以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
本実施形態の一実施形態の弁装置100は、配管構造(排水系)の配管部の排水経路の一部に設置され、排水経路内を一時的に封水状態で閉鎖し、又は、排水経路内の負圧を解消するように機能する。以下、図面に沿って、本実施形態の弁装置100の構成を説明する。
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態の弁装置100の上方及び下方から見た斜視図である。図2(a)~(c)は、該弁装置100の正面図、側面図及び背面図である。図3(a),(b)は、該弁装置100の平面図及び底面図である。図4は、該弁装置100のA-A縦断面図である。図5及び図6は、該弁装置100の径方向に沿って切断したB-B横断面図及びC-C横断面図である。図7は、該弁装置100の分解斜視図である。
弁装置100は、図1乃至図6に示すように、排水経路に接続される装置本体110と、該装置本体110の内部に保持された弁体130と、該弁体130に形成され、下流側の空気が上流側へ移動することを許容する空気弁140と、装置本体110に組み込まれて、弁体130を装置本体110の内部に閉じ込める蓋体150と、弁体130を閉鎖位置に付勢する付勢手段121,133と、弁体130を強制的に開放させる強制離間機構とを備える。付勢手段は、装置本体110側に組み込まれた本体側作用部121、及び、弁体130側に組み込まれた弁体側作用部133からなる。また、強制離間機構は、装置本体110の外部から弁体130又は付勢手段121,133に作用する操作部材123及び強制離間磁石122を備える。図7の分解図に示すように、装置本体110,弁体130及び蓋体150は別体からなり、これらが組み合わさることにより、弁装置100が構成される。以下、各構成要素について詳細に説明する。
まず、図8乃至図11を参照して、装置本体110について説明する。図8は、装置本体110の上方及び下方から見た斜視図である。図9(a)~(d)は、該装置本体110の正面図、側面図、平面図及び底面図である。図10は、該装置本体110のD-D縦断面図である。図11は、該装置本体110のE-E横断面図である。
装置本体110は、その両端が開放されたとともに、(上流から下流に延びる)軸方向に沿って延びる中空筒形状の周壁111を有する。周壁111の一端(又は上端)には、上流側開口端112が形成され、他端(又は下端)には、下流側開口端113が形成されている。そして、周壁111内部の上流側開口端112と下流側開口端113との間に流体の流路が定められる。また、周壁111内部には、弁体120の傾動を許容する空間である隙間が設けられている。なお、本実施形態では、装置本体110は硬質の合成樹脂から形成されたが、その材質はこれに限定されない。
図10に示すように、周壁111内部の流路の途中には、弁座114が設けられている。この装置本体110は、弁座114(すなわち、弁体130)を境に上流部位、及び、下流部位に区分けされる。弁座114は、中央に通口を有し、下流側を向く着座部としてゴム製の環状パッキン114aを有する。すなわち、弁座114は、流路の周囲に配置された環状の着座部を有する。図4に示すように、この弁座114の環状パッキン114a(着座部)に弁体130が着座することにより、通口(流路)が閉鎖される。また、周壁111内部の下流部位の弁座111周辺には、弁体130の傾動を許容する空間が設けられている。換言すると、弁体130の外周縁と周壁111内周面との間には、弁体130の傾動に十分な隙間が設けられている。
また、周壁111の外面には、軸方向と直交する方向に延びる筒壁116が設けられている。筒壁116の先端には、流路を外部に露出させるように円形の開口部117が形成されている。開口部117は、弁体130の通過を許容する形状寸法を有し、メンテナンスのために周壁111内部や弁体130を掃除等するために設けられている。筒壁116内面には、蓋体150をロックするためのL字状のロック溝116aが形成されている。すなわち、開口部117は、筒壁116の開口端にロック式に装着された蓋体150によって閉塞される。
また、図10及び図11に示すように、装置本体110には、付勢手段の本体側作用部として、複数(本実施形態では3つ)の第1磁性体121が配置されている。複数の第1磁性体121は、流路の周囲に等間隔で点在している。本実施形態では、各第1磁性体121は、比較的強力な磁力を有するネオジム磁石等の永久磁石の小塊からなる。各第1磁性体121は、その垂直下方向(下流側)に向けて磁力を作用する。後述するように、弁体130の複数の第1磁性体121に(上下に)対向する位置に、弁体側作用部として複数の第2磁性体133が設置され、第1磁性体121及び第2磁性体133間の磁気的引力によって、弁体120を弁座114に着座させるように付勢する。
図11に示すように、複数の第1磁性体121は、2つの固定式磁性体121b及び1つの可動式磁性体121aからなる。2つの固定式磁性体121bは、弁座114の着座部の反対側の周壁111外面に接着剤等によって固着されている。他方、1つの可動式磁性体121aは、図8及び図11に示すように、扇状の小片である操作部材123に保持されている。また、操作部材123には、窪み状の凹部123aが形成されている(図11参照)。さらに、操作部材123には、扇形状の外周面には、下面側に折れ曲がった爪片123bが形成されている(図8参照)。操作部材123の形状に対応するように、弁座114の着座部の反対側の周壁111外面上であって、2つの固定式磁性体121bから等距離で離間した場所には、操作部材123をスライド可能に保持する保持空間が形成されている。保持空間は、周壁111外面から径方向に突出する一対の規制壁124の間に定められている。また、一対の規制壁124の間の周壁111外面には、凹部123aに係合する突起125が形成されている(図11参照)。さらに、一対の規制壁124の間の周壁111外面の下面側には、爪片123bを周方向にスライド可能に保持するレール片126が形成されている(図9(d)参照)。レール片126は、爪片123bに径方向に係合し、操作部材123が保持空間から径方向に離脱しないように保持する。可動式磁性体121aは、この保持空間内に周方向にスライド可能に保持されるとともに、この保持空間から径方向に離脱可能に保持される。この保持空間において、操作部材123の円弧状の内面は、周壁111の円弧状の外面に摺接可能である。なお、保持空間の中央部分が、可動式磁性体121aが配置されたときに第2磁性体133と協働して弁体130を弁座114に付勢する付勢位置であり、保持空間の側方部分が、可動式磁性体121aが付勢位置から離れて付勢力を減衰させる減衰位置である。可動式磁性体121aは、操作部材123のスライド移動に従って、保持空間内で付勢位置と減衰位置との間で変位可能である。
また、操作部材123は、可動式磁性体121aに隣接して強制離間磁石122を保持している。強制離間磁石(強制離間用磁性体)122は、比較的強力な磁力を有するネオジム磁石等の永久磁石の小塊からなる。強制離間磁石122は、その垂直下方向(下流側)に向けて磁力を作用するが、第1磁性体121とは下方の磁極が相違するように配置される。例えば、各第1磁性体121が下向きにN極を有する場合、強制離間磁石122は下向きにS極を有する。後述するように、この操作部材123及び強制離間磁石122が、開口部117から弁体130を外部に露出させることなく、装置本体110の外部から弁体130又は付勢手段121,133に作用し、弁体130の少なくとも一部を弁座114から強制的に離間させる強制離間機構として機能し得る。
次に、図12乃至図14を参照して、弁体130について説明する。図12(a)~(c)は、弁体130の上方及び下方から見た斜視図及び分解斜視図である。図13(a)~(d)は、該弁体130の正面図、側面図、平面図及び底面図である。図14は、該弁体130のF-F縦断面図である。
弁体130は、周壁111内部の流路上に配置され、開口部117を通過可能な形状寸法を有し、弁座114に着座して流路を閉鎖する閉鎖位置と、弁座114から離隔して流路を開放する開放位置とに変位するように構成されている。弁体130は、円盤形状を有する。弁体130は、弁座114中央の通口を閉鎖する閉鎖部131と、通口の外周側で弁座114の着座部(環状パッキン114a下面)に上面で当接する当接部132とを備える。閉鎖部131は、弁体130の中央領域に定められた平面形状を有する。当接部132は、閉鎖部131の外周領域に連設され、弁座114に密接可能な平面形状を有する。なお、本実施形態では、弁体130は硬質の合成樹脂から形成されたが、その材質はこれに限定されない。
弁体130の閉鎖部131の略中央には、図12(c)及び図14に示すように、貫通孔136が形成されている。貫通孔136の周縁から中心に向けて複数の梁体が延び出ており、弁体130は、その中心で筒状の支持部137を一体的に保持している。なお、貫通孔136(梁部によって区分けされた部分)は、虫が通れない大きさであるが空気の流通は可能な大きさであると、より好ましい。そして、空気弁140が、弁体130の変位に追従するように弁体130に保持されている。空気弁140は、弁体130の支持部137に支持される被支持部141と、該被支持部141に連結され、原形状で貫通孔136を被覆する可撓性の膜部142とを備える。つまり、膜部142が貫通孔136周縁に上流側から着座することにより、空気弁140が貫通孔136を閉鎖する。図14の仮想線に示すように、貫通孔136を介して弁体130の下流から圧を受けると、膜部142が上方に捲り上がり、空気の通り道が形成され得る。すなわち、空気弁140は、弁体130に形成された貫通孔136の周縁に上流側から着座して貫通孔136を閉鎖し、且つ、貫通孔136周縁から上流側に変位して貫通孔136を開放するように構成されている。なお、本実施形態では、空気弁140は、軟質の合成樹脂によって形成されたが、その材質はこれに限定されない。
また、弁体130の外周領域の下面には、付勢手段の弁体側作用部として複数(本実施形態では3つ)の第2磁性体133が配置されている。複数の第2磁性体133は、弁体130の周方向に点在している。本実施形態では、各第2磁性体133は、比較的強力な磁力を有するネオジム磁石等の永久磁石の小塊からなる。各第2磁性体133は、その垂直上方向(上流側)に向けて磁力を作用する。複数の第2磁性体133は、複数の第1磁性体121と同じ間隔で配置されている。つまり、各第2磁性体133は、装置本体110内部で各第1磁性体121に対向する位置に配置可能である。各第2磁性体133は、第1磁性体121の下方の磁極と相違する上方の磁極を有する。例えば、各第1磁性体121が下向きにN極を有する場合、第2磁性体133は上向きにS極を有する。第1磁性体121及び第2磁性体133は、互いに対向する対応位置に配置されたときに、互いに磁気的に吸着するように作用する。すなわち、本体側作用部としての第1磁性体121と、弁体側作用部としての第2磁性体133が、弁体130を弁座114に付勢する付勢手段として協働的に機能する。本実施形態では、付勢手段121,133は、弁座114及び弁体130全体を少なくとも水没させる量の滞留水W(例えば図22参照)を弁体130上に閉鎖位置で維持できる付勢力を有するように定められた。
複数の第2磁性体133は、外周領域の下面から延びる筒状の保持部134に嵌着されて保持されている。複数の保持部134のうちの少なくとも1つ(本実施形態では1つ)の外面は、多角形状である。つまり、弁体130には、後述する蓋体150の係合凹部156(操作手段)に対応する係合凸部135が設けられている。本実施形態では、1つの保持部134が係合凸部135を兼ねている。
次いで、図15乃至図17を参照して、蓋体150について説明する。図15は、蓋体150の上方及び下方から見た斜視図である。図16(a)~(d)は、該蓋体150の正面図、側面図、平面図及び底面図である。図17は、該蓋体150のG-G縦断面図である。
蓋体150は、装置本体110の筒壁116に装着され、開口部117を着脱自在に閉塞するように構成されている。蓋体150は、開口部117を閉塞する閉塞蓋部151、及び、閉塞蓋部151の内面から延設する内挿部152を備える。なお、本実施形態では、蓋体150は硬質の合成樹脂から形成されたが、その材質はこれに限定されない。
閉塞蓋部151は、装置本体110に対して外側を向く外面及び内側を向く内面を有する円形の短筒状であり、筒壁116に内挿されて開口部117を閉塞するように構成されている。つまり、閉塞蓋部151は、筒壁116の内面に対向するように延在する外側面を有する。また、閉塞蓋部151の外側面には、ロック片151aが突出形成されている。ロック片151aは、閉塞蓋部151及び筒壁116の相対的な回転操作に従って、筒壁116のロック溝116aに係合して、蓋体150を筒壁116に着脱式にロックするように機能する。また、閉塞蓋部151の内面には、凹部151bが形成されている。さらに、閉塞蓋部151の外面には、閉塞蓋部151を回転操作するための把持片151cが設けられている。さらに、閉塞蓋部151の短筒状の外側面には、蓋体150を筒壁116に水密に装着するためのゴム環状のパッキン158が設けられている。
内挿部152は、閉塞蓋部151で開口部117を閉塞した状態で周壁111内部に配置されるように構成されている。また、内挿部152は、周壁111内部に配置された状態で装置本体110と協働して流路の一部を形成するように構成されている。内挿部152は、開口部117を通過可能な形状寸法を有する。すなわち、内挿部152は、所定の移動経路に沿って周壁111の内外に開口部117を介して移動可能である。この移動経路は、開口部117又は閉塞蓋部151の中心軸に沿った直線的な経路である。内挿部152の両側壁外面及び周壁111の両側壁内面が平面状であり、これらが摺接することにより、蓋体150の装置本体110に対する移動経路に沿った相対移動がガイドされる。
また、内挿部152は、弁体130の下方に配置され、弁体130を下方から受ける弁体受け部153を備える。弁体受け部153は、内側に排水が通過する通口を形成する。この弁体受け部153の通口は、弁体130の外径よりも小さいことから、弁体受け部153は、弁体130の落下を規制するように機能する。さらに、内挿部152は、閉塞蓋部151に対して回転式に連結されている。より具体的には、図17に示すように、内挿部152の閉塞蓋部151側の外面には、連結軸154が突設されている。そして、閉塞蓋部151の内面の凹部151bに、連結軸154が内挿されて回転可能に保持されている。
また、内挿部152には、弁体130を周壁111の内外に移動操作するための操作手段が設けられている。この操作手段は、内挿部152を周壁111内部から外部に抜き出す際、弁体130を内挿部152に一体的に保持するように構成されている。本実施形態では、操作手段は、内挿部152の通口周縁に配置された第3磁性体155を備える。本実施形態では、第3磁性体155は、比較的強力な磁力を有するネオジム磁石等の永久磁石の小塊からなる。第3磁性体155は、通口周縁に埋設され、壁を介して上方に磁力を作用するように構成されている。第3磁性体155は、第2磁性体133の下方の磁極と相違する上方の磁極を有する。例えば、第2磁性体133が下向きにN極を有する場合、第3磁性体155は上向きにS極を有する。本実施形態では、第2磁性体133と第3磁性体155との間に生じる磁気的引力は、第1磁性体121と第2磁性体133との間に生じる磁気的引力よりも大きい。それ故、第2磁性体133及び第3磁性体155が磁着した場合、第2磁性体133を第1磁性体121から引き剥がすことが可能である。また、第3磁性体155は、閉塞蓋部151の反対側の端部に配置され、(移動経路に直交する)幅方向の略中央に位置する。さらに、第3磁性体155の上方には、操作手段の一部をなす、弁体130の多角筒状の係合凸部135を嵌合する係合凹部156が設けられている。この係合凹部156は、閉塞蓋部151側に部分的に開放された多角形状の枠によって形成されている。後述するように、弁体130の係合凸部135が係合凹部156に係合されるとともに、第2磁性体133及び第3磁性体155が磁着することにより、弁体130が内挿部152に一体的に保持される。
以上の各構成要素の説明を踏まえて、本実施形態の弁装置100について説明する。なお、本実施形態の弁装置100では、磁性体121,122,133,155、環状パッキン114a及びパッキン158以外の全ての部材が透明又は半透明である。すなわち、本実施形態の弁装置100は、外部から周壁111内部の状況を視認可能に構成されている。
図4に示すように、弁装置100において、上流側開口端112、弁座114中央の通口、弁体受け部153中央の通口、及び、下流側開口端113が同心円上に配置され、上流から下流へと延びる流路が形成されている。そして、装置本体110内部の流路が弁体130によって閉鎖されている。弁体130は、周壁111内部に保持され、弁座114の着座部(環状パッキン114a下面)に付勢手段によって磁気的に付勢されている。すなわち、本実施形態の弁装置100の構成では、弁体130を支持する支持軸などが流路内に存在しないので、ゴミなどが引っ掛からず、さらに、付勢手段が流れの妨げになることがない。さらに、付勢力が発生している閉鎖状態において、弁体130の縁の全体が周壁111内面と当接しないように配置されている。こうすることで、摺接による摩擦が生じず、軽い力で弁体130を開放動作させることができ、異物の挟み込みの虞をも軽減させることができる。
また、図5及び図6に示すように、第1磁性体121及び第2磁性体133の全てが周方向の同じ位置に配置され、互いに対向して磁気的引力を作用している。このとき、第1磁性体121の可動式磁性体121aは、保持空間の中央部分である付勢位置に選択的に配置されている。そして、操作部材123の凹部123aが突起125に係合し、操作部材123が不意に付勢位置から減衰位置にスライド移動することが規制されている。また、弁体130は周壁111内部で傾動することが許容されている。これにより、弁体130の取り出し、組み込みの際、弁体130を傾けて操作できるので、操作が容易となる。
また、弁体130の下方には、内挿部152の弁体受け部153が配置されている。弁体受け部153は、弁体130が最大限に開放したときに弁体130の底面(保持部134底面)を支持するように構成されている。つまり、弁体受け部153は、弁体130の最下位置を定める。そして、弁体受け部153は、最下位置の弁体130が付勢手段によって閉鎖位置に復帰可能である距離で弁座114から離間している。すなわち、弁体130は、弁座114下面と弁体受け部153上面との間で移動可能である。そして、弁体130が下降して開放位置に移動したとき、周壁111内周面と弁体130との間に環状の隙間が生じ、当該隙間によって流路が開放される。
また、弁装置100では、蓋体150が装置本体110に装着された状態で、閉塞蓋部151によって開口部117が閉塞されている。このときロック溝116aにロック片151aが係合し、閉塞蓋部151が装置本体110の筒壁116にロックされている。そして、パッキン158が、蓋体150の閉塞蓋部151の短筒状の外側面と、筒壁116の内面との間で押し潰されて、開口部117において水密性が保たれている。閉塞蓋部151の把持片151cを掴んで、閉塞蓋部151を筒壁116及び内挿部152に対して回転操作することにより、閉塞蓋部151と筒壁116とのロックを解除操作することが可能である。なお、ロック状態又はロック解除状態を問わず、蓋体150が筒壁116に外挿されている間、水密が保たれている。換言すると、水密が保たれている間、ロック解除されたとしても、蓋体150が開口部117を閉塞しているといえる。
次に、図18及び図19を参照して、操作手段により、弁体130を周壁111の内外に移動操作する際の弁装置100の動作について説明する。まず、蓋体150が装置本体110から離脱して、弁体130が周壁111外部に取り出された、各構成要素がばらばらの状態から、弁装置100を組み立てる工程について説明する。
図18に示すように、弁体130の係合凸部135を蓋体150の係合凹部156に嵌め込み、第2磁性体133及び第3磁性体155の磁気的引力によって、弁体130及び蓋体150を結合する。このとき、弁体130の中心が蓋体150の中心軸上に位置し、残りの2つの保持部134(第2磁性体133)が閉塞蓋部151から遠い側に位置するように、弁体120を蓋体150に対して所定の姿勢で整列させる。係合凸部135及び係合凹部156の係合で互いの回動が規制されることから、当該姿勢が維持され易い。すなわち、操作手段により、弁体130が蓋体150に一体的に保持される。そして、弁体130が蓋体150に保持された状態で、開口部117を介して周壁111内部に弁体130及び内挿部152を直線的に進入させる。この直進方向が、蓋体150の移動経路に対応する。
図19に示すように、弁体130を移動経路に沿って周壁111内部の奥まで進入させると、弁体130の縁が周壁111内面に当接して係止される。あるいは、弁体130の縁が周壁111内面に当接する前に、第1磁性体121と第2磁性体133が引き合い、弁体130を閉鎖位置にとどまるように操作してもよい。周壁111内部には、弁体130の傾動を許容する空間が担保されていることから、弁体130を傾動又は遊動させつつ、奥まで進入させることができる。そして、弁体130の各第2磁性体133が各第1磁性体121の直下の対応位置に配置される。このとき、第1磁性体121及び第2磁性体133間には、両者が磁着する方向の磁気的引力が作用し、弁体130を弁座114に付勢する付勢力が発生する。図19に示す矢印に沿って、内挿部152をさらに押し込むと、内挿部152が移動経路に沿って直進する。弁体130は周壁111内面に係止されるので、内挿部152のみが直進し、係合凹部156の切り欠きから係合凸部135が抜け出るとともに第2磁性体133から第3磁性体155が分離する。弁体130は、第1磁性体121及び第2磁性体133間の磁力によって、弁座114に着座する位置に浮遊して維持される。そして、内挿部152を奥まで押し込むと、閉塞蓋部151が開口部117を閉塞する。このとき、第3磁性体155の直上には、第2磁性体は存在しない。さらに、閉塞蓋部151を回転させると、閉塞蓋部151が筒壁116にロック式に固定される。その結果、本実施形態の弁装置100が組み立てられる。
他方、上記した組立行程と逆の行程を経ることにより、弁体130及び蓋体150を装置本体110から取り外すことができる。特には、内挿部152を所定の移動経路に沿って外部に直進的に後退させると、移動経路の途中で第3磁性体155が第2磁性体133の1つに磁着する。第2磁性体133と第3磁性体155との間に生じる磁気的引力は、第1磁性体121と第2磁性体133との間に生じる磁気的引力よりも大きいことから、第3磁性体155が第2磁性体133の直下を通過するときに、第2磁性体133が第1磁性体121から第3磁性体155に受け渡される。すなわち、蓋体150を移動経路に沿って直線的に開口部117から引き抜くと、弁体130が蓋体150に一体的に保持されて、蓋体150とともに弁体130を同時に開口部117から外部に引き出すことが可能である。そして、弁体130を蓋体150から引き離すことによって、個々の部品に分解され得る。
また、本実施形態の弁装置100は、強制離間機構によって、弁体130を強制的に弁座114の着座部から離間させることが可能である。図20を参照して、強制離間機構の操作について説明する。図24で後述するように、強制離間操作は、主に、弁体130上の滞留水Wを水抜きするときに行われる。
図20(a)に示すように、扇状の操作部材123を保持空間内でスライド操作して、第1磁性体121の可動式磁性体121aを、対応する第2磁性体133に対向する中央の付勢位置から、該第2磁性体133から離間した側方の減衰位置へと移動させる。操作部材123は、周壁111外部から操作可能である。可動式磁性体121aが、対応する第2磁性体133から離間することにより、これらの間の磁気引力が減衰する。つまり、本体側作用部及び弁体側作用部の間の磁気的付勢力が部分的に弱化し、全体的な付勢力も同時に減衰する。また、操作部材123の移動操作に伴って、可動式磁性体121aが移動して空いたスペース(つまり、付勢位置)に、強制離間磁石122が移動する。強制離間磁石122は、可動式磁性体121aと反対の下向きの磁極を有するので、第2磁性体133に対して反発力(又は斥力)を作用する。図20(b)に示すように、この磁気的斥力の作用によって、第2磁性体133の1つが下方に押し下げられる。その結果、弁体130が傾動して弁座114の着座部から部分的に離間し、弁体130が部分開放位置に磁力で維持され、流路の一部が開放される。このとき、弁体130の開口部117の開口方向の奥側(つまり、開口部117の遠位側の端部)が、弁座114から離間するように弁体130が傾斜する。そして、可動式磁性体121aを付勢位置に戻すことにより、弁体130が再び弁座114に着座する。ここでは、説明の便宜上、弁体130に封水による力が加わっていない状態で、弁体130が作動する旨を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、弁体130上に滞留水がない状態では弁体130が作動せず、所定量の滞留水Wが弁体130上にある状態において、強制離間機構によって、弁体130が作動してもよい。あるいは、強制離間磁石122は、可動式磁性体121aよりも十分に強い磁石を用いて、その上流側が負圧になっていても、その圧力に抗して弁体130を離間させるように構成されてもよい。つまり、本発明の強制離間機構は、上流側の負圧の解消の用途に設計されてもよい。なお、相互に作用する磁力の設定は、磁石そのものの磁力の差異のほか、相対距離の違いによって設定してもよい。すなわち、弁体130作動の条件は、付勢力や反発力の強度によって任意に制御され得る。
続いて、図21乃至図25を参照して、本実施形態の弁装置100を組み込んだ配管構造10について説明する。
図21は、本実施形態の配管構造10を模式的に示した全体図である。配管構造10は、空調調和設備等の機器から排出されるドレン排水を排水部に処理するために機器の下流に配設されている。図21に示すように、配管構造10は、機器からのドレン水を溜めるドレンパン11と、ドレンパン11から排水部18までのドレン排水経路を形成し、ドレンパン11よりも上方に向けて配管された後、水平部位または湾曲部位を経て下方に向かって配管された配管部12と、ドレンパン11に溜まったドレン排水を排水部18まで圧送するためのポンプ13と、排水経路の途中に設置された弁装置100とを備える。配管部12の下流には、縦配管された排水管14が配置されている。弁装置100は、配管部12の鉛直方向下方に向かって延びる排水管14の一部に設置されている。なお、本発明の弁装置100は、配管部の途中であれば、いずれの場所に配設されてもよいことはいうまでもない。
図22は、定常状態の配管構造10の弁装置100付近の部分拡大断面図である。図22に示すように、弁装置100の上流側開口端112が、排水管14の上流側配管15に水密に接続され、下流側開口端113が排水管14の下流側配管16に水密に接続されている。図22に示す定常状態では、ドレン水が流れておらず、また、配管内が過度の正圧又は負圧にもなっていない。この定常状態の配管構造10において、弁体130が弁座114に着座して流路を閉塞している。そして、弁体130及び弁座114が、弁装置100内部に滞留した排水によって完全に水没している。弁座114と弁体130との境界が完全に水没することによって、弁座114及び弁体130の隙間が水封される。つまり、滞留水Wによって弁体130及び弁座114が水封されていることにより、悪臭や害虫が弁体130を越えて上流側に移動することが効果的に防止されている。このとき、所定量の滞留水Wがその自重により弁体130に鉛直下方の力(重力)を作用する。しかし、付勢手段を構成する第1磁性体121及び第2磁性体133の磁気的引力による付勢力が、所定量の滞留水Wの自重によって作用される力を上回る場合、弁体130は上方に所定量の排水を滞留させることができる。
図23は、弁体130が流路を開放した状態の配管構造10の部分拡大断面図である。ドレンパン11からポンプ13によってドレン排水が圧送させると、上流から弁装置100にドレン排水が流入する。弁体130上の滞留水Wが所定量を超えたり、ポンプ13の圧力がかかると、滞留水Wの重力やポンプ13の圧力による作用力が付勢手段による磁力による作用力を超えて、付勢力と重力による作用力との間の均衡が破れて、弁体130が下方に押し下げられる。そして、図23に示すように、弁体130が弁座114から離間した開放位置に移動する。このとき、全ての第2磁性体133が第1磁性体121から離れて、弁体130全体が弁座114から略均等に離間している。その結果、弁体130と周壁111内周面との間の環状の隙間からドレン排水が下流に流出する。ドレン排水が下流に落ちると、下流側配管15内部の圧力が一時的に高まり、上昇気流が発生する。この上昇気流の発生を受けて、弁体130の空気弁140が上流側に開弁し、空気が貫通孔136を通って上流に移動する。すなわち、弁体130を介して、ドレン排水と空気の交換が行われるため、ドレン排水が効率的に下流に流れ落ちる。最終的に、弁装置100から下流に流れるドレン排水は、排水部18に排水されて処理される。なお、ドレン排水の圧送に限らず、下流側配管16の負圧を解消するために、弁体130が開放されてもよい。
図24は、滞留水Wの水抜きのために弁体130が流路を部分的に開放した状態の配管構造10の部分拡大断面図である。主に、メンテナンスを目的として、蓋体150を装置本体110から外し、開口部117を開放する際、図22の定常状態の配管構造10における弁体130上の滞留水Wを水抜きするために、弁体130が部分開放位置に操作される。より具体的には、外部から操作部材123をスライド操作することにより、強制離間磁石122が第2磁性体133を磁気的斥力によって強制離間させる(図20参照)。その結果、図24に示すように、弁体130が傾動し、流路の一部が開放される。この開放した部位から滞留水Wが流れ落ちて、弁装置100内部の水抜き工程が行われる。そして、ドレン排水が下流に落ちると、下流側配管15内部の圧力が一時的に高まり、上昇気流が発生する。この上昇気流の発生を受けて、弁体130が傾動するのと同時に、弁体130の空気弁140が上流側に開弁し、空気が貫通孔136を通って上流に移動する。すなわち、弁体130を介して、ドレン排水と空気の交換が行われるため、ドレン排水が効率的に下流に流れ落ちる。すなわち、本実施形態の配管構造10では、上流側配管15及び下流側配管16が弁装置100に固定された状態で、弁装置100の内部を外部に露出させることなく、水抜き工程が行われ得る。また、閉塞蓋部151は、開口部117を水密に閉塞しているので、水抜きの際、水が外部に飛び散ることはない。さらには、弁体130の開口部117の開口方向の奥側が、弁座114から離間するように弁体130が傾斜することにより、仮に、蓋体150を外した状態で、強制離間操作を行ったとしても、滞留水Wが流れ落ちる位置が開口部117から離れているので、滞留水Wが開口部117から飛び散ることが抑えられる。なお、上記説明では、強制離間磁石122と第2磁性体133との間の反発力を利用したが、これは必須ではない。すなわち、可動式磁性体121aを除去するように操作部材123を引き抜いて、付勢力を減衰することによって、弁体130を強制的に開放させてもよい。例えば、所定量の滞留水Wの重力による作用力と、磁力による付勢力とが拮抗している場合、付勢力を減衰するだけで、均衡が崩れて、弁体130を部分的に開放することができる。
図25は、弁体130を装置本体110から取り外す状態を示した部分拡大断面図である。弁体130及び蓋体150を装置本体110から取り外す工程は、メンテナンスを目的として、図24で示した水抜きの後に行われ得る。すなわち、滞留水Wが水抜きされた後、閉塞蓋部151を筒壁116から取り外し、蓋体150を装置本体110から引き抜くことにより、上流側配管15及び下流側配管16が装置本体110に接続されたまま、蓋体150とともに弁体130が外部に引き出される。
すなわち、本実施形態の配管構造10は、図24及び図25に示すように、配管部12から弁装置100を取り外すことなく、水抜き工程及び取出又は組込工程を実施可能であり、優れたメンテナンス性を有している。
以下、本発明に係る一実施形態の弁装置100における作用効果について説明する。
本実施形態の弁装置100によれば、弁体130に形成され、下流側の空気が上流側へ移動することを許容する空気弁140を備える。排水が弁体130と弁座114との間の隙間から流れ落ちるときに、下流側の配管内部の圧力増加とともに空気弁140が開放され、空気弁140を介して下流側の空気が上流側へと移動し、排水の流出とともに起こる配管内部の圧力の上昇が抑えられる。また、弁体130の開放により形成される排水の流路とは別の位置に空気を流入可能としたため、弁体130の開放により形成される排水の流路において空気の流入が生じにくく、効率的に排水可能である。すなわち、本実施形態の弁装置100において、排水が弁体130の下流に流れ落ちるときに、空気弁140を介して空気が上流に入れ替わるようにして移動することから、排水が弁装置100から下流にスムーズに流れ落ちることが可能である。特に、上述した水抜き工程では、通常の弁体130の開弁動作と比べて、弁体130の傾動によって生じる隙間が小さいので、滞留水Wが流れにくいことが分かっている。しかしながら、本実施形態の弁装置100では、この空気弁140の導入により、滞留水Wの流れが劇的に改善する。
また、本実施形態の弁装置100によれば、本体側作用部121と弁体側作用部133の間に発生する磁気的引力によって、弁体130が弁座114に付勢されることを特徴とする。つまり、弁体130は、装置本体110内で磁力によって浮遊して保持されるので、その機械的な構造を簡易のものとすることができる。そして、メンテナンスの際、開口部117から弁体130を取り出した後、分解や組立てなどの追加の作業を発生させることなく、弁体130をそのまま掃除や交換することができる。特に、本実施形態では、弁体130が蓋体150に磁力によって一体的に保持されるので、周壁111内部からの弁体130の取り出し及び周壁111内部への弁体130の組み込みが容易であり、尚且つ、弁体130と蓋体150との分離も容易である。したがって、本実施形態の弁装置100は、より簡素な構造を有し、そのメンテナンス性をより向上させたものである。
さらに、本実施形態の弁装置100は、強制離間機構122,123が、装置本体110の外部から弁体130又は付勢手段121,133に作用し、弁体の少なくとも一部を弁座から強制的に離間させることを特徴とする。この付勢手段への作用とは、第1磁性体121と第2磁性体133間の磁気的引力の減衰、及び、第2磁性体133と第3磁性体155間の磁気的斥力の発生のいずれか一方又は両方を意味する。つまり、強制離間機構122,123を用いることにより、開口部117から弁体130を外部に露出させることなく、弁体130と弁座114との間に隙間を形成し、弁体130上の滞留水Wを弁体130の下流に流出させることができる。すなわち、本実施形態の弁装置100によれば、弁体130のメンテナンスの際、予め強制離間機構122,123で滞留水Wの水抜きを行うことで、開口部117から弁体130を装置本体110の外部に取り出すときに装置本体110内部の滞留水Wが外部にこぼれることが効果的に防止される。
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の別実施形態及び変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態及び変形例を説明する。
(1)本実施形態では、空気弁は可撓変形可能な膜体から形成されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、空気弁は、磁気的に作動したり、バネによって作動するように構成されてもよい。
(2)上記実施形態の弁装置では、付勢手段の第1磁性体、第2磁性体は、互いに磁着する向きに配置された磁石からなるが、本発明はこれに限定されない。例えば、いずれか一方の鉄やニッケルなどの強磁性金属としても、付勢手段は互いに引き合う方向に付勢されるので、同様に本発明の作用効果を発揮することができる。
(3)上記実施形態の弁装置では、付勢手段が第1磁性体及び第2磁性体の間に発生する磁力によるが、本発明はこれに限定されない。例えば、付勢手段は、同様に強制離間機構によって弁体を強制離間可能であれば、バネであってもよい。
(4)上記実施形態の弁装置では、強制離間機構は、弁体の一部のみを開放するように作動するが、本発明は上記実施形態に限定されない。すなわち、本発明の強制離間機構は、全ての第1磁性体及び第2磁性体に対して、付勢力を減衰するように定めることによって、弁体全体を弁座から強制的に離間させるように作動してもよい。また、本発明の強制離間機構は、物理的な力で弁体に作用して弁体を押し下げるように動作してもよい。
(5)上記実施形態の弁装置から、強制離間機構、操作手段(第3磁性体)、蓋体などの一部の構成要素が省略されてもよい。すなわち、本発明の弁装置は、少なくとも本発明の課題を解決することができればよく、その構成要素を簡略化してもよい。
(6)本発明の弁装置は、封水式でなくてもよく、例えば、本発明の弁装置は、排水管の負圧や正圧を解消する用途(乾式)で設置されてもよい。さらには、本発明の強制離間機構は、開口部がない弁装置に組み込まれてもよく、任意の用途の弁装置に適用可能であることは云うまでもない。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。