以下に、本願発明を画像形成装置の一例であるタンデム型カラーデジタルプリンター(以下、プリンターと称する)に適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交した方向を正面視とし、この方向を基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
まず始めに、図1を参照しながら、プリンター1の概要を説明する。図1に示すように、実施形態のプリンター1は、その筐体2内に、大別して転写部3(画像プロセス部と言ってもよい)、給紙部4及び定着部5等を備えている。詳細は図示していないが、プリンター1は、例えばLANといったネットワークに接続されていて、外部機器(図示省略)からの印刷指令を受け付けると、当該指令に基づいて印刷を実行するように構成されている。プリンター1はいわゆるA3対応機であり、給紙部4には、最大でA3サイズの記録材Pを、転写部3に短辺側から進入する縦送りの姿勢で収容することが可能である。この場合、A3縦の記録材Pの長辺寸法(搬送方向寸法)は420mm、短辺寸法(幅寸法)は297mmである。
筐体2内の中央部に位置する転写部3は、像担持体の一例である感光体ドラム13上に形成されたトナー像を記録材Pに転写する役割を担うものであり、中間転写ベルト6、及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する計4つの作像部7等を備えている。なお、図1では説明の便宜上、各作像部7に、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
中間転写ベルト6は、導電性を有する素材からなる無端状のものであり、筐体2内の中央部右側に位置する駆動ローラー8と、同じく中央部左側に位置する従動ローラー9とに巻き掛けられている。転写駆動部材としての主モーター54(図3参照)からの動力伝達にて、駆動ローラー8を図1の反時計方向に回転駆動させることにより、中間転写ベルト6は図1の反時計方向に回転する。
中間転写ベルト6のうち駆動ローラー8に巻き掛けられた部分の外周側には、二次転写ローラー10が配置されている。二次転写ローラー10は中間転写ベルト6に当接していて、中間転写ベルト6と二次転写ローラー10との間(当接部分)が、二次転写位置11になっている。二次転写ローラー10は、中間転写ベルト6の回転に伴って、又は二次転写位置11に挟持搬送される記録材Pの移動に伴って、図1の時計方向に回転する。中間転写ベルト6のうち従動ローラー9に巻き掛けられた部分の外周側には、転写ベルトクリーナー12が配置されている。転写ベルトクリーナー12は、中間転写ベルト6上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、中間転写ベルト6に当接している。
4つの作像部7は、中間転写ベルト6の下方において、図1の左からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、中間転写ベルト6に沿って並べて配置されている。各作像部7は、図1の時計方向に回転駆動する像担持体の一例としての感光体ドラム13を備えている。感光体ドラム13の周囲には、図1における時計回りの回転方向に沿って順に、帯電器14、現像部15、一次転写ローラー16、及び感光体クリーナー17が配置されている。
感光体ドラム13は負帯電性のものであり、主モーター54からの動力伝達にて、図1の時計方向に回転駆動するように構成されている。帯電器14はローラー帯電式のものであり、当該帯電器14には、帯電用電源(図示省略)から所定のタイミングにて感光体帯電のための電圧が印加される。現像部15は、負の極性を呈するトナーを利用して、感光体ドラム13上に形成された静電潜像を反転現像にて顕在化させるものである。
一次転写ローラー16は中間転写ベルト6の内周側に位置していて、中間転写ベルト6を挟んで、対応する作像部7の感光体ドラム13に対峙している。一次転写ローラー16も、中間転写ベルト6の回転に伴って図1の反時計方向に回転する。中間転写ベルト6と一次転写ローラー16との間(当接部分)は一次転写位置18になっている。感光体クリーナー17は、感光体ドラム13上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、感光体ドラム13に当接している。
4つの作像部7の下方には露光部19が配置されている。露光部19は、外部端末等からの画像情報に基づき、レーザービームによって各感光体ドラム13に静電潜像を形成するものである。中間転写ベルト6の上方には、各現像部15に供給されるトナーを収容するホッパー20が配置されている。なお、図1では説明の便宜上、各ホッパー20にも、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
転写部3の下方に位置する給紙部4は、記録材Pを収容する複数段(実施形態では2段)の給紙カセット21,22、給紙カセット21,22内の記録材Pを1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー23,24、及び繰り出された記録材Pを所定のタイミングにて二次転写位置11に搬送する一対のレジストローラー25等を備えている。
各給紙カセット21(22)は筐体2の下部に着脱可能に配置されている。各給紙カセット21(22)内の記録材Pは、対応する繰り出しローラー23(24)の回転にて、最上部のものから1枚ずつ搬送経路30に送り出される。搬送経路30は、給紙部4の各給紙カセット21(22)から、両レジストローラー25間の位置、及び転写部3における二次転写位置11を経て、定着部5における定着位置35に至る。そして、搬送経路30は、定着位置35から一対の排出ローラー26を介して筐体2上面の排紙トレイ27にまで延びている。
二次転写ローラー10の上方に位置する定着部5は、定着ローラー31及び加熱ローラー32と、これら両ローラー31,32に巻き掛けられた定着ベルト33とを備えている。定着ベルト33のうち定着ローラー31に巻き掛けられた部分の外周側には、加圧ローラー34が配置されている。加圧ローラー34は、定着ベルト33に当接していて、定着ベルト33と加圧ローラー34との間(当接部分)が定着位置35になっている。定着駆動部材としての副モーター56(図3参照)からの動力伝達にて、加圧ローラー34が図1の時計方向に回転駆動することにより、定着ローラー31が定着ベルト33と共に図1の反時計方向に回転する。加熱ローラー32の内部には、定着ベルト33を加熱するヒータの一例として、ハロゲンランプ36が収容されている。
搬送経路30のうち定着位置35より搬送下流側には、定着位置35を通過した記録材Pを定着ベルト33から分離させつつ一対の排出ローラー26に向けて案内するための分離爪37が配置されている。一方、搬送経路30のうち定着位置35より搬送上流側には、記録材Pを安定した姿勢で定着位置35に向けて案内する定着前ガイド38が配置されている。搬送経路30のうち二次転写位置11と定着位置35との間は、転写部3から定着部5に至る中間経路40である。従って、定着前ガイド38は中間経路40中に配置されている。なお、筐体2の内部には、当該内部の雰囲気湿度を検出する湿度センサー39が配置されている。この場合の湿度センサー39は上段の給紙カセット21の上方に配置されている(図1参照)。
プリンター1における画像形成動作の一例について簡単に説明する。プリンター1は、1色のトナー(例えばブラック)を用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードと、4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードとの間で切り換え可能に構成されている。
例えばカラーモードの場合はまず、転写部3の各作像部7において、所定速度で回転駆動する感光体ドラム13の外周面が帯電器14にて帯電される。次いで、帯電された感光体ドラム13の外周面に、外部端末からの画像情報に応じたレーザービームが露光部19から投射され、静電潜像が形成される。そして、静電潜像は、現像部15から供給されるトナーにて反転現像されて顕在化し、各色のトナー像となる。
各感光体ドラム13の外周面に形成された各色のトナー像は、感光体ドラム13の回転にて一次転写位置18に到達すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体ドラム13から中間転写ベルト6の外周面に転写(一次転写)されて重ねられる。中間転写ベルト6に転写されず感光体ドラム13の外周面に残った未転写トナーは、感光体ドラム13の回転を利用して感光体クリーナー17にて掻き取られ、感光体ドラム13上から取り除かれる。
重ね合わされた4色のトナー像は、中間転写ベルト6の回転にて二次転写位置11に移動する。このとき、重ね合わされた4色のトナー像の移動タイミングに合わせて、外部端末等の印刷指令に基づき選択された給紙カセット21(22)から、記録材Pが二次転写位置11に搬送される。そして、記録材Pが二次転写位置11を通過することにより、重ね合された4色のトナー像が記録材Pに一括して転写(二次転写)される。なお、二次転写後に中間転写ベルト6の外周面に残った未転写トナーは、転写ベルトクリーナー12にて掻き取られ、中間転写ベルト6上から取り除かれる。その後、各感光体ドラム13及び中間転写ベルト6の回転駆動が停止する。
4色のトナー像が二次転写された記録材P(未定着トナー像を乗せた記録材P)は、搬送経路30を通って定着部5の定着位置35に搬送される。そして、記録材Pが定着位置35を通過することにより、未定着トナー像が記録材Pに定着する。その後、記録材Pは一対の排出ローラー26の回転にて排紙トレイ27上に排出されることになる。
次に、図2及び図3を参照しながら、実施形態におけるループ制御に関連する構造について説明する。図2に示すように、転写部3から定着部5に至る中間経路40中には、当該中間経路40を通過している記録材Pのループ(弛み)の有無を検出するループ検出部材として、ループセンサー41が配置されている。実施形態のループセンサー41は、記録材Pとの接触の有無によって、下端側を回動支点にして中間経路40に接近・離間する方向に回動可能なフラグ体42と、当該フラグ体42を検出するフォトインタラプター等の光センサー43とを有している。フラグ体42が光センサー43を遮光するか否かによって、記録材Pのループ量が所定以上か否か、すなわち記録材PのループLの有無が検出される。
実施形態では、中間経路40中で記録材PがループLを形成してフラグ体42に接触している場合(図2(a)参照)、光センサー43は遮光状態となってオンを検出する。中間経路40中で記録材PがループLを形成せずフラグ体42に非接触又は接触程度が小さい場合は(図2(b)参照)、光センサー43が透光状態となってオフを検出する。光センサー43は後述するコントローラー45に電気的に接続されている。ループセンサー41がオフ状態になると、当該オフ状態の継続時間(以下、オフ時間という)がコントローラー45のタイマー51(計時手段)にて計測される。
プリンター1の制御全般を統括するコントローラー45は筐体2内に配置されている。コントローラー45は、各種演算処理や制御を実行するCPU46のほか、外部機器との接続用の通信インターフェイス(I/F)部47、EEPROMやフラッシュメモリー等の記憶手段48、制御プログラムやデーターを一時的に記憶させるRAM49、記録材Pの搬送枚数等を計測するカウンター50、時間を計測するタイマー51、及び入出力インターフェイス等を有している。
コントローラー45には、転写部3の駆動ローラー8を回転駆動させる主モーター54の起動、停止及び増減速等の速度制御を司る主モーター制御部53と、定着部5の加圧ローラー34を回転駆動させる副モーター56の起動、停止及び増減速等の速度制御を司る副モーター制御部55とが電気的に接続されている。また、コントローラー45には、例えば筐体2内部の雰囲気湿度を測定する湿度センサー39や、筐体2の外面側に装着された操作パネル57等もコントローラー45に電気的に接続されている。
各モーター制御部53,55は、コントローラー45からの指令に基づき、それぞれに対応するモーター54,56を回転駆動させる。主モーター54が回転駆動させる駆動ローラー8の駆動速度(回転速度)は、いわゆるプロセス速度(プリンタ1の画像形成速度)に設定されている。副モーター56が回転駆動させる加圧ローラー34の駆動速度は、前記プロセス速度を基準にした高低2段階に切り換え可能である。
コントローラー45は、ループセンサー41の検出結果に基づき副モーター56を電気的に制御して、加圧ローラー34の駆動速度を高速から低速に、又は低速から高速に切り換えるように構成されている。すなわち、コントローラー45は、ループセンサー41がオン(ループあり)を検出すると、加圧ローラー34の駆動速度を高速にして記録材PのループLを解消させ、オフ(ループなし)を検出すると、加圧ローラー34の駆動速度を低速にして記録材PのループLを発生させるループ制御を実行する速度切換部の役割を担っている。
加圧ローラー34の駆動速度を高速にした場合は、駆動モーター8の駆動速度ひいては転写部3での記録材P搬送速度に対して、定着位置35での記録材P突入量が増える。加圧ローラー34の駆動速度を低速にした場合は、駆動モーター8の駆動速度ひいては転写部3での記録材P搬送速度に対して、定着位置35での記録材P突入量が減る。このように定着位置35での記録材P突入量を増減させることによって、記録材P全体としては、平均的に所定のループL状態(搬送姿勢)で安定搬送される。
実施形態において、プリンター1のプロセス速度Vo(駆動モーター8の駆動速度又は転写部3での記録材P搬送速度とも言える)は200mm/secに設定されている。加圧ローラー34の駆動速度のうち高速駆動速度Vhは、プロセス速度Voに対して駆動速度比(周速比)で3%速い206mm/secに設定され、低速駆動速度Vlはプロセス速度Voに対して駆動速度比で3%遅い194mm/secに設定されている。駆動速度比は(Vh−Vo)/Vo又は(Vl−Vo)/Voで定義される。
図4はコントローラー45によるループ制御全体の流れを示している。以下に開示のフローチャートに示すアルゴリズムは、コントローラー45の記憶手段48にプログラムとして予め記憶されていて、RAM49に読み出されてからCPU46にて実行される。図4に示すように、コントローラー45は、例えば操作パネル57や外部機器からの印刷指令を受信して(S01:YES)、印刷動作の開始を指示すると(S02)、記録材Pの先端が定着位置35に突入する直前のループ制御開始位置に到達したか否かを判別する(S03)。ここで、記録材Pの先端がループ制御開始位置に到達したか否かは、例えばタイマー51等でレジストローラー25が駆動開始してからの時間を計測することによって判別可能である。フォトセンサー等の記録材検出センサーを用いて、記録材Pの先端がループ制御開始位置に到達したか否かを検出してもよい。
ステップS03において、記録材Pの先端がループ制御の開始位置に到達していれば(S03:YES)、ループセンサー41の検出結果に基づき副モーター56を電気的に制御して、加圧ローラー34の駆動速度を高速Vhから低速Vlに、又は低速から高速に切り換えるループ制御を実行する(S04)。その後、記録材Pの後端が定着位置35を通過した直後のループ制御終了位置に到達すれば(S05:YES)、ループ制御を終了する。記録材Pの後端がループ制御終了位置に到達したか否かは、タイマー51等でレジストローラー25が駆動開始してからの時間を計測することによって判別してもよいし、フォトセンサー等の記録材検出センサーを用いて検出してもよい。
図5はコントローラー45によるループ制御の第1例の詳細を示している。実施形態のコントローラー45は、ステップS04のループ制御実行中に、タイマー51にて計測されるループセンサー41のオフ時間Toffが予め設定された規定時間Tz以上(上回る場合)になると、加圧ローラー34の駆動速度の高低Vh,Vl切り換えを連続的に実行し、記録材Pにおける中間経路40中の部分に引張りと弛みとを交互に繰り返し付与して、記録材Pに生じていた逆ループRL(図2(c)参照)を解消する逆ループ解消制御をも実行するように構成されている。
この場合、図5に示すように、ループセンサー41がオンか否かを判別し(S11)、ループセンサー41がオンならば(S11:YES)、加圧ローラー34の駆動速度を高速駆動速度Vhにして(S12)、図4のステップS05に移行する。ループセンサー41がオフならば(S11:NO)、加圧ローラー34の駆動速度を低速駆動速度Vlにし(S13)、次いで、記録材Pの搬送方向長さがB4サイズの長辺寸法(364mm)未満(下回る場合)か否かを判別する(S14)。なお、搬送方向長さの境界値自体は、上回る側に含めても下回る側に含めてもよい。また、記録材Pの搬送方向長さの情報は、例えば筐体2の操作パネル57や外部機器からの指令に含まれるものを取得すれば足りる。
記録材Pの搬送方向長さがB4サイズの長辺寸法未満であれば(S14:YES)、記録材Pの搬送方向長さが比較的短くて逆ループRLを生ずるおそれ、ひいては、記録材Pの後端跳ねによる汚れを生ずる可能性が低い。そこで、この場合は逆ループ解消制御を割愛して、図4のステップS05に移行する。記録材Pの搬送方向長さがB4サイズの長辺寸法以上ならば(S14:NO)、次いで、ループセンサー41のオフ時間Toffが予め設定された規定時間Tz以上(上回る場合)か否かを判別する(S15)。ここで、第1例ではTz=500msecが採用されている。なお、規定時間Tz自体は上回る側に含めてもよいし、下回る側に含めてもよい。第1例では上回る側に含めている。オフ時間Toffが規定時間Tz未満であれば(S15:NO)、図4のステップS05に移行する。
オフ時間Toffが規定時間Tz以上であれば(S15:YES)、記録材Pに逆ループRLが生じていると推定されるので、加圧ローラー34の駆動速度の高低Vh,Vl切り換えを連続的に実行する(逆ループ解消制御を実行する、S16)。ここで、高速駆動速度Vhでの加圧ローラー34の駆動時間Th(以下、高速駆動時間Thという)は60msecに、低速駆動速度Vlでの加圧ローラー34の駆動時間Tl(以下、低速駆動時間Tlという)は60msecに設定されている。従って、第1例では、オフ時間Toffが規定時間Tz以上になると、加圧ローラー34の駆動速度を60msecごとに高速駆動速度Vh→低速駆動速度Vl→高速駆動速度Vh・・・と交互に繰り返し切り換えるのである。そうすると、記録材Pにおける中間経路40中の部分には、駆動速度Vh,Vlの切り換えによる引張りと弛みとが交互に繰り返し付与されることになり、その結果、記録材Pに生じていた逆ループRLが解消される。なお、言うまでもないが、第1例では、高速と低速との駆動時間比が1:1である。
それから、ループセンサー41がオンか否かを判別し(S17)、ループセンサー41がオフならば(S17:NO)、ステップS16に戻る。ループセンサー41がオンならば(S17:YES)、逆ループRLが解消して通常のループLが形成されたことを意味するので、逆ループ解消制御を終了して、図4のステップS05に移行する。
以上の説明から明らかなように、実施形態のコントローラー45は、ループセンサー41のオフ時間Toffが規定時間Tzを上回ると、加圧ローラー34の駆動速度の高低Vh,Vl切り換えを連続的に実行し、その後、ループセンサー41がオンになると、高低Vh,Vl切り換えを終了するから、記録材Pにおける中間経路40中の部分に引張りと弛みとを交互に繰り返し付与できることになり、記録材Pとして薄紙(例えば坪量60g/m2以下)を用いた場合であっても、当該記録材Pに生じていた逆ループRLを簡単に解消できる。その上、逆ループRL発生に際して定着部5の駆動速度を高速にするだけの特許文献1及び2の技術に比べて、逆ループRL解消の反動で記録材Pを引張るおそれは格段に少なくなるから、画像伸びの問題を惹起するおそれも回避できる。
また、コントローラー45は、記録材Pの搬送方向長さがB4サイズの長辺寸法を下回る場合に、前記連続的な高低Vh,Vl切り換え動作の実行を禁止するから、記録材Pの搬送方向長さが比較的短くて逆ループRLを生ずるおそれ、ひいては、記録材Pの後端跳ねによる汚れを生ずる可能性が低い場合に、逆ループ解消制御を省略でき、効率のよいループ制御を実行できるのである。
図6の表は、規定時間Tzと高低駆動時間Th,Tlとの効果を実証する確認結果を示している。図6によれば、規定時間Tz=500msec、高速駆動時間Th=60msec、低速駆動時間Tl=60msec(駆動時間比=1:1)の条件1の場合が、記録材Pの後端跳ねによる汚れ及び画像擦れや、逆ループ解消の反動による画像伸びといった画像不良の問題を確実に回避できることが分かった。
図7の表はループ制御の第2例を示している。第2例では、プロセス速度Voより遅く加圧ローラー34の低速駆動速度Vlより速い(平均)搬送速度Vavgで記録材Pを定着部5から搬送するように、高低Vh,Vl切り換え時における高速と低速との駆動時間比を設定している。この場合の駆動時間比は、高速駆動時間Th:低速駆動時間Tl=0.8:1.2=48msec:72msecを採用しており、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgは198.8mm/secになる。このように連続的な高低Vh,Vl切り換え動作の際に、高速と低速との駆動時間比Th:Tlを調節して、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを、プロセス速度Voより遅く加圧ローラー34の低速駆動速度Vlより速くすれば、記録材Pを引張って画像伸びを生じさせることなく、記録材Pに付与されているストレスや反りを解放できる。従って、逆ループRLを解消した後でも、通常のループ制御にスムーズに戻れる。
図8はループ制御の第3例を示している。第3例では、規定時間Tzが記録材Pの剛性に応じて可変に設定され、記録材Pの剛性が予め設定された設定値を上回る場合、すなわち記録材Pの剛性が比較的高い場合に、最大サイズの記録材Pの長辺側が定着部5を通り過ぎる最長通過時間Tmaxを上回るように、規定時間Tzが設定される。この場合、最大サイズの記録材PはA3サイズであり、その長辺寸法は420mmである。連続的な高低Vh,Vl切り換え動作における高速と低速との駆動時間比Th:Tlを、第1例と同様に1:1とすれば、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgはプロセス速度Voと同じ200mm/secになる。従って、最長通過時間Tmax=2100msecになる。なお、記録材Pの剛性に関する情報としては、例えば筐体2の操作パネル57や外部機器からの指令に含まれる記録材Pの厚みや種類等を取得すれば足りる。
第3例のループ制御ではまず、操作パネル57や外部機器からの指令に含まれる記録材Pの剛性情報を取得し(S27)、取得された剛性情報が予め設定された設定値以上ならば(上回る場合、S28:YES)、規定時間Tzを最長通過時間Tmaxに設定する(S29)。この場合の設定値は坪量256g/m2が採用されている。坪量256g/m2以上の記録材Pはいわゆる厚紙に相当し、ループL及び逆ループRLをあまり形成しない程度に剛性が高いものである。設定値自体は、上回る側に含めても下回る側に含めてもよい。取得された剛性情報が設定値未満であれば(S28:NO)、記録材Pの剛性は比較的低く薄紙又は普通紙相当と解されるので、規定時間Tzを第1例と同様に500msecに設定する(S30)。ステップS31以下の流れは第1例のステップS11以降と同様なので、その説明を省略する。
ループL及び逆ループRLをあまり形成しない程度に剛性が高い記録材Pについては、逆ループ解消制御をいちいち実行する必要はない。そこで第3例では、剛性の高い記録材Pについて、規定時間Tzを最長通過時間Tmaxに設定することによって、逆ループ解消制御を確実に禁止している。すなわち、規定時間Tzというパラメーターの変更だけで、制御態様を複雑化することなく、記録材Pの剛性の相違に伴う逆ループ解消制御の要否決定を簡単に行える。
図9はループ制御の第4例を示している。第4例では、高低Vh,Vl切り換え動作における高速と低速との駆動時間比Th:Tlを記録材Pの坪量に応じて変更する場合である。図9に示すように、操作パネル57や外部機器からの指令に含まれる記録材Pの坪量情報(剛性情報と言ってもよい)を取得し(S47)、取得された坪量情報が予め設定されたしきい値以上ならば(S48:YES)、高低Vh,Vl切り換え動作における高速と低速との駆動時間比Th:Tlを0.8:1.2とし(S49)、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを198.8mm/secと遅めにする。坪量情報がしきい値未満ならば(S48:NO)、駆動時間比Th:Tlを1:1とし(S50)、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを200mm/secと速めにする。この場合のしきい値は坪量60g/m2が採用されている。ステップS51以下の流れは第1例のステップS11以降と同様なので、詳細な説明を省略する。このようにすると、記録材Pの坪量の大小に応じて、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを調節でき、記録材Pに付与されているストレスや反りを効率よく適切に解放できる。
図10はループ制御の第5例を示している。第5例では、高低Vh,Vl切り換え動作における高速と低速との駆動時間比Th:Tlを環境の湿度(湿度センサー39の検出結果)に応じて変更する場合である。この場合、湿度センサー39の検出結果が予め設定されたしきい値未満ならば(S68:NO)、高低Vh,Vl切り換え動作における高速と低速との駆動時間比Th:Tlを0.8:1.2とし(S69)、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを198.8mm/secと遅めにする。湿度センサー39の検出結果がしきい値以上ならば(S68:YES)、駆動時間比Th:Tlを1:1とし(S70)、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを200mm/secと速めにする。第5例のしきい値は85%が採用されている。ステップS71以下の流れは第1例のステップS11以降と同様なので、詳細な説明を省略する。このようにすると、第4例の場合と同様に、環境の湿度の高低に応じて、記録材P全体としての定着部5での平均搬送速度Vavgを調節でき、記録材Pに付与されているストレスや反りを効率よく適切に解放できる。なお、第4例や第5例に示すように、坪量情報と湿度センサー39の検出結果とのうち少なくとも一方に応じて駆動時間比Th:Tlを変更可能にすればよいが、両方のパラメーターを組み合わせて駆動時間比Th:Tlを決定してもよい。
本願発明は前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。前述の実施形態では、画像形成装置としてプリンターを例にして説明したが、これに限らず、複写機、プリンター、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等であってもよい。
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。