JP7297528B2 - リチウムイオン電池用電極及びリチウムイオン電池 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、電極活物質の表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆膜で被覆された被覆活物質と、電解液とを備えたリチウムイオン電池用電極であって、上記高分子化合物の酸価が、600~800であり、上記電解液が環状カーボネート及び/又は環状エステルを含み、上記環状カーボネートと上記環状エステルとの合計含有量が上記電解液中の溶媒重量に対して50重量%以上であり、かつ、上記電解液が電解質を1.5~4.5mol/Lの濃度で含み、非結着体であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極に関する。
このような構成とすることにより、被覆活物質を構成する高分子化合物は、電解液との親和性に優れ、高い濡れ性を有することができる。また、上記電解液は適当な粘性を有し、被覆活物質間に液膜を形成することができる。そのため、高分子化合物を含む被覆膜で被覆された被覆活物質は、潤滑効果(被覆活物質の位置調整能力)に優れ、移動し易くなるので、最密充填構造を形成することができる。
その結果、エネルギー密度に優れたリチウムイオン電池用電極を得ることができると考えられる。
まずは、被覆膜を構成する高分子化合物(以下、単に高分子化合物ともいう)について具体的に説明する。
被覆膜を構成する高分子化合物の酸価は、600~800である。被覆膜を構成する高分子化合物の酸価が上記範囲であると、被覆活物質が、後述する電解液との親和性に優れ、かつ、高い濡れ性を有するものとすることができる。
被覆膜を構成する高分子化合物の酸価は、650~790であることが好ましく、680~780であることがより好ましく、710~780であることがさらに好ましい。
なお、本明細書における酸価は、「JIS K 0070-1992 化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に基づいて測定された酸価を意味する。
被覆膜を構成する高分子化合物は、アクリルモノマー(a)としてカルボキシル基又は酸無水物基を有するモノマー(a1)及び下記一般式(1)で表されるモノマー(a2)を含む単量体組成物の重合体であることがより好ましい。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数4~12の直鎖又は炭素数3~36の分岐アルキル基である。]
なお、本願において(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸又はアクリル酸を意味する。
R2は、炭素数4~12の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数13~36の分岐アルキル基であることが好ましい。
炭素数4~12の直鎖アルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。
炭素数4~12の分岐アルキル基としては、1-メチルプロピル基(sec-ブチル基)、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基(tert-ブチル基)、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,2-ジメチルヘキシル基、1,3-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、4-メチルオクチル基、5-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、1,2-ジメチルヘプチル基、1,3-ジメチルヘプチル基、1,4-ジメチルヘプチル基、1,5-ジメチルヘプチル基、1,6-ジメチルヘプチル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3-メチルノニル基、4-メチルノニル基、5-メチルノニル基、6-メチルノニル基、7-メチルノニル基、8-メチルノニル基、1,1-ジメチルオクチル基、1,2-ジメチルオクチル基、1,3-ジメチルオクチル基、1,4-ジメチルオクチル基、1,5-ジメチルオクチル基、1,6-ジメチルオクチル基、1,7-ジメチルオクチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルデシル基、2-メチルデシル基、3-メチルデシル基、4-メチルデシル基、5-メチルデシル基、6-メチルデシル基、7-メチルデシル基、8-メチルデシル基、9-メチルデシル基、1,1-ジメチルノニル基、1,2-ジメチルノニル基、1,3-ジメチルノニル基、1,4-ジメチルノニル基、1,5-ジメチルノニル基、1,6-ジメチルノニル基、1,7-ジメチルノニル基、1,8-ジメチルノニル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基、1-メチルウンデシル基、2-メチルウンデシル基、3-メチルウンデシル基、4-メチルウンデシル基、5-メチルウンデシル基、6-メチルウンデシル基、7-メチルウンデシル基、8-メチルウンデシル基、9-メチルウンデシル基、10-メチルウンデシル基、1,1-ジメチルデシル基、1,2-ジメチルデシル基、1,3-ジメチルデシル基、1,4-ジメチルデシル基、1,5-ジメチルデシル基、1,6-ジメチルデシル基、1,7-ジメチルデシル基、1,8-ジメチルデシル基、1,9-ジメチルデシル基、1-エチルデシル基、2-エチルデシル基等が挙げられる。これらの中では、特に、2-エチルヘキシル基が好ましい。
炭素数13~36の分岐アルキル基としては、1-アルキルアルキル基[1-メチルドデシル基、1-ブチルエイコシル基、1-ヘキシルオクタデシル基、1-オクチルヘキサデシル基、1-デシルテトラデシル基、1-ウンデシルトリデシル基等]、2-アルキルアルキル基[2-メチルドデシル基、2-ヘキシルオクタデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ウンデシルトリデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-トリデシルペンタデシル基、2-デシルオクタデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルオクタデシル基、2-テトラデシルエイコシル基、2-ヘキサデシルエイコシル基等]、3~34-アルキルアルキル基(3-アルキルアルキル基、4-アルキルアルキル基、5-アルキルアルキル基、32-アルキルアルキル基、33-アルキルアルキル基及び34-アルキルアルキル基等)、並びに、プロピレンオリゴマー(7~11量体)、エチレン/プロピレン(モル比16/1~1/11)オリゴマー、イソブチレンオリゴマー(7~8量体)及びα-オレフィン(炭素数5~20)オリゴマー(4~8量体)等から得られるオキソアルコールから水酸基を除いた残基のような1又はそれ以上の分岐アルキル基を含有する混合アルキル基等が挙げられる。
エステル化合物(a3)を構成する炭素数1~3の1価の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合を有する構造としてはビニル基、アリル基、スチレニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
アニオン性基としては、スルホン酸基及びカルボキシル基等が挙げられる。
重合性不飽和二重結合とアニオン性基とを有するアニオン性単量体はこれらの組み合わせにより得られる化合物であり、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸及び(メタ)アクリル酸が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
アニオン性単量体の塩(a4)を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオン等が挙げられる。
特に好ましくは、(メタ)アクリル酸(a11)としてメタクリル酸を用い、エステル化合物(a21)として2-エチルヘキシルメタクリレートを用い、エステル化合物(a3)としてメタクリル酸メチルを用いた、メタクリル酸、2-エチルヘキシルメタクリレート及びメタクリル酸メチルの共重合体である。
モノマー(a2)と(メタ)アクリル酸(a11)の重量比が0/100~50/50であると、これを重合してなる重合体は、電極活物質との接着性が良好で剥離しにくく、また、後述する電解液との親和性に優れ、高い濡れ性を有することができる。
上記重量比は、5/95~40/60であることが好ましく、10/90~30/70であることがさらに好ましい。
ラジカル重合性モノマー(a5)としては、活性水素を含有しないモノマーが好ましく、下記(a51)~(a58)のモノマーを用いることができる。
(a51)炭素数13~20の直鎖脂肪族モノオール、炭素数5~20の脂環式モノオール又は炭素数7~20の芳香脂肪族モノオールと(メタ)アクリル酸から形成されるハイドロカルビル(メタ)アクリレート
上記モノオールとしては、(i)直鎖脂肪族モノオール(トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール等)、(ii)脂環式モノオール(シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘプチルアルコール、シクロオクチルアルコール等)、(iii)芳香脂肪族モノオール(ベンジルアルコール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(a53-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)又はジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド(N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等)、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド[ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等)]
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート{3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)等}
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-又は4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
(a54-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18又はそれ以上のオレフィン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン等)、炭素数4~10又はそれ以上のジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)等
炭素数4~18又はそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン及びリモネン)、インデン
炭素数8~20又はそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]
芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-又はジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
脂肪族ビニルエーテル[炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル(ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテル等)、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル(ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等)、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)]、芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分岐鎖又は脂環式の基)
モノマーの含有量が上記範囲内であると、電解液との馴染み性が良好となる。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
検出器:RI
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
重合開始剤の使用量は、重量平均分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)で行われる。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
加熱温度は、架橋剤の種類に応じて調整されるが、架橋剤としてポリエポキシ化合物(a’1)を用いる場合は好ましくは70℃以上であり、ポリオール化合物(a’2)を用いる場合は好ましくは120℃以上である。
SP値は、Fedors法によって計算される。SP値は、次式で表せる。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
但し、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm3)を表す。
また、ΔH及びVは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(151~153頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΔH)とモル体積の合計(V)を用いることができる。
SP値は、この数値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(相溶性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
なお、膨潤度は、以下の方法により測定することができる。
被覆膜を構成する高分子化合物を溶解した高分子化合物溶液を、水平なガラス板上に塗布して室温で半日自然乾燥を行う。次に150℃に加熱した減圧乾燥機中に3時間静置し、室温まで冷却した後、10×40×0.2mmの寸法に切り出した高分子化合物を試験片とし、この試験片を上記電解液に50℃で3日間浸漬させて飽和吸液状態とする。
その後、試験片の吸液前後の重量変化から下記式によって膨潤度を求めることができる。
膨潤度[%]=[(吸液後の試験片重量-吸液前の試験片重量)/吸液前の試験片重量]×100
なお、被覆膜を構成する高分子化合物の電解液に対する接触角は、被覆膜を構成する高分子化合物を溶解した高分子化合物溶液を、水平なガラス板上に塗布した後、乾燥して平板状に成形した後、該平板上に上記電解液を1μL滴下して得た液滴について、全自動接触角計CA-W(協和界面化学製)を用いて測定することができる。
なお、電池の内部抵抗等の観点から、上記被覆膜は導電助剤を含んでなることが好ましい。
導電助剤として好ましいものとしては、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはカーボンである。
またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電助剤のうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
電極活物質としては、正極活物質又は負極活物質を用いることができる。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属元素が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び遷移金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
珪素系負極活物質としては、例えば、酸化珪素(SiOx)、Si-C複合体、Si-Al合金、Si-Li合金、Si-Ni合金、Si-Fe合金、Si-Ti合金、Si-Mn合金、Si-Cu合金及びSi-Sn合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
Si-C複合体としては、炭化珪素、炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、並びに、珪素粒子、酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの等が含まれる。
珪素及び/又は珪素化合物粒子は、単一の粒子(一次粒子ともいう)であっても、一次粒子が凝集して得られる複合粒子(すなわち、珪素及び/又は珪素化合物からなる1次粒子が凝集して得られた2次粒子)を形成していてもよい。複合粒子は、珪素及び/又は珪素化合物粒子の一次粒子がその吸着力によって凝集している場合と、一次粒子が他の材料を介して吸着することで凝集している場合がある。一次粒子が他の材料を介して結着することで複合粒子を形成する方法としては、例えば、珪素及び/又は珪素化合物粒子の1次粒子と、被覆膜を構成する高分子化合物とを混合する方法が挙げられる。
電極活物質の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法ともいう)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。レーザー回折・散乱法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法であり、体積平均粒子径の測定には、日機装株式会社製のマイクロトラック等を用いることができる。
被覆膜を構成する高分子化合物、電極活物質及び導電助剤を混合する順番は特に限定されず、例えば、事前に混合した被覆膜を構成する高分子化合物と導電助剤からなる樹脂組成物を電極活物質とさらに混合してもよいし、被覆膜を構成する高分子化合物、電極活物質及び導電助剤を同時に混合してもよいし、電極活物質に被覆膜を構成する高分子化合物を混合し、さらに導電助剤を混合してもよい。
被覆膜を構成する高分子化合物の重量割合が、電極活物質の重量に対して0.05~0.75重量%であることがより好ましく、0.1~0.5重量%であることがさらに好ましい。
ここで、非結着体とは、被覆活物質が結着剤(バインダともいう)により位置を固定されておらず、被覆活物質同士及び被覆活物質と集電体が不可逆的に固定されていないことを意味する。
すなわち、被覆活物質は、それぞれ外力に応じて移動できる状態である。
本発明のリチウムイオン電池用電極では、被覆活物質が位置調整能力に優れるので、最密充填構造を好適に形成することができ、エネルギー密度に優れる。
また、従来の結着剤を使用しない電極の作製過程では、電極活物質を含む電解液をプレスする工程がある。しかしながら、電極が大面積(例えば、200cm2以上)である場合には、均一に高いプレス圧をかけることが困難であるため、電極を十分に高密度化することができないといった課題があった。一方、本発明のリチウムイオン電池用電極では、被覆活物質が位置調整能力に優れるので、プレス圧が低くてもエネルギー密度に優れる。
このような電解液は、適当な粘性を有するので、被覆活物質間に液膜を形成することができ、被覆活物質に潤滑効果(被覆活物質の位置調整能力)を付与することができる。
環状カーボネートと環状エステルとの合計含有量は、電解液中の溶媒重量に対して60重量%以上含むことが好ましく、70重量%以上含むことがより好ましく、80重量%以上含むことがさらに好ましい。
また、電解質は、1.8~4.0mol/Lの濃度で含むことが好ましく、2.0~3.5mol/Lの濃度で含むことがより好ましい。
なお、上記の環状カーボネートと環状エステルとの合計含有量は、以下の式により求められる値を意味する。
環状カーボネートと環状エステルとの合計含有量[%]=[環状カーボネート及び環状エステルの重量/(環状カーボネート及び環状エステルの重量+環状カーボネート及び環状エステル以外の溶媒の重量)]×100
環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びδ-バレロラクトン等を挙げることができる。
これらの溶媒は、2種以上を混合して用いてもよい。
環状カーボネート及び環状エステル以外の溶媒としては、リチウムイオン電池用に用いられる非水溶媒を用いることができ、例えば、鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン及びこれらの混合物を用いることができる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。
アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。
スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。
環状カーボネート及び環状エステル以外の溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、被覆膜の任意成分である導電材料と同様のものを好適に用いることができる。
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
また、集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成してバイポーラ(双極)型電極を作製し、バイポーラ(双極)型電極をセパレータと積層してセル容器に収納し、電解液を注入し、セル容器を密封することでも得られる。
また、正極、負極のいずれか一方に本発明のリチウムイオン電池用電極を用いてもよく、正極、負極を共に本発明のリチウムイオン電池用電極としてリチウムイオン電池としてもよい。
このような本発明のリチウムイオン電池用電極を備えることを特徴とするリチウムイオン電池もまた、本発明の一態様である。
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコにDMF150.0部を仕込み75℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル10.0部、アクリル酸90.0部及びDMF50部を配合した単量体組成物と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8部をDMF30部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃で反応を3時間継続した。次いで80℃に昇温し反応を3時間継続し樹脂濃度30%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液はテフロン(登録商標)製のバットに移して150℃、0.01MPaで3時間の減圧乾燥を行いDMFを留去して共重合体を得た。この共重合体をハンマーで粗粉砕した後、乳鉢にて追加粉砕して、粉末状の高分子化合物(P-1)を得た。高分子化合物(P-1)に使用したエステル化合物(a11)及びアニオン性単量体(a12)の種類と量を表1に示す。また、得られた高分子化合物について測定した酸価、重量平均分子量、SP値、膨潤度、及び、電解液に対する接触角を表1に示す。
装置:自動滴定装置 COM-1700(平沼産業社製)
JIS K 0070-1922に記載の電位差滴定法に準じて、自動滴定装置[COM-1700(平沼産業社製)]を用いて測定した。
装置:Alliance GPC V2000(Waters社製)
溶媒:オルトジクロロベンゼン、DMF、THF
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PL g e l 10um,MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃
高分子化合物のSP値は、Fedors法によって計算することができる。SP値は、次式で表せる。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
但し、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm3)を表す。
また、ΔH及びVは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(151~153頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΔH)とモル体積の合計(V)を用いた。
高分子化合物をDMFに溶解させて高分子化合物溶液を得た。その後、得られた高分子化合物溶液を水平なガラス板上に塗布して室温で半日自然乾燥を行った。次に150℃に加熱した減圧乾燥機中に3時間静置し、室温まで冷却した後、10×40×0.2mmの寸法に切り出した高分子化合物を試験片とし、この試験片を後述する電解液(X-1)に50℃で3日間浸漬させて飽和吸液状態の高分子化合物を準備した。
試験片の吸液前後の重量変化から下記式によって膨潤度を求めた。
膨潤度[%]=[(吸液後の試験片重量-吸液前の試験片重量)/吸液前の試験片重量]×100
高分子化合物をDMFに溶解させて高分子化合物溶液を得た。得られた高分子化合物溶液を水平なガラス板上に塗布した後、乾燥を行い、平板状に成形した。その後、平板状に成形された高分子化合物上に後述する電解液(X-1)を1μL滴下して得た液滴について、全自動接触角計CA-W(協和界面化学製)を用いて接触角を測定した。
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(体積比率1:1)にLiN(FSO2)2を2.0mol/Lの割合で溶解させて電解液(X-1)を作製した。
[被覆活物質の作製]
電極活物質粉末(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末、体積平均粒子径4μm)100部を万能混合機ハイスピードミキサーFS25[アーステクニカ製]に入れ、室温、720rpmで撹拌した状態で、上記で得られた高分子化合物(P-1)をDMFに3.0重量%の濃度で溶解して得られた高分子化合物溶液10.0部を2分かけて滴下し、さらに5分撹拌した。
次いで、撹拌した状態で導電剤としてアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]6.2部を分割しながら2分間で投入し、30分撹拌を継続した。その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を150℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。得られた粉体を目開き212μmの篩いで分級し、実施例1に係る被覆活物質を得た。
2軸押出機にて、ポリプロピレン[商品名「サンアロマーPL500A」、サンアロマー(株)製]70部、カーボンナノチューブ[商品名:「FloTube9000」、CNano社製]25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業(株)製]5部を200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。
得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することで、膜厚100μmの樹脂集電体用導電性フィルムを得た。次いで、得られた樹脂集電体用導電性フィルムを(17.0cm×17.0cm)となるように切断し、片面にニッケル蒸着を施した後、電流取り出し用の端子(5mm×3cm)を接続した樹脂集電体を得た。
電解液(X-1)42部と炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm]4.2部とを遊星撹拌型混合混練装置{あわとり練太郎[(株)シンキー製]}を用いて2000rpmで5分間混合し、続いて上記電解液30部と上記の被覆活物質206部を追加した後、更にあわとり練太郎で2000rpmで2分間混合し、上記電解液を20部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで1分間行い、更に電解液(X-1)2.3部を更に追加した後あわとり練太郎による撹拌を2000rpmで2分間混合して、電極活物質スラリーを作製した。得られた電極活物質スラリーを活物質目付量が80mg/cm2となるよう、上記樹脂集電体の片面に塗布し、1.4MPaの圧力で約10秒プレスし、厚みが340μmの実施例1に係るリチウムイオン電池用電極(16.2cm×16.2cm)を作製した。
得られた正極活物質電極を、セパレータ(セルガード製#3501)を介し、対極Li金属と組み合わせ、ラミネートセルを作製した。
得られたリチウムイオン電池用電極について、電極単位体積(cm3)当たりの放電容量を測定し、470mAh/cm3以上であったものを〇と評価し、470mAh/cm3未満であったものを×と評価した。
ここで放電容量は、得られた電池を、25℃に温調した恒温槽に入れ、0.5CでCCCV充電(上限4.2V、電流値5%カット)、0.5CでCC放電(下限2.5V)と充放電した際の放電容量を指す。
また、得られた電極活物質スラリーを活物質目付量が160mg/cm2となるよう、樹脂集電体の片面に塗布したこと以外は実施例6と同様にして実施例8に係るリチウムイオン電池用電極を得た。
実施例1と同プレス条件で到達した電極の厚みは、表2、表3に記載通りとなった。
なお、高分子化合物の電極活物質に対する重量割合は、高分子化合物を溶解させる溶媒の量を変更することで調整した。
一方、比較例に係るリチウムイオン電池用電極では、エネルギー密度が不十分であった。
Claims (5)
- 電極活物質の表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆膜で被覆された被覆活物質と、電解液とを備えたリチウムイオン電池用電極であって、
前記高分子化合物の酸価が、600~800であり、
前記電解液が環状カーボネート及び/又は環状エステルを含み、前記環状カーボネートと前記環状エステルとの合計含有量が前記電解液中の溶媒重量に対して50重量%以上であり、かつ、前記電解液が電解質を1.5~4.5mol/Lの濃度で含み、
前記高分子化合物の重量割合が、前記電極活物質の重量に対して0.01~1重量%であり、
非結着体であることを特徴とするリチウムイオン電池用電極。 - 前記電解質が、LiN(FSO2)2である請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極。
- 厚みが、150~600μmである請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用電極。
- 樹脂集電体を更に備える請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極。
- 請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン電池用電極を備えることを特徴とするリチウムイオン電池。
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