以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。以下の説明は、熱伝導率計算装置、熱解析装置、熱伝導率計算方法および熱解析方法についての説明をも含む。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子装置の熱伝導率計算方法の工程を表すフローチャートである。図2は、本発明の第1実施形態におけるモデル化対象物の断面図である。図3は、本発明の第1実施形態において、リフロ処理前の各ハンダボール31を含む構成部品の側面図(a)と、リフロ処理後の各ハンダボール31を含む構成部品の側面図(b)である。図4は、本発明の第1実施形態に係る熱解析装置11の構成を表すブロック図である。
本発明の第1実施形態の熱伝導率計算方法は、電子部品本体12と基板13と端子14とを含むモデル化対象物をモデル化し、端子14のモデルの等価熱伝導率を計算するシミュレーション方法である。本発明の第1実施形態の熱伝導率計算方法で用いる熱伝導率計算装置10は、電子部品本体12と基板13と端子14とを含むモデル化対象物をモデル化し、端子14のモデルの等価熱伝導率を計算するシミュレーション装置である。
第1実施形態において、電子部品15のうち、端子を除く部分を「電子部品本体」と称する。熱伝導率計算装置10内において存在が想定される仮想的な物体であって、実際の構成部品の形状、材料物性、温度などのうちの少なくとも一部の情報を含む、仮想物体を
「モデル」と称し、実際の構成部品について、その情報の少なくとも一部を有するモデルを熱伝導率計算装置10内に作成することを「モデル化」と称する。
第1実施形態では、熱伝導率計算装置10から出力された等価熱伝導率を計算に含めることによって熱解析も行い、定常状態における電子部品本体12および基板13の温度をも求める。等価熱伝導率についての情報を含んで、各構成部品の各部分の温度をも求めることを「熱解析」と称する。モデル化対象物に含まれる電子部品本体12、配線パターン16および絶縁体17を総称して、「構成部品」と称する。熱解析では構成部品に相当するモデルに対してメッシュを作成し、有限要素法や有限体積法等を用いて計算を行う。換言すれば熱解析とは、それぞれのメッシュに対応する実際の構成部品の各部分について、温度を求めることである。本発明において、構成部品の一部から他の部分への熱移動を問題とし、熱移動の向き、熱流、熱流束、また熱移動に関する構成部品の各部分の温度変化、熱抵抗、熱伝導率を求めるべき対象として、「熱問題」と称する。
本実施形態では、図2に示すように、基板13として、符合16,18,32で示されるような複数の導体層が形成された多層配線板を用いている。そして、符合16,17,18で示される導体層が「配線パターン」であり、このうち最も面積が広い配線パターン18が「グランドパターン」となる。
したがって、本発明において、基板13の表面または内部にある配線パターン16のうち、電位基準、電源供給、シールドまたはヒートシンクの目的で使用する配線パターンを「グランドパターン」と称する。グランドパターン18に電気的に接続される端子19を「グランドパターン接続端子」と称し、グランドパターン以外の配線パターン32に電気的に接続される端子21を「グランドパターン非接続端子」と称する。複数の端子14が接続される配線パターン16のうち、グランドパターン以外の配線パターン16を、「非グランドパターン」と称し、図2および図7において、符号32で示す。グランドパターン接続端子19に相当するモデルを「グランドパターン接続端子モデル」と称し、グランドパターン非接続端子21に相当するモデルを「グランドパターン非接続端子モデル」と称する。グランドパターン接続端子19およびグランドパターン非接続端子21を含めて、「接続端子」または「端子」と称して、図2のように符合14を付与している。グランドパターン接続端子モデル22およびグランドパターン非接続端子モデル23を含めて、「端子モデル」と称する。電子部品本体12に相当するモデルを「電子部品本体モデル」と称し、基板13に相当するモデルを「基板モデル」と称する。
なお、図2に示した構成では、複数の導体層が形成された多層配線板の構成で、グランドパターン18が形成されている層には、グランドパターン以外の配線パターンが形成されていない。しかしながら、このような構成で、グランドパターンが形成された層に、グランドパターンと電気的に絶縁された配線パターンを形成したものでも本発明は適用可能であり、その際には、そのグランドパターンと電気的に絶縁された配線パターンをグランドパターン以外の配線パターンと考えればよい。
また、多層配線板の構成ではなく、単層の導体層を、グランドパターンと、グランドパターンと電気的に絶縁された配線パターンとにパターン形成したような基板にも本発明は適用可能である。その場合、例えば、電子部品の端子を直接的に接続するための端子接続部が基板に形成され、その端子接続部とグランドパターンとの間を結ぶように形成されるパターンは、そのパターンを介して熱がグランドパターンに伝達されるので、グランドパターンに含まれるものと考えることができる。
本発明において、「配線パターン」、「グランドパターン」および「非グランドパターン」は、電気的な接続を形成するための部材であり、これらの名称は、実体を有する物体
を意味する。またこれらの名称は、一定の形状を一方向あるいは複数の方向に繰返す形状に形成されていない場合にも用いるものとする。
第1実施形態において、基板13に臨む電子部品本体12の一表面に垂直な方向を「基準方向」と称し、また基板モデル24に臨む電子部品本体モデル26の一表面に垂直な方向も「基準方向」と称する。また電子部品本体12と基板13との間の熱移動に関する熱抵抗を、「合成熱抵抗」と称する。合成熱抵抗は、電子部品本体12−基板13間の、少なくとも端子14を含む材料の熱抵抗が、全体として示す熱抵抗である。また基準方向Zに離れる電子部品本体12−基板13間の距離を、基板13に面する電子部品本体12の一表面の面積で割り、さらに合成熱抵抗で割った物理量を、「等価熱伝導率」と称する。電子部品本体12−基板13間の距離とは、基板13に臨む電子部品本体12の一表面から、電子部品本体12に臨む基板13の一表面に下ろした垂線の長さを意味する。
第1実施形態に係る熱伝導率計算装置10は、第1記憶部27、第2記憶部28および計算部29を含んで構成される。第1記憶部27では、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積が記憶され、第2記憶部28では、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積が記憶される。計算部29では、第1記憶部27および第2記憶部28に記憶された面積の値に基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率が求められる。また計算部29では、求めた等価熱伝導率と、電子部品本体12からの発熱量と、基板13からの放熱量とに基づいて、定常状態における電子部品本体12および基板13の各部分の温度も求められる。
本発明において、等価熱伝導率を求める機能を有する装置を「熱伝導率計算装置」と称し、熱伝導率計算装置10に等価熱伝導率と、電子部品本体12からの発熱量と、基板13からの放熱量とのに基づいて定常状態における電子部品本体12および基板13の各部分の温度を求める機能をさらに含めて「熱解析装置」と称する。第1実施形態において、熱伝導率計算装置10の部品と熱解析装置11の部品とは同じであるものとする。
本発明の第1実施形態における熱伝導率計算方法では、図1に示すように、少なくともグランドパターン接続面積取得工程と、グランドパターン非接続面積取得工程と、計算工程とを含む。本処理開始後、ステップa1のグランドパターン接続面積取得工程に移行し、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積を取得する。これは、熱伝導率計算装置10の使用者による入力によって取得してもよいし、各グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積の平均値に、グランドパターン接続端子19の個数を乗ずる計算を熱伝導率計算装置10が行って、その計算結果として取得してもよい。ここで取得した接続面積は、第1記憶部27に記憶する。
その後、ステップa2のグランドパターン非接続面積取得工程に移行し、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積を取得する。これは、熱伝導率計算装置10の使用者による入力によって、取得してもよいし、各グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積の平均値に、グランドパターン非接続端子21の個数を乗ずる計算を計算部29が行って、その計算結果として取得してもよい。ここで取得した接続面積は、第2記憶部28に記憶する。
その後、ステップa3の計算工程に移行し、第1記憶部27に記憶したグランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、第2記憶部28に記憶したグランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積とに基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める計算を行う。この計算は、計算部29によって行う。その後、本処理は終了する。
グランドパターン接続面積取得工程は、グランドパターン非接続面積取得工程よりも後に行ってもよい。また本処理は、グランドパターン接続面積取得工程、グランドパターン非接続面積取得工程および計算工程以外に工程を含んでいてもよいけれども、少なくともこれらの工程は含む。本処理は、プログラムが実行可能に記憶されたコンピュータを用いて行われる処理であり、プログラムは、プログラムが記憶されたコンピュータに対して、本処理を実行させる。
第1実施形態の熱伝導率計算においてモデル化の対象となるモデル化対象物は、複数の端子14が接続される電子部品本体12と、電子部品15に含まれる複数の端子14と、グランドパターン18と、非グランドパターン32とを含む基板13である。前記複数の端子14のうちの一部はグランドパターン18に接続される。グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積は第1記憶部27に記憶される。グランドパターン接続端子19が複数である場合には、それぞれのグランドパターン接続端子19と基板13との接続面積が合計されて、合計された接続面積が、第1記憶部27に記憶される。グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積は、第2記憶部28に記憶される。グランドパターン非接続端子21が複数である場合には、それぞれのグランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積が合計されて、合計された接続面積が、第2記憶部28に記憶される。
熱伝導率計算装置10は、さらに計算部29を備えており、計算部29は、第1記憶部27に記憶された接続面積および第2記憶部28に記憶された接続面積に基づいて、等価熱伝導率を求める計算を行う。計算部29は、第1記憶部27に記憶された接続面積と第2記憶部28に記憶された接続面積とに異なる係数をかけて、計算を進める。これによって、グランドパターン接続端子19を介して基板13に移動する熱についての熱流束と、グランドパターン非接続端子21を介して基板13に移動する熱についての熱流束との違いを、計算に含めて、等価熱伝導率を求める。本発明において、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積に乗ずる係数と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積に乗ずる係数とは、異なるものとして計算を進めるけれども、それぞれの係数の大きさが一致してもよい。
第1実施形態において、基板13に接続される端子14は、ハンダボール31を含んで形成されており、リフロ処理を行うことによって、電子部品本体12は基板13に対して電気的に接続される。リフロ処理前の各ハンダボール31の直径の値を「L1」とすると、各ハンダボール31の基準方向Zに垂直な断面の断面積の値は、「(L1/2)2π」と表せる。リフロ処理によってハンダボール31は変形するので、リフロ処理後のそれぞれのハンダボール31と基板13との接続面積の値は、「(L1/2)2π」よりも大きくなる。したがって、熱伝導率計算の中では、リフロ処理後の各ハンダボール31に相当するモデルの直径の値を、L1よりも大きなL2に修正し、各ハンダボール31に相当するモデルと基板モデル24との接続面積の値を「(L2/2)2π」として、等価熱伝導率を求める計算を行う。
リフロ処理後の複数のハンダボール31と基板13との接続面積の値を求める計算およびこの接続面積から等価熱伝導率を求める計算は、計算部29にて行う。L2は、熱伝導率計算装置10の使用者による入力によって取得してもよいし、実験によって求めたL2とL1との比を、使用者が入力したL1の値に乗ずる計算を行ってL2を取得してもよい。
第1実施形態において、熱解析装置11は、熱伝導率計算装置10で求めた等価熱伝導率と、電子部品本体12からの発熱量と、基板13からの放熱量とに基づいて、定常状態における電子部品本体12および基板13の各部分の温度を求める。本発明において、電
子部品本体12および基板13と、これらを外囲する部材または環境気体との間において、熱流束が時間の経過に対して一定となり、電子部品本体12および基板13の温度が一定となった状態を、「定常状態」と称する。第1実施形態に係る熱解析装置11において、等価熱伝導率、発熱量および放熱量から、定常状態における電子部品本体12および基板13の温度を求める計算は、計算部29が行う。
第1実施形態において、熱伝導率計算装置10および熱解析装置11は、コンピュータと、コンピュータに内臓または入力されて記憶され、コンピュータの演算方法を決定するプログラムとを含んで構成される。
グランドパターン18からの放熱効率は、非グランドパターン32からの放熱効率よりも高く、グランドパターン18に接続される端子14からのほう熱効率は、グランドパターン18以外の配線16に接続される端子14からの放熱効率よりも高い。したがって、グランドパターン接続端子モデル22と、グランドパターン非接続端子モデル23とを異なるものとしてモデル化し、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積とを、それぞれ求めることによって、それぞれの端子14の熱抵抗および熱伝導率を異なるものとしてシミュレーションする。これによって、基板13に接続される複数の端子14のうちの、グランドパターン接続端子19の割合をモデルに反映する。
電子部品本体モデル26および基板モデル24間の熱流は、端子モデル25と基板モデル24との接続面積に比例する。したがって、それぞれの接続面積に係数を乗ずる計算を含むことによって、グランドパターン18に接続される端子14を移動する熱の放熱効率とグランドパターン非接続端子21を移動する熱の放熱効率との差異を、それぞれの接続面積にかかる係数の差として計算に含め、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の熱移動について、等価熱伝導率を求める。それぞれの接続面積に異なる係数を乗ずることによって、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との間の熱流束と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との熱流束とを区別し、熱伝導率については同一の値を用いる。本発明において、掛け算を行うことを、「かける」と称することも、「乗ずる」と称することもあるけれども、これらの言葉の意味を区別しない。
電子部品15に含まれる端子14がハンダボール31である場合には、リフロ処理後の端子14と基板13との接続面積は、リフロ処理前の各ハンダボール31の直径に基づいて計算した値とは異なる。したがって、仕様書に書かれたハンダボール31の直径の値に基づいた接続面積ではなく、リフロ処理後の各ハンダボール31の直径の値に基づく接続面積を求める計算を含むことによって、リフロ処理によって変化した後の状態をモデルに反映する。
熱解析を行って、定常状態における電子部品本体12と基板13の各部分の温度を計算によって求める場合には、グランドパターン接続端子モデル22とグランドパターン非接続端子モデル23とを、異なるものとしてモデル化することによって、基板13に接続される複数の端子14のうちの、グランドパターン18に接続される端子14の割合を、モデルに反映する。電子部品15に含まれる端子14がハンダボール31である場合には、熱伝導率計算の結果にリフロ処理によって変形した後のハンダボール31および基板13間の接続面積を含めて計算を行い、精度の高い熱解析を行う。
第1実施形態において熱伝導率計算装置10および熱解析装置11は、コンピュータと、コンピュータに内臓または入力されて記憶され、コンピュータの演算方法を決定するプログラムとを含んで構成される。熱伝導率計算および熱解析を、コンピュータに実行させるので、熱伝導率計算結果または熱解析結果を、速い計算速度によって計算して求めることができる。
図2は、前述のように、本発明の第1実施形態におけるモデル化対象物の断面図である。第1実施形態において電子部品本体12は、発熱する電子部品本体12である。具体的には、第1実施形態において電子部品本体12は、集積回路パッケージであり、さらに具体的には、LSI(Large-Scale Integration)が実装された集積回路パッケージであるものとするけれども、他の実施形態において集積回路パッケージは、VLSI( Very-Large-Scale Integration)またはULSI(Ultra-Large-Scale Integration)が実装された集積回路パッケージであってもよい。集積回路パッケージには、集積回路が単数実装されていてもよく、複数実装されたマルチチップモジュールであってもよい。
本発明における電子部品本体12は、複数の端子14と電気的に接続されており、複数の端子14のうちの一部がグランドパターン18に接続されるような電子部品本体12であればよい。第1実施形態において電子部品本体12は、基板13に対して1つ実装され、電子部品本体12は複数のグランドパターン接続端子19と、複数のグランドパターン非接続端子21とに接続されるものとする。グランドパターン非接続端子21は、非グランドパターンに接続される。
基板13は、グランドパターン18と、非グランドパターン32と、絶縁体17とを含んでいる。グランドパターン18は、接地される導体であるものとする。グランドパターン18は基準方向Zに並ぶ複数の層の間に位置していてもよく、またその少なくとも一部が、基板13の基準方向Zに垂直な表面のうちの、電子部品本体12に臨む表面部に位置していてもよく、また電子部品本体12に臨む表面とは反対側の表面部に位置していてもよい。電子部品本体12と基板13とを電気的に接続する端子14は、ハンダボール31である。ハンダボール31は電子部品本体12と基板13との間に位置し、リフロ処理が行われることによって、電子部品本体12と基板13とを電気的に接続する。第1実施形態において、1つの電子部品15に含まれる複数の端子14は、全て1つの基板13に電気的に接続される。第1実施形態においてグランドパターン18は1つの基板13に1つ含まれるものとする。ただし他の実施形態においてグランドパターン18は、1つの基板13に複数含まれてもよい。
図3は、前述のように、本発明の第1実施形態において、リフロ処理前の各ハンダボール31を含む構成部品の側面図(a)と、リフロ処理後の各ハンダボール31を含む構成部品の側面図(b)である。リフロ処理後の各ハンダボール31の基準方向Zに垂直な断面の直径L2は、リフロ処理前の各ハンダボール31の直径L1よりも大きい。リフロ処理後の各ハンダボール31の基準方向Zに垂直な断面の面積は、以下に示した式(1)および式(2)に従って計算して求める。
式(1)において、リフロ処理前の各ハンダボール31の直径を「L1」と表し、リフロ処理後の各ハンダボール31の基準方向Zに垂直な断面の直径を、「L2」と表し、リフロ処理による各ハンダボール31の変形量を計算に含めるために、ハンダボール31の直径を補正するための係数を「Lmod」とする。
電子基板13の端子14のうち、一部はグランドパターン18に接続されており、残余の一部は、非グランドパターン32に電気的に接続されている。本発明において、グランドパターン18に電気的に接続されるグランドパターン接続端子19は1つ以上あればよく、複数であってもよい。非グランドパターン32に電気的に接続されるグランドパターン非接続端子21も、1つ以上あればよく、複数であってもよい。グランドパターン18は、接地に利用される導体でも、電源供給に利用される導体でも、またヒートシンクとして利用される導体であってもよい。
グランドパターン18からと非グランドパターン32からとでは、グランドパターン18からの方が、絶縁体17または基板13の外へ移動する熱の熱流束は大きい。また、導体のモデルを「導体モデル」と称し、絶縁体のモデルを「絶縁体モデル」と称する。
以下、端子モデル25の接続面積と熱移動速度との関係を説明する。電子部品本体モデル26から導体モデル30に移動する熱量を「Q(J)」と表す。電子部品本体モデル26の初期温度を「T1(℃)」とし、導体モデル30の温度を「T2(℃)」とし、電子部品本体モデル26の温度から導体モデル30の温度を差引いた値「T1−T2」を「T」とする。端子モデル25の熱伝導率を「λ(Jm−1s−1℃−1)」とし、時間を「t(s)」とする。時刻t=0においてT1>T2とすると、熱伝導率の定義式から、
となる。ここで、zは端子モデル25を熱が移動するときの熱移動距離(m)、Aは端子モデル25と導体モデル30との接続面積(m2)である。式(3)に示すように、電子部品本体モデル26から導体モデル30に単位時間に移動する熱量は、端子モデル25および導体モデル30間の接続面積に比例する。基板13外部の気体または基板13に接する隣接部材の熱容量を無限大とし、電子部品本体12の発熱量の値が正であり、電子部品本体12と、導体と、絶縁体17と、基板13外部の気体または基板13に接する隣接部材との温度が時間経過に対して変化せず、一定であるものとする場合には、電子部品本体12の温度と導体の温度との温度差Tも時間経過に対して一定であるので、熱移動速度「dQ/dt」も一定となり、熱移動速度は、接続面積Aに比例する。
第1実施形態においては、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24間との接続面積と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24間との接続面積とに、異なる係数をかけて、計算を進める。本発明において、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数とは、異なるものとして計算を進めるけれども、それぞれの係数の大きさが一致してもよい。熱解析装置11の中で計算に利用されるグランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積は、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と同じであり、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積は、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積と同じである。
等価熱伝導率を「λpac」、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積を「Agnd」、端子モデル25の熱伝導率を「λsol」、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数を「Ggnd」、基板13に臨む電子部品本体12の一表面の基準方向Zに垂直な断面の面積を「Apac」、グランドパターン非接続端子モデル23と基板13との接続面積を「Aoth」、グランドパターン非接続端子モデル23と基板13との接続面積に乗ずる係数を「Goth」とする。第1実施形態では、式(4)を用いて等価熱伝導率の値を算出する。
グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数Ggndおよびグランドパターン非接続端子モデル23と基板13との接続面積に乗ずる係数Gothの値は、それぞれ実験によって求めるけれども、Ggndの値は約1、Gothの値は0.1以上0.3以下であることが好ましい。
他の実施形態において、グランドパターン18が複数ある場合には、たとえば第1および第2のグランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積をそれぞれ「Agnd1」、「Agnd2」とし、第1および第2のグランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数をそれぞれ「Ggnd1」、「Ggnd2」とし、第1および第2のグランドパターン非接続端子モデル23と基板13との接続面積をそれぞれ「Aoth1」、「Aoth2」とし、第1および第2のグランドパターン非接続端子モデル23と基板13との接続面積に乗ずる係数をそれぞれ「Goth1」、「Goth2」として、式(5)を用いて等価熱伝導率の値を算出する。
仮にグランドパターン18が3つ以上の場合にも、式(5)中の面積および係数を同様に増加させ、式(5)の分子の括弧内の項を4つ以上に増加させて対応する。
第1実施形態における熱解析では、電子部品本体12と基板13との間の距離についても、リフロ処理によって変化した後の距離を含めて計算を行い、各構成部品の各部分の温度を算出する。他の実施形態における熱解析では、電子部品本体12と基板13との間の距離は、リフロ処理によって変化しないという前提で計算を行い、各構成部品の各部分の温度を算出してもよい。
図4は、前述のように、本発明の第1実施形態に係る熱解析装置11の構成を表すブロック図である。第1実施形態の熱解析装置11は、その一部として熱伝導率計算装置10を含む。熱解析装置11は、等価熱伝導率を算出する装置として熱伝導率計算装置10としての機構を有し、これに各構成部品の各部分の温度を算出するプログラムをさらに含んで、熱解析装置11が構成される。
第1実施形態の熱解析装置11は、入出力部33と、記憶部34と、計算部29とを含んで構成される。入出力部33は、熱解析装置11を使用する使用者が、接続端子14お
よび基板13間の接続面積を入力および確認するための部品であり、たとえばマウス、トラックパッド、およびタッチパネルなどのポインティングデバイス、キーボード、ブラウン管(Cathode Ray Tube, 略称「CRT」)、液晶ディスプレイ、プロジェクタ、プリンタ、プロッタなどである。
入出力部33は、入力部分37と、表示部分38と、出力部分39とを含んで構成される。入力部分37は、入力する項目を、使用者が選択して情報を入力し、使用者の入力した情報を記憶部34および計算部29の少なくともいずれか一方に伝達する部分である。入力部分37は、たとえばキーボード、マウス、トラックパッド、タッチパネルなどである。表示部は、使用者の入力するべき項目および使用者の入力した情報を出力し、使用者に対して表示する部分である。表示部は、たとえばCRT、液晶ディスプレイ、プロジェクタなどである。出力部分39は、使用者が入力した情報、記憶部34が記憶した情報、および計算部29が計算によって得た計算結果のいずれかを出力する部分で、紙面への印刷および熱解析装置11の外部の記録媒体に対して出力する部分である。出力部分39は、たとえばプリンタ、プロッタ、カセットテープドライブ装置、フロッピディスクドライブ装置、光ディスクドライブ装置などである。
記憶部34は、少なくとも使用者が入力した情報を記憶する部分であり、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積を記憶する第1記憶部27と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積を記憶する第2記憶部28とを備えている。記憶部34は、使用者が入力した情報の他にも、計算部29による計算結果、計算部29が行う計算式および計算途中の内容を記憶する。記憶部34は、ランダムアクセスメモリ( Random Access Memory, 略称「RAM」)を含んで構成される。記憶部34は、RAM以外では、たとえばリードオンリーメモリ(Read Only Memory, 略称:「ROM」)、フロッピディスク(Flexible Disk, 略称:「FD」)、ハードディスク(Hard Disk, 略称:「HD」)、コンパクトディスク(Compact Disk, 略称「CD」)、光磁気ディスク( Magneto Optical, 略称:「MO」)、デジタルバーサタイルディスク(Digital Versatile Disk, 略称:「DVD」)、光カード(Optical Card)などを含んで構成されてもよい。
第1記憶部27と第2記憶部28とは、それぞれ互いに異なる2つのRAMであってもよいけれども、第1記憶部27および第2記憶部28は、ともに1つのRAMに設けられていてもよい。第1実施形態において第1記憶部27および第2記憶部28は、1つのRAM内の異なる領域であるものとする。また第1実施形態において記憶部34は、計算部29の実行する計算式と、熱解析装置11の各部品の制御を規定したプログラムとについても記憶する。
第1実施形態における記憶部34は、第1記憶部27および第2記憶部28以外に、モデル化対象物に含まれる各部品の形状、位置関係および電気的接続関係を記憶するCAD形状データベース41と、各部品を構成する材料の密度、比熱および熱伝導率を記憶する材料物性データベース42と、熱解析装置11が行った熱伝導率計算結果を蓄積、記憶するシミュレーション結果データベース43とを含む。第1実施形態においてシミュレーション結果データベース43は、熱伝導率計算で求められた等価熱伝導率と、電子部品本体12の発熱量と、基板13からの単位時間当たりの放熱量に基づいて計算された各部品の各部分の温度とについても記憶する。第1実施形態においてCAD形状データベース41、材料物性データベース42およびシミュレーション結果データベース43は、HDDを含んで構成される。以下、形状、位置関係および電気的接続関係の情報を総称して「形状データ」と称する。
計算部29は、少なくとも第1記憶部27に記憶されたグランドパターン接続端子19
と基板13との接続面積と、第2記憶部28に記憶されたグランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積とに基づいて等価熱伝導率を求める計算を行う部分である。計算部29は、この他にも、入出力部33に含まれる装置の制御および記憶部34の制御を行う。入出力部33の制御は、入出力する項目の少なくとも一部を規定すること、入出力部33に含まれる各装置の時期的な駆動調整を含む。記憶部34の制御は、記憶部34が記憶する項目の規定、変更、記憶内容を、記憶部34の異なる領域に移動することを含む。第1実施形態において計算部29は、中央演算処理装置(Central Processing Unit,
略称「CPU」)を含んで構成される。計算部29は、1つのCPUを含む構成であってもよく、また複数のCPUを含み、複数のCPUがそれぞれ互いに協働して機能する構成であってもよい。
計算部29は、形状データ処理部44と、等価熱伝導率算出部46と、温度算出部47と、シミュレーション後処理部48とを含んで構成される。形状データ処理部44は、CADデータベースまたは入出力部33からの形状データの読み込みと、読み込んだ形状データの修正とを行う。読み込みおよび修正のそれぞれの処理のうち、使用者が目的とする等価熱伝導率の算出および温度の算出に、必要のない処理が含まれる場合には、形状データ処理部44は、必要のない処理を行わずに省略することができる。
等価熱伝導率算出部46は、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積の読み込みまたは算出と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積の読み込みまたは算出と、初期温度を含む境界条件および物性値の読み込みと、材料物性データベース42または入出力部33からの物性データの読み込みと、読み込んだ物性値および物性データの修正と、計算による等価熱伝導率の算出を行う。各グランドパターン接続端子19−基板13間の接続面積とグランドパターン接続端子19の個数とが入力された場合には、複数のグランドパターン接続端子19−基板13間の接続面積を算出し、各グランドパターン非接続端子21−基板13間の接続面積とグランドパターン非接続端子21の個数とが入力された場合には、複数のグランドパターン非接続端子21−基板13間の接続面積を算出する。
また第1実施形態において計算部29は、熱解析によって構成部品各部分の温度の算出も行うので、等価熱伝導率算出部46は、温度算出部47が有限要素法や有限体積法等によって計算を行うためのメッシュの作成を行う。メッシュは、電子部品本体モデル26、端子モデル25、導体モデル30および絶縁体モデル36内に作成される。読み込み、修正およびメッシュ作成のそれぞれの処理のうち、使用者が目的とする等価熱伝導率の算出および温度の算出に必要のない処理が含まれる場合には、等価熱伝導率算出部46は、必要のない処理を行わずに省略することができる。
温度算出部47は、等価熱伝導率算出部46で形成されたメッシュ内において、または各メッシュの頂点、辺または面における熱移動速度、熱抵抗および温度の計算を行う。これによって、温度算出部47は、電子部品本体モデル26、端子モデル25、導体モデル30および絶縁体モデル36について、有限要素法や有限体積法等によって温度の計算を行う。シミュレーション後処理部48は、等価熱伝導率算出部46および温度算出部47において算出された等価熱伝導率および構成部品の各部分の温度を、出力用のデータ形式に変換し、表示および印刷などの出力を行い、算出および出力したデータを記憶部34に記憶する。データ形式の変換、出力については、使用者による熱解析装置11の操作によって、行わないことも可能である。
形状データ処理部44と、等価熱伝導率算出部46と、温度算出部47と、シミュレーション後処理部48とは、それぞれ別の部品として設けてもよいけれども、これらのうちいずれか複数を1つのCPUとして、1つの部品とすることも可能である。またこれらを
含む計算部29を1つの部品とすることも可能である。
図5は、本発明の第1実施形態に係る熱解析方法の工程を詳細に表したフローチャートである。本処理開始後、ステップb1の形状データ取得工程に移行し、端子14、基板13の形状データの取得を行う。端子14の形状および個数について使用者が入力する場合、使用者は仕様書に従った情報を入力する。次にステップb2の条件取得工程に移行し、電子部品本体12、端子14、基板13の密度、比熱、熱伝導率を含む物性値と、初期温度を含む境界条件とについて、情報の取得を行う。電子部品本体12の単位時間当たりの発熱量についても、条件取得工程において取得する。
次にステップb3の電子部品形状取得工程に移行し、電子部品本体12の形状を取得する。次にステップb4のグランドパターン接続端子情報取得工程に移行し、各グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、グランドパターン接続端子19の個数とについての情報を取得する。次にステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程に移行し、各グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積と、グランドパターン非接続端子21の個数とについての情報を取得する。次にステップb6の等価熱伝導率算出工程に移行し、等価熱伝導率の算出を行う。これは、電子部品本体12、端子14、基板13についての形状および物性値からの情報に基づいて、計算を行い、算出する。
次にステップb7のメッシュ作成工程に移行し、メッシュの作成を行う。メッシュは、有限要素法や有限体積法等によって熱解析を行うために区分けされたモデル内の領域であって、電子部品本体モデル26、端子モデル25、基板モデル24について、全て同じ大きさのメッシュとしてもよいし、それぞれの構成部品によってメッシュの大きさを変更してもよいし、それぞれの構成部品の中でも、各部分によって作成するメッシュの大きさに差異を持たせてもよい。次にステップb8の温度算出工程に移行し、電子部品本体12、端子14、基板13の形状および物性値と、電子部品本体12からの単位時間当たりの発熱量と、各構成部品の熱移動および温度についての境界条件と、等価熱伝導率算出工程で算出された等価熱伝導率とに基づいて計算を行い、各構成部品の各部分の温度を算出する。
熱解析装置11が各構成部品の各部分の温度を算出する温度算出工程では、モデル化された後のモデルの形状および物性値を用いて計算を行うので、計算結果として算出される温度もモデル内の温度である。しかし、熱解析装置11の計算内容は、熱解析装置11が温度算出工程で算出した温度が、実験結果と一致するように決定されるので、熱解析装置11が温度算出工程で算出した温度は、実際の各構成部品の各部分の温度であると見なすことができる。
次にステップb9の後処理工程に移行し、等価熱伝導率算出工程および温度算出工程で算出された等価熱伝導率および構成部品の各部分の温度の出力を行う。等価熱伝導率および構成部品の各部分の温度について、データ形式を変換すること、表示および印刷などの出力を行うことおよび記憶部34に記憶させることのうちの一部または全部を、後処理工程で行う。その後、本処理は終了する。本処理は、プログラムが実行可能に記憶されたコンピュータを用いて行われる処理であり、プログラムは、プログラムが記憶されたコンピュータに対して、本処理を実行させる。
ステップb1の形状データ取得工程、ステップb2の条件取得工程、ステップb3の電子部品形状取得工程、ステップb4のグランドパターン接続端子情報取得工程およびステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程では、入出力部33が熱解析装置11の使用者に対して入力を促し、使用者によって情報が入力されてもよいし、情報の一部または全部を、材料物性データベース42に蓄積されている情報の中から取得してもよい。熱解析装置11の入出力部33が使用者に対して入力を促す内容を表示し、使用者が入力を行う場合、使用者は仕様書または実装手順書に書かれてある内容を参照して入力を行うものとする。またステップb1の形状データ取得工程〜ステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程で入力が必要となる情報は、本処理に先立って、仕様書または実装手順書に書かれてあることを前提とする。
図1においてステップa1として示したグランドパターン接続面積取得工程は、図5においてステップb4として示したグランドパターン接続端子情報取得工程に含まれ、図1においてステップa2として示したグランドパターン非接続面積取得工程は、図5においてステップb5として示したグランドパターン非接続端子情報取得工程に含まれ、図1においてステップa3として示した計算工程は、図5においてステップb6として示した等価熱伝導率算出工程に含まれる。図5のステップb1の形状データ取得工程〜ステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程は、その順番を入れ替えることが可能である。
第1実施形態においては、ステップb4のグランドパターン接続端子情報取得工程で、各グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、グランドパターン接続端子19の個数とを取得したけれども、他の実施形態においてはステップb4のグランドパターン接続端子情報取得工程で、複数のグランドパターン接続端子19と基板13との接続面積を、使用者の入力によって取得してもよい。また、ステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程で、各グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積と、グランドパターン非接続端子21の個数とを取得したけれども、他の実施形態においてはステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程で、複数のグランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積を、使用者の入力によって取得してもよい。
熱解析装置11内において、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積は、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積として、計算に利用され、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積は、グランドパターン非接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積として、計算に利用される。
等価熱伝導率の算出のみを目的とするときには、ステップb6の等価熱伝導率算出工程の後、メッシュ作成工程および温度算出工程を省略し、ステップb9の後処理工程に移行してもよい。この場合、ステップb9の後処理工程では、等価熱伝導率について、データ形式の変換、表示および印刷、記憶部34での記憶のうち、一部または全部を行う。
図6は、図5のステップb1の形状データ取得工程において取得するCADデータの一例を示した図であり、これは基板モデル24と電子部品本体モデル26と端子モデル25とについて、3次元の形状としての情報を含んでいる。
第1実施形態に従えば、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積とに基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める。グランドパターン18からの放熱効率は、非グランドパターン32からの放熱効率よりも高く、グランドパターン接続端子19からの放熱効率は、グランドパターン非接続端子21からの放熱効率よりも高い。したがって、グランドパターン接続端子モデル22と、グランドパターン非接続端子モデル23とを、異なるものとしてモデル化し、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積とを、それぞれ求めることによって、それらの端子14の熱抵抗および熱伝導率を互いに異なるものとしてシミュレーションすることが可能になる。したがって、電子部品15に含まれる端子1
4のうちの、グランドパターン接続端子19の割合をモデルに反映することができる。電子部品15に含まれる端子14のうちの、グランドパターン接続端子19の割合がモデル化対象物によって異なっても、精度の高い基板13および電子部品本体12の熱伝導率計算結果を得ることができる。
また第1実施形態に従えば、グランドパターン接続端子モデル22および基板モデル24間の接続面積と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積とに、異なる係数をかけて計算を行う。電子部品本体モデル26からの基板モデル24への熱流は、端子モデル25と基板モデル24との接続面積に比例する。したがって、それぞれの接続面積に係数を乗ずる計算を含むことによって、グランドパターン接続端子19中を移動する熱の放熱効率とグランドパターン非接続端子21中を移動する熱の放熱効率との差異を、それぞれの接続面積にかかる係数の差として計算に含めて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の熱移動について、等価熱伝導率を求めることができる。また、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24と間の接続面積に対して、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24と間の接続面積に乗ずる係数とは異なる係数を乗ずることによって計算を行う。これによって、グランドパターン接続端子モデル22から基板モデル24への熱流束と、グランドパターン18非端子モデル25から基板モデル24への熱流束とを、前記係数に由来する違いを除けば同じものであるとして計算することができる。したがって、それぞれの接続面積に異なる係数をかけた項を、同次元の単位を有する項として、同等に扱うことができる。グランドパターン接続端子モデル22から基板モデル24への熱流束と、グランドパターン非接続端子モデル23から基板モデル24への熱流束との区別を、異なる係数を乗ずることによって行うので、熱伝導率については同一の値を用いることができる。したがって、グランドパターン接続端子19を介する熱移動についての熱抵抗とグランドパターン非接続端子21を介する熱移動についての熱抵抗とをそれぞれ別個に計算して等価熱伝導率を求めることに比べて、計算コストの増大を低減することができる。
また第1実施形態に従えば、電子部品15に含まれる端子14がハンダボール31である場合に、リフロ処理後のハンダボール31と基板13との接続面積に基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める。端子14がハンダボール31である場合に、リフロ処理後の端子14と基板13との接続面積は、リフロ処理前のハンダボール31の直径に基づいて計算した値とは異なる。したがって、仕様書に書かれたハンダボール31の直径の値に基づいた接続面積ではなく、リフロ処理後のハンダボール31の直径の値に基づく接続面積を求める計算を含むことによって、リフロ処理による変化をモデルに反映することができ、リフロ処理の影響を含めた熱伝導率計算結果を得ることができる。
また第1実施形態に従えば、グランドパターン18に接続される端子14と基板13との接続面積と、グランドパターン18に非接続な端子14と基板13との接続面積とを計算に含めて求めた等価熱伝導率に基づいて、定常状態における電子部品本体12および基板13の温度を求める。グランドパターン18に接続される端子14からの放熱効率は、グランドパターン18に非接続な端子14からの放熱効率よりも高いので、グランドパターン接続端子19と、グランドパターン非接続端子21とを、異なるものとしてモデル化することによって、基板13に接続される複数の端子14のうちの、グランドパターン18に接続される端子14の割合をモデルに反映することができる。したがって、グランドパターン18に接続される端子14の割合が異なっても、精度の高い基板13および電子部品15の熱解析結果を得ることができる。
電子部品15に含まれる端子14がハンダボール31である場合には、リフロ処理によって変化した後の端子14および基板13間の面積を計算に含むことによって、リフロ処理の影響を含めた熱解析結果を得ることができる。
また第1実施形態に従えば、熱伝導率計算装置10は、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積の値を記憶する第1記憶部27と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積の値を記憶する第2記憶部28とを含む。これによって、電子部品本体12から基板13への熱移動に関する合成熱抵抗および等価熱伝導率の計算を行う場合に、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積を、異なるものとしてそれぞれ記憶することができる。また第1記憶部27と第2記憶部28に記憶された面積の値に基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める計算部29を含む。これによって、グランドパターン接続端子19とグランドパターン非接続端子21とを異なるものとしてモデル化し、それぞれについて異なる計算を行うことが可能になる。したがって、電子部品15に含まれる端子14のうちの、グランドパターン接続端子19の割合を熱伝導率の計算に反映することができ、グランドパターン接続端子19の割合が異なっても、精度の高い基板13および電子部品本体12の熱伝導率計算結果を得ることができる。
また第1実施形態に従えば、熱解析装置11は、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積を、異なるものとしてそれぞれ記憶し、それぞれの面積の値に基づいて、定常状態における電子部品本体12および基板13の温度を計算によって求める。したがって、基板13に接続される複数の端子14のうちの、グランドパターン18に接続される端子14の割合が異なっても、精度の高い熱解析結果を得ることができる。
また第1実施形態に従えば、熱伝導率計算プログラムは、グランドパターン接続端子19と基板13との接続面積と、グランドパターン非接続端子21と基板13との接続面積とを計算に含めて、コンピュータに等価熱伝導率を求めさせる。これによって、グランドパターン接続端子19とグランドパターン非接続端子21とを異なるものとしてモデル化し、それぞれについて異なる計算を行うことができる。したがって、電子部品15に含まれる端子14のうちの、グランドパターン接続端子19の割合を熱伝導率計算の計算に反映することができ、グランドパターン接続端子19の割合が異なっても、精度の高い基板13および電子部品本体12の熱伝導率計算結果を得ることができる。また熱伝導率計算を、コンピュータに実行させるので、熱伝導率計算結果を、速い計算速度によって計算して求めることができる。
また第1実施形態に従えば、熱解析プログラムは、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積と、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積とを、計算に含めて、コンピュータに、定常状態における電子部品本体12および基板13の温度を計算によって求めさせる。したがって、電子部品15に接続される端子14のうちの、グランドパターン接続端子19の割合を熱解析の計算に反映することができ、グランドパターン接続端子19の割合が異なっても、精度の高い基板13および電子部品本体12の熱解析結果を得ることができる。また熱解析を、コンピュータに実行させるので、熱解析結果を、速い計算速度によって計算して求めることができる。
また第1実施形態に従えば、計算部29は、グランドパターン接続端子19と基板13との接触面積の値と、グランドパターン18非接触端子14と基板13との接触面積の値とに、異なる係数をかける計算を行い、それらの計算結果に基づいて、定常状態における電子部品本体12および基板13の温度をシミュレーションによって求める。電子部品本体モデル26からの基板モデル24への熱流は、端子モデル25および基板モデル24間
の接続面積に比例する。したがって、それぞれの接続面積の値に係数を乗ずる計算を行う計算部29を含むことによって、グランドパターン接続端子19中を移動する熱の放熱効率とグランドパターン非接続端子21中を移動する熱の放熱効率との差異を、それぞれの接続面積の値にかかる係数の差として計算に含めて、電子部品本体モデル26および基板モデル24間の熱移動について、等価熱伝導率を求めることができる。
また計算部29は、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積に対して、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数とは異なる係数を乗ずることによって計算を行う。したがって、グランドパターン接続端子モデル22から基板モデル24への熱流束と、グランドパターン18非端子モデル25から基板モデル24への熱流束とを、前記係数に由来する違いを除けば同じものであるとして計算することができる。したがって、それぞれの接続面積に異なる係数をかけた項を、同次元の単位を有する項として、同等に扱うことができる。グランドパターン接続端子モデル22から基板モデル24への熱流束と、グランドパターン非接続端子モデル23から基板モデル24への熱流束との区別を、異なる係数を乗ずることによって行うので、熱伝導率については同一の値を用いることができる。したがって、グランドパターン接続端子19を介する熱移動についての熱抵抗とグランドパターン非接続端子21を介する熱移動についての熱抵抗とをそれぞれ別個に計算して等価熱伝導率を求めることに比べて、計算コストの増大を低減することができる。
また第1実施形態に従えば、電子部品15に含まれる端子14がハンダボール31である場合に、計算部29は、リフロ処理後のハンダボール31と基板13との接触面積に基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める。端子14がハンダボール31である場合に、リフロ処理後の端子14と基板13との接続面積は、リフロ処理前のハンダボール31の直径に基づいて計算した値とは異なる。したがって、仕様書に書かれたハンダボール31の直径の値に基づいた接続面積ではなく、リフロ処理後のハンダボール31の基準方向Zに垂直な断面の直径に基づく接続面積を求める計算を含むことによって、リフロ処理によって変化した後の接続面積をモデルに反映することができ、リフロ処理の影響を含めた熱伝導率計算結果を得ることができる。
第1実施形態で電子部品15は、基板13に対して1つ実装されるものとしたけれども、他の実施形態において電子部品15は、基板13に対して複数実装されていてもよい。また第1実施形態において、熱伝導率計算を構成する部品と熱解析装置11を構成する部品とは同じであるものとしたけれども、他の実施形態において熱伝導率計算を構成する部品と熱解析装置11を構成する部品とを別部品とすることも可能である。たとえば熱伝導率計算を行うコンピュータと、熱伝導率計算で求めた等価熱伝導率を利用して熱解析を行うコンピュータとを、異なるコンピュータによって行っても良い。
図7は、本発明の第2実施形態におけるモデル化対象物の断面図である。第2実施形態においてモデル化対象物は、第1実施形態におけるモデル化対象物に、電子部品本体12と基板13との間に充填される充填剤49をさらに含んで構成される。第2実施形態において電子部品15は、1つの基板13に対して4つ実装される。
電子部品本体12と基板13との間の間隙のうち、端子14を除く部分には充填剤49が充填される場合がある。電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が充填される場合と、充填剤49が充填されず、空気層が存在する場合とでは、電子部品本体12と基板13との間の熱抵抗が異なる。第2実施形態では、電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が充填されているか否かの情報も計算に含めて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との等価熱伝導率を算出する。等価熱伝導率の算出は、計算部29が行う。
また電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が存在する場合においても、充填剤49に空気層が空洞として形成されている場合には、電子部品本体12と基板13との間の等価熱伝導率は異なるので、充填剤49中に形成される空洞の割合も計算に含めて、等価熱伝導率の算出を行う。
具体的には、電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が充填される場合と、電子部品本体12と基板13との間が空気層である場合とを、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の熱流束が異なったものとして、熱伝導率計算を行う。電子部品本体12と基板13との間に充填される充填剤49の有無の情報をも、等価熱伝導率を計算するときに情報として含むことによって、電子部品本体12と基板13との間の熱抵抗が充填剤49の有無に影響されても、精度の高い熱解析結果を得る。
第2実施形態のモデルにおいては、基準方向Zに垂直な断面の形状および面積が、基板モデル24に臨む電子部品本体モデル26の一表面の形状および面積に等しく、材質が均一である仮想材料を想定し、これを「等価材料」と称する。等価材料は、電子部品本体モデル26および基板モデル24に接して、電子部品本体モデル26および基板モデル24間に隙間なく充填されて存在するものと仮定する。
等価材料が、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の基準方向Zの熱移動に関して示す熱抵抗は、実際の電子部品本体12と基板13との間の熱移動に関する合成熱抵抗と同じであるものとする。基準方向Zに離れる電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の距離を、等価材料の基準方向Zに垂直な断面の断面積で割って、さらにモデル熱抵抗で割った物理量は、等価材料の熱伝導率の値である。等価材料の熱伝導率は、等価熱伝導率と同じである。また以下の説明において、充填剤のモデルを「充填剤モデル」と称することがある。
第2実施形態において充填剤49は、エポキシ樹脂であるものとする。充填剤49はエポキシ樹脂でなくてもよいけれども、絶縁性を示す材料であればよい。充填剤49は、電子部品本体12と基板13との間を接合することによって、電子部品本体12と基板13との相対位置を固定し、電子部品本体12から基板13への熱移動の効率を高くする効果も有する。充填剤49は、端子14に接触していても接触していなくても構わない。
図8は、本発明の第2実施形態に係る熱解析方法の工程を表したフローチャートである。本実施形態の第2実施形態における熱解析方法の工程は、形状データ取得工程と、条件取得工程と、電子部品形状取得工程と、グランドパターン接続端子情報取得工程と、グランドパターン非接続端子情報取得工程と、充填剤情報取得工程と、等価熱伝導率算出工程と、メッシュ作成工程と、温度算出工程と、後処理工程とを含んで構成される。
本処理開始後、ステップc1の形状データ取得工程に移行し、各構成部品の形状についての情報を取得する。端子14の形状の情報を取得することについては、第1実施形態のステップb1の形状データ取得工程と同様であるけれども、第2実施形態における形状データ取得工程では、導電体および絶縁体についても、形状および相対位置の情報を取得する。
次にステップc2の条件取得工程に移行し、次にステップc3の電子部品形状取得工程に移行し、次にステップc4のグランドパターン接続端子情報取得工程に移行し、次にステップc5のグランドパターン非接続端子情報取得工程に移行し、次にステップc6の充填剤情報取得工程に移行する。ステップc2の条件取得工程〜ステップc5のグランドパターン非接続端子情報取得工程は、図5に示した第1実施形態におけるステップb2の条
件取得工程〜ステップb5のグランドパターン非接続端子情報取得工程と同様である。ステップc5のグランドパターン非接続端子情報取得工程の後、ステップc6の充填剤情報取得工程に移行する。
ステップc6の充填剤情報取得工程では、充填剤49の有無、充填剤49の基準方向Zの厚み、基準方向Zに見たときの面積、比熱、初期温度、充填剤49中の空洞の有無についての情報を取得する。充填剤49の有無についての情報を、使用者が入力する場合、使用者は充填剤49の有無を視認または実装手順書によって判断し、入力する。充填剤49の有無および充填剤49中の空洞の有無は、視認によって確認できる場合が多い。充填剤49の有無についての情報を、使用者が実装手順書に基づいて入力する場合、実装手順書には、充填剤49の有無の情報が記載されていることを前提とする。
充填剤49の有無、充填剤49の基準方向Zの厚み、基準方向Zに見たときの面積、比熱、初期温度、充填剤49中の空洞の有無についての情報は、記憶部34が記憶する。これらの情報は第1記憶部27が記憶しても、第2記憶部28が記憶してもよい。充填剤49に関する前記の情報がすでに材料物性データベース42に記憶されている場合には、情報の一部または全部を材料物性データベース42からCPUが読み込んで計算に利用することも可能である。
次にステップc7の等価熱伝導率算出工程に移行し、等価熱伝導率の算出を行う。これは、ステップc1〜ステップc6で取得した各構成部品、充填剤49の形状、物性値から、算出を行う。次にステップc8のメッシュ作成工程に移行し、メッシュの作成を行う。メッシュは、電子部品本体モデル26、端子モデル25、導体モデル30、絶縁体モデル36および充填剤モデル50に形成されてもよいし、端子14および充填剤49を1つの等価材料としてモデル化し、電子部品本体モデル26、導体モデル30、絶縁体モデル36および等価材料についてメッシュが形成されてもよい。第2実施形態においては、端子14および充填剤49を等価材料としてモデル化し、電子部品本体モデル26、導体モデル30、絶縁体モデル36および等価材料について、メッシュを作成する。メッシュの作成は、計算部29が行う。
各メッシュは、全て同じ大きさのメッシュとしてもよいし、それぞれの構成部品によってメッシュの大きさを変更してもよいし、それぞれの構成部位品の中でも、各部分によって作成するメッシュの大きさに差異を持たせてもよい。
次にステップc9の温度算出工程に移行し、電子部品本体12、端子14、導体および絶縁体17の形状および物性値と、電子部品本体12からの単位時間当たりの発熱量と、各構成部品の熱移動および温度についての初期条件と、等価熱伝導率算出工程で算出された等価熱伝導率とに基づいて、各構成部品の各部分の温度を算出する。ステップc8のメッシュ作成工程で、端子14および充填剤49のモデルを等価材料によって表した場合には、ステップc9の温度算出工程は、電子部品本体12、導体、絶縁体17および等価材料の各部分についての温度を算出することになる。温度の算出は、計算部29が行う。
次にステップc10の、後処理工程に移行し、等価熱伝導率算出工程および温度算出工程で算出された等価熱伝導率および構成部品の各部分の温度の情報を出力する。等価熱伝導率および構成部品の各部分の温度について、表示および印刷を含めた出力、データ形式の変換、記憶部34への記憶を後処理工程の中で行う。その後、本処理は終了する。データ形式の変換は計算部29が行い、温度の情報の出力は、計算部29の制御によって、出力部分39が行う。本処理は、プログラムが実行可能に記憶されたコンピュータを用いて行われる処理であり、プログラムは、プログラムが記憶されたコンピュータに対して、本処理を実行させる。
ステップc1の形状データ取得工程、ステップc2の条件取得工程、ステップc3の電子部品形状取得工程、ステップc4のグランドパターン接続端子情報取得工程、ステップc5のグランドパターン非接続端子情報取得工程およびステップc6の充填剤情報取得工程では、入出力部33が熱解析装置11の使用者に対して入力を促し、使用者によって入力されてもよいし、情報の一部または全部を、CAD形状データベース41、材料物性データベース42のいずれかに蓄積されている情報の中から取得してもよい。熱解析装置11の入出力部33が使用者に対して入力を促す内容を表示し、使用者が入力する場合、使用者は仕様書または実装手順書に書かれてある内容を参照して入力を行うものとする。またステップb1の形状データ取得工程〜ステップb6の充填剤情報取得工程で入力が必要となる情報は、本処理に先立って、仕様書または実装手順書に書かれてあることを前提とする。
図1においてステップa1として示したグランドパターン接続面積取得工程は、図8においてステップc4として示したグランドパターン接続端子情報取得工程内の手順に相当し、図1においてステップa2として示したグランドパターン非接続面積取得工程は、図8のステップc5として示したグランドパターン非接続端子情報取得工程内の手順に相当し、図1においてステップa3として示した計算工程は、図8においてステップc7として示した等価熱伝導率算出工程内の手順に相当する。図8のステップc1の形状データ取得工程〜ステップc6の充填剤情報取得工程は、その順番を入れ替えることが可能である。
等価熱伝導率の算出のみを目的とするときには、ステップc7の等価熱伝導率算出工程の後、メッシュ作成工程および温度算出工程を省略し、ステップc10の後処理工程に移行してもよい。この場合、ステップ10の後処理工程では、等価熱伝導率についてデータ形式の変換、表示および印刷、記憶部34での記憶のうち、一部または全部を行う。
図9は、図8のステップc6の充填剤情報取得工程において入力する材料物性データの一例を示す図である。電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が充填されている場合には、充填剤49が充填されていない場合に比べて、電子部品本体12から基板13に対して熱が移動しやすい。充填剤49の熱伝導率を「λund」、充填剤49の熱伝導率に乗ずる係数を「Umod」とすると、第2実施形態において、充填剤49が充填されている場合、等価熱伝導率は、式(6)で表される。
充填剤49の熱伝導率に乗ずる係数Umodは、充填剤49中の空洞の存在による等価熱伝導率の上昇を計算結果に反映するための係数である。充填剤49の熱伝導率に乗ずる係数Umodは、入出力部33が熱解析装置11の使用者に対して入力を促し、使用者によって入力される。充填剤49が存在し、充填剤49中に空洞が存在しない場合、Umodの値は1である。電子部品本体12と基板13との間において、基板13に臨む電子部品本体12の一表面の面積の、たとえば8割を占める範囲において、充填剤49が充填されている場合には、Umodの値として、0.8を入力する。充填剤49中の空洞の有無、電子部品本体12と基板13との間における充填剤49の充填率については、たとえば充填剤49を充填する前の電子部品本体12および基板13の質量と、充填剤49を充填した後の電子部品本体12および基板13の質量とを比較して、求めてもよいけれども、視認によって、使用者が確認し、入力してもよい。充填剤49がエポキシ樹脂以外の材質から成る場合には、充填剤49の材質に応じて、λmodを変更し、実験結果からその充填剤49に応じてλmodにかけられる係数をさらに加えて計算を進めることも可能である。
電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が充填されていない場合、空気の熱伝導率は小さいので、式(4)に基づいて計算してもよいけれども、空気の熱伝導率を「λair」として、式(7)に基づいて計算してもよい。
第2実施形態において、電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が充填されていない場合は、等価熱伝導率を式(6)に従って計算することによって求める。
第2実施形態における熱解析では、電子部品本体12と基板13との間の距離についても、リフロ処理によって変化した後の距離を含めて計算を行い、各構成部品の各部分の温度を算出するけれども、他の実施形態における熱解析では、電子部品本体12と基板13との間の距離は、リフロ処理によって変化しないという前提で計算を行い、各構成部品の各部分の温度を算出してもよい。
第2実施形態に従えば、電子部品本体12と基板13との間に充填される充填剤49の有無に基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める。電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が存在する場合と電子部品本体12と基板13との間が空気層である場合とで、電子部品本体12と基板13との間の熱抵抗が異なるものとしてモデル化することによって、電子部品本体12と基板13との間の充填剤49の有無の影響が計算に含まれた熱伝導率計算結果を得ることができる。
また第2実施形態に従えば、電子部品本体12と基板13との間に充填される充填剤49の有無に基づいて求めた等価熱伝導率を計算に含めて熱解析を行う場合には、熱解析の結果としても、電子部品本体12と基板13と間の充填剤49の有無の影響が計算に含まれた熱解析結果を得ることができる。
また第2実施形態に従えば、記憶部34は、電子部品本体12と基板13との間に充填される充填剤49の有無の情報を記憶する。また計算部29は、電子部品本体12と基板13との間に充填される充填剤49の有無に基づいて、電子部品本体モデル26と基板モデル24との間の等価熱伝導率を求める計算を行う。電子部品本体12と基板13との間に充填剤49が存在する場合と電子部品本体12と基板13との間が空気層である場合とで、電子部品本体12と基板13との間の熱抵抗を異なるものとしてモデル化することによって、電子部品本体12と基板13との間の充填剤49の有無の影響が計算に含まれた熱伝導率計算結果を得ることができる。
第1および第2実施形態で電子部品15は、集積回路が実装された集積回路パッケージとしたけれども、電子部品15は、電子部品本体12と、複数の端子14とを含み、複数の端子14のうちの一部がグランドパターン18に接続されるような電子部品15であれば、足りる。たとえば他の実施形態において電子部品15は、集積回路であってもよい。
また第1および第2実施形態でグランドパターン18は、1つの基板13に1つ含まれるものとしたけれども、グランドパターン18は1つの基板13に1つ以上含まれていれば、足りる。たとえば他の実施形態においてグランドパターン18は、1つの基板13に複数含まれていてもよい。
図10は、本発明の第1および第2実施形態における第1〜第4電子部品の電子部品本体モデルおよび基板モデル24を表す平面図である。図11は、本発明の第2実施形態における第1電子部品本体モデル51に接続される端子モデル25および基板モデル24を表す平面図である。図12は、本発明の第2実施形態における第2電子部品本体モデル52に接続される端子モデル25および基板モデル24を表す平面図である。図13は、本発明の第2実施形態における第3電子部品本体モデル53に接続される端子モデル25および基板モデル24を表す平面図である。図14は、本発明の第2実施形態における第4電子部品本体モデル54に接続される端子モデル25および基板モデル24を表す平面図である。
図11において、ハッチングで示した部分はグランドパターン接続端子モデル22を示し、グランドパターン接続端子モデル22と同じ大きさの四角で、ハッチングを書かずに示した部分はグランド非接続端子モデル23を表す。図12〜図14において、ハッチングで示した丸はグランドパターン接続端子モデル22を、ハッチングを書かずに示した丸はグランド非接続端子モデル23を表す。
図11に示した第1電子部品本体モデル51は、基準方向Zに見て一辺の長さL3が4ミリメートル(millimeters, 略号「mm」)の正方形であり、第1電子部品本体モデル51に接続される端子モデル25には、基準方向Zに垂直で基板13に平行な一方向が長辺方向となるようなグランドパターン接続端子モデル22が含まれている。長辺方向の長さL4は、3.9mmであり、短辺方向の長さL5は、2.1mmである。また第1電子部品本体モデル51に接続される端子モデル25には、この他に一辺の長さL6が0.55mmの正方形の面で基板モデル24と接続される端子モデル25が10個並んでいる。この10個の端子モデル25のうち、4個がグランドパターン接続端子モデル22であり、残りの6個はグランドパターン非接続端子モデル23である。
図12に示した第2電子部品本体モデル52は、基準方向Zに見て一辺の長さL7が6mmの正方形である。第2電子部品本体モデル52に接続される端子モデル25は、直径d1が0.35mmの円形の接続面で基板モデル24と接続される端子モデル24で、個数が56個である。この56個のうち、13個がグランドパターン接続端子モデル22であり、残りの43個は、グランドパターン非接続端子モデル23である。第2電子部品本体モデル52に接続される端子モデル25の直径d1は、リフロ処理後の直径であって、図3におけるL2に相当する直径である。
図13に示した第3電子部品本体モデル53は、第2電子部品本体モデル52と同じ大きさであり、第3電子部品本体モデル53に接続される端子モデル25の大きさおよび個数は、第2電子部品本体モデル52に接続される端子モデル25の大きさおよび個数に等しい。この56個のうち、20個がグランドパターン接続端子モデル22であり、残りの36個は、グランドパターン非接続端子モデル23である。
図14に示した第4電子部品本体モデル54は、基準方向Zに見て一辺の長さL8が7.5mmの正方形である。第4電子部品本体モデル54に接続される端子モデル25は、直径d2が0.3mmの円形の接続面で基板モデル24と接続される端子モデル25で、個数が192個である。この192個のうち、35個がグランドパターン接続端子モデル22であり、残りの157個は、グランドパターン非接続端子モデル23である。第4電
子部品本体モデル54に接続される端子モデル25の直径d2は、リフロ処理後の直径であって、図3におけるL2に相当する直径である。第1〜第4電子部品本体モデル、基板モデル24および端子モデル25の大きさおよび個数は、実際の第1〜第4電子部品本体、基板13および端子14の大きさおよび個数に等しい。
図15は、本発明の第2実施形態における第1〜第4電子部品および基板の熱解析を行ったときの結果を表す温度分布図である。図15は、電子部品15に一定の通電を始めて後、定常状態に達したときの電子部品本体12および基板13の基準方向Z一方の表面部の温度分布を示している。
第1ライン56は、64℃の等温線である。第2ライン57は、63℃の等温線である。第3ライン58は、62℃の等温線である。第4ライン59は、61℃の等温線である。第5ライン60は、60℃の等温線である。第6ライン61は、59℃の等温線である。第7ライン62は、58℃の等温線である。第8ライン63は、57℃の等温線である。第9ライン64は、56℃の等温線である。第10ライン65は、55℃の等温線である。第11ライン66は、54℃の等温線である。第12ライン67は、53℃の等温線である。第13ライン68は、52℃の等温線である。
通電を開始する前は、電子部品本体モデル26および基板モデル24の温度は27℃であったので、第1ライン56は、37℃の上昇幅となる。第2ライン57は、36℃の上昇幅となる。第3ライン58は、35℃の上昇幅となる。第4ライン59は、34℃の上昇幅となる。第5ライン60は、33℃の上昇幅となる。第6ライン61は、32℃の上昇幅となる。第7ライン62は、31℃の上昇幅となる。第8ライン63は、30℃の上昇幅となる。第9ライン64は、29℃の上昇幅となる。第10ライン65は、28℃の上昇幅となる。第11ライン66は、27℃の上昇幅となる。第12ライン67は、26℃の上昇幅となる。第13ライン68は、25℃の上昇幅となる。
表1は、本発明の第2実施形態における第1〜第4電子部品および基板13の熱解析を行ったときの結果を表す表である。
まず、全体的には、従来技術は、第2実施形態の熱解析方法に比べて、計算結果温度が低くなる傾向がある。これは、従来技術では、グランドパターン接続端子19とグランドパターン非接続端子21とを区別せずに計算を行う結果であって、従来技術ではグランドパターン非接続端子21の放熱効率がグランドパターン接続端子19の放熱効率よりも小さいことを考慮できていない結果である。
第1電子部品では、複数の端子14のうちのグランドパターン接続端子19の割合が、第2〜第4電子部品のグランドパターン接続端子19の割合に比べて大きい。第1電子部品の場合には、グランドパターン接続端子19とグランドパターン非接続端子21とを区別しない従来技術においても、実際の温度に近い温度を計算によって予測することができ、第2実施形態の熱解析方法と従来技術とでは、ほぼ同じ計算結果となった。
第2電子部品では、複数の端子14のうちのグランドパターン接続端子19の割合は、第1電子部品のグランドパターン接続端子19の割合に比べて小さい(23.2%)。この場合には、従来技術では、放熱効率が実際よりも大きいものとして計算され、従来技術による計算結果は、第2実施形態の熱解析方法による計算結果よりも低い温度となり、第2実施形態の熱解析方法による改善の効果が見られた。
第3電子部品では、第1電子部品および第2電子部品に比べて発熱量が大きく、温度上昇の度合が大きい。この場合には、従来技術では、発熱量による温度上昇を、計算による予測結果に充分に反映できず、第2実施形態の熱解析方法による計算結果よりも低い温度として予測された。第3電子部品でも、従来技術に対して第2実施形態の熱解析方法による改善の効果が見られた。
第4電子部品では、グランドパターン接続端子19の割合が、第1〜第3電子部品のグランドパターン接続端子19の割合に比べて小さく(18.2%)、電子部品本体12と基板13との間には、充填剤49が充填されている。この場合には、グランドパターン接続端子19の割合が小さいことによる放熱効率の低下と、充填剤49が充填されていることによる放熱効率の上昇とが相殺され、従来技術による計算によっても実験によって測定した温度に近い温度を予測することができたけれども、第2実施形態の熱解析方法による計算結果は、実験によって測定した温度にさらに近い結果となり、第2実施形態の熱解析方法による改善が見られた。
全体的な傾向としては、発熱量が大きければ大きいほど、また接続端子14のうちのグランドパターン非接続端子21の割合が大きければ大きいほど、従来技術に比べて改善される傾向が見られた。電子部品本体12および基板13間に充填剤49が充填されている場合においても、前記と同様の傾向が見られた。
図16は、本発明の第3実施形態におけるモデル化対象物の断面図である。図17は、本発明の第3実施形態における電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。端子14を含む電子部品15に相当するモデルを「電子部品モデル」と称する。第3実施形態では、等価熱伝導率を求める計算工程において、基板13のうち、電子部品15の端子14に近い一部分である部分基板74に相当する部分基板モデル76を計算対象に含む。部分基板74は、基板13の厚み方向に延びる仮想的な筒78に対して周方向全体にわたって内接し、仮想的な筒78の前記基板13の厚み方向に垂直な断面形状は、円形または多角形であり、仮想的な筒78は、1つの前記電子部品15に含まれる端子14を外囲する。
端子モデル25は、一様な厚みを有し、電子部品本体モデル26とモデルとに接する板状の形状であり、電子部品本体モデル26および部分基板モデル76の少なくともいずれか一方と同一の熱伝導率を有するものとして、等価熱伝導率を求める計算工程における計算対象に含まれる。
第3実施形態において、モデル化対象物は、電子部品本体12と、基板13と、端子14とを含んで構成される。基板13は、平板状の部品として形成され、グランドパターン18と、非グランドパターン18と、絶縁体とを含んでいる。基板13の厚み方向に垂直な一表面には、電子部品15が実装される。グランドパターン18は、基準となる電位に保たれる電位基準に電気的に接続される。
第3実施形態において、基板13のうち、電子部品15の端子14に近い一部分を「部分基板」と称し、電子部品15の端子14から遠い部分を「周辺部分」と称する。部分基板74は、基板13のうち、基準方向に延びる仮想的な筒78の内方に位置する部分である。基準方向は、基板13の厚み方向であり、電子部品15に臨む基板13の一表面に垂直である。周辺部分77は、基板13のうち、基準方向に延びる仮想的な筒78の外方に位置する部分である。部分基板74と周辺部分77とは、それぞれが仮想的な筒78に接する面において、互いに接する。仮想的な筒78は、1つの電子部品15の複数の端子14をすべて外囲する。仮想的な筒78は、部分基板74を周辺部分77と区別し、基準方向に部分基板74を見たときの形状および大きさを規定するものである。
仮想的な筒78の、基準方向に垂直な断面の形状は、略円形または略多角形などの閉曲線であるものとする。第3実施形態では、正方形または長方形である。仮想的な筒78は、1つの電子部品15の複数の端子14のうち、1つまたは複数に外接していてもよく、また外接していなくてもよい。第3実施形態において、仮想的な筒78は、1つの電子部品15の複数の端子14のうち、3つ以上の端子14に外接する。
仮想的な筒78は、1つの電子部品15に対して1つ想定される。基板13の一表面に複数の電子部品15が実装される場合、仮想的な筒78は、電子部品15と同数、想定され、各仮想的な筒78は、基板13の一表面上で前記1つの電子部品15に隣接する他の電子部品15の端子14を外囲しない。換言すれば、1つの仮想的な筒78は、1つの電子部品15の端子14を外囲し、この電子部品15に隣接する電子部品15の端子14と接触する基板13の接触面部は、前記1つの仮想的な筒78に関して周辺部分77となる。あるいは複数の電子部品15が同一の基板13上に近接して配置されている場合は、仮想的な筒78を複数の電子部品15に対して1つ想定し、複数の電子部品15に対して1つの部分基板モデルを想定しても良い。
部分基板74に相当するモデルを「部分基板モデル」と称する。電子部品本体12と電子部品本体モデル26とは、同じ形状を有するものとする。同様に、基板13と基板モデル24、部分基板74と部分基板モデル76、周辺部分77と周辺部分77モデルとは、同じ形状を有するものとする。また電子部品本体12、基板13および部分基板74の相対的な位置関係は、電子部品本体モデル26、基板モデル24および部分基板モデル76の相対的な位置関係と同じである。基板モデル24においても、基板13および電子部品15に対する仮想的な筒78と同じ相対位置に仮想的な筒78が想定され、部分基板モデル76と周辺部分77モデルとの間に位置する。仮想的な筒78は、基板モデル24および電子部品モデル72に対するものも、「仮想的な筒」と称することとする。
すなわち、仮想的な筒78は、1つの電子部品モデル72に対して1つ想定され、基板モデル24の一表面に複数の電子部品モデル72が位置する場合、仮想的な筒78は、電子部品モデル72と同数、想定される。各仮想的な筒78は、基板モデル24の一表面上で前記1つの電子部品モデル72に隣接する他の電子部品モデル72の端子14を外囲しない。
第3実施形態において電子部品本体12と基板13との間隔は、基準方向に垂直ないずれの方向に関しても一定である。端子モデル25は、基準方向に見て電子部品本体モデル26と同じ形状、同じ大きさであり、電子部品本体モデル26と基準方向に重なる。仮想的な筒78の基準方向に垂直な断面の形状および大きさは、基準方向に見て電子部品本体モデル26および端子モデル25と同じ形状、同じ大きさである。
図18は、本発明の第3実施形態に係る熱解析を行うときの電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。等価熱伝導率を求めるときには、電子部品本体モデル26および部分基板モデル76のうち少なくともいずれか一方の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とは、同一であるものとして計算する。具体的には、第3実施形態においては、電子部品本体モデル26の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを同一であることを前提として計算する。
端子モデル25の等価熱伝導率を求めるときには、電子部品モデル72毎に行う。グランドパターン接続端子モデル22の熱伝導率、グランドパターン接続端子モデル22と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数、グランドパターン接続端子モデル22の合計面積の3つの値を乗じたグランドパターン接続端子モデル22についての値を求める。次に、グランドパターン非接続端子モデル23の熱伝導率、グランドパターン非接続端子モデル23と基板モデル24との接続面積に乗ずる係数、グランドパターン非接続端子モデル23の合計面積の3つの値を乗じたグランドパターン非接続端子モデル23についての値を求める。前記グランドパターン接続端子モデル22についての値とグランドパターン非接続端子モデル23についての値とを合計し、基板13に臨む電子部品本体12の一表面の基準方向に垂直な断面の面積で割る。これは、式(4)および式(5)に示した手法と同じである。次に電子部品本体モデル26の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを平均化し、同一とする。平均化の手法としては、電子部品本体モデル26の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを単に合計して2で割った単純平均でもよいし、等価熱伝導率に電子部品本体モデル26と端子モデル25の各モデルの質量比、熱容量比、その他の重み係数のうち1つ以上を乗して合計する加重平均でもよい。その他の重み係数としては、基板13への熱伝導経路であるため熱移動への影響が大きい端子モデル25に、電子部品本体モデル26に乗ずる係数より大なる係数を乗じることが望ましい。
熱解析を行うときには、前記前提に基づいて等価熱伝導率を用いて計算を行う。メッシュを作成するときには、電子部品本体モデル26と端子モデル25とを一体として、これらを区別しない。これによって、複数のメッシュのうち、電子部品本体モデル26と端子モデル25との接触面を挟んで、電子部品本体モデル26と端子モデル25との両方にわたるメッシュを作成することも可能となる。
第3実施形態に従えば、等価熱伝導率を求める計算工程では、基板13のうち、電子部品15の端子14に近い一部分である部分基板74に相当する部分基板モデル76を計算対象に含む。基板モデル24のうち、端子モデル25に近ければ近い部分ほど、端子14を移動する熱流に対して大きな影響を与える。したがって、端子モデル25に近い部分基板モデル76を計算対象に含むことによって、電子部品15からの熱の移動および拡散に大きく影響する部分の等価熱伝導率の計算精度を向上させることができる。
また第3実施形態に従えば、部分基板モデル76は、基板モデル24の厚み方向に延びる仮想的な筒78に対して周方向全体にわたって内接し、前記仮想的な筒78の基板モデル24の厚み方向に垂直な断面形状は、円形または多角形であり、前記仮想的な筒78は、1つの電子部品モデル72に含まれる端子モデル25を外囲する。これによって、基板モデル24のうち、端子モデル25に接し、端子モデル25からの熱の移動に最も大きく影響する部分を計算対象に含むことによって、電子部品15からの熱の移動および拡散に大きく影響する部分の等価熱伝導率の計算精度を向上させることができる。
有限要素法または有限体積法によって計算するためにメッシュを作成するとき、作成される各メッシュは、縦、横および奥行きのそれぞれ互いの寸法比が1に近ければ近いほど、計算結果の精度は高くなる。部分基板74の厚みが部分基板74の縦の長さおよび横の長さに対して小さい場合に、各有限要素の形状を立方体に保つならば、一定の大きさの部分基板モデル76を熱解析の計算対象とするとき、各有限要素の大きさは、部分基板モデル76の厚みを一辺の長さとする立方体が最大となる。
前記仮想的な筒78は、基板モデル24の厚み方向の長さ全体を外囲するので、部分基板モデル76の厚みを、基板モデル24の厚みと同一にすることができる。したがって、部分基板モデル76を、一辺の長さが基板モデル24の厚みと同等の立方体の有限要素に分割することができる。
仮に電子部品本体モデル26の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを異なるものとして熱解析を行うならば、複数のメッシュのうち、電子部品本体モデル26と端子モデル25との接触面を挟んで、電子部品本体モデル26と端子モデル25との両方にわたるメッシュを作成することが不可能となる。この場合に比べて、第3実施形態においては、作成するメッシュを大きくすることができる。
これによって、有限要素法を用い、等価熱伝導率を含んで計算を行うときに、部分基板モデル76が基板モデル24の厚み方向の一部分のみを含む場合に比べて、有限要素の個数を低減することができる。したがって、計算コストの増大を防止することができる。
また第3実施形態に従えば、端子モデル25は、一様な厚みを有し、前記電子部品本体モデル26と基板モデル24とに接する板状の形状である。また等価熱伝導率を求める計算工程において、端子モデル25を、電子部品本体モデル26および部分基板モデル76の少なくともいずれか一方と同一の熱伝導率を有するものとして計算対象に含む。これによって、電子部品本体モデル26と端子モデル25または端子モデル25と基板モデル24とを一体のモデルとして、等価熱伝導率を求めることができる。
有限要素法または有限体積法によって計算するためにメッシュを作成するとき、作成される各メッシュは、縦、横および奥行きのそれぞれ互いの寸法比が1に近ければ近いほど、計算結果の精度は高くなる。部分基板74の厚みが部分基板74の縦の長さおよび横の長さに対して小さい場合に、各有限要素の形状を立方体に保つならば、前記一体のモデルを熱解析の計算対象とするとき、前記一体のモデルに有限要素として複数形成される立方体の一辺の長さを、部分基板74の厚みよりも長くすることができる。
仮に電子部品本体モデル26の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを異なるものとして熱解析を行うならば、複数のメッシュのうち、電子部品本体モデル26と端子モデル25との接触面を挟んで、電子部品本体モデル26と端子モデル25との両方にわたるメッシュを作成することが不可能となる。この場合に比べて、第3実施形態においては、作成するメッシュを大きくすることができる。
これによって、前記一体のモデルに形成される有限要素の大きさを大きくすることができる。したがって、前記一体のモデルに形成される有限要素の個数を低減することができ、有限要素法を用い、等価熱伝導率を含んで計算を行うときの、計算コストの増大を防止することができる。
図19は、本発明の第3実施形態における電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。図20は、第4実施形態に係る熱解析を行うときの電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。第4実施形態において、前記仮想的な筒78は、電子部品本体モデル26および端子モデル25に対し、周方向全体にわたって外接する。換言すれば、電子部品本体モデル26、端子モデル25および部分基板モデル76の基準方向に垂直な断面の形状および大きさは、基準方向に関して一様であり、かつ互いに同一である。仮想的な筒78の基準方向に垂直な断面の形状および大きさは、基準方向に見て電子部品本体モデル26、端子モデル25および部分基板モデル76と同じ形状、同じ大きさである。
第4実施形態において、電子部品本体12の形状は、基準方向に見て円形または多角形である。具体的には、正方形または長方形である。電子部品本体12の厚みは、一定であり、電子部品本体12は、基準方向に垂直ないずれの方向に関しても、一様な厚みである。仮想的な筒78の基準方向に垂直な断面の形状および大きさは、電子部品本体12の基準方向に垂直な断面の形状および大きさと同じである。したがって、部分基板74の基準方向に垂直な断面の形状および大きさは、電子部品本体12の基準方向に垂直な断面の形状および大きさと同じである。
端子モデル25は、電子部品本体モデル26と基板モデル24とに接し、端子モデル25の基準方向に垂直な断面の形状および大きさは、電子部品本体12の基準方向に垂直な断面の形状および大きさと同じである。端子モデル25の基準方向の厚みは一定であり、端子モデル25は、基準方向に垂直ないずれの方向に関しても一様な厚みである。
電子部品本体12と電子部品本体モデル26とは、同じ形状を有する。同様に、基板13と基板モデル24、部分基板74と部分基板モデル76、周辺部分77と周辺部分77モデルとは、同じ形状を有する。また電子部品本体12、基板13および部分基板74の相対的な位置関係は、電子部品本体モデル26、基板モデル24および部分基板モデル76の相対的な位置関係と同じである。
基準方向に垂直な方向において、電子部品本体12または電子部品本体モデル26の最大の長さを、電子部品本体12または電子部品本体モデル26の「幅寸法」と称する。基準方向に垂直な方向において、部分基板74または部分基板モデル76の最大の長さを、部分基板74または部分基板モデル76の「幅寸法」と称する。電子部品本体モデル26の厚みと端子モデル25の厚みと部分基板モデル76の厚みとの和は、基準方向に垂直ないずれの方向の電子部品本体モデル26の幅寸法よりも小さく、基準方向に垂直ないずれの方向の部分基板モデル76の幅寸法よりも小さい。
メッシュ作成工程においてメッシュを作成するときには、各メッシュの形状を立方体として作成し、メッシュの立方体の一辺の長さと、電子部品本体モデル26の厚み、端子モデル25の厚みおよび部分基板モデル76の厚みの和とを同一とする。
等価熱伝導率を求めるときには、電子部品本体モデル26、部分基板モデル76および端子モデル25の等価熱伝導率は、同一であることを前提として計算する。熱解析を行うときには、前記前提に基づいて等価熱伝導率を用いて計算を行う。メッシュを作成するときには、電子部品本体モデル26と端子モデル25と部分基板モデル76とを一体として、これらを区別しない。これによって、複数のメッシュのうち、電子部品本体モデル26と端子モデル25との接触面を挟んで、電子部品本体モデル26と端子モデル25との両方にわたるメッシュを作成することも可能となる。また端子モデル25と部分基板モデル76との接触面を挟んで、端子モデル25と部分基板モデル76との両方にわたるメッシュを作成することも可能となる。
仮に電子部品本体モデル26の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを異なるものとして熱解析を行うならば、複数のメッシュのうち、電子部品本体モデル26と端子モデル25との接触面を挟んで、電子部品本体モデル26と端子モデル25との両方にわたるメッシュを作成することが不可能となる。また端子モデル25と部分基板モデル76との接触面を挟んで、端子モデル25と部分基板モデル76との両方にわたるメッシュを作成することも不可能となる。これらの場合に比べて、第4実施形態においては、作成するメッシュを大きくすることができる。
これによって、前記一体のモデルに形成される有限要素の大きさを大きくすることができる。したがって、前記一体のモデルに形成される有限要素の個数を低減することができ、有限要素法を用い、等価熱伝導率を含んで計算を行うときの、計算コストの増大を防止することができる。
図21は、第5実施形態に係る熱解析を行うときの電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。端子モデル25は、基準方向に見て電子部品本体モデル26と同じ形状、同じ大きさであり、電子部品本体モデル26と基準方向に重なる。等価熱伝導率を求めるときには、電子部品本体モデル26、端子モデル25および部分基板モデル76の等価熱伝導率は、それぞれ互いに異なることを前提として計算する。端子モデル25の等価熱伝導率を求めるときには、電子部品モデル72毎に行う。端子モデル25の等価熱伝導率を求める手法は、式(4)、式(5)および第3実施形態で示した手法と同じである。
本発明において、等価熱伝導率を求めるときに、電子部品本体モデル26、端子モデル25および部分基板モデル76の等価熱伝導率が、それぞれ互いに異なることを前提として計算する実施形態を否定しない。
キャビネット寸法が800mm×500mm×80mmの、電子部品12、基板13および端子14を含む液晶テレビで熱解析を実施して効果検証を行った。計算対象領域は上記のキャビネット内部の部品と内部の空気領域とした。
キャビネット、液晶モジュール、強度部材など基板13に実装される以外の機構部品を含む総部品合計数が100個で、そのうち電子部品15の個数を50個の形状を熱解析用に入力し、第5実施形態に係る熱解析を行った場合、総部品と計算対象の空気領域に作成されたメッシュの合計個数は、850万個であった。これらのモデルについて、コンピュータと、コンピュータに指令を与える有限体積法を用いた熱流体解析ソフトウェアを用いて、第5実施形態に係る熱解析を行ったときの計算時間は980分であった。
複数の電子部品本体モデル26の中で比較的小さい電子部品本体モデル26の幅寸法の大きさは、6mm×6mmで、比較的大きい電子部品本体モデル26の幅寸法は、40mm×40mmであった。複数の電子部品本体モデル26の中で比較的厚みの薄い電子部品本体モデル26の厚みは、2.0mmで、複数の電子部品本体モデル26の中で比較的厚みの厚い電子部品本体モデル26の厚みは、2.5mmであった。端子モデル25の厚みは、0.2mm以上0.5mm以下であった。
前記と同一の、キャビネット、強度部材など基板13に実装される以外の機構部品を含む総部品合計数が100個で、そのうち電子部品15の個数を50個とした液晶テレビにおいて、第4実施形態に係る熱解析を行った場合、作成されたメッシュの合計個数は、540万個であった。コンピュータと、コンピュータに指令を与える有限体積法を用いた熱流体解析ソフトウェアを用いて、第4実施形態に係る熱解析を行ったときの計算時間は630分であった。第5実施形態に係る熱解析方法の計算時間に対して、第4実施形態に係る熱解析方法の計算時間の削減率は36%であった。
図22は、本発明の第6実施形態における電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。端子モデル25の等価熱伝導率を求めるときには、電子部品モデル72毎に行う。端子モデル25の等価熱伝導率を求める手法は、式(4)、式(5)および第3実施形態で示した手法と同じである。端子モデル25の等価熱伝導率を求めた後、部分基板モデル76の等価熱伝導率と端子モデル25の等価熱伝導率とを平均化し、同一とする。
第6実施形態において、仮想的な筒78は、電子部品本体モデル26および端子モデル25を外囲し、電子部品本体モデル26および端子モデル25よりも大きい。仮想的な筒78の基準方向に垂直な断面の形状は、基準方向に見て電子部品本体モデル26、端子モデル25および部分基板モデル76と同じ形状である。仮想的な筒78の基準方向に垂直な断面の大きさは、基準方向に見て部分基板モデル76と同じ大きさである。
仮想的な筒78、電子部品本体モデル26および端子モデル25を基準方向に見たときの形状は、正方形または長方形であるものとし、電子部品本体モデル26および端子モデル25の正方形または長方形の辺と、仮想的な筒78の基準方向に垂直な断面の正方形または長方形の辺とは、平行である。電子部品本体モデル26および端子モデル25の各辺と、仮想的な筒78の断面の各辺とは、予め定める間隔をあけて設定される。この予め定める間隔を「拡張幅」と称すると、拡張幅は、基板13の厚みの1倍以上3倍以下であることが好ましい。
拡張幅を設定して部分基板モデル76を形成することによって、電子部品本体12から発生する熱の放熱に大きく影響する範囲の基板13の一部分を部分基板モデル76としてモデル化することができる。これによって、拡張幅を設定せず、基準方向に見たときの電子部品本体モデル26、端子モデル25および部分基板モデル76の形状および大きさを同じとして熱解析したときの解析結果に比べて、電子部品本体12から発生する熱の移動を熱解析したときの解析結果の精度を高くすることができる。
図23は、本発明の他の実施形態に係る熱解析を行うときの電子部品モデル72および基板モデル24の断面図である。本実施形態に係る熱解析では、部分基板モデル76の等価熱伝導率と、端子モデル25の等価熱伝導率とが同一であることを前提として計算する。
さらに他の実施形態として、部分基板モデルを設定し、充填剤49の存在を考慮した実施形態も可能である。この場合、第3〜第6実施形態のいずれか1つの実施形態と、第2実施形態とを組合わせることによって、実現される。
電子部品本体モデルの等価熱伝導率と端子モデルの等価熱伝導率とを同一として行う熱解析は、部分基板モデルの大きさに関わらず可能である。
電子部品モデルと基板モデルとに、さらに予め定める範囲内の、電子部品モデルおよび基板モデル周囲の気体を含めて、熱解析を行うことも可能である。この場合、電子部品モデルおよび基板モデルにも、また前記周囲の気体にも、メッシュが作成される。気体は、空気とすることもできる。
非定常状態を取扱うときには、時刻の変化に応じて移動する熱量を、時間変化に依存するものとして計算する。
仮想的な筒78の、基準方向に垂直な断面の形状は、円形または多角形であればよい。たとえば他の実施形態において仮想的な筒の基準方向に垂直な断面の形状は、六角形であってもよい。仮想的な筒の、基準方向に垂直な断面の形状が、円形である場合には、円柱座標を用いる。