JP7295324B1 - フッ化物イオンとリン酸イオンの選択除去性を持つ無機系凝集剤によるヨウ素成分含有水溶液の製造方法 - Google Patents

フッ化物イオンとリン酸イオンの選択除去性を持つ無機系凝集剤によるヨウ素成分含有水溶液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】凝集法により非処理水中のフッ化物イオン濃度および/またはリン酸イオン濃度を低減しつつもヨウ化物イオン濃度を維持できるヨウ素成分含有水溶液の製造方法を提供する。【解決手段】本発明のヨウ素成分含有水溶液の製造方法は、ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、非処理水中から凝集物を除去し、非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含むものである。【選択図】図1

Description

本発明は、フッ化物イオンとリン酸イオンの選択除去性を持つ無機系凝集剤によるヨウ素成分含有水溶液の製造方法に関する。
これまでヨウ化物イオンおよびフッ化物イオンを含む非処理液中からヨウ化物イオンを選択的に回収する手法について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、電気透析法により、ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよびホウ素イオンの少なくとも一方を含む非処理液中から、ヨウ化物イオンを分離する手法が記載されている(特許文献1の請求項1等)。
特開2022-97182号公報
電気透析法により、ヨウ化物イオンおよびフッ化物イオンを含む非処理液中からヨウ化物イオンを選択的に回収することが一般的な手法として知られていた。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、電気透析法では非処理水中のフッ化物イオン濃度を十分に低減できないことが判明し(上記特許文献1の比較例)、電気透析法とは異なる別の手法の検討を進めた。
本発明者らはさらに検討した結果、フッ化物イオンと選択的に反応して凝集物を形成するが、ヨウ化物イオンとは選択的に反応しない特性を有する無機系凝集剤を見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、ヨウ化物イオン非選択性の無機系凝集剤を使用すると、ヨウ化物イオンとフッ化物イオンとを含む非処理水中からフッ化物イオンを選択的に分離できるため、フッ化物イオンの濃度を十分に低減できる凝集法を見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明者らの検討によれば、ヨウ化物イオン非選択性の無機系凝集剤を用いた凝集法により、フッ化物イオンと同様に、リン酸イオンも、ヨウ化物イオンに対して選択的に分離できることが見出された。
本発明の一態様によれば、以下のヨウ素成分含有水溶液の製造方法、無機系凝集剤、およびリサイクル水溶液が提供される。
1. ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと前記無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、
前記非処理水中から前記凝集物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含む、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
2. 1.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記凝集工程において、前記無機系凝集剤を含む前記非処理水のpHが、3.0以上11.5以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
3. 1.または2.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
レーザー回折散乱法を用いて体積頻度粒度分布を測定し、前記体積頻度粒度分布における粒子径が小さい側から50%累積したときの粒子径をD50としたとき、前記凝集物のD50が、1μm以上80μm以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
4. 1.~3.のいずれか一つに記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記無機系凝集剤が、セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤、アルミニウム系凝集剤、およびカルシウム系凝集剤および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIa(mg/L)とし、前記処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIb(mg/L)としたとき、
(CIb/CIa)×100により算出されるヨウ化物イオンの回収率が90%以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
6. 5.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記非処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFa(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPa(mg/L)とし、前記処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFb(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPb(mg/L)としたとき、
式[100-〔(CFa-CFb)/CFa〕×100]により算出されるフッ化物イオンの残存率が5%以下であるか、
または、式[100-〔(CPa-CPb)/CPa〕×100]により算出されるリン酸イオンの残存率が5%以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
7. 6.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
[前記ヨウ化物イオンの回収率/前記フッ化物イオンの残存率]または[前記ヨウ化物イオンの回収率/前記リン酸イオンの残存率]により算出される、前記無機系凝集剤のヨウ化物イオン非選択指数が、1.5以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
9. ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に用いる無機系凝集剤であって、
フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンに対して、ヨウ化物イオンよりも選択的に反応し、凝集物を生成させる、ヨウ化物イオン非選択性の無機系凝集剤。
10. ヨウ化物イオンを含むリサイクル水溶液であって、
当該リサイクル水溶液中の前記ヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上であり、
当該リサイクル水溶液に含まれるフッ化物イオンの濃度および/またはリン酸イオンの濃度が8mg/L以下である、リサイクル水溶液。
11. 10.のリサイクル水溶液であって、
当該リサイクル水溶液中に、セリウムイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオンの少なくとも一つを含む、リサイクル水溶液。
本発明によれば、凝集法により非処理水中のフッ化物イオン濃度および/またはリン酸イオン濃度を低減しつつもヨウ化物イオン濃度を維持できるヨウ素成分含有水溶液の製造方法、それに用いる無機系凝集剤、およびリサイクル水溶液が提供される。
本実施形態のヨウ素回収システムの構成の一例を模式的に示す図である。 本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法の一例を示すフロー図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法の概要を説明する。
本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法は、ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、非処理水中から凝集物を除去し、非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含む。
本発明者らの知見によれば、有機または無機系凝集剤の中から、ヨウ化物イオン非選択性という凝集特性を備える無機系凝集剤が見出された。ヨウ化物イオン非選択性の無機系凝集剤は、フッ化物イオンと選択的に反応して凝集物を形成するが、ヨウ化物イオンとは選択的に反応しない。このようなヨウ化物イオン非選択性は、リン酸イオンとヨウ化物イオンとが共存する溶液においても確認された。
生成した凝集物は、固液分離法等により容易に系外に除去できる。
このため、本実施形態の凝集法を利用したヨウ素成分含有水溶液の製造方法によれば、非処理水に含まれるフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンを選択的に分離して、フッ化物イオン濃度および/またはリン酸イオン濃度を低減しつつも、ヨウ化物イオンを残存させることが可能になる。
また、凝集工程において、無機系凝集剤を含む非処理水中のpHを所定範囲内とすることにより、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンの除去率を高められる。
また、凝集工程において、無機系凝集剤の添加量を所定範囲内とすることにより、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンの除去率を高めつつも、凝集物に由来する汚泥発生量を抑制できる。
また、凝集工程において、無機系凝集剤の種類を適切に選択することにより、凝集物の大きさ(フロックサイズ)を制御できるので、固液分離時における濾過性を向上できる。
本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法により得られた処理水(リサイクル水溶液)の一例は、ヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上であり、フッ化物イオン濃度が8mg/L以下および/またはリン酸イオン濃度がリン元素換算で8mg/L以下であり、必要に応じてpHが6.8以上7.8以下となる。このようなリサイクル水溶液は、フッ化物イオン濃度やリン酸イオン濃度の観点から、水質汚濁防止法に基づく排水基準に適した溶液となる。
別の態様では、リサイクル水溶液中のヨウ化物イオン濃度は、とくに限定されないが、例えば、5g/L以上でもよく、7g/L以上でもよく、経済的観点から自由に選択可能である。
また別の形態では、リサイクル水溶液中のフッ化物イオン濃度は、日本国が定める排出基準や市町村が定める排出基準に準じて設定できるが、これに限定されず、海外で使用されるリサイクル水溶液においては、海外毎に定められる排出基準に準じて設定できる。
リサイクル水溶液中のフッ化物イオン濃度の一例としては、例えば、8mg/L以下、好ましくは6mg/L以下、より好ましくは4mg/L以下である。
また、リサイクル水溶液中のリン酸イオン濃度の一例としては、例えば、リン元素換算で8mg/L以下、好ましくは6mg/L以下、より好ましくは4mg/L以下である。
また別の形態では、フッ化物イオン濃度が8mg/L以下のリサイクル水溶液のpHは、例えば、3.0以上8.5以下、好ましくは5.0以上8.0以下、より好ましくは7.0以上7.5以下である。
また、リン酸イオン濃度がリン元素換算で8mg/L以下のリサイクル水溶液のpHは、例えば、4.5以上6.0以下、好ましくは5.0以上6.0以下、より好ましくは5.0以上5.5以下である。
また別の態様では、リサイクル水溶液は、凝集法により得られるため、適用される各種用途における要求特性を損なわない限り、無機系凝集剤の一部を含んでもよい。
例えば、リサイクル水溶液の一例は、セリウムイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、および鉄イオンの少なくとも一つを含んでもよい。
また、リサイクル水溶液の一例は、セリウムイオン、ジルコニウムイオン、およびカルシウムイオンの少なくとも一つの濃度が例えば3mg/L以上となるように構成されてもよい。
別の形態では、リサイクル水溶液の一例は、アルミニウムイオンの濃度が例えば1mg/L以上となるように構成されてもよい。
本明細書中、pHの測定には、pH電極と比較電極の間に生じる電位差によって溶液中のpHを測定する「電極法」を用いる。
また、ヨウ化物イオン濃度の測定は、イオンクロマト法、酸化還元滴定法、イオン電極法、紫外吸光光度法、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)等を用いる。
フッ化物イオン濃度の測定には、比色分析法、ランタン-アリザリンコンプレキソン吸光光度法、イオンクロマト法、イオン電極法等を用いる。
リン酸イオン濃度の測定には、ICP発光分光分析法、モリブデン青吸光光度法、イオンクロマト法等を用いることができる。なお、ICP発光分光分析法の場合は、リン酸イオン(PO )の分子量を「94.97」、リン元素の原子量を「30.97」とした上で、リン元素の測定値からリン元素換算のリン酸イオンの濃度を算出する。
他の元素濃度の測定には、イオンクロマト法、ICP発光分光分析法等を用いる。
なお、測定サンプルは、液温が25℃程度でよく、必要なら、後述のpH調整剤を用いて所定範囲内にpHを調整したものを使用する。
以下、本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法の構成を詳述する。
図2は、本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法の一例を示すフロー図である。
ヨウ素成分含有水溶液の製造方法の一例は、図2に示すように、非処理水1に無機系凝集剤を接触させ、凝集物を得る凝集反応工程と、生成された凝集物を非処理水1から除外し、処理水5を得る固液分離工程を含む。
図2のヨウ素成分含有水溶液の製造方法の各工程について、図1のヨウ素回収システム100を用いて説明する。
図1は、本実施形態のヨウ素回収システムの構成の一例を模式的に示す図である。
ヨウ素回収システム100は、図1に示すように、反応槽10および固液分離槽20を備える。
これらの槽は、それぞれ個別の槽として設け、ライン等により接続して連続処理してもよいし、同一の槽として回分処理してもよい。処理水量が多いときは連続処理が好ましい。
まず、ヨウ素回収システム100中の反応槽10に、非処理水1および無機系凝集剤2を導入する。そして、反応槽10内において、非処理水1と無機系凝集剤2とを含む混合液を得る。
非処理水1および無機系凝集剤2を導入する方法は、とくに限定されないが、非処理水1を導入した後、無機系凝集剤2を導入してもよく、無機系凝集剤2が存在する反応槽10に非処理水1を導入してもよい。なお、無機系凝集剤2は、添加量の全量を一括して導入してもよいが、複数回に分けて導入してもよい。
反応槽10は、攪拌器を備えてもよい。非処理水1および無機系凝集剤2を含む混合液を所定の攪拌速度で攪拌することにより、凝集反応を促進できる。攪拌速度は、無機系凝集剤2が適度に分散するように調整する。
反応槽10は、ヒーターを備えてもよい。反応槽10を外気温度下で使用してもよいが、外気温度が低い場合には、上記混合液の液温が約5~30℃程度の温度になるまで反応槽10内を加熱してもよい。
非処理水1は、ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を少なくとも含む液体であればとくに限定されないが、工業廃水等の廃液が用いられる。
廃液の具体例として、例えば、電子材料製造工程廃液並びに製造設備洗浄廃液、化学反応において排出される廃液、医薬品合成等の化学合成で発生する廃液、工業用メッキ廃液等を含む廃液または廃固形物を溶解した溶液等が挙げられる。
また、非処理水1には、非処理水1に含まれるフッ化物イオン濃度やリン酸イオン濃度が各国における排水基準を超えるものを対象とする。
無機系凝集剤2を添加する前の非処理水1中のフッ化物イオン濃度は、各国の排出基準を超えるものが例えば、8mg/L超えであってもよい。
また、無機系凝集剤2を添加する前の非処理水1のリン酸イオン濃度は、例えば、リン元素換算で8mg/L超えであってもよい。
本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法におり、このような高濃度のフッ化物イオン濃度および/またはリン酸イオン濃度を含む非処理水1において、ヨウ化物イオン濃度の低減を抑制しつつも、フッ化物イオン濃度やリン酸イオン濃度を上記の排水基準以下となるように低減できる。
非処理水1中におけるヨウ化物イオン濃度は、とくに限定されないが、例えば、5g/L以上、7g/L以上でもよく、好適には経済性の観点か適宜選択されてもよい。
非処理水1中に含まれるヨウ化物イオンの濃度が高いほど、経済的に有利になる。
無機系凝集剤2は、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンに対して、ヨウ化物イオンよりも選択的に反応して凝集物を生成させる、ヨウ化物イオン非選択性を有するものを使用する。ヨウ化物イオン非選択性の無機系凝集剤2は、非処理水1の処理に好適に用いることができる。
無機系凝集剤2は、例えば、セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤、アルミニウム系凝集剤、およびカルシウム系凝集剤および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上の金属塩凝集剤を含んでもよい。
この中でも、適度な大きさの凝集物(フロックと呼称されることもある。)を形成できるため、固液分離時における濾過性が向上する観点から、セリウム系凝集剤やアルミニウム系凝集剤を用いることができる。また、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンの除去能に優れ、凝集剤の使用量や凝集物の発生量を低減できる観点から、セリウム系凝集剤を用いることが好ましい。
無機系凝集剤は、形態が限定されないが、粉末、溶液(有効成分が溶媒に溶解した溶解液)、および分散体(有効成分が溶媒に溶解していないスラリー)のいずれかである。この中でも、無機系凝集剤の溶液や分散体を用いることによりハンドリングを向上できる。また無機系凝集剤の溶液を用いることにより溶液凝集反応性を高められる。
無機系凝集剤が溶液あるいは分散体の場合、凝集対象を凝集させる有効成分の濃度の下限は、処理量に応じて適宜調整可能だが、例えば、5質量%以上でもよく、10質量%以上でもよく、20質量%以上としてもよい。有効成分の濃度の上限は、とくに限定されないが、ハンドリング性の観点から、99質量%以下でもよく、80質量%以下でもよく、50質量%以下でもよい。
また、溶液に含まれる無機系凝集剤の有効成分は、後述の凝集剤の具体例を用いることができる。
セリウム系凝集剤は、例えば、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウム等が用いられる。この中でも、溶媒溶解性の観点から、炭酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウムが好ましい。セリウム系凝集剤の一例として、特許第6008455号に記載のセリウム化合物の溶液が使用できる。このセリウム化合物の溶液の市販品として、例えば、日本海水社製のREAD-CX(L)が挙げられる。
アルミニウム系凝集剤は、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、塩化アルミニウム等を用いることができる。
カルシウム系凝集剤は、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム(消石灰)等を用いることができる。
鉄系凝集剤は、例えば、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄等を用いることができる。
上記例示の無機系凝集剤を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機系凝集剤を複数回反応槽10に添加する場合、同一の凝集剤を添加してもよく、2回目以降、別の凝集剤を併用または別の凝集剤に変更してもよい。
無機系凝集剤2の添加量は、様々な処理条件(凝集反応時のpH、フッ化物イオン残存率、リン酸イオン残存率、ヨウ化物イオン回収率、汚泥発生量等)に応じて決定できるが、一例として、下記の吸着量を指標として決めることも可能である。
上記の吸着量は、無機系凝集剤2の添加量と、これにより除去された非処理水1中のフッ素イオン量および/またはリン酸イオン量との関係に基づいて予め算出できる。
まず、無機系凝集剤2の添加量(g)中における有効成分の重量(g)を算出する。具体的には、無機系凝集剤2の添加量をM(g)、粉末、溶液あるいは分散体中の無機系凝集剤2における有効成分の濃度(重量%)をCCXとしたとき、有効成分の重量は、M×CCXから算出する。例えば、酸化セシウム換算で28重量%のセリウムを含む溶液を、溶液の無機系凝集剤2として使用した場合、有効成分がセリウムであり、CCXは28重量%×〔140/(140+16×2)〕から算出した「22.8重量%」となる。ただし、Ceの原子量を140、Oの原子量を16する。
続いて、無機系凝集剤2の添加量(g)と添加したときの、非処理水1中から除去されたフッ素イオン量および/またはリン酸イオン量を測定する。除去されたフッ素イオンおよび/またはリン酸イオンは無機系凝集剤2の有効成分と反応し凝集物となる。除去されフッ素イオン量からフッ素元素(F)換算の除去フッ素元素量C(g)を算出し、また除去されたリン酸イオン量からリン酸(PO)換算の除去リン酸量CP04(g)を算出する。
そして、上記のF吸着量(g/g)は、C/(M×CCX)から算出する、また、上記のPO吸着量(g/g)は、CP04/(M×CCX)から算出する。
F吸着量の上限は、無機系凝集剤2中の有効成分によるフッ素イオンの飽和吸着量以下になるが、例えば、400以下、好ましくは390以下、より好ましくは380以下である。一方、F吸着量の下限は、とくに限定されず、経済的観点から設定できるが、0.1以上、1以上、または10以上としてもよい。
PO吸着量の上限は、無機系凝集剤2中の有効成分によるリン酸イオンの飽和吸着量以下になるが、例えば、800以下、好ましくは780以下、より好ましくは760以下である。一方、PO吸着量の下限は、とくに限定されず、経済的観点から設定できるが、0.1以上、1以上、または10以上としてもよい。
本実施形態では、無機系凝集剤2の添加量を、上記のF吸着量以下、またはPO吸着量以下となるように調整することが可能である。
反応槽10に、必要に応じて、pH調整剤3を導入する。
pH調整剤3により、反応槽10中の混合液におけるpHを例えば3~12程度に調整する。
pH調整剤3の添加タイミングは、とくに限定されないが、非処理水1と無機系凝集剤2とを混合する前に、あるいは混合した後に非処理水1中に添加してもよい。pH調整剤3は、1回導入してもよいが、複数回導入してもよい。例えば、非処理水1に、pH調整剤3、無機系凝集剤2を順番に添加した後、pH調整の再調整ために、pH調整剤3を追加して導入してもよい。
反応槽10中の混合液におけるpHは、無機系凝集剤の種類および吸着対象のイオン種に応じて適当な範囲に調整する。
無機系凝集剤2(例えば、セリウム系凝集剤)およびフッ化物イオンを含む非処理水1のpHは、例えば、3.0以上11.5以下、好ましくは3.5以上10.0以下、より好ましくは6.0以上8.0以下である。pHを上記上限値以下とすることにより、フッ化物イオンの除去率を高められる。また汚泥発生量を抑制できる。pHを上記下限値以上とすることにより、凝集物の沈降性を高められる。
また別の形態では、無機系凝集剤2(例えば、セリウム系凝集剤)およびリン酸イオンを含む非処理水1のpHは、例えば、3.0以上11.0以下、好ましくは3.5以上9.0以下、より好ましくは4.0以上7.0以下である。pHを上記上限値以下とすることにより、リン酸イオンの除去率を高められる。また汚泥発生量を抑制できる。pHを上記下限値以上とすることにより、凝集物の沈降性を高められる。
pH調整剤3は、公知の酸性剤またはアルカリ剤を使用する。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸性剤は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸等の無機酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、テレフタル酸等の有機酸を用いることができる。好ましくは、塩酸、硫酸等の無機鉱酸とする。
アルカリ剤は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等を用いることができる。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化アルカリとする。
反応槽10に、必要に応じて、高分子凝集剤を導入する。
高分子凝集剤により、微粒の凝集物(フロック)を適当なサイズに肥大化させ、分離性を高められる。また、凝集物を早く沈降できる。
高分子凝集剤は、公知のものを採用できるが、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アニオン性高分子凝集剤として、例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミドの部分加水分解物の塩等が挙げられる。
カチオン性高分子凝集剤として、例えば、ポリエチレンイミン、ポリチオ尿素、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
ノニオン系高分子凝集剤として、例えば、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
この中でも、高分子凝集剤としては、例えば、アニオン性高分子凝集剤を用いてもよい。
反応槽10内の混合液中において、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと無機系凝集剤2とが反応して、凝集物が生じる。そして、凝集物を含む非処理水1(混合液)を、固液分離槽20に導入する。
固液分離槽20において、非処理水1(混合液)から凝集物を汚泥4として分離し、凝集物を含まない処理水5を回収する。
固液分離槽20には、特に制限はなく、例えば、沈殿槽、浮上槽、ろ過器、遠心分離機、膜分離装置など任意の固液分離装置を使用することができる。また、沈殿槽や浮上槽を用いたときは、後段に砂ろ過などのろ過装置を設置してもよい。凝集物の全部が沈降する場合(例えば、凝集物を含む非処理水1をpHが約7以上の中性以上とする場合)には、沈降分離で十分な固液分離が可能である。また、凝集物が一部沈降しない場合には、膜ろ過などの液ろ過分離を採用するのが好ましい。
レーザー回折散乱法で測定される凝集物の体積頻度粒度分布において、粒子径が小さい側から10%、50%、90%累積したときの粒子径を、それぞれ、D10、D50、D90とする。
凝集物のD50は、例えば、1μm以上80μm以下、好ましくは2μm以上60μm以下、より好ましくは3μm以上50μm以下である。D50を上記下限値以上とすることにより、固液分離槽20中の凝集物の濾過性を高められる。また、D50を上記上限値以下とすることにより、固液分離槽20中の凝集物の沈降性を向上できる。
また、凝集物の(D90-D10)/D50は、例えば、1.0以上5.0以下、好ましくは1.1以上4.0以下、より好ましくは1.2以上3.5以下である。このような範囲内とすることにより、固液分離槽20中の凝集物の濾過性および沈降性のバランスを図ることができる。
上記の凝集物のレーザー回折散乱法による粒度分布は、以下の手順により測定できる。
まず、ビーカー中の非処理水に所定量の無機系凝集剤を添加した後、スターラーを用いて300rpmで攪拌し、苛性ソーダまたは塩酸を使用してpHを約7に調整する。
続いて、pH調整後10分程度撹拌を継続した後に停止させ、凝集物(析出物)を沈降させる。
ビーカー中の混合液を、ろ紙(目開き:1μm程度、JIS規格3801:5種C)を用いて過処理を行い、ろ紙上の濾過残分(汚泥)を110℃で2時間乾燥させる。
得られた濾過残分をイオン交換水に分散させ、周波数42kHz、照射時間180秒の条件にて超音波処理を施した後、かかる分散体中の凝集物の粒度分布について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、SALD-2300)を用いて測定する。
なお、反応槽10中の混合液の上澄みを回収し、その上澄みを別の反応槽に導入し、この別の反応槽に無機系凝集剤を添加して、2回以上の凝集反応処理を施してもよい。
また、別の反応槽は、攪拌器付きのタンクでもよいが、無機系凝集剤が充填されたカラムでもよい。カラムに上澄みを通液することで凝集反応処理を行うことができる。
そして、別の反応槽から回収された混合液(非処理水1)を、固液分離槽20に導入する。
分離された沈殿物(汚泥4)は、ヨウ素回収システム100系外に排出される。排出された汚泥4は、乾燥させた後、汚泥処理が施される。汚泥4の発生量が少ないほど、汚泥処理に必要な設備費や処理コストを低減できる。
固液分離槽20から回収された処理水5は、必要なら、pH調整処理等公知の後処理が施されてもよい。
処理水5のpHは、例えば、3.0以上8.5以下、好ましくは5.0以上8.0以下、より好ましくは7.0以上7.5以下である。
回収された処理水5において、非処理水1中に含まれていたヨウ化物イオンが残存しており、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンの大部分が除去されている。
処理水5中、ヨウ化物イオンの濃度は、上記リサイクル水溶液の値と同様とすることができる。
また、処理水5中、フッ化物イオンの濃度および/またはリン酸イオンの濃度は、それぞれ、上記リサイクル水溶液の値と同様とすることができる。
本実施形態において、非処理水1中のヨウ化物イオンの濃度をCIa(mg/L)、フッ化物イオンの濃度をCFa(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPa(mg/L)とし、処理水5中のヨウ化物イオンの濃度をCIb(mg/L)、フッ化物イオンの濃度をCFb(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPb(mg/L)と定義する。
本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法において、式(CIb/CIa)×100により算出されるヨウ化物イオンの回収率が、例えば、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。
別の形態では、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法において、式[100-〔(CFa-CFb)/CFa〕×100]により算出されるフッ化物イオンの残存率が、例えば、15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。
また、別の形態では、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法において、式[100-〔(CPa-CPb)/CPa〕×100]により算出されるリン酸イオンの残存率が、例えば、15%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
本実施形態のヨウ素成分含有水溶液の製造方法において、[ヨウ化物イオンの回収率/フッ化物イオンの残存率]または[ヨウ化物イオンの回収率/リン酸イオンの残存率]により算出される、無機系凝集剤2のヨウ化物イオン非選択指数が、例えば、1.5以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上である。これにより、ヨウ化物イオンの選択的回収効率を高められる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと前記無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、
前記非処理水中から前記凝集物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含む、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
2. 1.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記凝集工程において、前記無機系凝集剤を含む前記非処理水のpHが、3.0以上11.5以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
3. 1.または2.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
レーザー回折散乱法を用いて体積頻度粒度分布を測定し、前記体積頻度粒度分布における粒子径が小さい側から50%累積したときの粒子径をD 50 としたとき、前記凝集物のD 50 が、1μm以上80μm以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
4. 1.または2.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記無機系凝集剤が、セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤、アルミニウム系凝集剤、およびカルシウム系凝集剤および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
5. 1.または2.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度をC Ia (mg/L)とし、前記処理水中のヨウ化物イオンの濃度をC Ib (mg/L)としたとき、
(C Ib /C Ia )×100により算出されるヨウ化物イオンの回収率が90%以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
6. 5.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記非処理水中のフッ化物イオンの濃度をC Fa (mg/L)、リン酸イオンの濃度をC Pa (mg/L)とし、前記処理水中のフッ化物イオンの濃度をC Fb (mg/L)、リン酸イオンの濃度をC Pb (mg/L)としたとき、
式[100-〔(C Fa -C Fb )/C Fa 〕×100]により算出されるフッ化物イオンの残存率が5%以下であるか、
または、式[100-〔(C Pa -C Pb )/C Pa 〕×100]により算出されるリン酸イオンの残存率が5%以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
7. 6.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
[前記ヨウ化物イオンの回収率/前記フッ化物イオンの残存率]または[前記ヨウ化物イオンの回収率/前記リン酸イオンの残存率]により算出される、前記無機系凝集剤のヨウ化物イオン非選択指数が、1.5以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
8. 1.または2.に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
9. ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に用いる無機系凝集剤であって、
フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンに対して、ヨウ化物イオンよりも選択的に反応し、凝集物を生成させる、ヨウ化物イオン非選択性の無機系凝集剤。
10. ヨウ化物イオンを含むリサイクル水溶液であって、
当該リサイクル水溶液中の前記ヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上であり、
当該リサイクル水溶液に含まれるフッ化物イオンの濃度および/またはリン酸イオンの濃度が8mg/L以下である、リサイクル水溶液。
11. 10.のリサイクル水溶液であって、
当該リサイクル水溶液中に、セリウムイオン、ジルコニウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオンの少なくとも一つを含む、リサイクル水溶液。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(無機系凝集剤)
・無機系凝集剤A:セリウム系凝集剤(日本海水社製、READ-CX(L))
・無機系凝集剤B:アルミニウム系凝集剤(ポリ塩化アルミニウム(PAC))
・無機系凝集剤C:カルシウム系凝集剤(CaCl
(非処理水(廃液))
化学反応において排出される廃液を用いて、下記の表1、2の化学組成を有する非処理水A、Bを調整した。
・非処理水A:下記の表1の成分組成を有する、ヨウ化物イオンおよびフッ化物イオンを含む水溶液
・非処理水B:下記の表2の成分組成を有する、ヨウ化物イオンおよびリン酸イオンを含む水溶液
表1,2中、検出限界以下の成分は記載しなかった
Figure 0007295324000002
Figure 0007295324000003
表1,2中、I、F、PO等の成分記号は、イオンを表す。
フッ化物イオン(F)は、水質分析計(堀場製作所社製、F-73)を用いてイオン電極法により測定した。なお、イオン電極法では、測定溶液中の遊離状態のフッ化物イオンを測定対象とする。なお、水質分析計(堀場製作所社製、F-73)の測定モードを切り替え、装置に取り付けられているpH電極を用いて、液温20~25℃程度の条件にて、液中のpHを測定した。
また、ヨウ化物イオン(I)、リン酸イオン(PO 3-)、その他のイオンについては、ICP発光分光分析装置(リガク社製、CIROS CCD)を用いて、ICP発光分光分析法により測定した。ただし、リン酸イオン濃度は、測定により得られたリン元素濃度を換算した値である。
なお、以下の処理水の組成分析でも、同様の手法を用いて測定した。
<試験1:凝集工程時のpH>
(実施例1~5)
試験1では、所定量の表1の非処理水Aをビーカーに入れ、非処理水Aに対して、0.6質量%の無機系凝集剤Aを添加した後、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いて、非処理水AのpHを表3に示す値となるように調整し、ジャーテスターを用いて、下記の攪拌条件に従って攪拌を行った(凝集工程)。
ただし、無機系凝集剤の添加量(質量%)は、ビーカー中に含まれる非処理水の所定体積を、液比重により算出した非処理水の所定質量を100質量%としたときの、質量の比を意味する。例えば、無機系凝集剤の添加量が0.6(質量%)とは、例えば、1000(mL)の非処理水に対して、1000(mL)×非処理水の液比重d×0.6(質量%)という式から算出した6d(g)を添加することを意味する。
[攪拌条件]
・速度:100rpm~300rpm
・時間:10分~15分
・温度(液温):20℃~25℃
攪拌後、ビーカー中に生じた凝集物を沈殿させ、ビーカー中の上澄み溶液を回収し、実施例1~5の処理水を得た。得られた処理水について、上述の手法を用いて組成分析を行った。結果を、表3に示す。
(実施例6~10)
非処理水Aに代えて表2の非処理水Bを使用し、無機系凝集剤Aの添加量を1.0質量%に変更し、pH調整剤として水酸化ナトリウムまたは硫酸を用いた以外は、上記の実施例1と同様にして、実施例6~10の処理水を得た。この処理水の組成分析の結果を表4に示す。
表3中、F除去率は、非処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFa(mg/L)、処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFb(mg/L)としたとき、〔(CFa-CFb)/CFa〕×100により算出した。
表4中、PO除去率は、非処理水中のリン酸イオンの濃度をCPb(mg/L)、処理水中のリン酸イオンの濃度をCPa(mg/L)としたとき、〔(CPa-CPb)/CPa〕×100により算出した。
また、ヨウ化物イオンの回収率(I回収率)は、非処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIa(mg/L)とし、前記処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIb(mg/L)としたとき、(CIb/CIa)×100により算出した。表3,4のいずれの実施例においても、ヨウ化物イオンの回収率が90%以上であった。
表3および表4より、実施例1~10では、ヨウ化物イオンを残存させつつも、フッ化物イオンおよびリン酸イオンを低減できる結果が得られた。
Figure 0007295324000004
Figure 0007295324000005
<試験2:凝集剤の添加量>
(実施例11~17)
試験2では、所定量の表1の非処理水Aをビーカーに入れ、表5に示す添加量(質量%)で無機系凝集剤A~Cのいずれかを添加した後、pH調整剤として水酸化ナトリウムを用いて、非処理水AのpHを約7.0~7.5に調整し、ジャーテスターを用いて、上記試験1と同じ攪拌条件にて攪拌を行った(凝集工程)。
攪拌後、ビーカー中に生じた凝集物を沈殿させ、ビーカー中の上澄み溶液を回収し、実施例11~17の処理水を得た。得られた処理水について、上述の手法にて、組成分析を行った。結果を、表5に示す。
(実施例18~21)
非処理水Aに代えて表2の非処理水Bを使用し、表5に示す添加量(質量%)で無機系凝集剤A~Cのいずれかを添加し、非処理水BのpHを約6.0~6.5に調整した以外は、上記の実施例11と同様にして、実施例18~21の処理水を得た。この処理水の組成分析の結果を表6に示す。
表5および表6より、実施例11~21では、ヨウ化物イオンを残存させつつも、フッ化物イオンおよびリン酸イオンを低減できる結果が得られた。
表5および表6中、ヨウ化物イオン非選択指数(I非選択指数)を、I回収率/F残存率、またはI回収率/PO残存率により算出した。
I回収率については、表3,4にて説明した。F残存率は(100%-F除去率)、PO残存率は(100%-PO除去率)により算出した。
同一の添加量1.0質量%で比較したとき、無機系凝集剤Aは、他の無機系凝集剤BやCと比べて、I非選択指数が高く、効率的にヨウ化物イオンを選択的に回収できることが分かった。
Figure 0007295324000006
Figure 0007295324000007
<試験3:非処理水中のI濃度>
表1の非処理水Aにヨウ化ナトリウムを溶解させ、ヨウ化物イオン濃度を約37g/Lから約100g/Lに増加させた非処理水A'を調整した。
試験3では、得られた非処理水A'に、0.2~0.6質量%の無機系凝集剤Aを添加し、水酸化ナトリウムで非処理水A'のpHを約7.0~7.5に調整し、ジャーテスターを用いて、上記試験1と同じ攪拌条件にて攪拌を行った(凝集工程)。
攪拌後、ビーカー中に生じた凝集物を沈殿させ、ビーカー中の上澄み溶液を回収し、実施例22~24の処理水を得た。得られた処理水について、上述の手法にて、組成分析を行った。結果を、表7に示す。
表7より、実施例22~24では、高濃度のヨウ化物イオン濃度を含む非処理水A'においても、ヨウ化物イオンを残存させつつも、フッ化物イオンおよびリン酸イオンを低減できる結果が得られた。
Figure 0007295324000008
下記の手順に従って、レーザー回折散乱法により、凝集物の体積頻度粒度分布を測定した。
<レーザー回折散乱法による粒度分布の測定>
まず、ビーカー中の表8の非処理水に、0.6質量%の表8の無機系凝集剤を添加した後、スターラーを用いて300rpmで攪拌し、苛性ソーダまたは塩酸を使用してpHを約7に調整した。
続いて、pH調整後10分程度撹拌を継続した後に停止させ、凝集物(析出物)を沈降させた。
ビーカー中の混合液を、ろ紙(目開き:1μm程度、JIS規格3801:5種C)を用いて過処理を行い、ろ紙上の濾過残分(汚泥)を110℃で2時間乾燥させた。
得られた濾過残分をイオン交換水に分散させ、周波数42kHz、照射時間180秒の条件にて超音波処理を施した後、かかる分散体中の凝集物の粒度分布について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、SALD-2300)を用いて測定した。
凝集物の体積頻度粒度分布において、粒子径が小さい側から10%、50%、90%累積したときの粒子径を、それぞれ、D10、D50、D90とする。これらの粒子径の結果を表8に示す。
無機系凝集剤Aを使用した凝集物の方が、無機系凝集剤Cを使用した場合よりも、フィルター詰まりがなく、濾過性に優れる結果を示した。
Figure 0007295324000009
1 非処理水
2 無機系凝集剤
3 pH調整剤
4 汚泥
5 処理水
10 反応槽
20 固液分離槽
100 ヨウ素回収システム

Claims (7)

  1. ヨウ化物イオンと、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと、を含む非処理水に、ヨウ化物イオンよりも選択的にフッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと反応する無機系凝集剤を接触させて、フッ化物イオンおよび/またはリン酸イオンと前記無機系凝集剤とが反応してなる凝集物を得る凝集工程と、
    前記非処理水中から前記凝集物を除去し、前記非処理水中にヨウ化物イオンを残存させることにより、処理水を得る分離工程と、を含
    前記無機系凝集剤が、セリウム系凝集剤、ジルコニウム系凝集剤、アルミニウム系凝集剤、カルシウム系凝集剤、および鉄系凝集剤からなる群から選ばれる一または二以上を含む、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
  2. 請求項1に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
    前記凝集工程において、前記無機系凝集剤を含む前記非処理水のpHが、3.0以上11.5以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
    レーザー回折散乱法を用いて体積頻度粒度分布を測定し、前記体積頻度粒度分布における粒子径が小さい側から50%累積したときの粒子径をD50としたとき、前記凝集物のD50が、1μm以上80μm以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
    前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIa(mg/L)とし、前記処理水中のヨウ化物イオンの濃度をCIb(mg/L)としたとき、
    (CIb/CIa)×100により算出されるヨウ化物イオンの回収率が90%以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
  5. 請求項に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
    前記非処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFa(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPa(mg/L)とし、前記処理水中のフッ化物イオンの濃度をCFb(mg/L)、リン酸イオンの濃度をCPb(mg/L)としたとき、
    式[100-〔(CFa-CFb)/CFa〕×100]により算出されるフッ化物イオンの残存率が5%以下であるか、
    または、式[100-〔(CPa-CPb)/CPa〕×100]により算出されるリン酸イオンの残存率が5%以下である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
  6. 請求項に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
    [前記ヨウ化物イオンの回収率/前記フッ化物イオンの残存率]または[前記ヨウ化物イオンの回収率/前記リン酸イオンの残存率]により算出される、前記無機系凝集剤のヨウ化物イオン非選択指数が、1.5以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
  7. 請求項1または2に記載のヨウ素成分含有水溶液の製造方法であって、
    前記非処理水中のヨウ化物イオンの濃度が5g/L以上である、ヨウ素成分含有水溶液の製造方法。
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