以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示す部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
1.電気光学装置
本発明の電気光学装置の一例として、アクティブマトリクス方式の液晶装置を例に説明する。
1A.基本構成
図1は、本実施形態に係る電気光学装置100の平面図である。図2は、図1中のA-A線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜用いて説明する。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向とは反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向といい、Y1方向とは反対の方向をY2方向という。Z軸に沿う一方向をZ1方向といい、Z1方向とは反対の方向をZ2方向という。
図1および図2に示す電気光学装置100は、透過型の液晶表示装置である。図2に示すように、電気光学装置100は、透光性を有する素子基板2と、透光性を有する対向基板4と、枠状のシール部材8と、液晶層9とを有する。素子基板2は「第1基板」の例示である。対向基板4は「第2基板」の例示である。液晶層9は「電気光学層」の例示である。シール部材8は、素子基板2と対向基板4との間に配置される。液晶層9は、素子基板2、対向基板4およびシール部材8によって囲まれる領域内に配置される。素子基板2、液晶層9および対向基板4は、Z軸に沿って並ぶ。対向基板4が有する後述の第2基体41の表面がX-Y平面に平行である。以下では、対向基板4の厚さ方向であるZ1方向またはZ2方向からみることを「平面視」と言う。
本実施形態の電気光学装置100では、光は、例えば対向基板4に入射し、液晶層9を透過して素子基板2から出射される。なお、光は、素子基板2に入射し、液晶層9を透過して対向基板4から出射されてもよい。当該光は可視光である。「透光性」とは、可視光に対する透過性を意味し、好ましくは可視光の透過率が50%以上であることをいう。また、図1に示す電気光学装置100は平面視で四角形状をなすが、電気光学装置100の平面視での形状は、これに限定されず、例えば円形等であってもよい。
図2に示すように、素子基板2は、第1基体21、配線層20、複数の画素電極27および第1配向膜29を有する。第1配向膜29は、素子基板2において最も液晶層9側に位置しており、液晶層9の液晶分子を配向させる。第1配向膜29の構成材料としては、例えばポリイミドおよび酸化ケイ素等が挙げられる。
図2に示すように、対向基板4は、第2基体41、導光層40、保護層44、共通電極45、コート層46および第2配向膜47を有する。第2基体41は「基材」の例示である。第2配向膜47が最も液晶層9側に位置する。第2配向膜47は、液晶層9の液晶分子を配向させる。第2配向膜47の構成材料としては、例えばポリイミドおよび酸化ケイ素等が挙げられる。また、対向基板4には、図4に示すスペーサー5が設けられる。対向基板4および素子基板2については後で詳述する。
シール部材8は、例えばエポキシ樹脂等の各種硬化性樹脂を含む接着剤等を用いて形成される。シール部材8は、素子基板2および対向基板4のそれぞれに対して固着される。シール部材8の周方向での一部には、液晶分子を含む液晶材をシール部材8の内側に注入するための注入口81が形成される。注入口81は、各種樹脂材料を用いて形成される封止材80により封止される。
液晶層9は、正または負の誘電異方性を有する液晶分子を含む。液晶層9は、液晶分子が第1配向膜29および第2配向膜47の双方に接するように素子基板2および対向基板4によって挟持される。液晶層9は、複数の画素電極27と共通電極45との間に配置され、電界による光学的特性が変化する。具体的には、液晶層9が有する液晶分子の配向は、液晶層9に印加される電圧に応じて変化する。つまり、液晶層9は、印加される電圧に応じて光を変調させることで階調表示を可能とする。
図1に示すように、素子基板2における対向基板4側の面には、複数の走査線駆動回路11とデータ線駆動回路12と、複数の外部端子14とが配置される。外部端子14には、走査線駆動回路11およびデータ線駆動回路12のそれぞれから引き回される引回配線15が接続される。
電気光学装置100は、画像を表示する表示領域A10と、表示領域A10を平面視で囲む周辺領域A20とを有する。表示領域A10には、行列状に配列される複数の画素Pが設けられる。1つの画素Pに対して1つの画素電極27が配置される。周辺領域A20には、走査線駆動回路11およびデータ線駆動回路12等が配置される。
1B.電気的な構成
図3は、素子基板2の電気的な構成を示す等価回路図である。図3に示すように、素子基板2には、n本の走査線244とm本のデータ線246とn本の容量線245とが設けられる。nおよびmはそれぞれ2以上の整数である。
n本の走査線244は、それぞれY軸に沿って延在し、X軸に沿って等間隔で並ぶ。走査線244は、トランジスター23のゲートに電気的に接続される。また、n本の走査線244は、図1に示す走査線駆動回路11に電気的に接続される。n本の走査線244には、走査線駆動回路11から走査信号G1、G2、…、およびGnが線順次で供給される。
図3に示すm本のデータ線246は、それぞれX軸に沿って延在し、Y軸に沿って等間隔で並ぶ。データ線246は、トランジスター23のソースに電気的に接続される。また、m本のデータ線246は、図1に示すデータ線駆動回路12に電気的に接続される。m本のデータ線246には、図1に示すデータ線駆動回路12から画像信号S1、S2、…、およびSmが並行に供給される。
図3に示すn本の走査線244とm本のデータ線246とは、互いに絶縁され、平面視で格子状をなす。隣り合う2つの走査線244と隣り合う2つのデータ線246とで囲まれる領域が画素Pに対応する。1つの画素Pには、1つの画素電極27が設けられる。1つの画素電極27には、1つのトランジスター23が電気的に接続される。トランジスター23は、例えばスイッチング素子として機能するTFTである。
n本の容量線245は、それぞれY軸に沿って延在し、X軸に沿って等間隔で並ぶ。また、n本の容量線245は、複数のデータ線246および複数の走査線244と絶縁され、これらに対して離間して形成される。容量線245には、例えばグランド電位等の固定電位が印加される。また、容量線245と画素電極27との間には、液晶容量に保持される電荷のリークを防止するために蓄積容量240が液晶容量と並列に配置される。蓄積容量240は、供給された画像信号Smに応じて画素電極27の電位を保持するための容量素子である。
走査信号G1、G2、…、およびGnが順次アクティブとなり、n本の走査線244が順次選択されると、選択される走査線244に接続されるトランジスター23がオン状態となる。すると、m本のデータ線246を介して表示すべき階調に応じた大きさの画像信号S1、S2、…、およびSmが、選択される走査線244に対応する画素Pに取り込まれ、画素電極27に印加される。これにより、画素電極27と図2に示す対向基板4が有する共通電極45との間に形成される液晶容量に、表示すべき階調に応じた電圧が印加され、印加される電圧に応じて液晶分子の配向が変化する。また、蓄積容量240によって、印加される電圧が保持される。このような液晶分子の配向の変化によって光が変調され、階調表示が可能となる。
1C.素子基板2の構成
図4は、電気光学装置100の一部を示す断面図である。図4に示すように、素子基板2は、第1基体21、遮光体241、配線層20、複数の画素電極27および第1配向膜29を有する。
図4に示す第1基体21は、透光性および絶縁性を有する平板で構成される。第1基体21は、例えば、ガラスまたは石英等で構成される。第1基体21には、遮光性および導電性を有する遮光体241が設けられる。遮光体241は、トランジスター23ごとに設けられる。なお、遮光体241は、第1基体21に設けられる凹部内に配置される。遮光体241の構成材料としては、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびアルミニウム(Al)等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等が挙げられる。これらの中でも、タングステンを用いることで、遮光体241によってトランジスター23への光の入射を特に効果的に防ぐことができる。また、遮光体241は、トランジスター23が有するゲート電極に電気的に接続され、バックゲートとして用いられてもよい。
遮光体241上には、配線層20が配置される。配線層20は、第1基体21と複数の画素電極27との間に位置する。配線層20は、トランジスター23、走査線244、容量線245、蓄積容量240、およびデータ線246を有する。また、配線層20は、絶縁性および透光性を有する絶縁体22を有する。絶縁体22は、層間絶縁膜221、222、223、224、225および226がこの順に積層された構成である。層間絶縁膜221~226は、それぞれ、例えば熱酸化またはCVD(chemical vapor deposition)法等で成膜される酸化ケイ素膜で構成される。絶縁体22の層間には、複数のトランジスター23および各種配線のそれぞれが適宜に配置される。
第1基体21上には層間絶縁膜221が配置される。層間絶縁膜221と層間絶縁膜222との間にはトランジスター23が配置される。詳細な図示はしないが、トランジスター23は、半導体層、ゲート電極およびゲート絶縁膜を有する。当該半導体層は、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域を有する。層間絶縁膜222と層間絶縁膜223との間には、走査線244が配置される。走査線244は、トランジスター23のゲート電極に電気的に接続される。層間絶縁膜223と層間絶縁膜224との間には、容量線245が配置される。層間絶縁膜224と層間絶縁膜225との間には、蓄積容量240が配置される。蓄積容量240は、例えばトランジスター23のドレイン領域に電気的に接続される電極と、容量線245に電気的に接続される電極と、これら2個の電極の間に配置された誘電体層とを有する。層間絶縁膜225と層間絶縁膜226との間には、データ線246が配置される。データ線246はトランジスター23のソース領域に電気的に接続される。
なお、図4では、絶縁体22の層間に配置されたトランジスター23および各種配線が模式的に示される。各種配線の配置は図4に示す例に限定されず任意である。例えば、データ線246よりも液晶層9側に蓄積容量240が配置されてもよい。
蓄積容量240が有する各電極は、例えば窒化チタン膜で構成される。走査線244、容量線245、およびデータ線246等の各種配線は、例えば、アルミニウム膜と窒化チタン膜との積層体で構成される。アルミニウム膜を含むことで、窒化チタン膜のみで構成される場合に比べて低抵抗化を図ることができる。なお、これら電極または各種配線のそれぞれは、前述の材料以外の材料で構成されてもよい。例えば、これら電極または配線のそれぞれは、タングステン、チタン、クロム、鉄およびアルミニウム等の金属、金属窒化物、ならびに金属シリサイド等で構成されてもよい。
配線層20上には、複数の画素電極27が配置される。画素電極27は、透光性を有しており、例えばITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電材料で構成される。
図5は、素子基板2の一部を示す平面図である。図5に示すように、素子基板2は、光が透過する複数の透光領域A11と、光を遮断する配線領域A12とを有する。複数の透光領域A11は、行列状に配置され、それぞれZ1方向からみてほぼ四角形状をなす。各透光領域A11には、画素電極27が設けられる。配線領域A12は、Z1方向からみて格子状をなし、透光領域A11を囲む。配線領域A12には、トランジスター23、走査線244、データ線246、および容量線245が設けられる。複数の走査線244と複数のデータ線246とは、Z1方向からみて格子状をなす。トランジスター23および蓄積容量240は、走査線244とデータ線246との交差位置に配置される。
1D.対向基板4の構成
図4に示すように、対向基板4は、第2基体41、導光層40、保護層44、共通電極45、複数のスペーサー5、コート層46および第2配向膜47を有する。
図4に示す第2基体41は、透光性および絶縁性を有する平板で構成される。第2基体41は、例えば、ガラスまたは石英等で構成される。第2基体41と共通電極45との間には、導光層40が設けられる。導光層40は、レンズ層42、および透光層43を有する。レンズ層42および透光層43は、それぞれ透光性および絶縁性を有する。
レンズ層42は、第2基体41に接触する。レンズ層42は、平板状の部分である基部420と、複数のレンズ421とを有する。なお、基部420は省略してもよい。レンズ421は、基部420から共通電極45に向かって突出し、透光層43と接触するレンズ面を有する。当該レンズ面は、共通電極45に向かって突出する凸曲面である。
図6は、対向基板4の一部を示す平面図である。なお、図6ではコート層46および第2配向膜47の図示が省略される。図6に示すように、複数のレンズ421は、Z1方向からみて行列状に配置される。図6では、X軸またはY軸に沿って並び、かつ隣り合う2個のレンズ421同士は、接触する。なお、当該2個のレンズ421同士は離間していてもよい。また、レンズ421のZ1方向からみた形状は、円形に限定されず、例えば四角形であってもよい。
図4に示すように、透光層43は、レンズ層42と共通電極45との間に配置され、レンズ層42に接触する。透光層43の屈折率は、レンズ層42の屈折率よりも小さい。透光層43の構成材料としては、例えばケイ素を含む透光性および絶縁性を有する無機材料が挙げられ、中でも、二酸化ケイ素等の酸化ケイ素であることが好ましい。また、前述のレンズ層42の構成材料としては、例えばケイ素を含む透光性および絶縁性を有する無機材料が挙げられ、中でも、酸窒化シリコンであることが好ましい。透光層43を酸化ケイ素で構成し、レンズ層42を酸窒化ケイ素で構成することで、レンズ421のレンズ面としての機能を特に効果的に発揮することができる。なお、透光層43の屈折率は、レンズ層42の屈折率よりも大きくてもよい。レンズ層42が有するレンズ421は、凸レンズ面ではなく、凹レンズ面を有してもよい。
図4に示すように、保護層44は、透光層43と共通電極45との間に配置され、これらに接触する。なお、透光層43における保護層44と接触する面は、複数のレンズ421の凹凸が反映されない平坦面である。保護層44は、例えば透光性および絶縁性を有するケイ素系の無機材料で形成される。具体的には、保護層44は、例えば二酸化ケイ素等の酸化ケイ素で構成される。なお、保護層44は省略されてもよい。
共通電極45は、保護層44と液晶層9との間に配置され、保護層44に接触する。共通電極45は、透光性を有しており、例えばITOまたはIZO等の透明導電材料で構成される。
1E.スペーサー5およびその近傍の構成
図7は、スペーサー5およびその近傍を示す断面図である。なお、以下の説明では、Z2方向を上方とし、Z1方向を下方として説明する。図7に示すように、共通電極45上には、柱状のスペーサー5が配置される。スペーサー5は、素子基板2と対向基板4との間の距離を規定する。具体的には、図4に示すように、スペーサー5は、画素電極27と共通電極45との間の距離を規定する。別の見方をすれば、スペーサー5は、液晶層9の厚さを規定する。スペーサー5は、共通電極45から素子基板2に向かって、Z2方向に突出する。スペーサー5の先端面502は、コート層46および第2配向膜47を介して素子基板2に接続される。先端面502は、スペーサー5のうち対向基板4から最も遠い面である。なお、スペーサー5の先端面502は、直接的に素子基板2に接触してもよい。
図7に示すように、スペーサー5は、複数の層で構成される。具体的には、スペーサー5は、第3無機材料層53、第2無機材料層52および第1無機材料層51を有する。第3無機材料層53、第2無機材料層52および第1無機材料層51は、この順にZ2方向に沿って共通電極45上に積層される。
第3無機材料層53は、第2無機材料層52と共通電極45との間に配置され、これらに接触する。第3無機材料層53は、絶縁性を有し、無機材料である第3無機材料で構成される。第3無機材料としては、例えば二酸化ケイ素等の酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素である。第3無機材料層53を備えることで、第2無機材料層52が共通電極45に接触しない。そのため、第2無機材料層52の影響によって共通電極45の結晶性が変わることを抑制することができる。また、第3無機材料としては、酸化ケイ素であることがより好ましい。酸化ケイ素で構成されることで、第3無機材料層53を特に容易に製造することができる。
第2無機材料層52は、第1無機材料層51と共通電極45との間に配置される。第2無機材料は、遮光性および絶縁性を有し、無機材料である第2無機材料で構成される。本明細書において、遮光性とは、可視光に対する遮光性を意味し、好ましくは、可視光の透過率が50%未満であることをいい、より好ましくは、10%以下であることをいう。第2無機材料層52が設けられることで、スペーサー5が導光路として機能することを抑制することができる。それゆえ、スペーサー5が導光路として機能することにより電気光学装置100のコントラストが低下することを抑制することができる。
第2無機材料は、例えば、窒化ケイ素、または窒化チタン等の金属を含む材料であることが好ましい。かかる第2無機材料で第2無機材料層52が構成されることで、スペーサー5が導光路として機能することを特に効果的に抑制することができる。また、第2無機材料層52が窒化ケイ素であることで、金属を含まずスペーサー5を形成することができる。そのため、金属が液晶層9に侵入することによる液晶層9の劣化が抑制される。それゆえ、電気光学装置100の長寿命化を図ることができる。
図7に示す第1無機材料層51は、第2無機材料層52と図4に示す素子基板2との間に配置される。図7に示すように、第1無機材料層51の厚さは、第2無機材料層52および第3無機材料層53の各厚さよりも充分に厚い。スペーサー5の大部分を第1無機材料層51が占める。第1無機材料層51の厚さは、第2無機材料層52および第3無機材料層53の合計の厚さの2倍以上である。
第1無機材料層51は、絶縁性を有し、無機材料である第1無機材料で構成される。第1無機材料は、第2無機材料と異なる。第1無機材料層51および第2無機材料層52がそれぞれ無機材料で構成されるので、スペーサー5が有機材料のみで構成される場合に比べ、有機成分の侵入によって電気光学装置100に誤作動等の不具合が生じるおそれを低減することができる。また、本実施形態では、第3無機材料層53も無機材料で構成されており、スペーサー5全体は無機材料で構成される。すなわち、スペーサー5は樹脂材料を含まない。そのため、液晶層9中に樹脂成分が侵入し、有機汚染により誤作動等の不具合が発生することを防止することができる。
また、第1無機材料が無機材料であれは、第1無機材料層51は、遮光性を有しても有さなくてもよい。第1無機材料が無機材料であれは、樹脂材料である場合に比べ、第1無機材料層51を簡単かつ高精細に形成することができる。よって、スペーサー5の寸法精度を高めることができる。特に、本実施形態では、スペーサー5全体が無機材料で構成される。そのため、スペーサー5が有機材料を含む場合に比べ、スペーサー5の寸法精度を特に高めることができ、かつ経時的な寸法変化を特に生じ難くすることができる。よって、長期にわたって、素子基板2と対向基板4との間の距離の安定化を図ることができる。
第1無機材料は、具体的には、二酸化ケイ素等の酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素であることが好ましく、酸化ケイ素であることがより好ましい。第1無機材料が酸化ケイ素または酸窒化ケイ素であることで、例えばドライエッチングにより寸法精度の高い第1無機材料層51を容易に製造することができる。特に、酸化ケイ素で構成されることでより容易に製造することができる。
なお、スペーサー5は、第1無機材料層51、第2無機材料層52および第3無機材料層53以外の層を有してもよく、また例えば第3無機材料層53は省略されてもよい。また、スペーサー5全体は無機材料で構成されていなくてもよい。その場合、第1無機材料層51および第2無機材料層52を有し、かつ少なくともスペーサー5の外表面を無機材料で構成することで、有機汚染による誤作動等の不具合の発生を特に効果的に抑制することができる。
図7に示すように、スペーサー5において、第1無機材料層51における基端面501の幅W1は、第1無機材料層51における先端面502の幅W2よりも大きい。本実施形態では、スペーサー5の第1無機材料層51の幅は、基端面501から先端面502に向かって漸次的に狭くなる。また、Z軸を含む平面で第1無機材料層51を切断した断面形状は台形である。なお、基端面501は、第1無機材料層51の第2無機材料層52と接触する面である。第1無機材料層51の幅W1が幅W2よりも大きいことで、幅W1が幅W2よりも小さい場合に比べ、第1無機材料層51の製造が容易である。なお、スペーサー5の製造方法については後で説明する。
なお、図示の例では、第1無機材料層51の幅W1は幅W2よりも大きいが、幅W1は、幅W2以下であってもよい。また、スペーサー5の表面におけるZ2方向の途中には、段差が設けられてもよい。また、第2無機材料層52と第3無機材料層53の幅を、幅W1よりも大きくして、スペーサー5全体の断面形状を台形とすることが好ましいが、第2無機材料層52と第3無機材料層53の両方またはいずれか一方の幅を第1無機材料層51の幅W1よりも小さくしてもよい。
図6に示すように、スペーサー5の形状は、Z1方向からみて四角形である。スペーサー5は、Z1方向からみて、X軸およびY軸の両方と交差する軸に沿って隣り合う2個のレンズ421同士の間に設けられる。図示の例では、スペーサー5は、Z1方向からみて4個のレンズ421で囲まれる領域に設けられる。したがって、1個のスペーサー5に対して、複数のレンズ421が対応して設けられるとも言える。スペーサー5がZ1方向からみて2個のレンズ421同士の間に設けられることで、レンズ421を透過する光の進行がスペーサー5によって阻害されることを抑制することができる。また、複数のレンズ421で囲まれた領域ごとにスペーサー5が設けられる。そのため、画素Pごとにおける素子基板2と対向基板4との間の距離のバラつきを低減することができる。また、複数のレンズ421で囲まれた領域ごとに、遮光性の第2無機材料層52を有するスペーサー5が設けられることで、ある画素Pにおける光が他の画素Pに侵入することを特に効果的に抑制することができる。また、複数のレンズ421に対応して1個のスペーサー5が設けられることで、1個のレンズ421に対応して1個のスペーサー5が設けられる場合に比べ、画素Pの高密度化を図ることができる。
ここで、複数のレンズ421のうちの任意の1個のレンズ421が「第1レンズ」に相当し、それと隣り合うレンズ421が「第2レンズ」に相当する。なお、図示の例では、Z1方向からみて、X-Y平面においてX軸およびY軸の両方と交差する軸に沿って隣り合う2個のレンズ421の間に、スペーサー5が設けられるが、X軸またはY軸に沿って隣り合う任意の2個のレンズ421同士の間に、スペーサー5が設けられてもよい。
また、図示の例では、スペーサー5は、Z1方向からみてレンズ421と重ならないが、スペーサー5の一部がZ1方向からみてレンズ421と重なってもよい。また、図6に示すスペーサー5の形状は、Z1方向からみて四角形であるが、これに限定されず、例えばZ1方向からみて、円形、または四角形以外の多角形等であってもよい。
図7に示すように、スペーサー5の表面には、ケイ素を含む無機材料で構成されるコート層46が設けられる。コート層46は、スペーサー5の表面を被覆する。当該ケイ素を含む無機材料は、例えば二酸化ケイ素等の酸化ケイ素である。コート層46によってスペーサー5が覆われることで、第2無機材料層52が金属を含む場合であっても、金属が液晶層9に侵入することによる液晶層9の劣化をより効果的に抑制することができる。
また、コート層46上には、第2配向膜47が設けられる。したがって、コート層46は、第2配向膜47とスペーサー5との間、および第2配向膜47と共通電極45との間に設けられる。第2配向膜47の下層にコート層46が設けられることで、第2配向膜47の均一性を高めることができ、第2配向膜47によって共通電極45が覆われてない箇所が生じることを抑制することができる。なお、コート層46および第2配向膜47は、スペーサー5の先端面502に設けられていなくてもよい。また、コート層46は省略されてもよい。
1F.スペーサー5の製造方法
図8、図9、図10、図11および図12は、それぞれスペーサー5等の製造方法について説明するための断面図である。
まず、図8に示すように、共通電極45上に第3無機材料層53aが形成される。第3無機材料層53aは、例えばプラズマCVD等の蒸着法により形成される。第3無機材料層53aを構成する第3無機材料は、例えば酸化ケイ素または酸窒化ケイ素である。なお、共通電極45は、PVD(physical vapor deposition)法等により形成される。
次に、図9に示すように、第3無機材料層53a上に、例えばスパッタリング法または蒸着法により第2無機材料層52aが形成される。第2無機材料層52aを構成する第2無機材料は、例えば、窒化ケイ素、または窒化チタン等の金属を含む材料である。前述の第3無機材料層53aが共通電極45と第2無機材料層52aとの間に配置されるため、第2無機材料層52aが共通電極45に接触しない。そのため、第2無機材料層52aの影響によって共通電極45の結晶性が変わることが抑制される。
次に、図10に示すように、第2無機材料層52a上に複数の第1無機材料層51が形成される。具体的には、第2無機材料層52a上に、例えばプラズマCVD等の蒸着法により第1無機材料を含む無機材料層が形成される。その後、当該無機材料層をドライエッチング等でパターニングすることにより、複数の第1無機材料層51が形成される。第1無機材料は、例えば酸化ケイ素または酸窒化ケイ素を含む。これら材料である場合、当該ドライエッチングで用いられるエッチングガスとしては、例えば、四フッ化メタン(CF4)および八フッ化シクロブタン(C4F8)等のフルオロカーボン系ガスが挙げられる。ドライエッチングを用いることでウェットエッチングを用いる場合に比べ、第1無機材料層51の寸法精度を高めることができる。また、第1無機材料と異なる第2無機材料で構成される第2無機材料層52aが設けられることで、当該ドライエッチングにおいて共通電極45が損傷することを抑制することができる。
次に、第2無機材料層52aの一部を除去することにより、図11に示すように、複数の第2無機材料層52が形成される。当該除去では、例えばケミカルドライエッチングが用いられる。ケミカルドライエッチングを用いることで、共通電極45に損傷が生じることを抑制することができる。例えば、第2無機材料層52aが窒化チタンである場合、当該ケミカルドライエッチングでは、四フッ化メタン(CF4)および酸素(O2)を含むエッチングガスが用いられる。
次に、第3無機材料層53aの一部を除去することにより、図12に示すように、複数の第3無機材料層53が形成される。当該除去では、例えばウェットエッチングが用いられる。ウェットエッチングを用いることでドライエッチングを用いる場合に比べて共通電極45に損傷が生じることを抑制することができる。当該ウェットエッチングでは、例えばBHF(バッファードフッ酸)、またはDHF(希フッ酸)等のフッ素系のエッチング液が用いられる。第2無機材料層52aおよび第3無機材料層53aの一部が除去されることにより、図12に示すように複数のスペーサー5が形成される。
以上のような方法により、無機材料で構成されるスペーサー5を特に簡単かつ確実に製造することができる。また、スペーサー5の製造において、共通電極45が損傷することを特に効果的に抑制することができる。また、スペーサー5が対向基板4に設けられることで、素子基板2に設けられる場合に比べ、スペーサー5を簡単に形成でき、かつ素子基板2に含まれる複数の電極等に損傷が生じるおそれを低減することができる。
また、図示はしないが、スペーサー5が形成された後、スペーサー5を覆うようにコート層46が形成される。コート層46は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法等により形成される。コート層46の形成では、適宜、蒸着源に対して共通電極45の表面が斜めに配置される。これにより、共通電極45の表面だけでなく、スペーサー5の表面にコート層46を好適に形成することができる。コート層46は、例えばケイ素を含む無機材料で形成される。特に、二酸化ケイ素等の酸化ケイ素で形成されることで、ALD法により、均質で充分に薄いコート層46を形成することができる。
また、図示はしないが、コート層46が形成された後、コート層46上に、例えばCVD法またはALD法により酸化ケイ素等を含む膜が形成される。そして、当該膜にラビング処理が施されることにより第2配向膜47が形成される。コート層46上に第2配向膜47が形成されることで、コート層46が無い場合に比べ、共通電極45およびスペーサー5に対する第2配向膜47の密着性を高めることができる。密着性を高めるためには、コート層46と第2配向膜47とは同一の材料を含むことが特に好ましい。なお、第2配向膜47の形成においても、コート層46の形成と同様に、適宜、蒸着源に対して共通電極45の表面が斜めに配置される。
第2配向膜47が形成された後、対向基板4は、例えば公知の技術を適宜用いて形成された素子基板2にシール部材8を介して貼り合わされる。この際、例えばスペーサー5を位置決めの基準として、対向基板4が有するレンズ421と素子基板2の画素電極27とが対応するよう、素子基板2と対向基板4とが貼り合わせられる。素子基板2と対向基板4とが貼り合わせられた後、素子基板2、対向基板4およびシール部材8との間に液晶材が注入されることにより液晶層9が形成され、その後、封止される。なお、各種回路等は前述の工程または工程間で適宜形成される。このようにして、図1および図2に示す電気光学装置100を製造することができる。
2.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
前述の実施形態では、第2配向膜47は、スペーサー5を覆うように形成されたが、第2配向膜47は、共通電極45の表面に設けられ、スペーサー5の表面に設けられていなくてもよい。その場合、第2配向膜47は、共通電極45の形成後で、スペーサー5の形成前に、共通電極45上に形成されてもよい。
前述の実施形態では、1個のスペーサー5は、複数のレンズ421に対応して設けられるが、スペーサー5とレンズ421とは、1対1で設けられてもよい。また、対向基板4は、レンズ層42を備えていなくてもよい。
前述の実施形態では、トランジスター23はTFTである場合を例に説明したが、トランジスター23はTFTに限定されず、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等であってもよい。
前述の実施形態では、アクティブマトリクス駆動方式の電気光学装置100が例示されるが、これに限定されず、電気光学装置の駆動方式は、例えば、パッシブマトリクス駆動方式等でもよい。
3.電子機器
電気光学装置100は、各種電子機器に用いることができる。
図13は、電子機器の一例であるパーソナルコンピューター2000を示す斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設置される本体部2010と、制御部2003と、を有する。制御部2003は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
図14は、電子機器の一例であるスマートフォン3000を示す平面図である。スマートフォン3000は、操作ボタン3001と、各種の画像を表示する電気光学装置100と、制御部3002と、を有する。操作ボタン3001の操作に応じて電気光学装置100に表示される画面内容が変更される。制御部3002は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
図15は、電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。投射型表示装置4000は、例えば、3板式のプロジェクターである。電気光学装置1rは、赤色の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1gは、緑の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1bは、青色の表示色に対応する電気光学装置100である。すなわち、投射型表示装置4000は、赤、緑および青の表示色に各々対応する3個の電気光学装置1r、1g、1bを有する。制御部4005は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
照明光学系4001は、光源である照明装置4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置1rに供給し、緑色成分gを電気光学装置1gに供給し、青色成分bを電気光学装置1bに供給する。各電気光学装置1r、1g、1bは、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調するライトバルブ等の光変調器として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置1r、1g、1bからの出射光を合成して投射面4004に投射する。
以上の電子機器は、前述の電気光学装置100と、制御部2003、3002または4005と、を備える。電気光学装置100は前述のように高寿命化およびコントラストの低下を図ることができる。そのため、パーソナルコンピューター2000、スマートフォン3000または投射型表示装置4000の表示品質を高めることができる。
なお、本発明の電気光学装置が適用される電子機器としては、例示した機器に限定されず、例えば、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用の表示器、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、およびPOS(Point of sale)端末等が挙げられる。さらに、本発明が適用される電子機器としては、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤー、またはタッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
以上、好適な実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。
また、前述した説明では、本発明の電気光学装置の一例として液晶装置について説明したが、本発明の電気光学装置はこれに限定されない。例えば、本発明の電気光学装置は、イメージセンサー等にも適用することができる。また、例えば、有機EL(electro luminescence)、無機ELまたは発光ポリマー等の発光素子を用いた表示パネルに対しても前述の実施形態と同様に本発明が適用され得る。また、着色された液体と当該液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを用いた電気泳動表示パネルに対しても前述の実施形態と同様に本発明が適用され得る。