JP7301640B2 - 洗浄液及び洗浄方法 - Google Patents

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Description

本発明は、洗浄液、特にインクジェットプリンタの洗浄に用いる洗浄液、及びそれを用いた洗浄方法に関する。
インクジェットプリンタによる印刷方法(インクジェット印刷方法)は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の記録メディアに付着させ印刷を行う方法である。近年、インクジェット印刷方法は、産業用途としての応用が進んでいる。インクジェットインクが含有する着色剤は、水溶性の着色剤と、水不溶性の着色剤とに大別される。これらのうち、顔料等の水不溶性の着色剤は、水溶性の着色剤と比較して、一般に各種の堅牢性に優れる。このため、産業用のインクジェットインクは、水不溶性の着色剤を含有することが多い。
産業用途に用いられる記録メディアは各種の紙、繊維、及びフィルム等、多様化している。記録メディアの中には樹脂フィルム等のインク非吸収性、及び、コート紙等のインク難吸収性のメディアも多い。そのような記録メディアの印刷に用いるインクとしては、非水系の溶剤インク、及び硬化性インク等が知られている。しかし、例えば自然環境、及び生体等に対する安全性の観点から、これらのインクに代わる水性インクが強く要望されている。そのような水性インクは、水不溶性の着色剤、及び分散剤を含有し、さらに、耐擦過性や耐溶剤性等を向上させる目的で、一般にポリマーやワックス等も含有する。このため、そのような水性インクは固形分の含有量が多く、極めて乾燥しやすい。インクの乾燥は、長期の保管、高温・低湿度環境での保管等において、インクジェットヘッドのノズル部やインク流路内での固形物の形成を生じ、目詰まりが発生しやすい。このようにインクジェットヘッド内で目詰まりが生じると、インクの吐出が安定して行なえない。このため、印刷画質の劣化、画像濃度の低下等の問題が生じる。そのため、一般に、産業用インクジェットヘッドには、ノズル部にキャップ部材を装備し、インクの乾燥を防止する等の工夫がされている。しかし、インクジェットプリンタが稼働する環境が過酷なときは、インクの乾燥を完全に回避することは難しい。
上記の状況から、インクが乾燥して固形物を生じることによりインクジェットヘッドが目詰まりしても、これを洗浄できる洗浄液(クリーニング液、又はメンテナンス液等ともいう。)が強く要望されている。特許文献1~6には、インクジェット記録装置の洗浄に用いる洗浄液が開示されている。
特許第5027444号公報 特許第4649823号公報 特許第4397220号公報 特許第5618250号公報 特許第5819206号公報 特許第5819205号公報
本発明は、着色インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を洗浄できる洗浄液の提供を課題とする。
本発明者らは、上記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の1)~6)により、上記の課題を解決できることを見出した。
1)
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、水とを含有する洗浄液。
Figure 0007301640000001
[式(1)中、Rは直鎖又は分岐鎖のC1-C30アルキル基を表す。OPはオキシプロピレン基を、OEはオキシエチレン基を、それぞれ表す。mは1~2の整数を表し、nは1~15の整数を表す。また、OPとOEが結合する順番は任意である。]
Figure 0007301640000002
[式(2)中、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。m1、n1、及びL1は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、m1、n1、及びL1は下記式(3)の条件を有する。また、EOとPOが結合する順番は任意である。]
Figure 0007301640000003
2)
洗浄液の総質量中における、上記式(2)で表される化合物の総含有量が0.2質量%~2質量%である、上記1)に記載の洗浄液。
3)
さらに、有機溶剤を含有する、上記1)又は2)に記載の洗浄液。
4)
有機溶剤が、グリコールエーテルである上記2)に記載の洗浄液。
5)
上記1)~4)のいずれか一項に記載の洗浄液の、インクジェットプリンタの洗浄における使用。
6)
上記1)~4)のいずれか一項に記載の洗浄液により、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクを洗浄する、インクジェットプリンタの洗浄方法。
本発明により、着色インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を洗浄できる洗浄液を提供できた。
本明細書においては、特に断りの無い限り「%」及び「部」は、いずれも質量基準で記載する。
[式(1)で表される化合物]
上記式(1)中、OPは直鎖又は分岐鎖のオキシプロピレン基を、OEはオキシエチレン基を、それぞれ表す。
は直鎖又は分岐鎖の通常C1-C30、好ましくはC7-C13、より好ましくはC7-C10、さらに好ましくはC8-C10、特に好ましくはC9アルキル基である。それらの中では直鎖アルキル基が好ましい。
mは1~2の整数を表し、nは通常1~15、好ましくは2~8の整数を表す。m:nの比は1:4または2:4がより好ましい。
m及びnは、いずれも平均値である。このため、本明細書においてm及びnが小数点以下の数値を有するときは、小数点以下1桁目を四捨五入して整数とした数値をm及びnの値とする。
洗浄液の総質量中における、式(1)で表される化合物の含有量は通常0.1%~2%、好ましくは0.5%~1%である。
式(1)で表される化合物は、公知の方法により合成することができる。また、市販品としても入手できる。市販品の具体例としては、例えば、BASF社製のLutensol XL40等が挙げられる。
[式(2)で表される化合物]
上記式(2)中、EOはエチレンオキシ基を表わし、POは直鎖又は分岐鎖のプロピレンオキシ基を、それぞれ表す。
m1、n1、及びL1は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、その上限は特に限定されないが通常m1が11以上40以下、n1が25以上58以下、L1が11以上40以下;好ましくはm1が11以上39以下、n1が27以上58以下、L1が11以上39以下;より好ましくはm1が13以上37以下、n1が29以上56以下、L1が13以上37以下である。
m1、n1、及びL1は、上記式(3)の条件を有する。上記式(3)において、(m1+L1)/(m1+n1+L1)×100の上限は通常76、好ましくは71、より好ましくは62である。下限は通常27より大きく、好ましくは28以上である。これらの上下限の範囲としては通常27~76、好ましくは28~71、より好ましくは35~62、さらに好ましくは40~60、場合により好ましくは45~60、特に好ましくは47~57である。
m1、n1、及びL1は、いずれも平均値である。このため、本明細書においてm1、n1、及びL1が小数点以下の数値を有するときは、小数点以下1桁目を四捨五入して整数とした数値をm1、n1、及びL1の値とする。
また、本明細書において式(3)の算出結果が小数点以下の数値を有するときは、小数点以下1桁目を四捨五入した数値を算出結果とする。
洗浄液の総質量中における、式(2)で表される化合物の含有量は通常0.2%~2%、好ましくは0.4%~2%である。洗浄液の含有量が、上記の範囲であるとき、均一な溶液の洗浄液が得られ、また、優れた洗浄g能力が得られる。
式(2)で表される化合物は、公知の方法により合成することができる。また、市販品としても入手できる。市販品の具体例としては、例えば、クラリアント社製のGENAPOL PF40、第一工業製薬社製のエパン U―105等が挙げられる。
上記の式(1)及び式(2)でそれぞれ表される化合物を併用することにより、洗浄液を均一な溶液とすることができる。また、均一な溶液の洗浄液とすることにより、高い洗浄能力を、安定的に有する洗浄液を得ることができる。
また、上記式(1)中のOE及びOP;及び、上記式(2)中のEO及びPOが結合する順番はそれぞれ任意であり、各式で表される順番に特定されるものではない。好ましくは、各式で表される順番である。
[有機溶剤]
上記の洗浄液は、さらに有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては特に制限されない。
有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、及び第三ブタノール等の、ヒドロキシ基を1つ有するC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、及び1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、及びエチレンカーボネート等の、ケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、及びジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-へキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、1,2-オクタンジオール、5-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4,4-ジメチル-1,2-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量が400以上のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等の、C2-C8アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(トリオール);γ-ブチロラクトン、及びジメチルスルホキシド;及び、グリコールエーテル等が挙げられる。これらの中ではグリコールエーテルが好ましい。
グリコールエーテルとしては、ジ又はトリC2-C4アルキレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。
C2-C4アルキレングリコール部分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールが挙げられる。これらの中ではエチレングリコール、及びプロピレングリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
モノアルキルエーテル部分のアルキルの炭素数の範囲は、通常C1-C6、好ましくはC1-C5、より好ましくはC2-C4、さらに好ましくはC3-C4、特に好ましくはC4である。
その具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中ではブチルジグリコールが好ましい。
洗浄液の総質量中における、有機溶剤の総含有量は通常0~60%、好ましくは0.1~50%、より好ましくは0.2~40%、さらに好ましくは0.5~30%である。また、有機溶剤として少なくともグリコールエーテルを含有するとき、グリコールエーテルの総含有量は通常0~15%、好ましくは0.1~15%、より好ましくは0.2~13%、さらに好ましくは0.5~10%である。
グリコールエーテルと、それ以外の有機溶剤を併用するときは、これらの総含有量の和が、洗浄液の総質量中における、有機溶剤の総含有量となる。このときも、グリコールエーテルの総含有量は上記のとおりである。
上記洗浄液は、上記した成分以外に、必要に応じて各種の調製剤をさらに含有することができる。そのような調製剤としては、例えば、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
洗浄液の総質量に対して、調製剤の総含有量は通常0%~30%、好ましくは0%~20%、より好ましくは0%~10%程度である。
上記洗浄液は、実質的に着色剤を含有しない。本明細書において「実質的に」とは、洗浄液中に、意図的に着色剤を加えないことを意味する。
[界面活性剤]
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、ノニオン、両性、シリコン系、及びフッ素系の、各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではノニオン界面活性剤が好ましい。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
防腐剤の例としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
pH調整剤としては、調製されるインク組成物に悪影響を及ぼさずに、そのpHを5~11に調整できれば、任意の物質を使用することができる。
その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
キレート試薬の具体例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
水溶性紫外線吸収剤の例としては、例えばスルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。上記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及び複素環類等が挙げられる。
上記洗浄液は、上記した成分と、必要に応じてインク調製剤とを加え、十分に混合することにより得ることができる。
上記インクジェットプリンタの洗浄方法は、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物を洗浄する方法であれば、特に限定されない。通常の洗浄方法としては、例えば、洗浄液をスポンジ等に吸収させて、着色インクが付着した部分の汚れをふき取る方法等が挙げられる。一方、例えば着色インクがインクジェットヘッド上で乾燥し、インクジェットヘッドの汚れが激しいときは、着色インクの代わりに洗浄液をインクジェットヘッドに充填して洗浄することもできる。
洗浄液をインクジェットヘッドに充填して洗浄をするときは、洗浄液を精密濾過するのが好ましい。
精密濾過をするときは、メンブランフィルター及び/又はガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は通常0.5μm~20μm、好ましくは0.5μm~10μmである。
上記洗浄液のpHは、インクジェットプリンタ部材を腐食させない目的で通常pH5~11、好ましくはpH7~10.5である。
洗浄液の表面張力は通常10mN/m~50mN/m、好ましくは20mN/m~40mN/mである。
洗浄液の粘度は通常30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下、下限は0.1mPa・s程度である。
上記洗浄液は、各種の着色剤を含有する水系インクの洗浄に使用することができる。着色剤の一例としては、例えば、酸性染料、直接染料、及び反応染料等の水溶性染料を含有する水系染料インク;分散染料、及び顔料を含有する水不溶性着色剤を含有する水系インク等が挙げられる。
上記洗浄液は洗浄力が高いため、水不溶性着色剤、特に顔料を含有する水系インクの洗浄に用いることが好ましい。また、上記の洗浄液は、その洗浄力の高さから、顔料と共に各種の樹脂を含有する水系インクの洗浄液として、極めて高い能力を発揮する。
上記した全ての成分は、そのうちの1種類を単独で使用することができる。また、2種類以上を併用することもできる。
また、上記した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。また、洗浄液、及び着色インクの調製は、特に断りのない限り、いずれも攪拌下に行った。
また、実施例中で使用した「水」は、イオン交換水である。
[実施例1~2]:洗浄液の調製。
下記表1に記載の各成分を混合して、それぞれ総量100部の洗浄液を得た。得られた液を3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、評価試験用の実施例1~2の洗浄液を得た。
実施例1~2で使用した「XL40」は、上記式(1)に相当する化合物である。
[比較例1~6]:比較用の洗浄液の調製。
下記表1に記載の各成分を使用する以外は、前記の実施例1~2と同様にして、比較例1~6の比較用の洗浄液を得た。比較例1~6で使用した「SN465」、「EP7025」、「LS106」は、いずれも上記式(1)には相当しない化合物である。また、比較例3で使用した「PF20」は、上記式(2)には相当しない化合物である。
下記表1中の略号等は、以下の意味を有する。また、表1中の数値は「部」である。
Gly:グリセリン
2Py:2-ピロリドン。
BDG:ブチルジグリコール。
XL40:BASF社製 Lutensol XL40。
SN465:日信化学株式会社製ノニオン界面活性剤、サーフィノール 465。
EP7025:株式会社日本触媒製ノニオン界面活性剤、ソフタノール EP-7025。
LS106:花王株式会社製ノニオン界面活性剤、エマルゲン LS-106。
PF20:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL PF20。
PF40:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL PF40。
U105:第一工業製薬社製ノニオン界面活性剤、エパン U-105。
TEA:トリエタノールアミン。
GXL(S):ロンザ社製プロキセルGXL(S)。
XL40は上記式(1)中、Rが4-ノニル基、mが1、nが4の化合物である。
SN465はアセチレングリコールであることから、上記式(1)には含まれない化合物である。
EP7025は上記式(1)中、RがC12-C15分岐鎖アルキル基、mが2.5、nが7であることから、上記式(1)には含まれない化合物である。
LS106はRとしてアルキル基を、またオキシエチレン基を有するが、オキシプロピレン基を有さない(すなわちmが0)ことから、上記式(1)には含まれない化合物である。
PF20は上記式(2)中、m1が5、n1が30、L1が5、(m1+L1)/(m1+n1+L1)×100=25であることから、式(2)には含まれない化合物である。
PF40は上記式(2)中、m1が13、n1が29、L1が13(m1+L1)/(m1+n1+L1)×100=47の化合物である。
U105は上記式(2)中、m1が37、n1が56、L1が37、(m1+L1)/(m1+n1+L1)×100=57の化合物である。
Figure 0007301640000004
[調製例1]:樹脂Aの調製。
ジョンクリル678(MW:8500)25部、及びトリエタノールアミン14.3部をイオン交換水60.7部に溶解し、一時間撹拌して溶液を得た。得られた溶液を、樹脂Aとする。
[調製例2]:着色分散液の調製。
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られた高分子分散剤5部を、2-ブタノン20部に溶解させ、均一な溶液とした。この液に、水酸化ナトリウム(0.4部)を水(50.6部)に溶解させた液を加え、樹脂溶液A(4部)を添加後、1時間攪拌して液を得た。この液にC.I.Pigment Yellow 74(20部、クラリアント社製HANSA YELLOW 5GX 01-JP)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行って液を得た。得られた液に水(100部)を滴下した後、この液をろ過しろ液を得た。得られたろ液から、エバポレータで2-ブタノン、及び水の一部を減圧留去することにより、顔料含有量が12.4%の着色分散液を得た。
着色分散液中の顔料含有量は、株式会社エイ・アンド・デイ社製、MS-70を用いて、乾燥重量法により、液中の全固形分から顔料のみの換算値として求めた。
[調製例3]樹脂Bの調製。
国際公開第2015/147192号ガゼットの調製例4を追試することにより、酸価が6KOHmg/g、Tgが0℃、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。これを「樹脂B」とする。
[調製例4]:着色インクの調製。
下記表2に記載の各成分を混合して総量100部の液を得た後、得られた液を3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、洗浄液の評価に用いる着色インクを得た。
下記表2中の略号等は、以下の意味を有する。また、下記表2中の数値は「部」である。
Dp1:調製例2で得た着色分散液。
TEG:トリエチレングリコール。
1,2HD:1,2-ヘキサンジオール。
SN465:日信化学株式会社製ノニオン界面活性剤、サーフィノール 465。
AQ515:ビックケミー社製ポリエチレンワックス、AQUACER 515(固形分35.0%)。
また、樹脂B、及びAQ515の表2中の部数は固形分換算値である。
Figure 0007301640000005
[安定性試験]
各実施例、及び比較例で得た洗浄液を、室温で12時間静置した後、洗浄液の状態を目視で観察し、その安定性を評価した。評価基準は以下の2段階とした。評価結果を下記表3に示す。
なお、安定性試験において「A」評価の洗浄液のみを使用して、下記する洗浄性試験を行った。
[評価基準]
A:洗浄液の状態に変化はなかった。
C:洗浄液から分離した液状成分が、洗浄液の表面に浮いているのが観察された。
[洗浄性試験]
上記の調製例4で得た着色インクをガラスシャーレ上に20マイクロリットル滴下し、60℃の恒温槽に1時間静置して乾燥させることにより、着色インクが固化した固形物を得た。
得られた固形物に実施例、及び比較例の各洗浄液を10ミリリットル滴下し、固形物を洗浄できるか否かを目視で評価した。評価基準は以下の4段階とした。評価結果を下記表3に示す。なお、表3において「-」は、洗浄性試験を行わなかったことを表す。
[評価基準]
A:固形物の残存が認められず、均一な液となった。
B:わずかに固形物の残存が認められるが、ほぼ均一な液となった。
C:明らかに固形物が残存し、均一な液とは認められなかった。
D:固形物の形状が全く変化しなかったか、又は、ほとんど変化しなかった。
Figure 0007301640000006
上記の結果から明らかなように、実施例の洗浄液は、安定性と洗浄性に優れることが確認された。
本発明の洗浄液は、着色インク、特には水不溶性の着色剤を含有する水性インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を洗浄できるため、着色インクの洗浄液、特に着色インクジェットインクの洗浄液として極めて有用である。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、水とを含有するインクジェットプリンタ用洗浄液。
    Figure 0007301640000007
    [式(1)中、Rは直鎖又は分岐鎖のC1-C30アルキル基を表す。OPはオキシプロピレン基を、OEはオキシエチレン基を、それぞれ表す。mは1~2の整数を表し、nは1~15の整数を表す。また、OPとOEが結合する順番は任意である。]
    Figure 0007301640000008
    [式(2)中、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。m1、n1、及びL1は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、m1、n1、及びL1は下記式(3)の条件を有する。また、EOとPOが結合する順番は任意である。]
    Figure 0007301640000009
  2. 洗浄液の総質量中における、上記式(2)で表される化合物の総含有量が0.2質量%~2質量%である、請求項1に記載のインクジェットプリンタ用洗浄液。
  3. さらに、有機溶剤を含有する、請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ用洗浄液。
  4. 有機溶剤が、グリコールエーテルである請求項2に記載のインクジェットプリンタ用洗浄液。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ用洗浄液により、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクを洗浄する、インクジェットプリンタの洗浄方法。
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