以下では、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
<1.本実施形態>
<1-1.粉粒体処理システムの概略構成>
初めに、本発明の一実施形態に係る粉粒体処理装置1を備える粉粒体処理システム100について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る粉粒体処理装置1を備える粉粒体処理システム100の全体的な構成を示す模式図である。以下の説明においては、粉粒体処理装置1の内側管15の軸線に沿う方向を軸方向または上下方向、内側管15の軸線に対して直交する方向を径方向、内側管15の軸線を中心とする円弧に沿う方向を周方向と称する。
粉粒体処理装置1において取り扱われる粉粒体としては、例えば樹脂成形品を製造するために金型に供給する材料である樹脂ペレットとすることができる。ただし、「粉粒体」はこれに限るものではなく、例えば、ファインセラミックス、金属材料、高分子材料、電池・電子材料、医薬品材料、食品材料や、電子、エネルギー、医療、食品等の各技術分野において用いられる無機物および有機物の微粉、粒状物、あるいはこれらの微粉または粒状物に水分を含む半固形状の材料であってもよい。ただし、以下では、「粉粒体」を樹脂ペレット9として説明を行う。
図1に示すように、粉粒体処理システム100は、材料としての樹脂ペレット9を粉粒体処理装置1の粉粒体投入口30へと搬送する供給路2と、加熱・乾燥処理中の材料を再び粉粒体処理装置1の粉粒体投入口30へと搬送し循環させるための循環路3とを有する。
供給路2は、粉粒体処理装置1と、加熱・乾燥処理前の樹脂ペレット9が収容されたタンク4と、を接続する一続きの配管である。供給路2の上流側の端部は、タンク4に接続される。供給路2の下流側の端部は、粉粒体処理装置1の粉粒体投入口30に接続される。供給路2の経路途中には、上流側から順に、輸送エジェクタ5と、材料供給バルブ7とが設けられる。
輸送エジェクタ5は、内部に圧縮空気を送り込むことによりタンク4内の樹脂ペレット9を下流側へと搬送する気力を発生する。輸送エジェクタ5は、直動弁6により、その動作が切り替えられる。
材料供給バルブ7は、電磁式のバルブであり、供給路2内の流路を塞いだ閉塞状態、および当該流路を開いた開放状態、の間で切替え可能である。材料供給バルブ7を開放状態にしたとき、タンク4と粉粒体処理装置1とが連通されて、タンク4内の樹脂ペレット9を粉粒体処理装置1へと供給することが可能となる。この状態で、輸送エジェクタ5を駆動させることにより、タンク4内の樹脂ペレット9が供給路2を経由して粉粒体処理装置1へと、気力搬送される。
循環路3は、粉粒体処理装置1から排出された樹脂ペレット9を再び粉粒体処理装置1に供給して循環させる、一続きの配管である。図1に示すように、循環路3の上流側の端部は、粉粒体処理装置1の下端部に設けられた粉粒体排出口31に接続される。また、循環路3の下流側の端部は、供給路2の輸送エジェクタ5と材料供給バルブ7との間の経路途中に接続される。循環路3の経路途中には、上流側から順に、材料排出バルブ8と、バッファタンク11と、循環エジェクタ12とが設けられる。
循環エジェクタ12は、内部に圧縮空気を送り込むことにより、粉粒体処理装置1から排出された樹脂ペレット9を、循環路3内を通過させて下流側へと搬送する気力を発生する。循環エジェクタ12は、直動弁13により、その動作が切り替えられる。
バッファタンク11は、粉粒体処理装置1から排出された樹脂ペレット9を貯留するタンクである。粉粒体処理装置1による加熱・乾燥処理がひととおり終了したら、粉粒体処理装置1内の樹脂ペレット9がバッチ方式でバッファタンク11へと移送され、バッファタンク11内に一時貯留される。バッファタンク11内に貯留された樹脂ペレット9は、後続の成形装置(図示省略)から要求があったときに、当該成形装置へと移送される(二次輸送)。
材料排出バルブ8は、電磁式のバルブであり、循環路3内の流路を塞いだ閉塞状態、および当該流路を開いた開放状態、の間で切替え可能である。材料排出バルブ8を開放状態にしたとき、粉粒体処理装置1からバッファタンク11へ、加熱乾燥後の樹脂ペレット9が排出される。その後、循環エジェクタ12が駆動されると、バッファタンク11から粉粒体投入口30へ、樹脂ペレット9が気力搬送される。一方、材料排出バルブ8を閉塞状態にしたとき、粉粒体処理装置1内の樹脂ペレット9は外部には排出されずに粉粒体処理装置1内で滞留する。
<1-2.粉粒体処理装置の構成>
以下では、本実施形態に係る粉粒体処理装置1の構成について、図1から図3までを参照して説明する。図2は、本実施形態に係る粉粒体処理装置1の内部構造を示す縦断面図である。図3は、本実施形態に係る粉粒体処理装置1が備えるカバー24が開閉する様子を示す平面図である。
図2に示すように、粉粒体処理装置1は、内側管15と、外側管16と、充填室(貯留室)17と、内側赤外線放射部(赤外線放射部)18と、気体通路20と、注入口21と、排出口22と、外側赤外線放射部(赤外線放射部)23と、カバー24と、蓋部26と、内側温度センサ(温度センサ)27と、外側温度センサ(温度センサ)28と、粉粒体投入口30と、粉粒体排出口31と、上部構造体32と、下部構造体33と、制御部40とを主として備える。
内側管15は、軸方向に延びる円筒状の部材である。内側管15は、赤外線透過性材料、具体的にはガラス等、より具体的には例えば石英ガラスからなる。
外側管16は、軸方向に延びる円筒状の部材である。外側管16は、赤外線透過性材料、具体的にはガラス等、より具体的には例えば石英ガラスからなる。外側管16は、内側管15と同軸上で、内側管15の径方向外方に配置される。外側管16の下端には、径方向外方に張り出したフランジ部38が設けられる。フランジ部38には当該フランジ部38を上下方向に貫通するネジ孔が形成される。
内側管15と外側管16との間には、処理対象物である樹脂ペレット9を充填可能な領域である充填室17が設けられる。充填室17は、平面視で円環状であり、軸方向に延びている。
内側赤外線放射部18は、赤外線を放射する機器である。内側赤外線放射部18は、略円柱状である。詳細には、内側赤外線放射部は、軸方向に延びる円柱状の赤外線放射ヒータと、当該赤外線放射ヒータを径方向外方から2重に取り囲むガラス管とにより構成されている。これにより、輻射熱によって後述する気体の温度が過剰に高くなってしまうことが抑制される。内側赤外線放射部18は、内側管15と同軸上で、内側管15の径方向内方に配置される。別の言い方をすれば、内側赤外線放射部18は、内側管15の軸心部に配置される。
内側赤外線放射部18と内側管15との間には、後述する注入口21から取り入れられた気体を通過させることが可能な通路(領域)である気体通路20が設けられる。気体通路20は、平面視で円環状であり、軸方向に延びている。
下部構造体33は、粉粒体処理装置1の下部をなす構造体である。下部構造体33は、内側管15、外側管16、および内側赤外線放射部18の下端部を下方側から支持する。下部構造体33は、上部が円筒状であり、下部が下方に向かうにつれて径方向の寸法が収縮する漏斗状である。下部構造体33の下端には、上下方向に貫通する粉粒体排出口31が設けられる。粉粒体排出口31は、充填室17で加熱・乾燥処理が行われた後の樹脂ペレット9を外部へと排出する。
下部構造体33の上部の径方向内方には、支持部材固定部34を介して、内側管支持部材35が設けられる。内側管支持部材35は、軸方向に延びる円筒状である。内側管支持部材35の径方向内方には、支持部材固定部36を介して、支持部材37が設けられる。
支持部材37は、軸方向に延びる円筒状であり、下方側の端部が閉塞されている。支持部材37の上端部側壁には、径方向に貫通する通気孔が設けられる。支持部材37の内部空間に、内側赤外線放射部18の下端部が収容される。また、内側管支持部材35の上端に、支持部材固定部36を介して、内側管15の下端が載置される。
下部構造体33の上端には、径方向外方に張り出したフランジ部39が形成される。フランジ部39には、当該フランジ部39を上下方向に貫通するネジ孔が形成される。
上部構造体32は、粉粒体処理装置1の上部をなす構造体である。上部構造体32は軸方向に延びる円筒状である。上部構造体32の下部側壁からは、径方向外方に向かって、円筒状の粉粒体投入口30が延びている。粉粒体投入口30は、供給路2の下流側の端部まで搬送されてきた樹脂ペレット9を受け入れ、充填室17内へと投入する。
上部構造体32の上部側壁からは、径方向外方に向かって、円筒状の排出口22が延びている。排出口22は、後に詳述するように、気体通路20および充填室17を通過した後の気体を、外部に排出する。排出口22の上流側の端部には、パンチングプレート22aが設けられる。これにより、充填室17内の樹脂ペレット9が排出口22を介して外部へと流出してしまうことを防止できる。
上部構造体32の上方側は、平面視で円形状の蓋部26により閉塞されている。蓋部26の外周端には、上部構造体32の上端が接続される。上部構造体32の径方向中途部には、内側管15の上端を嵌め込むための溝部が、周方向の全周に沿って設けられる。蓋部26の当該溝部よりも径方向内方には、上下方向に貫通する注入口21が設けられる。注入口21は、気体通路20に気体を注入可能な孔である。本実施形態では、図1に示すように、圧縮空気がドライユニット60により乾燥されて乾燥空気とされた後に、注入口21へと供給される。
上部構造体32の下端には、径方向外方に張り出したフランジ部41が設けられる。フランジ部41には、当該フランジ部41を上下方向に貫通する貫通孔が形成される。フランジ部41の下端面の内縁部には、上方に向かって凹む段差部が設けられる。
粉粒体処理装置1の上記の各部は、以下のようにして組み付けられる。すなわち、内側赤外線放射部18の下端部が支持部材37内に収容される。そして、内側管15の下端を、支持部材固定部36を介して内側管支持部材35により下方側から支持し、かつ、内側管15の上端を蓋部26の上記溝部に収容した状態とされる。そして、外側管16の上端がフランジ部41の上記段差部に嵌め込まれた状態とされる。さらに、フランジ部38の下端面と、フランジ部39の上端面とが、重ね合わされる。この状態で、ボルトが、上方から、フランジ部41の貫通孔、フランジ部38のネジ孔、およびフランジ部39のネジ孔に挿入されて、ナット等を用いて締め付けられる。これにより、内側管15と、外側管16と、内側赤外線放射部18と、上部構造体32と、下部構造体33とが相互に組み付けられる。
カバー24は、内側管15と、外側管16と、内側赤外線放射部18と、下部構造体33とを含むアセンブリを、径方向外方から全周にわたって被覆する。カバー24は、上下方向に長い直方体状である。図3に示すように、カバー24は、平面視で正方形状であり、この正方形の一辺の中点を支点として、カバー24が二つに分割されてそれぞれが回動するようになっている。これにより、カバー24の内部空間のメンテナンスを容易に行える。なお、カバー24の内周面は鏡面になっている。
外側赤外線放射部23は、赤外線を放射する機器である。外側赤外線放射部23は、軸方向に延びる円柱状である。本実施形態の外側赤外線放射部23は、内側赤外線放射部18と同等の構成である。外側赤外線放射部23は、内側管15および外側管16の径方向外方に配置される。本実施形態では、外側赤外線放射部23は4つ設けられ、各外側赤外線放射部23がカバー24の上記正方形の角部に配置される。外側赤外線放射部23は、カバー24に取り付けられ、カバー24とともに一体的に回動する。
内側温度センサ27は、気体通路20内の温度を検出するセンサである。具体的には、内側温度センサ27は例えば熱電対により構成される。内側温度センサ27は、蓋部26により支持され、その温度検出部分が内側赤外線放射部18と内側管15との間に配置される。
外側温度センサ28は、外側管16および外側赤外線放射部23の近傍の領域の温度を検出するセンサである。具体的には、外側温度センサ28は例えば熱電対により構成される。外側温度センサ28は、カバー24により支持され、その温度検出部分がカバー24の内部空間に配置される。
詳細には、本実施形態の内側温度センサ27および外側温度センサ28は、それぞれ、石英ガラス等の赤外線透過性材料42により覆われている。これにより、温度センサ27,28の検出結果に、気体の流れが影響してしまうことを抑制でき、輻射熱の影響により昇温した気体の温度を精度よく検出することができる。その結果、未だ十分に加熱されていない気体が気体通路20に注入されている状況下においても、赤外線放射部18,23の温度調整を精度よく行うことができる。
制御部40は、粉粒体処理装置1の各部を動作制御するための手段である。制御部40は、粉粒体処理装置1の各部と電気的に接続されている。本実施形態の制御部40は、CPU等の演算処理部やメモリを有するコンピュータにより構成されている。ただし、これに限るものではなく、制御部40が電子回路により構成されていてもよい。制御部40は、予め設定されたプログラムや外部からの入力信号に基づき、上記の各部を動作制御する。すなわち、上記のハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、粉粒体処理装置1の各部が機能する。これにより、粉粒体処理装置1における樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理や、後述の算出処理が進行する。
以上のような構成の粉粒体処理装置1において、タンク4から搬送されてきた樹脂ペレット9は、粉粒体投入口30を経由して充填室17内へと投入される。そして、内側赤外線放射部18および外側赤外線放射部23から赤外線が放射されるとともに、注入口21から気体通路20内へと乾燥空気が送り込まれる。内側管15および外側管16は、赤外線透過性材料により構成されているため、充填室17内の樹脂ペレット9は、内側赤外線放射部18および外側赤外線放射部23からの輻射熱によって加熱される。その結果、充填室17内の樹脂ペレット9が、効率的に加熱・乾燥される。また、気体通路20内に送り込まれた乾燥空気は、気体通路20の下方側へと流れる。詳細には、気体通路20内の乾燥空気は、支持部材37の上端部の上記通気孔を経由して下方側へと流れる。気体通路20内を通過する間、乾燥空気は、内側赤外線放射部18の外周面からの熱伝達、および内側管15の内周面からの熱伝達により加熱される。ここで、気体通路20と充填室17とは、内側管15および外側管16の下側で連通している。また、充填室17と、上部構造体32の内部空間とは連通しており、上部構造体32は排出口22に接続されている。このため、支持部材37の上端部の上記通気孔を経由して下方側へと流れた乾燥空気(気体)は、排出口22に向かって充填室17内を下方から上方へと流れる。この過程で、気体からの熱伝達によっても、充填室17内の樹脂ペレット9が加熱される。
加熱・乾燥処理中の樹脂ペレット9は、定期的(例えば、15分毎)に、その一部(例えば、全体の5%)が粉粒体排出口31から排出されて、バッファタンク11および循環路3を経由して再び充填室17へと供給される。これにより、充填室17内の位置により樹脂ペレット9に温度ムラが生じてしまうことが抑制される。
また、制御部40は、内側温度センサ27および外側温度センサ28の検出結果を取得し、検出結果に応じて内側赤外線放射部18および外側赤外線放射部23への入力値を調整する。これにより、充填室17内が適宜の温度に調整される。
上記のように、輻射熱を利用して充填室17内を加熱すれば、樹脂ペレット9を短時間で効率よく加熱することができる。一方で、従来、充填室内を加熱すると、オーバーシュート(過加熱)が生じやすいという問題があった。オーバーシュートが生じると、外側管および内側管の表面で樹脂ペレットのブロッキングや溶着が生じてしまう虞があり、何等かの対応策が望まれていた。
この点、本実施形態の粉粒体処理方法および粉粒体処理装置1においては、加熱処理の始動時において、樹脂ペレット9を短時間で効率よく加熱し、しかもオーバーシュートを防げるようにするための、特有の制御処理が行われる。この本実施形態に特有の制御処理については、後に詳述する。
<1-3.記憶部に記憶される情報>
記憶部50に記憶されるデータについて、図4を参照して説明する。図4は、記憶部50に記憶されるデータを説明する概念図である。記憶部50は、外側赤外線放射部23についての第1相関データD1と、内側赤外線放射部18についての第1相関データD1’と、外側赤外線放射部23についての第2相関データD2と、内側赤外線放射部18についての第2相関データD2’とを記憶する。制御部40は、記憶部50に記憶されるデータを読み出して参照可能である。
本実施形態の第1相関データD1は、外側赤外線放射部23への入力値をある一定の値(例えば、100%)としたときの、外側温度センサ28の検出値と、外側管16の表面(所定の位置)における樹脂ペレット9の温度の推定値と、の相関関係を示したデータである。第1相関データD1は、予め粉粒体処理装置1の製造業者等により予備試験を通じて作成される。具体的には、例えば外側管16の外周面のすぐ径方向外方に、試験用の温度センサを設置する。この状態で、外側赤外線放射部23への入力値をある一定の値(例えば、100%)として、外側温度センサ28の検出値と、試験用の温度センサの検出値と、を経時的にサンプリングする。この場合、試験用の温度センサの検出値を、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値とみなす。このようにして、第1相関データD1が作成される。第1相関データD1は、概念的には、外側温度センサ28の検出値の時間変化と、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値の時間変化とを、1つのグラフ中にまとめたものである。本実施形態では、外側赤外線放射部23への入力値を100%、90%、80%、70%としたときの第1相関データD1が、制御部40に記憶される。すなわち、制御部40は、外側赤外線放射部23への入力値が異なる複数の第1相関データD1を記憶する。
本実施形態の第1相関データD1’は、内側赤外線放射部18への入力値をある一定の値(例えば、100%)としたときの、内側温度センサ27の検出値と、内側管15の表面(所定の位置)における樹脂ペレット9の温度の推定値と、の相関関係を示したデータである。第1相関データD1’は、予め粉粒体処理装置1の製造業者等により予備試験を通じて作成される。具体的には、例えば内側管15の内周面のすぐ径方向内方に、試験用の温度センサを設置する。この状態で、内側赤外線放射部18への入力値をある一定の値(100%)として、内側温度センサ27の検出値と、試験用の温度センサの検出値と、を経時的にサンプリングする。この場合、試験用の温度センサの検出値を、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値とみなす。このようにして、第1相関データD1’が作成される。第1相関データD1’は、概念的には、内側温度センサ27の検出値の時間変化と、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値の時間変化とを、1つのグラフ中にまとめたものである。本実施形態では、内側赤外線放射部18への入力値を100%、90%、80%、70%としたときの第1相関データD1’が、制御部40に記憶される。すなわち、制御部40は、内側赤外線放射部18への入力値が異なる複数の第1相関データD1’を記憶する。
本実施形態の第2相関データD2は、例えば以下のようにして、予め粉粒体処理装置1の製造業者等により予備試験を通じて作成される。すなわち、制御部40は、外側赤外線放射部23への入力値が異なる複数の第1相関データD1のそれぞれから、定常状態のときの(熱的平衡状態に達した後の)、外側温度センサ28の検出値(設定値)と、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値との、組み合わせを取得する。そして、制御部40は、取得した複数の上記組み合わせに基づいて、外側温度センサ28の検出値(設定値)と、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度の定常時の推定値との、相関関係を求めて、これを第2相関データD2とする。第2相関データD2は、概念的には、x軸を外側温度センサ28の検出値(設定値)とし、y軸を外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値として、上記各組み合わせをプロットして、これらのプロットの近似線を生成したものである。
本実施形態の第2相関データD2’は、例えば以下のようにして、予め粉粒体処理装置1の製造業者等により予備試験を通じて作成される。すなわち、制御部40は、内側赤外線放射部18への入力値が異なる複数の第1相関データD1’のそれぞれから、定常状態のときの(熱的平衡状態に達した後の)、内側温度センサ27の検出値(設定値)と、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値との、組み合わせを取得する。そして、制御部40は、取得した複数の上記組み合わせに基づいて、内側温度センサ27の検出値(設定値)と、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度の定常時の推定値との、相関関係を求めて、これを第2相関データD2’とする。第2相関データD2’は、概念的には、x軸を内側温度センサ27の検出値(設定値)とし、y軸を内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度の推定値として、上記各組み合わせをプロットして、これらのプロットの近似線を生成したものである。
<1-4.加熱処理の始動時に行われる制御処理>
<1-4-1.目標温度の算出処理>
以下では、本実施形態に係る粉粒体処理方法および粉粒体処理装置1において、加熱処理の始動時に行われる制御処理について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態において制御部40により行われる目標温度T1~T3(T1’~T3’)の算出処理を示すフローチャートである。
初めに、制御部40は、外側温度センサ28の現在の検出値を取得する(ステップS101)。続いて、制御部40は、記憶部50から第1相関データD1を読み出す(ステップS102)。続いて、制御部40は、第1相関データD1を参照することで、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度を所定時間以内に理想温度の間近(すぐ手前)に到達させるために、外側赤外線放射部23に設定すべき入力値(例えば、100%)および第1目標温度T1を算出する(ステップS103)。概念的には、第1相関データD1のグラフから、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が理想温度の間近となるときに対応する、外側温度センサ28の検出値を読み取る。制御部40は、算出した第1目標温度T1および外側赤外線放射部23に設定すべき入力値を、記憶部50に記憶させる。
なお、ここで「理想温度」とは、樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理を進行させるときの、樹脂ペレット9の理想的な温度のことを言う。
続いて、制御部40は、記憶部50から第2相関データD2を読み出す(ステップS104)。続いて、制御部40は、第2相関データD2を参照することで、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度を理想温度付近に維持するために、外側赤外線放射部23に設定すべき第2目標温度T2を求める(ステップS105)。概念的には、第2相関データD2で生成した近似線から、樹脂ペレット9の温度が理想温度で定常状態となるときの、外側赤外線放射部23の設定値(設定温度)を読み取る。制御部40は、算出した第2目標温度T2を記憶部50に記憶させる。
続いて、制御部40は、第1目標温度T1以下でありかつ第2目標温度T2よりも高い第3目標温度T3を、第1相関データD1および第2相関データD2を考慮に入れて、適宜に算出する(ステップS106)。制御部40は、算出した第3目標温度T3を記憶部50に記憶させる。
同様に、制御部40は、内側温度センサ27の現在の検出値を取得する(ステップS101)。続いて、制御部40は、記憶部50から第1相関データD1’を読み出す(ステップS102)。続いて、制御部40は、第1相関データD1’を参照することで、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度を所定時間以内に理想温度の間近(すぐ手前)に到達させるために、内側赤外線放射部18に設定すべき入力値(例えば、80%)および第1目標温度T1’を算出する(ステップS103)。概念的には、第1相関データD1’のグラフから、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が理想温度の間近となるときに対応する、内側温度センサ27の検出値を読み取る。制御部40は、算出した第1目標温度T1’および内側赤外線放射部18に設定すべき入力値を、記憶部50に記憶させる。
続いて、制御部40は、記憶部50から第2相関データD2’を読み出す(ステップS104)。続いて、制御部40は、第2相関データD2’を参照することで、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度を理想温度付近に維持するために、内側赤外線放射部18に設定すべき第2目標温度T2’を求める(ステップS105)。概念的には、第2相関データD2’で生成した近似線から、樹脂ペレット9の温度が理想温度で定常状態となるときの、内側赤外線放射部18の設定値(設定温度)を読み取る。制御部40は、算出した第2目標温度T2’を記憶部50に記憶させる。
続いて、制御部40は、第1目標温度T1’以下でありかつ第2目標温度T2’よりも高い第3目標温度T3’を、第1相関データD1’および第2相関データD2’を考慮に入れて、適宜に算出する(ステップS106)。制御部40は、算出した第3目標温度T3’を記憶部50に記憶させる。
<1-4-2.温調制御処理>
上記のように第1~第3目標温度T1~T3(T1’~T3’)を算出した後、制御部40は、粉粒体処理装置1の充填室17の温調制御を開始する。以下では、この温調制御について図6を参照して説明する。図6は、本実施形態において、加熱処理の始動時に制御部40により行われる温調制御処理を示すフローチャートである。
初めに、制御部40は、外側赤外線放射部23に、ステップS103で算出した入力値(例えば、100%)を入力する(ステップS201)。そして、制御部40は、外側温度センサ28の検出値を取得することにより、検出結果が第1目標温度T1に到達したか否かを判断する(ステップS202)。ステップS202の判断の結果、外側温度センサ28の検出結果が第1目標温度T1に到達していた場合(ステップS202,yes)、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度の間近に到達したと考えられる。その場合、制御部40は、ステップS203以降の処理に移行する。一方、ステップS202の判断の結果、外側温度センサ28の検出結果が第1目標温度T1に到達していなかった場合(ステップS202,no)、制御部40は、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が理想温度の間近に到達するまで、ステップS202の判断を繰り返す。
外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度の間近に到達したしたら(ステップS202,yes)、制御部40は、続いて外側温度センサ28の検出値が第3目標温度T3となるように、外側赤外線放射部23に適宜の入力値を入力する(ステップS203)。ステップS203の後、制御部40は、外側温度センサ28の検出値が一定時間のあいだ第3目標温度T3となっていたか否かを判断する(ステップS204)。ステップS204の判断の結果、外側温度センサ28の検出値が一定時間のあいだ第3目標温度T3となっていた場合(ステップS204,yes)、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度により一層かつ緩やかに近づけられたと考えられる。その場合、制御部40は、ステップS204以降の処理に移行する。一方、ステップS204の判断の結果、外側温度センサ28の検出結果が一定時間にわたって第3目標温度T3に維持されていなかった場合、制御部40は、外側温度センサ28の検出値が第3目標温度T3となるまで、ステップS204の判断を続ける。好ましくは、制御部40は、外側温度センサ28の検出値が第3目標温度T3となるまで、外側赤外線放射部23への入力値のフィードバック制御を続ける。
外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度により一層かつ緩やかに近づけられたら(ステップS204,yes)、制御部40は、続いて外側温度センサ28の検出値が第2目標温度T2となるように、外側赤外線放射部23に適宜の入力値を入力する(ステップS205)。制御部40は、連続的または間欠的に外側温度センサ28の検出値を取得することにより、外側温度センサ28の検出値が第2目標温度T2となるように、外側赤外線放射部23への入力値のフィードバック制御を続ける。これにより、外側管16の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度の近傍に保たれる。
同様に、制御部40は、内側赤外線放射部18に、ステップS103で算出した入力値(例えば、80%)を入力する(ステップS201)。そして、制御部40は、内側温度センサ27の検出値を取得することにより、検出結果が、第1目標温度T1’に到達したか否かを判断する(ステップS202)。ステップS202の判断の結果、内側温度センサ27の検出結果が、第1目標温度T1’に到達していた場合(ステップS202,yes)、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度の間近に到達したと考えられる。その場合、制御部40は、ステップS203以降の処理に移行する。一方、ステップS202の判断の結果、内側温度センサ27の検出結果が第1目標温度T1’に到達していなかった場合(ステップS202,no)、制御部40は、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が理想温度の間近に到達するまで、ステップS202の判断を繰り返す。
内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度の間近に到達したら(ステップS202,yes)、制御部40は、続いて内側温度センサ27の検出値が第3目標温度T3’となるように、内側赤外線放射部18に適宜の入力値を入力する(ステップS203)。ステップS203の後、制御部40は、内側温度センサ27の検出値が一定時間のあいだ第3目標温度T3’となっていたか否かを判断する(ステップS204)。ステップS204の判断の結果、内側温度センサ27の検出値が一定時間のあいだ第3目標温度T3’となっていた場合(ステップS204,yes)。内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度により一層かつ緩やかに近づけられたと考えられる。その場合、制御部40は、ステップS204以降の処理に移行する。一方、ステップS204の判断の結果、内側温度センサ27の検出結果が一定時間にわたって第3目標温度T3’に維持されていなかった場合、制御部40は、内側温度センサ27の検出値が第3目標温度T3’となるまで、ステップS204の判断を続ける。好ましくは、制御部40は、側温度センサ27の検出結果が一定時間にわたって第3目標温度T3’に維持されるまで、内側赤外線放射部18への入力値のフィードバック制御を続ける。
内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度により一層かつ緩やかに近づけられたら(ステップS204,yes)、制御部40は、続いて内側温度センサ27の検出値が第2目標温度T2’となるように、内側赤外線放射部18に適宜の入力値を入力する(ステップS205)。制御部40は、間欠的に内側温度センサ27の検出値を取得することにより、外側温度センサ28の検出値が第2目標温度T2’となるように、内側赤外線放射部18への入力値のフィードバック制御を続ける。これにより、内側管15の表面における樹脂ペレット9の温度が、理想温度の近傍に保たれる。
このように、制御部40は、外側赤外線放射部23と、内側赤外線放射部18とを、個別に制御する。これにより、加熱処理の始動時に、充填室17内の樹脂ペレット9を、径方向内方側からも、径方向外方側からも、効率よく加熱することができる。その結果、樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理を高速化することができる。
<2.実施例>
次に、粉粒体処理装置1の加熱処理の始動時に、第1~第3目標温度T1~T3を算出するとともに、それに基づいて粉粒体処理装置1の充填室17の温調制御をした実験およびその結果を、実施例として、図7から図9までを参照して説明する。図7は、本実施例で得られた、外側赤外線放射部についての第1相関データを示している。図8は、本実施例で得られた、外側赤外線放射部についての第2相関データを示している。図9は、本実施例で行った温調制御の様子を示すグラフである。
本実験においては、図2に示したのと同様の構成の粉粒体処理装置を使用した。また、充填室に充填する材料としては、一般的な樹脂ペレット(ここでは、ポリブチレンテレフタレート)が用いられた。また、第1相関データおよび第2相関データを得るために、外側管のすぐ径方向内側に、試験用の温度センサを配置した。
本実験では、外側赤外線放射部への入力値を100%としたときの、外側赤外線放射部についての第1相関データを作成した。本実験で得られた、外側赤外線放射部についての第1相関データを、図7に示してある。図7中の上側のグラフは、外側温度センサの検出値の経時変化を示している。図7中の下側のグラフは、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値(本実験では、試験用の温度センサの検出値)の経時変化を示している。
また、本実験では、外側赤外線放射部への入力値を様々に設定して、それぞれの場合について、(試験用の温度センサの)検出結果が定常状態となったときの、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値(本実験では、試験用の温度センサの検出値)を記録した。このようにして得られた、外側赤外線放射部の設定温度と、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の定常状態における推定値との、第2相関データを、図8に示してある。
第1相関データに基づいて、外側赤外線放射部への入力値(本実験では、100%)および第1目標温度T1が求められた。また、第2相関データに基づいて、第2目標温度T2が求められた。さらに、第1目標温度T1および第2目標温度T2を考慮して、第3目標温度T3が求められた。そして、算出された目標温度T1~T3に基づいて、外側温度センサの検出結果を監視しつつ、外側赤外線放射部が温調制御された。このときの、外側温度センサおよび試験用の温度センサの検出値の経時変化を、図9に示してある。
図9中の、「A」と表示された区間では、目標温度が第1目標温度T1に設定されていた。第1目標温度T1は、理想温度よりも高い温度であった。これにより、「A」の区間では、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値(本実験では、試験用の温度センサの検出値)が、時間とともに急速に上昇していた。
図9中の「B」と表示された区間では、目標温度が第3目標温度T3に設定されていた。第3目標温度T3は、第1目標温度T1よりも低く、かつ第2目標温度T2よりも高い温度であった。これにより、「B」の区間では、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値(本実験では、試験用の温度センサの検出値)が、「A」の区間で昇温された温度よりも若干高い温度にまで緩やかに昇温されていた。
図9中の「C」と表示された区間では、目標温度が第3目標温度T3から第2目標温度T2まで、段階的に低下された。これにより、「C」の区間では、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値(本実験では、試験用の温度センサの検出値)のブレが、時間とともに徐々に小さくなった。
図9中の「D」と表示された区間では、目標温度が第2目標温度T2に設定されていた。第2目標温度T2は、第1目標温度T1よりも低く、かつ理想温度よりも低い温度であった。「D」の区間では、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値(本実験では、試験用の温度センサの検出値)が、略一定の状態に保たれていた。「D」の区間では、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値が、理想温度と略一致していた。
図9のグラフを見ると、充填室内の樹脂ペレットが、Aの区間において急速に理想温度の間近の温度にまで加熱されたことがうかがえる。また、充填室内の樹脂ペレットの温度が、Bの区間において、より一層かつ緩やかに理想温度に近づいたことがうかがえる。しかも、図9を見る限り、樹脂ペレットの加熱の過程においてオーバーシュートは生じていない。これは、樹脂ペレットの温度をAの区間において理想温度の間近にまで加熱した後、B~Dの区間においてすぐに外側赤外線放射部への入力値を下げたためと考えられる。外側管は赤外線透過性透過材料でできているため、外側赤外線放射部への入力値を下げたら、瞬時に外側管の熱量も低下したものと推考できる。
なお、実験の結果の詳細は省略するが、本実験では、第1~第3目標温度T1’~T3’を算出するとともに、それに基づいて粉粒体処理装置1の充填室17(内側管15の表面)の温調制御をした実験も行った。すなわち、内側赤外線放射部についての第1相関データ、第2相関データ、および温調制御の様子を示すグラフも作成した。温調制御の様子を示すグラフは、図9で示したものとは若干異なる形状となったが、その場合でもオーバーシュートは生じていなかった。
<3.まとめ>
以上に示したように、本実施形態で開示した粉粒体処理方法は、充填室(貯留容器)17と、外側赤外線放射部(赤外線放射部)23と、外側温度センサ(温度センサ)28と、制御部40と、記憶部50とを備える粉粒体処理装置1を用いて樹脂ペレット(粉粒体)9を処理する。制御部40は、外側赤外線放射部23への入力値を制御する。記憶部50は、外側温度センサ28の検出値と、充填室17の表面(所定の位置)における樹脂ペレット9の温度の非定常時の推定値と、の相関関係を示す第1相関データD1を記憶する。制御部40は、次のa)からc)までの処理を実行する。a)では、第1相関データD1を読み出して参照することで、充填室17の表面(外側管16)における樹脂ペレット9の温度を所定時間以内に理想温度の間近に到達させるために、外側赤外線放射部23に設定すべき入力値および第1目標温度T1を算出する(ステップS103)。b)では、前記a)で算出した第1目標温度T1を実現するように、外側温度センサ28の検出結果に基づいて、外側赤外線放射部23への入力値を制御する(ステップS201~S202)。c)では、前記b)の後、外側赤外線放射部23への入力値を前記b)のときよりも下げる(ステップS203)。これにより、充填室17内の樹脂ペレット9を、所定時間以内に理想温度の間近にまで加熱することができる。よって、樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理を高速化することができる。また、外側管16は赤外線透過性材料で構成されているため、樹脂ペレット9の温度を理想温度の間近にまで到達させた後、すぐに外側赤外線放射部23への入力値を下げることで、オーバーシュートを防ぐことができる。別の言い方をすれば、入力値に対する外側赤外線放射部23の応答性を向上させることで、過加熱となってしまうことを防止できる。その結果、充填室17の表面(外側管16)の付近でブロッキングや溶着が生じてしまうことを抑制できる。
また、本願で開示した粉粒体処理方法においては、第1目標温度T1に設定したときの樹脂ペレット9の到達温度は理想温度よりも高い。これにより、樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理をより高速化することができる。
また、本願で開示した粉粒体処理方法においては、記憶部50は、設定温度と、充填室17の表面(外側管16の表面)における樹脂ペレット9の温度の定常時の推定値と、の相関関係を示す第2相関データD2を記憶する。制御部40は、前記c)において以下のc-1)およびc-4)の処理を行う。c-1)では、第2相関データD2を読み出して参照することで、充填室17の表面(外側管16の表面)における樹脂ペレット9の温度を理想温度付近に維持するために、外側赤外線放射部23に設定すべき第2目標温度T2を求める。c-4)では、前記c-1)で求めた第2目標温度T2を実現するように、外側温度センサ28の検出結果に基づいて、外側赤外線放射部23への入力値をフィードバック制御する。これにより、粉粒体処理装置1を適切に運転して、樹脂ペレット9の温度を理想温度の付近に保つことができる。
また、本願で開示した粉粒体処理方法においては、第2目標温度T2は第1目標温度T1よりも低い。これにより、オーバーシュートを生じ難くすることができる。
また、本願で開示した粉粒体処理方法においては、第2目標温度T2に設定したときの樹脂ペレット9の到達温度は理想温度よりも低い。これにより、オーバーシュートをより生じ難くすることができる。
また、本願で開示した粉粒体処理方法においては、制御部40は、前記c)において以下のc-2)の処理を行う。c-2)では、前記c-1)よりも後かつ前記c-4)よりも前に、外側赤外線放射部23に設定する目標温度を一定期間の間、第1目標温度T1以下でありかつ第2目標温度T2よりも高い第3目標温度T3に保つように、外側温度センサ28の検出結果に基づいて、外側赤外線放射部23への入力値をフィードバック制御する。これにより、理想温度の間近にまで加熱した樹脂ペレット9を、その後、オーバーシュートを防ぎつつより一層かつ緩やかに理想温度に近づけることができる(図9の区間Bを参照)。
また、本願で開示した粉粒体処理方法においては、制御部40は、前記c)において以下のc-3)の処理を行う。c-3)では、前記c-2)よりも後かつ前記c-4)よりも前に、外側赤外線放射部23に設定される目標温度を第3目標温度T3から第2目標温度T2にまで漸次または段階的に下げるように、外側温度センサ28の検出結果に基づいて、外側赤外線放射部23への入力値をフィードバック制御する。これにより、充填室17の表面(外側管16の表面)の樹脂ペレット9の温度のブレを次第に小さくして、理想温度に近づけることができる(図9の区間Cを参照)。
また、本願で開示した粉粒体処理装置1は、内側管15と、外側管16と、充填室(貯留室)17とを有する。前記赤外線放射部は、外側赤外線放射部23と、内側赤外線放射部18とを有する。制御部40は、内側赤外線放射部18と、外側赤外線放射部23とを、個別に制御する。これにより、充填室17内の樹脂ペレット9を、径方向外方側からの輻射熱と、径方向内方側からの輻射熱とにより、効率よく加熱することができる。その結果、樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理をより高速化することができる。
さらに、本願で開示した粉粒体処理装置1は、気体通路20と、注入口21と、排出口22とを備える。これにより、樹脂ペレット9から放出される水分を外部へ排出して乾燥を促進することができる。また、充填室17内の樹脂ペレット9が、赤外線放射部23,18からの輻射熱だけではなく、充填室17内を流れる気体による対流熱伝達によっても加熱される。その結果、樹脂ペレット9の加熱・乾燥処理に掛かる時間をより短縮することができ、しかも充填室17内での温度ムラを生じ難くすることができる。その結果、充填室17内で樹脂ペレット9のブロッキングや溶着が生じてしまうことを抑制できる。
さらに、本願で開示した粉粒体処理装置1においては、温度センサ28,27は赤外線透過性材料42により覆われている。これにより、温度センサ28,27の検出結果に、気体の流れが影響してしまうことを抑制できる。その結果、より精度のよい温調制御が可能となる。
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
<4.第1変形例>
上記の実施例では、第1目標温度T1は理想温度よりも高く、かつ、第2目標温度T2は理想温度よりも低かった。しかしながら、目標温度T1,T2と理想温度の大小関係は、必ずしもこれに限らない。図10および図11に、目標温度T1,T2がいずれも、理想温度よりも低くなる場合の例を、第1変形例として示してある。図10は、第1変形例に係る粉粒体処理装置の内部構造を示す縦断面図である。図11は、第1変形例で行われた算出処理により得られた、温調制御の様子を示すグラフである。
図10に示すように、本変形例の内側温度センサ27は、その温度検出部分が、樹脂ペレット9が貯留される領域よりも上方に配置されている。そのため、内側温度センサ27と内側赤外線放射部18との距離が、樹脂ペレット9と内側赤外線放射部18との距離よりも、長くなっている。この場合、第1目標温度T1’および第2目標温度T2’はいずれも、理想温度よりも低くなる。
第1変形例においても、上記の実施例と同様の方法により、第1~第3目標温度T1’~ T3’を算出するとともに、それに基づいて、図11に示すように、粉粒体処理装置1の充填室17(内側管15の表面)の温調制御を行った。
図11中の、「E」と表示された区間では、目標温度が第1目標温度T1’に設定されていた。第1目標温度T1’は、理想温度よりも低い温度であった。「E」の区間では、外側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値が、時間とともに急速に上昇していた。
図11中の「F」と表示された区間では、目標温度が第3目標温度T3’に設定されていた。第3目標温度T3’は、理想温度よりも低い温度であって、第1目標温度T1’以下でありかつ第2目標温度T2’よりも高い温度であった。「F」の区間では、内側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値が、「E」の区間で昇温された温度よりも若干高い温度にまで、緩やかな勾配で昇温されていた。
図11中の「G」と表示された区間では、目標温度が第3目標温度T3’から第2目標温度T2’まで、段階的に低下された。これにより、「G」の区間では、内側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値のブレが、時間とともに徐々に小さくなった。
図11中の「H」と表示された区間では、目標温度が第2目標温度T2’に設定されていた。第2目標温度T2’は、第1目標温度T1’よりも低く、かつ理想温度よりも低い温度であった。「H」の区間では、内側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値が、略一定の状態に保たれていた。「H」の区間では、内側管の表面の樹脂ペレットの温度の推定値が、理想温度と略一致していた。
このように、第1変形例においても、樹脂ペレットを短時間で効率よく加熱し、しかもオーバーシュートを防止することが実現できているとうかがえる。
<5.その他の変形例>
上記の実施形態では、内側赤外線放射部18と、外側赤外線放射部23とが、制御部40によって個別に制御されていたが、これに限定されない。上記に代えて、内側赤外線放射部18と、外側赤外線放射部23とに、同一の温調制御内容が適用されてもよい。
上記の実施形態では、赤外線放射部は、内側赤外線放射部18と外側赤外線放射部23とを有していたが、これに限らない。上記に変えて、赤外線放射部が、内側赤外線放射部および外側赤外線放射部のうちのいずれかのみを有していてもよい。あるいは、赤外線放射部が、内側赤外線放射部および外側赤外線放射部以外の、付加的な加熱部を備えていてもよい。
赤外線放射部の目標温度を第1目標温度T1から第2目標温度T2に遷移させる過程では、目標温度を漸次または段階的に下げる過程を省略してもよい。すなわち、赤外線放射部の目標温度を、第1目標温度T1から第2目標温度T2に一挙に下げてもよい。
上記の実施形態では、貯留容器を、粉粒体が循環する充填室17としたが、これに限定されない。すなわち、貯留容器は、粉粒体を貯留する機能のみを有する単なる容器としてもよい。
また、各部の細部の構成およびレイアウトや、各処理の順序および詳細については、本願の各図に示されたものとは異なっていてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。