JP7298872B2 - セパレータ、セパレータの製造方法及びリチウムイオン電池 - Google Patents
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Description
また、上記のような構成とすることにより、十分な電解液吸収率及び空隙率を得ることが可能となり、かつ、必要以上の高コスト化を回避することが可能となる。
また、ナノ繊維層の厚みが1μmより小さい場合には、十分な電解液吸収率及び空隙率が得られない場合があり、ナノ繊維層の厚みが5μmより大きい場合には、ナノ繊維層が厚すぎることに起因して必要以上にコストが高くなってしまう場合がある。
また、上記のような製造方法とすることにより、十分な電解液吸収率及び空隙率を得ることが可能であり、かつ、必要以上の高コスト化を回避することが可能なセパレータを製造することが可能となる。
1.セパレータ
図1は、実施形態に係るセパレータ1の断面図である。
実施形態に係るセパレータ1は、図1に示すように、不織布基材層10と、不織布基材層10の少なくとも一方の面に形成されたナノ繊維層20とを備える。なお、図1においては、ナノ繊維層20は不織布基材層10の一方の面のみに形成されているが、ナノ繊維層20が不織布基材層10の両方の面に形成されていてもよい。
本明細書において「主成分」とは、対象としてみるもの(繊維等)の重量の半分より多い重量を占める成分のことをいう。また、本明細書において、「ある繊維」について「主に含む」とは、繊維の過半が「ある繊維」であることをいう。
なお、「PETからなる繊維」及び「PETからなる繊維により構成されている不織布基材層」は、不可避的に混入する不純物や微量成分等の存在まで排除するものではない。また、「PETからなる繊維」は、繊維の主骨格を構成する高分子物質がPETであるもののことをいう。「PETからなる繊維」は、形状や物性を過剰に損なわない程度であれば、非高分子成分を含有していてもよい。
不織布基材層10の厚みは、5μm~30μmの範囲内にあることが好ましい。
本明細書における「ナノ繊維(ナノファイバー)」とは、直径がおおよそ1μm以下で長さが直径の100倍以上の繊維状物質のことをいう。
なお、「PAM及びPANからなるナノ繊維により構成されている」とは、不可避的に混入する不純物や微量成分等の存在まで排除するものではない。また、「PAM及びPANからなるナノ繊維」は、ナノ繊維の主骨格を構成する高分子物質がPAM及びPANであるもののことをいう。「PAM及びPANからなるナノ繊維」は、形状や物性を過剰に損なわない程度であれば、非高分子成分(例えば、後述するTBAP)を含有していてもよい。
ナノ繊維層20の厚みは、1μm~5μmの範囲内にあることが好ましい。
また、上記所定の熱処理を行った後の電解質吸収率が200%以上であることが好ましく、300%以上であることが一層好ましい。このような構成とすることにより、高温環境にさらされても十分に多量の電解質を保持することが可能となる。
また、実施形態に係るセパレータ1においては、上記所定の熱処理を行った後の空隙率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることが一層好ましい。このような構成とすることにより、高温環境にさらされてもリチウムイオンの電導性を十分に高くすることが可能となる。
図2は、実施形態に係るセパレータの製造方法のフローチャートである。
実施形態に係るセパレータの製造方法は、図2に示すように、紡糸溶液準備工程S10と、ナノ繊維層形成工程S20とを含む。
また、紡糸溶液の溶質を重量で評価するとき、紡糸溶液は、PANよりもPAMを多く含む。紡糸溶液におけるPAMとPANとの比率は、例えば、重量比でPAM:PAN=70:30~99:1とすることができる。
紡糸溶液は、PAM及びPANの他に、電界紡糸を補助するための物質等を含有していてもよい。
例えば、紡糸溶液は、0.05wt%~0.5wt%の過塩素酸テトラブチルアンモニウム(Tetrabutylammonium Perchlorate、TBAP)をさらに含有することが好ましい。
ナノ繊維層形成工程S20においては、厚みが1μm~5μmの範囲内となるようにナノ繊維層20を形成することが好ましい。
不織布基材層10として実際に用いるサイズよりも大きいものを用いる場合においては、セパレータの製造方法は、セパレータ1を裁断等してサイズを調整する工程をさらに含んでいてもよい。
実施形態に係るリチウムイオン電池(図示せず。)は、実施形態に係るセパレータ1を備える。
本明細書における「リチウムイオン電池」は、「リチウムイオンが電気伝導を担う電池であって充電可能なもの」のことをいう。
以下、実施形態に係るリチウムイオン電池の構造を説明する。実施形態に係るリチウムイオン電池は、セパレータとして実施形態に係るセパレータ1を用いること以外は、一般に知られているリチウムイオン電池と同様の構成を有する。このため、実施形態に係るリチウムイオン電池に関しての図示は省略し、その構造についても簡単に説明するに留める。
正極としては、例えば、活物質(リチウム遷移金属酸化物)、導電材(カーボンブラック等)、バインダー(高分子物質)を含むものを用いることができる。
負極としては、例えば、活物質(代表的には黒鉛)、導電材、バインダー等を含むものを用いることができる。
電解質としては、例えば、リチウム塩と溶媒(例えば、エチレンカーボネート)とを含むものを用いることができる。また、電解質は、電解質をゲル化させるための高分子物質(ポリマー)を含んでいてもよい。
外装は、代表的なものとして、金属缶(スチール缶、アルミ缶等)及びアルミラミネートフィルムパックを挙げることができる。
実施形態に係るセパレータ1は、不織布基材層10とナノ繊維層20とを備えるため、後述する実施例に示すように、不織布基材層をセラミックでコーティングしたセパレータ(従来のセパレータ)と比較して、引張強度を高くすることが可能となる。
実施例においては、実際に本発明に係るセパレータを製造し、構造の観察、物性等に関する試験等を行った。
実施例で用いたPAM・PAN混合溶液及び不織布基材層(PETシート)は、荒川化学工業株式会社より提供されたものを用いた。
比較対象である従来のセパレータ(不織布基材層をセラミックでコーティングしたセパレータ)は、中国のGuangdong Jundong Technology社より提供されたものを用いた。
LiPF6溶液は実施例における電解質(電解液)である。LiPF6溶液としては、炭酸エチレン(Ethylene Carbonate、EC)と炭酸エチルメチル(Ethyl Methyl Carbonate、EMC)との混合溶媒(体積比でEC:EMC=1:1)にLiPF6を溶解させたものを用いた。LiPF6溶液中のLiPF6の濃度は1.0Mであった。
実施例においては、図3に示すように、キャピラリーチップ112を取り付けたシリンジ110と、コレクタ120と、電源装置130とを備える電界紡糸装置100を用いた。
シリンジ110としては、5mLプラスチックシリンジを用いた。キャピラリーチップ112としては、内径が0.6mmのものを用いた。
コレクタ120としては、接地した回転型ドラムコレクタを用いた。紡糸時には、コレクタ120をキッチンペーパー及びアルミ箔で覆った。
電源装置130としては、松定プレシジョン株式会社のHar-100*12を用いた。電源装置130のアノードとシリンジ110内の紡糸溶液との間の電気的接続には、銅線132を用いた。
印加電圧及びキャピラリーチップ112-コレクタ120間の距離(TCD)は、紡糸するナノ繊維ごとに決定した。PAM及びPANからなるナノ繊維を紡糸するときには、印加電圧及びTCDをそれぞれ17.5kV及び17cmとした。PVDFからなるナノ繊維を紡糸するときには、印加電圧及びTCDをそれぞれ14kV及び17cmとした。
引張試験機としては、株式会社エー・アンド・デイのテンシロン万能材料試験機を用いた。測定においては、10Nのロードセルを用い、チャック間距離は50mmとし、移動速度は20mm/minとした。
濡れ性の試験においては、濡れ面積の割り出しのためにImage Jを用いた。
電気炉としては、株式会社モトヤマのNHV-1515Dを用いた。
バッテリーテスティングシステムとしては、Neware Technology Ltd(中国)のCT-4008-5V6a-S1を用いた。
次に、実施例に係るセパレータの製造方法について説明する。実施例においては、本発明に係るセパレータである「PETからなる繊維により構成される不織布基材層と、PAM及びPANからなるナノ繊維により構成されるナノ繊維層とを備えるセパレータ(以下、「実施例に係るセパレータ」という。)」を製造した。また、比較用に「PETからなる繊維により構成される不織布基材層と、PVDFからなるナノ繊維により構成されるナノ繊維層とを備えるセパレータ(以下、「比較例に係るセパレータ」という。)」を製造した。
実施例に係るセパレータを製造するための紡糸溶液は、まず、PAM・PAN混合溶液と蒸留水とを重量比で8:2の割合となるように混合し、さらに、濃度が0.1wt%となるようにTBAPを添加し、その後撹拌することにより調製した。
また、比較例に係るセパレータを製造するための紡糸溶液は、DMFとアセトンとを体積比で6:4の割合となるように混合した溶媒を準備し、当該溶媒に濃度が24wt%となるようにPVDFを添加し、その後攪拌することによりを調製した。
撹拌時間は、それぞれ24hとした。
上記のようにして作製した紡糸溶液を用い、PETからなる繊維により構成されている不織布基材層の一方の面にナノ繊維層を形成し、実施例に係るセパレータ及び比較例に係るセパレータを製造した。
電界紡糸(エレクトロスピニング)は、上記電界紡糸装置100(図3参照。)を用いて実施した。紡糸時の温度は20℃~30℃とし、湿度は40%~50%とした。
図4は、実施例における各試料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図4(a)は不織布基材層のSEM画像であり、図4(b)は従来のセパレータのSEM画像であり、図4(c)は実施例に係るセパレータのSEM画像であり、図4(d)は比較例に係るセパレータのSEM画像である。
その結果、不織布基材層がマイクロサイズの繊維径を有する繊維からなることが確認できた(図4(a)参照。)。また、従来のセパレータにおいては、繊維上に粒子が付着していることが確認できた(図4(b)参照。)。なお、当該粒子はべーマイト粒子であり、セパレータの耐熱性及び濡れ性を向上させる目的で塗布されているものである。
図5は、実施例における引張試験の結果を示すグラフである。図5に示すグラフの縦軸は応力(単位:MPa)を表し、横軸はひずみ(単位:%)を表す。図5においては、実施例に係るセパレータについての結果を(a)で示し、比較例に係るセパレータについての結果を(b)で示し、従来のセパレータについての結果を(c)で示す。なお、図5のグラフにおいては、実施例に係るセパレータについての結果と比較例に係るセパレータについての結果とがほぼ重なっている。
図6は、実施例における濡れ性に関する試験結果を示す写真である。図6(a)は実施例に係るセパレータについての試験結果を示す写真であり、図6(b)は比較例に係るセパレータについての試験結果を示す写真であり、図6(c)は従来のセパレータについての試験結果を示す写真である。
濡れ性に関する試験は、セパレータを裁断して30mm×30mmの試料とし、試料にLiPF6溶液を1滴滴下し、30秒後に濡れにより変色した部分の面積である濡れ面積を画像解析ソフト(image J)で測定することにより行った。
また、実施例に係るセパレータは、比較例に係るセパレータよりも濡れ性に優れることが確認できた。表面観察の結果から確認できたように、実施例に係るセパレータにおけるナノ繊維(PAM及びPANからなるナノ繊維)は、比較例に係るセパレータにおけるナノ繊維(PVDFからなるナノ繊維)よりも繊維径が小さい。上記結果は、繊維径が小さくなるほど比表面積は増大することに起因すると考えられる。
図7は、実施例における熱安定性に関する試験結果を示す写真である。図7(a)は実施例に係るセパレータについての試験結果を示す写真であり、図7(b)は比較例に係るセパレータについての試験結果を示す写真であり、図7(c)は従来のセパレータについての試験結果を示す写真である。図7(a)~図7(c)は、所定の温度(後述)を200℃としたときの試験結果を示す写真である。
図8は、実施例における熱処理後の各試料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図8(a)は実施例に係るセパレータのSEM画像であり、図8(b)は比較例に係るセパレータのSEM画像であり、図8(c)は従来のセパレータのSEM画像である。図8(a)~図8(c)に示すSEM画像は、所定の温度(後述)を200℃としたときのSEM画像である。
熱収縮率(%)は、熱収縮率をSとし、L0を熱処理前の試料の長さとし、L1を熱処理後の試料の長さとするとき、S=((L1-L0)/L0)×100という式で求めることができる。
一方、実施例に係るセパレータ及び従来のセパレータにおいては、所定の温度を200℃としても、有意な熱収縮は確認できなかった(図7(a)及び図7(c)参照。)。つまり、実施例に係るセパレータは、リチウムイオン電池の使用において想定される温度環境では、従来のセパレータと同等の耐熱性を有していることが確認できた。
図9は、実施例における熱処理温度と電解質吸収率との関係を示す棒グラフである。図9のグラフの縦軸は電解質吸収率(単位:%)を表す。図9においては、実施例に係るセパレータについての試験結果を(a)で示し、比較例に係るセパレータについての試験結果を(b)で示し、従来のセパレータについての試験結果を(c)で示す。
図10は、実施例における熱処理温度と空隙率との関係を示す棒グラフである。図10のグラフの縦軸は空隙率(単位:%)を表す。図10においては、実施例に係るセパレータについての試験結果を(a)で示し、比較例に係るセパレータについての試験結果を(b)で示し、従来のセパレータについての試験結果を(c)で示す。
電解質吸収率(%)は、電解質吸収率をEとし、W0を浸漬前の試料の質量とし、W1を浸漬後の試料の質量とするとき、E=((W1-W0)/W0)×100という式で求めることができる。
空隙率(%)は、空隙率をPとし、WWを浸漬前の試料の質量とし、Wdを浸漬後の試料の質量とし、ρbをn-ブタノールの密度とし、Vを試料の体積とするとき、P=((WW-Wd)/ρbV)×100という式で求めることができる。
また、比較例に係るセパレータについては、熱処理前及び150℃での熱処理後においては従来のセパレータよりも高い電解質吸収率(316.67%)及び空隙率(70.3%)を有するが、200℃での熱処理後には低い電解質吸収率(69.69%)及び空隙率(42%)を有するようになったことが確認できた。
また、従来のセパレータについては、熱処理を行っても電解質吸収率及び空隙率には大きな変化は見られないことが確認できた。
また、PETからなる繊維及びPAM及びPANからなるナノ繊維は十分な耐熱性を有し、高温にさらされた後であっても高い電解質吸収率及び空隙率を維持できることが確認できた。
図11は、実施例の電池試験における放電容量を示すグラフである。図11に示すグラフの縦軸は放電容量(単位:mAh)を表し、横軸はサイクル数(試験数)を表す。図11においては、実施例に係るセパレータについての試験結果を(a)で示し、比較例に係るセパレータについての試験結果を(b)で示し、従来のセパレータについての試験結果を(c)で示す。
図12は、実施例の電池試験における充電効率を示すグラフである。図12に示すグラフの縦軸は充電効率(単位:%)を表し、横軸はサイクル数を表す。図12においては、実施例に係るセパレータについての試験結果を(a)で示し、比較例に係るセパレータについての試験結果を(b)で示し、従来のセパレータについての試験結果を(c)で示す。
また、本発明に係るセパレータが、薄さ、機械的強度、熱安定性、電解質吸収率及び空隙率について優れた特性を有することが確認できた。
さらに、本発明に係るセパレータを用いて本発明に係るリチウムイオン電池を構成できること、及び、従来のセパレータを用いた場合よりも放電容量を大きくすることが可能であることも確認できた。
例えば、上記実施形態及び各試験例において記載した工程や構成等は例示又は具体例であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
Claims (12)
- ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする繊維を主に含む不織布基材層と、
ポリアクリルアミド(PAM)及びポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするナノ繊維を主に含み、前記不織布基材層の少なくとも一方の面に形成されたナノ繊維層とを備えることを特徴とするセパレータ。 - 前記不織布基材層は、PETからなる繊維により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセパレータ。
- 前記ナノ繊維層は、PAM及びPANからなるナノ繊維により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のセパレータ。
- 前記ナノ繊維の構成材料を重量で評価するとき、前記ナノ繊維は、PANよりもPAMを多く含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセパレータ。
- 前記不織布基材層の厚みは、5μm~30μmの範囲内にあり、
前記ナノ繊維層の厚みは、1μm~5μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のセパレータ。 - 溶質の主成分としてポリアクリルアミド(PAM)及びポリアクリロニトリル(PAN)を含有する紡糸溶液を準備する紡糸溶液準備工程と、
前記紡糸溶液を用いた電界紡糸により、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする繊維を主に含む不織布基材層の少なくとも一方の面に、PAM及びPANを主成分とするナノ繊維を主に含むナノ繊維層を形成するナノ繊維層形成工程とを含むことを特徴とするセパレータの製造方法。 - 前記不織布基材層は、PETからなる繊維により構成されていることを特徴とする請求項6に記載のセパレータの製造方法。
- 前記紡糸溶液は、前記ナノ繊維を形成するための高分子成分としてPAM及びPANのみを含有することを特徴とする請求項6又は7に記載のセパレータの製造方法。
- 前記紡糸溶液の溶質を重量で評価するとき、前記紡糸溶液は、PANよりもPAMを多く含むことを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載のセパレータの製造方法。
- 前記ナノ繊維層形成工程においては、
前記不織布基材層として、厚みが5μm~30μmの範囲内にあるものを用い、
厚みが1μm~5μmの範囲内となるように前記ナノ繊維層を形成することを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載のセパレータの製造方法。 - 前記紡糸溶液は、0.05wt%~0.5wt%の過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)をさらに含有することを特徴とする請求項6~10のいずれかに記載のセパレータの製造方法。
- 請求項1~5のいずれかに記載のセパレータを備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
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