以下、添付図面を参照しながら本発明の各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における抵抗器の熱解析装置10の構成例を示すブロック図である。
熱解析装置10は、基板上に実装される電子部品の温度分布を解析するコンピュータであり、特に抵抗器の温度を解析する。熱解析装置10は、プロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース、及び、これらを相互に接続するバス等により構成される。
熱解析装置10を構成するプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)又はDSP(digital signal processor)等である。熱解析装置10の入出力インターフェースには、入力装置15、記憶装置16及び表示装置17が接続される。
入力装置15は、マウス、キーボード、及びタッチパネル等により構成される。記憶装置16は、HDD(hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)又は光学ドライブ等により構成される。
記憶装置16には、基板上に実装される電子部品の熱流体解析を行うための熱解析プログラムが格納されている。さらに記憶装置16には、基板上に実装される電子部品のうち解析対象である抵抗器についての熱回路網データが格納される。この抵抗器の熱回路網データは、上述熱解析プログラムを実行する際に必要となる電子回路の解析モデルを生成するためのプログラムである。
表示装置17は、液晶ディスプレイ又はプロジェクタ等である。通信処理装置18は、外部端末との間で通信を行い、外部端末から受信したデータを記憶装置16に記録する。通信処理装置18は、例えば、入力装置15からの入力情報に基づき、インターネット網及び電話網等のネットワーク19を通じて外部のサーバ等から、上述熱解析プログラム及び熱回路網データ等の種々のプログラムを受信する。
通信処理装置18は、受信した種々のプログラムを記憶装置16に記録する。なお、通信処理装置18は、USB(universal serial bus)メモリ又はCD-ROM(Compact Disc Read only memory)等から、熱解析装置10により実行される種々のプログラムを受信してもよい。
次に、熱解析装置10の機能構成について詳細に説明する。
熱解析装置10は、設定部11と、解析モデル生成部12と、解析部13と、出力部14と、を備える。熱解析装置10における各部位の機能は、RAMに読み込まれた熱解析プログラムをプロセッサが実行することによって実現される。
設定部11は、基板上に実装された電子部品の熱解析を行うための解析条件を設定する。例えば、設定部11は、入力装置15からの入力情報に基づき、解析条件として、基板及び電子部品の寸法及び物性値、並びに、電子部品に印加する印加電力(供給電力)等を設定する。
解析モデル生成部12は、抵抗器の熱解析モデルを準備(用意)する準備部を構成する。解析モデル生成部12は、設定部11からの指示に従って、記憶装置16から少なくとも抵抗器の熱回路網データを読み込み、その熱回路網データに基づき抵抗器の熱解析に必要となる電子回路の解析モデルを生成する。
解析部13は、解析モデル生成部12により生成された電子回路の解析モデルを用いて抵抗器の温度を解析する。例えば、設定部11によって抵抗器への印加電力として所定の値が設定されると、解析部13は、その設定値に基づいて熱抵抗モデルの所定部位の温度を解析する。または、設定部11によって周辺の電子部品から抵抗器に伝達される熱量として特定の値が設定されると、解析部13は、その設定値に基づいて熱抵抗モデルの所定部位の温度を解析する。
本実施形態では、基板及び抵抗器以外の電子部品の熱流体解析については有限要素法が用いられ、抵抗器の熱解析については熱回路網法が用いられる。以下、有限要素法を適用した熱流体解析モデルのことを詳細モデルと称し、熱回路網法を適用した熱解析モデルのことを熱抵抗モデルと称する。
なお、詳細モデルを用いた熱流体解析においては、部品内部の寸法及び物性値等の詳細情報が必要となるが、実際上は部品メーカ等から部品に関する詳細情報を入手することは困難である。また、詳細モデルは、解析精度が高いものの、多数の要素(格子)で構成されるものであるため、解析に時間を要する。一方、熱抵抗モデルは、熱抵抗を用いて部品の熱伝導を簡易的に模擬するものであり、詳細モデルに比べて要素(熱抵抗)の設定数は少なく解析時間も短い。
出力部14は、解析部13により解析された抵抗器の各部位の温度をグラフ化したり、コンピュータグラフィクス又はアニメーションにより可視化したりする所定の処理を実行する。出力部14は、その所定の処理により生成される画像を表示装置17に出力する。
次に、熱解析装置10の解析対象である抵抗器の構造について図2A及び図2Bを参照して説明する。
図2Aは、本実施形態における抵抗器20の形状を示す斜視図である。また、図2Bは図2AのI-I断面図である。図2Bに示されるように、抵抗器20を構成する各部材は対称に配置されている。
抵抗器20は、銅箔等によって電極35a,35bなどの配線パターンが形成された基板21に取り付けられるセラミックス抵抗器(チップ抵抗器)である。抵抗器20の抵抗値は、例えば、数十mΩ(ミリオーム)から数十MΩ(メガオーム)までの抵抗範囲内の抵抗値をとりうる。
抵抗器20は、絶縁性を有する絶縁基材22と、この絶縁基材22の上面に形成される導電性の抵抗体24とを備える。抵抗体24は、例えば、スパッタリングによって絶縁基材22の上面に薄膜として堆積したもの、又は主にスクリーンを用いた孔版印刷などによって形成された導電性の材料からなる。抵抗体24としては、Au、Ag、Pt、Cu、又はNi-Crなどの材料が用いられる。また、絶縁基材22としては、例えばアルミナをはじめとするセラミックス材料が用いられる。この抵抗体24の上面には、抵抗体24を外気や機械的ストレスから保護する保護膜25が設けられている。
絶縁基材22の外面には、基板21に対して電気的に接続される一対の電極部33a,33bが形成される。一方の電極部33aは、接続層30aと、金属めっき層31aと、はんだめっき層32aと、によって構成される。他方の電極部33bは、接続層30bと、金属めっき層31bと、はんだめっき層32bと、によって構成される。
具体的には、一対の接続層30a,30bは、抵抗体24の両端に電気的に接続され、絶縁基材22の外面に形成される。接続層30a,30bの各々の外面には、金属めっき層31a,31bとして例えばニッケルめっきが形成される。この金属めっき層31a,31bのさらに外面には、一対のはんだめっき層32a,32bが形成されている。そして、はんだめっき層32a,32bの外面のうち、絶縁基材22の下側に位置する接合面34a,34bは、はんだによって基板21の電極35a,35bに接続される。
したがって、抵抗器20が基板21に実装された状態において、接続層30a,30bの各々は、金属めっき層31a,31b及びはんだめっき層32a,32bを介して、基板21上の電極35a,35bに電気的に接続される。これにより、基板21の電極35a,35b間の抵抗器20に電力が印加されると、一方の接続層30aと他方の接続層30bとが通電して抵抗器20が発熱する。
抵抗器20において一方の接続層30aと他方の接続層30bとの間に印加される電力による電気エネルギーは熱エネルギーに変換される。抵抗器20への印加電力のほとんどは熱エネルギーに変換されるため、抵抗器20の発熱量は、抵抗器20への印加電力と同等であるとみなすことができる。
抵抗器20で発生する熱は、接触している部材への熱伝達と、自然対流などの対流による空気への熱伝達と、赤外線の放射とによって放熱される。本実施形態では、これらの態様による放熱のうちの大部分を占める、接触している部材への熱伝達について説明する。より詳細には、抵抗器20で発生する熱が、絶縁基材22に伝達した後に端子部29a,29bから基板21に放熱される場合について説明する。
また、基板21に実装された抵抗器20は、基板21上の他の部品において生じる熱を受ける。本実施形態では、他の部品で発生した熱が、端子部29a,29bから抵抗器20へ伝達する場合についても説明する。以下の説明においては、抵抗器20が他の部品から熱を受けることを単に受熱と称する。
なお、以下の説明において、絶縁基材22のうち基板21から離間する部分を中間部26と称し、また絶縁基材22のうち中間部26の両側を端部28a,28bと称する。また、絶縁基材22の端部28a,28bと、電極部33a,33bを構成する接続層30a,30b、金属めっき層31a,31b、及びはんだめっき層32a,32bと、をあわせて端子部29a,29bと称する。さらに以下の説明においては、理解を容易にするために、接続層30a,30bと、金属めっき層31a,31bと、はんだめっき層32a,32bとは区別して図示せず、電極部33a,33bとしてまとめて図示して説明する。
図3は、本実施形態における記憶装置16の内部構成を示すブロック図である。
記憶装置16は、熱解析プログラム記憶部161と、ライブラリデータ記憶部162と、部品形状データ記憶部163と、を備える。
熱解析プログラム記憶部161には、上述のように熱解析装置10の各部位の動作を制御する熱解析プログラムが格納されている。この熱解析プログラムとしては、例えば専用の熱流体解析ソフトウェア又は汎用の三次元CFD(数値流体力学:Computational Fluid Dynamics)ソフトウェア等が用いられる。
ライブラリデータ記憶部162には、熱解析プログラムの実行中に設定部11からの指示によって読み込み可能な部品データが格納されている。ライブラリデータ記憶部162は、抵抗器熱解析モデル記憶部164と、特定部品三次元データ記憶部165と、を備える。
抵抗器熱解析モデル記憶部164には、上述の抵抗器20についての熱回路網データが格納される。抵抗器20の熱回路網データには、熱回路網法を用いて抵抗器20の温度を解析する熱抵抗モデルが記憶されている。
本実施形態の熱回路網データには、抵抗器20内部の熱伝導を模擬する熱抵抗に加え、抵抗器20の形状を形成する頂点又は曲線等の位置を特定する形状データが含まれている。この熱回路網データは、例えば、抵抗器20の種類又は製品ごとに格納される。このように、抵抗器熱解析モデル記憶部164は、抵抗器20の熱抵抗モデルを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
特定部品三次元データ記憶部165には、基板21又は特定の電子部品についての寸法及び物性値を含む三次元データが格納されている。特定の電子部品は、例えば、半導体チップ及び基板ヒータ等が挙げられる。三次元データは、詳細モデルの作成等に用いられる。
部品形状データ記憶部163には、基板21又は電子部品についての詳細な寸法を示す形状データが格納される。形状データは、三次元データと同様、詳細モデルの作成に用いられる。形状データとしては例えばCAD(computer aided design)データが挙げられる。
次に、抵抗器20の温度を解析する熱解析方法について図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態における熱解析方法の処理手順例を示すフローチャートである。
ステップS1において解析モデル生成部12は、基板21に関する三次元データに基づいて、基板21を含む電子回路基板の詳細モデルM1を作成する。三次元データは、設定部11により各部品の寸法及び物性値が設定されたデータでもよく、あらかじめ部品の詳細な寸法が設定されたCADデータであってもよい。
ステップS2において解析モデル生成部12は、記憶装置16の抵抗器熱解析モデル記憶部321から抵抗器20の熱回路網データを読み込み、その熱回路網データに基づき抵抗器20の熱抵抗モデルM2を生成する。
なお、解析モデル生成部12は、設定部11により設定される境界条件に基づいて、抵抗器20の熱抵抗モデルM2を電子回路基板の詳細モデルM1に熱的に接続して電子回路の解析モデルMを生成する。具体的には、設定部11は、抵抗器20の熱抵抗モデルM2の位置を電子回路基板の詳細モデルM1上に配置し、抵抗器20の電極部33a,33bから基板21の電極35a,35bへ熱が伝達するよう境界条件を設定する。
ステップS3において設定部11は、電子回路の解析モデルMに含まれる抵抗器20の熱抵抗モデルM2に対して、発熱量に相当する抵抗器20への印加電力Pを所定の値に設定する。この所定の値は、例えば解析者が入力装置15を操作することで設定される。
ステップS4において解析部13は、電子回路の解析モデルMを用いて、設定部11により設定された印加電力Pに基づいて抵抗器20の各部位の温度を解析する。ここで、抵抗器20が使用状態にある場合には、印加電力Pは抵抗体ノードNhsに設定され、それ以外の場合には、印加電力Pは、電子回路基板上の任意の箇所に設定され、この任意の箇所に設定された印加電力Pは、後述の接合面ノードNta,Ntbを介して抵抗器20の熱抵抗モデルM2内に流入するように設定される。
ステップS5において出力部14は、抵抗器20の各部位の解析結果を表示装置17に表示するように所定の処理を実行する。
次に、抵抗器20の熱抵抗モデルM2を生成する手法について図5Aから図8を参照して説明する。
図5Aは、本実施形態における抵抗器20の熱抵抗モデルM2の基本構成を示す回路図である。ここでは、熱抵抗モデルM2の基本構成とともに、抵抗器20を基板21に実装した電子回路の断面形状が重ねて示されている。基板21は、ガラス・エポキシ基板であるFR4等の基板21の表面にCu等の電極35a,35bを積層したプリント配線板である。
抵抗器20の熱抵抗モデルM2を作成するにあたり、図2Aに示した中間部26を表す中間ノード領域HAと、一対の端子部29a,29bの各々を表す端子部ノード領域TAa,TAbと、抵抗体24を表す抵抗体ノード領域RAと、が設定される。さらに、端子部ノード領域TAa,TAbごとに接合面ノードNta,Ntbが設定される。中間ノード領域HA、端子部ノード領域TAa,TAb、及び抵抗体ノード領域RAは、抵抗器20の寸法に基づいて設定される。
熱抵抗モデルM2には、中間ノード領域HAに属する中間ノードNcと、一対の端子部ノード領域TAa,TAbに属する端子部ノードNa,Nbと、抵抗体ノード領域RAに属する抵抗体ノードNhsと、が設定される。中間ノードNc、端子部ノードNa,Nb、及び抵抗体ノードNhsは、各ノードの属する領域内において任意の位置、すなわち絶縁基材22の端部28a,28b、又は電極部33a,33bに対応する領域内の任意の位置に設定可能である。また、端子部ノードNa,Nbは、図2Aに示した端子部29a,29bから基板21への熱経路Pta,Ptbの起点となる。
熱抵抗モデルM2には、中間ノードNc及び抵抗体ノードNhs間を接続する第1熱抵抗R1と、中間ノードNc及び端子部ノードNa間を接続する第2熱抵抗R2と、中間ノードNc及び端子部ノードNb間を接続する第2熱抵抗R2と、が設定される。
第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各々の熱抵抗値は、別途、抵抗器20の詳細モデルを用いて抵抗器20の温度分布を解析した結果等に基づいてあらかじめ定められる。この詳細については図8を参照して説明する。
次に、図2A及び図5Aを参照し、抵抗器20の熱抵抗モデルM2における基本構成の機能について詳細に説明する。
まず、熱抵抗モデルM2の基本構成として、抵抗体24から絶縁基材22の中心へ向かって流れる熱の伝達を模擬する一つの第1熱抵抗R1が設定される。この理由について以下に説明する。
一般的に、基板21に対して垂直方向に積層している部材では、水平方向の熱抵抗が垂直方向の熱抵抗に対して相対的に大きくなる。このため、熱源からの熱は垂直方向に伝達されやすく、水平方向には伝達されにくい。したがって、本実施形態のように絶縁基材22に積層されている抵抗体24においては、主として抵抗体24の熱源から基板21に対して垂直方向に向かって熱が伝達する。このため、基板21に対して垂直方向に第1熱抵抗R1が設定されている。
また、第1熱抵抗R1は、抵抗体24の熱抵抗と、抵抗体24と材料が異なる絶縁基材22の熱抵抗と、を考慮して定められている。このように、第1熱抵抗R1は、複数の材料の熱抵抗を合成した熱抵抗を示している。この第1熱抵抗R1の値の決定方法については図8を用いて後述する。
これに加えて、熱抵抗モデルM2の基本構成として、中間部26から両側の端子部29a,29bに流れる熱の伝達を模擬する一対の第2熱抵抗R2が設定されている。この理由について以下に説明する。
上述のように全体が絶縁基材22に接触している抵抗体24とは異なり、絶縁基材22は、基板21に対して中間部26が離間している。絶縁基材22においては、空気よりも電極部33a,33bを介した方が熱を基板21に伝達しやすいので、水平方向の熱抵抗が垂直方向の熱抵抗に対して相対的に小さくなる。したがって、本実施形態のように中間部26が基板21から離間した絶縁基材22においては、主として絶縁基材22の熱源から基板21に対して略水平方向に向かって熱が伝達する。このため、第2熱抵抗R2は基板21に対して略水平方向に設定されている。
また、第2熱抵抗R2が略水平方向に設定されている他の理由として、抵抗器20の水平方向の熱伝達を考慮する際に、抵抗体24の水平方向の熱抵抗を無視できることが挙げられる。抵抗器20の水平方向の熱抵抗の大きさは、絶縁基材22と抵抗体24の水平方向の熱抵抗の合成値であるため、絶縁基材22の水平方向の熱抵抗の大きさが抵抗体24の水平方向の熱抵抗の大きさに比べて十分小さい場合には、抵抗体24の水平方向の熱抵抗を無視することができる。
これについて、図5Bを参照して詳細に説明する。図5Bは、上述のように抵抗体24の水平方向の熱抵抗を無視できる設計条件の一例を示した図である。換言すれば、図5Bは、熱抵抗モデルM2を適用できる抵抗器20の設計条件の一例を示す図である。
図5Bには、抵抗体厚みtrと絶縁基材厚みtsの比率としての厚み比率tr/ts、及び抵抗体熱伝導率λrと絶縁基材熱伝導率λsの比率としての熱伝導率比率λr/λsの値を変化させた場合において、端子部29a,29b間の水平方向の熱抵抗の変化量を計算した結果が示されている。なお、抵抗体厚みtrは抵抗体24の厚み、すなわち基板21に対する垂直方向の寸法であり、絶縁基材厚みtsは絶縁基材22の厚みである。また、抵抗体熱伝導率λrは抵抗体24の熱伝導率であり、絶縁基材熱伝導率λsは絶縁基材22の熱伝導率である。
端子部29a,29b間の水平方向の熱抵抗の変化量の計算においては、抵抗体24の水平方向の熱抵抗が無視できる程十分小さい場合の端子部29a,29b間の水平方向の熱抵抗を基準として、端子部29a,29b間の水平方向の熱抵抗の変化率が算出されている。図5Bに示される領域Aの設計条件を満たす抵抗器20においては、抵抗体24の水平方向の熱抵抗が無視できる程度に小さいため、端子部29a,29b間の水平方向の熱抵抗の大きさを絶縁基材22の水平方向の熱抵抗のみによって定めることができる。具体的には、領域Aに示されるように、抵抗体24の水平方向の熱抵抗の影響が5%未満となる抵抗器20に対して、第2熱抵抗R2を略水平方向に設定してもよい。
上述のような種々の理由に基づいて、第2熱抵抗R2は基板21に対して略水平方向に設定されている。この第2熱抵抗R2は、絶縁基材22の中心位置から水平方向に対称の熱抵抗を設定してもよい。これら二つの第2熱抵抗R2の値の決定方法については図8を用いて後述する。
このように、抵抗器20の熱抵抗モデルM2において、垂直方向への熱の伝達を模擬する第1熱抵抗R1と、略水平方向への熱の伝達を模擬する第2熱抵抗R2が設定される。これにより、一つの熱抵抗モデルM2において、垂直方向及び垂直方向以外の熱の伝達を模擬することができる。例えば、本実施形態の抵抗器20のように、導電性の材料と絶縁性の材料とを積層したような、異なる性質を持つ複数の材料からなる抵抗器20における熱の伝達を模擬することが可能となる。
上述のように、熱抵抗モデルM2は、異なる方向への熱の伝達を模擬するものであるため、熱解析の目的に応じて熱抵抗モデルM2を使い分けることができる。
まず、抵抗器20に対して熱解析が行われる場面の一例として、基板21に実装された抵抗器20に電力が印加されている状態にある場面が挙げられる。上述のように、抵抗器20に電力が印加されると抵抗体24に熱が生じ、抵抗体24で生じた熱は端子部29a,29bから放熱する。以下では、このように抵抗器20に電力が印加される状態のことを使用状態と称する。
図6は、抵抗器20の使用状態において適用される抵抗器20の熱抵抗モデルM2の構成を示す図である。図6に示される矢印は熱の流れを表している。抵抗器20で発生した熱は、抵抗体ノードNhsから中間ノードNcに向かって流れた後、中間ノードNcから端子部ノードNa,Nbのそれぞれに向かって流れる。端子部ノードNa,Nbの熱は熱経路Pta,Ptbを通って基板21に放熱される。
したがって、このような抵抗器20の使用状態においては、熱抵抗モデルM2のうち第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2を用いて熱解析が行われる。
一方で、抵抗器20に対して熱解析が行われる場面の他の例として、抵抗器20が非使用状態にある場面が挙げられる。ここにいう非使用状態とは、抵抗器20が基板21に実装されていて抵抗器20に電力が印加されていない場面、又はリフロー方式によって抵抗器20を基板21に接合する場面が想定される。このような場面では、抵抗器20の抵抗体24自体は発熱しないものの、抵抗器20の周囲の熱を基板21から受熱することがある。
図7は、このような非使用状態において適用される抵抗器20の熱抵抗モデルM2の構成を示す図である。図7に示される矢印は熱の流れを表している。抵抗器20の周囲で生じた熱は、例えば基板21に接する接合面ノードNtbから流入し、熱経路Ptbを通って中間ノードNc、端子部ノードNa、及び熱経路Ptaを通って接合面ノードNtaから基板21へ伝達される。
したがって、抵抗器20が受熱する場合においては、熱抵抗モデルM2のうち第2熱抵抗R2を用いて熱解析が行われる。
続いて、熱抵抗モデルM2における第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の決定方法について説明する。
ここでは、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各値を算出するにあたり、熱抵抗モデルM2とは別の詳細モデルの解析結果が使用される。この詳細モデルでは、抵抗器20に印加電力Pを印加した場合の定常状態(温度飽和時)の温度分布を解析することができる。
図8は、上述の詳細モデルを用いて解析した抵抗器20の温度分布と各ノードとの関係の一例を示す図である。図8において、図2A及び図5Aに対応する部位には同一の符号を付している。図8では、解析結果として、温度分布が色の濃淡によって示されており、抵抗器20の内部温度が高くなるほど色が濃くなるように表されている。図8に示すように、抵抗器20に印加電力Pが印加されている場合、抵抗体24においてホットスポットと称される部位の温度が最も高くなる。
抵抗体ノードNhsの算出温度は、このホットスポットに相当する温度を表すように決定される。より詳細には、第1熱抵抗R1の計算にあたり、抵抗体ノードNhsの算出温度が抵抗体24のホットスポットの温度に対応するように、詳細モデルの解析結果のうちホットスポットの解析温度Thsが用いられる。
同様に、中間ノードNcの算出温度は、絶縁基材22の中心部に相当する温度を表すように決定される。より詳細には、第1熱抵抗R1の計算にあたり、中間ノードNcの算出温度が絶縁基材22の中心部の温度に対応するように、詳細モデルの解析結果のうち絶縁基材22の中心部の解析温度Tcが用いられる。
さらに、解析温度Ttの算出温度は、端子部29a,29bの隅位置に相当する温度を表すように決定される。より詳細には、第1熱抵抗R1の計算に当たり、端子部ノードNa,Nbの算出温度が端子部29a,29bの隅位置に相当する温度に対応するように、詳細モデルの解析結果のうち端子部29a,29bの隅位置の解析温度Ttが用いられる。ここにいう隅位置に相当する温度は、電極部33a,33bの温度に対応する温度とみなすことができる。より厳密には、本実施形態の解析温度Ttは、一例として、電極部33a,33bのうち、はんだめっき層32a,32b又はその近傍の位置における温度に相当する。
第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2は、抵抗器20への印加電力Pと、抵抗器20の対応位置での解析温度Ths、Tc及びTtと、を用いて次の式(1)及び(2)のように計算される。
このように決定された第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各々の計算値は、抵抗器20の熱回路網データに設定される。
このように、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各値を設定した熱抵抗モデルM2を用いて抵抗器20の温度を解析することにより、各ノードの算出温度を、上述の抵抗器20の対応位置での温度として扱うことができる。
以上のように、熱抵抗モデルM2を用いて熱解析を実行することにより、抵抗体ノードNhs、中間ノードNc、及び端子部ノードNa,Nbでは、電子回路の熱設計に必要とされる抵抗器20の所定部位の温度が算出される。これにより、解析者は、抵抗器20のホットスポットと端子部29a,29bの隅位置との温度差を把握することができる。
なお、本実施形態では、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各々がひとつの熱抵抗により構成される例について説明した。しかしながら、本実施形態の第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各々は、解析ポイント数を増やすために複数の熱抵抗成分を直列に接続した構成でもよく、複数の熱抵抗成分を並列に接続した構成であってもよい。これらの構成は、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2と同様の機能を有するものとして同一視することができる。
次に、特定の熱解析プログラム上のライブラリに格納される抵抗器20の熱回路網データについて図9及び図10を参照して説明する。
図9は、抵抗器20の熱回路網データにより生成される熱抵抗モデルM2の詳細構成例を示す図である。この例では、特定の熱解析プログラムとして、シーメンス社製の三次元CFDソフトの「FloTHERM」又はこれを改良したCFDソフトが熱解析装置10において実行される。
この熱解析プログラムに用いられる熱抵抗モデルM2は、図5Aに示したように、端子部ノード領域TAa,TAbごとに設定される接合面ノードNta,Ntbを備えている。
端子部ノード領域TAaでは、端子部ノードNaと接合面ノードNtaとの間に熱抵抗r1が接続される。また、端子部ノード領域TAbでは、端子部ノードNbと接合面ノードNtbとの間に熱抵抗r2が接続される。なお、熱抵抗r2は、図5Aに示した熱経路Pta,Ptbと同様に、電極35a,35bに対して放熱又は受熱するための熱経路である。
また、熱抵抗モデルM2は、図5Aに示した基本構成に加え、抵抗体ノード領域RAのうち抵抗体24の内部を模擬する抵抗体ノードNhsと、抵抗体24の表面を模擬する表面ノードNrと、を備える。そして、抵抗体ノードNhsと表面ノードNrとの間には熱抵抗r1が接続される。
このように、抵抗体ノード領域RAに熱抵抗r1が設定されることで、抵抗器20の上面80から外気への放射、及び対流による放熱が模擬されるので、抵抗器20の各部位の温度をより精度よく解析することができる。
さらに接合面ノードNta,Ntbが熱抵抗モデルM2に設定されることで、端子部29a,29bの外面80a,80bの各温度を解析することが可能になり、解析者は端子部29a,29bの電極35a,35bに対する放熱及び受熱の影響を把握することができる。
なお、本実施形態では外気の影響等を考慮するために熱抵抗r1,r2が設定されているものの、このような熱抵抗は、部品の熱解析において当然に必要とされるものであるため、本実施形態の熱抵抗モデルM2の構成として同一視することができる。
図10は、本実施形態における抵抗器20の熱回路網データに示される各熱抵抗の値を示す図である。ここでは、端子部29aを「一方」と表記し、端子部29bを「他方」と表記して説明する。
本実施形態では、抵抗器20の抵抗値は、上述のように、数十mΩ(ミリオーム)から数十MΩ(メガオーム)までの抵抗範囲内の抵抗値をとりうるため、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2には一桁から三桁の値[℃/W]が設定される。これらの設定手法については図8において説明したとおりである。また、熱抵抗r1及びr2は、それぞれ熱経路として設定されたものであり、熱抵抗r1及びr2には、FloTHERMにおいて解析結果に影響が出ない十分小さな熱抵抗「0.1」が設定される。
なお、熱回路網データには、熱抵抗モデルM2の基準位置(例えば中間ノード領域HAの重心)を基点とした各ノードの位置関係を示す位置データに加え、抵抗器20の形状を形成する複数の頂点の位置を特定した形状データが設定されている。
また、本実施形態では外気等の影響を考慮するために熱抵抗r1及び熱抵抗r2が設定されているものの、これに限られない。例えば、これらを設定しなくても外気等の影響が考慮されるような熱解析プログラムを使用する場合、又は、外気の影響等が軽微である場合には、熱抵抗r1及び熱抵抗r2を省略してもよい。また、解析モデルの熱抵抗の値を「0」に設定可能な熱解析プログラムが使用される場合は、熱抵抗r1及び熱抵抗r2の各々に「0」を設定してもよい。
続いて、熱抵抗モデルM2の生成方法について説明する。図11は、本実施形態における熱抵抗モデルM2の生成方法を説明するための図である。
まず、熱抵抗モデルM2には、抵抗器20の寸法に基づいて抵抗器20の形状が設定される。例えば、中間部26に対応する中間ノード領域HAの重心を基点として、端子部ノード領域TAa,TAb、及び抵抗体ノード領域RAが設定される。
ステップS21において、熱解析装置10を構成するプロセッサが、熱抵抗モデルM2の中間ノード領域HAにおいて中間ノードNcを設定する。中間ノードNcは、表示画面において、例えば中間ノード領域HAの重心に表示されるように配置される。
また、中間ノードNcには、中間ノードNcの算出温度が抵抗器20のどの部位に対応する温度であるのかを示す対応情報が設定される。本実施形態の対応情報には、図8に示した絶縁基材22の中心位置に対応するように中間ノードNcの位置が設定されている。
ステップS22において、プロセッサが、端子部ノード領域NAaに属する端子部ノードNa、及び端子部ノード領域NAbに属する端子部ノードNbを設定する。端子部ノードNa,Nbは、例えば各ノードが属する領域の重心に表示されるよう配置される。また、端子部ノードNa,Nbの対応情報には、図8に示した絶縁基材22の端子部ノード領域TAa,TAbの位置が設定されている。
ステップS23において、プロセッサが、抵抗体ノード領域RAに対して、抵抗体ノード領域RAに属する抵抗体ノードNhsを設定する。抵抗体ノードNhsは、例えば、抵抗体ノード領域RAにおいて最も温度の高いホットスポットに対応する位置に表示されるよう配置される。また、抵抗体ノードNhsの対応情報には、図8に示した抵抗体ノード領域RAの位置が設定されている。
ステップS24において、プロセッサが、抵抗体ノード領域RAに、抵抗体ノードNhsと中間ノードNcとの間を接続する第1熱抵抗R1を設定する。第1熱抵抗R1の値は、例えば、上式(1)を用いてあらかじめ計算される。
ステップS25において、プロセッサが、端子部ノード領域TAa,TAbごとに、中間ノードNcと端子部ノードNaとの間を接続する第2熱抵抗R2、及び中間ノードNcと端子部ノードNbとの間を接続する第2熱抵抗R2を設定する。第2熱抵抗R2の値は、例えば、上式(2)を用いてあらかじめ計算される。
ステップS26においてプロセッサが、端子部ノード領域TAa,TAbの各々に対して、一方の端子部ノードNaと接合面ノードNtaとを接続した熱抵抗r2を設定するとともに、他方の端子部ノードNbと接合面ノードNtbとを接続した熱抵抗r2を設定する。
ステップS27においてプロセッサが、抵抗体ノード領域RAに対して表面ノードNrと抵抗体ノードNhsとを接続した熱抵抗r1を設定する。
ステップS27の処理が終了すると、プロセッサは、抵抗器20の熱抵抗モデルM2を示す熱回路網データを生成して、熱抵抗モデルM2の生成方法の一連の処理手順を終了させる。なお、ステップS21乃至S28の処理手順については順番を入れ替えてもよい。
次に、本実施形態における抵抗器20の熱抵抗モデルM2により得られる作用効果について説明する。
本実施形態における熱抵抗(熱解析モデル)M2は、絶縁基材22と、絶縁基材22の上面に形成される抵抗体24と、絶縁基材22の外面に形成されて基板21に対して電気的に接続される一対の電極部33a,33bと、を備える抵抗器20であって、絶縁基材22のうち基板21から離間する中間部26と、その両側において基板21に接続する一対の端子部29a,29bと、を有する抵抗器20の温度を解析する熱抵抗モデルM2である。この熱抵抗モデルM2は、抵抗体24を模擬する抵抗体ノードNhsと、中間部26を模擬する中間ノードNcと、端子部29a,29bのそれぞれを模擬し、基板21と端子部29a,29bとの間の熱経路の起点となる一対の端子部ノードNaと、中間ノードNcと抵抗体ノードNhsとの間に接続される第1熱抵抗R1と、中間ノードNcと端子部ノードNa,Nbのそれぞれとの間に接続される一対の第2熱抵抗R2と、を有する。
本実施形態における抵抗器20内の熱の伝達の仕方について、図6及び図7を用いて説明したように、抵抗器20に電力が印加されている使用状態における放熱と、抵抗器20に電力が印加されていない非使用状態における受熱とでは熱の伝達する経路が異なる。このように、放熱と受熱とで熱の伝達経路が異なる抵抗器20において、比較例の熱抵抗モデルを用いて熱解析を行った場合と、本実施形態の熱抵抗モデルM2を用いて熱解析を行った場合とを対比して本実施形態の作用効果を説明する。
図15は、本実施形態の抵抗器20に対して比較例の熱抵抗モデルを適用した場合の模式図である。この比較例の熱抵抗モデルは、垂直方向への熱伝達を模擬したモデルを抵抗器20の両側に適用したモデルである。なお、この図で示される中間ノードNcは、比較例の熱抵抗モデルにおいて実際には存在しないノードであって、本実施形態の作用効果を説明するために仮想的に設定されたノードである。
また、この図では、理解を容易にするために、放熱経路及び受熱経路の両方の経路を一つの図に示している。まず、抵抗体ノードNhsから端子部ノードNa,Nbのそれぞれに向かう一点鎖線で示される矢印は、抵抗体24で発生した熱の放熱経路を示している。そして、電極部33aから仮想的な中間ノードNcを介して電極部33bに向かう破線の矢印は、抵抗器20が基板21から受熱する場合の熱伝達の経路を示している。
しかしながら、仮想的に設定されている中間ノードNcは実際には存在しないため、比較例の熱抵抗モデルでは、放熱経路を模擬できるものの、受熱経路を模擬することができないことがわかる。すなわち、比較例の熱抵抗モデルでは、放熱経路と受熱経路との両方を同時に模擬することができなかった。
このような比較例の熱抵抗モデルを用いた熱解析の一例として、抵抗器20が受熱する場合の解析精度について説明する。ここでは、詳細モデルで熱解析を行った結果を基準として、比較例の熱抵抗モデルを用いた熱解析を行った結果と、本実施形態の熱抵抗モデルM2を用いて熱解析を行った結果とを比較する。当然ながら、これらの熱解析における種々の条件設定は同一であるものとする。
まず、比較例の熱抵抗モデルを用いた熱解析の解析精度について説明する。詳細モデルにおける端子部29a,29bの解析温度Ttは約52[℃]であるのに対して、比較例の熱抵抗モデルにおける同箇所の温度は約97[℃]であり、45[℃]の誤差が生じている。また、詳細モデルにおけるホットスポットの解析温度Thsは約39[℃]であるのに対して、比較例の熱抵抗モデルにおける同箇所の温度は約61[℃]であり、22[℃]の誤差が生じている。このように、比較例の熱解析モデルを用いた場合には、抵抗器20の所定箇所の温度について数十度の大幅な解析誤差が生じている。
これに対して、本実施形態の熱抵抗モデルM2を用いて熱解析を行った解析精度は次のとおりである。詳細モデルにおける端子部29a,29bの解析温度Ttは約52[℃]であるのに対して、比較例の熱抵抗モデルにおける同箇所の温度は約55[℃]であり、3[℃]の誤差しか生じない。また、詳細モデルにおけるホットスポットにおける解析温度Thsは約39[℃]であるのに対して、比較例の熱抵抗モデルにおける同箇所の温度は約40[℃]であり、1[℃]の誤差しか生じない。このように、本実施形態における熱抵抗モデルM2を用いた場合では、抵抗器20の所定箇所の温度について数度の微小な解析誤差しか生じない。
上述のように、比較例の熱抵抗モデルと比較して本実施形態の熱抵抗モデルM2では解析精度が高いことがわかる。このような効果は、本実施形態における熱抵抗モデルM2において、特に、放熱経路と受熱経路との一部を共有するような位置に中間ノードNcが設定されることによってもたらされる。中間ノードNcが放熱経路及び受熱経路において共有されるため、一つの熱抵抗モデルM2によって、放熱時と受熱時との両方の熱伝達の経路を同時に模擬することが可能となる。
また、本実施形態の中間ノードNcは、絶縁基材22の中心部を模擬するノードである。本実施形態のように、絶縁基材22の他の部分ではなく、絶縁基材22の中心部を模擬することによって、熱抵抗モデルM2を用いた熱解析の精度が向上する。
この理由については、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各々の計算に用いられる詳細モデルの解析結果が影響しているものと考えられる。具体的には、中間ノードNcに対応する絶縁基材22の中心部は、絶縁基材22を構成する四面からの距離が略等しく、詳細モデルを用いた熱流体解析においては、抵抗体24と絶縁基材22との界面をはじめとする各界面で生じる演算誤差が小さくなりやすい。このため、図8で説明したように、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2の各計算において誤差が小さい解析温度Tcを採用したことにより、熱抵抗モデルM2の解析精度が向上したものと考えられる。
また、本実施形態における第1熱抵抗R1の値は、抵抗体24の表面の解析温度Thsと絶縁基材22の中心部の解析温度Tcとの差分に基づいて定められる。
図8を用いて説明したように、第1熱抵抗R1は、詳細モデルにおいて演算した抵抗体24のホットスポットの解析温度Thsと絶縁基材22の中心部の解析温度Tcとの差分に基づいて計算されるため、例えば、抵抗体24と絶縁基材22との材料の違いによって生じる熱伝導率の違い、及び抵抗体24と絶縁基材22との界面を介した熱伝達を模擬することができる。これにより、抵抗体24において生じた熱の絶縁基材22への伝達を精度よく模擬することが可能となる。
同様に、本実施形態における第2熱抵抗R2の値は、電極部33a,33bの解析温度Ttと絶縁基材22の中心部の解析温度Tcとの差分に基づいて定められる。
図8を用いて説明したように、第2熱抵抗R2は、詳細モデルにおいて演算した絶縁基材22の中心部の解析温度Tcと電極部33a,33bの解析温度Ttとの差分に基づいて計算されるため、例えば、絶縁基材22と電極部33a,33bとの材料の違いによって生じる熱伝導率の違い、及び絶縁基材22と電極部33a,33bとの界面を介した熱伝達を模擬することができる。これにより、絶縁基材22から電極部33a,33bへの熱伝達を精度よく模擬することが可能となる。
また、本実施形態の熱解析装置10は、上述の熱抵抗モデル(熱解析モデル)M2を準備する準備部としての解析モデル生成部12と、抵抗器20の発熱量として特定の値を設定する設定部11と、熱抵抗モデルM2を用いて抵抗器20の温度を解析する解析部13と、を含む。このように、簡易な構成により生成された熱抵抗モデルM2を用いて抵抗器20の温度を解析することにより、精度良く抵抗器20内の温度を解析することができるとともに、演算処理を制御することができる。
本実施形態の熱解析プログラムは、絶縁基材22と、絶縁基材22の上面に形成される抵抗体24と、絶縁基材22の外面に形成されて基板21に対して電気的に接続される一対の電極部33a,33bと、を備える抵抗器20であって、絶縁基材22のうち基板21から離間する中間部26と、その両側において基板21に接続する一対の端子部29a,29bと、を有する抵抗器20の温度を解析するコンピュータにおいて実行される。この熱解析プログラムは、抵抗体24を模擬する抵抗体ノードNhsと、中間部26を模擬する中間ノードNcと、端子部29a,29bのそれぞれを模擬し、基板21と端子部29a,29bとの間の熱経路Pta,Ptbの起点となる一対の端子部ノードNa,Nbと、中間ノードNcと抵抗体ノードNhsとの間に接続される第1熱抵抗R1と、中間ノードNcと端子部ノードNa,Nbのそれぞれとの間に接続される一対の第2熱抵抗R2と、を有する抵抗器20の熱抵抗モデル(熱解析モデル)M2を準備する手順(ステップS2)と、抵抗器20の発熱量として特定の値を設定する手順(ステップS3)と、熱抵抗モデルM2を用いて抵抗器20の温度を解析する手順(ステップS4)と、を含む。
そして、本実施形態の熱解析プログラムは、抵抗器20の温度を解析する手順(ステップS4)において、抵抗器20の発熱量として特定の値が抵抗体ノードNhsに設定された場合は、熱抵抗モデルM2のうち、第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2を用いて抵抗器20の温度を解析する。一方、抵抗器20の発熱量として特定の値が抵抗体ノードNhsに設定されていない場合は、熱抵抗モデルM2のうち、第2熱抵抗R2を用いて抵抗器20の温度を解析する。
このように、本実施形態の熱解析プログラムは、抵抗器20に対して設定される印加電力Pがどのノードに設定されているかを判定し、この判定の結果に応じて、熱抵抗モデルM2のうちの解析対象となる熱抵抗を選択する。図6及び図7を用いて説明したように、プロセッサは、印加電力Pが抵抗体ノードNhsに設定されている場合には、抵抗器20が使用状態にあると判定して第1熱抵抗R1及び第2熱抵抗R2を選択する。一方、プロセッサは、印加電力Pが抵抗体ノードNhs以外のノード、例えば接合面ノードNtaに設定されている場合には、抵抗器20が非使用状態にあると判定して第2熱抵抗R2を選択する。これにより、一つの熱抵抗モデルM2を用いて、抵抗器20の使用状態に応じた熱解析を実行することが可能となる。
また、本実施形態のモデル生成プログラムは、上述の抵抗器20の熱抵抗モデル(熱解析モデル)M2を生成するコンピュータに、抵抗体24を模擬する抵抗体ノードNhsを設定する手順(ステップS24)と、中間部26を模擬する中間ノードNcを設定する手順(ステップS21)と、端子部29a,29bのそれぞれを模擬し、基板21と端子部29a,29bとの間の熱経路の起点となる一対の端子部ノードNa,Nbを設定する手順(ステップS22)と、中間ノードNcと抵抗体ノードNhsとの間に接続される第1熱抵抗R1を設定する手順(ステップS24)と、中間ノードNcと端子部ノードNa,Nbのそれぞれとの間に接続される一対の第2熱抵抗R2を設定する手順(ステップS25)と、を含む。このように、簡易な手順により生成されたモデル生成プログラムを用いて抵抗器20の温度を解析することにより、精度良く抵抗器20内の温度を解析することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、接触している部材への熱伝達を主とした熱抵抗モデルM2について説明した。続いて、第2実施形態では、空気への熱伝達も考慮した熱抵抗を有する熱抵抗モデルM2について説明する。より詳細には、抵抗器20で発生する熱が、端子部29a,29bだけでなく絶縁基材22の下面からも基板21に放熱する場合について説明する。
図12は、第2実施形態における抵抗器20の熱抵抗モデルM2の基本構成を示す図である。
本実施形態の熱抵抗モデルM2の基本構成は、図5Aに示した熱抵抗モデルM2の基本構成に加え、中間ノードNcに接続される第3熱抵抗R3を備えている。第3熱抵抗R3の値の設定方法については後述する。
本実施形態においても、図11で説明した第1実施形態の方法と同様の手順によって、熱抵抗モデルM2が生成される。具体的には、図11に示されるステップS23の後に、中間ノード領域HAに下面ノードNbmを設定する手順が追加される。また、これとともに、ステップS28の後に、下面ノードNbmに対して微小な熱抵抗r1(図示せず)を設定する手順を追加してもよい。この下面ノードNbmは、表示画面において、例えば中間ノード領域HAの底部中央に表示されるように配置される。
第3熱抵抗R3は、絶縁基材22の形状としての寸法を用いて次の式(3)のように計算される。ここで、長さLは絶縁基材22の下面の寸法のうち電極部33a,33bに亘る方向の長さであり、また幅W(図示せず)はこの平面上で長さLと直交する方向の長さであり、高さTはこの下面に直交する絶縁基材22の高さ方向の長さである。また、λは絶縁基材22の熱伝導率を示す値である。
上述の熱抵抗モデルM2では、第3熱抵抗R3を設定することによって、中間ノードNcと下面ノードNbmとの間の絶縁基材22における熱伝達、及び下面ノードNbmから基板21に対する空気への熱伝達を考慮することができる。
次に、本実施形態における抵抗器20の熱抵抗モデルM2により得られる作用効果について説明する。
本実施形態の熱抵抗モデル(熱解析モデル)M2は、基板21に対向する中間部26の下面を模擬する下面ノードNbmと、中間ノードNcと下面ノードTbmとの間に接続される第3熱抵抗R3と、をさらに有する。図12を用いて説明したように、第3熱抵抗R3を設定することによって、絶縁基材22から基板21へ空気を介して熱伝達する場合も考慮した熱解析を行うことができるため、抵抗器20の熱解析の精度を向上させることができる。
また、本実施形態の第3熱抵抗R3の値は、絶縁基材22の寸法としての長さL,幅W,高さT及び熱伝導率λに基づいて定められる。このように、第3熱抵抗R3の値は、絶縁基材22の寸法及び熱伝導率λから求められているため、中間部26における中心位置から下面までの熱伝達を精度よく再現することができる。したがって、絶縁基材22から基板21へ空気を介した熱の伝達を精度よく模擬することができるので、中間部26に対向する基板21の表面の温度を正しく推定することができる。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態では、第1又は第2実施形態の熱抵抗モデルM2に第1熱容量C1及び第2熱容量C2の少なくとも一つが設定される。図13は、一例として、第1実施形態の熱抵抗モデルM2に対して第1熱容量C1及び第2熱容量C2の両方が設定される場合の設定方法を説明するための図である。
第1熱容量C1及び第2熱容量C2の値は、実験データに基づいて予め決定されている。具体的には、図8に示される詳細モデルによる過渡温度特性に対して熱抵抗モデルM2による過渡温度特性が近づくように、熱抵抗モデルM2の第1熱容量C1及び第2熱容量C2の値をそれぞれ変化させる。これにより、詳細モデルと熱抵抗モデルM2との過渡温度上昇が一致するときの熱容量の値を特定する。
図14は、熱抵抗モデルM2に上述のように算出された第1熱容量C1を設定した場合、第1熱容量C1を設定しない場合、及び詳細モデルを用いた場合の熱解析の比較結果を表す図である。図14の横軸は時間を示し、また縦軸はホットスポットの解析温度Thsと端子部29a,29bの解析温度Ttとの差分の温度を示している。
図14の横軸に示される時間について、0.01[s]よりも前の時間帯は抵抗体24内を熱が伝わる時間帯であり、また0.01~1[s]の時間帯は絶縁基材22内を熱が伝わる時間帯である。
熱回路網モデル(C1無し)は、図13に示される熱抵抗モデルM2において第1熱容量C1を設定しない場合の熱抵抗モデルM2を用いた熱解析の結果である。第1熱容量C1を設定しない場合、0.01[s]よりも前の時間帯の温度カーブが、詳細モデルの温度カーブと大きく異なることがわかる。
これは、抵抗体24の熱容量としての第1熱容量C1を設定しない場合、熱抵抗モデルM2ではこの時間帯の温度カーブを再現できないことを示している。なお、この熱回路網モデル(C1無し)では第2熱容量C2は設定されているため、絶縁基材22内を伝熱する時間帯である0.01~1[s]の時間帯の温度は再現されている。
一方、熱回路網モデル(C1有り)は、図13に示されるように熱抵抗モデルM2において第1熱容量C1及び第2熱容量C2を設定した場合の熱抵抗モデルM2を用いた熱解析の結果である。第1熱容量C1を設定する場合、0.01[s]よりも前の時間帯の温度カーブが、詳細モデルの温度カーブと略一致することがわかる。
このように、第1熱容量C1及び第2熱容量C2の両方が設定される場合、これらのうちの何れか一方が設定される場合と比較して、より精度よく過渡状態を解析することができる。
なお、本実施形態の熱抵抗モデルM2において、第1熱容量C1及び第2熱容量C2のうち何れか一方が設定される構成であってもよい。このように何れか一方の熱容量だけが設定される場合、熱抵抗モデルM2を用いた熱解析の時間を短縮することが可能となる。
以上のように、第3実施形態によれば、熱抵抗モデルM2は、抵抗体24の熱容量として抵抗体ノードNhsに接続される第1熱容量C1、及び絶縁基材22の熱容量として中間ノードNcに接続される第2熱容量C2をさらに備える。これにより、基板21の影響を考慮しつつ、過渡状態における抵抗器20の温度を精度よく解析することができる。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上述の実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上述実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上述の実施形態では基板21及び抵抗器20以外の電子部品の熱解析モデルとして有限要素法を適用した詳細モデルを使用する例について説明したが、例えば有限差分法又は有限体積法等を適用した解析モデル、又は六つ以上の熱抵抗で模擬したDELPHIモデル等を使用してもよい。
また、上述の実施形態において抵抗体ノードNhsと中間ノードNcとの間に設定されている第1熱抵抗R1は、複数の熱抵抗に分割してもよい。例えば、第1熱抵抗R1を構成する複数の熱抵抗は、抵抗体ノード領域RA及び中間ノード領域HAの領域ごとに模擬されてもよい。この場合、第1熱抵抗R1は領域ごとに二つに分割される。これと同様に、第2熱抵抗R2及び第3熱抵抗R3についてもそれぞれ複数に分割して模擬されてもよい。
また、上述の実施形態において、一対の第2熱抵抗R2のそれぞれの熱抵抗値は同一の値に設定されている。しかしながら、中間ノードNcと端子部ノードNaとの間の第2熱抵抗R2の値と、中間ノードNcと端子部ノードNbと間の第2熱抵抗R2の値とは異なる値に設定されてもよい。この場合、図8に示される詳細モデルにおいて、解析温度Ttは端子部29a,29bごとに算出される。そして、端子部29a,29bごとの解析温度Ttを式(2)に代入することによって、端子部29a,29bごとの第2熱抵抗R2を導出する。
また、上述の実施形態において、熱抵抗モデルM2を適用可能な抵抗器20の設計条件として、図5Bに示される領域Aが定められている。しかしながら、領域Aは変更可能であって、抵抗体24の熱抵抗の影響が5%よりも小さく又は5%よりも大きくなるような領域Aを設定してもよい。例えば、抵抗体24の熱抵抗の影響が5%よりも小さい領域Aを設定する場合、この領域Aの条件を満たす抵抗器20に対する熱抵抗モデルM2を用いた熱解析の精度はより向上すると考えられる。