以下に、本願発明を画像形成装置の一例であるタンデム型カラーデジタルプリンター(以下、プリンターと称する)に適用した実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「上下」等)を用いる場合は、図1において紙面に直交した方向を正面視とし、この方向を基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
まず始めに、図1を参照しながら、プリンター1の概要を説明する。図1に示すように、実施形態のプリンター1は、その筐体2内に、大別して転写部3(画像プロセス部と言ってもよい)、給紙部4及び定着部5等を備えている。詳細は図示していないが、プリンター1は、例えばLANといったネットワークに接続されていて、外部機器(図示省略)からの印刷指令を受け付けると、当該指令に基づいて印刷を実行するように構成されている。プリンター1はいわゆるA3対応機であり、給紙部4には、最大でA3サイズの記録材Pを、転写部3に短辺側から進入する縦送りの姿勢で収容することが可能である。この場合、A3縦の記録材Pの長辺寸法(搬送方向寸法)は420mm、短辺寸法(幅寸法)は297mmである。
筐体2内の中央部に位置する転写部3は、像担持体の一例である感光体ドラム13上に形成されたトナー像を記録材Pに転写する役割を担うものであり、中間転写ベルト6、及びイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色に対応する計4つの作像部7等を備えている。なお、図1では説明の便宜上、各作像部7に、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
中間転写ベルト6は、導電性を有する素材からなる無端状のものであり、筐体2内の中央部右側に位置する駆動ローラー8と、同じく中央部左側に位置する従動ローラー9とに巻き掛けられている。転写駆動部材としての主モーター54(図3参照)からの動力伝達にて、駆動ローラー8を図1の反時計方向に回転駆動させることにより、中間転写ベルト6は図1の反時計方向に回転する。
中間転写ベルト6のうち駆動ローラー8に巻き掛けられた部分の外周側には、二次転写ローラー10が配置されている。二次転写ローラー10は中間転写ベルト6に当接していて、中間転写ベルト6と二次転写ローラー10との間(当接部分)が、二次転写ニップ部11になっている。二次転写ローラー10は、中間転写ベルト6の回転に伴って、又は二次転写ニップ部11に挟持搬送される記録材Pの移動に伴って、図1の時計方向に回転する。中間転写ベルト6のうち従動ローラー9に巻き掛けられた部分の外周側には、転写ベルトクリーナー12が配置されている。転写ベルトクリーナー12は、中間転写ベルト6上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、中間転写ベルト6に当接している。
4つの作像部7は、中間転写ベルト6の下方において、図1の左からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、中間転写ベルト6に沿って並べて配置されている。各作像部7は、図1の時計方向に回転駆動する像担持体の一例としての感光体ドラム13を備えている。感光体ドラム13の周囲には、図1における時計回りの回転方向に沿って順に、帯電器14、現像部15、一次転写ローラー16、及び感光体クリーナー17が配置されている。
感光体ドラム13は負帯電性のものであり、主モーター54からの動力伝達にて、図1の時計方向に回転駆動するように構成されている。帯電器14はローラー帯電式のものであり、当該帯電器14には、帯電用電源(図示省略)から所定のタイミングにて感光体帯電のための電圧が印加される。現像部15は、負の極性を呈するトナーを利用して、感光体ドラム13上に形成された静電潜像を反転現像にて顕在化させるものである。
一次転写ローラー16は中間転写ベルト6の内周側に位置していて、中間転写ベルト6を挟んで、対応する作像部7の感光体ドラム13に対峙している。一次転写ローラー16も、中間転写ベルト6の回転に伴って図1の反時計方向に回転する。中間転写ベルト6と一次転写ローラー16との間(当接部分)は一次転写ニップ部18になっている。感光体クリーナー17は、感光体ドラム13上に残留する未転写トナーを除去するためのものであり、感光体ドラム13に当接している。
4つの作像部7の下方には露光部19が配置されている。露光部19は、外部端末等からの画像情報に基づき、レーザービームによって各感光体ドラム13に静電潜像を形成するものである。中間転写ベルト6の上方には、各現像部15に供給されるトナーを収容するホッパー20が配置されている。なお、図1では説明の便宜上、各ホッパー20にも、再現色に応じて符号Y,M,C,Kを添えている。
転写部3の下方に位置する給紙部4は、記録材Pを収容する複数段(実施形態では2段)の給紙カセット21,22、給紙カセット21,22内の記録材Pを1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー23,24、及び繰り出された記録材Pを所定のタイミングにて二次転写ニップ部11に搬送する一対のレジストローラー25等を備えている。
各給紙カセット21(22)は筐体2の下部に着脱可能に配置されている。各給紙カセット21(22)内の記録材Pは、対応する繰り出しローラー23(24)の回転にて、最上部のものから1枚ずつ搬送経路30に送り出される。搬送経路30は、給紙部4の各給紙カセット21(22)から、両レジストローラー25間の位置、及び転写部3における二次転写ニップ部11を経て、定着部5における定着ニップ部35に至る。そして、搬送経路30は、定着ニップ部35から一対の排出ローラー26を介して筐体2上面の排紙トレイ27にまで延びている。
二次転写ローラー10の上方に位置する定着部5は、定着ローラー31及び加熱ローラー32と、これら両ローラー31,32に巻き掛けられた定着ベルト33とを備えている。定着ベルト33のうち定着ローラー31に巻き掛けられた部分の外周側には、加圧ローラー34が配置されている。加圧ローラー34は、定着ベルト33に当接していて、定着ベルト33と加圧ローラー34との間(当接部分)が定着ニップ部35になっている。定着駆動部材としての副モーター56(図3参照)からの動力伝達にて、加圧ローラー34が図1の時計方向に回転駆動することにより、定着ローラー31が定着ベルト33と共に図1の反時計方向に回転する。加熱ローラー32の内部には、定着ベルト33を加熱するヒータの一例として、ハロゲンランプ36が収容されている。
搬送経路30のうち定着ニップ部35より搬送下流側には、定着ニップ部35を通過した記録材Pを定着ベルト33から分離させつつ一対の排出ローラー26に向けて案内するための分離爪37が配置されている。一方、搬送経路30のうち定着ニップ部35より搬送上流側であって、転写部3で記録材Pと中間転写ベルト6とが接触しない非転写面側には、記録材Pを安定した姿勢で定着ニップ部35に向けて案内するように湾曲した非転写面側ガイド38が配置されている。搬送経路30のうち二次転写ニップ部11と定着ニップ部35との間は、転写部3から定着部5に至る中間経路40である。従って、非転写面側ガイド38は中間経路40中に配置されている。また、二次転写ニップ部11の接線方向は、二次転写ニップ部11と定着ニップ部35とを結ぶニップ部間直線60よりも、非転写面側に向いている。なお、筐体2の内部には、当該内部の雰囲気湿度を検出する湿度センサー39が配置されている。この場合の湿度センサー39は上段の給紙カセット21の上方に配置されている(図1参照)。また、非転写面側ガイド38と定着ニップ部35との間には、非転写面側ガイド38の湾曲形状に連続するように形成され、記録材Pに対する接触端部がニップ部間直線60に近接して配置された定着前ガイド部材62が配置されている。この定着前ガイド部材62は、その接触端部と定着ニップ部35との間で記録材Pの中間経路40の定着ニップ部35直前において、記録材Pが小さく屈曲してから、記録材Pを定着ニップ35に突入させ、記録材Pの軸方向(搬送方向に直交する方向)の波うちを解消することで、記録材Pのシワの発生を防止する目的で設けられている。なお、記録材Pの搬送経路の屈曲率を大きくするほどシワ防止効果が高いため、ニップ部間直線60の直前に、できるだけ近接して配置されることが好ましい。
プリンター1における画像形成動作の一例について簡単に説明する。プリンター1は、1色のトナー(例えばブラック)を用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードと、4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードとの間で切り換え可能に構成されている。
例えばカラーモードの場合はまず、転写部3の各作像部7において、所定速度で回転駆動する感光体ドラム13の外周面が帯電器14にて帯電される。次いで、帯電された感光体ドラム13の外周面に、外部端末からの画像情報に応じたレーザービームが露光部19から投射され、静電潜像が形成される。そして、静電潜像は、現像部15から供給されるトナーにて反転現像されて顕在化し、各色のトナー像となる。
各感光体ドラム13の外周面に形成された各色のトナー像は、感光体ドラム13の回転にて一次転写ニップ部18に到達すると、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で、感光体ドラム13から中間転写ベルト6の外周面に転写(一次転写)されて重ねられる。中間転写ベルト6に転写されず感光体ドラム13の外周面に残った未転写トナーは、感光体ドラム13の回転を利用して感光体クリーナー17にて掻き取られ、感光体ドラム13上から取り除かれる。
重ね合わされた4色のトナー像は、中間転写ベルト6の回転にて二次転写ニップ部11に移動する。このとき、重ね合わされた4色のトナー像の移動タイミングに合わせて、外部端末等の印刷指令に基づき選択された給紙カセット21(22)から、記録材Pが二次転写ニップ部11に搬送される。そして、記録材Pが二次転写ニップ部11を通過することにより、重ね合された4色のトナー像が記録材Pに一括して転写(二次転写)される。なお、二次転写後に中間転写ベルト6の外周面に残った未転写トナーは、転写ベルトクリーナー12にて掻き取られ、中間転写ベルト6上から取り除かれる。その後、各感光体ドラム13及び中間転写ベルト6の回転駆動が停止する。
4色のトナー像が二次転写された記録材P(未定着トナー像を乗せた記録材P)は、搬送経路30を通って定着部5の定着ニップ部35に搬送される。そして、記録材Pが定着ニップ部35を通過することにより、未定着トナー像が記録材Pに定着する。その後、記録材Pは一対の排出ローラー26の回転にて排紙トレイ27上に排出されることになる。
次に、図2を参照しながら、実施形態におけるループ制御に関連する構造について説明する。転写部3から定着部5に至る中間経路40中には、当該中間経路40を通過している記録材Pのループ(弛み)の有無を検出するループ検出部材として、中間経路40のうち搬送下流側にあり、ニップ部間直線60上に配置された第1ループセンサー41aと、中間経路40のうち第1ループセンサー41aよりも搬送上流側にあり、ニップ部間直線60を挟んで中間転写ベルト6から遠い側に、ニップ部間直線60に離間して配置された第2ループセンサー41bとが設けられている。
ここで、第1ループセンサー41aは、ニップ部間直線60上から、非転写面側ガイド38の間に亘って設けられている。したがって、第1ループセンサー41aは、記録材Pが非転写面側にループLを形成した場合、そのループLの大小に関わらず、記録材Pに接触する。つまり、第1ループセンサー41aが記録材PのループLを検出しない場合は、中間経路40の下流側において記録材Pが転写部3での転写面側に弛む逆ループRL又はS字ループSLを形成していると判別できる。また、第2ループセンサー41bは、ニップ部間直線60を向いた側の端部が非転写面側ガイド38よりもニップ部間直線60側に突出するように配置されている。したがって、第2ループセンサー41bは、記録材Pが非転写面側ガイド38に沿った弛み量の大きいループL、つまり正ループ(大)を形成した場合、又は、中間経路40の上流側において非転写面側に弛むS字ループSLを形成した場合に記録材Pに接触する。なお、記録材Pが転写面側に弛む逆ループRL又はS字ループSLは、記録材Pが剛性(こし)の低い薄紙等である場合に、搬送中の振動や、転写部3における二次転写ニップ部11での静電的な力による記録材Pの分離不足等により記録材Pが非転写面側に振れることにより発生する。
本実施形態のループセンサー41a、41bは、記録材Pとの接触の有無によって、各ループセンサー41a、41bの位置における記録材Pのループ量が所定以上か否か、すなわち記録材PのループLの有無を検出するものである。ここで、ループセンサー41a、41bの態様は特定のものに限られず、例えば回転中心を中心に回動可能に設置されたセンサレバー42の一方の端部が記録材Pに触れて回動し、回動したセンサレバー42の他端部が発光部と受光部とから構成されるフォトセンサーの光軸をさえぎることで記録材Pを検出する光学センサーであっても良いし、回動したセンサレバー42の他端部が、タッチセンサーに接触することで記録材Pを検出する接触センサーを用いたものであっても良い。
本実施形態では、中間経路40中で記録材PがループLを形成してセンサレバー42に接触している場合(図2(b)参照)、センサレバー42が回動し、センサレバー42の他端部がタッチセンサーに接触してオンを検出する。中間経路40中で記録材PがループLを形成せずセンサレバー42に非接触又は接触程度が小さい場合は、センサレバー42の他端部とタッチセンサーとが離間した状態になり、オフを検出する。タッチセンサーは後述するコントローラー45に電気的に接続されている。ループセンサー41a、41bがオフ状態になると、当該オフ状態の継続時間(以下、オフ時間という)がコントローラー45のタイマー51(計時手段)にて計測される。
プリンター1の制御全般を統括し制御部として機能するコントローラー45は筐体2内に配置されている。コントローラー45は、図3に示すように、各種演算処理や制御を実行するCPU46のほか、外部機器との接続用の通信インターフェイス(I/F)部47、EEPROMやフラッシュメモリー等の記憶手段48、制御プログラムやデーターを一時的に記憶させるRAM49、記録材Pの搬送枚数等を計測するカウンター50、時間を計測するタイマー51、及び入出力インターフェイス等を有している。
コントローラー45には、転写部3の駆動ローラー8を回転駆動させる主モーター54の起動、停止及び増減速等の速度制御を司る主モーター制御部53と、定着部5の加圧ローラー34を回転駆動させる副モーター56の起動、停止及び増減速等の速度制御を司る副モーター制御部55とが電気的に接続されている。また、コントローラー45には、例えば筐体2内部の雰囲気湿度を測定する湿度センサー39、筐体2の外面側に装着された操作パネル57、転写部3の上流側に設けられた通紙センサー58が電気的に接続されている。
各モーター制御部53,55は、コントローラー45からの指令に基づき、それぞれに対応するモーター54,56を回転駆動させる。主モーター54が回転駆動させる駆動ローラー8の駆動速度(回転速度)は、いわゆるプロセス速度Vo(プリンタ1の画像形成速度)に設定されている。副モーター56が回転駆動させる加圧ローラー34の駆動速度(定着速度)は、変更可能にされている。
図4及はコントローラー45による加圧ローラー34の駆動速度制御の流れを示している。コントローラー45は、ループセンサー41a、41bの検出結果に基づき副モーター56を電気的に制御して、加圧ローラー34の駆動速度を速くするか、又は遅くするかを切り換え可能に構成されている。
すなわち、コントローラー45は、第1ループセンサー41aがオンであって、第2ループセンサー41bもオンである場合、第1ループセンサー41aがオンであるので正ループLであると判別し、第2ループセンサー41bがオンであるので、その正ループLの弛みが大きいと判別する。これは図2(b)に示すような状態である。記録材姿勢が正ループ(大)であると判別したコントローラー45は、加圧ローラー34の駆動速度をプロセス速度Voよりも速い第1高速駆動速度V1に切り換える。
また、コントローラー45は、第1ループセンサー41aがオンであって、第2ループセンサー41bがオフである場合、第1ループセンサー41aがオンであるので正ループLであると判別し、第2ループセンサー41bがオフであるので、その正ループLの弛みが小さいと判別する。これは図2(a)に示すような状態である。記録材姿勢が正ループL(小)であると判別したコントローラー45は、加圧ローラー34の駆動速度をプロセス速度Voよりも遅い低速駆動速度V2に切り換える。
また、コントローラー45は、第1ループセンサー41aがオフであって、第2ループセンサー41bがオンである場合、第1ループセンサー41aがオフであるので中間経路40の下流側において転写面側に弛む逆ループRL又はS字ループSLであると判別し、第2ループセンサー41bがオンであるので、中間経路40の上流側では非転写面側に弛むS字ループSLであると判別する。これは図2(c)に示すような状態である。記録材姿勢がS字ループSLであると判別したコントローラー45は、加圧ローラー34の駆動速度をプロセス速度Voよりも速い第2高速駆動速度V3に切り換える。
また、コントローラー45は、第1ループセンサー41a及び第2ループセンサー41bがオフである場合、第1ループセンサー41aがオフであるので中間経路40の下流側において転写面側に弛む逆ループRL又はS字ループSLであると判別し、第2ループセンサー41bもオフであるので、中間経路40の上流側でも転写面側に弛む逆ループRLであると判別する。これは図2(d)に示すような状態である。記録材姿勢が逆ループRLであると判別したコントローラー45は、加圧ローラー34の駆動速度をプロセス速度Voよりも速い第3高速駆動速度V4に切り換える。
加圧ローラー34の駆動速度を速くした場合は、駆動モーター8の駆動速度ひいては転写部3での記録材P搬送速度に対して、定着ニップ部35での記録材P突入速度が増える。つまり、中間経路40における記録材Pの搬送長さが短くなり、弛み量が減る。一方で、加圧ローラー34の駆動速度を遅くした場合は、駆動モーター8の駆動速度ひいては転写部3での記録材P搬送速度に対して、定着ニップ部35での記録材P突入速度が減る。つまり、中間経路40における記録材Pの搬送長さが長くなり、弛み量が増える。このようにコントローラー45は、定着ニップ部35での記録材P突入速度を増減させることによって、記録材Pを平均的に所定のループ状態(搬送姿勢)に維持するか、逆ループRL又はS字ループSL等の異常姿勢を解消する。
例えば、第1ループセンサー41aがオンである場合は、記録材Pの搬送姿勢が正ループLであると判別できる。この場合、コントローラー45は、記録材Pの姿勢を正ループ(大)と(正ループ(小))との間になるように制御する。つまり、コントローラー45は、第2ループセンサー41bの検出結果がオン(正ループ(大))であれば加圧ローラー34の駆動速度を第1高速駆動速度V1に切り換え、第2ループセンサー41bの検出結果がオフ(正ループ(小))であれば加圧ローラー34の駆動速度を低速駆動速度V2に切り換える。このように、加圧ローラー34の駆動速度の増減を繰り返す制御を行う。これにより、平均的に所定の正ループL状態に維持することができる。
一方で、第1ループセンサー41aがオフである場合、コントローラー45は、加圧ローラー34の駆動速度を第2高速駆動速度V3又は第3高速駆動速度V4のいずれかに切り換え、加圧ローラー34の駆動速度を速くする制御を行う。つまり、第1ループセンサー41aがオフである場合は、ループRL又はS字ループSLであるので、記録材Pの搬送長さを短くして弛み量を減らし、異常姿勢の解消を図るのである。もし第1ループセンサー41aがオンの状態に戻った場合は、前述したように加圧ローラー34の駆動速度の増減を繰り返して平均的に所定の正ループL状態に維持する制御を行う。
本実施形態において、プリンター1のプロセス速度Vo(駆動モーター8の駆動速度又は転写部3での記録材P搬送速度とも言える)は200mm/secに設定されている。加圧ローラー34の駆動速度のうち第1高速駆動速度V1は、プロセス速度Voに対して駆動速度比(周速比)で2%速い204mm/secに設定され、低速駆動速度V2はプロセス速度Voに対して駆動速度比で2%遅い196mm/secに設定されている。また、第2高速駆動速度V3は、プロセス速度Voに対して駆動速度比(周速比)で4%速い208mm/secに設定され、第3高速駆動速度V4は、プロセス速度Voに対して駆動速度比(周速比)で2%速い204mm/secに設定されている。ここで、第2高速駆動速度V3が、第1高速駆動速度V1及び第3高速駆動速度V4よりも速い駆動速度に設定されているのは、S字ループSLの方が逆ループRLよりも記録材Pの後端が二次転写ニップ部11を通過した直後に発生する跳ね上げ力が大きくなるため、S字ループSLは速やかに解消する必要があるからである。なお、駆動速度比は、第1高速駆動速度V1を例にすると、(V1−Vo)/Voで定義される。
また、加圧ローラー34の駆動速度を切り換えた後に所定時間が経過すると、多くの場合には記録材Pの搬送姿勢が変化するが、第1高速駆動速度V1、第2高速駆動速度V3、又は、第3高速駆動速度V4に切り換えて加圧ローラー34の駆動速度を速めた後、所定時間を経過しても記録材Pの搬送姿勢が変わらない場合がある。この場合、コントローラー45は、各駆動速度V1、V3、V4の駆動速度比よりもさらに速めることも有り得る。同様に、コントローラー45は、低速駆動速度V2に切り換えて加圧ローラー34の駆動速度を遅くした後、所定時間を経過しても記録材Pの搬送姿勢が変わらない場合に、低速駆動速度V2の駆動速度比よりもさらに遅くすることも有り得る。
図5はコントローラー45によるループ制御全体の流れを示している。以下に開示のフローチャートに示すアルゴリズムは、コントローラー45の記憶手段48にプログラムとして予め記憶されていて、RAM49に読み出されてからCPU46にて実行される。図3に示すように、コントローラー45は、例えば操作パネル57や外部機器からの印刷指令を受信して、印刷動作の開始を指示する(S01)。その後、記録材Pの先端が通紙センサー58を通過して所定時間T1経過後すると(S02)、ループ制御を開始する(S03)。ここで、記録材Pの先端が通紙センサー58を通過してからの経過時間は、例えばタイマー51で計測することによって判別可能である。
ループ制御の開始後は、まず、第1ループセンサー41aがオンであれば(S04:ON)、第2ループセンサー41bがオンかオフかを判別する(S05)。ここで、第2ループセンサー41bがオンであれば(S05:ON)、加圧ローラー34の駆動速度(定着速度)を第1高速駆動速度V1に切り換える(S06)。一方、第2ループセンサー41bがオフであれば(S05:OFF)、加圧ローラー34の駆動速度(定着速度)を低速駆動速度V2に切り換える(S07)。この場合、コントローラー45は、第1高速駆動速度V1と低速駆動速度V2とを所定のタイミングで交互に切り換えて、記録材Pの姿勢を正ループ(大)と(正ループ(小))との間の平均的な所定の正ループL状態になるように制御する。具体的には、コントローラー45は、記録材Pの搬送姿勢が(正ループ(大))であれば加圧ローラー34の駆動速度を第1高速駆動速度V1に切り換えて記録材Pの搬送長さを短くしていき、記録材Pの搬送姿勢を(正ループ(小))に変化させていく。その後、記録材Pの搬送姿勢が(正ループ(小))になったら、加圧ローラー34の駆動速度を低速駆動速度V2に切り換えて記録材Pの搬送長さを長くしていき、記録材Pの搬送姿勢を(正ループ(大))に変化させていく。
また、第1ループセンサー41aがオフであっても(S04:OFF)、第2ループセンサー41bがオンかオフかを判別する(S08)。ここで、第2ループセンサー41bがオンであれば(S08:ON)、加圧ローラー34の駆動速度(定着速度)を第2高速駆動速度V3に切り換える(S09)。一方、第2ループセンサー41bがオフであれば(S08:OFF)、加圧ローラー34の駆動速度(定着速度)を第3高速駆動速度V4に切り換える(S10)。その後、記録材Pの先端が通紙センサー58を通過して所定時間T2経過後すると(S11)、ループ制御を終了する。ここで、所定時間T2は、搬送される記録材Pの後端が二次転写ニップ部36を通過するまでに要する時間であり、記録材Pのサイズ情報や、加圧ローラー34の駆動速度(定着速度)等から算出される。
また、記録材Pの搬送方向先端が二次転写ニップ部11を通過後に、所定時間を過ぎても第1ループセンサー41aにより記録材Pが検出されなかった場合、記録材Pの搬送姿勢が、所定のループL状態ではなく、逆ループRL等の異常姿勢であることが判別できる。この場合、中間経路40中の記録材Pの搬送長さが異常に長くなりすぎているので、記録材Pの搬送方向先端が定着ニップ部35に到達する前に、予め加圧ローラー34の駆動速度を速くしておくことも可能である。
なお、中間経路40の中央部よりも転写部3側で転写面側に弛み、中間経路40の中央部よりも定着部5側で非転写面側に弛むような逆S字ループが発生する可能性も考えられる。本実施形態では第1加圧ローラー34の駆動速度がプロセス速度Voよりも遅い低速駆動速度V2に切り換わり、中間経路40中の記録材Pの搬送長さを一旦長くするが、記録材P自身の張力により、記録材Pの搬送姿勢が図2(d)に示すような逆ループRLに変化する。そして、コントローラー45が逆ループRLを判別すると、前述したように第3高速駆動速度V4に切り換えられるので、中間経路40中の記録材Pの搬送長さを短くして弛みを減らし、逆ループRLを解消する制御に移行する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の構成であれば、記録材Pが搬送される最短経路であるニップ部間直線60上に配置された第1ループセンサー41aと、ニップ部間直線60に対して転写部3の中間転写ベルト6から記録材Pを挟んで遠い側に、ニップ部間直線60に離間して配置された第2ループセンサー41bとを備えるので、転写面側に弛む逆ループRLやS字ループSLを判別することができる。これならば、中間経路40中の記録材Pの姿勢を正確に検出できるので、記録材Pの姿勢に合わせて定着部5の加圧ローラー34の駆動速度を切り換えて、中間経路40中の記録材Pの搬送長さを最適化できる。したがって、記録材Pの突っ張りによる画像伸び及び画像ずれ、過剰ループによる画像擦れ及び画像汚れを防止することができる。
また、コントローラー45は、第1ループセンサー41aがオフである場合、加圧ローラー34の駆動速度を速くする制御を行い、記録材Pの搬送長さを短くして弛み量を減らし、異常姿勢の解消を図る。これならば、仮に記録材Pが異常姿勢になった場合でも、記録材Pの異常姿勢を解消させて、記録材Pの突っ張りによる画像伸び及び画像ずれ、過剰ループによる画像擦れ及び画像汚れを防止することができる。
さらに、コントローラー45は、第1ループセンサー41aがオンである場合、第2ループセンサー41bの検出結果に基づいて記録材PのループLの大小を判別し、加圧ローラー34の駆動速度の増減を繰り返す制御を行って、平均的に所定の正ループL状態に維持する。これならば、記録材Pの異常姿勢を防止して、記録材Pの突っ張りによる画像伸び及び画像ずれ、過剰ループによる画像擦れ及び画像汚れを防止することができる。
次に、図6、図7及び図8を参照しながら、第2、第3及び第4実施形態のループ制御に関連する構造について説明する。第2、第3及び第4実施形態のプリンター1では、定着前ガイド部材62及び第2ループ検出部材41bの構成を第1実施形態のものと異ならせている。
すなわち、図6に示す第2実施形態のプリンター1では、定着前ガイド部材62が、ニップ部間直線60に交差するように配置されている。つまり、定着前ガイド部材62の記録材Pに対する接触端部が、ニップ部間直線60よりも転写面側に突出して配置されている。また、第1ループセンサー41aは、二次転写ニップ部11と定着前ガイド部材62の記録材Pに対する接触端部とを結ぶガイド直線61上に配置されている。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様である。第2実施形態のように構成した場合、定着前ガイド部材62がニップ部間直線60に交差するように配置されているので、記録材Pの中間経路40の定着ニップ部35直前において、記録材Pが小さく屈曲してから、記録材Pを定着ニップ35に突入させる。これにより、記録材Pの軸方向(搬送方向に直交する方向)の波うちを解消することで、記録材Pのシワの発生を防止して、記録材Pの搬送姿勢を安定させることができる。また、第1ループセンサー41aが、ガイド直線61上に配置されているので、定着前ガイド部材62がニップ部間直線60に交差するように配置されていても、記録材Pが非転写面側にループLを形成した場合に確実に記録材Pを検出することができる。したがって、中間経路40中の記録材Pの姿勢を正確に検出できるので、中間経路40中の記録材Pの搬送長さを最適化して、記録材Pの突っ張りによる画像伸び及び画像ずれ、過剰ループによる画像擦れ及び画像汚れを防止することができる。
図7に示す第3実施形態のプリンター1では、第1ループセンサー41aの記録材Pとの接触端部と、定着前ガイド部材62の記録材Pとの接触端部とを、中間経路40上で近接させている。具体的な構成として、搬送断面方向から視たときに第1ループセンサー41aと定着前ガイド部材62とが交差するように配置している。そして、定着前ガイド部材62が第1ループセンサー41aのセンサレバー42を回動可能に支持する構造にしている。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様である。第3実施形態のように構成した場合、第1ループセンサー41aの記録材Pに対する接触端部と、定着前ガイド部材62の記録材Pに対する接触端部とを中間経路40上で近接させているので、第1ループセンサー41aが中間経路40中の記録材Pの姿勢を精度良く検出でき、中間経路40中の記録材Pの搬送長さを精度良く最適化することができる。したがって、確実に記録材Pの突っ張りによる画像伸び及び画像ずれ、過剰ループによる画像擦れ及び画像汚れを防止することができる。
図8及び図9に示す第4実施形態のプリンター1は、定着前ガイド部材62をニップ部間直線60から離れる方向に移動させるガイド部材移動機構63を備える。ここで、ガイド部材移動機構63は、コントローラー45に電気的に接続されている。そして、コントローラー45は、第1ループセンサー41aがオフである場合に、定着前ガイド部材62をニップ部間直線60から離れる方向に移動させるようにガイド部材移動機構63を制御する。ここで、ガイド部材移動機構63は、電磁ソレノイドを用いたものであっても良いし、リンク機構を用いたものであっても良い。その他の構成は第1実施形態とほぼ同様である。なお、定着前ガイド部材62は、第2実施形態のようにニップ部間直線60に交差するように配置されているものであっても良い。ここで、定着前ガイド部材62は、記録材Pに屈曲を形成することを目的として設けられているが、記録材Pが逆ループRL又はS字ループSL等の異常姿勢になると、記録材Pの屈曲が小さくなり効果が小さくなる。また、記録材Pが異常姿勢になると、コントローラー45が記録材Pの搬送長さを短くして弛み量を減らす制御を行うので、定着前ガイド部材62がその制御において邪魔になる恐れがあり、最悪の場合画像擦れが生じるという問題がある。第4実施形態のように構成した場合、仮に記録材Pが異常姿勢になった場合、第1ループセンサー41aがオフになり、ガイド部材移動機構63により定着前ガイド部材62をニップ部間直線60から離れる方向に移動させるので、定着前ガイド部材62が記録材Pの搬送長さを短くして弛み量を減らす制御で邪魔になることが無く、画像擦れを防止することができる。
本願発明は前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。前述の実施形態では、画像形成装置としてプリンターを例にして説明したが、これに限らず、複写機、プリンター、ファクシミリ又はこれらの機能を複合的に備えた複合機等であってもよい。
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。