実施の形態における画像処理装置について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
また、以下では、カラープリンタとしての画像形成装置について説明するが、画像形成装置は、カラープリンタに限定されない。たとえば、画像形成装置は、モノクロプリンタであってもよいし、FAXであってもよいし、モノクロプリンタ、カラープリンタおよびFAXの複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)であってもよい。
[実施の形態1]
<A.全体構成>
図1は、画像形成装置100の装置構成の一例を示す図である。
画像形成装置100は、イメージングユニット1Y,1M,1C,1Kと、中間転写ベルト30(被転写材)と、一次転写ローラー31と、二次転写ローラー33と、カセット37と、定着装置40と、クリーニングブレード53と、制御装置101とを備える。
画像形成装置100には、イエロー(Y)のトナーを供給するトナーボトル15Yと、マゼンダ(M)のトナーを供給するトナーボトル15Mと、シアン(C)のトナーを供給するトナーボトル15Cと、ブラック(BK)のトナーを供給するトナーボトル15Bとが装着され得る。イメージングユニット1Yは、トナーボトル15Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。イメージングユニット1Mは、トナーボトル15Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。イメージングユニット1Cは、トナーボトル15Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。イメージングユニット1Kは、トナーボトル15Kからトナーの供給を受けてブラック(BK)のトナー像を形成する。イメージングユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、中間転写ベルト30の回転方向に沿って順に配置されている。
イメージングユニット1Y,1M,1C,1Kは、それぞれ、感光体10と、帯電ローラー11と、露光部12と、現像器13と、クリーニングブレード17とを備える。イメージングユニット1Y,1M,1C,1Kは、画像形成装置100の本体部に対して着脱可能である。
感光体10は、トナー像を担持する像担持体である。一例として、感光体10には、その表面に感光層が形成された感光体ドラムが用いられる。
帯電ローラー11は、感光体10の表面を一様に帯電する。露光部12は、制御装置101からの制御信号に応じて感光体10にレーザーを照射し、指定された画像パターンに従って感光体10の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体10上に形成される。
現像器13は、トナー、キャリア、および外添剤を含む現像剤を用いて静電潜像を現像する。現像剤は、トナーボトルから供給される。現像器13は、現像ローラー14を含む。現像器13は、現像ローラー14に現像バイアスを印加し、現像ローラー14の表面にトナーを付着させる。現像器13は、現像ローラー14を回転させ、現像ローラー14から感光体10にトナーを転写する。これにより、静電潜像に応じたトナー像が感光体10の表面に現像される。
感光体10と中間転写ベルト30とは、一次転写ローラー31を設けている部分で互いに接触している。当該接触部分に所定の転写バイアスが印加され、当該転写バイアスによって、感光体10上に現像されたトナー像が中間転写ベルト30に転写される。このとき、イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)、およびブラック(BK)のトナー像が順に重ねられて中間転写ベルト30に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト30上に形成される。
クリーニングブレード17は、感光体10に圧接され、中間転写ベルト30への転写後に感光体10の表面に残留するトナーを回収する。
カセット37は、たとえば画像形成装置100の下部に設けられている。カセット37には、記録材としての用紙S(被転写媒体)がセットされる。用紙Sは、カセット37から1枚ずつ二次転写ローラー33に送られる。二次転写ローラー33は、中間転写ベルト30に転写されたトナー像を用紙Sに転写する。用紙Sの送り出しおよび搬送のタイミングと、中間転写ベルト30上のトナー像の位置とを同期させることで、用紙Sの適切な位置にトナー像が転写される。その後、二次転写ローラー33は、予め定められた速度で用紙Sを定着装置40に搬送する。なお、二次転写ローラー33は、図示しない駆動装置によって回転駆動する。
定着装置40は、用紙S上の未定着画像を用紙上に定着させる。具体的には、定着装置40は、定着装置40内を通過する用紙S上のトナー像を融解し、トナー像を用紙Sに定着させる。その後、用紙Sは、トレー48に排紙される。定着装置40の具体的構成については、後述する。
クリーニングブレード53は、中間転写ベルト30に圧接され、トナー像の転写後に中間転写ベルト30に残留するトナーを回収する。当該トナーは、搬送スクリュー(図示しない)で搬送され、廃トナー容器(図示しない)に回収される。
制御装置101は、画像形成装置100の動作を制御する。制御装置101は、たとえば、感光体10の回転を制御するためのモーターや、一次転写ローラー31の回転を制御するためのモーターなどを制御する。また、制御装置101は、定着装置40の動作を制御する。モーターは、たとえば、PWM(Pulse Width Modulation)制御で駆動される。
以上のように、画像形成装置100は、少なくとも用紙S(記録材)上の未定着画像Gを用紙S上に定着させる定着装置40を有し、用紙Sに画像を形成する。
図2は、画像形成装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
画像形成装置100は、少なくとも、制御装置(制御部)101と、操作パネル102と、定着装置40と、センサー装置(検出部)60とを備えている。
操作パネル102は、タッチスクリーン120を含んでいる。タッチスクリーン120は、ディスプレイ122と、ディスプレイ122に重畳して配置されるタッチパネル121とで構成される。
制御装置101は、プログラムを実行するプロセッサーの一例であるCPU(Central Processing Unit)131と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)132と、データを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)133と、フラッシュメモリ134と、通信IF135とを有する。制御装置101は、通信IF135によって、操作パネル102と通信可能となっている。
フラッシュメモリ134は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュメモリ134は、CPU131が実行するオペレーティングシステムおよび各種のプログラム、各種のコンテンツおよびデータを格納している。また、フラッシュメモリ134は、画像形成装置100が生成したデータ、画像形成装置100の外部装置から取得したデータ等の各種データを揮発的に格納する。
センサー装置60は、レバー61と、フォトセンサー62とを含んでいる。センサー装置60は、用紙Sに画像を転写する転写装置(転写部)としての二次転写ローラー33と、定着装置40(詳しくは、定着装置40の加圧ローラー408)との間に設けられ、かつ用紙Sの状態を検出する。詳しくは、センサー装置60は、用紙Sが予め定められた方向(第1の方向)に撓んでいるか否かを検出する。以下では、用紙Sが予め定められた方向に撓んでいる状態を、「ループ状態」あるいは「正ループ状態」とも称する。詳細については後述するが、ループ状態は、正常時に起こる用紙Sの撓りである。
センサー装置60は、用紙Sがループ状態にあるときには、制御装置101に対して予め定められた信号(オン信号)を送信する。センサー装置60は、用紙Sが予め定められた方向とは逆の方向(第2の方向)に撓んでいる場合には、制御装置101に対して予め定められた信号(オン信号)を送信しない。なお、上記予め定められた信号を、「検出信号」とも称する。
また、以下では、用紙Sが予め定められた方向とは逆の方向に撓んでいる状態を、「逆ループ状態」とも称する。詳細については後述するが、逆ループ状態は、ループ状態とは撓り方向が逆方向の用紙Sの撓りであり、かつ異常時に起こる用紙Sの撓みである。
なお、センサー装置60の詳細、ループ状態、および逆ループ状態については、後述する。
制御装置101は、センサー装置60から出力される信号の有無により、少なくとも、用紙Sの状態が「ループ状態」であるか否かを判断する。より詳しくは、制御装置101は、後述する処理により、用紙Sの状態が「逆ループ状態」であるか否かについても判断する。
<B.定着装置>
図3は、定着装置40のハードウェア構成を説明するための図である。
定着装置40は、典型的には、加熱部材401と、定着ベルト402と、定着部材(支持部材)490と、加圧ローラー(加圧部材)408と、モーター409と、駆動装置(駆動部)410とを備える。
定着部材490は、定着ベルト402の内側に配置され、加圧ローラー408の加圧に対抗すべく、加圧ローラー408と対向する位置において定着ベルト402を摺動可能に支持する。詳しくは、定着部材490は、保持部材403と、ニップ形成部材405と、摺動シート406と、曲率付与部材407とを備える。ニップ形成部材405は、連結軸454を有する。
加熱部材401は、定着ベルト402を温めるための熱源である。加熱部材401は、ハロゲンヒーター451と、筐体452とを含む。ハロゲンヒーター451は、筐体452内に設置されている。筐体452は、外側の表面が定着ベルト402に接触している。加熱部材401は、ハロゲンヒーター451によって発生させた熱を、筐体452を介して定着ベルト402に伝える。
ハロゲンヒーター451は、本例の場合、発熱領域の異なる2本のヒーターから構成されている。筐体452は、アルミニウムまたはステンレスからなる厚みが0.2mm~0.5mm程度のパイプである。筐体452の内周面は、ハロゲンヒーター451から発生する光の吸収を上げるために黒色塗装がなされている。また、筐体452の外周面は、汚れ防止のため、フッ素系のコーティングがなされている。
なお、本例では、定着ベルト402が回転しても、加熱部材401が回転しない構成を例として挙げている。ただし、これに限定されるものではなく、加熱部材401は、定着ベルト402の回転に従って従動回転する構成であってもよい。
定着ベルト402は、無端状のベルトである。定着ベルト402は、加圧ローラー408と対抗して未定着画像Gを定着するニップ領域を形成し、かつ、加圧ローラー408の回転に従動して回転する。詳しくは、定着ベルト402は,加圧ローラー408と対向する位置において定着部材490により支持され、加圧ローラー408との間において用紙S上に未定着画像を定着させる。詳しくは、定着ベルト402は、ニップ形成部材405と加熱部材401とによって、テンションが与えられた状態で支持されており、かつ加圧ローラー408の回転に従動して回転する。
定着ベルト402は、ポリイミド樹脂(PI)またはニッケルなどからなる50μm~100μm程度の厚みを持つ基層と、100μm~300μm程度の厚みを持つシリコンゴムからなる弾性層と、10μm~50μm程度の厚みを持つフッ素系の離型層とからなる。
詳しくは、定着ベルト402は、基層の上に弾力層を有し、かつ弾力層の上に離型層を有する。基層は、加熱部材401の筐体452の外周面と接触する。離型層は、加圧ローラー408の表面および用紙Sに接触する。より詳しくは、離型層は、用紙S上の未定着画像Gに接触する。
保持部材403は、ニップ形成部材405を保持する。保持部材403は、厚み2mm程度のコの字形をした板金でできている。保持部材403は、ニップ形成部材405の連結軸454と嵌め合うために、連結軸454に対応する位置に穴が開けられている。
ニップ形成部材405は、加圧ローラー408との間でニップ領域を形成する。ニップ形成部材405は、LCP(Liquid Crystal Plastic)等の樹脂で構成されている。また、ニップ形成部材405の連結軸454は、ニップ領域とは反対側に突出している。ニップ形成部材405は、周囲が摺動シート406に巻かれている。
摺動部材としての摺動シート406は、摺動性に優れたフッ素樹脂で覆われたガラスクロスシート、またはPTFE(polytetrafluoroethylene)シートでできている。ニップ形成部材405と定着ベルト402との間に摺動シート406を挟み込んで定着ベルト402が回転することにより、摺動時の抵抗を低減させることができる。これにより、定着ベルト402を安定して回転することができる。
また、摺動シート406は、定着ベルト402と接触する側の面に、深さ50μm~200μm程度の凹凸を有する。これにより、定着ベルト402との接触面積を減らすことができるため、摺動時の抵抗を低減できる。また、定着ベルト402と摺動シート406との間に潤滑剤としてグリスを塗布することによって、摺動時の抵抗を低減させている。
また、摺動シート406をニップ形成部材405に巻き回して固定する際、摺動シート406の位置を固定するために、摺動シート406の上流側と下流側との連結軸454に対応するところに穴が開けられている。連結軸454は、摺動シート406の貫通穴と、保持部材403の貫通穴とを貫通する。また、この状態で加圧ローラー408による押圧力が加わることにより、摺動シート406はニップ形成部材405と保持部材403との間に、押圧力によって挟み込まれ、摺動シート406の位置が保持される。
曲率付与部材407は、定着ベルト402のうちニップ領域を通過した部分に曲率を付与する。曲率付与部材407は、ニップ形成部材405と同様に、LCP等の樹脂で構成されている。
加圧ローラー408は、モーター409によって、定着装置40において用紙S(詳しくは、二次転写ローラー33から搬送されてきた用紙S)を搬送経路の下流側に搬送する方向に回転する。加圧ローラー408は、用紙Sを搬送経路の上流側から下流側に搬送する正方向(図の矢印Qの方向)と、逆方向とに回転可能である。加圧ローラー408が正方向に回転すると、定着ベルト402も正方向(図の矢印Rの方向)に回転する。なお、図3においては、矢印15に示すように、用紙Sが搬送経路を下から上に搬送されるため、上流側が下側の位置に、下流側が上側の位置となっている。
詳細については後述するが、加圧ローラー408は、基準速度よりも高速の回転速度VHと、基準速度よりも低速の回転速度VLとで回転可能である。なお、回転速度は、回転数で定まる。回転数の指令は、制御装置101から駆動装置410に送られる。なお、一例として、回転速度VHは基準速度よりも3パーセント早い速度であり、かつ、回転速度VLは基準速度よりも3パーセント遅い速度である。
加圧ローラー408は、直径20mm~40mm程度のシリコンゴムで構成されている。また、当該シリコンゴムの表面は、離型性を上げるためにフッ素系のチューブで覆われている。
駆動装置410は、モーター409を回転させる。駆動装置410は、制御装置101からの指令に応じてモーター409を正方向および逆方向に回転させる。
モーター409は、駆動装置410からの指令に基づき、加圧ローラー408を正方向(矢印Qの方向)および逆方向に回転させる。モーター409は、加圧ローラー408の回転軸に対してギア(図示せず)を挟んで接続されている。
加圧ローラー408は、制御装置101からの指示に基づき、図示しない移動機構によって、定着ベルト402に接する位置(図3に示す位置)と、定着ベルト402から離間する所定の位置(たとえば、図3の加圧ローラー408の位置よりも右寄りの位置)との間を移動可能である。すなわち、加圧ローラー408は、定着ベルト402を回転させる位置(図3に示す位置)と、定着ベルト402を回転させない位置との間を移動する。
詳しくは、画像形成時には、加圧ローラー408は、図3に示すように、定着ベルト402に接する位置に移動する。この状態において、定着部材490は、定着ベルト402を支持した位置にて加圧ローラー408によって加圧される。一方、非画像形成時には、加圧ローラー408は、定着ベルト402から離間する。
少なくとも、画像形成装置100のウォームアップ後と、記録材上への定着後とにおいては、図3に示すように、加圧ローラー408は定着ベルト402に接している。画像形成装置100のウォームアップ後と、用紙S上への定着後とにおいては、定着装置40には、用紙Sが通過しない。すなわち、非通紙状態となる。
図4は、定着装置40において実行されるトルク検出を説明するためのブロック図である。
定着装置40は、モーター409と、駆動装置410と、ロータリーエンコーダー420とを備える。駆動装置410は、下位の制御装置としてのモーター用制御装置411と、電子回路であるドライバー412とを備える。ドライバー412は、トルク検出部413を備える。
駆動装置410は、上位の制御装置としての制御装置101からの指令(回転数指令)に基づき、加圧ローラー408の回転速度を一定に維持するようにモーター409を駆動する。
モーター409は、典型的には、三相交流モーターである。三相(U層、V層、W層)の各入力端子間に電圧(V)が印加されることにより、回転する。なお、モーター409として、例えばサーボモーターなどの制御モータを使用することもできる。
モーター用制御装置411は、制御装置101から回転数指令を受け付ける。モーター用制御装置411は、回転数指令を受け付けると、モーター409の回転数が、受け付けた回転数指令の回転数(以下、「指令回転数」とも称する)となるようにフィードバック制御を行う。
モーター用制御装置411は、回転数指令を受け付けると、当該回転数指令に応じて、トルク指令をドライバー412に送る。
ドライバー412は、受け付けたトルク指令に基づく電圧を各入力端子に印加するために、内部のスイッチング素子のスイッチング動作を制御する。これにより、ドライバー412から、モーター409に電流が流れる。モーター409は、当該電流によって回転する。ドライバー412は、センサ(図示せず)からモーター409に流した電流の電流値を取得する。
ロータリーエンコーダー420は、モーター409の回転数を検出する。検出された回転数(以下、「実回転数」とも称する)は、モーター用制御装置411にフィードバックされる。また、実回転数は、ドライバー412に通知される。
モーター用制御装置411は、指令回転数と、実回転数との差分を算出する。モーター用制御装置411は、当該差分がゼロに近づくように、ドライバー412に出力するトルク指令を制御する。
トルク検出部413は、ロータリーエンコーダー420から取得した実回転数と、センサーによって検出された電流値とに基づき、モーター409のトルクTq(負荷トルク)を検出する。具体的には、ドライバー412が、印加した電圧(V)と検出された電流値(I)との積を実回転数で除することにより、トルクTqを周期的に算出する。
駆動装置410は、予め定められた条件が成立する毎に、検出されたトルクTqのうち、当該予め定められた条件が成立したときに検出されたトルクTqを制御装置101に通知する。なお、予め定められた条件が成立したか否かは、典型的には、制御装置101によって判断される。
このような構成により、制御装置101は、予め定められた条件が成立する毎に、駆動装置410によって検出されたトルクTqを、駆動装置410から取得することができる。詳しくは、制御装置101は、予め定められた条件が成立したときに駆動装置410にて検出されたトルクTqを取得できる。
<C.用紙Sの状態制御>
以下、二次転写ローラー33と定着装置40との間の用紙Sの状態と、用紙Sの状態に応じた加圧ローラー408の回転速度の制御とについて説明する。
(c1.装置構成)
図5は、画像形成装置100の要部拡大図である。
画像形成装置100は、定着装置40と、二次転写ローラー33と、中間転写ベルト30と、センサー装置60と、分離爪71と、通紙ガイド72,73,74,75とを備える。センサー装置60は、上述したレバー61と、回転軸611と、フォトセンサー62(図2参照)とを含んでいる。
分離爪71は、用紙Sが中間転写ベルト30から離れない場合に、用紙Sを中間転写ベルト30から離し、かつ用紙Sを定着装置40側に搬送する役割を果たす。
通紙ガイド72~75は、用紙Sを定着装置40に導く役割を果たす。通紙ガイド72は、分離爪71の上部(定着装置40側)に設けられている。通紙ガイド73は、通紙ガイド72の上部、かつ、定着装置40の定着ベルト402の下部に設けられている。通紙ガイド74は、通紙ガイド72と対向する位置、かつ二次転写ローラー33の上部に設けられている。通紙ガイド75は、加圧ローラー408の下部、かつ通紙ガイド74にの上部に設けられている。通紙ガイド75は、用紙Sを定着装置40のニップ領域に搬送する役割を果たす。
領域R1,R2,R3は、用紙Sを適切に搬送できなかった場合(たとえば、用紙Sが逆ループ状態となった場合)に、用紙Sの印字面が接触する可能性のある領域である。なお、用紙Sの印字面が領域R1,R2,R3に接触すると、画像のこすれ等が発生する。
センサー装置60のレバー61は、回転軸611を中心に回転する。具体的には、用紙Sの接触によって、レバー61は図示した位置(以下、「デフォルト位置」とも称する)から時計回りに所定の角度だけ回転する。以下では、所定の角度回転したときのレバー61の位置を、説明の便宜上、「終点位置」とも称する。レバー61は、用紙Sの接触が無くなると、デフォルト位置に復帰する。このように、レバー61は、用紙Sの接触の有無により、異なる姿勢をとる。
図示しないフォトセンサー62は、レバー61がデフォルト位置にある場合には、検出信号を制御装置101に出力しない。一方、フォトセンサー62は、レバー61が終点位置にある場合には、検出信号を制御装置101に出力する。すなわち、レバー61が終点位置にある場合にはオン状態(信号が出力される状態)となり、レバー61がデフォルト位置(図5に示す位置)にある場合にはオフ状態(信号が出力されない状態)となる。
(c2.ループ制御)
ループ制御は、用紙Sが定着装置40に入る直前に開始される。ループ制御が開始されるまでは、加圧ローラー408は、上述した高速側の速度VHで回転し続ける。以下では、当該ループ制御を、後述する逆ループ制御と区別するため、「正ループ制御」とも称する。また、ループ状態を、逆ループ状態と区別するために、「正ループ状態」とも称する。
図6は、用紙Sがループしていない状態を示した図である。
用紙Sは、二次転写ローラー33と定着装置40との間で、略真っ直ぐな状態となっている。なお、この状態では、正ループ制御が既に開始されている。真っ直ぐな状態とは、二次転写ローラー33と中間転写ベルト30との接触領域と、定着装置40のニップ領域との間で撓みがない状態である。
図6に示した用紙Sの状態(姿勢)では、用紙Sは、センサー装置60のレバー61に接触しない。このため、レバー61は、時計回りに回動しない。つまり、レバー61は、デフォルト位置を維持する。このため、フォトセンサー62(図2参照)は、検出信号を制御装置101に出力しない。
この場合、用紙Sは、引っ張り気味の状態となっている。そこで、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を、高速側の速度VHから低速側の速度VLに切り替える。これにより、用紙Sの引っ張り状態が緩和される。
図7は、用紙Sがループしている状態を示した図である。
用紙Sは、二次転写ローラー33と定着装置40との間で、中央部が図のX軸の正方向に撓んでいる。すなわち、用紙Sは、湾曲状態となっている。詳しくは、用紙Sに弛みが生じている。さらに詳しくは、用紙Sは、用紙Sが真っ直ぐな状態に比べて用紙Sの中央部がセンサー装置60の方向に変位した状態となっている。以下では、図7のような方向に用紙Sが撓んでいる状態を、説明の便宜上、「正ループ状態」とも称する。
図7に示したように用紙Sの撓みがある程度大きくなると、用紙Sがセンサー装置60のレバー61に接触する。その結果、レバー61は、時計方向に回転する。これにより、レバー61は、デフォルト位置から終点位置へと移動する。レバー61が終点位置にくると、フォトセンサー62は、検出信号を制御装置101に出力し続ける。この場合、用紙Sは、弛んだ状態となっている。
制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度が低速側の速度VLである場合に、フォトセンサー62から信号の入力を受け付けると、加圧ローラー408の回転速度を低速の速度VLから高速側の速度VHに切り替える。これにより、用紙Sの弛みを解消することができる。
以上のように、制御装置101は、センサー装置60からの検出信号の有無に応じて、加圧ローラー408の回転速度を調整する。このような速度制御により、用紙Sを適切な状態で定着装置40に突入させることができる。
(c3.逆ループ制御)
上述した正ループ制御により、所定の坪量以上の用紙(たとえば、普通紙以上の坪量の用紙)については、逆ループ状態は発生し難い。すなわち、所定以上の剛性がある用紙は、逆ループ状態とはなりにくい。しかしながら、薄紙等の坪量の小さい用紙では、坪量の大きい用紙に比べて、逆ループ状態が発生しやすい。
図8は、逆ループ状態を説明するための図である。
用紙Sが、矢印Wの方向に移動することにより、逆ループ状態となる。具体的には、用紙Sは、二次転写ローラー33と定着装置40との間で、中央部が図のX軸の負方向に撓む。すなわち、用紙Sは、図7の湾曲状態とは湾曲方向が反対の状態となる。詳しくは、用紙Sは、用紙Sが真っ直ぐな状態に比べて用紙Sの中央部が通紙ガイド72,73の方向に変位した状態となる。
この状態では、センサー装置60のレバー61がデフォルト位置を維持するため、フォトセンサー62は検出信号を制御装置101に出力しない。このため、加圧ローラー408の回転速度は、低速側の速度VLを維持する。
すなわち、制御装置101は、用紙Sに弛みが生じているにもかかわらず、用紙Sが引っ張られ気味との判断をする。加圧ローラー408の回転速度が低速側の速度VLに維持されると、撓みが大きくなる。つまり、用紙Sの弛みが増大する。
このような状態で用紙Sの後端部が二次転写ローラー33を抜けると、用紙Sの後端部がばたつく。その結果、画像のこすれの発生、用紙Sの後端のエッジ部の汚れが発生する。
このような事態の発生を解消するため、制御装置101は、以下に述べる逆ループ制御を行う。
制御装置101は、検出信号の入力が、制御開始用に設定された所定時間(以下、「設定時間TC1」とも称する)ない場合には、検出信号の入力があるまで加圧ローラー408の回転速度を変動させる。典型的には、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を速度VHと速度VLとの間で切り替える。たとえば、制御装置101は、回転速度の切り替えを予め定められた周期で行う。
図9は、加圧ローラー408の回転速度の変動のさせ方を説明する図である。
検出信号が入力されなくなってから設定時間TC1が経過すると、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を周期的に切り替える。すなわち、制御装置101は、回転速度が速度VLになった後、設定時間TC1が経過すると、加圧ローラー408の回転速度を周期的に切り替える。具体的には、制御装置101は、設定時間TC1が経過すると、時間TDの間、回転速度を速度VHとする。また、制御装置101は、時間TDにわたり回転速度を速度VHとした後、時間TEの間、回転速度を速度VLとする。以降も、同様に、回転速度を速度VHと速度VLとの間で切り替える。なお、時間TDと時間TEとは、典型的には、同じ時間である。
このように加圧ローラー408の回転速度を変動させる制御を行うことにより、用紙Sに対して、引っ張る作用と、弛ませる作用とを交互に与えることができる。これにより、用紙Sの逆ループ状態を正ループ状態に戻すことが可能となる。
なお、用紙Sの状態が正ループ状態になると、レバー61の位置が終点位置になるため、制御装置101は、検出信号を受信する。その後、上述した正ループ制御が実行される。
(c4.寿命判断)
定着装置40の寿命判定を説明する。本例では、制御装置101は、逆ループ制御の制御結果を利用して、定着装置40の寿命が到来しているか否かを判定する。
制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間(以下、「変動時間Tz」と称する)が、寿命判定用に設定された所定時間(以下、「設定時間TC2」とも称する)以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定する。なお、本例の場合、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間は、時間TDを整数倍した時間と、時間TEを整数倍した時間との和となる。
また、図9の例では加圧ローラー408の回転速度が周期的に変動するため、変動時間Tzは、加圧ローラー408の回転速度の切り替え回数に比例するものでもある。よって、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度の切り替え回数が、変動の周期fと設定時間TC2により定められた回数以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定してもよい。なお、周期fは、時間TDと時間TEとの和の逆数(f=1/(TD+TE))である。
典型的には、回転速度の切り替え回数が、設定時間TC2を周期fで除することにより得られた値(すなわち、TC2/f)よりも大きい場合に、制御装置101は、定着装置40が寿命であると判定する。なお、設定時間TC2を周期fで除することにより得られた値(TC2/f)が少数となる場合には、制御装置101は、回転速度の切り替え回数が、当該値の少数第1の位を切り上げた値(整数値)よりも大きい場合に、定着装置40が寿命であると判定すればよい。
寿命判定の精度を高める観点から、以下のような寿命判定を行なってもよい。
制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させる制御を行なった回数のうち、変動時間Tzが設定時間TC2以上となった回数の割合が所定値TR(たとえば、3割)以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると判定してもよい。変動時間Tzが、偶発的に1度だけ時間TC2を超えることもある。この場合には、定着装置40の寿命と判定することは好ましくないこともある。そこで、上記のように割合を用いた判定を行うことにより、寿命判定の精度を向上させることができる。
また、制御装置101は、所定の期間が経過する毎、または、加圧ローラー408の走行距離が所定の距離伸びる毎に、定着装置40の寿命の判定を行なってもよい。すなわち、制御装置101は、定着装置40の寿命判定を常時行うのではなく、予め定められた条件が成立する毎に寿命判定を行なってもよい。
後述する実施の形態2~4では、制御装置101が、このように予め定められた条件が成立する毎に、定着装置40の寿命判定を行うものとする。
(変形例)
上記においては、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間(変動時間Tz)が、寿命判定用に設定された所定時間(設定時間TC2)以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定する。具体的には、変動時間Tzを、1回の逆ループ制御に要する時間(時間TDを整数倍した時間と時間TEを整数倍した時間との和(図9参照))とした。しかしながら、これに限定されるものではない。
たとえば、変動時間Tzを、各回の逆ループ制御に要した時間の累積値(以下、「累積時間」とも称する)として捉え、累積時間が設定時間Tc以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定するように、制御装置101を構成してもよい。すなわち、制御装置101は、1枚の用紙Sに対する逆ループ制御に要した時間(以下、「要素時間」とも称する)ではなく、複数枚の用紙Sの各々に対する逆ループ制御に要した時間(すなわち、累積時間)に基づき、定着装置40が寿命であるか否かを判定してもよい。
なお、逆ループ制御に要する時間の蓄積と、蓄積された時間に基づく累積時間の算出とは、制御装置101によって行なわれる。
<D.機能的構成>
図10は、制御装置101の機能的構成を表した機能ブロック図である。
画像形成装置100は、制御装置101と、駆動装置410と、操作パネル102と、センサー装置60とを備える。
制御装置101は、回転速度制御部150と、寿命判定部154と、表示制御部155と、通信制御部156とを備える。
回転速度制御部150は、加圧ローラー408の回転速度を制御する。具体的には、回転速度制御部150は、駆動装置410のモーター用制御装置411(図4参照)に速度指令を送ることにより、加圧ローラー408の回転速度を制御する。
詳しくは、回転速度制御部150は、センサー装置60から検出信号を受信する。詳しくは、回転速度制御部150は、用紙Sの接触によってレバー61がデフォルト位置から終点位置に移動したことに基づき、フォトセンサー62から出力された検出信号を受信する。回転速度制御部150は、検出信号の受信の有無により、加圧ローラー408の回転速度を制御する。
たとえば正ループ制御の実行中には、回転速度制御部150は、検出信号の受信の有無に基づき、加圧ローラー408の回転速度を速度VHまたは速度VLに制御する。また、逆ループ状態(図8参照)が発生した場合、回転速度制御部150は、検出信号の入力があるまで加圧ローラー408の回転速度を変動させる。本例では、回転速度制御部150は、加圧ローラー408の回転速度を速度VHと速度VLとの間で切り替える。
回転速度制御部150は、逆ループ状態となったきに、加圧ローラー408の回転速度を変動させている変動時間Tzの情報を、寿命判定部154に通知する。なお、回転速度制御部150は、変動時間Tzの情報の代わりに、変動させた回数の情報を寿命判定部154に通知してもよい。
寿命判定部154は、定着装置40が寿命か否かを判定する。詳しくは、寿命判定部154は、回転速度制御部150から取得した変動時間Tzの情報(あるいは回数情報)に基づいて、定着装置40の寿命が到来したか否かを判定する。具体的には、寿命判定部154は、変動時間Tzが上述した設定時間TC2以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定する。寿命判定部154は、寿命と判定すると、表示制御部155に所定の通知をする。
表示制御部155は、所定の通知を寿命判定部154から受け付けると、所定の警告画面1201(図17参照)を操作パネル102に表示させる。
寿命判定部154は、制御装置101にて予め定められた設定がなされている場合には、通信制御部156にも所定の通知を行う。通信制御部156は、外部ネットワークに接続されている。これにより、画像形成装置100は、外部の機器に対して、定着装置40が寿命であることを通知できる。
また、制御装置101は、典型的には、定着装置40が寿命であると判定した場合、以後の画像形成を中止する。ただし、このような制御に限定されず、定着装置40が寿命であると判定された場合、第1の用紙種別の用紙を用いた画像形成を許可し、かつ第1の用紙種別の用紙よりも坪量が少ない第2の用紙種別の用紙を用いた画像形成を許可しないように、制御装置101を構成してもよい。坪量が大きい用紙Sは、坪量が小さい用紙Sよりも、逆ループ状態が発生する可能性が少ないからである。
(変形例)
上述したように、普通紙以上の坪量の用紙では、逆ループ状態は発生し難い。その一方、薄紙等の坪量の小さい用紙では、坪量の大きい用紙に比べて、逆ループ状態が発生しやすい。
このように、普通紙以上の坪量の用紙では、通常は逆ループが発生しない。したがって、普通以上の坪量の用紙Sを使用しているときに逆ループが発生する理由として、定着装置40が寿命を迎えていることが考えられる。このため、制御装置101は、用紙種(薄紙、普通紙、厚紙等)毎に、逆ループ制御時における変動時間Tzの情報を取っておくことが好ましい。
たとえば、普通紙以上の坪量の用紙種の用紙に関し、変動時間Tzが設定時間TC2以上の場合、定着装置40が寿命であると判定するように、制御装置101を構成してもよい。あるいは、薄紙に関して変動時間Tzが設定時間TC2以上の場合において、さらに、普通紙以上の坪量の用紙種の用紙に関して、変動時間Tzが設定時間TC2以上となると、定着装置40が寿命であると判定するように、制御装置101を構成してもよい。
<E.小括>
(1)以上のように、画像形成装置100は、画像形成装置の動作を制御する制御装置101と、用紙S(記録材)上に画像を転写する転写装置(二次転写ローラー33)と、用紙S上の未定着画像を用紙S上に定着させる定着装置40と、転写装置と定着装置40との間に設けられ、かつ用紙Sの状態を検出するセンサー装置60とを備える。
転写装置は、予め定められた速度で用紙Sを定着装置40に搬送する。定着装置40は加圧ローラー408を含み、加圧ローラー408は、転写装置から搬送されてきた用紙Sを搬送経路の下流側に搬送する。センサー装置60は、用紙Sが第1の方向(図5等のX軸の正方向)に撓んでいる場合には検出信号(予め定められた信号)を制御装置101に出力し、かつ用紙Sが第1の方向とは逆の第2の方向(図5等のX軸の負方向)に撓んでいる場合には検出信号を制御装置101に出力しない。
制御装置101は、検出信号の入力がある場合には、加圧ローラー408の回転速度を速度VH(第1の速度)に制御し、かつ検出信号の入力がない場合には、加圧ローラー408の回転速度を速度VHよりも遅い速度VL(第2の速度)に制御する。制御装置101は、検出信号の入力が設定時間TC1(第1の時間)ない場合には、検出信号の入力があるまで加圧ローラー408の回転速度を変動させる。制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間が設定時間TC2(第2の時間)以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定する。
加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間が長くなれば、逆ループ状態が悪化していると言える。すなわち、定着装置40が劣化していることが想定される。
したがって、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間に着目することにより、定着装置40の寿命を判定できる。
また、上記の構成によれば、定着装置40の劣化に基づく逆ループ現象に着目して寿命を判定するため、寿命の判定に用いる加圧ローラー408のトルクの閾値を一意に定めるような構成に比べて、定着装置40の寿命を精度良く判定できる。それゆえ、上記の構成によれば、定着装置40の取り替え時期を長くすることができるため、定着装置40の寿命が従来よりも長くなる。
(2)制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を速度VHと速度VLとの間で切り替えることにより、加圧ローラー408の回転速度を変動させる。
(3)回転速度の切り替えは、予め定められた周期で行なわれる。制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度の切り替え回数が、当該周期と設定時間TC2により定められた回数以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定する。
(4)制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させる制御を行なった回数のうち、加圧ローラー408の回転速度を変動させている変動時間Tzが設定時間TC2以上となった回数の割合が所定値TR以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると判定する。上記の構成によれば、さらに精度の高い寿命判定が可能となる。
(5)制御装置101は、所定の期間が経過する毎、または、加圧ローラー408の走行距離が所定の距離伸びる毎に、定着装置40の寿命の判定を行う。
(6)センサー装置60は、レバー61と、フォトセンサー62とを含む。用紙Sが上記第2の方向(図5等のX軸軸の負方向)に撓んでいる場合には、レバー61の位置はデフォルト位置(第1の位置)となり、かつ、用紙Sが上記第1の方向(X軸の正方向)に撓んでいる場合には、用紙Sによって、レバー61の位置はデフォルト位置から終点位置(第2の位置)に移動する。フォトセンサー62は、レバー61の位置が終点位置である場合に、検出信号を制御装置101に出力する。
(7)加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間は、複数枚の用紙Sの各々について加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間(要素時間)の累積値である。
(8)また、画像形成装置100は、以下の構成を有するとも言える。
画像形成装置100は、少なくとも用紙S上の未定着画像を用紙S上に定着させる定着装置40を有し、用紙Sに画像を形成する。画像形成装置100は、用紙Sに画像を転写し、かつ用紙Sを搬送経路の下流側に搬送する転写装置(転写部,二次転写ローラー33)と、定着装置40において転写装置から搬送されてきた用紙Sを搬送経路の下流側に搬送する方向に回転可能な加圧ローラー(加圧部材)408と、加圧ローラー408と対抗して未定着画像Gを定着するニップ領域を形成し、かつ、加圧ローラー408の回転に従動して回転する定着ベルト402と、転写装置と加圧ローラー408との間に設けられ、かつ用紙Sの状態を検出するセンサー装置(検出部)60と、制御装置(制御部)101とを備える。
センサー装置60は、用紙Sが第1の方向(図5等のX軸の正方向)に撓んでいる場合には検出信号(予め定められた信号)を制御装置101に出力し、かつ用紙Sが上記第1の方向とは逆の第2の方向(図5等のX軸の負方向)に撓んでいる場合には検出信号を制御装置101に出力しない。
制御装置101は、検出信号の入力がある場合には、加圧ローラー408の回転速度を速度VH(第1の速度)に制御し、かつ検出信号の入力がない場合には、加圧ローラー408の回転速度を速度VHよりも遅い速度VL(第2の速度)に制御する。制御装置101は、検出信号の入力が設定時間TC1(第1の時間)ない場合には、検出信号の入力があるまで加圧ローラー408の回転速度を変動させる。制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間が設定時間TC2(第2の時間)以上となった場合に、定着装置40が寿命であると判定する。
<F.制御構造>
図11は、制御装置101によって実行される処理の流れを表したフロー図である。
制御装置101(詳しくは、CPU131)は、ステップS500において、用紙Sが定着装置40に突入する直前の所定位置に到達したか否かを判断する。到達したと判断された場合(ステップS500においてYES)、制御装置101は、ステップS510において、上述した正ループ制御を開始する。到達していないと判断された場合(ステップS500においてNO)、制御装置101は、処理をステップS500に進める。
ステップS510の後、ステップS520において、制御装置101は、用紙Sが定着装置40を通り過ぎたか否かを判断する。用紙Sが定着装置40を通り過ぎたと判断された場合(ステップS520においてYES)、制御装置101は、一連の処理を終了する。用紙Sが定着装置40を通り過ぎていないと判断された場合(ステップS520においてNO)、制御装置101は、ステップS530において、センサー装置60から検出信号を継続して設定時間TC1にわたり受信していないか否かを判断する。
検出信号を継続して設定時間TC1にわたり受信していないと判断された場合(ステップS530においてYES)、制御装置101は、ステップS540において、正ループ制御を中止し、加圧ローラー408の回転速度を変動させる。すなわち、制御装置101は、逆ループ制御を開始する。検出信号を受信していると判断された場合(ステップS530においてNO)、制御装置101は、処理をステップS520に進める。
ステップS540の後、ステップS550において、制御装置101は、センサー装置60から検出信号を受信したか否かを判断する。検出信号を受信したと判断された場合(ステップS550においてYES)、制御装置101は、ステップS560において回転速度を変動させた時間(すなわち、変動時間Tz)を、フラッシュメモリ134(図2参照)に記憶させる。あるいは、制御装置101は、変動時間Tzの代わりに、回転速度を変動させた回数をフラッシュメモリ134に記憶させる。その後、制御装置101は、処理をステップS520に進める。
検出信号を受信していないと判断された場合(ステップS550においてNO)、制御装置101は、ステップS570において、用紙Sが定着装置40を通り過ぎたか否かを判断する。通り過ぎたと判断された場合(ステップS570においてYES)、制御装置101は、ステップS580において、変動時間Tzあるいは変動させた回数を、フラッシュメモリ134に記憶させる。通り過ぎていないと判断された場合(ステップS570においてNO)、制御装置101は、処理をステップS550に進める。
図12は、図11のステップS510の処理の詳細な流れを表したフロー図である。
ステップS511において、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を、高速側の速度VHに設定する。ステップS512において、制御装置101は、センサー装置60から検出信号を受信したか否かを判断する。
検出信号を受信したと判断された場合(ステップS512においてYES)、制御装置101は、ステップS513において、加圧ローラー408の回転速度を、低速側の速度VLに設定する。検出信号を受信していないと判断された場合(ステップS512においてNO)、制御装置101は、処理をステップS511に進める。
図13は、図11のステップS540の処理の詳細な流れを表したフロー図である。
ステップS541において、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を、高速側の速度VHに設定する。ステップS542において、制御装置101は、回転速度を速度VHに設定した時点から所定の時間TD(図9参照)が経過したか否かを判断する。
所定の時間TD経過したと判断された場合(ステップS542においてYES)、制御装置101は、ステップS543において、加圧ローラー408の回転速度を、低速側の速度VLに設定する。所定の時間TD経過していないと判断された場合(ステップS542においてNO)、制御装置101は、処理をステップS542に進める。すなわち、制御装置101は、所定の時間TDが経過するまで、加圧ローラー408の回転速度を速度VHに維持する。
ステップS543の後、ステップS544において、制御装置101は、回転速度を速度VLに設定した時点から所定の時間TE(図9参照)が経過したか否かを判断する。
所定の時間TE経過したと判断された場合(ステップS544においてYES)、制御装置101は、処理を捨て541にすすめる。所定の時間TE経過していないと判断された場合(ステップS544においてNO)、制御装置101は、処理をステップS544に進める。すなわち、制御装置101は、所定の時間TEが経過するまで、加圧ローラー408の回転速度を速度VLに維持する。
以上のように、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を周期的に変動させる。
図14は、寿命判定処理の流れを表したフロー図である。
ステップS601において、制御装置101のCPU131は、回転速度を変動させた時間(すなわち、変動時間Tz)をフラッシュメモリ134から読み出す。読み出すタイミングは、たとえば、予め定められた条件が成立した場合である。
また、読み出すデータ(変動時間Tz)としては、既に読み出されたデータを対象外とすればよい。データが読み出される都度、CPU131は、読み出されたデータをフラッシュメモリ134から削除してもよい。あるいは、CPU131は、新たなデータを上書きする構成であってもよい。データをどのように保持し、かつ消去するかは、特に限定されるものではない。
ステップS601の後、ステップS602において、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させた時間(変動時間Tz)が設定時間TC2以上であるか否かを判断する。変動時間Tzが設定時間TC2以上であると判断された場合(ステップS602においてYES)、制御装置101は、ステップS603において、定着装置40の寿命が到来したと判断する。すなわち、制御装置101は、定着装置40が寿命であると判定する。その後、ステップS604において、制御装置101は、操作パネル102に警告表示をする。
一方、変動時間Tzが設定時間TC2未満であると判断された場合(ステップS602においてNO)、制御装置101は、ステップS605において、定着装置40の寿命は到来していないと判断する。すなわち、制御装置101が、定着装置40は寿命でないと判定する。
(変形例)
図15は、所定値TRを用いた場合における定着装置40の寿命判定処理の流れを表したフロー図である。
ステップS701において、制御装置101のCPU131は、回転速度を変動された時間(変動時間Tz)の1日分のデータ(典型的には、複数個のデータ)をフラッシュメモリ134から読み出す。ステップS702において、制御装置101は、複数個のデータのうち、回転速度を変動させた時間が設定時間TC2以上となるデータの個数の割合が所定値TR以上であるか否かを判断する。
上記割合が所定値TR以上であると判断された場合(ステップS702においてYES)、制御装置101は、ステップS703において、定着装置40が寿命であると判定する。その後、ステップS704において、制御装置101は、操作パネル102に警告表示をする。
一方、上記割合が所定値TR未満であると判断された場合(ステップS702においてNO)、制御装置101は、ステップS705において、定着装置40は寿命でないと判定する。
図16は、寿命判定に印刷枚数と走行距離とを加味した場合における寿命判定処理の流れを表したフロー図である。
ステップS671において、制御装置101は、印刷枚数(画像形成枚数)および加圧ローラー408の走行距離に基づき、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。具体的には、制御装置101は、印刷枚数が予め定められた閾値を超えると、定着装置40が寿命であると仮判定する。また、制御装置101は、走行距離が予め定められた閾値以上となると、定着装置40が寿命であると判定する。
定着装置40が寿命と仮判定された場合(ステップS672においてYES)、制御装置101は、処理をステップS601に進める。定着装置40が寿命でないと仮判定された場合には、ステップS605にて、定着装置40は寿命でないとの本判定がなされる。
ステップS601以降の処理については、図14に示した処理と同じであるため、ここでは繰り返して説明しない。
<G.ユーザーインターフェイス>
図17は、操作パネル102に表示される警告画面の例を表した図である。
典型的には、操作パネル102のタッチスクリーン120には、所定の警告画面1201がポップアップ表示される。これにより、画像形成装置100のユーザーは、定着装置40の交換時期が到来したことを知ることができる。
<H.寿命延長処理>
上記のように定着装置40が寿命と判定された場合、通常では、定着装置40を交換する必要がある。しかしながら、以下のような処理を行うことにより、定着装置40を延命させることも可能である。
たとえば、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間(変動時間Tz)が長くなると、加圧ローラー408の回転速度を速くする。あるいは、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間が長くなると、定着部材490に対する加圧ローラー408の荷重を重くする。
[実施の形態2]
本実施の形態の処理は、実施の形態1の処理と組み合わされる。すなわち、画像形成装置100は、実施の形態1で説明した処理と、本実施の形態で説明する処理とを実行する。また、同様に、後述する他の実施の形態3,4,5の処理も、実施の形態1の処理と組み合わされる。
具体的には本実施の形態および他の実施の形態3,4では、画像形成装置100は、加圧ローラーの回転速度を変動させている時間(あるいは変動回数)だけではなく、トルクTqをさらに利用して、定着装置40の寿命を判定する。
さらに詳しくは、本実施の形態で説明する処理または他の実施の形態3,4において説明する処理によって、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。定着装置40が寿命であると仮判定されると、実施の形態1で説明した判定処理を行うことにより、定着装置40が寿命であるか否かを判定(すなわち、本判定)する。なお、定着装置40が寿命であると仮判定されなかった場合には、本判定は行なわれない。
また、上述したように、制御装置101は、予め定められた条件が成立する毎に、定着装置40の寿命判定を行うものとする。具体的には、制御装置101は、所定の期間が経過する毎に、定着装置40の寿命の判定を行う。
また、以下では、トルクTqと、トルクTqの平均値としての平均トルクTavと、平均トルクTavの移動平均値としての移動平均トルクTmavとを用いて、各実施の形態を説明する。これらのトルクの詳細については、後述する。なお、後述する他の実施の形態3~5についても同様である。
また、説明の便宜上、トルクTqと、平均トルクTavと、移動平均トルクTmavとを区別しない場合には、単に、「トルクTg」と記載する。すなわち、トルクTgは、トルクTqと、平均トルクTavと、移動平均トルクTmavとを包括する概念である。なお、後述する他の実施の形態3~5についても同様である。
<A.機能的構成>
図18は、制御装置101の機能的構成を表した機能ブロック図である。
画像形成装置100は、制御装置101と、駆動装置410と、操作パネル102と、センサー装置60とを備える。
制御装置101は、回転速度制御部150と、トルク取得部151と、平均トルク算出部152と、移動平均トルク算出部153と、寿命判定部154と、表示制御部155と、通信制御部156とを備える。
トルク取得部151は、駆動装置410からトルクTq(トルクの値)を取得する。具体的には、トルク取得部151は、所定の期間毎に駆動装置410で検出されたトルクTqを、駆動装置410から取得する。以下では、所定の期間を「1日」とした場合を例に挙げて説明する。なお、所定の期間は、1日に限定されるものではない。
トルク取得部151は、本例の場合には、駆動装置410から、1日に最高5回のトルクTqを取得する。詳しくは、トルク取得部151は、図3のように加圧ローラー408が定着ベルト402に接した状態であって、かつ非通紙状態のときのトルクTqを駆動装置410から取得する。すなわち、トルク取得部151は、用紙Sによる負荷がないときのモーター409のトルク(以下、「空転トルク」とも称する)を駆動装置410から取得する。
より詳しくは、トルク取得部151は、画像形成装置100のウォームアップ後に検出されるトルクTqを、駆動装置410から取得する。1日において画像形成装置100のウォームアップが5回あれば、5回のトルク取得が可能となる。1日に1回しかウォームアップが行なわれなかった場合には、制御装置101は、この日においてはトルク取得を1回だけ行う。なお、1日あたりのトルクTqの取得回数は、5回に限定されるものではない。
以上のように、「予め定められた条件」は、本例の場合、「1日経過」かつ「画像形成装置100のウォームアップ後」である。
以下では、トルク取得部151が駆動装置410から取得した5回分のトルク(トルク値)を、Tq(n[1]),Tq(n[2]),Tq(n[3]),Tq(n[4]),Tq(n[5])と称する。なお、nは、日を表す変数である。
トルク取得部151は、取得された5回分のトルクを平均トルク算出部152に送る。なお、トルクがたとえば4回しか取得できなかった場合には、トルク取得部151は、典型的には、Tq(n[1])~Tq(n[4])のみを平均トルク算出部152に送る。あるいは、トルク取得部151は、Tq(n[1])~Tq(n[5])を送るとともに、Tq(n[5])の値が無効であることを平均トルク算出部152に通知してもよい。
平均トルク算出部152は、日毎のトルクの平均値を求める。具体的には、平均トルク算出部152は、以下の式(1)に示すように、5回のトルクの平均値(以下、「平均トルクTav」と称する)を求める。
Tav(n)=(Tq(n[1])+Tq(n[2])+Tq(n[3])+Tq(n[4])+Tq(n[5]))÷5 … (1)
平均トルク算出部152は、算出された平均トルクTav(n)を、移動平均トルク算出部153に送る。
移動平均トルク算出部153は、5日分の平均トルクTavを用いて、移動平均トルクTmav(移動平均値)を算出する。詳しくは、移動平均トルク算出部153は、当日の平均トルクTav(n)と、1日前~4日前までの4日分の平均トルク(Tav(n-4),Tav(n-3),Tav(n-2),Tav(n-1))とを用いて、移動平均トルクTmav(n)を算出する。具体的には、移動平均トルク算出部153は、以下の式(2)に示す演算を行う。
Tmav(n)=(Tav(n-4)+Tav(n-3)+Tav(n-2)+Tav(n-1)+Tav(n))÷5 … (2)
移動平均トルク算出部153は、算出された移動平均トルクTmav(n)を、寿命判定部154に送る。なお、上記においては5日分(5個)の平均トルクTavを用いて移動平均トルクTmavを算出したが、平均トルクTavの個数は5個に限定されるものではない。
寿命判定部154は、定着装置40が寿命か否かを判定する。詳しくは、寿命判定部154は、回転速度制御部150から取得した時間情報(あるいは回数情報)と、移動平均トルクTmavとに基づいて、定着装置40の寿命が到来したか否かを判定する。より詳しくは、寿命判定部154は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。寿命判定部154は、定着装置40が寿命であると仮判定したことを条件に、実施の形態1で説明したように、回転速度制御部150から取得した時間情報(あるいは回数情報)に基づき、定着装置40が寿命であるか否かを判定(本実施の形態では、本判定)する。
図19は、移動平均トルクTmavの経時変化を示した図である。
グラフ(図)の横軸は、日にちを表している。グラフの縦軸は、移動平均トルクTmavを表している。図19の例では、ある月の16日~21日までの移動平均トルク(Tmav(16)~Tmav(21))がプロットされている。
移動平均トルクTmavは、20日までは単調増加している。しかしながら、21日の移動平均トルクTmav(21)は、前日の20日の移動平均トルクTmav(20)よりも小さくなっている。すなわち、「Tmav(n-1)>Tmav(n)」の関係が成立している。
このため、寿命判定部154は、21日の時点(詳しくは、Tmav(21)を算出した時点)で、定着装置40が寿命であると仮判定する。寿命判定部154は、寿命と仮判定すると、表示制御部155に所定の通知をする。
表示制御部155は、所定の通知を寿命判定部154から受け付けると、所定の警告画面1201(図17参照)を操作パネル102に表示させる。
寿命判定部154は、制御装置101にて予め定められた設定がなされている場合には、通信制御部156にも所定の通知を行う。通信制御部156は、外部ネットワークに接続されている。これにより、画像形成装置100は、外部の機器に対して、定着装置40が寿命であることを通知できる。
上記においては、トルク取得部151が、画像形成装置100のウォームアップ後に検出されるトルクTqを、駆動装置410から取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、記録材上への定着後に検出されるトルクTqを駆動装置410から取得するように制御装置101を構成してもよい。
また、制御装置101は、典型的には、定着装置40が寿命であると仮判定した場合、以後の画像形成を中止する。ただし、このような制御に限定されず、定着装置40が寿命であると仮判定された場合、第1の用紙種別の用紙を用いた画像形成を許可し、かつ第1の用紙種別の用紙よりも坪量が少ない第2の用紙種別の用紙を用いた画像形成を許可しないように、制御装置101を構成してもよい。坪量が大きい用紙Sは、坪量が小さい用紙Sよりもニップ領域でのスリップが発生しにくいためである。
<B.小括>
画像形成装置100は、画像形成装置の動作を制御する制御装置101と、用紙S(記録材)上の未定着画像を用紙S上に定着させる定着装置40とを備える。
定着装置40は、記録材を搬送経路の下流側に搬送する方向に回転可能な加圧ローラー408と、加圧ローラー408を回転させるモーター409と、モーター409を駆動させる駆動装置410と、加圧ローラー408の回転に従動して回転する無端状の定着ベルト402と、定着ベルト402の内側面から定着ベルト402を摺動可能に支持する定着部材490とを含む。定着部材490は、定着ベルト402を支持した位置にて加圧ローラー408によって加圧される。
駆動装置410は、制御装置101からの指令に基づき、加圧ローラー408の回転速度を一定に維持するようにモーター409を駆動する。駆動装置410は、モーター409の駆動時のトルクTqを検出する。
制御装置101は、駆動装置410から、検出されたトルクTqを取得する。制御装置101は、トルクTg(本例の場合には、トルクTqに基づいて算出された移動平均トルクTmav)の経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。
詳しくは、制御装置101は、所定の期間(本例の場合1日)が経過する毎に、駆動装置410からトルクTqを複数回取得するとともに当該複数回にわたり取得されたトルクTqの平均値(平均トルクTav)を算出する。制御装置101は、算出された平均トルクTavと、少なくとも前回算出された平均トルクTavとを用いて移動平均値(移動平均トルクTmav)を算出する。制御装置101は、算出された移動平均トルクTmavが前回算出された移動平均トルクTmavよりも小さくなった場合に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
定着装置40では、定着ベルト402が回転することによって、摺動部である摺動シート406が徐々に摩耗し、定着ベルト402が回転する際に定着ベルト402と摺動シート406との間の負荷が徐々に増加する。このため、加圧ローラー408の速度を一定に保つためには、加圧ローラー408を回転させるモーター409のトルクTqを高める必要がある。このため、加圧ローラー408のトルクTqの値は、使用日数の経過とともに、徐々に増加する。トルクTqの値が高くなると、移動平均トルクTmavの値も高くなる。
しかしながら、トルクTqの値が高くなると、定着装置40(詳しくは、ニップ領域)において、用紙Sがスリップする現象が発生する。
用紙Sがスリップすると、加圧ローラー408が用紙Sを下流側に送る速度が低下する。このため、加圧ローラー408が用紙Sを下流側に送る速度が、定着装置40の上流側の二次転写ローラー33が用紙Sを定着装置40に送る速度よりも遅くなる。
その結果、二次転写ローラー33と定着装置40との間で、逆ループ状態が発生する。逆ループが発生すると画像が劣化する。
上記のように、用紙Sがスリップすると、検出されるトルクTqの値が小さくなる。それゆえ、算出される移動平均トルクTmavも小さくなる。
そこで、画像形成装置100では、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。このような構成によれば、逆ループが発生する前に定着装置40の寿命を仮判定可能となる。
また、上記の構成によれば、寿命の仮判定に用いる加圧ローラー408のトルクの閾値を一意に定める構成に比べて、定着装置40の寿命を延ばすことができる。
さらに、本例では、移動平均トルクTmavを利用した寿命の仮判定を行う。したがって、トルクにノイズが乗ったとしても、ノイズの影響を低減できる。すなわち、単にトルクTqに基づいて仮判定を行う場合よりも、精度の高い寿命の仮判定が可能となる。
また、制御装置101は、所定の期間(本例の場合、1日)が経過する毎に、非通紙時の空転トルクを駆動装置410から取得する。詳しくは、制御装置101は、画像形成装置100のウォームアップ後または用紙S上への定着後に検出されるトルクTqを駆動装置410から取得する。
このようなタイミングでは、画像形成が行われていない。それゆえ、駆動装置410にて検出されるトルクTqの値は、用紙S上の未定着画像Gの内容によって左右さることがない。したがって、制御装置101は、このようなタイミングのときのトルクTqを取得することにより、精度の高い寿命の仮判定が可能となる。
<C.制御構造>
図20は、画像形成装置100で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
制御装置101は、ステップS1において、定着装置40の寿命の仮判定モードとして、トルク判定許可モードが設定されているか否かを判定する。トルク判定許可モードとは、上述したように、トルクTg(本例では、移動平均トルクTmav)の経時変化に基づき、定着装置40の寿命を仮判定するモードである。なお、典型的には、当該トルク判定許可モードの設定は、サービスマンによってなされる。
制御装置101は、トルク判定許可モードが設定されていると判定すると(ステップS1においてYES)、ステップS2において、移動平均トルクTmavに基づき、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。
制御装置101は、トルク判定許可モードが設定されていないと判定すると(ステップS1においてNO)、ステップS3において、画像形成装置100での印刷枚数および加圧ローラー408の走行距離に基づいて、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。典型的には、制御装置101は、印刷枚数が予め設定された基準枚数を超えた場合、または加圧ローラー408の走行距離が予め設定された距離を超えた場合に、定着装置40が寿命であると仮判定する。すなわち、制御装置101は、印刷枚数の条件および走行距離の条件のいずれか一方の条件が成立すると、定着装置40が寿命であると仮判定する。
図21は、図20のステップS2の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
ステップS21において、定着装置40が加圧ローラー408のトルクTqを逐次検出する。ステップS22において、制御装置101は、各日において、所定のタイミングのときのトルクTqを、定着装置40から取得する。上述したように、制御装置101は、たとえば画像形成装置100のウォームアップ後に検出されるトルクTqを、駆動装置410から取得する。
ステップS23において、制御装置101は、同日の最大5回のトルクTqの平均値(平均トルクTav)を算出する。具体的には、制御装置101は、上述した式(1)の演算を実行する。ステップS24において、制御装置101は、連続する5回分の平均値を用いて、移動平均トルクTmavを算出する。
ステップS25において、制御装置101は、移動平均トルクTmavの現在値(変数の値)を、ステップS24で算出された値で更新する。ステップS26において、制御装置101は、移動平均トルクTmavが最大であれば、当該移動平均トルクTmavで移動平均トルクTmavの最大値(変数の値)を更新する。なお、移動平均トルクTmavが最大値は、定着装置40を交換した後にリセット(典型的には、ゼロに設定)される。このため、最大値は、定着装置40を交換した後の最大値となる。
ステップS27において、制御装置101は、算出された移動平均トルクTmavと、前日の移動平均トルクTmav_old(1)とを比較し、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。
なお、式(2)を参照して、算出された移動平均トルクTmavを、Tmav(n)とすると、前日の移動平均トルクTmav_old(1)は、以下の式(3)で求められる。
Tmav_old(1)=Tmav(n-1)=(Tav(n-5)+Tav(n-4)+Tav(n-3)+Tav(n-2)+Tav(n-1))÷5 … (3)
図22は、図21のステップS27の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
制御装置101は、ステップS271において、移動平均トルクTmavが前日の移動平均トルクTmav_old(1)よりも小さいか否かを判定する。制御装置101は、小さいと判定した場合(ステップS271においてYES)、ステップS272において、定着装置40が寿命であると仮判定する。制御装置101は、ステップS273において、図17に示したように、操作パネル102に警告画面を表示する。
制御装置101は、小さくないと判定した場合(ステップS271においてNO)、ステップS274において、定着装置40は未だ寿命でないと判定する。
<D.変形例>
以下では、制御装置101の寿命の仮判定処理の変形例について説明する。
(d1.第1の変形例)
図23は、移動平均トルクの経時変化を示した図である。
制御装置101は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合において、移動平均トルクTmavが予め定められた閾値Th1以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。すなわち、制御装置101は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合であっても、移動平均トルクTmavが予め定められた閾値Th1未満であるときには、定着装置40の寿命とは判定しない。
閾値Th1を用いた上記判定を行う理由は、移動平均トルクTmavがニップ領域において用紙Sのスリップが発生すると考えられる値(数値範囲)よりも十分に小さいにもかかわらず、ノイズ等により移動平均トルクTmavの値が下降に転じる場合もあり得るからある。
図24は、本変形例において、図21のステップS27の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図24のフロー図は、ステップS275を有する点において、図22に示したフロー図と異なっている。すなわち、制御装置101は、ステップS271において小さいと判定すると(ステップS271においてYES)、ステップS275において、移動平均トルクTmavは閾値Th1以上であるか否かを判定する。なお、閾値Th1は正の値とする。
制御装置101は、移動平均トルクTmavが閾値Th1以上であると判定した場合(ステップS275においてYES)、処理をステップS272に進める。制御装置101は、移動平均トルクTmavが閾値Th1未満であると判定した場合(ステップS275においてNO)、処理をステップS274に進める。
(d2.第2の変形例)
図25は、移動平均トルクの経時変化を示した図である。
制御装置101は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合において、下降量ΔTmavが閾値Th2以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。すなわち、制御装置101は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合であっても、下降量ΔTmavが閾値Th2以上未満であるときには、定着装置40の寿命とは判定しない。
閾値Th2を用いた上記判定を行う理由は、ノイズ等により移動平均トルクTmavの値が下降に転じる場合もあり得るからある。
図26は、図21のステップS27の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図26のフロー図は、ステップS276を有する点において、図24に示したフロー図と異なっている。すなわち、制御装置101は、ステップS275において閾値Th1以上であると判定すると(ステップS275においてYES)、ステップS276において、移動平均トルクTmavと移動平均トルクTmav_old(1)との差(すなわち、移動平均トルクTmavの下降量ΔTmav)が閾値Th2以上であるか否かを判定する。なお、当該差は絶対値とする。閾値Th2は正の値とする。
制御装置101は、下降量ΔTmavが閾値Th2以上であると判定した場合(ステップS276においてYES)、処理をステップS272に進める。制御装置101は、下降量ΔTmavが閾値Th2未満であると判定した場合(ステップS276においてNO)、処理をステップS274に進める。
なお、ステップS275の判定処理を省略してもよい。すなわち、制御装置101は、ステップS271において小さいと判定された場合(ステップS271においてYES)、処理を直接ステップS276に進めてもよい。
(d3.第3の変形例)
図27は、移動平均トルクの経時変化を示した図である。
制御装置101は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合(すなわち、算出された移動平均トルクが前回算出された移動平均トルクよりも小さくなった場合)において、前回算出された移動平均トルクが前々回算出された移動平均トルクよりも小さくなっていることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。すなわち、制御装置101は、移動平均トルクTmavが2回連続して下降したことを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。このような判定処理により、定着装置40の寿命判定の精度を向上させることができる。
図28は、本変形例において、図21のステップS27の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
図28のフロー図は、ステップS277を有する点において、図22に示したフロー図と異なっている。すなわち、制御装置101は、ステップS271において小さいと判定すると(ステップS271においてYES)、ステップS277において、前日の移動平均トルクTmav_old(1)が前々日の移動平均トルクTmav_old(2)よりも小さいか否かを判定する。
制御装置101は、移動平均トルクTmav_old(1)が移動平均トルクTmav_old(2)よりも小さいと判定した場合(ステップS277においてYES)、処理をステップS272に進める。制御装置101は、移動平均トルクTmav_old(1)が移動平均トルクTmav_old(2)よりも小さくないと判定した場合(ステップS277においてNO)、処理をステップS274に進める。
(d4.第4の変形例)
上記の例では、寿命判定の精度を高める観点から、移動平均トルクTmavの経時変化に着目した。すなわち、制御装置101は、移動平均トルクTmavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定した。
しかしながら、仮判定に用いるトルクは、移動平均トルクTmavに限定されるものではない。移動平均トルクTmavの代わりに、平均トルクTavを用いてもよい。あるいは、移動平均トルクTmavの代わりに、トルクTqを用いてもよい。
(1)平均トルクTavに基づく寿命の仮判定
制御装置101の平均トルク算出部152は、上述した式(1)を用いて、5回のトルクの平均値(平均トルクTav)を求める。
本変形例では、制御装置101の寿命判定部154は、トルクTg(本例の場合には、平均トルクTav)に基づいて、定着装置40の寿命が到来したか否かを仮判定する。詳しくは、寿命判定部154は、平均トルクTavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。
より詳しくは、制御装置101は、所定の期間(たとえば、1日)が経過する毎に、駆動装置410からトルクを複数回取得するとともに当該複数回にわたり取得されたトルクの平均値(平均トルクTav)を算出する。制御装置101は、算出された平均トルクTavが前回算出された平均トルクTavよりも小さくなった場合に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
上記のように、平均トルクTavの経時変化に基づき定着装置40の寿命の仮判定を行う場合であっても、上述したような、第1の変形例、第2の変形例、第3の変形例と同様の処理を適用可能である。
第1の変形例を本例に適用した場合には、以下のとおりである。制御装置101は、平均トルクTavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合において、平均トルクTavが予め定められた閾値Th1’以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
第2の変形例を本例に適用した場合には、以下のとおりである。制御装置101は、平均トルクTavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合において、下降量ΔTavが閾値Th2’以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。なお、この場合の下降量ΔTavは、平均トルクTavと前日の平均トルクTav_old(1)との差である。
第3の変形例を本例に適用した場合には、以下のとおりである。制御装置101は、平均トルクTavの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合(すなわち、算出された平均トルクTavが前回算出された平均トルクTavよりも小さくなった場合)において、前回算出された平均トルクTavが前々回算出された平均トルクTavよりも小さくなっていることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
なお、本例の場合には、移動平均トルクTmavの算出は不要であるために、制御装置101は、図18に示した移動平均トルク算出部153を備える必要はない。
(2)トルクTqに基づく寿命の仮判定
本変形例では、制御装置101の寿命判定部154は、トルクTg(本例の場合には、トルクTq)に基づいて、定着装置40の寿命が到来したか否かを仮判定する。詳しくは、寿命判定部154は、トルクTqの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。
より詳しくは、制御装置101は、所定の期間(たとえば、1日)が経過する毎に、駆動装置410からトルクを1回取得する。制御装置101は、トルクTqが前回のトルクTq(前日のトルクTq)よりも小さくなった場合に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
上記のように、トルクTqの経時変化に基づき定着装置40の寿命の仮判定を行う場合であっても、上述したような、第1の変形例、第2の変形例、第3の変形例と同様の処理を適用可能である。
第1の変形例を本例に適用した場合には、以下のとおりである。制御装置101は、トルクTqの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合において、トルクTqが予め定められた閾値Th1”以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
第2の変形例を本例に適用した場合には、以下のとおりである。制御装置101は、トルクTqの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合において、下降量ΔTqが閾値Th2”以上であることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。なお、この場合の下降量ΔTqは、トルクTqと前日のトルクTq_old(1)との差である。
第3の変形例を本例に適用した場合には、以下のとおりである。制御装置101は、トルクTqの経時変化が上昇変化から下降変化に転じた場合(すなわち、検出されたトルクTqが前回検出されたトルクTqよりも小さくなった場合)において、前回検出されたトルクTqが前々回検出されたトルクTqよりも小さくなっていることを条件に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
なお、本例の場合には、平均トルクTavと移動平均トルクTmavとの算出は不要であるために、制御装置101は、図18に示した平均トルク算出部152と移動平均トルク算出部153とを備える必要はない。
(d5.第5の変形例)
定着装置40を延命させるために、取得されたトルクTqの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことを条件に、設定時間TC2を短くするように、制御装置101を構成してもよい。
[実施の形態3]
以下、本実施の形態に係る画像形成装置について、実施の形態2と異なる点について説明する。本実施の形態に係る画像形成装置は、実施の形態2の画像形成装置100と同様のハードウェア構成を有する。制御装置101によって実行されるデータ処理が実施の形態2のデータ処理と異なる。したがって、以下では、制御装置101によって実行されるデータ処理に着目して説明する。
実施の形態2においては、制御装置101は、所定の期間(たとえば、1日)が経過する毎に、駆動装置410からトルクTqを複数回取得するとともに当該複数回にわたり取得されたトルクTqの平均値(平均トルクTav)を算出した。
本実施の形態では、加圧ローラー408の走行距離が所定の距離伸びる毎に、駆動装置410からトルクTqを複数回取得し、かつ当該複数回にわたり取得されたトルクTqの平均値(本実施の形態でも、「平均トルクTav」と称する)を算出する。
走行距離は、以下のようにして算出される。まず、制御装置101は、加圧ローラー408の回転速度の情報を駆動装置410から取得する。その後、制御装置101は、回転速度に加圧ローラー408の回転時間を乗じることにより、走行距離を算出する。
<A.機能的構成>
図29は、制御装置101の機能的構成を表した機能ブロック図である。
画像形成装置100は、制御装置101と、駆動装置410と、操作パネル102とを備える。
制御装置101は、回転速度制御部150と、トルク取得部151Aと、平均トルク算出部152Aと、移動平均トルク算出部153Aと、寿命判定部154Aと、表示制御部155と、通信制御部156とを備える。
トルク取得部151Aは、駆動装置410からトルクTq(トルクの値)を取得する。具体的には、トルク取得部151Aは、加圧ローラー408の走行距離が所定の距離伸びる毎に駆動装置410で検出されたトルクTqを、駆動装置410から取得する。以下では、所定距離を「10km」とした場合を例に挙げて説明する。
トルク取得部151Aは、走行距離が10km伸びたことをトリガとして、駆動装置410からトルクTqを取得する。典型的には、トルク取得部151Aは、走行距離が10km伸びたことが検出された後、当該検出がなされた日内において、駆動装置410から最高5回のトルクを取得する。詳しくは、トルク取得部151Aは、図3のように加圧ローラー408が定着ベルト402に接した状態であって、かつ非通紙状態のときのトルクを駆動装置410から取得する。
より詳しくは、トルク取得部151Aは、実施の形態2のトルク取得部151と同様に、画像形成装置100のウォームアップ後に検出されるトルクTqを、駆動装置410から取得する。
以上のように、「予め定められた条件」は、本例の場合、「走行距離が10km伸びた」かつ「画像形成装置100のウォームアップ後」である。なお、実施の形態2でも述べたように、「画像形成装置100のウォームアップ後」の代わりに、用紙S上への定着後に検出されるトルクTqを駆動装置410から取得するように制御装置101を構成してもよい。
トルク取得部151Aが駆動装置410から取得した5回分のトルク(トルク値)を、Tq(m[1]),Tq(m[2]),Tq(m[3]),Tq(m[4]),Tq(m[5])と称する。なお、mは、10キロ毎の距離を互いに識別するための変数である。走行距離が10km増える度に、mの値が1つ増加する。
トルク取得部151Aは、取得された5回分のトルクを平均トルク算出部152Aに送る。
平均トルク算出部152Aは、所定距離毎のトルクの平均値を求める。具体的には、平均トルク算出部152は、以下の式(4)に示すように、5回のトルクの平均値(以下、「平均トルクTav’」と称する)を求める。
Tav’(m)=(Tq(m[1])+Tq(m[2])+Tq(m[3])+Tq(m[4])+Tq(m[5]))÷5 … (4)
平均トルク算出部152Aは、算出された平均トルクTav’(m)を、移動平均トルク算出部153Aに送る。
移動平均トルク算出部153Aは、5回分の平均トルクTav’を用いて、移動平均トルクTmav’(移動平均値)を算出する。詳しくは、移動平均トルク算出部153Aは、当日の平均トルクTav’(m)と、直近の4回分の平均トルク(Tav’(m-4),Tav’(m-3),Tav’(m-2),Tav’(m-1))とを用いて、移動平均トルクTmav’(n)を算出する。具体的には、移動平均トルク算出部153Aは、以下の式(5)に示す演算を行う。
Tmav’(m)=(Tav’(m-4)+Tav’(m-3)+Tav’(m-2)+Tav’(m-1)+Tav’(m))÷5 … (5)
移動平均トルク算出部153Aは、算出された移動平均トルクTmav’(m)を、寿命判定部154Aに送る。なお、上記においては5回分(5個)の平均トルクTav’を用いて移動平均トルクTmav’を算出したが、平均トルクTav’の個数は5個に限定されるものではない。
寿命判定部154Aは、定着装置40が寿命か否かを仮判定する。詳しくは、寿命判定部154Aは、回転速度制御部150から取得した時間情報(あるいは回数情報)と、移動平均トルクTmav’に基づいて、定着装置40の寿命が到来したか否かを仮判定する。より詳しくは、寿命判定部154Aは、移動平均トルクTmav’の経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。寿命判定部154は、定着装置40が寿命であると仮判定したことを条件に、実施の形態1で説明したように、回転速度制御部150から取得した時間情報(あるいは回数情報)に基づき、定着装置40が寿命であるか否かを判定(本実施の形態では、本判定)する。
図30は、移動平均トルクTmav’の経時変化を示した図である。
グラフ(図)の横軸は、走行距離(km)を表している。グラフの縦軸は、移動平均トルクTmav’を表している。
移動平均トルクTmav’は、距離L(m-1)までは単調増加している。しかしながら、距離L(m)の移動平均トルクTmav’(m)は、前回の距離L(m-1)の移動平均トルクTmav’(m-1)よりも小さくなっている。すなわち、「Tmav’(m-1)>Tmav’(m)」の関係が成立している。
このため、寿命判定部154Aは、距離L(m)の時点(詳しくは、Tmav’(m)を算出した時点)で、定着装置40が寿命であると仮判定する。寿命判定部154Aは、寿命と仮判定すると、表示制御部155に所定の通知をする。
表示制御部155は、所定の通知を寿命判定部154から受け付けると、所定の警告画面を操作パネル102に表示させる(図17参照)。
<B.小括>
駆動装置410は、制御装置101からの指令に基づき、加圧ローラー408の回転速度を一定に維持するようにモーター409を駆動する。駆動装置410は、モーター409の駆動時のトルクを検出する。
制御装置101は、駆動装置410から、検出されたトルクTqを取得する。制御装置101は、トルクTg(本例の場合には、移動平均トルクTmav’)の経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことにより、定着装置40が寿命であると仮判定する。
詳しくは、制御装置101は、加圧ローラー408の走行距離が所定距離(本例の場合10km)伸びる毎に、駆動装置410からトルクTqを複数回取得するとともに当該複数回にわたり取得されたトルクTqの平均値(平均トルクTav’)を算出する。制御装置101は、算出された平均トルクTav’と、少なくとも前回算出された平均トルクTav’とを用いて移動平均値(移動平均トルクTmav’)を算出する。制御装置101は、算出された移動平均トルクTmav’が前回算出された移動平均トルクTmav’よりも小さくなった場合に、定着装置40が寿命であると仮判定する。
このような構成によれば、本実施の形態においても、実施の形態2で述べた効果を得ることができる。
<C.制御構造>
本実施の形態においても、実施の形態2と同様に、図20に示した処理が行われる。
図31は、図20のステップS2の処理の詳細を説明するためのフロー図である。
ステップS21において、定着装置40が、加圧ローラー408のトルクTqを逐次検出する。ステップS22Aにおいて、制御装置101は、加圧ローラー408の走行距離が所定の距離伸びる毎に、所定のタイミングのときのトルクTqを、定着装置40から取得する。上述したように、制御装置101は、たとえば画像形成装置100のウォームアップ後に検出されるトルクTqを、駆動装置410から取得する。
ステップS23Aにおいて、制御装置101は、同日の最大5回のトルクTqの平均値(平均トルクTav’)を算出する。具体的には、制御装置101は、上述した式(4)の演算を実行する。ステップS24Aにおいて、制御装置101は、連続する5回分の平均値を用いて、移動平均トルクTmav’を算出する。
ステップS25Aにおいて、制御装置101は、移動平均トルクTmav’の現在値(変数の値)を、ステップS24Aで算出された値で更新する。ステップS26Aにおいて、制御装置101は、移動平均トルクTmav’が最大であれば、当該移動平均トルクTmav’で移動平均トルクTmav’の最大値(変数の値)を更新する。なお、移動平均トルクTmav’が最大値は、定着装置40を交換した後にリセット(典型的には、ゼロに設定)される。このため、最大値は、定着装置40を交換した後の最大値となる。
ステップS27Aにおいて、制御装置101は、算出された移動平均トルクTmav’と、前回の移動平均トルクTmav’_old(1)とを比較し、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。
なお、式(5)を参照して、算出された移動平均トルクTmav’を、Tmav’(m)とすると、前回の移動平均トルクTmav’_old(1)は、以下の式(6)で求められる。
Tmav’_old(1)=Tmav’(m-1)=(Tav’(m-5)+Tav’(m-4)+Tav’(m-3)+Tav’(m-2)+Tav’(m-1))÷5… (6)
図32は、図31のステップS27Aの処理の詳細を説明するためのフロー図である。
制御装置101は、ステップS271Aにおいて、移動平均トルクTmav’が前回の移動平均トルクTmav’_old(1)よりも小さいか否かを判定する。制御装置101は、小さいと判定した場合(ステップS271AにおいてYES)、ステップS272において、定着装置40が寿命であると仮判定する。制御装置101は、ステップS273において、図17に示したように、操作パネル102に警告画面を表示する。
制御装置101は、小さくないと判定した場合(ステップS271AにおいてNO)、ステップS274において、定着装置40は未だ寿命でないと判定する。
<D.変形例>
実施の形態2の「<D.変形例>」に示した各処理(第1の変形例~第5の変形例)を、本実施の形態においても適用可能である。
たとえば、「(d4.第4の変形例)」の適用については、以下のとおりである。
算出された平均値(平均トルクTav’)が前回算出された平均値よりも小さくなった場合に、定着装置40が寿命であると仮判定するように、制御装置101を構成してもよい。
あるいは、取得されたトルクTqが前回取得されたトルクTqよりも小さくなった場合に、定着装置40が寿命であると仮判定するように、制御装置101を構成してもよい。
[実施の形態4]
本実施の形態では、トルク判定許可モードが設定されていると判定された後の寿命判定が、実施の形態2および実施の形態3とは異なる。以下、この点について説明する。
図33は、画像形成装置100で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
制御装置101は、ステップS1において、定着装置40の寿命判定モードとして、トルク判定許可モードが設定されているか否かを判定する。
制御装置101は、トルク判定許可モードが設定されていると判定すると(ステップS1においてYES)、ステップS2Aにおいて、画像形成装置100での印刷枚数および加圧ローラー408の走行距離と、移動平均トルクTmav’とに基づき、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。
制御装置101は、トルク判定許可モードが設定されていないと判定すると(ステップS1においてNO)、ステップS3において、画像形成装置100での印刷枚数および加圧ローラー408の走行距離に基づいて、定着装置40が寿命であるか否かを仮判定する。
ステップS2Aに示したように、本実施の形態では、トルク判定許可モードが設定されている場合には、移動平均トルクTmav’だけではなく、印刷枚数および加圧ローラー408の走行距離を考慮して、定着装置40の寿命の仮判定が行われる。したがって、制御装置101は、トルク判定許可モードにおいて、さらに精度の高い寿命判定を行うことができる。
[実施の形態5]
本実施の形態では、画像形成装置とサーバー装置(情報処理装置)とが協働して定着装置40の寿命判定を行う構成を説明する。本実施の形態に係る構成は、実施の形態1から4に適宜組み合わせることが可能である。
図34は、情報処理システム1のネットワーク構成を表した図である。
情報処理システム1は、画像形成装置100と、サーバー装置900とを備える。画像形成装置100と、サーバー装置900とは、ネットワーク901を介して通信可能に接続されている。なお、画像形成装置100は、通信制御部156(図18参照)によって、サーバー装置900と通信する。
情報処理システム1では、サーバー装置900が、駆動装置410にて検出されたトルクTqを、ネットワーク901を介して取得する。また、サーバー装置900は、平均トルクTav(または、Tav’)の算出と、移動平均トルクTmav(または、Tmav’)との算出を行う。さらに、サーバー装置900は、移動平均トルクTmav(または、Tmav’)に基づいた定着装置40の寿命判定を行う。
このような構成によっても、実施の形態1~4で説明した効果と同様の効果を得られる。
なお、画像形成装置100が移動平均トルクTmav(または、Tmav’)を算出し、サーバー装置900が寿命判定を行うように、情報処理システム1を構成してもよい。
[実施の形態6]
上記の各実施の形態では、駆動装置410がモーター409の駆動時のトルクを検出したが、これに限定されるものではない。たとえば、制御装置101がモーター409の駆動時のトルクを検出してもよい。あるいは、画像形成装置100内の図示しない装置がモーター409の駆動時のトルクを検出してもよい。
少なくとも、画像形成装置100が、モーター409の駆動時のトルクを検出する機能を備えていればよい。具体的には、図4に示したトルク検出部413が、画像形成装置100のどこかに備えられていればよい。すなわち、トルク検出部413は、定着装置40内に存在してもよいし、定着装置40外に存在してもよい。なお、このようなトルクを検出する機能は、たとえば、少なくとも1つのプロセッサを用いて実現することができる。
画像形成装置100が定着装置40の寿命判定を行う場合には、制御装置101が、予め定められた条件が成立する毎に、モーター409の駆動時のトルクを取得し、かつ、取得されたトルクの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことを条件に、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間に基づく定着装置40の寿命判定を行う構成であればよい。
あるいは、サーバー装置900が定着装置40の寿命判定を行う場合には、サーバー装置(情報処理装置)900が、予め定められた条件が成立する毎に、画像形成装置100からモーター409の駆動時のトルクを取得し、かつ、取得されたトルクの経時変化が上昇変化から下降変化に転じたことを条件に、加圧ローラー408の回転速度を変動させている時間に基づく定着装置40の寿命判定を行う構成であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。