JP2019065097A - 熱可塑性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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村田 直紀
Naoki Murata
直紀 村田
井上 弘康
Hiroyasu Inoue
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Abstract

【課題】熱可塑性樹脂及びシラン化合物を成形機へ供給する際のブロッキングの発生を防止し、基材との密着性に優れた熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供する。【解決手段】芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体、及びブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、190℃、荷重2.16kgで測定したMFRが10g/10分〜100g/10分でかつ、軟化温度80℃〜120℃である熱可塑性樹脂に、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を添加して混合物Xを得る工程と、混合物Xに一次粒子径が300nm以下である金属化合物粒子を添加して混合物Yを得る工程と、混合物Yを、フィードスクリューを有する供給装置を用いて押出機へ供給して加熱及び混練する工程と、を含む、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関する。
従来、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンのブロック共重合体の水素化物をシラン変性してなる、シラン変性物を含む樹脂が知られている(特許文献1)。
このようなシラン変性物を含む樹脂は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンのブロック共重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂、ならびにシラン化合物等の材料を、加熱および混練することにより製造され、成形機により所定形状に成形され得る。
特開2015−104859号公報
芳香族ビニル化合物及び共役ジエンのブロック共重合体及び当該ブロック共重合体の水素化物(以下、「ブロック共重合体(水素化物)」ともいう)として、低分子量のものを用いて作製したシラン変性物を含む樹脂の成形体は、ガラス等の基材との密着性に優れる。しかしながら、このようなシラン変性物を製造するための材料である、低分子量のブロック共重合体(水素化物)を含む熱可塑性樹脂、及びシラン化合物等を、フィードスクリューを備える供給装置を用いて成形機へ供給する際に、ブロッキングが発生することがあった。
本願において、「ブロッキング」とは、熱可塑性樹脂及びシラン化合物等を含む混合物が塊状になる現象をいう。
従って、本発明の目的は、熱可塑性樹脂及びシラン化合物を成形機へ供給する際のブロッキングの発生を防止し、かつ、ガラス等の基材との密着性に優れた熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく検討した。その結果、本発明者は、所定のメルトフローレート及び軟化温度を有するブロック共重合体(水素化物)を含有する熱可塑性樹脂に、シラン化合物及び有機過酸化物を添加した後に、所定の粒子径を有する金属化合物粒子を添加することにより、成形機へ供給する際のブロッキングの発生を防止し、かつ、ガラス等の基材との密着性に優れた熱可塑性樹脂成形体を得ることができるということを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
〔1〕 芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体、及び前記ブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、
190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分〜100g/10分でかつ、軟化温度80℃〜120℃である熱可塑性樹脂に、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を添加して混合物Xを得る工程と、
前記混合物Xに一次粒子径が300nm以下である金属化合物粒子を添加して混合物Yを得る工程と、
前記混合物Yを、フィードスクリューを有する供給装置を用いて押出機へ供給して加熱及び混練する工程と、を含む、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
〔2〕 前記熱可塑性樹脂は、前記ブロック共重合体及び前記ブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、
前記ブロック共重合体は、前記芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、前記鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有し、
前記ブロック共重合体全体に占める、前記重合体ブロック[A]の重量分率wAと前記重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA:wB)が20:80〜60:40である、〔1〕に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
〔3〕 前記熱可塑性樹脂は、前記ブロック共重合体の水素化物を含有し、
前記ブロック共重合体の水素化物の水素化率が、前記ブロック共重合体の全不飽和結合の90%以上である、〔1〕または〔2〕に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
本発明によれば、熱可塑性樹脂及びシラン化合物を成形機へ供給する際のブロッキングの発生を防止することができ、ガラス等の基材との密着性に優れた熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
[熱可塑性樹脂成形体の製造方法の概要]
本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、所定の熱可塑性樹脂に、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を添加して混合物Xを得る工程(工程(A))と、混合物Xに所定の一次粒子径を有する金属化合物粒子を添加して混合物Yを得る工程(工程(B))と、混合物Yを、フィードスクリューを有する供給装置を用いて押出機へ供給して加熱及び混練する工程(工程(C))と、を含む。
〔1.工程(A)〕
工程(A)は、芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体、及び前記ブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分〜100g/10分でかつ、軟化温度80℃〜120℃である熱可塑性樹脂に、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を添加して混合物Xを得る工程である。
〔1.1.熱可塑性樹脂〕
熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体(「ブロック共重合体」ともいう)、及び前記ブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分〜100g/10分でかつ、軟化温度80℃〜120℃である。本発明において、熱可塑性樹脂における上記重合体の含有割合は、好ましくは80重量%以上であり、上限は100重量%としうる。
〔1.1.1.ブロック共重合体〕
ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単位を主成分とする重合体ブロック[B]とを有する重合体である。
ブロック共重合体が有する、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位を主成分として有する。芳香族ビニル化合物単位に対応する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましい。更に、工業的入手のし易さ、耐衝撃性の観点から、スチレンが特に好ましい。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位のみを有していてもよく、芳香族ビニル化合物単位に組み合わせて任意の構造単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]において芳香族ビニル化合物単位の量を前記のように多くすることにより、熱可塑性樹脂成形体(以下、「成形体」ともいう)の耐熱性を高めることができる。
重合体ブロック[A]に含まれる任意の構造単位としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物単位、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位、などが挙げられる。
重合体ブロック[A]における、鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、重合体ブロック[B]が主成分として有する鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物の例として挙げるものと同じ例が挙げられる(後述を参照)。このような鎖状共役ジエン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物としては、例えば、鎖状ビニル化合物;環状ビニル化合物;ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基を有するビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物などが挙げられる。中でも、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;などの、極性基を含有しないものが、吸湿性の面で好ましい。その中でも、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン及びプロピレンが特に好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック[A]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
ブロック共重合体が有する重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位を有する。鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、1,3−ブタジエン及びイソプレンが特に好ましい。
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位のみを有していてもよく、鎖状共役ジエン化合物単位に組み合わせて任意の構造単位を含んでいてもよい。重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[B]において鎖状共役ジエン化合物単位の量を前記のように多くすることにより、成形体の低温での耐衝撃性を向上させることができる。
重合体ブロック[B]における任意の構造単位としては、例えば、芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位などが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位としては、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものが挙げられる。
重合体ブロック[B]における任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。特に、重合体ブロック[B]における芳香族ビニル化合物単位の含有率を低くすることにより、成形体の低温での柔軟性を向上させて、成形体の低温での耐衝撃性を向上させることができる。
芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、ブロック共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン単位を主成分とする、ブロック共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有する重合体が好ましい。より好ましいブロックの形態は、鎖状共役ジエンの重合体ブロック[B]の両端に芳香族ビニル化合物の重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;芳香族ビニル化合物の重合体ブロック[A]の両端に鎖状共役ジエンの重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。製造が容易であり且つ熱可塑性樹脂としての物性を所望の範囲とすることができるという観点から、[A]−[B]−[A]のトリブロック共重合体であることが、特に好ましい。
ブロック共重合体1分子中に、複数個の重合体ブロック[A]がある場合、これらは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。また、ブロック共重合体1分子中に、複数個の重合体ブロック[B]がある場合、これらは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
ブロック共重合体全体に占める、重合体ブロック[A]の重量分率wAと重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA:wB)は、好ましくは、20:80以上、より好ましくは30:70以上であり、好ましくは60:40以下、より好ましくは55:45以下である。前記の比wA/wBを前記範囲の下限値以上にすることにより、熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させることができる。また、上限値以下にすることにより、熱可塑性樹脂の柔軟性を高めて、熱可塑性樹脂のバリア性を安定して良好に維持することができる。
ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20,000〜200,000、より好ましくは25,000〜150,000、特に好ましくは30,000〜100,000である。また、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
前記重合体の重量平均分子量及び分子量分布は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
〔1.1.2.ブロック共重合体の水素化物〕
ブロック共重合体の水素化物は、前述したブロック共重合体の不飽和結合を水素化して得られる。具体的には、ブロック共重合体の水素化物は、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びスチレン−イソプレンブロック共重合体等の、芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化して得られる。ブロック共重合体の水素化物の具体例としては、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報、及び国際公開第WO2015/099079号などの従来技術文献に記載されているものが挙げられる。
熱可塑性樹脂がブロック共重合体の水素化物を含有する場合、ブロック共重合体の水素化物の水素化率は、ブロック共重合体の全不飽和結合の90%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。水素化率が高いほど、成形体の耐熱性及び耐光性を良好にできる。ここで、ブロック共重合体の水素化物の水素化率は、1H−NMRによる測定により求めることができる。
特に、主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、成形体の耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。
また、芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、重合体ブロック[A]を水素化して得られる重合体ブロックのガラス転移温度が高くなるので、成形体の耐熱性を効果的に高めることができる。さらに、成形体の光弾性係数を下げられるので、成形体を封止フィルム等として用いる場合に、封止時の意図しないレターデーションの発現を抑制できる。
ブロック共重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)は、通常20,000〜200,000、好ましくは25,000〜150,000、より好ましくは30,000〜100,000である。また、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
ブロック共重合体の水素化物の重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnが前記の範囲にあることにより、成形体の機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
ブロック共重合体の水素化物における、重合体ブロック[A]を水素化して得られる全重合体ブロックが水素化物全体に占める重量分率wAと、重合体ブロック[B]を水素化して得られる全重合体ブロックが水素化物全体に占める重量分率wBとの比(wA/wB)は、通常、水素化する前のブロック共重合体における比wA/wBと同じ値となる。
〔1.1.3.任意成分〕
熱可塑性樹脂は、ブロック共重合体及びブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体と組み合わせて、さらに、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤;滑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;及び帯電防止剤が挙げられる。これらの配合剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
〔1.1.4.熱可塑性樹脂のMFR〕
本発明において、熱可塑性樹脂の190℃、荷重2.16kgで測定したMFR(以下、「190℃、荷重2.16kgで測定したMFR」を「MFR」ということがある)は、10g/10分〜100g/10分である。熱可塑性樹脂のMFRは、好ましくは12g/10分以上、より好ましくは15g/10分以上であり、好ましくは90g/10分以下、より好ましくは80g/10分以下である。熱可塑性樹脂のMFRを下限値以上とすることにより、成形体を封止フィルムとして用いる場合のガラス等との密着性を向上することができ、MFRを上限値以下とすることにより、ブロッキングを防止することができる。
熱可塑性樹脂のMFRは、JIS−K−7210に基づき、メルトインデクサを用いて、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定しうる。
〔1.1.5.熱可塑性樹脂の軟化温度〕
本発明において、熱可塑性樹脂の軟化温度80℃〜120℃である。熱可塑性樹脂の軟化温度は好ましくは85℃以上、より好ましくは90℃以上であり、好ましくは115℃以下である。熱可塑性樹脂の軟化温度を下限値以上とすることにより、成形体を封止フィルムとして用いる場合の加工性を容易にすることができ、軟化温度を上限値以下とすることにより、成形体を封止フィルム等として用いる場合のガラス等との密着性を向上することができる。
熱可塑性樹脂の軟化温度は、シート状に成形した熱可塑性樹脂を、熱機械分析装置を用いて、昇温速度5℃/分、荷重20mNの条件で測定しうる。
〔1.2.エチレン性不飽和シラン化合物〕
エチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体の水素化物とグラフト重合でき、ブロック共重合体の水素化物にアルコキシシリル基を導入できるものを用いうる。このようなエチレン性不飽和シラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び2−ノルボルネン−5−イルトリメトキシシランなどが挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好ましい。また、エチレン性不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和シラン化合物の量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは7重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。
〔1.3.有機過酸化物〕
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。中でも、1分間半減期温度が170℃〜190℃のものが好ましく、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシドなどが好ましい。また、有機過酸化物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
有機過酸化物の量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、特に好ましくは2重量部以下である。
〔1.4.混合物Xの製造〕
混合物Xは、上述した熱可塑性樹脂、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を二軸混練機等の混練機に投入して混合することにより製造することができる。熱可塑性樹脂、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を混練機に投入する順番は、特に限定がなく、二以上の成分を同時に混練機に投入してもよい。このようにして製造した混合物Xは、工程(B)に供される。
〔2.工程(B)〕
工程(B)は、混合物Xに一次粒子径が300nm以下である金属化合物粒子を添加して混合物Yを得る工程である。
〔2.1.金属化合物粒子〕
金属化合物粒子としては、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等の、無機金属酸化物;特開2005−298598号公報に記載の、有機金属化合物;ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、ハイドロタルサイト等の、水分を物理的に粒子内部の空隙あるいは表面に吸着しうる物質;及び金属酸化物を含有するクレイが挙げられる。これらの金属化合物粒子のうち、ゼオライト及びハイドロタルサイトからなる群より選択される1種類以上の物質が好ましい。ゼオライトは、特に高い吸湿能力を有し、例えば、20℃90%RHにおいて24時間静置した場合に10%〜30%といった高い重量変化率を容易に実現できる。また、ゼオライトは、乾燥によって水を放出するので、再利用が可能である。前記のような金属化合物粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
〔2.1.1.金属化合物粒子の一次粒子径〕
金属化合物粒子は、一次粒子径が300nm以下である。金属化合物粒子の一次粒子径を300nm以下とすることにより、ブロッキング防止効果を高め、成形体をフィルムとして用いる場合の(フィルム)厚さを均質にすることができる。金属化合物粒子の一次粒子径は、好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下である。金属化合物粒子の一次粒子径を小さくすることにより内部ヘイズ値を小さくして、成形体の透明性を高めることができる。
金属化合物粒子の一次粒子径は、好ましくは3nm以上、特に好ましくは10nm以上である。金属化合物粒子の一次粒子径が、前記下限値以上であることにより、混合物Yにおける金属化合物粒子の分散性を良好なものとすることができる。本発明において、一次粒子径とは、一次粒子の数平均粒子径を表す。金属化合物粒子の一次粒子径(数平均粒子径)は、溶媒に分散させた分散液の状態で、動的光散乱法による粒子径測定装置により測定しうる。また他の方法として、フィルム状態で電子顕微鏡によりフィルム断面における粒子を直接観察し、粒子径の平均値を求める手段によって測定しうる。
〔2.1.2.金属化合物粒子の屈折率〕
熱可塑性樹脂の屈折率と金属化合物粒子の屈折率との差の絶対値は0.03以下であるのが好ましく、0.02以下であるのがより好ましい。熱可塑性樹脂の屈折率と金属化合物粒子との屈折率の差の絶対値を前記範囲とすることにより、内部ヘイズを小さくし、成形体をフィルムとして用いる場合の光の散乱を小さくし透明性を高くすることができる。
金属化合物粒子の屈折率は、標準液法により測定し得る。具体的には、屈折率が既知の標準液試薬を2〜3滴、ガラス基板上に滴下し、これに金属化合物粒子を混合して混合液を調製する。この操作を、様々な屈折率を有する標準液試薬(MORITEX社製カーギル標準屈折率液)を用いて行い、前記混合液が透明になったときの標準液試薬の屈折率を各粒子の屈折率とする。一方熱可塑性樹脂の屈折率は、フィルム状に成形したものを準備し、アッペ屈折計あるいは分光エリプソメーターによって測定した波長589nmの屈折率とする。
〔2.1.3.金属化合物粒子の添加量〕
金属化合物粒子の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。金属化合物粒子の量が、前記範囲の下限値以上であることにより、成形体を封止フィルム等として用いる場合の水分侵入防止効果を高めることができる。また、前記範囲の上限値以下であることにより、成形体をフィルムとして用いる場合の透明性、柔軟性及び加工性を高めることができる。
〔2.2.混合物Yの製造〕
混合物Yは、混合物Xを製造した混練機に金属化合物粒子を投入して混合することにより製造しうる。このようにして製造した混合物Yは、工程(C)に供される。
混合物Yを製造する際には、金属化合物粒子以外に、金属化合物粒子の分散性を高める分散剤を添加してもよい。分散剤の例としては、東亜合成社の「アロン(登録商標)」及び「ジュリマー(登録商標)」シリーズ、日本触媒社の「アクアリック(登録商標)」シリーズ)、共栄社化学社の「フローレン(登録商標)」シリーズ、楠本化成社の「ディスパロン(登録商標)」シリーズ、BASF社の「ソカラン(登録商標)」シリーズ、ビックケミー社の「DISPERBYK(登録商標)」シリーズ、日本ルーブリゾール社の「SOLSPERSE(登録商標)」シリーズ、味の素ファインテクノ社の「アジスパー」シリーズなどの市販の分散剤が挙げられる。
〔3.工程(C)〕
工程(C)は、混合物Yを、フィードスクリューを有する供給装置を用いて押出機へ供給して加熱及び混練する工程である。工程(C)においては、例えば、フィードスクリューを有する供給装置を備える二軸押出機を用いて、加熱及び混練を行う。
工程(C)においては、混合物Yをブロック共重合体の水素化物の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより、熱可塑性重合体(ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物から選ばれる重合体)にアルコキシシリル基を導入することができ、熱可塑性樹脂のシラン変性物が得られる。混合物Yを混練するときの具体的な温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上であり、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下、特に好ましくは240℃以下である。また、混練時間は、好ましくは0.1分以上、より好ましくは0.2分以上、特に好ましくは0.3分以上であり、好ましくは15分以下、より好ましくは10分以下、特に好ましくは5分以下である。二軸混練機、単軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練及び押出しを行いうる。
アルコキシシリル基の導入量は、アルコキシシリル基の導入前の熱可塑性重合体(ブロック共重合体及びその水素化物から選ばれる重合体)100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは0.3重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。アルコキシシリル基の導入量を前記範囲に収めると、水分で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が過剰に高くなることを抑制できるので、成形体をフィルムとして用いる場合の接着性を高く維持することができる。
アルコキシシリル基の導入量は、H−NMRスペクトルにて計測しうる。また、アルコキシシリル基の導入量の計測の際、導入量が少ない場合は、積算回数を増やして計測しうる。
アルコキシシリル基が導入された熱可塑性重合体(ブロック共重合体及びその水素化物から選ばれる重合体)の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、通常は、アルコキシシリル基を導入する前の熱可塑性重合体の分子量から大きく変化しない。ただし、アルコキシシリル基を導入する際には、通常、有機過酸化物の存在下で熱可塑性重合体を変性反応させるので、架橋反応及び切断反応が進行し、分子量分布は大きく変化する傾向がある。
アルコキシシリル基が導入された熱可塑性重合体の重量平均分子量は、通常20,000〜200,000、好ましくは25,000〜150,000、より好ましくは30,000〜100,000である。
また、アルコキシシリル基が導入された熱可塑性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下であり、好ましくは1.0以上である。
アルコキシシリル基が導入された熱可塑性重合体の重量平均分子量Mw及び分子量分布Mw/Mnがこの範囲であると、成形体をフィルムとして用いる場合の良好な機械強度及び引張り伸びが維持できる。
〔4.成形工程〕
成形工程は、工程(C)を経て得られた熱可塑性樹脂のシラン変性物を、例えばフィルム形状、ペレット形状に成形して成形体を得る工程である。
〔5.熱可塑性樹脂成形体〕
本発明により得られる熱可塑性樹脂成形体の形状は、例えばフィルム、ペレット等としうる。本発明により得られる成形体は、熱可塑性樹脂のシラン変性物を主成分として含有するので、フィルムとして用いる場合、例えば、ガラス、無機物、金属などの基材との密着性に優れる。また、本発明において用いた熱可塑性樹脂はMFRが10g/10分〜100g/10分でかつ、軟化温度80℃〜120℃であり、当該熱可塑性樹脂の主成分であるブロック共重合体(水素化物)は低分子量である。そのため、本発明により得られる成形体をフィルムとして用いるとガラス等の基材との密着性を特に優れたものとすることができ、有機EL発光装置の素子を封止する封止フィルムとして用いた場合に、素子との密着性を特に高くすることができる。
〔5.1.熱可塑性樹脂成形体の用途〕
本発明により得られるフィルム形状の成形体は、接着層として用いうる。即ち、接着することが求められる2つの層の間に、本発明により得られる成形体を介在させ、接着性を発現させるための処理を施し、それによりかかる接着対象の2つの層を接着させうる。したがって、本発明により得られる成形体は、特に、有機EL発光装置を封止する封止フィルムとして有用に用いうる。
接着性を発現させるための処理は、具体的には、所謂ホットメルトの処理としうる。即ち、フィルム形状の成形体を加熱し、且つ、もし必要であれば接着対象の2つの層の間に圧力を加える処理を行いうる。処理温度は、好ましくはTg以上、より好ましくはTg+50℃以上の温度において行なう。ここでTgとは、成形体を構成する熱可塑性樹脂シラン変性物のガラス転移温度を表す。熱可塑性樹脂シラン変性物が複数のガラス転移温度を有する場合、前記のTgは、そのうちで最も高温のガラス転移温度を表す。これにより、良好な接着を達成しうる。処理温度の上限は、好ましくはTg+50℃以下、より好ましくはTg+30℃以下である。かかる上限以下の温度で処理することにより、金属化合物粒子及び分散剤がフィルム(成形体)の最表面に移行することを効果的に抑制することができ、その結果、金属化合物粒子等と接着対象の層との化学的な反応を抑制することができ、且つ金属化合物粒子の二次粒子による物理的な悪影響を抑制することができる。
〔5.2.熱可塑性樹脂成形体を用いたフィルム〕
本発明により得られる成形体をフィルム形状に成形して接着フィルム等のフィルムとして用いる場合、その一方の面又は両方の面には、保存、運搬、用途等に応じて、任意の層を設けてもよい。任意の層としては、剥離フィルム等が挙げられる。本発明の製造方法により得られる成形体を接着フィルムとして用いる場合において、剥離フィルムを貼合した状態で保存及び運搬することができ、好適である。剥離フィルムとしては、例えば離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルム等が挙げられる。
本発明により得られる成形体を接着フィルム等のフィルムとして用いる場合、当該フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは7μm以上であり、好ましくは16μm以下、より好ましくは13μm以下である。フィルムの厚さを前記下限値以上とすることにより、有効な吸湿を容易に達成することができ、それにより、水分の浸入の抑制を容易に達成することができる。フィルムの厚さを前記上限値以下とすることにより、本発明により得られるフィルムの可撓性を良好なものとすることができる。
本発明により得られる成形体を接着フィルム等のフィルムとして用いる場合、当該フィルムの内部ヘイズは、0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましい。内部ヘイズを上記範囲以下とすることにより、フィルムの透明性を高くしうるので、該熱フィルムを有機EL発光装置における、光の透過が求められる箇所において好適に用いることができる。内部ヘイズは、濁度計を用いることにより測定しうる。
本発明により得られる成形体を接着フィルムとして用いる場合、当該接着フィルムの製造方法は特に限定されず、任意の方法により製造しうる。例えば、工程(C)を経て得られた熱可塑性樹脂のシラン変性物を、離型処理を施したPETフィルム等の基材に塗布し乾燥させること等により製造することができる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温および常圧の条件において行った。
[MFRの測定]
熱可塑性樹脂のMFRは、JIS−K−7210に基づき、メルトインデクサ(東洋精機製作所社製「F−F01」)を用いて、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
[軟化点の測定]
熱可塑性樹脂のペレットを熱プレス機(テスター産業(株)製 SA-302)を用いて、230℃にてプレスし、厚さ500μmのシートを作製した。当該シートを、熱機械分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製 「TMA7100」)を用いて、昇温速度5℃/分、荷重20mNで測定し、5%長さが変化した温度を軟化点とした。
[屈折率の測定]
金属化合物粒子の屈折率は、標準液法により測定した。具体的には、屈折率が既知の標準液試薬を2〜3滴、ガラス基板上に滴下し、これに金属化合物粒子を混合して混合液を調製した。この操作を、様々な屈折率を有する標準液試薬(MORITEX社製カーギル標準屈折率液)を用いて行い、前記混合液が透明になったときの標準液試薬の屈折率を各粒子の屈折率とした。熱可塑性樹脂の屈折率は、フィルム状に成形したものを準備し、アッペ屈折計により、波長589nm測定した。
[評価方法]
〔ブロッキング性の評価〕
各例の製造方法において、混合物Y(混合物Y−1〜Y−4、混合物Y−C1〜Y−C4)を直径42.7mm、長さ290mmのフィードスクリューを有する供給装置に入れ、1.5kg/時間にて供給装置を1時間運転した後の混合物Yの状態を肉眼により観察し、以下の基準により評価を行った。
<評価基準>
OK:混合物Y中に、直径1cm以上の塊が認められなかった(ブロッキングが発生しなかった)
NG:混合物Y中に、直径1cm以上の塊が1つ以上認められた(ブロッキングが発生した)
〔内部ヘイズの測定方法〕
5cm角のガラス基板3、実施例及び比較例で作製したPETフィルム付き樹脂フィルムから、離型処理したPETフィルムを剥離除去して得られる樹脂フィルム1、ならびに、5cm角のガラス基板4を準備した。
ガラス基板3上に樹脂フィルム1を配置した。さらにその上にガラス基板4を配置し、ロール温度110℃に設定したロールラミネータの間を0.3MPaの圧力で通過させて貼りあわせることにより、ガラス基板3/樹脂フィルム1/ガラス基板4の順で積層されたガラス積層体2を作製した。得られたガラス積層体2の内部ヘイズを、濁度計(日本電色社製「NDH-2000」)を用いて測定した。内部ヘイズ値が0.5%以下のものを「OK」、内部ヘイズ値が0.5%を超えたものを「NG」とした。
〔フィルムとガラスとの密着性評価試験(碁盤目剥離試験)〕
5cm角のガラス基板5、ならびに、実施例及び比較例で作製したPETフィルム付き樹脂フィルムを準備した。
ガラス基板5の上に、離型処理されたPETフィルムが上側にくるように実施例及び比較例のPETフィルム付き樹脂フィルムを配置し、ロール温度110℃に設定したロールラミネータの間を0.3MPaの圧力で通過させて貼りあわせ、さらに80℃のオーブン中で1時間保管した。このようにして、離型処理されたPETフィルム/樹脂フィルム1/ガラス基板5の順で積層されたガラス積層体3を作製した。このガラス積層体3から、離型処理されたPETフィルムのみを剥がし、樹脂フィルムにカッターで、1mm間隔で縦横に11本の切れ目を入れて、1mm角の碁盤目を100個(10×10)作り、この上にセロハンテープを貼り付けて、素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数を以下の評価基準により評価した。剥がれずに残った碁盤目の数が多いほど、ガラス基板との密着性に優れていることを意味する。
<評価基準>
OK:全碁盤目の数(100)に対し剥がれずに残った碁盤目の数が90個以上
NG:全碁盤目の数(100)に対し剥がれずに残った碁盤目の数が89個以下
〔実施例1〕
(1−1.熱可塑性樹脂の製造)
芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック構造を有する、ブロック共重合体の水素化物(水素化ブロック共重合体)を、以下の手順により製造した。
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.615部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.62部を加えて重合を開始させ、さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(重合転化率は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。以下にて同じ。)。
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i)を得た。
得られた溶液(i)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は33,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
次に、溶液(i)を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、溶液(i)に水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行なうことによりブロック共重合体を水素化して、ブロック共重合体の水素化物(ii)を含む溶液(iii)を得た。溶液(iii)中の水素化物(ii)の重量平均分子量(Mw)は34,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
水素化反応の終了後、溶液(iii)をろ過して水素化触媒を除去した。その後、ろ過された溶液(iii)に、リン系酸化防止剤である6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン(住友化学社製「スミライザー(登録商標)GP」。以下、「酸化防止剤A」という。)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させ、溶液(iv)を得た。
次いで、溶液(iv)を、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノー社製、孔径0.5μm〜1μm)にて濾過し、更に別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて順次濾過して微小な固形分を除去した。ろ過された溶液(iv)から、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。そして、前記の濃縮乾燥器に直結したダイから、固形分を溶融状態でストランド状に押出し、冷却し、ペレタイザーでカットして、ブロック共重合体の水素化物及び酸化防止剤Aを含有する、熱可塑性樹脂のペレット(v)85部を得た。得られたペレット(v)中のブロック共重合体の水素化物(水素化ブロック共重合体)の重量平均分子量(Mw)は34,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。また、水素化率は99.9%であった。熱可塑性樹脂(v)の温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRは60g/10分で、軟化点は100℃であった。熱可塑性樹脂のペレット(v)をフィルム状に成形してアッペ屈折計により測定した屈折率(n1)は1.50であった。
(1−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
(1−1)で得られた熱可塑性樹脂のペレット(v)100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部を添加してタンブラーミキサーで混合し、次いでジ−t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加してタンブラーミキサーで混合して、混合物X−1を得た。混合物X−1に一次粒子径が200nmのハイドロタルサイト0.1部を添加してタンブラーミキサーで混合し、混合物Y−1を得た。混合物Y−1を、フィードスクリュー(直径42.7mm、長さ290mm)を有する供給装置を備える二軸押出し機に供給し、1.5kg/時間にて供給装置を1時間運転した後、バレル温度210℃、滞留時間80秒〜90秒で加熱及び混練した。混練された混合物を押し出し、ペレタイザーでカットして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi)を得た。供給装置に入れて1時間運転後の混合物Y−1について、ブロッキング性を評価し、結果を表1に示した。
(1−3.樹脂フィルムの製造)
熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi)40gとシクロヘキサン160gとを混合して、ペレットを溶解させ、20%の重合体溶液を作製した。
重合体溶液を、離型処理されたPETフィルム(離型処理PETフィルム、商品名MRV38、三菱樹脂株式会社製)上にアプリケータを用いて塗布し、110℃のホットプレートで3分間乾燥し溶剤を揮発させた。このようにして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。離型処理されたPETフィルムを備える樹脂フィルム(「PETフィルム付き樹脂フィルム」ともいう)は、吸湿が進まないように、窒素環境下で保管し、上記評価方法に従い、内部ヘイズ、及び密着性を評価し、結果を表1に示した。
〔実施例2〕
(2−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、一次粒子径が200nmのハイドロタルサイト0.1部に代えて、一次粒子径が50nmのゼオライト0.1部を用いたこと以外は、同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−2)を得た。本例では、熱可塑性樹脂ペレット(v)に、ビニルトリメトキシシラン、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び一次粒子径が50nmのゼオライトをこの順で添加して得られた混合物Y−2について、実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表1に示した。
(2−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(2−2)で得られたペレット(vi−2)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表1に示した。
〔実施例3〕
(3−1.熱可塑性樹脂の製造)
以下の手順によりブロック共重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂のペレット(v−3)を製造した。
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.615部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.31部を加えて重合を開始させ、さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(重合転化率は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。以下にて同じ。)。
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i−3)を得た。
得られた溶液(i−3)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は41,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
次に、溶液(i−3)を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、溶液(i−3)に水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行なうことによりブロック共重合体を水素化して、ブロック共重合体の水素化物(ii−3)を含む溶液(iii−3)を得た。溶液(iii−3)中の水素化物(ii−3)の重量平均分子量(Mw)は42,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
水素化反応の終了後に得られた溶液(iii−3)について、実施例1の溶液(iii)と同一の処理(ろ過、酸化防止剤Aの添加)を行って溶液(iv−3)を得た。次いで溶液(iv−3)について、実施例1の溶液(iv)と同一の処理(ろ過、ペレット製造)を行い熱可塑性樹脂のペレット(v−3)を得た。ペレット(v−3)の重量平均分子量(Mw)は42,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、水素化率は99.9%であった。
得られた熱可塑性樹脂のペレット(v−3)の温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRは15g/10分で、軟化点は115℃であった。熱可塑性樹脂のペレット(v)をフィルム状に成形してアッペ屈折計により測定した屈折率(n1)は1.50であった。
(3−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、熱可塑性樹脂ペレット(v)100部に代えて、(3−1)において得られた熱可塑性樹脂ペレット(v−3)100部を用いたこと以外は、同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−3)を得た。本例では、熱可塑性樹脂ペレット(v−3)に、ビニルトリメトキシシラン、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び一次粒子径が200nmのハイドロタルサイトをこの順で添加した混合物Y−3について実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表1に示した。
(3−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(3−2)で得られたペレット(vi−3)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表1に示した。
〔実施例4〕
(4−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、混合物Y−1に代えて、熱可塑性樹脂ペレット(v)に、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ビニルトリメトキシシラン、及び一次粒子径が200nmのハイドロタルサイトをこの順で添加した混合物Y−4を用いたこと以外は、同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−4)を得た。本例では前記混合物Y−4について実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表1に示した。
(4−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(4−2)で得られたペレット(vi−4)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表1に示した。
〔比較例1〕
(C1−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、一次粒子径が200nmのハイドロタルサイト0.1部に代えて、一次粒子径が450nmのハイドロタルサイトを0.1部用いたこと以外は同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−C1)を得た。本例では、熱可塑性樹脂ペレット(v)、ビニルトリメトキシシラン、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び一次粒子径が450nmのハイドロタルサイトをこの順で添加した混合物Y−C1について、実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表2に示した。
(C1−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(C1−2)で得られたペレット(vi−C1)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表2に示した。
〔比較例2〕
(C2−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、一次粒子径が200nmのハイドロタルサイト0.1部に代えて、一次粒子径が500nmのゼオライト0.1部を用いたこと以外は同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−C2)を得た。本例では、熱可塑性樹脂ペレット(v)、ビニルトリメトキシシラン、ジ−t−ブチルパーオキサイド及び一次粒子径が500nmのゼオライトをこの順で添加した混合物Y−C2について、実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表2に示した。
(C2−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(C2−2)で得られたペレット(vi−C2)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表2に示した。
〔比較例3〕
(C3−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、混合物Y−1に代えて、熱可塑性樹脂ペレット(v)に、一次粒子径が200nmのハイドロタルサイト、ビニルトリメトキシシラン、及びジ−t−ブチルパーオキサイドをこの順で添加した混合物Y−C3を用いたこと以外は、同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−C3)を得た。本例では前記混合物Y−C3について、実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表2に示した。
(C3−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(C3−2)で得られたペレット(vi−C3)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表2に示した。
〔比較例4〕
(C4−1.熱可塑性樹脂の製造)
以下の手順によりブロック共重合体の水素化物を含む熱可塑性樹脂(v−C4)を製造した。
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.615部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.14部を加えて重合を開始させ、さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(重合転化率は、ガスクロマトグラフィーにより測定した。以下にて同じ。)。
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i−C4)を得た。
得られた溶液(i−C4)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は46,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
次に、溶液(i−C4)を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、溶液(i−C4)に水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行なうことによりブロック共重合体を水素化して、ブロック共重合体の水素化物(ii−C4)を含む溶液(iii−C4)を得た。溶液(iii−C4)中の水素化物(ii−C4)の重量平均分子量(Mw)は47,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
水素化反応の終了後に得られた溶液(iii−C4)について、実施例1の溶液(iii)と同一の処理(ろ過、酸化防止剤Aの添加)を行って溶液(iv−C4)を得た。次いで溶液(iv−C4)について、実施例1の溶液(iv)と同一の処理(ろ過、ペレット製造)を行い熱可塑性樹脂のペレット(v−C4)を得た。ペレット(v−C4)の重量平均分子量(Mw)は47,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.05、水素化率は99.9%であった。
得られた熱可塑性樹脂(v−C4)の温度190℃、荷重2.16kgにおけるMFRは3g/10分で、軟化点は130℃であった。熱可塑性樹脂のペレット(v−C4)をフィルム状に成形してアッペ屈折計により測定した屈折率(n1)は1.50であった。
(C4−2.水素化ブロック共重合体のシラン変性物の製造)
実施例1の(1−2)において、混合物Y−1に代えて、熱可塑性樹脂ペレット(v−C4)100部に、ビニルトリメトキシシラン2部及びジ−t−ブチルパーオキサイド0.1部をこの順で添加した混合物Y−C4を用いたこと以外は、同様にして、熱可塑性樹脂のシラン変性物のペレット(vi−C4)を得た。本例では、前記混合物Y−C4について、実施例1と同様にブロッキング性を評価し、結果を表2に示した。
(C4−3.樹脂フィルムの製造)
実施例1の(1−3)において、ペレット(vi)に代えて(C4−2)で得られたペレット(vi−C4)を用いたこと以外は同様にして、一方の面に離型処理されたPETフィルムを備えた、厚さ10μmの樹脂フィルムを得た。得られたPETフィルム付き樹脂フィルムは、吸湿が進まないように窒素環境下で保管し、実施例1と同様の評価方法により評価し、結果を表2に示した。
表1及び表2(以下、一括して「表」ということがある)には、評価結果を示した。フィルムの内部ヘイズに関しては、評価結果とともに測定値を括弧内に示した。
表中、「屈折率の差」とは熱可塑性樹脂の屈折率n1と金属化合物粒子の屈折率n2との差の絶対値(|n1-n2|)を意味する。
表には、評価結果とともに、各例で用いた熱可塑性樹脂のMFR、軟化点、及び屈折率n1、エチレン性不飽和シラン化合物の添加量及び添加の順番、有機過酸化物の添加量及び添加の順番、ならびに、金属化合物粒子の添加量、一次粒子径、添加の順番及び屈折率n2を併せて示した。
Figure 2019065097
Figure 2019065097
実施例1〜4の製造方法によれば、熱可塑性樹脂及びシラン化合物を成形機へ供給する際のブロッキングの発生を防止する。また、実施例1〜4で得られた熱可塑性樹脂成形体は、ガラス等の基材との密着性に優れることにより、本発明の製造方法により得られる成形体は、有機EL発光装置用の封止用フィルム等として有用に用いうる。

Claims (3)

  1. 芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエンとのブロック共重合体、及び前記ブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、
    190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10g/10分〜100g/10分でかつ、軟化温度80℃〜120℃である熱可塑性樹脂に、エチレン性不飽和シラン化合物及び有機過酸化物を添加して混合物Xを得る工程と、
    前記混合物Xに一次粒子径が300nm以下である金属化合物粒子を添加して混合物Yを得る工程と、
    前記混合物Yを、フィードスクリューを有する供給装置を用いて押出機へ供給して加熱及び混練する工程と、を含む、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂は、前記ブロック共重合体及び前記ブロック共重合体の水素化物から選ばれる一種以上の重合体を主成分として含有し、
    前記ブロック共重合体は、前記芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、前記鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、前記ブロック共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有し、
    前記ブロック共重合体全体に占める、前記重合体ブロック[A]の重量分率wAと前記重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA:wB)が20:80〜60:40である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  3. 前記熱可塑性樹脂は、前記ブロック共重合体の水素化物を含有し、
    前記ブロック共重合体の水素化物の水素化率が、前記ブロック共重合体の全不飽和結合の90%以上である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023176456A1 (ja) * 2022-03-18 2023-09-21 日本ゼオン株式会社 樹脂組成物及び光学フィルム

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