JP7290039B2 - 化合物の製造方法、化合物、およびエポキシ硬化剤 - Google Patents
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Description
アミン化合物の一種として、ベンゼン等の芳香環にアミノメチル基を2つ以上有する化合物である芳香族ジアミン化合物が知られている。芳香族ジアミン化合物としては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。
さらに、メタキシリレンジアミンは、融点が14℃であるため、メタキシリレンジアミンを低温で取扱う際に結晶化しやすく、ハンドリングが難しいという問題がある(ハンドリング性)。
ハンドリング性については、アミン化合物に対し融点調節剤等の添加剤を添加することによって、向上させることもできる。しかしながら、これらの添加剤を添加することによって、アミン化合物を有機反応の基質として用いた場合等に、反応を阻害したり、副反応物が増えたりすることがあるため、添加剤を添加することなくハンドリング性を向上させることが求められている。
また、保存安定性、およびハンドリング性を向上することは、アミン化合物をエポキシ硬化剤として使用する際にも有益である。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
ただし、RA~RDのうち少なくとも2つは、独立して、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基である。また、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がパラ位およびメタ位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合、並びに、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がオルト位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれエチル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合は除く。)
<2>前記塩基が、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および、水酸化セシウムからなる群より選択される一種以上のアルカリ金属化合物(A)と、金属ナトリウム(B)と、を含有する塩基組成物である、<1>に記載の化合物の製造方法。
<3>前記塩基を、2回以上に分割して反応系中に導入することを含む、<1>または<2>に記載の化合物の製造方法。
<4>式(5)中のnが1である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
<5>式(1)で表される化合物が、式(2)で表される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
ただし、RA~RDのうち2つがn-プロピル基であるとき、RAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基である場合を除く。)
<6>式(1)で表される化合物が、式(3)または式(4)で表される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の化合物の製造方法。
ただし、RA~RDのうち少なくとも2つは、独立して、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基である。また、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がパラ位およびメタ位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合、並びに、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がオルト位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれエチル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合は除く。)
<8>式(1)中のnが1である、<7>に記載の化合物。
<9>式(2)で表される、<7>または<8>に記載の化合物。
ただし、RA~RDのうち2つがn-プロピル基であるとき、RAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基である場合を除く。)
<10>式(3)で表される、<7>~<9>のいずれか1つに記載の化合物。
本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本実施形態の化合物は、式(1)で表される化合物である。本実施形態の化合物は、式(1)に包含される化合物であれば特に制限されず、一種または二種以上の混合物であってもよい。
式(1)で表される化合物は、医薬品、農薬等に使用される化合物の中間体、およびエポキシ硬化剤として有用である。
ただし、RA~RDのうち少なくとも2つは、独立して、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基である。また、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がパラ位およびメタ位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合、並びに、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がオルト位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれエチル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合は除く。)
RA~RDのうち少なくとも2つは、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基であり、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基からなる群より選択される同一の基であることが好ましい。RA~RDのうち少なくとも2つは、また、エチル基であることが好ましい。
ただし、RA~RDのうち2つがn-プロピル基であるとき、RAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基である場合を除く。)
本実施形態の化合物は、塩基存在下、式(5)で表される化合物に対して、エチレンおよび/またはプロピレンを付加反応させる工程を含む、製造方法によって製造することができる。
RX~RZは、すべて水素であることが好ましい。
式(5)で表される化合物は、好ましくはメタキシリレンジアミンである。本明細書において、メタキシリレンジアミンは、MXDAとも略記する。
式(5)で表される化合物は、公知の有機反応により調製してもよく、市販品として入手してもよい。
また、エチレンおよび/またはプロピレンは、反応中に追加で添加してもよく、反応中、常時添加してもよい。
反応温度は、反応させる基質の種類等に応じて適宜調整すればよく、一般的には0~150℃、好ましくは10~120℃の範囲である。温度を10℃以上とすることにより、より充分な反応速度が得られ、また、選択率がより向上する傾向にある。温度を120℃以下とすることにより、タール分等の副生物を少なくでき、より好ましい。
反応圧力は、式(5)で表される化合物および生成物が反応条件下で実質的に液体として存在するに必要な圧力で充分であり、好ましくは、絶対圧で0.05~50気圧、好ましくは0.1~40気圧の範囲である。
付加反応の反応時間は、バッチ方式、セミバッチ方式の反応時間、または、完全混合流通方式での滞留時間として、通常0.1~10時間である。固定床流通方式の場合には、式(5)で表される化合物のLSVとして、通常0.1~10h-1が採用される。
本実施形態の製造方法において用いられる塩基としては、式(5)で表される化合物に対してエチレンおよび/またはプロピレンを付加させる反応の触媒としてはたらくものであれば、特に限定されない。上記塩基としては、少なくとも一種のアルカリ金属を含む塩基が好ましく、ナトリウム、ルビジウム、およびセシウムからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ金属を含む塩基がより好ましい。アルカリ金属化合物(A)は、MaOH、Ma 2CO3(Maはアルカリ金属)が好ましい。
上記塩基としては、具体的には、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および水酸化セシウムからなる群より選択される一種以上のアルカリ金属化合物(A)と、金属ナトリウム(B)と、を含有する組成物に由来する塩基組成物を好適に用いることができる。
アルカリ土類金属化合物(C)(好ましくはマグネシウム化合物)の含有量は、アルカリ金属化合物(A)および金属ナトリウム(B)の総量を100質量部としたとき、好ましくは30質量部以上であり、より好ましくは40質量部以上であり、さらに好ましくは50質量部以上であり、60質量部以上であってもよい。上限値としては、好ましくは150質量部以下であり、より好ましくは130質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下である。アルカリ土類金属化合物(C)の含有量が30質量部以上であることにより、塩基組成物のべたつきを抑えられる傾向にある。また、アルカリ土類金属化合物(C)の含有量が150質量部以下であることにより、塩基組成物の触媒としての活性に影響せず、反応を進行させる傾向にある。
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を挙げることができる。
塩基組成物の調製における温度は、好ましくは98℃~500℃であり、より好ましくは110℃~300℃であり、さらに好ましくは120℃~280℃である。温度が、98℃~500℃であることにより、金属ナトリウムが融解するために、分散混合しやすく、且つ、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にある。
塩基組成物の調製における加熱時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間であり、さらに好ましくは30分~2時間である。加熱時間が、10分~5時間であることにより、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にある。
熱処理の温度を200℃~500℃とすることにより、化合物中の水分を十分に取り除くことができ、活性の高い触媒となる傾向にある。調製前の熱処理の時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間であり、さらに好ましくは30分~2時間である。加熱時間が、10分~5時間であることにより、十分に水分を取り除くことができ、活性の高い触媒となる傾向にある。
塩基組成物は、本実施形態の化合物の合成反応において、触媒として作用する一方で不可逆的な反応開始剤としても機能する。したがって、アミン化合物の合成反応の進行に伴って、塩基組成物の系内での量は減少していく。そこで、本実施形態の化合物の合成反応に際して、塩基組成物を2回以上に分割して添加することが好ましい。塩基組成物の添加の回数の上限は特にないが、10回以下であることが実際的である。また、式(5)で表される化合物に対し、Rx~Rzの3つ以上、さらには3つまたは4つに、特には、4つに、エチレンおよび/またはプロピレンを付加させることが容易になる。
また、塩基組成物を一定速度で連続的あるいは断続的に反応液中に投入してもよい。また、投入する速度は一定であってもよいし、経時で変化させてもよい。
上記有機反応で溶媒を用いる場合、得られた反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま式(1)で表される化合物として用いてもよく、適宜、後処理を行った後に、式(1)で表される化合物として用いてもよい。後処理の具体的な方法としては、蒸留、クロマトグラフィー等の公知の精製を挙げることができる。
尚、後述する実施例では、エチレン付加の例のみを示しているが、エチレン付加とプロピレン付加が同様のメカニズムで、ほぼ同様に反応が進行することは公知である。
本実施形態のエポキシ硬化剤は、式(1’)で表される化合物を含む。本実施形態のエポキシ硬化剤は、保存安定性、およびハンドリング性に優れる。
式(1’)で表される化合物は、好ましくは式(2’)で表される。
上記エポキシ硬化剤における式(1’)で表される化合物は、前記エポキシ硬化剤を構成する成分の主成分であることが好ましい。主成分であるとは、エポキシ硬化剤の構成成分全量に対し、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上、さらにより好ましくは98質量%以上である。前記エポキシ硬化剤に含まれる式(1’)で表される化合物の含有量の上限は、100質量%である。
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂硬化剤およびエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
本実施形態のエポキシ硬化剤が使用されるエポキシ樹脂としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に制限されない。
エポキシ樹脂は、通常、一分子中に、2~10のエポキシ基を有し、2~6のエポキシ基を有することが好ましく、2~4のエポキシ基を有することがより好ましく、2つのエポキシ基を有することがさらに好ましい。エポキシ基はグリシジルエーテル基であることが好ましい。エポキシ樹脂は、低分子化合物(例えば、数平均分子量2000未満)であっても、高分子の化合物(ポリマー、例えば、数平均分子量2000以上)であってもよい。ポリマーのエポキシ樹脂は、脂肪族化合物であっても、脂環式化合物であっても、または芳香環を有する化合物であってもよい。特に、エポキシ樹脂は、一分子中に、2つの芳香環および/または2つの脂肪族6員環を有することが好ましく、2つの芳香環を有することがより好ましい。なかでも、エピクロロヒドリンと、2つ以上の反応性水素原子を有する化合物(例えばポリオール)との反応によって得られるエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の原料として具体的には、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)またはその水素化物、ビスフェノールF(4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン)またはその水素化物、テトラブロモビスフェノールA(2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)またはその水素化物、クレゾールをホルムアルデヒドと反応させたノボラック型樹脂、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。エポキシ樹脂組成物に用いうるエポキシ樹脂としては、上記の他、特開2018-83905号公報の段落0036~0039の記載、特開2018-135433号公報の段落0032~0035を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
希釈剤を含むエポキシ樹脂組成物の全量中では、76質量%以上であることが好ましく、79質量%以上であることがより好ましく、81質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、90質量%以下であることが好ましく、87質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂は一種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合はその合計量が上記の範囲となる。
式(1)で表されるアミン化合物は、ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤として用いることができる。また、本実施形態のポリウレタンウレア樹脂組成物は、上記ウレタンプレポリマー硬化剤とウレタンプレポリマーとを含有することが好ましい。
本実施形態に係る硬化物は、ポリウレタンウレア樹脂組成物から形成される。
(1)ガスクロマトグラフィー(以下GC分析)
装置;株式会社島津製作所製GC-2025
カラム;アジレント・テクノロジー株式会社製CP-Sil 8 CB for Amines (0.25μm×0.25mm×30m)
カラム温度;80℃で2分間保持し、8℃/分の速度で昇温し、150℃で5分間保持し、15℃/分の速度で昇温し、300℃で5分間保持した。
装置;日本電子株式会社製AccuTOF GCX
イオン化手法;FI+
BRUKER製核磁気共鳴装置AVANCEII600MHzを用いて、重水素置換クロロホルム溶媒中で測定を行った。尚、後述のδ(ppm)は次式で表される化学シフトを示す。
δ(ppm)=106×(νS-νR)/νR
νS:試料の共鳴周波数(Hz)
νR:標準物質のトリメチルシラン(TMS)の共鳴周波数(Hz)
磁気撹拌子を備えた200mLのナスフラスコに窒素雰囲気下で、炭酸セシウム(Cs2CO3,富士フイルム和光純薬製)4.25g、金属ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)0.3g、酸化マグネシウム(MgO,富士フイルム和光純薬製)3.2gを仕込んだ。このナスフラスコをアルミブロックヒータースターラーに設置して、250℃で、1時間加熱撹拌した後に、アルミブロックヒータースターラーから取り外した。上記ナスフラスコを空冷で室温まで冷却して、塩基組成物を得た。
(実施例1)
30mLオートクレーブに窒素雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記(塩基組成物調製)にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA0.80g、テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬製、超脱水、安定剤不含グレード)5.57gを入れた後に、オートクレーブをエチレンガスボンベに接続しエチレンガス(ジャパンファインプロダクツ製、エチレン純度99.9vol.%超)を0.99MPaの圧力で吹き込みながら20~22.5℃、700rpmで24時間撹拌を行った。24時間経過後にエチレンボンベからのガス供給、および撹拌を一時停止して塩基組成物1.16gを追加した。塩基組成物の追加後、再度エチレンの供給と撹拌を開始し更に24時間反応を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止させ、塩基組成物を含む残渣を吸引ろ過により取り除いた。
ろ液に対して1MのHCl水溶液およびジクロロメタンを加えて分液操作を行い、水相を回収した。次いで1M水酸化ナトリウム水溶液およびジクロロメタンを加えて、再度分液操作を行った後、有機相を回収した。上記有機相を減圧下でジクロロメタンの留去を行うことにより、アミノ基含有アルキル置換芳香族化合物を含む混合物を得た。
混合物より、液体クロマトグラフィーを用いて、以下の、式(3)で表されるα,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミンと、式(4)で表されるα,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミンを分取した。
1H NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):0.689、0.704、0.719(12H、t、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH3の水素)、1.639~1.711(4H、m、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、1.817~1.890(4H、m、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、7.214~7.235(2H、Ar)、7.267~7.298(1H、Ar)、7.396~7.403(1H、Ar)。
13C NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):8.1(×2)、36.2(×2)、58.2、123.4、123.5、127.6、146.1。
TOFMS分析:m/eの理論値(C16H28N2+H)+として249.2285、実測値249.231。
1H NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):0.702、0.717、0.732(6H、t、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH3の水素)、0.837、0.851、0.866(3H、t、Ar-CH(NH2)-CH2-CH3におけるCH3の水素)、1.623~1.751(4H、m、Ar-C(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、1.808~1.882(2H、m、Ar-CH(NH2)-CH2-CH3におけるCH2の水素)、3.792、3.806、3.820(1H、t、Ar-CH(NH2)-CH2-CH3におけるCHの水素)7.140、7.143、7.146、7.154、7.157、7.160(1H、Ar)7.244~7.301(2H、Ar)、7.313~7.320(1H、Ar)。
13C NMR(CDCl3、テトラメチルシラン) δ(ppm):8.1(×2)、11.0、32.6、36.1(×2)、58.0、58.2、123.7、124.1、124.5、128.0、146.0、146.8。
TOFMS分析:m/eの理論値(C14H25N2+H)+として221.20123、実測値221.199。
30mLオートクレーブに窒素雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、上記(塩基組成物調製)にて調製した塩基組成物1.16g、および、MXDA0.80gを入れた後に、オートクレーブをエチレンガスボンベに接続しエチレンガス(ジャパンファインプロダクツ製、エチレン純度99.9vol.%超)を0.99MPaの圧力で吹き込みながら20~22℃、700rpmで24時間撹拌を行った。反応液に4mLのイソプロピルアルコールを加えて反応を停止させた。反応停止後の溶液を1mL抜き取り、シリンジフィルター(孔径0.45μm、PTFE製)を用いて、塩基組成物を含む残渣を取り除き、GC分析を行った。GC分析の結果、α,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミン(3)が2%、α,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミン(4)が34%の収率であった。
<ハンドリング性>
液体クロマトグラフィーにより分取したα,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミン10mgをφ6mm、深さ4mmのアルミパンに秤量し、窒素雰囲気下で25℃、10℃、0℃、-10℃、-25℃の各温度で20分間静置させた際に液体であるか否かを目視、および、触感により評価した。
α,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミンに代えて、液体クロマトグラフィーにより分取したα,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミン、およびメタキシリレンジアミン(東京化成品工業製)においてもそれぞれ同様に評価を行った。
結果を表1に示す。表中、○は液体であったことを指し、×は固体であったことを指す。10℃以下の幅広い温度領域で化合物が液体であることは、化合物を秤量、混合し使用する際に加温の必要が無く、作業性および省エネルギー化の観点から有用である。
液体クロマトグラフィーにより分取したα,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミン6mgをφ6mm、深さ4mmのアルミパンに秤量、空気中25℃の条件下で静置させ、目視にて炭酸塩に由来する白色固体状への変化を観察した。α,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミンは168時間放置後も透明液状であり、炭酸塩の形成による白色固体化は観測されなかった。
α,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミンに代えて、液体クロマトグラフィーにより分取したα,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミン、およびメタキシリレンジアミンを使用したこと以外はそれぞれ同様に評価を行った。α,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミンは168時間放置後も透明液状であり、炭酸塩の形成による白色固体化は観測されなかった。メタキシリレンジアミンは30分経過時点で白色固体状体へと変化した。
結果を表1に示す。アミノ化合物が二酸化炭素と反応し炭酸塩を形成する場合、純度の低下による原料仕込み比の変化やエポキシ樹脂硬化剤として使用した際に硬化物の物性低下を生じさせることに繋がる。炭酸塩を形成しにくい場合、不活性ガス雰囲気とすること、加熱処理による炭酸ガスの脱離工程を設けること、および、事前に樹脂の混合を行うこと等の特別な処理を行わずに、化合物を空気中で保存することが可能となる。
(実施例3)
三菱ケミカル(株)製「jER828」(エポキシ当量:186g/当量、固形分濃度:100質量%、液状)138.4mgに対して、液体クロマトグラフィーにより分取したα,α,α’,α’-テトラエチルメタキシリレンジアミン46.2mgを配合、撹拌してエポキシ樹脂組成物を得た。エポキシ当量:アミンの活性水素当量は、1:1になるように調整した。得られたエポキシ樹脂組成物を、5℃/分昇温、250℃、5分間保持の条件で加熱した結果、硬化反応が進行しエポキシ樹脂硬化物が得られた。示差走査熱量測定(DSC)の結果、ガラス転移温度は50℃であった。
なお、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は、示差走査熱量計「DSC6220」(セイコーインスツルメント社製)を用いて、5℃/分の昇温速度で30~250℃まで示差走査熱量分析を行うことにより求めた。
三菱ケミカル(株)製「jER828」(エポキシ当量:186g/当量、固形分濃度:100質量%、液状)63.1mgに対して、液体クロマトグラフィーにより分取したα,α,α’-トリエチルメタキシリレンジアミン18.7mgを配合撹拌してエポキシ樹脂組成物を得た。エポキシ当量:アミンの活性水素当量は、1:1になるように調整した。得られたエポキシ樹脂組成物を5℃/分昇温、250℃、5分間保持の条件で加熱した結果、硬化反応が進行しエポキシ樹脂硬化物が得られた。示差走査熱量測定(DSC)の結果、ガラス転移温度は104℃であった。
Claims (12)
- 塩基存在下、式(5)で表される化合物における、Hで表される水素原子(-NH 2 に結合している水素原子を除く)、ならびに、R x 、R y およびR z のうち水素原子である基の少なくとも1つに対して、エチレンおよび/またはプロピレンを付加反応させる工程を含む、式(1)で表される化合物の製造方法;ただし、式(5)におけるR x とNH 2 が結合している炭素原子に結合しているH、R X 、R Y 、および、R Z は、それぞれ、式(1)におけるR A 、R B 、R C およびR D に対応する。
ただし、RA~RDのうち少なくとも2つは、独立して、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基であり、少なくともR A およびR C は、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基からなる群より選択される。また、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がパラ位およびメタ位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合、並びに、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がオルト位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれエチル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合は除く。) - 前記塩基が、炭酸ルビジウム、水酸化ルビジウム、炭酸セシウム、および、水酸化セシウムからなる群より選択される一種以上のアルカリ金属化合物(A)と、金属ナトリウム(B)と、を含有する塩基組成物である、請求項1に記載の化合物の製造方法。
- 前記塩基を、2回以上に分割して反応系中に導入することを含む、請求項1または2に記載の化合物の製造方法。
- 式(5)中のnが1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物の製造方法。
- 式(1)で表される、化合物。
ただし、RA~RDのうち少なくとも2つは、独立して、エチル基、n-プロピル基、またはイソプロピル基であり、少なくともR A およびR C は、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基からなる群より選択される。
る。また、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がパラ位およびメタ位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれn-プロピル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合、並びに、nが1であり、-C(RC)(RD)(NH2)基がオルト位にあり、このときRAまたはRB、および、RCまたはRDが、それぞれエチル基であり、且つ、RA~RDの残りの2つが水素である場合は除く。) - 式(1)中のnが1である、請求項7に記載の化合物。
Priority Applications (6)
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