ところで、排水系を洗浄するには、多くの場合、高圧水を排水系に流し込んで高圧洗浄を行っている。特許文献1のように、通気弁を配管材に取り付けた構造では、弁体が自在に開閉動作可能であり、配管材内の負圧が迅速に解消される一方で、高圧水による衝撃や圧力変動によって弁体が開放動作し易く、高圧洗浄の際、高圧水が通気弁を介して噴出してしまう虞があった。そこで、本願の発明者らは、(通気弁に限らない)弁装置の弁体の開放動作を効果的に制動することをその課題とした。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、弁装置に対して容易に導入可能であり、弁装置の弁体を閉鎖位置に選択的に維持することを可能とする弁体制御装置、貫通口閉鎖装置、配管構造、及び、該弁体制御装置を用いた排水系の洗浄方法を提供することにある。
請求項1に記載の弁体制御装置は、弁装置本体を貫通する貫通口の周縁内面に当接して前記貫通口を開閉自在に閉鎖する弁体を備える弁装置に対して、前記弁体を閉鎖位置に維持する弁体制御装置であって、
前記弁体の開放動作方向とは反対側から前記貫通口を覆うとともに、前記貫通口の周縁外面に対して吸着して前記弁体との間に閉鎖空間を形成するように構成された吸盤部材を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の弁体制御装置は、請求項1に記載の弁体制御装置において、前記吸盤部材の前記貫通口の周縁外面に接する外周部位を前記貫通口の周縁外面に向けて押圧する押圧部材をさらに備えることを特徴とする。
請求項3に記載の弁体制御装置は、請求項2に記載の弁体制御装置において、前記吸盤部材の中心から立設された雄ねじ状の軸部材をさらに備え、前記押圧部材には、前記軸部材が螺合する雌ねじ部が設けられ、前記押圧部材が前記軸部材に対して螺進退することにより、前記押圧部材及び前記吸盤部材が前記軸部材に沿って互いに相対移動可能であり、前記押圧部材が前記軸部材に対して螺進した状態で前記押圧部材が前記吸盤部材の外周部位を押圧することを特徴とする。
請求項4に記載の弁体制御装置は、請求項1に記載の弁体制御装置において、前記吸盤部材が前記貫通口の周縁外面に対して吸着した状態で、前記吸盤部材の外部からの操作によって前記弁体を開放動作方向に変位させるように作用する解除部材をさらに備えることを特徴とする。
請求項5に記載の弁体制御装置は、請求項4に記載の弁体制御装置において、前記弁装置は、前記弁体を閉鎖位置へと磁力で付勢するように、前記弁装置本体に配置された本体側磁石、及び、前記弁体に配置された弁体側磁石を有し、前記解除部材は、前記吸盤部材の外面側で前記弁体側磁石に対して近接又は離隔するように配置された解除磁石を備え、前記解除磁石が前記弁体側磁石に近接したときに、前記弁体側磁石との間に斥力が発生し、斥力によって前記弁体が開放動作方向に変位するように作用する。
請求項6に記載の弁体制御装置は、請求項4に記載の弁体制御装置において、前記吸盤部材の前記貫通口の周縁外面に接する外周部位を前記貫通口の周縁外面に押圧する押圧部材と、
前記吸盤部材の中心から立設された雄ねじ状の軸部材と、をさらに備え、
前記押圧部材には、前記軸部材が螺合する雌ねじ部が設けられ、前記押圧部材が前記軸部材に対して螺進退することにより、前記押圧部材及び前記吸盤部材が前記軸部材に沿って互いに相対移動可能であり、前記押圧部材が前記軸部材に対して螺進した状態で前記押圧部材が前記吸盤部材の外周部位を押圧することを特徴とする。
請求項7に記載の弁体制御装置は、請求項6に記載の弁体制御装置において、前記軸部材は、前記解除部材を軸方向に沿って移動可能に収容する中空体であり、前記解除部材が前記軸部材の内部で前記吸盤部材側の端部の作用位置に変位することによって前記弁体に作用することを特徴とする。
請求項8に記載の弁体制御装置は、請求項7に記載の弁体制御装置において、前記弁装置は、前記弁体を閉鎖位置へと磁力で付勢するように、前記弁装置本体に配置された本体側磁石、及び、前記弁体に配置された弁体側磁石を有し、
前記解除部材は、前記吸盤部材の外面側で前記弁体側磁石に対して近接又は離隔するように配置された解除磁石を備え、前記解除磁石が前記弁体側磁石に近接したときに、前記弁体側磁石との間に斥力が発生し、斥力によって前記弁体が開放動作方向に変位するように作用し、
前記解除磁石が前記軸部材の内部に軸方向に沿って移動可能に収容され、前記解除磁石が作用位置に移動して前記弁体を開放動作させることを特徴とする。
請求項9に記載の弁体制御装置は、請求項8に記載の弁体制御装置において、前記押圧部材には、前記解除磁石を前記作用位置から離隔した待機位置に磁力で牽引して保持する保持用磁性体が配置されていることを特徴とする。
請求項10に記載の弁体制御装置は、請求項9に記載の弁体制御装置において、前記押圧部材が前記吸盤部材の外周部位を押圧するときに前記解除磁石は前記待機位置に保持され、前記押圧部材が所定位置を越えて螺退すると、前記解除磁石が自重落下して前記作用位置に移動することを特徴とする。
請求項11に記載の弁体制御装置は、請求項1から10のいずれか一項に記載の弁体制御装置において、前記弁装置は吸気弁であることを特徴とする。
請求項12に記載の貫通口閉鎖装置は、弁装置本体を貫通する貫通口の周縁内面に当接して前記貫通口を開閉自在に閉鎖する弁体を備える弁装置と、
前記弁体の動作規制時に前記弁装置に選択的に装着される、請求項1から11のいずれか一項に記載の弁体制御装置と、を備え、
前記弁体制御装置の吸盤部材が、前記弁体で閉鎖された前記貫通口の周縁外面に対して吸着することによって前記弁体の開放動作が規制されることを特徴とする。
請求項13に記載の貫通口閉鎖装置は、弁装置本体を貫通する貫通口の周縁内面に当接して前記貫通口を開閉自在に閉鎖する弁体を備える弁装置、及び、前記弁体の動作規制時に前記弁装置に選択的に装着される弁体制御装置を備える貫通口閉鎖装置であって、
前記弁装置は、前記弁体を閉鎖位置へと磁力で付勢するように、前記弁装置本体に配置された本体側磁石、及び、前記弁体側に配置された弁体側磁石を備え、
前記弁体制御装置は、
前記貫通口の周縁外面に対して吸着するように構成された吸盤部材と、
前記吸盤部材が前記貫通口の周縁外面に対して吸着した状態で、前記吸盤部材の外部から前記弁体側磁石に対して近接させることで、前記弁体側磁石との間に発生させた斥力によって前記弁体開放動作方向に変位するように作用する解除磁石と、を備えることを特徴とする。
請求項14に記載の配管構造は、配管系の構成する配管材の開口に装着され、配管系内部が常圧であるときに弁体が弁装置本体の貫通口を閉鎖し、前記排水経路内部が負圧になったときに前記弁体が前記貫通口を開放して、前記配管系内部の負圧を解消する吸気弁装置と、
前記弁装置本体に装着された弁体制御装置と、を備え、
前記弁体制御装置は、前記弁体を閉鎖位置に維持するように前記弁体の開放動作方向の反対側から前記貫通口の周縁外面に対して吸着した吸盤部材と、前記吸盤部材の前記貫通口の周縁外面に接する外周部位を前記貫通口の周縁に押圧する押圧部材と、を備え、
前記押圧部材によって前記吸盤部材の外周部位が前記貫通口の周縁外面に圧接するとともに、前記吸盤部材の中央部位が前記弁体の開放動作方向と反対側に引き上げられていることを特徴とする。
請求項15に記載の方法は、排水系内部が常圧であるときに弁体が弁装置本体の貫通口を閉鎖し、前記排水系内部が負圧になったときに前記弁体が前記貫通口を開放して、前記排水系内部の負圧を解消する吸気弁装置が装着された排水系を洗浄する方法であって、
前記弁体の開放動作方向とは反対側から前記貫通口を覆うとともに、前記貫通口の周縁外面に対して吸着して前記弁体との間に閉鎖空間を形成可能に構成された吸盤部材を備える弁体制御装置を準備する工程と、
前記弁体の開放動作方向の反対側から前記貫通口を包囲するように前記吸盤部材を前記弁装置本体の前記貫通口の周縁外面に吸着させて、前記弁体を閉鎖位置に選択的に維持する工程と、
前記排水系内部に高圧水を注入して高圧洗浄する工程と、を含むことを特徴とする。
請求項1に記載の弁体制御装置によれば、吸盤部材が弁装置本体の貫通口の周縁外面に対して吸着することにより、弁体の開放動作を効果的に制動することができる。すなわち、吸盤部材が弁体の開放動作方向とは反対側から貫通口を覆い、且つ、弁体が貫通口を周縁内面に当接して閉鎖することにより、貫通口を介した吸盤部材と弁体との間には、閉鎖空間が形成される。そして、吸盤部材が真空様に潰れて弁装置本体に吸着することにより、閉鎖空間の圧力が外部空間の圧力と比べて大幅に低下する。この圧力差が弁体を吸盤部材側に引き付けるように作用することにより、弁体を閉鎖位置に恒常的に維持することができる。すなわち、本発明の弁体制御装置は、弁装置に容易に取り付けられて、弁体を閉鎖位置に制御することが可能である。
請求項2に記載の弁体制御装置によれば、請求項1の発明の効果に加えて、吸盤部材の外周部位を貫通口周縁外面に向けて押圧する押圧部材によって、吸盤部材の外周部位が貫通口周縁外面から外れて吸盤内の略真空状態が破壊されることを防止することができる。
請求項3に記載の弁体制御装置によれば、請求項2の発明の効果に加えて、押圧部材を軸部材に対して螺進退させて押圧部材及び吸盤部材を互いに相対移動させることにより、押圧部材による押圧操作、及び、押圧の解除操作を容易に行うことができる。さらに、押圧部材の軸部材に対する螺進に伴って、押圧部材が吸盤部材の中心部位を上方に引き上げるように作用する。この押圧部材による吸盤部材の引き上げによって、ただ単に吸盤部材を吸着させた状態よりも強く吸着する真空吸着状態を形成することができる。
請求項4に記載の弁体制御装置によれば、請求項1の発明の効果に加えて、解除部材を操作して、吸盤部材の外側、且つ、弁装置外部から弁体を開放動作方向に強制的に変位させることにより、貫通口から空気を吸盤部材内に流入させて吸盤内の真空状態を解消し、吸盤部材を弁装置から容易に取り外すことが可能である。
請求項5に記載の弁体制御装置によれば、請求項4の発明の効果に加えて、解除磁石が弁体側磁石に近接したときに、弁体側磁石との間に斥力が発生し、当該斥力によって弁体が開放動作方向に変位するように作用する。すなわち、磁力を利用した簡易な機構で、吸盤部材を弁装置から容易に取り外すことが可能である。
請求項6に記載の弁体制御装置によれば、請求項4の発明の効果に加えて、吸盤部材の外周部位を貫通口周縁外面に押圧する押圧部材によって、吸盤部材の外周部位が貫通口周縁外面から外れて吸盤内の略真空状態が破壊されることを防止することができる。さらに、押圧部材を軸部材に沿って螺進退させて押圧部材及び吸盤部材を互いに相対移動させることにより、押圧部材による吸盤部材の外周部位の押圧操作、及び、押圧の解除操作を容易に行うことができる。さらに、押圧部材の軸部材に対する螺進に伴って、押圧部材が吸盤部材の中心部位を上方に引き上げるように作用する。この押圧部材による吸盤部材の引き上げによって、ただ単に吸盤部材を吸着させた状態よりも強く吸着する真空吸着状態を形成することができる。
請求項7に記載の弁体制御装置によれば、請求項6の発明の効果に加えて、解除部材を軸部材内部に移動可能に収容することにより、弁体制御装置全体をコンパクトに構成することができる。
請求項8に記載の弁体制御装置によれば、請求項7の発明の効果に加えて、軸部材の内部に移動式に収容された解除磁石が、軸方向に沿って弁体側磁石に近接して作用位置に到達したときに、弁体側磁石との間に斥力が発生し、当該斥力によって弁体が開放動作方向に変位するように作用する。すなわち、磁力を利用した簡易且つコンパクトな機構で、吸盤部材を弁装置から容易に取り外すことが可能である。
請求項9に記載の弁体制御装置によれば、請求項8の発明の効果に加えて、弁体による閉鎖状態を維持するときには、保持用磁性体によって解除磁石を作用位置から離隔した待機位置に磁気引力を利用して容易に保持することができる。
請求項10に記載の弁体制御装置によれば、請求項9の発明の効果に加えて、押圧部材が軸部材に対して所定位置を越えて螺退すると、解除磁石と保持用磁性体との距離の増大に伴って磁気引力が低下し、その結果、解除磁石が自重落下して作用位置に移動して弁体が開放動作方向に変位する。すなわち、押圧部材の螺進退動作に連動するように、解除磁石を作用位置と待機位置との間で移動させることができる。よって、ユーザは、押圧部材の後退方向への回転操作で、吸盤部材を弁装置から容易に取り外すことが可能である。
請求項11に記載の弁体制御装置によれば、請求項1から10のいずれかの発明の効果を吸気弁に対して発揮することができる。すなわち、吸気弁が取着された配管系の内部の圧力が変動したとしても、弁体を閉鎖位置に選択的に維持することができる。
請求項12に記載の貫通口閉鎖装置によれば、請求項1から11のいずれかの発明の効果を貫通口閉鎖装置として発揮することができる。すなわち、貫通口閉鎖装置は、弁体の開放動作が必要な場合には、弁装置のみで機能し、貫通口の恒常的な閉鎖が必要な場合には、弁体制御装置を弁装置に装着することにより、弁体の開放動作を選択的に規制することができる。
請求項13の貫通口閉鎖装置によれば、吸盤部材が弁装置本体の貫通口の周縁外面に対して吸着することにより、弁体の開放動作を効果的に制動することができる。すなわち、吸盤部材が弁体の開放動作方向とは反対側から貫通口を覆い、且つ、弁体が貫通口を周縁内面に当接して閉鎖することにより、貫通口を介した吸盤部材と弁体との間には、閉鎖空間が形成される。そして、吸盤部材が真空様に潰れて弁装置本体に吸着することにより、閉鎖空間の圧力が外部空間の圧力と比べて大幅に低下する。この圧力差が弁体を吸盤部材側に引き付けるように作用することにより、弁体を閉鎖位置に恒常的に維持することができる。また、解除磁石が弁体側磁石に近接したときに、弁体側磁石との間に斥力が発生し、当該斥力によって弁体が開放動作方向に変位するように作用する。すなわち、磁力を利用した簡易な機構で、吸盤部材を弁装置から容易に取り外すことが可能である。さらに、貫通口閉鎖装置は、弁体の開放動作が必要な場合には、弁装置のみで機能し、貫通口の恒常的な閉鎖が必要な場合には、弁体制御装置を弁装置に装着することにより、弁体の開放動作を選択的に規制することができる。すなわち、本発明の貫通口閉鎖装置は、弁装置に容易に取り付け及び取り外し可能であり、弁体を閉鎖位置への維持を簡単に選択して制御することが可能である。
請求項14に記載の配管構造によれば、吸盤部材が弁装置本体の貫通口の周縁外面に対して吸着していることにより、弁体の開放動作を効果的に制動することができる。すなわち、吸盤部材が弁体の開放動作方向とは反対側から貫通口周縁を覆い、且つ、弁体が貫通口を周縁内面に当接して閉鎖していることにより、貫通口を介した吸盤部材と弁体との間には、閉鎖空間が形成されている。そして、吸盤部材が真空様に潰れて弁装置本体に吸着することにより、閉鎖空間の圧力が外部空間の圧力と比べて大幅に低下する。この圧力差が弁体を吸盤部材側に引き付けるように作用することにより、弁体を閉鎖位置に恒常的に維持することができる。さらに、吸盤部材の外周部位を貫通口周縁外面に押圧する押圧部材によって、吸盤部材の外周部位が貫通口周縁外面から外れて吸盤内の略真空状態が破壊されることを防止することができる。したがって、本発明の配管構造は、弁体を閉鎖位置に安定的に維持することが可能である。
請求項15に記載の吸気弁装置が装着された排水系を洗浄する方法によれば、排水系内部を高圧洗浄する前に、弁体の開放動作方向の反対側から貫通口の周縁外面に対して吸盤部材を吸着させることにより、高圧洗浄時の排水系内部の圧力変動に抗して、弁体を閉鎖位置に安定的に維持することが可能である。特には、吸盤部材が、弁体で閉鎖された貫通口を覆いつつ弁装置本体に吸着することにより、弁体の開放動作を効果的に制動することができる。すなわち、吸盤部材が弁体の開放動作方向とは反対側から貫通口を覆い、且つ、弁体が貫通口を周縁内面に当接して閉鎖していることにより、貫通口を介した吸盤部材と弁体との間には、閉鎖空間が形成されている。そして、吸盤部材が真空様に潰れて弁装置本体に吸着することにより、閉鎖空間の圧力が外部空間の圧力と比べて大幅に低下する。この圧力差が弁体を吸盤部材側に引き付けるように作用することにより、弁体を閉鎖位置に維持することができる。したがって、本発明の方法によれば、高圧洗浄の際、高圧水による衝撃や圧力変動によって弁体が開放動作して高圧水が吸気弁装置を介して噴出することを効果的に防止することができる。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。また、本発明における上下左右の方向は、相対的な位置を示す概念にすぎず、これらを入れ替えて適用可能であることは言うまでもない。
本実施形態の一実施形態の配管構造10は、排水管が配設された排水系の配管構造である。当該配管構造10には、外部に開口して排水系の内外に連通する連通路を形成する中空の配管材11が設けられ、連通路を閉鎖するべく該配管材11の開口に吸気弁として機能する弁装置200が装着される(図12参照)。当該配管構造10において、弁装置200の弁体220の開放動作を制動するための弁体制御装置100が弁装置200に装着される。そして、本実施形態の弁体制御装置100及び弁装置200によって貫通口閉鎖装置が構成される。該貫通口閉鎖装置は、状況に応じて、弁体制御装置装置100の弁装置200への装着を選択的に可能とする装置である。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、その用途、構成を限定するものではないことは言うまでもない。以下、図面に沿って、本実施形態の弁体制御装置100及び弁装置200の構成を説明する。
まず、図1乃至図6を参照して、本発明の一実施形態の弁体制御装置100の構成を説明する。図1(a),(b)は、本発明の一実施形態の弁体制御装置100の概略斜視図である。図2(a)~(c)は、該弁体制御装置100の平面図、正面図及び底面図である。図3は、該弁体制御装置100のA-A断面図である。図4,図5は、図3の弁体制御装置100の動作を示す概略断面図である。図6は、該弁体制御装置100の分解斜視図である。
本実施形態の弁体制御装置100は、弁装置200に取着されて、弁装置200の弁体220の開放動作を規制するものである。図1乃至図3に示すとおり、弁体制御装置100は、吸着対象の物体平面に吸着するように構成された吸盤部材101と、該吸盤部材101に連設された軸部材103と、該軸部材103に取着された押圧部材105と、を備える。図6に示すように、弁体制御装置100は、吸盤部材101、軸部材103及び押圧部材105が1つに組み合わさってなる。また、弁体制御装置100には、吸着を解除するための解除部材としての解除磁石107、及び、該解除磁石107を所定位置に保持するための保持用磁性体109が備えられている。
吸盤部材101は、下方に開口したドーム状に成形されたゴムや合成樹脂などの弾性材料から形成されてなる。また、吸盤部材101は、吸着対象の物体平面に当接する環状の当接面を有する外周部位101a、該外周部位101aから中心に向けて盛り上がって内部に空間を形成する中心部位101b、及び、該中心部位101bの中央上部に形成された台状部位101cを有する。さらに、吸盤部材101の外周部位101aの上面には、環状凸部103dが突設されている。該環状突部103dの内径は、後述する押圧部材105の押圧部105eの外径に対応する。該環状突部103dは、押圧部105eが径方向にずれることを防止するように機能する。吸盤部材101の外周部位101a下面が吸着対象の物体平面に密に当接した状態で、台状部位101cが物体平面に対して押圧されると、吸盤部材101全体が圧潰するように弾性変形して、中心部位101bの内部の空気が外部に押し出される。そして、吸盤部材101の全体形状が部分的に弾性復帰するとともに、吸盤部材101(中心部位101b)の内部が略真空状態(外気と比べて圧力が極めて低い状態)となり、吸盤部材101が物体平面に吸着される。なお、本実施形態では、吸盤部材101は、円錐状の空間を形成しているが、吸盤として機能すればその形状は問わず、半球状などの任意の形状を取り得る。
軸部材103は、軸方向に延びる略円筒形状を有し、その下端で吸盤部材101の台状部位101cに埋め込まれるようにして固定されている。つまり、軸部材103は、吸盤部材101の中心から上方(吸着面の反対側)に立設されている。この軸部材103は、例えば、合成樹脂などの硬質材料からなる。軸部材103は、吸盤部材101側に形成された雄ねじ状の外周を有する中空の雄ねじ部103aと、該雄ねじ103aの内部に形成された収容部103bと、雄ネジ部103a上端から延びるとともに該収容部103bの上端を封鎖する封鎖部103cとからなる。雄ねじ部103aは、後述する押圧部材105の雌ねじ部105bに螺合するように構成されている。図3に示すように、収容部103bは、解除磁石107を収容可能に軸方向に沿って延びる中空空間である。封鎖部103cは、雄ねじ部105bの上端から内挿されて固定されている。封鎖部103cの上端には、ユーザーの操作を容易とする拡径した張り出し103dが形成されている。また、封鎖部103cの下端には、収容部103b内の解除磁石107を係止する係止面103eが形成されている。
押圧部材105は、柱状の本体部105aと、該本体部105aの下方に形成された中空筒状の裾部105bと、該裾部105cの下端から外方に延在する環状のフランジ部105cとを備える。図2に示すように、本体部105aは、ユーザが押圧部材105を回転操作し易いように、波状に湾曲した外周面を有し、上端から下端につれて拡径している。裾部105bは、図3に示すように、軸部材103の下端部、及び、吸盤部材101の中心部位101bを少なくとも包囲可能な中空空間を内部に形成している。そして、フランジ部105cは、吸盤部材101の外周部位101aを上方から覆うように吸盤部材101の外径よりも大きく形成されている。
また、本体部105aの中心には、雌ねじ部105dが軸方向に貫通形成されている。雌ねじ部105dは、軸部材103の雄ねじ部103aに螺合して軸部材103を内挿する。すなわち、雄ねじ部103a及び雌ねじ部105dの螺合関係により、押圧部材105が軸部材103上を軸方向に沿って螺進退することが可能である。具体的には、押圧部材105が一方向に回転することにより、押圧部材105が螺進して軸部材103に対して吸盤部材101に近接する方向に相対移動し、他方、押圧部材105が他方向に回転することにより、押圧部材105が螺退し、軸部材103に対して吸盤部材101から離隔する方向に相対移動する。
さらに、裾部105bの下面には、押圧部105eが突出形成されている。押圧部105eは、円環状に延在する突条であり、吸盤部材101の外周部位101aを吸着対象の物体平面に押し付けるように機能する。また、押圧部105eは、押圧の際、吸盤部材101の環状突部103dの内側に隣接配置される。なお、図3の状態では、押圧部材105が軸部材103に対して螺進して、押圧部105eが外周部位101aに当接している。
解除磁石107は、吸盤部材101の吸着を解除するための解除部材として機能する。該解除磁石107は、短尺の円柱形状を有し、軸部材103内部の収容部103bに軸方向に亘ってスライド可能に収容されている。また、解除磁石107は、後述する弁体側磁石225に斥力を作用可能な磁力を有するように、比較的強力なネオジム磁石等の永久磁石からなる。
保持用磁性体109は、解除磁石107を収容部103bの中の下端領域に位置する作用位置から離隔した待機位置に磁力で牽引して保持するように機能する。図3,6に示すように、保持用磁性体109はリング状の磁石からなる。保持用磁性体109は、軸部材103を包囲するように押圧部材105の本体部105aの上端側に固定されている。また、保持用磁性体109は、鉄ワッシャーなどの磁性体からなり、比較的強力な解除磁石107に対して軸部材103の外壁を介して磁着可能である。なお、保持用磁性体109は、解除磁石107と同様に比較的強力なネオジム磁石等の永久磁石からなってもよい。
すなわち、図6に示すように、吸盤部材101及び軸部材103が一体的に固定され、軸部材103が押圧部材105に対して螺合することにより、弁体制御装置100が組み合わさっている。また、押圧部材105が回転して軸部材103に対して螺進退することにより、押圧部材105が軸部材103上で吸盤部材101に対して近接又は離隔するように移動可能である。押圧部材105は、押圧部105eが吸盤部材101の外周部位101aの上面に当接又は圧接するまで螺進可能であり、且つ、軸部材103上端の張り出し103dが本体部105aの上面に当接するまで螺退可能である。また、解除磁石107は、図3に示すように、互いに作用し合う磁気牽引力が自重(重力)を上回る程に解除磁石107及び保持用磁性体109間の距離が小さい場合において、収容部103b内で空中(下端から浮いた位置)に保持され得る。そして、本実施形態の弁体制御装置100は、以下に詳細に説明するように、押圧部材105の軸部材103に対する相対移動に従って、解除磁石107及び保持用磁性体109間の距離が変動し、解除磁石107が軸部材103の収容部103b内部で軸方向上端から下端へと移動するように動作する。後述するが、解除磁石107が下端領域に移動すると、吸盤部材101の下方まで磁力が及び、吸盤部材101の吸着対象の物体平面近傍に位置する磁石に対して磁気的に作用可能である。この磁気作用を発揮する下端領域を作用位置と定める。
次に、図3乃至図5を参照して、押圧部材105の軸部材103に対する相対位置の変位に伴う弁体制御装置100の動作について説明する。
図3は、押圧部105eが外周部位101aに当接する位置まで押圧部材105が螺進した螺進状態を示している。図3では、押圧部材105が軸部材103に対して十分に螺進して、押圧部105eが外周部位101aに当接している。このとき、解除磁石107は、収容部103bの上端領域に位置し、保持用磁性体109とほぼ同じ高さにある。つまり、保持用磁性体109と解除磁石107との距離がほぼ最小となり、解除磁石107及び保持用磁性体109間の磁気引力が最大となっている。そして、解除磁石107及び保持用磁性体109間の磁気引力が重力に勝ることにより、解除磁石107が浮いた状態で保持されている。この収容部103bの上端領域は、待機位置として定められる。弁体制御装置100では、弁体220の開放動作規制中に、保持用磁性体109は解除磁石107を当該待機位置に待機させる。後述するとおり、弁体制御装置100は、弁装置200に吸盤部材101を押圧部材105で固定する押圧工程において、この螺進状態を取り得る。
図4は、図3の螺進状態から押圧部材105が軸部材103に対して途中まで螺退した中間状態を示している。図4では、押圧部105eが外周部位101aから離隔して、吸盤部材101の中心部位101bの一部が押圧部材105の裾部105bから下方に突出している。ここでは、吸盤部材101の中心部位101b(つまり、弾性変形可能な部位)が押圧部材105の外部に位置する。この中間状態では、弁体制御装置100を吸着対象の物体平面に対して押し下げたときに、吸盤部材101の中心部位101b内面が吸着対象の物体平面に当接するまで吸盤部材101を弾性変形させることが可能である。また、押圧部材105の軸部材103に対する螺退に伴い、押圧部材105が軸部材103の上方に相対移動し、保持用磁性体109が収容部103bの上端領域よりも上方に位置している。この中間状態では、保持用磁性体109と解除磁石107との距離が螺進状態から増加したものの、解除磁石107及び保持用磁性体109間の磁気引力が重力をいまだ上回っている。そして、解除磁石107及び保持用磁性体109間の磁気引力によって、解除磁石107は、係止面103eに係止されるとともに収容部103bの上端領域の待機位置に保持されている。すなわち、弁体制御装置100は、中間状態において、吸盤部材101を圧潰変形可能な位置に配置するとともに、解除磁石107を待機位置に保持する。後述するとおり、弁体制御装置100は、弁装置200に吸盤部材101を吸着する吸着工程において、この中間状態を取り得る。
図5は、図4の中間状態から押圧部材105が軸部材103に対してほぼ完全に螺退した螺退状態を示している。図5では、押圧部105eが外周部位101aから大きく離隔して、吸盤部材101全体及び軸部材103下端領域が押圧部材105の裾部105bから下方に突出している。押圧部材105の軸部材103に対する螺退に伴い、押圧部材105が軸部材103の上端まで相対移動し、保持用磁性体109が収容部103bの上端領域よりも上方に離隔して位置している。この螺退状態では、解除磁石107が収容部103bの下端領域の作用位置に配置され、吸盤部材101よりも下方に磁力(弁体220を開放動作させる程度の斥力)を及ぼすことが可能である。すなわち、中間状態から螺退状態へと移行する際、保持用磁性体109と解除磁石107との間の距離が増加するにつれて、両者の間の磁気引力が弱まっていく。そして、保持用磁性体109及び解除磁石107間の距離が所定の距離を越えると、磁気引力が解除磁石107に作用する重力を下回る。その結果、解除磁石107が自重落下して作用位置へと配置される。後述するとおり、弁体制御装置100は、弁装置200から吸盤部材101を取り外す解除工程において、この螺退状態を取り得る。
なお、上記説明とは反対に、螺退状態から押圧部材105を軸部材103に対して螺進させると、保持用磁性体109と解除磁石107との間の距離が減少するにつれて、両者の間の磁気引力が増加又は発生を開始する。そして、保持用磁性体109及び解除磁石107間の距離が所定の距離以下になると、磁気引力が解除磁石107に作用する重力を上回る。その結果、解除磁石107が浮遊して待機位置へと配置される。
次に、図7乃至図12を参照して、本発明の一実施形態の弁装置200の構成を説明する。図7(a),(b)は、本発明の一実施形態の弁装置200の斜視図である。図8(a)~(d)は、該弁装置200の平面図、正面図、側面図及び底面図である。図9は、該弁装置200のB-B縦断面図である。図10は、該弁装置200のC-C横断面図である。図11は、該弁装置200の分解斜視図である。図12は、配管材11に設置された弁装置200の動作を示す模式図である。
弁装置200は、配管材11の円筒状の筒部の開口部に固定され(図12参照)、配管材内の圧力変動に応じて連通路を選択的に閉鎖及び連通させるように構成されている。図7,図8及び図11に示すとおり、弁装置200は、配管材11の開口部に取り付けられる弁装置本体210と、該弁装置本体210に軸方向に対して可動式に支持された弁体220と、該弁体220を保護するように弁装置本体210の外部側の端部に取り付けられたカバー体230と、を備える。
弁装置本体210は、その両端が開放されたとともに、軸方向に沿って延びる円筒形状を有する。つまり、弁装置本体210は、上方(配管材の外部側)に外気を配管材内部に取り入れるための貫通口210aを有し、下端(配管材の内部側)に配管材に接続される接続口210bを有している。貫通口210a及び接続口210bは、軸方向に対して垂直な平面上に延在している。そして、弁装置本体210の貫通口210aと接続口210bとの間の空間に、弁体220を可動式に収容するための弁体収容空間210cが設けられている。
また、弁装置本体210は、弁体収容空間210cを包囲する周壁211と、該周壁211の内面に連結され、上方を臨むとともに貫通口210aの周縁内外面を形成する上壁212と、該上壁211から立設した立壁113とを備えてなる。
周壁211は、配管材11に接続され、筒部の内周面に沿うように軸方向に延びる外周面を有する。また、該周壁211の下方側の開口端面によって、下方を向いた接続口210bが形成されている。さらに、周壁211の内面には、上下に延びる複数(3つ)のガイド溝214が形成されている。
上壁212は、所定の径で開口する貫通口210aの周囲で環帯状に延在している。また、上壁212の弁装置本体210内側の貫通口210a周縁には、本体側挟持面215が設けられている。すなわち、図9に示すように、弁装置本体210内側の上壁212の開口周縁の下面には、弁体220に対向するように、環帯状の本体側挟持面215が定められている。
また、弁体収容空間210cの下方には、図9及び図10に示すように、等間隔で径方向中心に向かって延びる4本の梁状体を有する本体側磁石保持部217が形成されている。本体側磁石保持部217によって、貫通口210aの中心に本体側磁石218が支持されている。該本体側磁石218は、ネオジム磁石等の永久磁石からなり、後述する弁体側磁石225に斥力を作用するように機能する。
立壁213は、互いに対向するように一対で該上壁212の径方向略中央から立設している。この一対の立壁213は、平面視において、径方向内側に凹曲面を向けるように円弧形状を有する。つまり、周壁211の外周面、上壁212の周縁及び立壁213の外側面が(異なる径の)同心円上に位置している。立壁213の外側面は、周壁211の外周面から径方向内側に後退した位置にある。立壁213の上端には、カバー体240を嵌合式に固定するための連結片213aが上方に突出するように設けられている。
弁体220は、弁装置本体210の弁体収容空間210cに収容され、軸方向に沿って移動するように弁装置本体210に支持されている。弁体220は、円盤状に形成された弁体本体221と、該弁体本体221の周囲に形成され、弁体220の軸方向の移動をガイドする複数のガイド片223と、該弁体本体221の中央に形成された弁体側磁石保持部224とを備える。
そして、弁体本体221の外周側の上面には、弁体側挟持面222が形成されている。弁体側挟持面222は、ゴムなどの軟質な材料で構成されることが好ましい。弁体側挟持面222は、弁装置本体210の本体側挟持面215に対向する。また、ガイド片223は、弁体本体221の周囲3箇所で突出形成され、複数のガイド溝214にそれぞれ内挿される。つまり、ガイド片223及びガイド溝214は、弁体220の軸方向の移動をガイドするとともに、弁体220が周方向に回転することを規制する。そして、弁体側磁石保持部224は、弁体本体221の中心に弁体側磁石225を保持している。該弁体側磁石225は、ネオジム磁石等の永久磁石からなる。
カバー体230は、図11に示すように、弁装置本体210内部及び弁体20を保護又は防塵するために、貫通口210aを上方から覆うように構成されている。該カバー体140は平面視円形状を有している。該カバー体230の外周側には、2つのスリット状の連結孔231が穿設されている。なお、説明の便宜上、図7,8,9では、カバー体230の描写が省略されている。
本実施形態の弁装置200では、該弁体側磁石225は、本体側磁石218に対して互いに反発するように配置されている。つまり、本体側磁石218及び弁体側磁石225の対向する磁極が同じである。そして、本体側磁石218及び弁体側磁石225の間に磁気的斥力(反発力)が生じ、磁力によって弁体220が弁体収容空間210c内で上方に浮き上がるように閉鎖位置に付勢されている。すなわち、弁体220は、定常状態において、弁体本体221の弁体側挟持面222が本体側挟持面215に圧接して貫通口210aを閉鎖する閉鎖位置に保持される。これに対し、磁力を超える下方向の力が弁体220に対して付加されると、軸方向に沿って弁体220が下方に移動し、弁体側挟持面222が本体側挟持面215から離隔して貫通口210aが開放される。このとき、ガイド片223がガイド溝214に沿って移動することから、弁体220の軸方向の開放動作が安定的にガイドされる。
図12は、弁装置200を配管材11に固定した配管構造10の断面図である。配管構造10の内部が常圧又は正圧である場合、弁装置200の弁体220が貫通口210aを密閉し、弁装置200によって配管材11内外に連通する連通路が閉鎖されている。このように配管材11が負圧でない閉鎖状態では、磁力による付勢力が、弁体220に作用する開放方向の力(例えば、重力)を上回り、弁体220が貫通口210aを定常的に閉鎖している。そして、閉鎖状態の配管構造10では、配管材11の下流から漂う悪臭が室内へ漏れ出ないようにするとともに、配管材11下流側から這い上がってくる害虫の侵入をも防いでいる。
そして、図12の配管構造10において、定常的な閉鎖状態から排水管11内の負圧が大きくなると、該配管材11に連通する弁装置本体210内の弁体収容空間210cも同様に負圧になる。これにより、弁体220(及び貫通口210a)を介した弁装置本体210の内外で圧力差が生じ、この圧力差が弁体220を開放方向に移動させるように作用する。そして、弁体220に作用する開放方向の力が、磁石218、225間の斥力を上回ると、弁体220が軸方向に沿って開放位置に向けて移動を開始する。この弁体220の移動に伴って弁体側磁石225が軸方向に沿って本体側磁石218に近接移動する。そして、図12に示すように、弁体220が十分に開放した開放位置に到達して、貫通口210aを介して外気を吸入する。その結果として、配管構造11内の負圧が解消される。配管構造10内の負圧が解消されると、負圧に起因する弁体220に作用する力がなくなり、本体側磁石218及び弁体側磁石225の斥力によって、弁体220が再び閉鎖位置に復帰する。
図12の配管構造10では、配管構造10内部の負圧発生によって弁体220が迅速に開放動作することが1つの利点である。しかしながら、配管構造10内部を高圧水で洗浄する場合、内部に圧力変動や衝撃が生じることによって、弁体220が不意に開放動作して、高圧水が外部に噴き出すことがあった。このような高圧洗浄実施などの特別な状況下において、弁体220の開放動作を規制する必要がある。そこで、弁体220の開放動作を制御すべく、本発明に係る弁体制御装置100が弁装置200に導入された。
続いて、本実施形態の弁体制御装置100が弁装置200に導入された弁体閉鎖維持状態の配管構造10について説明する。図13は、該配管構造10の概略斜視図である。図14は、該配管構造10の概略断面図である。図15は、該配管構造10の分解斜視図である。
図13乃至図15に示すように、配管構造10では、配管材11に固定された弁装置200の弁装置本体210に対して、弁体制御装置100が装着されていることにより、弁体220が閉鎖位置に維持されている。
図14に示すとおり、吸盤部材101の外周部位101aが貫通口210aの周縁外面に圧接し、且つ、中心部位101bが潰れて弁体220の開放動作方向と反対側に引き上げられている。そして、吸盤部材101が弁体220の開放動作方向の反対側から貫通口210aを覆うように貫通口210a周縁外面及び弁体220外面に吸着している。このとき、吸盤部材101内面、上壁212外面及び弁体本体221外面で包囲された閉鎖空間が略真空状態となっていることから、弁体220(弁体側挟持面222)が弁装置本体210(本体側挟持面215)に対して強力に吸引されている。また、当該配管構造10において、押圧部材105が軸部材103に対して十分に螺進した状態にあり、押圧部105eが吸盤部材101の外周部位101aを弁装置本体210の貫通口210aの周縁外面に対して押圧する。これにより、吸盤部材101の外周部位101aが、貫通口210aの周縁外面から外れることが効果的に抑えられている。さらに、押圧部材105の螺進に伴って、押圧部材105が吸盤部材101の中心部位101bを上方(吸着方向の反対側)に引き上げるように作用している。この押圧部材105による吸盤部材101の引き上げによって、閉鎖空間の体積が増加してその真空度が高まることで、ただ単に吸盤部材101を吸着させた状態よりも強く吸着する(より真空度が高い)真空吸着状態が形成される。そして、この状態では、押圧部材105により吸盤部材101の周囲に隙間が形成されないから、吸着面に沿った吸盤部材101の移動も抑えられ、より強固に弁体220の閉鎖状態を維持することができる。すなわち、吸盤部材101及び押圧部材105が協働して、真空吸着状態を形成し、その結果、弁体220の開放動作が安定的に規制されている。
さらに、図14の弁体閉鎖維持状態では、解除磁石107が保持用磁性体109によって待機位置に保持されている。この待機位置では、解除磁石107は、弁体側磁石225に対して、弁体220を開放動作させるように作用しない。つまり、弁体側磁石225及び本体側磁石218間の斥力が、弁体側磁石225及び解除磁石107間の斥力と弁体220への重力との和を少なくとも上回っているので、解除磁石107が弁体220を開放動作させることはない。したがって、当該配管構造10は、吸盤部材101の真空吸着力で弁体220を閉鎖状態に恒常的に維持することで、高圧水での内部洗浄における圧力変動や衝撃に耐えることが可能である。
次に、図16及び図17を参照して、弁装置200の弁体220を閉鎖状態に維持するべく、弁装置200に対して弁体制御装置100を導入する方法について説明する。
配管構造10に設置された弁装置200(図12参照)に対して、弁装置200からカバー体230を取り外し、弁体制御装置100を装着可能な状態にした上で、弁体制御装置100を準備する。次に、弁体制御装置100を吸盤部材101が変形可能な中間状態(図4参照)に変形させる。そして、図16に示すように、吸盤部材101の外周部位101aで弁装置本体210の貫通口210a外周を包囲するように、吸盤部材101を(弁体220によって閉鎖された)貫通口210aの周縁外面(上壁212外面)に開放動作方向の反対側から配置する。次に、弁体制御装置100を弁装置200に対して押圧すると、吸盤部材101が圧潰して、吸盤部材101が弁装置本体210に吸着する。
次いで、図17に示すように、押圧部材105を一方向に回転させて軸部材103に対して螺進させることにより、押圧部材105の押圧部105eが吸盤部材101の外周部位101aに向けて移動する。最終的に、押圧部105eが外周部位101aに圧接するとともに中心部位101bを引き上げるまで押圧部材105を螺進させることによって、より真空度の高い真空吸着状態を形成して、吸盤部材101を弁装置200に対して強固に固着することができる。こうして、図14に示した弁体制御装置100の設置構造を構築することができる。
そして、弁体制御装置100の応用例である排水系(配管構造10)を洗浄する方法に関しては、上記のとおり、弁体制御装置100を弁装置200に装着した後、排水系内部に高圧水を注入することによって、弁体220を閉鎖位置に安定的に維持したまま、排水系内部を洗浄することができる。
続いて、図18及び図19を参照して、弁装置200の閉鎖維持状態を解除して、弁装置200から弁体制御装置100を離脱させる方法について説明する。
まず、図14の弁体閉鎖維持状態から、押圧部材105を他方向に回転させて軸部材103に対して螺退させることにより、押圧部材105の押圧部105eが吸盤部材101の外周部位101aから離れるように移動する(図18参照)。図18のように、弁体制御装置100が中間状態にあるときには、解除磁石107が待機位置に保持されているとともに、吸盤部材101が弁装置本体210に吸着しているので、弁体制御装置100を弁装置200から容易に取り外すことができない。さらに、吸盤部材101の外部から弁体制御装置100(押圧部材105)を操作して、押圧部材105を軸部材103に対して螺退させると、磁石107,109間の磁力が弱まり、図19に示すように、解除磁石107が待機位置から作用位置へと重力で自重落下する。すると、解除磁石107が、閉鎖位置にある弁体220の弁体側磁石225に磁気的に作用し、弁体220を開放動作させる。つまり、解除磁石107が作用位置に配置されたことで、解除磁石107及び弁体側磁石225間の磁気斥力が、弁体220を閉鎖位置に付勢する力を超えて、弁体220が強制的に押し下げられる。弁体220が開放動作すると、吸盤部材101の内部に空気が流入し、その略真空状態が破壊されて吸盤部材101が元の形状に復帰する。その結果、弁体閉鎖維持状態が解除され、弁装置200から弁体制御装置100を離脱させることが可能となる。
以下、本発明に係る一実施形態の弁体制御装置100における作用効果について説明する。
本実施形態の弁体制御装置100によれば、吸盤部材101が押圧部材105と協働して弁装置本体210の貫通口210aの周縁外面に対して真空吸着することにより、弁体220の開放動作を効果的に制動することができる。すなわち、吸盤部材101が弁装置本体210の貫通口210aを周縁外面から覆い、且つ、弁体220が貫通口210aを周縁内面に当接して閉鎖していることにより、貫通口210aを介した吸盤部材101と弁体220との間には、密閉状態の閉鎖空間が形成されている。そして、吸盤部材101が真空様に潰れて弁装置本体210に吸着するとともに、中心部位101bが軸部材103によって引き上げられるように変形することにより、閉鎖空間の圧力が外部空間の圧力と比べて大幅に低下する。この圧力差が弁体220を吸盤部材101側に引き付けるように作用することにより、弁体220を閉鎖位置に恒常的に維持することができる。さらに、押圧部材105が軸部材103に螺着して吸盤部材101の外周部位101aを貫通口210a周縁外面に押圧することによって、吸盤部材101の外周部位101aが弁装置本体210から外れて吸盤内部の略真空状態が破壊されることを防止することができる。すなわち、本実施形態の弁体制御装置100は、簡易な構造でもって、弁装置200に容易且つ強固に取り付けられて、弁体220を閉鎖位置に制御することが可能である。
[別実施形態・変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の別実施形態及び変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、4桁で示される構成要素において下3桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
(1)図20の弁体制御装置1100は、本発明の技術的思想を最小限の構成で具現化したものである。すなわち、弁体制御装置1100は、弁装置本体1210を貫通する貫通口1210aの周縁外面に対して吸着するように構成された吸盤部材1101を備える。該弁体制御装置1100は、吸盤部材1101の吸着力によって、少なくとも弁体1220を弁装置本体1210の閉鎖位置に維持することを可能とする。
(2)図21の弁体制御装置2100は、上記実施形態の弁体制御装置100から解除部材(解除磁石107)を省略したものである。なお、弁装置2200の説明は、上述の弁装置200の説明を援用し、図略する。すなわち、弁体制御装置2100は、弁装置本体2210を貫通する貫通口2210aの周縁外面に対して吸着するように構成された吸盤部材2101と、該吸盤部材2101の中心から立設された軸部材2103と、該吸盤部材2101の貫通口2210aの周縁外面に接する外周部位2101aを貫通口2210aの周縁外面に押圧する押圧部材2105を備える。弁体制御装置2100は、吸盤部材2101及び押圧部材2105による真空吸着の力によって弁体2220を弁装置本体2210の閉鎖位置に維持するとともに、押圧部材2105の押圧力によって吸盤部材2101が弁装置本体2210から外れることを防止することが可能である。
(3)図22の弁体制御装置3100は、上記実施形態の弁体制御装置100から押圧部材105を省略したものである。なお、弁装置3200の説明は、上述の弁装置200の説明を援用し、図略する。すなわち、弁体制御装置3100は、弁装置本体3210を貫通する貫通口3210aの周縁外面に吸着するように構成された吸盤部材3101と、吸盤部材3101が貫通口3210aの周縁外面に対して吸着した状態で、吸盤部材3101の外部からの操作によって弁体3220を開放動作方向に変位させるように作用する解除磁石3107とを備える。本実施形態では、吸盤部材3101の上方には、筒状の軸部材3103が連結されている。そして、解除磁石3107は、軸部材3103の収容部3103bに軸方向に移動可能に収容されている。また、軸部材3103の上部には、環状の保持用磁性体3109が設けられている。保持用磁性体3109は、磁力によって解除磁石3107を収容部3103bの上端領域の待機位置に保持する。さらに、保持用磁性体3109は、収容部3103b全体に亘って解除磁石3107を磁力で牽引するように構成されている。つまり、解除磁石3107が収容部3103bの下端領域の作用位置にある場合であっても、保持用磁性体3109は磁力によって解除磁石3107を待機位置に復帰させるように作用する。そして、解除磁石3107の上方には、解除磁石3107を下方に押し下げるための操作軸3108が設けられている。この操作軸3108を手動で押し下げることにより、解除磁石3107を作用位置に移動させて、弁体閉鎖維持状態の解除機能を発揮させることができる。さらに、操作軸3108への押圧をやめることで、解除磁石3107を保持用磁性体3109からの磁気引力によって待機位置に自動的に復帰させることができる。すなわち、弁体制御装置3100は、吸盤部材3101の吸着力によって弁体3220を弁装置本体3210の閉鎖位置に維持するとともに、弁体閉鎖維持状態の解除を容易に実施することが可能である。
(4)図23及び図24の弁体制御装置4100は、上記実施形態の弁体制御装置100の解除磁石107を異なる機構の解除部材に変更したものである。すなわち、弁体制御装置4100は、弁装置本体4210を貫通する貫通口4210aの周縁外面に対して吸着するように構成された吸盤部材4101と、該吸盤部材4101の中心から立設された軸部材4103と、該吸盤部材4101の貫通口4210aの周縁外面に接する外周部位4101aを貫通口4210aの周縁外面に押圧する押圧部材4105と、弁体閉鎖維持状態を解除する解除部材(解除軸4108)とを備える。解除軸4108は、軸方向に移動可能に軸部材4103に密封状態で収容されている。より具体的には、解除軸4108の先端が、吸盤部材4101の内面に一体的に成形された伸縮可能な膜体(又は袋体)4108aによって覆われることにより、吸盤部材4101内部の密封(気密)状態が担保されている。解除軸4108は、その先端が吸盤部材4101の内面まで後退した待機位置(図23の実線で示される)と、その先端が吸盤部材4101の下端から延び出た作用位置(図23の仮想線で示される)との間で移動可能である。図24に示すように、吸盤部材4101が貫通口4210aの周縁外面に吸着した状態で、吸盤部材4101の外部からの操作によって解除軸4108を作用位置に移動させると、解除軸4108先端が吸盤部材4101の下方に突出して、弁体4220を直接押圧する。すなわち、解除軸4108は、弁体4220に物理的に作用して弁体4220を開放動作方向に強制的に変位させるように機能する。その結果、吸盤部材4101内部の略真空状態が破壊され、弁体閉鎖維持状態が解除される。したがって、本発明の解除部材は、上記実施形態に限定されず、種々の機構から採用され得る。
(5)本発明の弁体制御装置は、吸気弁の弁体の閉塞する用途とともに説明された。しかしながら、本発明の弁体制御装置及びその技術的思想は、上記実施形態に限定されず、種々の用途に応用され得る。すなわち、本発明において、弁体は、広義には、2つの空間を連結する貫通口を開閉式に閉塞する閉塞体を意味する。そして、弁装置は、通気弁又は吸気弁に限定されず、全ての閉塞機構を包含する概念である。よって、本発明の弁体制御装置は、種々の用途の弁装置に適用され得る。例えば、弁装置は、貫通口を通して液体や粒子などの他の流体を選択的に通過させるものであってもよい。あるいは、弁装置は、2つの空間を連通する通路(貫通口)を閉塞体(弁体)によって只単に封止するものであってもよい。
(6)本発明において、上記一実施形態の弁体制御装置100を種々の形態に改変することが可能である。一実施形態の弁体制御装置100では、押圧部材は軸部材に螺合しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、軸部材は雄ねじ部を有しなくてもよい。また、一実施形態の弁体制御装置100では、保持用磁性体が押圧部材と一体的に保持され、押圧部材に連動して解除磁石に近接及び離間移動するが、保持用磁性体は押圧部材とは独立して近接及び離間移動可能であるように別体として設けられてもよい。さらに、一実施形態の弁体制御装置100では、弁体閉鎖維持状態においても解除磁石107が弁体制御装置100の待機位置に保持されているが、解除磁石107は必ずしも弁体制御装置100に保持されていなくてもよい。例えば、軸部材の収容部を開放して、弁体閉鎖維持状態を解除する際に、軸部材の収容部に解除磁石を挿入し、作用位置に配置してもい。この場合、保持用磁性体を省略することも可能となる。
(7)本実施形態では、弁装置(吸気弁)の弁体は、磁石の斥力によって閉鎖方向に付勢されるが、本発明はこれに限定されない。例えば、弁体の付勢は、本発明の技術的範囲の下で、(解除部材を省略したり、解除部材に磁力を用いない場合には)バネ等の他の機構によって行われてもよい。また、弁装置(吸気弁)は、例えば、特許文献1の通気弁のような他の機構で構成されてもよい。
(8)本実施形態では、弁体制御装置の吸盤部材の外周部位が、貫通口の外周に近接した外面に配置されたが、吸盤部材は貫通口を包囲していればよく、貫通口の外周から離隔して配置されてもよい。
(9)本実施形態の弁体制御装置では、吸盤部材が平面視円形状の吸盤として構成されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、吸盤部材は、楕円形状、長円形状、多角形状などの任意の形状に変更又は修正可能である。
(10)本実施形態の弁装置では、貫通口が中心に設けられた円形の開口として構成されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、貫通口及び弁体の形状を環状(ドーナツ状)とした弁装置であっても、本発明の技術的思想を採用することができる。すなわち、当業者であれば、本発明の技術的範囲の下で、弁装置の構成を任意に変更又は修正可能である。
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。すなわち、本発明の技術的範囲の下で、本実施形態の一部の構成が省略又は修正されてもよく、あるいは、他の構成が追加されてもよい。