JP7304032B2 - 正極材および蓄電デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、正極材および蓄電デバイスに関する。
シリカ粒子、金属ナノ粒子や、グラフェンおよびカーボンナノチューブなどの炭素材料の表面改質のために、これらの材料の表面を2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)およびその誘導体で修飾する技術が知られている(非特許文献1参照)。
Advances in Colloid and Interface Science 250 (2017) 158-184
近年、電気自動車へのリチウムイオン電池(LiB)の採用が試みられている。電気自動車のバッテリーに求められる性能の一つとして急速充放電があるが、LiBの急速充放電能力は限られていた。本発明者らは、蓄電デバイスの急速充放電を可能とする正極材について鋭意検討を重ねた結果、TEMPOのようなニトロキシラジカル部位を有する化合物で表面を修飾した材料を配合した正極材が、蓄電デバイスの急速充放電を可能とすることに想到した。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは蓄電デバイスの急速充放電を可能とする正極材を提供することにある。
本発明のある態様は正極材である。この正極材は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、
酸化によりジスルフィド結合を形成することによって環を形成し、還元により前記ジスルフィド結合がチオールに変換される硫黄含有有機化合物、またはニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物と、
担体と、
を含み、
硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が担体に結合している。
本発明の他の態様もまた正極材である。この正極材は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、
酸化によりジスルフィド結合を形成することによって環を形成し、還元により前記ジスルフィド結合がチオールに変換される硫黄含有有機化合物、またはニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物と、
を含み、
硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が、酸化物または硫化物に結合している。
本発明のさらに他の態様は蓄電デバイスである。この蓄電デバイスは、上記正極材を含む正極と、負極と、正極と負極との間に配置された電解質と、を含む。
本発明によれば、蓄電デバイスの急速充放電を可能とする正極材を提供することができる。
実施の形態に係る蓄電デバイスを示す模式図である。 実施例1、比較例1および比較例2の電極を用いた電池の充放電試験の結果を示す図である。 比較例3の電極を用いた電池の充放電試験の結果を示す図である。 実施例2の電極を用いた電池の充放電試験の結果を示す図である。 比較例4の電極を用いた電池の充放電試験の結果を示す図である。 比較例4の電極を用いた電池のサイクル特性を示す図である。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
(正極材)
実施の形態に係る正極材は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、酸化によりジスルフィド結合を形成することによって環を形成し、還元により前記ジスルフィド結合がチオールに変換される硫黄含有有機化合物、またはニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物と、を含み、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が、酸化物または硫化物に結合している。別の実施の形態に係る正極材は、酸化物または硫化物、および硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物に加えて、担体をさらに含む。ここで、担体は、酸化物または硫化物を担持する機能を有する。硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物は、液体電解質に溶解しないように酸化物または硫化物、あるいは担体に結合している。このような硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の、酸化物または硫化物、あるいは担体への結合によって、正極材は蓄電デバイスの正極として機能することができ、さらに蓄電デバイスの急速充放電を可能とする。
正極材を構成する固体の酸化物または硫化物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能であり、正極活物質として作用する化合物である。このような酸化物または硫化物の例としては、LiFeO、LiCoO、LiMn、LiMnPO、LiNiO、Li(Ni-Mn-Co)O、LiTi12、硫化リチウム、酸化リチウム、NaFePO4、NaVPO4、NaCoO、NaNi1/2Mn1/2、NaFe1/2Co1/2、MgCoSiO、MgFeSiO、MgMnSiO等が挙げられる。
正極材を構成する硫黄含有有機化合物は、酸化によりジスルフィド結合を形成することによって環を形成し、還元によりこのジスルフィド結合がチオールに変換される化合物である。より詳細には、このジスルフィド結合は、分子内の2個のチオール基が分子内で酸化反応することによって得られる共有結合であり、環を形成する。ジスルフィド結合は、還元によってチオールに変換され、再び酸化することによってジスルフィド結合に戻るという可逆的な性質を持つ。このような硫黄含有有機化合物の代表例としては、ジチオトレイトール(DTT)が挙げられる。
正極材を構成するラジカル化合物は、ニトロキシルラジカル(-N-O・)部位を有する限り特に限定されない。そのようなラジカル化合物の代表例としては、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)が挙げられる。また、特開2009-295881号公報、特開2008-192452号公報、特開2008-78063号公報に記載されているような、有機ラジカル電池に使用されている公知のラジカル化合物を、本実施の形態でのラジカル化合物として採用することができる。
正極材を構成する固体の酸化物または硫化物、あるいは担体は、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物を、液体電解質に溶解しないように結合することができ、かつ蓄電デバイスの正極の機能を妨げないことが求められ、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の種類に応じて適宜選択することができる。これらの材料例としては、上記の酸化物または硫化物の例として挙げたもの以外にグラフェンシートやカーボンペーパー、ケッチェンブラック、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。ケッチェンブラック、カーボンブラックなど粉末カーボンの場合は、300m/g以上の表面積を持つ高比表面積カーボンが望ましい。表面積を300m/g以上とすることで、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物を高密度で担持することができ、蓄電池の高速充放電特性をより向上させることができる。
本実施の形態では、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が液体電解質に溶解しないように固体の酸化物または硫化物、あるいは担体に結合していればよく、その結合手段は特に限定されない。結合手段の例としては、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の、固体の酸化物または硫化物、あるいは担体への共有結合が挙げられる。
固体の酸化物または硫化物、あるいは担体への硫黄含有有機化合物の共有結合は、例えば、硫黄含有有機化合物が水酸基を有する場合、炭素材料を用い、炭素材料の表面を予め酸化処理してカルボキシル基を形成し、このカルボキシル基に硫黄含有有機化合物の水酸基を共有結合させることによって実現できる。
固体の酸化物または硫化物、あるいは担体へのラジカル化合物の共有結合は、例えば、炭素材料を用い、ラジカル化合物にシランカップリング剤を結合させ、シランカップリング反応により、表面を予め酸化処理した炭素材料にラジカル化合物を共有結合させることによって実現できる。
実施の形態の正極材のある態様では、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の標準電極電位が、酸化物または硫化物の標準電極電位より大きく、かつ硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の電流、および酸化物または硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の電流値が酸化物または硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、使用電位範囲において存在する。ここで、電池の使用電位範囲は、電池の種類に応じて変動し得る。例えば、リチウム電池の場合、その一般的な使用電位範囲は、2~5Vである。かかる正極材を正極として用いた蓄電デバイスでは、充電時に硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が先に酸化し、その後、酸化物または硫化物が徐々に酸化し、それにより放出された電子を硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が受け取り、元の還元状態に戻る。これにより、蓄電デバイスの高速充電が可能となる。電池として機能できるようにするという観点から、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物と、酸化物または硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることが好ましく、0.03~0.8Vであることがより好ましく、0.05~0.3Vであることがさらにより好ましい。標準電極電位差が0.01V未満の場合、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物と酸化物または硫化物との間のエネルギー差が小さく、放出された電子の受け渡しが困難となる。一方で、1.0Vより大きい場合、電子は容易に受け渡し可能であるが、充放電効率(エネルギー効率)が低下し、蓄電デバイスとしての価値が毀損する。
実施の形態の正極材のある態様では、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の標準電極電位が、酸化物または硫化物の標準電極電位より小さく、かつ硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の電流、および酸化物または硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の電流値が酸化物または硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、使用電位範囲において存在する。かかる正極材を正極として用いた蓄電デバイスでは、放電時に硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が先に還元し、その後、酸化物または硫化物が徐々に還元する。これにより、蓄電デバイスの高速放電が可能となる。電池として機能できるようにするという観点から、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物と、酸化物または硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることが好ましく、0.03~0.8Vであることがより好ましく、0.05~0.3Vであることがさらにより好ましい。標準電極電位差が0.01V未満の場合、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物と酸化物または硫化物との間のエネルギー差が小さく、放出された電子の受け渡しが困難となる。1.0Vより大きい場合、電子は容易に受け渡し可能であるが充放電効率(エネルギー効率)が低下し、蓄電デバイスとしての価値が毀損する。
(蓄電デバイス)
図1は、実施の形態に係る蓄電デバイスを示す模式図である。蓄電デバイス10は、上述の正極材を含む正極12と、負極14と、正極12と負極14との間に配置された電解質16とを含む。後述するように、蓄電デバイス10は、上述の正極材が正極12に用いられていることから、急速充放電が可能である。なお、図1は模式図であって、電解質16は正極12もしくは負極14と混合状態であってもよく、正極、電解質、負極が必ずしも層状に積層されている必要はない。
正極12は、上述の正極材と、一般に正極の形成に用いられる公知の添加剤、例えばバインダー、補助導電材、増粘剤等の少なくとも一種とを混合し、公知の正極製造方法に従って製造できる。
負極14は、正極12を構成する正極材の組成に応じて、公知の負極活物質および添加剤を適宜選択し、公知の負極製造方法にしたがって製造できる。負極材の例としては、炭素材料、金属リチウム、シリコン、チタン酸リチウムなどが挙げられる。なお、正極12および負極14は、それぞれ公知の集電体を含んでもよい。電解質16は、溶液だけでなく、ポリマー電解質や固体電解質を利用することもできる。ポリマー電解質や固体電解質を用いることで、正極材が分解してTEMPO等のラジカルが生じた時に、正極12と負極14の間をラジカルがシャトルし電流効率を低下することを抑制することができる。
電解質16は、正極12と負極14との間に配置され、充放電時の正極12と負極14との間のイオンの流れを媒介する。電解質16の組成は、正極12を構成する正極材の酸化物または硫化物の種類に応じて、例えば公知の二次電池に使用されているもの等の公知の電解質のものを適宜採用することができる。電解質16の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、[Li(G3)]TFSI、[Li(G4)]TFSIが挙げられる。なお、前述の通り、電解質16は正極12もしくは負極14と混合状態であってもよく、正極、電解質、負極が必ずしも層状に積層されている必要はない。
電解質16は液体であっても固体であってもよい。電解質16が液体である場合でも、正極12の硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が電解質16に溶解しないように基材に結合しているため、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が電解質16に溶解して電池として機能しなくなることはない。蓄電デバイスの安全性をより高くするという観点から、電解質は固体であることが好ましい。一般に固体電解質は電子伝導性が低い傾向にあるが、実施の形態にかかる蓄電デバイス10は、正極12の硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が充放電時に速く酸化還元反応を行うため、固体電解質であっても急速充放電を実現することができる。
ある態様の蓄電デバイス10では、1.0Cレート以上において、正極12における硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の充電電位が酸化物または硫化物の充電電位よりも低いことが好ましい。この場合、充電時に正極12中の硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が先に酸化し、その後、酸化物または硫化物が徐々に酸化し、それにより放出された電子をラジカル化合物が受け取り、元の還元状態に戻る(メディエーション効果)。これにより、蓄電デバイス10の高速充電が可能となる。
また、別の態様の蓄電デバイス10では、1.0Cレート以上において、硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物の放電電位が酸化物または硫化物の放電電位よりも高いことが好ましい。この場合、放電時に正極12中の硫黄含有有機化合物またはラジカル化合物が先に還元し、その後、酸化物または硫化物が徐々に還元する(メディエーション効果)。これにより、蓄電デバイス10の高速放電が可能となる。
蓄電デバイス10の形状は特に限定されず、公知の二次電池の形状、例えば、ペーパー型、ボタン型、積層型、コイン型、円筒型、角形などの形状を適用することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
(合成例1:4-(N-(3-トリエトキシシリル-プロピル)カルバモイルオキシ-TEMPO)(TESPCP)の合成)
50mLスクリュー瓶にトルエン10mLと4-ヒドロキシ-TEMPO(TEMPOL)(Sigma Adrich,97%)1.0g(5.80mmol)を入れ、室温、800rpmで5分間撹拌した。得られた混合物に、3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(IPTES)(Sigma Aldrich,95%)1.4g(5.66mmol)と、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBDU)(東京化成工業,>95.0%)0.1g(0.16mmol)を添加し、室温、800rpmで3時間撹拌することによって、ウレタン化反応を行った。その後、減圧下で1日間、溶媒を除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。カラムクロマトグラフィーで使用した移動相は、ジエチルエーテル(超脱水,富士フィルム和光純薬,99.0%):ヘキサン(超脱水,富士フィルム和光純薬,96.0%)=65:35vol%であり、固定相は、ワコーゲル(登録商標)50NH2(富士フィルム和光純薬)である。得られたTESPCPの収量は1.5g、収率は60%であり、濃赤色かつ高粘性の液体であった。
(実施例1:TESPCP固定化カーボンペーパー(CP)電極の製造)
カーボンペーパー(CP)上へヒドロキシ基やカルボキシ基を導入するべく、下記の通りpiranha溶液(HSO:H=80:20vol%)を用いて酸処理を行った。4×2.5cmのカーボンペーパー(CP)(180μmt,TGP-H60,TORAY)を予めアセトンにて10分間超音波洗浄した後に加熱乾燥させた。50mLビーカーに硫酸(95wt%)40mLと、過酸化水素水(30~35wt%)10mLとを入れて混合し、得られたpiranha溶液に、上記の前処理したCPを80℃で24時間加熱しながら浸漬した。次いで、純水を添加し、室温で30分間、純水置換を行った。その後、CPを純水で洗浄して、酸化CP(OCP)を得た。
次に、酸処理済みのCP上へシランカップリング反応によりTESPCPを固定化した。5mLサンプル管にメタノール1.8mL、TESPCP100μL、酢酸水溶液(pH4)100μLを入れて混合した(メタノール:酢酸水溶液:TESPCP=90:5:5vol%)。この混合溶液に、OCP(11mmΦ×4)を加え、65℃で24時間加熱した。反応後、OCPをトルエン(超脱水)で濯いで洗浄し、120℃で22時間、加熱乾燥した。その後、メタノールとトルエンの混合溶液(メタノール:トルエン=1:1 v/v)中で超音波洗浄を行った(1分間,200W)。得られたOCPにTHF(超脱水)3mLと3-クロロ過安息香酸(mCPBA,Sigma Aldrich,<77%)0.13g(0.75mmol)を加え、室温で1日間静置した。その後、THF(超脱水)で濯いで洗浄し、減圧乾燥(40℃,1日間)して、TESPCP固定化CP電極を得た。
(比較例1:CP電極)
実施例1において、酸処理する前のCPを比較例1の電極として用いた。
実施例1の電極を用いて、リチウム空気二次電池における充放電試験を試みた。また、比較のため、比較例1のCP電極での評価、TEMPOを100mM添加した電解液およびCP電極を用いた場合(比較例2)の評価も行った。この際の放電容量規定時の充放電試験結果を図2に示す。なお、使用した試薬と試験条件は下記の通りである。
(試薬)
・LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(99.9%,キシダ化学)(購入後真空乾燥,110℃,1日)
・TEGDME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル(≧99%,Sigma-Aldrich)(購入後脱水,4Å Molecular sievs,1週間以上)
・Celgard 2500,25μmt,15mmΦ
・Glass fiber separator,300μmt,15または17mmΦ,Whatman
・電解液 1M LiTFSI/TEGDME,<30ppm(HO)
90μL(O雰囲気)
(試験条件)
・セル:Flat cell or Air-tight bottle cell
・試験方法:定電流充放電試験(CC)
・電流密度:0.01mA cm-2
・カットオフ電圧:放電2.0V,充電4.2V
・カットオフ容量:0.05mAh cm-2
・充放電装置:HJ1001SD8(北斗電工)
図2中、「A」は、比較例1のCP電極を用いた電池の充放電曲線を、「B」は、実施例1のTEMPO固定化電極を用いた電池の充放電曲線を、「C」は、比較例2のTEMPOを100mM添加した電解液を用いた電池の充放電曲線を示す。曲線Aで示されるように、比較例1のCP電極では充電初期段階にてカットオフ電圧に達していることが確認された。また、曲線Cで示されるように、TEMPOを添加した電解液ではカットオフ電圧には達しない一方で過充電を生じることが確認された。これは、固定化されていないTEMPOが酸化還元を繰り返しながら正極―負極間を移動するレドックスシャトルと呼ばれる現象であり、充放電効率を著しく低下させる。これらと比較して、実施例1のTESPCP固定化CP電極では、曲線Bで示されるように放電容量と充電容量が一致しており、レドックスシャトルを発現せず充電反応を生じていることが示唆された。
(実施例2:硫黄/DTT固定化ケッチェンブラック(KB)電極の製造)
実施例2の電極の製造に使用した試薬を以下に列挙する。
・リチウム金属(本荘ケミカル)
・硫黄(Aldrich)
・ケッチェンブラック(KB-EC600JD)(ライオン)
・ポリフッ化ビニリデン(PVdF)(Aldrich)
・N-メチル-2-ピロリドン(NMP)(関東化学)
・リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)(キシダ化学)
・1,3-ジオキソラン(DOL)(和光純薬)
・エチレングリコールジメチルエーテル(DME)(和光純薬)
・トリエチレングリコールジメチルエーテル(G3)(和光純薬)
・1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(HFE)(東京化成工業)
・1,4-ジチオトレイトール(DTT)(Aldrich)
・1-ブタンチオール(東京化成工業)
・硝酸(関東化学)
・テトラヒドロフラン(THF)(和光純薬)
・特級エタノール(純正化学)
・5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)(Aldrich)
・N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(東京化成工業)
(酸化ケッチェンブラック(oKB)の作製)
ねじ口瓶にケッチェンブラック(KB)500mg、硝酸40mLを入れ、100℃、400rpmで24時間撹拌した。その後、H2Oを用いて3回遠心分離を行った後、エタノールを用いて2回遠心分離を行った。生成物を70℃で12時間真空乾燥し、酸化KB(oKB)を得た。
(DTT固定化KB(oKB-DTT)の作製)
酸化KB0.0750g、DTT0.150g、DCC0.225g、THF30mLをサンプル瓶に入れ、アルゴン下で12時間撹拌した。その後、THFを用いて2回遠心分離を行った。得られた生成物を12時間真空乾燥し、DTT固定化KB(oKB-DTT)を得た。
(硫黄/DTT固定化KB(S/oKB-DTT)複合体の作製)
乳鉢にて硫黄(硫黄粉末)500mg、oKB-DTT500mgを混合した。得られた混合物をサンプル瓶に移し、窒素下、155℃で12時間加熱して、S/oKB-DTT複合体を得た。
(S/oKB-DTT複合体正極の作製)
乳鉢にてS/oKB-DTT複合体90wt%、PVdF10wt%を混合した。得られた混合物にNMPを添加し、スラリー化した。スラリーをアルミニウム箔上に塗布し(ドクターブレードPI-1210自動塗工装置,130μm,テスター産業)、乾燥した。
(比較例3:S/KB電極の製造)
乳鉢にて硫黄(硫黄粉末)500mg、KB500mgを混合した。得られた混合物をサンプル瓶に移し、窒素下、155℃で12時間加熱して、硫黄KB(S/KB)複合体を得た。その後、S/oKB-DTT複合体の代わりにS/KB複合体を用いたこと以外は実施例2の「S/oKB-DTT複合体正極の作製」に記載の方法と同様にして、S/KB電極を作製した。
(比較例4:DTT固定化KB電極の製造)
硫黄を加えなかったこと以外は実施例2と同様にしてDTT固定化KB(oKB-DTT)電極を製造した。
実施例2、比較例3および4の電極の電気化学的特性評価のために、下記の構成のコインセル(2032型コインセル,Hosen)を作製した。
・作用電極(W.E.):比較例3(S/KB複合体)正極,
実施例2(S/oKB-DTT複合体)正極(S:oKB-DTT=50:50,33:67,17:83wt.%),
比較例4(DTT固定化KB)正極
・対極(C.E.):リチウム金属
・セパレータ:Celgard(Celgard社製)
・電解液:Li(G3)TFSI:HFE=20:80vol.%(Li(G3)TFSIはLiTFSIとG3を等モル混合したもの)
作製したコインセルの充放電特性試験を充放電試験機(東洋システム)にて行った。試験条件は下記の通りである。
・電圧範囲:1.5-3.0V
・電流密度:1C=1675mA g-1(sulfur)(硫黄の重量1g当たり1675mAh)
・充放電電流値
(1)レート特性評価
0.05,0.1,0.2,0.5,1.0,0.05C(各10サイクル)
(2)サイクル特性評価
0.05C
比較例3の電極での結果を図3に示し、実施例2の電極での結果を図4に示す。実施例2のDTTを固定化した電極を用いた電池では、比較例3のDTTを固定化していない電極を用いた電池と比較して、放電容量が増加し、さらに反応電位が上昇していた。この反応電位の上昇は、放電反応の中間生成物である多硫化リチウム(Li)の過電圧が低減していることを示し、DTTが放電反応のメディエーターとして機能していることを示す。
oKB-DTT由来の容量への寄与を調査するために、比較例4の電極を用いて充放電試験を行った。その結果を図5および図6に示す。図5は、比較例4の電極を用いた電池の充放電曲線を示す。図6は、比較例4の電極を用いた電池のサイクル性能を示す。図5に示すように、DTT固定化KBのみで構成した比較例4の電極を用いた電池では、DTT自体の充放電容量が非常に小さい。これは、前述した実施例2の電極による電池の容量増加は、DTT自体によるものではなく、DTTのメディエーター効果によるものであることを示す。図6に示すように、DTTのサイクル特性は良好であり、DTT固定化電極が電池材料として適切であることが分かる。
10 蓄電デバイス
12 正極
14 負極
16 電解質

Claims (27)

  1. リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、
    酸化によりジスルフィド結合を形成することによって環を形成し、還元により前記ジスルフィド結合がチオールに変換される硫黄含有有機化合物と
    担体と、
    を含み、
    前記硫黄含有有機化合物が前記担体に結合していることを特徴とする正極材。
  2. 前記硫黄含有有機化合物が前記担体に共有結合していることを特徴とする請求項1に記載の正極材。
  3. 前記硫黄含有有機化合物の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より大きく、かつ前記硫黄含有有機化合物の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記硫黄含有有機化合物の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする請求項1または2に記載の正極材。
  4. 前記硫黄含有有機化合物と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項に記載の正極材。
  5. 前記硫黄含有有機化合物の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より小さく、かつ前記硫黄含有有機化合物の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記硫黄含有有機化合物の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする請求項1または2に記載の正極材。
  6. 前記硫黄含有有機化合物と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項に記載の正極材。
  7. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の正極材を含む正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された電解質と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
  8. 1.0Cレート以上において、前記硫黄含有有機化合物の充電電位が、前記酸化物または前記硫化物の充電電位よりも低いことを特徴とする請求項に記載の蓄電デバイス。
  9. 1.0Cレート以上において、前記硫黄含有有機化合物の放電電位が、前記酸化物または前記硫化物の放電電位よりも高いことを特徴とする請求項に記載の蓄電デバイス。
  10. リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、
    酸化によりジスルフィド結合を形成することによって環を形成し、還元により前記ジスルフィド結合がチオールに変換される硫黄含有有機化合物またはニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物と、
    を含み、
    前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物が、前記酸化物または前記硫化物に結合していることを特徴とする正極材。
  11. 前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物が、前記酸化物または前記硫化物に共有結合していることを特徴とする請求項10に記載の正極材。
  12. 前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より大きく、かつ前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする請求項10または11に記載の正極材。
  13. 前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項12に記載の正極材。
  14. 前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より小さく、かつ前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする請求項10または11に記載の正極材。
  15. 前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項14に記載の正極材。
  16. 請求項10乃至15のいずれか1項に記載の正極材を含む正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された電解質と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
  17. 1.0Cレート以上において、前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の充電電位が、前記酸化物または前記硫化物の充電電位よりも低いことを特徴とする請求項16に記載の蓄電デバイス。
  18. 1.0Cレート以上において、前記硫黄含有有機化合物または前記ラジカル化合物の放電電位が、前記酸化物または前記硫化物の放電電位よりも高いことを特徴とする請求項16に記載の蓄電デバイス。
  19. リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、
    トロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物と、
    担体と、
    を含み、
    記ラジカル化合物が前記担体に結合し、
    前記ラジカル化合物の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より大きく、かつ前記ラジカル化合物の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記ラジカル化合物の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする正極材。
  20. 記ラジカル化合物が前記担体に共有結合していることを特徴とする請求項19に記載の正極材。
  21. リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、フッ素、亜鉛、スズおよび鉛からなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、
    トロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物と、
    担体と、
    を含み、
    記ラジカル化合物が前記担体に結合し、
    前記ラジカル化合物の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より小さく、かつ前記ラジカル化合物の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記ラジカル化合物の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする正極材。
  22. 記ラジカル化合物が前記担体に共有結合していることを特徴とする請求項21に記載の正極材。
  23. 記ラジカル化合物と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項19または20に記載の正極材。
  24. 記ラジカル化合物と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項21または22に記載の正極材。
  25. 請求項19乃至24のいずれか1項に記載の正極材を含む正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された電解質と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
  26. 1.0Cレート以上において、前記ラジカル化合物の充電電位が、前記酸化物または前記硫化物の充電電位よりも低いことを特徴とする請求項25に記載の蓄電デバイス。
  27. 1.0Cレート以上において、前記ラジカル化合物の放電電位が、前記酸化物または前記硫化物の放電電位よりも高いことを特徴とする請求項25に記載の蓄電デバイス。
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