JP7293912B2 - 赤外線遮断膜、塗液、及び赤外線遮断膜の製造方法 - Google Patents
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Description
赤外線遮断膜において、厚みを薄くし、かつ、良好な赤外線遮断性能を発揮させるために赤外線遮断機能を有する材料の割合を多くすると、膜の透明性が低下し、ヘイズ値が上昇する場合がある。
したがって、厚みが薄く、かつヘイズ値が十分に小さい赤外線遮断膜;かかる赤外線遮断膜を製造しうる塗液;かかる赤外線遮断膜を製造できる製造方法が求められている。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
赤外線を吸収又は反射する材料を2重量%以上10重量%以下と、を含む樹脂の膜であり、
厚みが0.1μm以上100μm以下である、赤外線遮断膜。
[2] 前記エラストマーが、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物である、請求項1に記載の赤外線遮断膜。
[3] 厚みが20μm以下である、[1]又は[2]に記載の赤外線遮断膜。
[4] 非極性溶媒と、
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体、及び、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物からなる群より選択される一種以上を含むエラストマーと、
赤外線を吸収又は反射する材料と、を含む塗液であって、
前記赤外線を吸収又は反射する材料の、前記塗液の固形分重量に対する割合が2重量%以上10重量%以上である、塗液。
[5] 赤外線遮断膜の製造方法であって、
[4]に記載の塗液を、基材上に塗布して塗布膜を形成する工程、
前記塗布膜から、溶媒を除去して前記赤外線遮断膜を得る工程、を含み、
前記赤外線遮断膜は、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体、及び、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物からなる群より選択される一種以上を含むエラストマーを50重量%以上98重量%以下と、赤外線を吸収又は反射する材料を2重量%以上10重量%以下と、を含む樹脂の膜であり、厚みが0.1μm以上100μm以下である、赤外線遮断膜の製造方法。
本発明の一実施形態に係る赤外線遮断膜は、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体、及び、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物からなる群より選択される一種以上を含むエラストマーを50重量%以上98重量%以下と、赤外線を吸収又は反射する材料を2重量%以上10重量%以下と、を含む樹脂の膜であり、厚みが0.1μm以上100μm以下である。
赤外線遮断膜が、前記の構成を有することにより、厚みが薄く、かつヘイズ値が十分に小さい赤外線遮断膜を実現できる。
ここで、赤外線遮断膜とは、赤外線を遮断する機能を有する膜をいう。「赤外線を遮断する」とは、赤外線を完全に遮断し、膜における赤外線の透過率を0%とする場合の他、膜における赤外領域の少なくとも一部に含まれる波長の光についての透過率を、0%以上50%以下とする場合が含まれる。
エラストマーとは、常温でゴムの特性を有する材料をいう。エラストマーは、小さい力の負荷では伸びも破断も生じにくい特徴を有する。具体的には、エラストマーは、23℃において、ヤング率0.001~1GPa、及び引張伸び(破断伸度)100~1000%の値を示す。
本実施形態の赤外線遮断膜に含まれるエラストマーは、熱可塑性エラストマーであることが好ましい。熱可塑性エラストマーは、40℃以上200℃以下の高い温度範囲において、貯蔵弾性率が急激に低下して損失正接tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)がピークを持つか、1を超える値を示し、軟化する。
ヤング率及び引張伸びは、JIS K7113に則り測定しうる。また損失正接tanδは市販の動的粘弾性測定装置により測定しうる。
エラストマーにおける、共重合体Aと、共重合体Aの、ケイ素原子含有極性基による変性物との合計の重量割合は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上であり、通常100重量%以下であり、99.9重量%以下であってもよい。
エラストマーは、本発明の効果を著しく損ねない限りにおいて、共重合体A、及び、共重合体Aの、ケイ素原子含有極性基による変性物以外の、任意の重合体を含んでいてもよい。エラストマーにおける任意の重合体の総重量割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2重量%以下であり、通常0重量%以上であり、0重量%であってもよい。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の水素化物である。即ち、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、芳香環の炭素-炭素結合、又はこれらの両方の、一部又は全部を水素化して得られる構造を有するものである。但し、本願において水素化物は、その製造方法によっては限定されない。
水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体(共重合体A)の、ケイ素原子含有極性基による変性物は、前記水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体と、単量体としてのケイ素原子含有極性基を有する化合物とのグラフト重合により得られる構造を有する。ただし、当該変性物は、その製造方法によっては限定されない。
ケイ素原子含有極性基としては、アルコキシシリル基が好ましい。
エラストマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは35,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは70,000以下である。エラストマーの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算の値で測定しうる。また、エラストマーの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下であり、好ましくは1以上である。エラストマーの重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnを前記の範囲に収めることにより、赤外線遮断膜の機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
エラストマーのガラス転移温度は、特に限定されないが、好ましくは40℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは160℃以下である。また、エラストマーとしてブロック共重合体を含むものを用いた場合には、それぞれの重合体ブロックの重量比率を変えてガラス転移温度を調整することにより、赤外線遮断膜の接着性と可撓性とのバランスを取ることができる。
本実施形態の赤外線遮断膜におけるエラストマーの割合は、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、通常98重量%以下、好ましくは97重量%以下である。
エラストマーの割合が、赤外線遮断膜において前記下限値以上であることにより、エラストマーが備える特性を、赤外線遮断膜において発揮させうる。
本実施形態の赤外線遮断膜は、赤外線を吸収又は反射する材料を含む。
赤外線を吸収又は反射する材料とは、赤外線を吸収又は反射することにより、赤外線遮断膜に、赤外線を遮断する機能を付与しうる材料をいう。以下、赤外線を吸収又は反射する材料を、「赤外線遮断材料」ともいう。
赤外線遮断材料は、一種単独で用いてもよく、二種以上の任意の割合の組み合わせで用いてもよい。
本願において、一次粒子径とは、通常、一次粒子の数平均粒子径を表す。一次粒子の数平均粒子径は、レーザー回折粒度計を用いて、測定しうる。
レーザー回折粒度計を用いて測定された一次粒子の数平均粒子径が、40nm未満である場合は、一次粒子の数平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径測定装置により好適に測定しうる。動的光散乱法による測定は、粒子を溶媒に分散させた分散液の状態で行ってもよい。
また、レーザー回折粒度計を用いて測定された一次粒子の数平均粒子径が、40nm未満である場合、又は、レーザー回折法及び動的光散乱法により測定ができない場合は、電子顕微鏡を用いた観察により平均粒子径を好適に求めうる。具体的には、以下の方法により平均粒子径を求めうる。電子顕微鏡を用いて、50個の粒子のそれぞれについて、一次粒子の短軸と長軸との和を求め、得られた和を2で割って得られた数値の算術平均値を、平均粒子径としうる。赤外線遮断膜の断面における粒子について観察してもよく、塗液における粒子について観察してもよい。
赤外線吸収色素の具体例としては、国際公開第2016/163409号(先行文献1)に記載された、赤外線吸収色素が挙げられる。
赤外線遮断材料の含有率が、前記範囲内に収まることにより、赤外線遮断膜における赤外線遮断性能と、ヘイズ値の低さとを、両立できる。
本実施形態の赤外線遮断膜は、前記のエラストマー及び赤外線遮断材料に加えて、本発明の効果を著しく損ねない限りにおいて、任意の成分を含んでいてもよい。
任意の成分の例としては、酸化防止剤;可塑剤;紫外線吸収剤;滑剤;及び、赤外線遮断材料に該当しない無機フィラーが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
赤外線遮断膜の厚みは、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。本実施形態の赤外線遮断膜は、厚みが前記範囲内にあっても、赤外線遮断性能と、ヘイズ値の低さとを、両立できる。
赤外線遮断膜の厚みは、マイクロメーター(ミツトヨ社製「MDC-25MJ」等)により測定しうる。赤外線遮断膜が、基材上に形成されている場合は、例えば、以下の方法により測定しうる。
赤外線遮断膜の一部を、基材が表面に現れるまで削り、触針式表面粗さ計(ブルカーナノ社製「DEKTAKシリーズ」、小坂研究所製「ET4000」等)により基材と赤外線遮断膜との段差を測る。
(赤外線遮断膜のヘイズ値)
赤外線遮断膜のヘイズ値は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下であり、通常0%以上であり、0.5%以上であってもよい。
本実施形態の赤外線遮断膜は、厚みが0.1μm以上100μm以下であっても、低いヘイズ値を有しうる。
赤外線遮断膜の赤外線遮断性能は、赤外線遮断膜に含まれる赤外線遮断材料の特性及び含有量により変動しうるが、例えば、赤外線遮断膜は、波長1150nmの光線透過率が、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下であり、通常0%以上である。
本実施形態の赤外線遮断膜は、単独で赤外線遮断機能を有する部材として用いてもよく、他の任意の層と組み合わせて、赤外線遮断機能を有する部材として用いてもよい。任意の層の例としては、粘着層、UV吸収層、ハードコート層、及びプラスチック基材が挙げられる。
例えば、後述するように、赤外線遮断膜を塗布法により製造する場合、赤外線遮断膜を、赤外線遮断膜と基材との複層体の形態として用いてもよい。
前記赤外線遮断膜は、従前公知の方法により製造することができる。しかし、フィッシュアイ欠陥の発生を抑制する観点から、前記赤外線遮断膜を、非極性溶媒と前記エラストマーと前記赤外線遮断材料とを含む塗液を用いた塗布法により製造することが好ましい。
赤外線遮断膜の製造方法については、後で詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る塗液は、非極性溶媒と、前記共重合体A及び前記共重合体Aのケイ素原子含有極性基による変性物からなる群より選択される一種以上を含むエラストマーと、赤外線を吸収又は反射する材料と、を含む。
ここで、塗液の固形分とは、溶媒以外の成分であり、通常は、塗液を乾燥させ溶媒を揮発させた後に残留する成分の全てである。
塗液の粘度が、前記下限値以上であることにより、所望の厚みを有する塗布膜を容易に得られる。また、前記上限値以下であることにより、塗布の速度をより大きくできるため、赤外線遮断膜の製造を高速で行いうる。
粘度は、音叉型振動式粘度計により、25℃±2℃の条件で測定されうる。
本発明の一実施形態に係る赤外線遮断膜の製造方法は、塗液を、基材上に塗布して塗布膜を形成する工程(1)、前記塗布膜から、溶媒を除去して赤外線遮断膜を得る工程(2)、を含む。赤外線遮断膜を、工程(1)及び工程(2)を含む方法により製造することにより、フィッシュアイ欠陥の少ない赤外線遮断膜が得られうる。
工程(1)では、塗液から塗布膜を形成する。塗布膜を形成するための塗液は、前記[2.塗液]において説明した塗液を用いうる。
塗液を塗布する基材として、任意の基材を用いうる。基材は、剛直な部材であってもよく、可撓性を有する部材であってもよい。基材の例としては、ガラス、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムの材料の例としては、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリル樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂が挙げられ、中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び加工性の観点から、シクロオレフィン樹脂が好ましい。
工程(2)では、工程(1)で得られた塗布膜から溶媒を除去する。塗布膜からの溶媒の除去の方法としては、任意の方法を用いることができ、例えば、熱風、赤外線照射などによる加熱、及び減圧が挙げられる。加熱及び減圧を併用してもよい。
加熱温度は、例えば、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃としうる。
加熱時間は、例えば、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下としうる。
本実施形態の赤外線遮断膜の製造方法は、工程(1)及び(2)に加えて、任意の工程を含みうる。任意の工程の例としては、基材と赤外線遮断膜とを含む積層体から、基材を剥離する工程が挙げられる。
(膜厚)
ガラス上に形成された樹脂膜の厚みを、接触式表面粗さ計(小坂研究所製「ET4000」)により測定した。具体的には、樹脂膜の一部を、ガラスが表面に現れるまで削り、基材と樹脂膜との段差を接触式表面粗さ計で測定した。
ガラス上に形成された樹脂膜のヘイズ値をヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH4000」)により測定した。
樹脂の23℃におけるヤング率及び引張伸びは、JIS K7113に則り測定した。40℃以上200℃以下における樹脂の損失正接tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)は、樹脂をフィルム状にしてから幅10mm×長さ20mmの試験片を切り出し日立ハイテクサイエンス社製の動的粘弾性測定装置DMS6100を用い測定した。
溶媒の表面張力γは、温度20℃において、自動表面張力計「CBVP-Z」(協和界面科学株式会社製)を用いて測定した。
塗液の粘度を、下記の方法により測定した。
測定機器としては、株式会社エー・アンド・デイ製の音叉型振動式粘度計SV-10を用いた。サンプル容器の基準線の間に塗液の液面がくるように容器を満たし、振動子を規定の位置まで塗液中に入れて測定した。測定は25℃±2℃の環境下で行った。
分光光度計(日本分光社製「V-570」)を用いて、波長800nm以上2000nmの範囲で、ガラス板上に形成された樹脂膜の光線透過率を測定した。具体的には、ガラス板及び樹脂膜全体の光線透過率及びガラス板のみの光線透過率を測定し、ガラス板のみの光線透過率を100%として、樹脂膜の光線透過率を計算により求めた。
(P1-1.水素化ブロック共重合体の製造)
芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて、ブロック共重合体の水素化物(水素化ブロック共重合体)を、以下の手順により製造した。製造されたブロック共重合体の水素化物は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック構造を有する。
その後、さらに、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i)を得た。
得られた溶液(i)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は44,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった(テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算の値で測定。以下同じ)。
このペレット(v)からフィルム状の試験片を作製し、ガラス転移温度Tgを動的粘弾性測定装置のtanδピークで評価したところ、130℃であった。またこのペレット(v)の40℃以上200℃以下におけるtanδのピーク値は1.4であった。このペレット(vi)の、23℃におけるヤング率は0.6GPaであり、引張伸びは550%であった。したがって、得られた水素化ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーであった。
製造例1で得られたブロック共重合体の水素化物(水素化ブロック共重合体)のペレット(v)を用いて、下記の方法により、水素化ブロック共重合体のシラン変性物(水素化ブロック共重合体のアルコキシシリル基による変性物)を得た。
製造例1の(P1-1)で得られたペレット(v)100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部及びジ-t-ブチルパーオキサイド0.2部を添加し、混合物を得た。この混合物を、二軸押出し機を用いて、バレル温度210℃、滞留時間80秒~90秒で混練した。混練された混合物を押し出し、ペレタイザーでカットして、水素化ブロック共重合体のシラン変性物のペレット(vi)を得た。このペレット(vi)からフィルム状の試験片を作製し、ガラス転移温度Tgを動的粘弾性測定装置のtanδピークで評価したところ、124℃であった。またこのペレット(vi)の40℃以上200℃以下におけるtanδのピーク値は1.3であった。このペレット(vi)の、23℃におけるヤング率は0.5GPaであり、引張伸びは550%であった。したがって、得られた水素化ブロック共重合体のシラン変性物は、熱可塑性エラストマーであった。
また、このペレット(vi)のアッベ屈折計により測定した屈折率(n1)は1.50であった。
(1-1.塗液の調製)
エラストマーとして、製造例2で製造された、水素化ブロック共重合体のシラン変性物(ペレット(vi))32部に、非極性溶媒としてのデカヒドロナフタレン68部を加えてペレット(vi)を溶解し、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液に、ITO粒子がトルエン中に分散している、10%のITO粒子分散液を10部加えた。デカヒドロナフタレンは、沸点が190℃であり、表面張力が30dyn/cmである。また、ITO粒子は、一次粒子の数平均粒子径が20nmである。
一次粒子の数平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置「データサイザーナノ」(マルバーン社製)を用い、ITO粒子分散液を適宜希釈して測定した。
また、トルエンに分散させる前のITO粒子の一次粒子径を、透過型電子顕微鏡(TEM)による粒子の観察によって測定したところ、20nmであった。具体的には、以下の方法により測定した。50個のITO粒子のそれぞれについて、一次粒子の短軸と長軸との和を求めた。得られた和を2で割って得られた数値の算術平均値を、TEMの観察によるITO粒子の一次粒子径とした。
これにより、固形分に対して3%のITO粒子を含む、塗液1を得た。塗液1の粘度を、前記の方法により測定した。
塗液1を、ガラス板(厚み0.7mm、コーニング1737)上にアプリケータを用いて塗布することにより、塗布膜を形成した。次いでガラス板上の塗布膜を、130℃、5分間の条件で乾燥させて、溶媒を除去した。乾燥後の塗布膜(樹脂膜)の厚みは、50μmであった。
得られた樹脂膜について、前記の方法により、光線透過率及びヘイズ値を測定した。
下記の事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂膜を得た。
・(1-2.赤外線遮断膜の作製)において、アプリケータの条件(隙間の大きさ)を調整することにより、乾燥後の厚みが80μmである樹脂膜を得た。
得られた樹脂膜について、前記の方法により、光線透過率及びヘイズ値を測定した。
下記の事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂膜を得た。
・(1-1.塗液の調製)において、水素化ブロック共重合体のシラン変性物(ペレット(vi))の量を、32部から35部に変更した。また、デカヒドロナフタレン68部の代わりにエチルシクロヘキサン65部を用いた。さらに、10%のITO粒子分散液の量を、10部から7部に変更した。
・(1-2.赤外線遮断膜の作製)において、アプリケータの条件(隙間の大きさ)を調整することにより、乾燥後の厚みが40μmである樹脂膜を得た。
エチルシクロヘキサンは、沸点130℃、表面張力26.5dyn/cmである。
得られた樹脂膜について、前記の方法により、光線透過率及びヘイズ値を測定した。
下記の事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂膜を得た。
・(1-1.塗液の調製)において、水素化ブロック共重合体のシラン変性物(ペレット(vi))の量を、32部から35部に変更した。また、デカヒドロナフタレン32部の代わりにエチルシクロヘキサン65部を用いた。さらに、10%のITO粒子分散液の量を、10部から30部に変更した。
・(1-2.赤外線遮断膜の作製)において、アプリケータの条件(隙間の大きさ)を調整することにより、乾燥後の厚みが10μmである樹脂膜を得た。
得られた樹脂膜について、前記の方法により、光線透過率及びヘイズ値を測定した。
下記の事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂膜を得た。
・(1-1.塗液の調製)において、ITO粒子分散液を加えなかった。
得られた樹脂膜について、前記の方法により、光線透過率及びヘイズ値を測定した。
下記の事項を変更した以外は、実施例1と同様にして、樹脂膜を得た。
・(1-1.塗液の調製)において、10%のITO粒子分散液の量を、10部から44部に変更した。
・(1-2.赤外線遮断膜の作製)において、アプリケータの条件(隙間の大きさ)を調整することにより、乾燥後の厚みが80μmである樹脂膜を得た。
得られた樹脂膜について、前記の方法により、光線透過率及びヘイズ値を測定した。
下表に、実施例及び比較例で用いた塗液の配合及び粘度、得られた樹脂膜の厚み、800nm、1150nm、1500nm、2000nmにおける、光線透過率、並びにヘイズ値を示す。
実施例1~4で用いた塗液から、厚みが100μ以下であって薄く、かつヘイズ値が10%以下であって十分に小さい、赤外線領域にある波長の光を良好に遮断できる赤外線遮断膜が得られる。
一方、比較例1で用いた塗液から得られる樹脂膜は、ヘイズ値は小さく良好であるものの、赤外線領域にある波長の光の透過率が70%より大きく、赤外線遮断膜として機能しないことが分かる。
また、比較例2で用いた塗液から得られる樹脂膜は、赤外線遮断膜として機能するものの、ヘイズ値が10%より大きく、実施例1~4に係る樹脂膜と比較して劣る。
Claims (4)
- 水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体、及び、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物からなる群より選択される一種以上を含むエラストマーを50重量%以上98重量%以下と、
赤外線を吸収又は反射する材料を2重量%以上10重量%以下と、を含む樹脂の膜であり、
厚みが0.1μm以上20μm以下である、赤外線遮断膜。 - 前記エラストマーが、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物である、請求項1に記載の赤外線遮断膜。
- 非極性溶媒と、
エラストマーと、
赤外線を吸収又は反射する材料と、を含む塗液であって、
前記エラストマーが、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物であり、
前記赤外線を吸収又は反射する材料の、前記塗液の固形分重量に対する割合が2重量%以上10重量%以上である、塗液。 - 赤外線遮断膜の製造方法であって、
非極性溶媒と、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体、及び、水素化芳香族ビニル化合物-共役ジエンブロック共重合体の、ケイ素原子含有極性基による変性物からなる群より選択される一種以上を含むエラストマーと、赤外線を吸収又は反射する材料と、を含む塗液であって、前記赤外線を吸収又は反射する材料の、前記塗液の固形分重量に対する割合が2重量%以上10重量%以上である塗液を、基材上に塗布して塗布膜を形成する工程、
前記塗布膜から、溶媒を除去して前記赤外線遮断膜を得る工程、を含み、
前記赤外線遮断膜は、前記エラストマーを50重量%以上98重量%以下と、前記赤外線を吸収又は反射する材料を2重量%以上10重量%以下と、を含む樹脂の膜であり、厚みが0.1μm以上20μm以下である、赤外線遮断膜の製造方法。
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JP2016108230A (ja) | 2014-11-10 | 2016-06-20 | 株式会社クラレ | 合わせガラス用中間膜および合わせガラス |
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