ、その後ろに残基23~116における可変ドメイン、その後ろに約6~8残基の非常に短い介在配列が続き、残基124~221におけるC1ドメインに至る。C1ドメインとC2ドメインは、より長い約18残基のリンカーによって隔てられている。C2は残基239~304にまたがり、その後に約38残基の非常に柔軟なステムが続き、細胞の表面上での受容体の大幅な移動範囲を可能にする。膜貫通ドメインは約19残基であり、タンパク質のC末端細胞内部分は残基264~404にまたがり、S391にセリンリン酸化部位を有する。
複数のRAGE受容体が相互作用してクラスターを形成し得、終末糖化産物(AGE)などの特定のリガンドの結合を補助し、細胞内シグナル伝達を引き起こし得る。細胞に結合したRAGEへのRAGEリガンドの結合は、一連の下流シグナル伝達事象を引き起こすことができる。特定のシグナル伝達プロファイルは、リガンド相互作用の性質、RAGE密度およびその他の要因に応じて異なり得る。シグナル伝達は、プロテインキナーゼC-ゼータ(PKCζ)によるアミノ酸残基S391におけるRAGEのリン酸化を伴い得る。
タンパク質、脂質および核酸の非酵素的糖化および酸化は、古典的(canonical)RAGEリガンドである終末糖化産物(AGE)を生成する。
AGEに加えて、RAGEは、アミロイドβ、S100B、S100A1、S100A2、S100A7(ソリアシン)、S100A11、S100A12、HMGB1(アンフォテリン)、リポ多糖(LPS)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)、CD11b(MAC1)、ホスファチジルセリン、C3a、S100P、S100G、S100Z、カルボニル化タンパク質、マロンジアルデヒド(MDA)、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、CAPZA1、CAPZA2、DDOST、LGALS3、MAPK1、MAPK3、PRKCSH、S100A4、S100A5 S100A6、S100A8、S100A9、S100PおよびSAA1を含む複数のリガンドを結合する。
RAGEの活性化を引き起こすAGEの蓄積は、糖尿病およびその微小血管の合併症、大血管の合併症ならびにその他の合併症を含むさまざまな疾患および障害に関係している。AGEおよびその他のRAGEリガンドは、神経変性疾患、糖尿病性合併症、複数の臓器における虚血再灌流障害、腎疾患などを含む多くの他の疾患の他、加齢にも関係している。細胞外リガンド結合ドメインを含むが、内在性タンパク質の膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠く可溶性形態のRAGE(sRAGEおよびesRAGE)は、RAGEリガンドを結合させるために有用であり得、それにより、RAGE活性化および下流のシグナル伝達カスケードを妨げる。したがって、RAGEリガンドへの増強された結合親和性および治療用途に適した延長された半減期を有する薬物様の可溶性RAGE分子が必要とされている。
商業規模での治療用タンパク質の生産には、タンパク質の機能を損なうことなく効率的に発現および精製することができるタンパク質が必要である。製造可能性は、タンパク質の費用対効果が高い生産を可能にするために、十分に効率的な様式で、ならびに十分な安定性および構造的完全性でタンパク質を発現および精製する能力として記述することができる。商業目的の場合、製造可能性は、各治療用タンパク質の候補に対して決定しなければならない。タンパク質の発現および精製過程はタンパク質に対して最適化することができるが、製造可能性はタンパク質の固有の特性に依存し得る。
本開示は、効率的な生産が可能な改善された製造可能性特性ならびにインビボでの増強されたリガンド結合特性および増強された安定性を有するRAGEに基づく生物学的に活性な治療用タンパク質を提供する。
RAGE融合物を含む組成物およびその使用方法が、本明細書に開示されている。したがって、本開示の一実施形態は、第1のドメインおよび第2のドメインを含む単離されたポリペプチドである。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号74の配列と少なくとも97%同一である。いくつかの実施形態において、第2のドメインは、免疫グロブリンのFc領域を含む。いくつかの実施形態において、第1のドメインのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって第2のドメインのアミノ末端に結合されている。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ10(ADAM 10)による切断に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5に記載されている配列を含むポリペプチドと比較して、ADAM10、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)およびトリプシンの少なくとも1つによる切断に対して少なくとも15%高い抵抗性を示す。いくつかの実施形態において、パーセント抵抗性は、同一の時間および同一の条件下で処理された対照ポリペプチドと比較した、ADAM10、MMP9およびトリプシンの少なくとも1つとの所定の期間のインキュベーション後に完全長のまま残存するポリペプチドの割合の差に等しい。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒト血清中での分解に対して抵抗性である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5に記載されている配列を含むポリペプチドと比較して、ヒト血清中での分解に対して少なくとも15%高い抵抗性を示す。いくつかの実施形態において、パーセント抵抗性は、同一の時間および同一の条件下で処理された対照ポリペプチドと比較した、所定の期間のヒト血清中でのインキュベーション後に完全長のまま残存するポリペプチドの割合の差に等しい。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、熱変性に対して改善された抵抗性を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5に記載された配列を含むポリペプチドと比較して、少なくとも5℃のより高い熱変性の開始(Tagg)を有する。いくつかの実施形態において、熱変性の開始(Tagg)の変化は、同一の温度勾配および同一の条件下で処理された対照ポリペプチドと比較した、所定の温度勾配で分析されたポリペプチドがコンパクトな折り畳まれた単量体状態から折り畳まれていない状態に遷移する温度に等しい。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、終末糖化産物(AGE)、CML-HSA(カルボキシメチル化されたヒト血清アルブミン)、HMGB1(アンフォテリン)、アミロイドβ、S100A1、S100A2、S100A4(メタスタシン)、S100A5、S100A6、S100A7(ソリアシン)、S100A8/9、S100A11、S100A12、S100B、S100P、リポ多糖(LPS)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)、CD11b(MAC1)、ホスファチジルセリン、C3a、S100P、S100G、S100Z、カルボニル化タンパク質、マロンジアルデヒド(MDA)、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、CAPZA1、CAPZA2、DDOST、LGALS3、MAPK1、MAPK3、PRKCSH、S100A4、S100A5、S100A6、S100A8、S100A9、S100PおよびSAA1の少なくとも1つを特異的に結合する。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチド二量体を含む。
いくつかの実施形態において、第1のドメインは、グリカンに連結された少なくとも1つのアスパラギン残基を含む。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、アミノ酸残基3または59の1またはそれより多くにおけるアミノ酸置換であり、ここで、前記アミノ酸残基3または59は、前記第1のドメインの位置3または59のアミノ酸に対応する。好ましい実施形態において、ドメインの3位のアミノ酸は、グルタミン酸またはグルタミンで置換されている。別の好ましい実施形態において、第1のドメインの59位のアミノ酸は、アラニン、グルタミン酸またはグルタミンで置換されている。一実施形態において、第1のドメインの60位のアミノ酸残基はセリンで置換されている。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号74に記載されている配列を含む。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの重鎖は、ヒトIgGのCH2およびCH3ドメインを含む。一実施形態において、CH2およびCH3ドメインは、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドの免疫グロブリンFcは、EU付番に従って付番された、アミノ酸残基252、254または256の1またはそれより多くにおいて、1またはそれを超えるアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸残基252は、チロシンで置換されている。いくつかの実施形態において、アミノ酸残基254は、スレオニンで置換されている。いくつかの実施形態において、アミノ酸残基256は、グルタミンまたはグルタミン酸で置換されている。
本開示のいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、IgG1、IgG2またはIgG4免疫グロブリンのFc領域を含み得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部を含むペプチド連結を含み得る。いくつかの実施形態において、ペプチド連結は、IgG1、IgG2またはIgG4のヒンジ領域の少なくとも一部を含み得る。いくつかの実施形態において、ペプチド連結は、配列番号11、配列番号10または配列番号8に記載されている配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
いくつかの実施形態において、IgG4 CH2-CH3免疫グロブリンドメインのカルボキシ末端のリジンは欠失されており、配列番号54および配列番号55に記載されている配列を含む。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号5の配列を含むポリペプチドと比較して、終末糖化産物受容体(RAGE)リガンドに対してより高い見かけの結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドとそのリガンドとの間の相互作用の見かけの平衡解離定数(Kd)は、20ナノモル濃度(nM)またはそれ未満であり得る。
例示的な実施形態は、他の点では同一の規定された条件下においてCHO-3E7細胞がいずれかのポリペプチドをコードする核酸プラスミドでトランスフェクトされる場合に、配列番号5に記載されている配列を含むポリペプチドより多い量をCHO-3E7細胞中で発現されるポリペプチドを含む。好ましい実施形態において、より多い量は少なくとも5%である。別の好ましい実施形態において、核酸プラスミドは、核酸ベクターpTT5を含む。
本開示の一実施形態は、免疫グロブリンのFc領域に結合されたRAGEポリペプチドを含む単離されたポリペプチドである。いくつかの実施形態において、RAGEポリペプチドのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって免疫グロブリンFc領域のアミノ末端に結合されている。いくつかの実施形態において、ペプチド連結は、新規ステムおよびヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、RAGEポリペプチドは、配列番号2に記載されているアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号12のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を有する。
本開示のいくつかの実施形態は、免疫グロブリンのFc領域の重鎖断片に結合されたRAGEポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、第1のドメインの配列は、配列番号74に記載されている配列と少なくとも97%同一である。いくつかの実施形態において、第2のアミノ酸配列は、免疫グロブリンのFc領域を含む。いくつかの実施形態において、第1のアミノ酸配列のカルボキシ末端は、ペプチド連結によって第2のアミノ酸配列のアミノ末端に結合されている。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、転写または翻訳制御配列に動作可能に連結されている。
さらなる実施形態は、免疫グロブリンのFc領域の重鎖断片に結合されたRAGEポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含むベクターを含む。本開示のいくつかの実施形態は、免疫グロブリンのFc領域の重鎖断片に結合されたRAGEポリペプチドを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を含む。いくつかの実施形態において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。
本開示の一実施形態は、組成物が第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含む、RAGE媒介性障害を処置するための治療用組成物を含む。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号74に記載されている配列と少なくとも97%同一である。いくつかの実施形態において、第2のアミノ酸配列は、免疫グロブリンのFc領域の重鎖断片を含む。いくつかの実施形態において、第1のアミノ酸配列のカルボキシ末端は、ペプチド連結によって第2のアミノ酸配列のアミノ末端に結合されている。いくつかの実施形態において、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を連結するペプチド連結は、可溶性スプライスバリアントに由来するステムとサイレント抗体ヒンジ領域とを含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
単離されたポリペプチドであって、
(a)第1のドメインと、ここで、前記第1のドメインは配列番号74の配列と少なくとも97%同一のアミノ酸配列を有し;
(b)免疫グロブリンのFc領域の断片を含む第2のドメインと;
を含み、
前記第1のドメインのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって前記第2のドメインのアミノ末端に結合されている、単離されたポリペプチド。
(項目2)
前記ポリペプチドが、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ10(ADAM10)による切断に対して抵抗性である、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目3)
前記ポリペプチドが、配列番号5の配列を有するポリペプチドと比較して、ADAM10、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)およびトリプシンの少なくとも1つによる切断に対して少なくとも15%高い抵抗性を示す、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目4)
前記ポリペプチドが、配列番号5の配列を含むポリペプチドと比較して、ヒト血清中での分解に対して少なくとも15%高い抵抗性を示し、パーセント抵抗性が、同一の時間および同一の条件下で処理された対照ペプチドと比較した、所定の期間のヒト血清中でのインキュベーション後に完全長のまま残存するペプチドの割合の差に等しい、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目5)
前記ポリペプチドが、配列番号5の配列を有するポリペプチドと比較して、少なくとも5℃の増加した熱安定性を有する、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目6)
前記ポリペプチドが終末糖化産物(AGE)を特異的に結合する、項目1~5のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目7)
前記ポリペプチドがHMGB1(アンフォテリン)を特異的に結合する、項目1~6のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目8)
前記ポリペプチドが、S100A1、S100A2、S100A4(メタスタシン)、S100A5、S100A6、S100A7(ソリアシン)、S100A8/9、S100A11、S100A12、S100B、S100P、リポ多糖(LPS)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)、CD11b(MAC1)、ホスファチジルセリン、C3a、S100P、S100G、S100Z、カルボニル化タンパク質、マロンジアルデヒド(MDA)、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、CAPZA1、CAPZA2、DDOST、LGALS3、MAPK1、MAPK3、PRKCSH、S100A4、S100A5、S100A6、S100A8、S100A9、S100PおよびSAA1からなる群の少なくとも1つを特異的に結合する、項目1~7のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目9)
前記ポリペプチドがアミロイドβを特異的に結合する、項目1~8のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目10)
前記ポリペプチドが、配列番号74の配列を有するポリペプチドの二量体である、項目1~9のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目11)
前記第1のドメインが、グリカンに連結された少なくとも1つのアスパラギン残基を含む、項目1~10のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目12)
前記第1のドメインが、配列番号74のアミノ酸残基3または59の1またはそれより多くにおいてアミノ酸置換を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目13)
前記アミノ酸置換が、アミノ酸残基3におけるグルタミン酸またはグルタミンでの置換である、項目12に記載の単離されたポリペプチド。
(項目14)
前記アミノ酸置換が、アミノ酸残基59におけるアラニン、グルタミン酸またはグルタミンでの置換である、項目12に記載の単離されたポリペプチド。
(項目15)
前記第1のドメインが、配列番号74のアミノ酸残基60におけるアミノ酸置換を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目16)
前記第1のドメインが、配列番号74に記載された配列を有する、項目1~11のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目17)
前記アミノ酸置換がセリンでの置換である、項目15に記載の単離されたポリペプチド。
(項目18)
前記Fc断片がヒトIgGのCH2およびCH3ドメインを含む、項目1~17のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目19)
前記CH2およびCH3ドメインが、配列番号4に記載されているアミノ酸配列を含む、項目18に記載の単離されたポリペプチド。
(項目20)
前記Fc断片が、EU付番に従って付番されたアミノ酸残基252、254または256の1またはそれより多くにおいて、1またはそれを超えるアミノ酸置換を有する、項目1~19のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目21)
前記アミノ酸置換の少なくとも1つが、アミノ酸残基252におけるチロシンでの置換である、項目20に記載の単離されたポリペプチド。
(項目22)
前記アミノ酸置換の少なくとも1つが、アミノ酸残基254におけるスレオニンでの置換である、項目20に記載の単離されたポリペプチド。
(項目23)
前記アミノ酸置換の少なくとも1つが、アミノ酸残基256におけるグルタミンまたはグルタミン酸での置換である、項目20に記載の単離されたポリペプチド。
(項目24)
前記免疫グロブリンがIgG1である、項目1~23のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目25)
前記免疫グロブリンがIgG2である、項目1~24のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド。
(項目26)
前記免疫グロブリンがIgG4である、項目1~25のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目27)
前記ペプチド連結が、可溶性RAGEスプライスバリアントに由来するペプチドステムを含む、項目1~26のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目28)
前記ペプチド連結が免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部を含む、項目1~27のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目29)
免疫グロブリンヒンジ領域の前記少なくとも一部が、IgG1のヒンジ領域のものである、項目28に記載の単離されたポリペプチド。
(項目30)
免疫グロブリンヒンジ領域の前記少なくとも一部が、配列番号11に記載されている配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項目29に記載の単離されたポリペプチド。
(項目31)
免疫グロブリンヒンジ領域の前記少なくとも一部が、IgG2の下部ヒンジ領域のものである、項目28に記載の単離されたポリペプチド。
(項目32)
免疫グロブリンヒンジ領域の前記少なくとも一部が、配列番号9または配列番号10に記載されている配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項目31に記載の単離されたポリペプチド。
(項目33)
免疫グロブリンヒンジ領域の前記少なくとも一部が、IgG4のヒンジ領域のものである、項目28に記載の単離されたポリペプチド。
(項目34)
免疫グロブリンヒンジ領域の前記少なくとも一部が、配列番号8に記載されている配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、項目33に記載の単離されたポリペプチド。
(項目35)
前記ポリペプチドが、配列番号5の配列を有するポリペプチドと比較して、終末糖化産物受容体(RAGE)リガンドへのより高い見かけの結合親和性を有する、項目1~34のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目36)
ポリペプチド-リガンド相互作用の見かけの平衡解離定数(Kd)が20ナノモル濃度(nM)またはそれ未満である、項目1~35のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目37)
前記ポリペプチド-リガンド相互作用がポリペプチド-S100A12相互作用である、項目36に記載の単離されたポリペプチド。
(項目38)
前記ポリペプチド-リガンド相互作用がポリペプチド-S100A9相互作用である、項目36に記載の単離されたポリペプチド。
(項目39)
前記単離されたポリペプチドをコードする核酸プラスミドで規定された条件下でトランスフェクトされたCHO-3E7細胞が、他の点では同一の所定の条件を使用して、前記ポリペプチド配列番号5をコードする他の点では同等の核酸プラスミドでトランスフェクトされたCHO-3E7細胞によって発現される配列番号5に記載の配列を有するポリペプチドの量より多い量の前記単離されたポリペプチドを発現する、項目1~38のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチド。
(項目40)
前記より多い量が少なくとも5%である、項目39に記載の単離されたポリペプチド。
(項目41)
前記核酸プラスミドが、核酸ベクターpTT5を含む、項目39に記載の単離されたポリペプチド。
(項目42)
免疫グロブリンのFc領域に結合されたRAGEポリペプチドを含む単離されたポリペプチドであって、前記RAGEポリペプチドのカルボキシ末端がペプチド連結によって前記免疫グロブリンFc領域のアミノ末端に結合されており、前記RAGEポリペプチドが配列番号2の配列を有する、単離されたポリペプチド。
(項目43)
前記ポリペプチドが配列番号53のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目44)
前記ポリペプチドが配列番号12のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目45)
前記ポリペプチドが配列番号15のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目46)
前記ポリペプチドが配列番号16のアミノ酸配列を有する、項目1に記載の単離されたポリペプチド。
(項目47)
項目1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子。
(項目48)
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子であって、前記ポリペプチドは、
(a)第1のドメインと、ここで、前記第1のドメインは配列番号74の配列と少なくとも97%同一の配列を有する;
(b)第2のドメインと、ここで、前記第2のドメインは免疫グロブリンのFc領域の断片を含む;
を含み、
前記第1のドメインのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって前記第2のドメインのアミノ末端に結合されている、単離された核酸分子。
(項目49)
前記ポリヌクレオチドが転写または翻訳制御配列に動作可能に連結されている、項目47または48に記載の核酸分子。
(項目50)
項目47または48に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目51)
項目47または48に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目52)
前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、項目51に記載の宿主細胞。
(項目53)
項目1~42のいずれか一項に記載の単離されたポリペプチドを含む、RAGE媒介性障害を処置するための薬学的組成物。
本発明のこれらのおよびその他の特徴、態様および利点は、以下の記載および添付の図面に関連してさらによく理解されるであろう。
図1は、二量体化されたesRAGE-Fc融合タンパク質の概略図である。RAGEポリペプチドは、V、C1、C2およびステムドメインを含む。FcポリペプチドはCH2およびCH3ドメインを含む。2つのポリペプチド間のリンカーはヒンジとして特定される。
図2は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#1(図2A);構築物#9(図2B);構築物#10(図2C);構築物#11(図2D);構築物#12(図2E);構築物#13(図2F);構築物#14(図2G);構築物#15(図2H);構築物#16(図2I);構築物#17(図2J);構築物#18(図2K);および構築物#19(図2L)。 図2は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#1(図2A);構築物#9(図2B);構築物#10(図2C);構築物#11(図2D);構築物#12(図2E);構築物#13(図2F);構築物#14(図2G);構築物#15(図2H);構築物#16(図2I);構築物#17(図2J);構築物#18(図2K);および構築物#19(図2L)。 図2は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#1(図2A);構築物#9(図2B);構築物#10(図2C);構築物#11(図2D);構築物#12(図2E);構築物#13(図2F);構築物#14(図2G);構築物#15(図2H);構築物#16(図2I);構築物#17(図2J);構築物#18(図2K);および構築物#19(図2L)。
図3は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#20(図3A);構築物#21(図3B);構築物#22(図3C);構築物#23(図3D);構築物#24(図3E);構築物#25(図3F);構築物#26(図3G);構築物#27(図3H);構築物#28(図3I);および構築物#29(図3J)。 図3は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#20(図3A);構築物#21(図3B);構築物#22(図3C);構築物#23(図3D);構築物#24(図3E);構築物#25(図3F);構築物#26(図3G);構築物#27(図3H);構築物#28(図3I);および構築物#29(図3J)。 図3は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#20(図3A);構築物#21(図3B);構築物#22(図3C);構築物#23(図3D);構築物#24(図3E);構築物#25(図3F);構築物#26(図3G);構築物#27(図3H);構築物#28(図3I);および構築物#29(図3J)。
図4は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#30(図4A);構築物#31(図4B);構築物#32(図4C);構築物#33(図4D);構築物#34(図4E);構築物#35(図4F);構築物#36(図4G);構築物#16ΔK(図4H);構築物#12ΔK(図4I)。 図4は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#30(図4A);構築物#31(図4B);構築物#32(図4C);構築物#33(図4D);構築物#34(図4E);構築物#35(図4F);構築物#36(図4G);構築物#16ΔK(図4H);構築物#12ΔK(図4I)。 図4は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の発現を示す:構築物#30(図4A);構築物#31(図4B);構築物#32(図4C);構築物#33(図4D);構築物#34(図4E);構築物#35(図4F);構築物#36(図4G);構築物#16ΔK(図4H);構築物#12ΔK(図4I)。
図5は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の増大された発現を示す:構築物#1(図5A);構築物#9(図5B);構築物#10(図5C);構築物#11(図5D);構築物#12(図5E);構築物#6(図5F)。 図5は、ウエスタンブロットによって評価されたRAGE-Fc融合タンパク質構築物の増大された発現を示す:構築物#1(図5A);構築物#9(図5B);構築物#10(図5C);構築物#11(図5D);構築物#12(図5E);構築物#6(図5F)。
図6は、RAGE-Fc融合タンパク質のリガンド結合活性を評価するために実施されたELISAアッセイによって生成された濃度応答曲線を示す。CML-HSA(図6A);HMGB1(図6B);S100A9(図6C);S100A12(図6D)。 図6は、RAGE-Fc融合タンパク質のリガンド結合活性を評価するために実施されたELISAアッセイによって生成された濃度応答曲線を示す。CML-HSA(図6A);HMGB1(図6B);S100A9(図6C);S100A12(図6D)。 図6は、RAGE-Fc融合タンパク質のリガンド結合活性を評価するために実施されたELISAアッセイによって生成された濃度応答曲線を示す。CML-HSA(図6A);HMGB1(図6B);S100A9(図6C);S100A12(図6D)。 図6は、RAGE-Fc融合タンパク質のリガンド結合活性を評価するために実施されたELISAアッセイによって生成された濃度応答曲線を示す。CML-HSA(図6A);HMGB1(図6B);S100A9(図6C);S100A12(図6D)。
図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。 図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。 図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。 図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。 図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。 図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。 図7は、緩衝液のみとともに0時間および24時間インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGE結果を示す(図7A)。;0時間および24時間のMMP9(図7B);15時間および24時間のMMP9(図7C);0時間および2時間のADAM10(図7D);15時間および24時間のADAM10(図7E);0時間および2時間のトリプシン(図7F);15時間および24時間のトリプシン(図7G)。
図8は、プロテアーゼの不存在下(図8A);またはMMP9(図8B);ADAM10(図8C);もしくはトリプシン(図8D)の存在下でインキュベートされた融合タンパク質に対する経時的タンパク質分解データを示す。 図8は、プロテアーゼの不存在下(図8A);またはMMP9(図8B);ADAM10(図8C);もしくはトリプシン(図8D)の存在下でインキュベートされた融合タンパク質に対する経時的タンパク質分解データを示す。 図8は、プロテアーゼの不存在下(図8A);またはMMP9(図8B);ADAM10(図8C);もしくはトリプシン(図8D)の存在下でインキュベートされた融合タンパク質に対する経時的タンパク質分解データを示す。 図8は、プロテアーゼの不存在下(図8A);またはMMP9(図8B);ADAM10(図8C);もしくはトリプシン(図8D)の存在下でインキュベートされた融合タンパク質に対する経時的タンパク質分解データを示す。
図9は、ヒト血清とともに0時間(図9A);17時間(図9B);49時間(図9C);および138時間(図9D)インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。 図9は、ヒト血清とともに0時間(図9A);17時間(図9B);49時間(図9C);および138時間(図9D)インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。 図9は、ヒト血清とともに0時間(図9A);17時間(図9B);49時間(図9C);および138時間(図9D)インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。 図9は、ヒト血清とともに0時間(図9A);17時間(図9B);49時間(図9C);および138時間(図9D)インキュベートされたRAGE-Fc融合タンパク質のSDS-PAGEの結果を示す。
図10は、ヒト血清中で138時間にわたってインキュベートされた融合タンパク質に対する経時的タンパク質分解データを示している。
図11は、動的光散乱法によって測定された、RAGE-Fc融合タンパク質の熱変性曲線を示している。構築物#1(図11A);構築物#10(図11B);構築物#12(図11C);および構築物#16(図11D)。
図11は、動的光散乱法によって測定された、RAGE-Fc融合タンパク質の熱変性曲線を示している。構築物#1(図11A);構築物#10(図11B);構築物#12(図11C);および構築物#16(図11D)。
発明の詳細な説明
本開示は、カルボキシ末端におけるペプチド連結を介して免疫グロブリンFcと結合された細胞外RAGEを含む融合タンパク質を記載する。本開示の融合タンパク質は、少なくとも1つのRAGEリガンド(例えば、終末糖化産物(AGE)、HMGB1(アンフォテリン)、S100A11、S100A12)に高い親和性で結合し、それによって内在性RAGEによって媒介されるシグナル伝達を破壊する能力によって特徴づけられる。本開示のRAGE融合タンパク質は、他の可溶性RAGEタンパク質と比較して、強化された安定性、延長された半減期および改善された製造可能性によってさらに特徴づけられる。
安定化されたRAGE-Fc融合タンパク質は、カルボキシ末端における16アミノ酸の付加により、完全長RAGEポリペプチドの細胞外ドメインとは異なるRAGEタンパク質によって特徴づけられる。RAGEタンパク質のカルボキシ末端は、免疫グロブリンヒンジの少なくとも一部から構成されるペプチド連結を介して、ヒト免疫グロブリンFcのアミノ末端に結合されている。いくつかの実施形態において、短いペプチドリンカーが、RAGEタンパク質と免疫グロブリンヒンジとの間に挿入され得る。
定義
特許請求の範囲および本明細書中で使用される用語は、別段の記載がなければ以下に記載されているように定義される。
「改善する」という用語は、疾患状態(例えば、RAGE媒介性疾患)の処置における任意の治療的に有益な結果を指す。
「単離された」という用語は、内在性物質からある程度精製されたタンパク質またはポリペプチド分子を指す。
本明細書で使用される「RAGE」という用語は、N末端V型免疫グロブリンドメインの全部または一部を欠如するアイソフォーム(N末端切断型)、膜貫通ドメインの全部または一部を欠如するアイソフォーム(C末端切断型)および野生型RAGEと比較して1、2、3、4または4を超えるアミノ酸置換を含むアイソフォームを含むがこれらに限定されない、終末糖化産物受容体(RAGE)またはその任意の変形をコードするポリペプチド配列を指す。
本明細書で使用される「sRAGE」という用語は、可溶性RAGEまたは膜貫通ドメインを欠如するRAGE(C末端切断型)を指す。本明細書で使用される場合、sRAGEは、膜貫通ドメインを除去するプロテアーゼ切断の結果として生成される可溶性RAGEを指す。
本明細書で使用される「esRAGE」(内在性可溶性RAGE)という用語は、以下の配列を含む修飾されたC末端を位置332~347にもたらす選択的スプライシング部位によって生成される可溶性RAGEを指す。EGFDKVREAEDSPQHM(V1ステムのC末端部分)(配列番号52)。本明細書で使用される場合、「esRAGE」は、アミノ酸位置332~347内の点突然変異を含む、1またはそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。
2またはそれを超える核酸またはポリペプチド配列の文脈におけるパーセント「同一性」という用語は、BLASTPおよびBLASTNアルゴリズムを使用し、米国国立バイオテクノロジー情報センター(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公開されている初期設定パラメータを使用して、最大の対応が得られるように比較および整列されたときに同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の特定されたパーセンテージを有する2またはそれを超える配列または部分配列を指す。用途に応じて、パーセント「同一性」は、比較されている配列の領域にわたって、例えば、機能的ドメインにわたって存在することができ、または比較されるべき2つの配列の全長にわたって存在することができる。比較のための配列の最適な整列は、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム(local homology algorithm)によって、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性整列アルゴリズム(homology alignment algorithm)によって、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似性検索法(search for similarity method)によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)、または目視による検査(一般的には、Ausubelら参照)によって実施することができる。
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」などの用語は、薬剤を投与すること、または効果を得るための手順を実行することを指す。効果は、疾患またはその症候を完全にもしくは部分的に予防するという点で予防的であり得、ならびに/または疾患および/もしくは疾患の症候の部分的なもしくは完全な治癒をもたらすという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物、特にヒトにおける任意の病的状態の任意の処置を包含し、(a)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること;(b)疾患を緩和すること、すなわち疾患の退行を引き起こすこと;(c)疾患の発症を遅らせること;(d)病気の期間を減らすこと;(e)疾患の任意の症候の重症度を緩和もしくは低減すること;または(f)疾患の任意の合併症のリスクもしくは重症度を減少することを含む。
処置することは、病的状態の処置または改善または予防における成功の任意の兆候を指し得、軽減;寛解;症候を軽減させることもしくは疾患症状を患者にとってより許容できるものにすること;悪化もしくは衰えの速度を低下させること;または悪化の最終点の衰弱性の度合いをより低下させることなどの任意の客観的または主観的パラメータが含まれる。症候の処置または改善は、医師による検査の結果を含む、客観的または主観的なパラメータに基づくことができる。したがって、「処置する」という用語は、病的状態に関連する症候または症状の発症を遅らせる、軽減する、または阻止もしくは阻害するための本発明の化合物または薬剤の投与を含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症候または疾患の副作用の軽減、除去、予防、遅延された発生または加速された解消を指す。
本明細書で使用される「予防する」という用語は、1またはそれを超える疾患状態に特徴的な1つまたは複数の症候の発生を回避しまたは防ぐことを指す。
本明細書で使用される「予防」という用語は、1またはそれを超える疾患状態の症候を予防または改善するために与えられる治療を指す。
「併用」、「併用療法」および「併用製品」は、特定の実施形態において、第1の治療薬および本明細書で使用される化合物の患者への同時投与を指す。併用投与される場合、各成分は、同時にまたは異なる時点で任意の順序で逐次に投与することができる。したがって、各成分は、別々に、但し、所望の治療効果を提供するために時間的に十分に近接して投与することができる。
「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳動物などの任意の動物を指す。
「十分な量」という用語は、所望の効果を生じるのに十分な量、例えば、細胞内のタンパク質凝集を調節するのに十分な量を意味する。
「治療的有効量」という用語は、疾患の症候を改善するのに有効な量である。予防は治療と考えることができるので、治療的有効量は、「予防的有効量」であり得る。
「パーセント抵抗性の」という用語は、同一の時間および同一の条件下で処理された対照ペプチドと比較した、ADAM10、MMP9およびトリプシンの少なくとも1つとの所定の期間のインキュベーション後に完全長のまま残存するペプチドの割合の差に等しいパーセント抵抗性を指す。
「増加した熱安定性」という用語は、同じ条件下において同じ温度勾配で処理された対照ポリペプチドと比較した、所定の期間、温度勾配でのインキュベーション後にポリペプチドが折り畳まれた状態を保つ最高の温度を指す。
本明細書で使用される「特異的結合」という用語は、K値が10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満である、受容体とそのリガンド間の親和性を指す。
本願において使用される略語には、以下のものが含まれる。終末糖化産物(AGE)、終末糖化産物受容体(RAGE)、可溶性RAGE(sRAGE)、内在性分泌型RAGE(esRAGE)、免疫グロブリン(Ig)。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に反対の意味を指示しなければ、複数表記を含むことに留意しなければならない。
RAGE融合タンパク質
本開示は、RAGE融合タンパク質ならびにこのような融合タンパク質を作製および使用する方法を提供する。
第1の態様では、単離されたポリペプチドが提供される。
単離されたポリペプチドの実施形態は、RAGEエキソドメインに由来するアミノ末端、可溶性スプライスバリアント(esRAGE)に由来するステムまたは(タンパク質分解性切断部位を含有する、ステムのC末端13アミノ酸残基を欠如する)そのステム領域の短縮化された部分、サイレント抗体ヒンジ領域および抗体Fc領域という4つのモジュールを含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、esRAGEポリペプチドを含む。esRAGEポリペプチドは、配列番号74と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
典型的な実施形態において、単離されたポリペプチドは、第1のドメインと、ここで、前記第1のドメインは配列番号74の配列と少なくとも97%同一のアミノ酸配列を有し;免疫グロブリンのFc領域の断片を含む第2のドメインと;を含み、前記第1のドメインのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって前記第2のドメインのアミノ末端に結合されている。
配列番号1は(N末端リーダー配列を含む)esRAGEの配列を提供し、配列番号74は(N末端リーダー配列を欠如する)成熟esRAGEの配列を提供する。esRAGEは、完全なRAGEの細胞外ドメインをもたらす選択的スプライシング部位によって生成されるRAGEの内在性可溶性形態であり、位置332(配列番号1)または位置310(配列番号74)で始まる追加の16アミノ酸によってカルボキシ末端において修飾されている。
様々な実施形態において、第1のドメインは、配列番号1と1、2、3、4、5、6、7または7を超えるアミノ酸が異なる配列を有する。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号1の位置25(配列番号74の位置3)にアスパラギンの置換を有し、ここで、置換は、グルタミン酸またはグルタミンである。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号1の位置81(配列番号74の位置59)にアラニンで置換されたアスパラギンを有する。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号1の位置82(配列番号74の位置60)にセリンで置換されたグリシンを有する。いくつかの実施形態において、第1のドメインは、配列番号1の位置332~347(配列番号74の位置310~325)に対応するアミノ酸配列中に挿入、欠失または置換されたアミノ酸を有する。
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、完全長のRAGEポリペプチドを含む。
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、C末端の13アミノ酸残基を欠如する短縮されたステム領域を有するRAGEポリペプチドを含む。短縮されたステムRAGEポリペプチドは、配列番号74と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。
いくつかの実施形態において、アミノ末端モジュールは、シグナル配列を含み得る。シグナル配列は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列の位置1~22のアミノ酸残基を含み得る。いくつかの実施形態において、シグナル配列は、配列番号1に記載されている配列の1~22位におけるアミノ酸配列と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であり得る。さらに他の実施形態において、アミノ末端モジュールは、RAGE融合タンパク質を発現するのに有用な任意のシグナル配列を含み得る。
いくつかの実施形態において、本開示のRAGEポリペプチドを含むアミノ末端モジュールは、位置25および81(配列番号1)または位置3および59(配列番号74)のアスパラギン残基の少なくとも1つにおいてグリコシル化され得る。いくつかの実施形態において、いずれかの位置でのグリコシル化は、最適なリガンド結合のために必要とされ得る。いくつかの実施形態において、位置25および81(配列番号1)または位置3および59(配列番号74)の両方でのアスパラギン残基のグリコシル化は、リガンド結合を損ない得る。
本開示のいくつかの実施形態において、RAGEポリペプチドは二量体化し得る。いくつかの実施形態において、RAGEポリペプチドは、RAGEリガンドを結合すると二量体化し得る。いくつかの事例では、RAGEポリペプチドのVドメインは相互作用してホモ二量体を形成し得る。いくつかの事例では、二量体化はC1またはC2ドメインによって媒介され得る。
いくつかの実施形態において、RAGEポリペプチドは、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリンドメインの一部(例えば、その断片)を含むポリペプチドに連結され得る。いくつかの事例では、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリンドメインの一部を含むポリペプチドは、ヒトIgG Fc領域またはその一部を含み得る。いくつかの事例では、ヒトIgG Fc領域は、ヒトIgG Fc領域のCH2およびCH3ドメインの少なくとも一部を含む。ヒトIgG Fc領域は、公知のIgGサブタイプ:IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のいずれにも由来し得る。
いくつかの事例では、RAGE融合タンパク質はヒトIgG4のCH2およびCH3ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、配列番号7に記載されている配列を含み得る。他の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号7に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するポリペプチドを含み得る。
いくつかの実施形態において、融合タンパク質のFcポリペプチドは、インビボで炎症誘発性であり得る。他の実施形態において、Fcポリペプチドは、インビボにおいて抑制され(silenced)得る(例えば、Fc受容体へのFcポリペプチドの生産的結合(すなわち、炎症反応をもたらす結合)を通じて本来形成される免疫複合体の形成を妨げるペプチド配列を含む)。いくつかの実施形態において、Fcポリペプチドは、ヒンジ領域中の特定のAA配列の性質によって、Fc-ガンマ受容体の結合に関して抑制され得る。
RAGE融合タンパク質のFcポリペプチドは、融合タンパク質の安定性を増大させ得る。例えば、融合タンパク質のFcポリペプチドは、RAGE融合タンパク質の安定化に寄与し得、それにより、RAGE融合タンパク質の半減期を増加させ得る。いくつかの事例において、Fcポリペプチドは血清半減期を大幅に増加させ得る。
いくつかの実施形態において、本開示のRAGE融合タンパク質は先行技術のRAGE融合タンパク質のプロテアーゼ切断部位を欠いているので、本開示のRAGE融合タンパク質は、先行技術におけるRAGE融合タンパク質よりも安定であり得る。例えば、esRAGEスプライスバリアント中の追加の16アミノ酸を除去すると、1またはそれを超えるプロテアーゼ切断部位が除去され得る。いくつかの実施形態において、RAGE融合タンパク質は、RAGEステムのC末端の13アミノ酸を欠き、それにより、先行技術のプロテアーゼ切断部位を欠く。いくつかの実施形態において、本開示のFcポリペプチドは、先行技術よりも少ないプロテアーゼ切断部位を含み得る。他の実施形態において、ペプチド連結は、先行技術におけるよりも少ないプロテアーゼ切断部位を含み得る。
プロテアーゼ切断部位は、プロテアーゼ酵素によって認識および切断され、切断されたポリペプチドをもたらすアミノ酸配列である。プロテアーゼ酵素には、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ10(ADAM10)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)およびトリプシンが含まれ得るが、これらに限定されない。
一実施形態において、本開示のRAGE融合タンパク質は、融合タンパク質のインビボ血清半減期を増加させるように最適化されたFcポリペプチドを含む。一実施形態において、Fcポリペプチドは、融合タンパク質の半減期を増加させる変異(例えば、アミノ酸置換)を生成することによって最適化される。一実施形態において、Fcポリペプチドは、残基位置252、254および256(KabatのようにEUインデックスに従って付番されている)でのアミノ酸置換を含む変異を含む。好ましい実施形態において、252位の残基はチロシンで置換され、254位の残基はスレオニンで置換され、256位の残基はグルタミン酸(グルタメート)で置換されている。
いくつかの実施形態において、融合タンパク質の血清半減期は、配列番号5に記載されている配列を含むポリペプチドと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%または200%増加する。
本開示のRAGE融合タンパク質は、ペプチド連結(リンカー)をさらに含む。リンカーは、主に、ポリペプチドと第2の異種ポリペプチドとの間のスペーサーまたはその他の種類の融合として機能する。一実施形態において、リンカーは、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸、好ましくはペプチド結合によって連結された1~20個のアミノ酸から構成され、アミノ酸は、20個の天然に存在するアミノ酸から選択される。一実施形態において、リンカーは、立体障害のないアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン)の大部分から構成されている。さらなる実施形態において、リンカーは、配列番号8に例示されるように、IgGヒンジ領域または部分的IgGヒンジ領域のアミノ酸配列を含み得る。
RAGE融合タンパク質の発現
本開示のRAGE融合タンパク質は、様々な発現-宿主系を使用して産生され得る。これらの系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;およびウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;および哺乳動物の系が含まれまるが、これらに限定されない。組換えタンパク質産生において有用な哺乳動物細胞には、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO-3E7細胞)、COS細胞、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、L細胞、C127細胞、HEK 293、表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、HL-60、U937、HaKおよびJurkat細胞が含まれるが、これらに限定されない。哺乳動物の発現は、増殖培地から回収され得る分泌されたまたは可溶性のポリペプチドの産生を可能にする。
本開示のRAGE融合タンパク質の組換え発現は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドの構築を必要とし得る。プラスミドは、標準的な組換え技術を使用して、ポリヌクレオチドを発現ベクター(例えば、pTT5、pcDNA3.1)中にサブクローニングすることによって生成され得、発現ベクターは、哺乳動物系における転写および翻訳のための調節シグナルを含む。
一実施形態において、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えプラスミドは、細胞が融合タンパク質を発現するように、トランスフェクションによってCHO細胞中に導入され得る。一実施形態において、融合タンパク質を発現する細胞は、融合タンパク質を安定して発現する細胞株を生成するために選択およびクローニングされ得る。例えば、組換え構築物を発現する細胞は、トランスフェクトされた細胞に抗生物質G418を適用することにより、プラスミドによってコードされるネオマイシン耐性について選択され得る。個々のクローンが選択され得、細胞上清のウエスタンブロット分析によって検出されるように高レベルの融合タンパク質を発現するクローンが拡大され得る。
本開示のRAGE融合タンパク質は、当業者に公知のタンパク質精製技術に従って精製され得る。例えば、組換えタンパク質を培養物中に分泌する系からの上清は、市販のタンパク質濃縮フィルターを使用して濃縮され得る。一実施形態において、上清は、適切なアフィニティー精製マトリックスに直接適用され得る。例えば、適切なアフィニティー精製マトリックスは、支持体に結合された分子(例えばプロテインA、AGE)を含み得る。一実施形態において、上清は、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスに適用され得る。別の実施形態において、上清は、陽イオン交換マトリックスに適用され得る。マトリックスには、アクリルアミド、アガロース、デキストランおよびセルロースが含まれ得るが、これらに限定されない。洗浄し、精製マトリックスから溶出した後、溶出された画分は濃縮され得る。いくつかの実施形態において、溶出物は、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィーに供され得る。いくつかの実施形態において、溶出物は、最終精製のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供され得る。
薬学的組成物
RAGE媒介性疾患の処置のための方法も、本開示によって包含される。本開示の前記方法は、治療的有効量のesRAGE-Fc融合タンパク質を投与することを含む。本開示の融合タンパク質は、薬学的組成物中に調合することができる。これらの組成物は、1またはそれを超えるesRAGE-Fc融合タンパク質に加えて、薬学的に許容され得る、賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の材料を含むことができる。このような材料は無毒であるべきであり、有効成分の有効性を妨げるべきではない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば、静脈内、皮膚または皮下、鼻、筋肉内、腹腔内経路に依存し得る。
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または苦痛の部位での注射用の薬学的組成物の場合、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容され得る水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、乳酸リンゲル注射などの等張性ビヒクルを使用して、適切な溶液を調製することが十分に可能である。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤および/またはその他の添加剤を含めることができる。
本発明の薬学的に有用な融合タンパク質の投与は、好ましくは「治療的有効量」または「予防的有効量」であり(場合によっては、予防は治療と見なすことができるが)、これは、個体に利益を示すのに十分である。投与される実際の量、および投与の速度と時間経過は、処置されている疾患の性質および重症度に依存する。処置の処方、例えば投与量などの決定は、一般開業医およびその他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置されるべき障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および開業医に公知のその他の要因を考慮に入れる。上記の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition Osol,A.(ed),1980に記載されている。
組成物は、単独でまたは他の処置と組み合わせて、処置されるべき症状に応じて同時にまたは順次に投与することができる。
RAGE融合タンパク質の使用
本開示は、高い親和性でRAGEリガンドを結合し、それにより、RAGE活性化、したがってRAGE媒介性シグナル伝達を阻害または低減するための方法および薬学的組成物を提供する。一態様において、本開示は、RAGE媒介性障害を処置することを必要とする対象に治療的有効量の本開示の融合タンパク質を投与することにより、前記対象において、RAGE媒介性障害(例えば、炎症、腎症、動脈硬化症、網膜症および糖尿病に起因するその他の合併症)を処置するための方法および試薬を提供する。一実施形態において、本開示の融合タンパク質は、対象中の1またはそれを超えるRAGEリガンドを結合し、それにより、RAGE媒介性シグナル伝達カスケードを減少または阻害し得る。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、それにより、炎症反応を低減または阻害し得る。
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は、例示の目的でのみ提示されており、決して本発明の範囲を限定することを意図していない。使用された数字(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するために努力が為されたが、もちろん、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。
別段の記述がなければ、本発明の実施は、本分野の技術に属する、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の慣用の方法を利用するであろう。このような技術は、文献中に完全に説明されている。
[実施例1]RAGE-IgG Fc融合タンパク質の発現および精製。
RAGE-Fc融合タンパク質を発現および精製するために、以下の方法を使用した。
以下の方法を使用して、配列番号16に記載されているアミノ酸配列を含むRAGE-Fcタンパク質を作製した。PCRオーバーラップ伸長によって、IgG2ヒンジ(配列番号9)に由来するリンカー配列をコードするポリヌクレオチドを介して、esRAGE(配列番号1)をコードするポリヌクレオチドをヒトIgG4 Fc(配列番号17に記載されているアミノ酸配列のアミノ酸残基359~590)をコードするポリヌクレオチドに融合させた。PCRのために使用されるプライマーは、Fcポリペプチドの252位でメチオニンからチロシンへ、254位でセリンからスレオニンへ、256位でスレオニンからグルタミン酸(グルタメート)へのアミノ酸置換をもたらす変異を含有し、付番はKabatのようなEUインデックスに従う。完全なポリヌクレオチド配列は、配列番号16に記載のアミノ酸配列を有するRAGE-Fc融合タンパク質に対する配列番号43である。二本鎖DNA断片をpTT5ベクター中にサブクローニングした。
RAGE-Fc融合タンパク質の一過性発現は以下のように行った。
無血清FreeStyle(商標)CHO発現培地(Thermo Fisher Scientific)中で増殖させたCHO-3E7細胞中で、配列番号16に記載されているアミノ酸配列を含むRAGE-Fcポリペプチドを一過性に発現させた。オービタルシェーカー(VWR Scientific)上、5%CO、37℃の三角フラスコ(Corning Inc.)中で細胞を維持した。トランスフェクションの1日前に、適切な密度で細胞をCorning三角フラスコ中に播種した。トランスフェクションの日に、esRAGE-Fcポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するDNAとトランスフェクション試薬を最適な比率で混合し、次いで、トランスフェクション用に予め播種された細胞を含有するフラスコ中に加えた。esRAGE-Fcポリペプチドをコードする組換えプラスミドDNAを、浮遊CHO-3E7細胞培養物中に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション後6日目に収集した細胞培養上清を精製に使用した。
esRAGE-Fc融合タンパク質の精製は以下のように行った。
細胞培養ブロスを遠心分離し、Monofinity A Resinが予め充填されたアフィニティー精製カラム上に、得られた上清を適切な流速で添加した。洗浄し、適切な緩衝液で溶出した後、溶出された画分をプールし、緩衝液を最終調合用緩衝液に交換した。
精製されたタンパク質は、分子量および純度の測定のために、SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングによって分析した。融合タンパク質のウエスタンブロットの結果が図2~4に示されている。構築物#1(図2A);構築物#9(図2B);構築物#10(図2C);構築物#11(図2D);構築物#12(図2E);構築物#13(図2F);構築物#14(図2G);構築物#15(図2H);構築物#16(図2I);構築物#17(図2J);構築物#18(図2K);構築物#19(図2L);構築物#20(図3A);構築物#21(図3B);構築物#22(図3C);構築物#23(図3D);構築物#24(図3E);構築物#25(図3F);構築物#26(図3G);構築物#27(図3H);構築物#28(図3I);構築物#29(図3J);構築物#30(図4A);構築物#31(図4B);構築物#32(図4C);構築物#33(図4D);構築物#34(図4E);構築物#35(図4F);構築物#36(図4G);構築物#16ΔK(図4H);構築物#12ΔK(図24I)。
多数の融合タンパク質の発現を1L規模で行い、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとそれに続くSuperdex200サイズ排除クロマトグラフィーによってタンパク質を精製した。精製されたタンパク質は、分子量と純度の測定のためにSDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングによって分析した。融合タンパク質のウエスタンブロットの結果が図5に示されている。構築物#1(図5A);構築物#9(図5B);構築物#10(図5C);構築物#11(図5D);構築物#12(図5E);構築物#6(図5F)
図2A~2L、図3A~3J、図4A~4Iおよび図5A~5F中の各ブロットのレーンは、それぞれの内容物に従って以下のように符号が付されているM、タンパク質マーカー(GenScript、カタログ番号M00521);P、ヒトIgG1、カッパ(陽性対照として)(Sigma、カタログ番号I5154);1、還元条件下(DTTあり)でのRAGE-Fc融合タンパク質;2、非還元条件下(DTTなし)でのRAGE-Fc融合タンパク質。すべてのブロットに対して使用された一次抗体は、ヤギ抗ヒトIgG-HRP(GenScript、カタログ番号A00166)であった。
精製されたタンパク質の濃度は、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用したブラッドフォードアッセイによって決定された。定量化された発現データが表9、10および11に示されている。
[実施例2]ELISAによるRAGE融合タンパク質の結合親和性を評価する。
RAGE-Fc融合タンパク質のリガンド結合特性を評価するために機能的ELISAアッセイを実施した。RAGEリガンドCML-HSA、HMGB1、S100A9およびS100A12に対するRAGE-Fc融合タンパク質の見かけの結合親和性を、以下の融合タンパク質について測定した:構築物#1(配列番号5)、構築物#9(配列番号53)、構築物#10(配列番号12)、構築物#12(配列番号15)および構築物#16(配列番号16)。以前の実験は、ELISAの基本的な機能、最適なコーティング濃度および体積、RAGE-Fc構築物のダイナミックレンジならびに最適化された抗体希釈およびTMB発色時間を決定するために実施された。
RAGEリガンドCML-HSA、HMGB1、S100A9およびS100A12を、50ナノモル濃度(nM)の濃度、ウェルあたり100マイクロリットル(μL)で、コーティングされたプレート(MaxiSorp(商標))上に別々にコーティングした。RAGEリガンドCML-HSAは、100ナノグラム(ng)、ウェルあたり100μLの濃度で、コーティングされたプレート(MaxiSorp(商標))上に別個にコーティングした。次に、プレートを4℃で一晩インキュベートして、タンパク質をプレートコーティングに結合させた。コーティング工程に続いて、150μLの洗浄液(2.67mM塩化カリウム、1.47リン酸二水素カリウム、136.9mM塩化ナトリウム、8.10mMリン酸二水素ナトリウム、0.05%Tween-20)でプレートを1回洗浄した。次にプレートを吸引し、可溶性RAGE構築物と相互作用していないタンパク質をブロックしながら、プレートウェルの満たされていない領域へのバックグランド結合を抑制するために、0.03%アジ化ナトリウムを加えたDPBS(pH7.4)中の1%BSA(1g/L)の溶液130μLで、4°Cで90分間ブロッキングした。ブロッキング工程の後、洗浄溶液で2回洗浄した。次に、振とうしながら37℃で120分間、ウェル上で、log10希釈にて各個別のリガンドとともにRAGE-Fc融合タンパク質をインキュベートした。RAGE-Fc結合工程の後、洗浄溶液で3回洗浄した。RAGE-Fc融合物のCML-HSA、HMGB1、S100A9およびS100A12への結合は、IgG Fcに対する抗原特異性を有する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体(Abcam、カタログ番号ab99759)で検出した。DBPS中に1:5000希釈された100μLの抗体をアッセイウェルに加え、振とうしながら37℃で60分間インキュベートした。次に、ウェルを洗浄溶液で4回洗浄した。次に、100μLのTMB(ThermoFisher Scientific、カタログ番号34029)を各ウェルに添加した。約1分後、50μLの1M塩酸の添加によって反応を停止させた。ウェル内容物の吸光度を、450nMの波長で分光光度計で測定した。
ELISAアッセイの結果(図6A~D)は、本開示のRAGE-Fc融合タンパク質(構築物#9、10、12、16)が、先行技術におけるRAGE-Fc融合物(構築物#1)より高い見かけの親和性で、RAGEリガンドであるCML-HSA(図6A)、HMGB1(図6B)、S100A9(図6C)およびS100A12(図6D)に結合することを示している。見かけのKd値が、各融合タンパク質-リガンド相互作用について計算され、表1、2、3および4に示されている。
Figure 0007307178000001
Figure 0007307178000002
Figure 0007307178000003
Figure 0007307178000004
[実施例3]タンパク質分解に対する感受性の評価。
ADAM10(ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ10)およびMMP9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)は、完全長RAGEを切断する酵素である。酵素は、生物学的に関連する酵素によるタンパク質分解切断に対するRAGE-Fc融合タンパク質の脆弱性を評価するために使用された。さらに、トリプシンを非特異的酵素として使用して、各融合タンパク質の一般的なプロテアーゼ耐性を評価した。比較のために、本開示のesRAGE-Fc融合タンパク質を、市販のRAGE-Fc構築物と同一の精製されたバージョンと対比して試験した。
既知のペプチド基質の切断を実証することによって、各酵素は、設定されたアッセイ条件下で機能することが確認された。簡単に説明すると、0.06μMのADAM10または0.01μMのMMP9を5μMの蛍光発生ペプチド基質[Mca-KPLGL-Dpa-AR-NH2]とともにインキュベートした。自動蛍光マイクロプレートリーダーを介して、320nmでの励起および405nmの発光での蛍光を速度論的に測定した。0.002μMのトリプシンを766μMの発色基質[Nα-ベンゾイル-DL-アルギニン4-ニトロアニリド塩酸塩]とともにインキュベートした。自動マイクロプレート分光光度計を介して、405nmで吸光度を速度論的に測定した。すべての酵素がタンパク質分解活性を示した(データは示さず)。
酵素が機能していることが確認されたら、37℃でさまざまなRAGE-Fc融合タンパク質とともに最長24時間インキュベートした。簡単に説明すると、0.06μMのADAM10(比活性:1μgのADAM10は20pmol/分/μgの基質を切断する;50,000μg=1ユニット)、0.01μMのMMP9(比活性:1μgのMMP9は1,300pmol/分/μgの基質を切断する基質;769μg=1ユニット)、または0.002μMのトリプシン(比活性:1μgのトリプシンは2,500pmol/分/μgの基質を切断する;400μg=1ユニット)を2.5μMのRAGE-Fc融合タンパク質とともにインキュベートした。以下の時点:0、2、15、24時間で、陰イオン性界面活性剤1%ドデシル硫酸リチウム(LDS)を加えることにより、酵素反応を停止させた。対照として、RAGE-Fc融合タンパク質を酵素なしでインキュベートして、実験の24時間の時間経過にわたって安定していることを確認した。次に、SYPRO Rubyタンパク質ゲル染色を使用して、試料をSDS-PAGE上で泳動した。各試料は、還元(0.1M DTT)条件下で泳動した。Bio-Rad Molecular Imagerでゲルを画像化し、バンドはImage Lab Softwareを使用して分析した。
タンパク質分解安定性実験の結果が図7A~G、図8A-Dおよび表5に示されている。結果は、構築物#1(RAGEポリペプチドのカルボキシ末端に追加の16アミノ酸を含まない市販のRAGE-Fc融合タンパク質)(配列番号5)と比較して、構築物#9(C末端の13アミノ酸のRAGEステムを欠くRAGE-Fc融合物)および10、12、16(esRAGE-Fc融合物)がMMP9およびトリプシンによるタンパク質分解切断に対してより抵抗性があること、構築物#12および#16は、ADAM10によるタンパク質分解切断に対してより抵抗性があることを示す。すべてのプロテアーゼ実験は、安定性の時間経過の間にFcポリペプチド中のジスルフィド結合を保存するために非還元条件下で実施した。還元された単量体生成物を観察するために、還元条件下でのSDS-PAGE上で反応生成物を泳動させた(図7A~7G)。特定の時点でのSDS-PAGE結果の定量化データの例を表5に示す。データは、示された処理後に残存する完全長RAGE-Fc融合タンパク質(FL)のパーセントとして表されている。完全長タンパク質は、SDS-PAGEゲル上での蛍光画像強度によって定量化された。パーセンテージは、各条件に対するゼロ時でのバンド強度の関数として表される。図8は、融合タンパク質に対する経時的なタンパク質分解データを示している。示されているデータは、還元条件下で走行されたSDS-PAGEゲルの蛍光バンドから定量化されている。パーセント変化は、示された時点で存在する完全長RAGE-Fc構築物のパーセントとして表される。表6は、試験された各構築物の配列番号を特定する。
Figure 0007307178000005
Figure 0007307178000006
[実施例4]血清中での分解に対する感受性の評価。
正常なヒト血清中に見られる酵素による切断に対する脆弱性について、RAGE-Fc融合タンパク質を評価した。比較のために、本開示のesRAGE-Fc融合タンパク質を、市販のRAGE-Fc構築物と同一の精製されたバージョンと対比して試験した。
蛍光発生ペプチド基質の切断を実証することにより、血清は、設定されたアッセイ条件下で活性な酵素を含有することが確認された。簡単に説明すると、10μMの蛍光発生ペプチド基質[Mca-KPLGL-Dpa-AR-NH2]とともに血清をインキュベートした。自動蛍光マイクロプレートリーダーを介して、320nmでの励起および405nmの発光での蛍光を速度論的に測定した。血清はタンパク質分解活性を示した(データは示されていない)。
血清が活性な酵素を含有していることが確認されたら、37℃でさまざまなRAGE-Fc融合タンパク質とともに最長138時間インキュベートした。簡単に説明すると、75%(v/v)の血清を、25%(v/v)のPBS中2μM RAGE-Fc融合タンパク質とともにインキュベートした。以下の時点:0、17、49、138時間で、陰イオン性界面活性剤1%ドデシル硫酸リチウム(LDS)を加えることにより、酵素反応を停止させた。対照として、血清中に内在性の可溶性RAGEが検出されないことを確認するために、RAGE-Fc融合タンパク質なしで血清を試験した。構築物の存在を検出するために、血清試料をウエスタンブロットで試験した。簡単に説明すると、還元条件下(0.1M DTT)でのSDS-PAGE上で試料を泳動し、次いで、PVDF膜に転写し、転写が成功したことを確認するためにポンソーで染色した。次に、PVDF膜をTBS-Tween中の5%BSAで室温で1時間ブロックし、次いで、5%BSA(Invitrogen、カタログ番号701316)を含有するTBS-Tween中で1:500に希釈された一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。次に、TBS-Tweenで、1回の洗浄につき5分間、膜を5回洗浄し、次いで、5%BSA(GenTex、カタログ番号GTX213110-01)を含有するTBS-Tween中で1:5000に希釈された二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。TBS-Tweenで、1回の洗浄につき5分間、膜を再度5回洗浄し、次いで、(ECL)化学発光を使用して検出した。Bio-Rad Molecular Imagerでゲルを画像化し、バンドはImage Lab Softwareを使用して分析した。
血清安定性実験の結果を図9A~D、図10および表7に示す。結果は、構築物#1および#10と比較して、構築物#9、12および16が、血清中に見られる酵素によるタンパク質分解切断に対してより抵抗性があることを示している。すべての血清安定性実験は、安定性の時間経過の間にFcポリペプチド中のジスルフィド結合を保存するために非還元条件下で実施した。ウエスタンブロット上において見られるように還元された単量体生成物を観察するために、還元条件下でのSDS-PAGE上で反応生成物を泳動させた(図9A~9D)。ウエスタンブロットの結果の定量化データを表7に示す。データは、示された時点後に残存する完全長RAGE-Fc融合タンパク質(FL)のパーセントとして表されている。拡散係数ウエスタンブロット膜上での画像強度によって、完全長タンパク質を定量化した。パーセンテージは、各条件に対するゼロ時でのバンド強度の関数として表される。図8は、融合タンパク質に対する経時的なタンパク質分解データを示している。示されているデータは、還元条件下で実行されたウエスタンブロット膜の強度バンドから定量化されている。パーセント変化は、示された時点で存在する完全長RAGE-Fc構築物のパーセントとして表される。表4は、試験された各構築物の配列番号を特定する。
Figure 0007307178000007
[実施例5]熱安定性および凝集の評価。
動的光散乱法(DLS)を使用して、同じ緩衝溶液中でのRAGE-Fc融合タンパク質の凝集温度(Tagg)を分析した。散乱された光の動的変動を定量化することにより、溶液中のナノ粒子とコロイドの並進拡散係数(D)に対する温度の影響を測定するために、DynaPro(登録商標)NanoStar(登録商標)機器を使用してDLSを実行した。次に、流体力学的直径(d)に関する拡散係数から、サイズとサイズ分布が計算される。結果が、図11に示されている:構築物#1(図11A);構築物#10(図11B);構築物#12(図11C);構築物#16(図11D)。融合タンパク質のDLSプロファイルはOnsetモデルのフレームワークによって分析され、点は生データを示し、緑色の実線はこのモデルによるフィッティング曲線を示す。結果は、構築物#10および#12(esRAGE-Fc融合物)が構築物#1と比較して向上した熱安定性を有することを示している。流体力学的半径(nm)とTagg(℃)を含むこの分析の結果を表8に示す。
Figure 0007307178000008
[実施例6]改善された製造可能性。
さらなる改変されたRAGE-Fc融合タンパク質を構築して、タンパク質発現の改善および融合タンパク質の製造可能性に関して試験した。改善された製造可能性は、以下の1またはそれを超える態様で現れる:より高い発現、増加した安定性または改善された溶解度。溶解度は、還元および非還元条件下でのSDS-PAGEと、それに続くウエスタンブロットによって評価され得る。先行技術とは対照的に、本開示の改良された分子は、非還元条件下において見られる塗抹したように尾を引くバンドと比べて、還元条件下において見られる明瞭に区別できるタンパク質バンドによって示されるとおり、凝集する傾向の低下を示す(図2A~2L、図3A~3J、図4A~4Iおよび図5A~5F参照、レーン1(還元条件)のバンドをレーン2(非還元条件)のバンドと比較している)。
例えば、esRAGE-Fc融合タンパク質は、esRAGEのC末端と融合タンパク質のFcポリペプチドのアミノ末端との間のリンカーとして、代替ヒトIgGポリペプチドのヒンジ領域の少なくとも一部を使用して構築された。また、RAGE-Fc融合タンパク質は、RAGEのC末端と融合タンパク質のFcポリペプチドのアミノ末端との間のリンカーとして代替ヒトIgGポリペプチドのヒンジ領域の一部を用い、C末端の13アミノ酸残基を欠く短縮されたステム領域を有するRAGEポリペプチドを使用して構築された。esRAGEポリペプチドおよび/または融合タンパク質のFcポリペプチド中にアミノ酸置換を導入することにより、さらなる修飾された融合タンパク質を生成した。代替リンカーおよびアミノ酸置換を含む融合タンパク質は、公知の方法に従ってオーバーラップPCR突然変異誘発を使用して生成された。
代替IgGヒンジ領域から得たリンカーを含むesRAGE-Fc融合タンパク質およびアミノ酸置換を含むesRAGE-Fc融合タンパク質の試験を以下のように実施した。IgG4ヒンジリンカーを含むesRAGE-Fc融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号39)、C末端の13アミノ酸残基を欠く短縮されたステム領域を有するRAGEポリペプチド(配列番号54)、またはIgG2リンカーを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号41)を、実施例1に記載されるように、CHO-3E7細胞中で発現させた。さらに、Fcポリペプチド中にアミノ置換M252Y、S254TおよびT256Eを含むesRAGE-Fc融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号44)も、実施例1に記載されているように、CHO-3E7細胞中で発現させた。トランスフェクション後、培養物を6日間増殖させた。6日目に、細胞培養上清を収集し、実施例1に記載されているように精製のために使用した。還元および非還元条件下でのSDS-PAGEによって、および一次ヤギ抗ヒトIgG-HRP抗体(GenScript、カタログ番号A00166)を使用したウエスタンブロットによって、精製されたタンパク質を分析した。タンパク質濃度は、タンパク質標準としてBSAを使用するブラッドフォードアッセイによって決定した。表5および6は、各融合タンパク質の濃度、純度および精製されたタンパク質の総収量を示している。
配列番号12に記載のアミノ酸配列(配列番号39に記載のヌクレオチド配列)によってコードされるesRAGE-Fc融合タンパク質は、配列番号15に記載のアミノ酸配列(配列番号41に記載のヌクレオチド配列)によってコードされる融合タンパク質とは、リンカーが由来するIgGヒンジのみが相違する。さらに、配列番号16に記載のアミノ酸配列(配列番号43に記載のヌクレオチド配列)によってコードされるesRAGE-Fc融合タンパク質は、配列番号15に記載のアミノ酸配列(配列番号41に記載のヌクレオチド配列)によってコードされる融合タンパク質とは、Fcポリペプチドの位置252、254および256(EU付番)におけるアミノ酸置換のみが相違する。表9に示されている結果は、IgG4ヒンジからのリンカーをIgG2ヒンジからのリンカーで置き換えることによって、融合タンパク質の純度および収量、したがって製造可能性が改善され得ることを実証する。同様に、表9に示されている結果は、融合タンパク質のFcポリペプチド中にアミノ酸置換M252Y、S254TおよびT256E(EU付番)を組み込むことにより、融合タンパク質の製造可能性が改善されることを実証する。
Figure 0007307178000009
1Lの規模で発現され、Monofinity A Resinアフィニティー精製後、HiLoad26/600 Superdex200 pgサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製されたRAGE-Fc融合タンパク質の濃度、純度および精製されたタンパク質の総収量を示すデータ。表10に示されている結果は、IgG4ヒンジからのリンカーをIgG2ヒンジからのリンカーで置き換えることによって、大規模化された生産における融合タンパク質の純度および収量、したがって製造可能性が改善され得ることを実証する。同様に、表10に示されている結果は、融合タンパク質のFcポリペプチド中にアミノ酸置換M252Y、S254TおよびT256E(EU付番)を組み込むことにより、融合タンパク質の製造可能性が改善されることを実証する。
Figure 0007307178000010
さらなるRAGE-Fc融合タンパク質の濃度、純度および精製されたタンパク質の総収量を示すデータが表11に示されている。
Figure 0007307178000011
好ましい実施形態および様々な代替実施形態を参照しながら、本発明を具体的に示し、説明してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および細部の様々な変更をこれらの実施形態中に施すことが可能であることを理解するであろう。
本明細書の本文内に引用されているすべての参考文献、発行された特許および特許出願は、あらゆる目的のために、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
非公式の配列表
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Claims (30)

  1. 単離されたポリペプチドであって、
    (a)第1のドメインと;
    (b)免疫グロブリンのFc領域の断片を含む第2のドメインと;
    を含み、
    前記第1のドメインのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって前記第2のドメインのアミノ末端に結合されており、
    前記第1のドメインおよび第2のドメインを含む前記ポリペプチドが、配列番号12、配列番号15、配列番号16および配列番号53から選択されるアミノ酸配列を有する、
    単離されたポリペプチド。
  2. 前記ポリペプチドが、配列番号15に記載の配列を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 前記ポリペプチドが、配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ10(ADAM10)による切断に対して抵抗性である、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  4. 前記ポリペプチドが、配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、ADAM10、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)およびトリプシンの少なくとも1つによる切断に対して高い抵抗性を示す、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  5. 前記ポリペプチドが、同一の時間および同一の条件下で処理された配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、ヒト血清中での分解に対して高い抵抗性を示す、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  6. 前記ポリペプチドが、配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、少なくとも5℃の増加した熱安定性を有する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  7. 前記ポリペプチドが終末糖化産物(AGE)を特異的に結合する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  8. 前記ポリペプチドがHMGB1(アンフォテリン)を特異的に結合する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  9. 前記ポリペプチドが、S100A1、S100A2、S100A4(メタスタシン)、S100A5、S100A6、S100A7(ソリアシン)、S100A8/9、S100A11、S100A12、S100B、S100P、リポ多糖(LPS)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)、CD11b(MAC1)、ホスファチジルセリン、C3a、S100P、S100G、S100Z、カルボニル化タンパク質、マロンジアルデヒド(MDA)、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、CAPZA1、CAPZA2、DDOST、LGALS3、MAPK1、MAPK3、PRKCSH、S100A4、S100A5、S100A6、S100A8、S100A9、S100PおよびSAA1からなる群の少なくとも1つを特異的に結合する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  10. 前記ポリペプチドがアミロイドβを特異的に結合する、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  11. 前記第1のドメインが、グリカンに連結された少なくとも1つのアスパラギン残基を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  12. 前記Fc領域の前記断片がヒトIgGのCH2およびCH3ドメインを含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  13. 請求項1に記載の単離されたポリペプチドを含む、RAGE媒介性障害を処置するための薬学的組成物。
  14. ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記ポリペプチドが、
    (a)第1のドメインと;
    (b)免疫グロブリンのFc領域の断片を含む第2のドメインと;
    を含み、
    前記第1のドメインのカルボキシ末端は、ペプチド連結によって前記第2のドメインのアミノ末端に結合されており、
    前記第1のドメインおよび第2のドメインを含む前記ポリペプチドが、配列番号12、配列番号15、配列番号16および配列番号53から選択されるアミノ酸配列を有する、
    単離されたポリヌクレオチド。
  15. 前記ポリペプチドが、配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ10(ADAM10)による切断に対して抵抗性である、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  16. 前記ポリペプチドが、配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、ADAM10、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)およびトリプシンの少なくとも1つによる切断に対して高い抵抗性を示す、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  17. 前記ポリペプチドが、同一の時間および同一の条件下で処理された配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、ヒト血清中での分解に対して高い抵抗性を示、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  18. 前記ポリペプチドが、配列番号5の配列からなるポリペプチドと比較して、少なくとも5℃の増加した熱安定性を有する、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  19. 前記ポリペプチドが終末糖化産物(AGE)を特異的に結合する、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  20. 前記ポリペプチドがHMGB1(アンフォテリン)を特異的に結合する、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  21. 前記ポリペプチドが、S100A1、S100A2、S100A4(メタスタシン)、S100A5、S100A6、S100A7(ソリアシン)、S100A8/9、S100A11、S100A12、S100B、S100P、リポ多糖(LPS)、酸化低密度リポタンパク質(oxLDL)、CD11b(MAC1)、ホスファチジルセリン、C3a、S100P、S100G、S100Z、カルボニル化タンパク質、マロンジアルデヒド(MDA)、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、CAPZA1、CAPZA2、DDOST、LGALS3、MAPK1、MAPK3、PRKCSH、S100A4、S100A5、S100A6、S100A8、S100A9、S100PおよびSAA1からなる群の少なくとも1つを特異的に結合する、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  22. 前記ポリペプチドがアミロイドβを特異的に結合する、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  23. 前記第1のドメインが、グリカンに連結された少なくとも1つのアスパラギン残基を含む、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  24. 前記Fc領域の前記断片がヒトIgGのCH2およびCH3ドメインを含む、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  25. 前記単離されたポリヌクレオチドが配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号56から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  26. 融合タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記単離されたポリヌクレオチドは、配列番号39、配列番号41、配列番号43および配列番号56から選択されるヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
  27. 請求項26に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
  28. 請求項26に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
  29. 請求項27に記載のベクターを含む宿主細胞。
  30. 前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項28に記載の宿主細胞。
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