JP7288687B2 - 反応生成物製造装置、反応生成物製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2018年5月25日に、日本国に出願された特願2018-100958号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
特許文献1には、第1の物質R1と第2の物質R2を反応させ、生成物の分散体を製造する製造装置が記載されている。特許文献1に記載の製造装置は、第1の物質R1を含む第1の液体L1を流出させるノズル110と、ノズル110の流出口に対向するようにノズル110から離れた位置に、第2の物質R2を含む第2の液体L2からなる液相P2とを有する。特許文献1に記載の技術では、導電性液体である第1の液体及び第2の液体の間に電位差を付与することで静電噴霧を起こさせることが特徴である。
静電噴霧によりノズル110の流出口で発生した微小液滴群Dは、相互に同一の電荷を持つため、反発力により互いに分散して飛翔し、かつ反対電荷を持つ液相P2の界面Bに引っ張られていく。その結果、第1の物質R1を含む第1の液体L1からなる微小液滴Dが、液相P2の界面Bに衝突して化学反応を起こさせることができる。一つ一つの微小液滴Dは点とみなせるほどに非常に体積が小さく、周辺環境の影響を受け難く、かつ液滴内部の一様性が高いため、界面Bに衝突した瞬間にほぼ化学反応を完結させることができる。これによりシャープで精密な反応制御が可能となる。
ここで、静電噴霧においては、帯電したノズル110の先端部と帯電した液相界面Bとの間の電位差を利用する。しかし、安定した静電噴霧のためには安定した電場形成が必要である。そのため、平らで静定した液相界面Bの形成が求められる。このことから、回転翼による撹拌混合で十分な界面更新を得ようとすると安定した静電噴霧を阻害するという問題を生じることになる。一方、平らで静定した界面を保つために緩やかな回転撹拌を行う場合、中心部の渦吸い込みは弱く、界面はもっぱら円周方向の旋回流れが続くこととなり、有効で迅速な界面更新が達成されないこととなる。このように従来のマグネットスターラーによる回転撹拌混合では、有効な界面更新がなされ得ないため、界面近傍で生成物が局所的に濃縮されることによる反応阻害を回避し得ないという問題があった。
・循環流:整流ブロック61の下面と反応槽60の底面の間を反応槽60の中心から外周に向かって流れ、次いで整流ブロック61の外側の面と反応槽60の壁面との間を上昇する方向に流れ、次いで整流ブロック61の上面と界面Bの間を反応槽60の外周から反応槽60の中心に向かって流れ、次いで整流ブロック61の中心の円筒状の空間を下降する方向に流れ、スターラー62の周辺に戻り、回転翼により混合された後、再度、反応槽60の中心から外周に向かって送り出される第2の液体L2の流れ。
図2に示す一態様の場合、有効で迅速な界面更新を特徴づけるのに必要な構成要件は、整流ブロック61の上面と界面Bの間の液体に対して、外周の給液部E1から中心の排出部E2へ向けて直線的一方向性の押し出し流れを形成することである。
本発明の適用対象となる静電噴霧の態様としては、請求項1に記載のノズルと液相界面との間の電位差で静電噴霧させる構成の他に、請求項3に記載の、ノズルの噴出口と前記液相P2の間に、前記液相P2と分離し2液相を形成しかつ低誘電率液体からなる液相を備える静電噴霧反応においても適用対象となる。この場合さらに、請求項3に記載の、前記ノズルの噴出口が前記低誘電率液体からなる液相に接するか又は液相中に配置される、いずれの静電噴霧反応においても適用対象となる。
これに対し、本発明の反応生成物製造装置によれば、迅速効率的な界面更新を行うことができ、反応生成物を界面から速やかに回収し、界面における過度の局所的な濃縮を避けることができ、本来のシャープで精密な反応制御を達成できる。
本明細書において「押し出し流れ」とは、反応場への給液部である第1の面から反応場からの排液部の第2の面までを移動する流体が、流れ方向に流体の混合及び拡散がなく、また流れと直角方向に均一な速度を持つ流れを意味する。
以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。各構成要素の寸法比率等が以下の説明で用いる図面における寸法比率等と実際と同じであるとは限らない。
本発明の適用対象となる静電噴霧を用いた反応生成物製造装置には、反応槽内の相構成の違い及びノズルの位置の構成の違いに基づき、例えば、図4に示す3つの形態例がある。
図4は、本発明の適用対象となる反応生成物製造装置の形態例として、反応槽内の相構成及びノズルの位置の構成を比較して示す模式図である。
さらに、本発明の適用対象となる静電噴霧を用いた反応生成物製造装置には、反応槽の形状及び押し出し流れを実現するための流路の形状の違いに基づき、例えば、以下に示す3つの形態例がある。
図5は、本発明の適用対象となる反応生成物製造装置の形態例として、反応槽の形状及び押し出し流れを実現するための流路の形状を比較して示す模式図である。図5中の(5a)~(5c)の上段に示すそれぞれの図は各反応槽の上面図であり、(5a)~(5c)の下段に示すそれぞれの図は、各反応槽の垂直断面図である。
図5中の(5a)に示す形態例においては、図3中x軸方向に沿って、押し出し流れの流路が形成されている。そして、図5中の(5a)に示す形態例に係る装置は、図3中y軸方向の第1の端面E1から対向する第2の端面E2に向けて流路に沿った整流仕切板21aを備えている。
整流仕切板21aは、押し出し流れの方向を規制する。整流仕切板21aは反応槽20aの流路面S上に複数設けられている。そして、各整流仕切板21aは、y軸方向の第1の端面E1から対向する第2の端面E2に向かう方向に沿って、互いにx軸方向と平行となるように設けられている。ここで流路面Sは、第1の端面E1と第2の端面E2とによって挟まれている領域にある反応槽20の底面である。
図5中の(5a)の下段に示す反応槽20aの垂直断面図においては、整流仕切板21aの図示を省略している。
図5中の(5b)に示す形態例においては、円筒の外周側の第1の端面E1から円筒の内周(中心)側の第2の端面E2に向かう向き(すなわち、r方向と反対の向き)に、押し出し流れが形成されている。そして、(5c)に示す形態例においては、円筒の内周(中心)側の第1の端面E1から円筒の外周側の第2の端面E2に向かう向き(すなわち、r方向)に、押し出し流れが形成されている。
図5中の(5b)及び(5c)に示す形態例においては、r方向に沿って、押し出し流れを実現するための流路が形成されている。そして、(5b)及び(5c)に示す形態例に係る装置は、整流仕切板21b及び整流仕切板21cをそれぞれ備えている。整流仕切板21b及び整流仕切板21cは、押し出し流れの方向を規制する。
整流仕切板21bは、r方向と反対の向きに形成される押し出し流れに沿って、整流ブロック61の上面に設けられている。また、整流仕切板21cは、r方向に形成される押し出し流れに沿って、整流ブロック61の上面に設けられている。
図5中の(5b)及び(5c)の下段にそれぞれ示す反応槽20b及び反応槽20cの垂直断面図においては、整流仕切板21b及び整流仕切板21cの図示を省略している。
(反応生成物製造装置)
以下、第1の実施形態について説明する。図6は第1の実施形態に係る反応生成物製造装置1の構成の一例を示す模式図である。反応生成物製造装置1は、第1の物質R1と第2の物質R2とを反応させて反応生成物を製造する。第1の物質R1は、第1の溶液L1に含まれている。そして、図6の液相P2に示す複数の矢印は、第2の溶液L2が流れる向きを示している。これら複数の矢印のうち、流路面Sの上方に示す2つの矢印が、反応生成物製造装置1によって形成される押し出し流れの向きを示している。この押し出し流れの向きは、第2の物質R2を含む第2の溶液L2の流れによって形成されている。
反応生成物製造装置1においては、液相PLと液相P2とは、界面Bを境界面として2相分離した状態で反応槽20に収容されている。
ノズル10は、第1の溶液L1を静電噴霧可能に構成されたエレクトロスプレーノズルである。
図6に示すように、ノズル10は、供給管11を介して第1の溶液L1の供給装置12と接続されている。ノズル10は、供給装置12から供給される第1の溶液L1を液相PL中で噴出させる。
噴出口10aは、液相P2と液相PLとの界面Bから上方に離れた位置の液相PLに配置されている。ノズル10による静電噴霧によって第1の溶液L1からなる微小液滴Dが、噴出口10aから噴霧される。他の形態例においては、噴出口10aは液相PLの上面に接して配置されてもよい。液相PLの上面は、界面Bと平行であり、界面Bと対向する面である。
噴出口10aと界面Bとの間の距離は、電場の強度及び静電噴霧によって生成される液滴の断片化プロセスを考慮して、最適化することが好ましい。
図6においては、反応生成物製造装置1がノズル10を2つ備える形態であるが、ノズルの数は1つでもよく、複数でもよい。ノズルの数が複数である場合においては、ノズルの数に応じて電極30の数を複数としてもよい。
金属、合金等の材料を使用する場合、図6に示すように、ノズル10と電源40とを電気的に接続することで、ノズル10そのものを電極として使用可能である。これにより、ノズル10と電極30との間に電位差を付与できる。
ガラス、樹脂、セラミック等の絶縁体材料を使用する場合、ノズル10内にはさらに電極を設ける必要がある。ガラス、樹脂、セラミック等の材料を使用する場合においては、ノズル10内に設けられる電極と電源40とを電気的に接続することで、ノズル10と電極30との間に電位差を付与できる。
反応生成物製造装置1においては、液相PLが反応槽20の頂部側に配置され、液相P2が反応槽20の底部側に配置されている。液相PLと液相P2とは、液相PLと液相P2との界面Bを境界面として互いに分離した状態で重なっている。
電極30に付与される電位は、正電位でも負電位でもよい。
電極30の形状は特に限定されない。電極30の形状としては、略プレート状、略リング形状、略筒形状、略メッシュ形状、略棒形状、略球形状、略半球形状等が例示される。
第1の実施形態では、電源40がノズル10及び電極30のそれぞれと電気的に接続されている。これにより、ノズル10と液相P2との間に静電場が形成される。反応生成物製造装置1においては、ノズル10が正電位であり、電極30が負電位である。ただし、他の形態例においては、電極30が正電位であり、ノズル10が負電位であってもよい。
ここで、反応生成物製造装置1においては、液相P2内の第1の面と第2の面との間に位置する部分の液相P2が、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場となる。よって、反応生成物製造装置1において、「液相P2内の第1の面」は、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場の第1の端面E1である。そして、反応生成物製造装置1において、液相P2内の「第2の面」は、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場の第2の端面E2である。
すなわち、反応生成物製造装置1においては、反応場の第1の端面E1が、当該反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」であり、反応場の第2の端面E2が、当該反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」である。
反応生成物製造装置1においては、第1の端面E1を給液部とし、第1の端面E1と対向する第2の端面E2を排液部とする。これにより第1の端面E1と第2の端面E2との間の領域にある界面Bの液流れは、第1の端面E1から第2の端面E2に一様に流れる。その結果、反応生成物の滞留が抑制され、かつ、有効で迅速な界面更新をなし、界面Bの近傍における反応生成物の局所的な濃縮を避けられる。
反応生成物製造装置1においては、整流仕切板が第1の端面E1と第2の端面E2との間の領域にある反応槽20の底面に複数設けられてもよい(図5中の(5a)参照)。図5中の(5a)においては、複数の整流仕切板21aは互いに平行となるように配置され、第1の端面E1から第2の端面E2に向かって第2の溶液L2の押し出し流れの流路が形成されている。これにより、第1の端面E1から第2の端面E2に向かって流れる押し出し流れが規制される。そのため、界面Bの近傍の反応生成物は、さらに効果的に第2の溶液L2(第2の物質R2)に更新される。同様な効果は、複数の整流仕切板が第1の端面E1と第2の端面E2との間の領域にある反応槽20の底面に複数設けられている場合でも得られる。
反応生成物製造装置1においては、反応槽20は第2の端面E2の下流側の液相P2から第2の溶液L2を排出する排出部52を反応槽20の底部に有する。排出部52は、排出ライン54を介して、第2の端面E2の下流側の液相P2から第2の溶液L2を排出する。
ここで、他の形態例においては、供給ライン53と排出ライン54とを図示略の循環ラインで接続し、排出部52から排出される第2の溶液L2を供給部51に再供給してもよい。この場合においては、循環ライン53にポンプが設けられる。
以下、上述した反応生成物製造装置1を用いる、本実施形態の反応生成物製造方法について説明する。
まず、本実施形態の反応生成物製造方法では、液相P2とノズル10との間に電位差を付与する。そして、電位差が付与されたノズル10の噴出口10aから第1の物質R1を含む微小液滴Dを液相PL内で静電噴霧する。
その後、反応生成物は排出部52によって排出ライン54を経由して反応槽20の外に排出される。
ノズル10及び電極30間の電位差は、例えば、絶対値にて0.3~30kVの範囲とすることができる。反応生成物の安定性等を考慮すると、ノズル10及び電極30間の電位差の絶対値は、2.5kV以上が好ましく、さらに装置の安全性及びコストを考慮すると、10kV以下が好ましい。
ノズル10からの液滴の噴霧量は反応量に適合するように選択してもよい。例えば、反応量を100mLとする場合、第1の溶液L1の送液速度を0.001~0.1mL/min(分)の範囲となるように噴霧量を調整してもよい。
・第1の溶液L1の表面張力を相対的に低くする。
・第1の溶液L1のイオン強度を相対的に低くする。
・第1の溶液L1の比誘電率を相対的に低くする。
・ノズル10及び電極30間の電位差を相対的に増加させる。
・第1の溶液L1の表面張力を相対的に高くする。
・第1の溶液L1のイオン強度を相対的に高くする。
・第1の溶液L1の比誘電率を相対的に高くする。
・ノズル10及び電極30間の電位差を相対的に減少させる。
以上説明した反応生成物製造装置1によれば、液相P2内の第1の面(すなわち、反応場の第1の端面E1)を、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場への給液部とし、第1の面と対向する第2の面(すなわち、反応場の第2の端面E2)を、当該反応場からの排液部とし、第1の端面E1から第2の端面E2への押し出し流れを形成させる。これにより第1の端面E1と第2の端面E2との間の領域にある界面Bの液流れは、第1の端面E1から第2の端面E2に一様に流れる。その結果、反応生成物の滞留が抑制され、かつ、有効で迅速な界面更新をなし、界面Bの近傍における反応生成物の局所的な濃縮を避けられる。
したがって、反応生成物製造装置1によれば、静電噴霧を用いた反応生成物製造装置において、平らで静定した界面を保持しながらかつ有効で迅速な界面更新が実現される。
図6に示す反応生成物製造装置1においては、界面Bが水平方向すなわち、反応槽20の底面と平行方向に形成されているが、図7に示す反応生成物製造装置2のように、界面Bは、垂直方向(すなわち、反応槽20の底面と垂直方向)に形成されてもよい。反応生成物製造装置2においては、押し出し流れが界面Bに沿って垂直方向に形成させられている。図7に示す反応生成物製造装置2においては、第1の端面E1と第2の端面E2との間に位置し、垂直方向に延在する部分の液相P2が、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場である。
すなわち、反応生成物製造装置2においても、反応場の第1の端面E1が、当該反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」であり、反応場の第2の端面E2が、当該反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」である。
反応生成物製造装置2においては、ノズル10の噴出口10aが界面Bと対向する位置に配置されている。そして、噴出口10aの開口面が界面Bと平行になるように噴出口10aが配置されている。ここで、図7においては、電極30及び電源40の図示を省略している。
図6に示す反応生成物製造装置1においては、界面Bが水平方向(すなわち、反応槽20の底面と平行方向)に形成されているが、図8に示す反応生成物製造装置3のように、界面Bは、斜め方向に形成されてもよい。図8に示す反応生成物製造装置3においては、第1の端面E1と第2の端面E2との間に位置し、界面Bに沿って斜め方向に延在する部分の液相P2が、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場である。反応生成物製造装置3においても、反応場の第1の端面E1が、当該反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」であり、反応場の第2の端面E2が、当該反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」である。
反応生成物製造装置3においては、ノズル10の噴出口10aが界面Bと対向する位置に配置されている。そして、噴出口10aの開口面が斜め方向の界面Bと平行になるように噴出口10aが配置されている。ここで、図8においては、電極30及び電源40の図示を省略している。
図9に示す反応生成物製造装置4のように、液相P2が液相PLの上側に配置され、液相PLが液相P2の下側に配置されるように、反応槽20の相構成を変更してもよい。ここで、図9においては、電極30及び電源40の図示を省略している。
この場合、低誘電率液体LLとしては、第2の溶液L2よりも比重の大きな溶剤を用いる。第2の溶液L2よりも比重の大きな溶剤としては、例えば、四塩化炭素、パーフルオロヘキサン等が例示される。反応生成物製造装置4は、第1の物質R1及び第2の物質R2の反応によって液相P2で気体が発生する場合に適用することが好ましい。その理由は下記の通りである。
例えば、反応生成物製造装置1において、第1の物質R1及び第2の物質R2の反応によって気体が発生する場合、発生した気体が気泡状態のまま、第2の溶液L2を含んだ状態で、液相PLを上昇しながら通過することがある。この気泡に含まれる第2の溶液L2を介して、ノズル10の噴出口10a及び液相P2間で通電が起こり、その結果、ノズル10及び電極30間の電位差が消失するおそれがある。
図10に示す反応生成物製造装置5のように、反応槽20は撹拌手段55をさらに有してもよい。撹拌手段55は、第2の端面E2の下流側の液相P2を構成する第2の溶液L2を撹拌する。これにより、排出部52における反応生成物の凝集を低減できる。したがって反応生成物の物性又は特性がさらに安定化する。ここで、図10においては、電極30及び電源40の図示を省略している。
図11に示す反応生成物製造装置6のように、ノズル10、供給部51及び排出部52の数は、複数でもよい。これにより、反応生成物の生産効率がさらに優れる。ここで、図11においては、電極30及び電源40の図示を省略している。反応生成物製造装置6においては、ノズル10の数に合わせて電極の数を複数としてもよい。図11に示す反応生成物製造装置6においては、複数の第1の端面E11、E12、E13のそれぞれが、反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」であり、複数の第2の端面E21、E22、E23のそれぞれが、反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」である。このように、反応生成物製造装置6においては、「第1の面」、「第2の面」のそれぞれが液相P2内に複数存在する。具体的には、下記の3つの部分の液相P2に位置する反応場が複数存在する。
・第1の端面E11と第2の端面E21との間に位置する部分の液相P2。
・第1の端面E12と第2の端面E22との間に位置する部分の液相P2。
・第1の端面E13と第2の端面E23との間に位置する部分の液相P2。
図12に示す反応生成物製造装置7のように、反応生成物製造装置は外部処理機構Xをさらに備えてもよい。外部処理機構Xは供給ライン53及び排出ライン54と接続されている。反応生成物製造装置7においては、供給ライン53には循環ポンプC1が設けられている。これにより、供給ライン53は外部処理機構Xにより処理された後の第2の溶液L2を反応槽20の底部に再供給できる。
外部処理機構X1を反応生成物製造装置が備えると、第1の物質R1と第2の物質R2との化学反応の反応速度等を精密に制御できる。外部処理機構X1は熱交換器、加温器、冷却器等の温度調節手段を備えてもよい。
外部処理機構X2を反応生成物製造装置1が備えると、第1の物質R1と第2の物質R2との化学反応の反応速度等を精密に制御でき、反応生成物の生成量を制御できる。外部処理機構X2は、第2の溶液L2の供給量及び排出量を調節する手段、反応槽20内の第2の溶液L2の量を調節する手段の少なくとも一方を備えてもよい。
外部処理機構X3を反応生成物製造装置が備えると、第2の溶液L2を再利用できるため、反応生成物の製造コストを低減できる。
外部処理機構X4を反応生成物製造装置が備えると、反応生成物を回収しやすくなるとともに、分離した第2の溶液L2を再利用できる。外部処理機構X4は分離膜、遠心分離機等の分離手段を備えてもよい。
排出部52が、意図的に又は意図せずに低誘電率液体LLを第2の溶液L2とともに排出するおそれがある場合に、反応生成物製造装置が外部処理機構X5を備えると好ましい。
外部処理機構X5を反応生成物製造装置が備えると、分離した低誘電率液体LL及び第2の溶液L2を再利用できる。低誘電率液体LLを再利用して液相PLに再供給すると、反応生成物の製造コストを低減できる。第2の溶液L2を再利用する際の態様ついては外部処理機構X4で述べた内容と同様である。
以下、図2を参照して第2の実施形態に係る反応生成物製造装置8について説明する。第2の実施形態の説明において、第1の実施形態で説明した構成と同一の構成については、同一の語及び同一の符号を用いてその説明を省略する。
整流ブロック61は、リング状の部材であり、リングの中心部分が中空状である。整流ブロック61は反応槽60内の液相P2側に配置される。そして、スターラー62は、液相P2で第2の溶液L2を撹拌する。
ここで、図2に示す反応生成物製造装置8においては、第1の端面E1と、第2の端面E2との間に位置し、かつ、整流ブロック61の上方に位置する部分の液相P2が、第1の物質R1と第2の物質R2が反応する反応場である。よって、反応生成物製造装置8において、反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」は、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場の第1の端面E1である。そして、反応生成物製造装置8において、反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」は、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場の第2の端面E2である。
すなわち、反応生成物製造装置8においても、反応場の第1の端面E1が、当該反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」であり、反応場の第2の端面E2が、当該反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」である。
・循環流:整流ブロック61の下面と反応槽60の底面の間を反応槽60の中心から外周に向かって流れ、次いで整流ブロック61の外側の面と反応槽60の壁面との間を上昇する方向に流れ、次いで整流ブロック61の上面と界面Bの間を反応槽60の外周から反応槽60の中心に向かって流れ、次いで整流ブロック61の中心の円筒状の空間を下降する方向に流れ、スターラー62の周辺に戻り、回転翼により混合された後、再度、反応槽60の中心から外周に向かって送り出される第2の液体L2の流れ。
この循環流が発生する結果、円周方向の旋回流に起因する界面Bの液流れの滞留が低減され、もっぱら外周側の第1の端面E1から中心側の第2の端面E2に向けての半径方向の流れが形成される。したがって、反応槽60の界面Bにおいては、有効で迅速な界面更新が絶えず実現可能となり、界面Bの近傍での反応生成物の局所的な濃縮を避けられる。
反応槽60が外部に循環機構を有する場合、整流ブロック61の中心側から、整流ブロック61の外周側に押し出し流れが形成されるように、第2の溶液L2の流れる向きを変更してもよい。
反応槽60が外部に循環機構を有する場合においても、反応槽60がスターラー62を有する場合と同様の作用効果が得られる。
以下、図13を参照して第3の実施形態に係る反応生成物製造装置9ついて説明する。第3の実施形態の説明において、第1の実施形態で説明した構成と同一の構成については、同一の語及び同一の符号を用いてその説明を省略する。
反応槽70は、密閉された内部空間に貯留部71をさらに有する。貯留部71は第2の溶液L2を反応槽70の内部空間で、反応槽70の底部の上方で貯留する。そして、反応槽70の内部空間には、貯留部71の周囲を取り囲むようにして液相PLが形成されている。また、反応槽70の内部空間は密閉空間である。
このように、反応槽70の内部空間では、貯留部71に貯留される第2の溶液L2が液相P2を形成し、その周囲に液相PLが形成されている。図13に示す反応生成物製造装置9においては、第1の端面E1と第2の端面E2との間に位置し、貯留部71の底面に沿って水平方向に延在する部分の液相P2が、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場である。よって、反応生成物製造装置9において、「液相P2内の第1の面」は、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場の第1の端面E1である。そして、反応生成物製造装置9において、液相P2内の「第2の面」は、第1の物質R1と第2の物質R2とが反応する反応場の第2の端面E2である。
すなわち、反応生成物製造装置9においても、反応場の第1の端面E1が、当該反応場への給液部とする「液相P2内の第1の面」であり、反応場の第2の端面E2が、当該反応場からの排液部とする液相P2内の「第2の面」である。
分離部75の内部には、第1の分離相QLと第2の分離相Q2とが形成されている。第1の分離相QLは、低誘電率液体LLを含む。第2の分離相Q2は、第2の溶液L2を含む。
このようにして反応生成物製造装置9においては、液相PLと液相P2との界面Bの近傍の第2の溶液L2に含まれる反応生成物が第2の物質R2に更新される。
また、反応槽70の内部空間は密閉されているため、液相P2と反応槽70の外部環境との相互作用を遮断でき、外気による影響を遮断できる。反応生成物製造装置9は上述した機構X1~X5を必要に応じて備えてもよい。
以上説明した反応生成物製造装置1~9によって製造可能な反応生成物は、特に限定されない。反応生成物の具体例としては、金属粒子、繊維粒子、樹脂粒子、有機結晶、半導体粒子、オリゴマー粒子、ポリマー粒子等の粒子;金属ナノ粒子、繊維ナノ粒子、樹脂ナノ粒子、有機ナノ結晶、半導体ナノ粒子、オリゴマーナノ粒子、ポリマーナノ粒子等のナノ粒子が例示される。
第1の物質R1及び第2の物質R2並びに第1の溶液L1及び第2の溶液L2は、反応生成物に応じて適宜選択できる。
第1の物質R1及び第2の物質R2の含有量は、特に限定されない。第1の物質R1及び第2の物質R2の含有量のそれぞれは、例えば、2~30質量%とすることができ、5~20質量%としてもよい。
そして、低誘電率液体LLの比誘電率は、第1の溶液L1及び第2の溶液L2の比誘電率より低いことが好ましい。低誘電率液体LLの比誘電率は、25以下が好ましく、20以下がより好ましく、15以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましく、5以下が最も好ましい。
反応生成物が金属ナノ粒子の分散体である場合について説明する。
反応生成物が金属ナノ粒子である場合、第1の物質R1及び第2の物質R2として金属塩を選択する。金属塩の具体例としては、白金、金、銀、銅、錫、ニッケル、鉄、パラジウム、亜鉛、鉄、コバルト、タングステン、ルテニウム、インジウム、モリブテン等の一種もしくは複合系の塩;錯体化合物等:これらの2種以上を含む混合物が例示される。金属塩としては、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等が例示される。
金属ナノ粒子の分散体の製造において、必要に応じて、各種分離手法によって、添加剤等の任意成分を低減させることができる。必要に応じて、金属ナノ粒子の濃縮操作を実行してもよい。添加剤の低減及び副生成物の塩類を除去する方法としては、遠心分離、限外ろ過、イオン交換樹脂、膜等を用いる方法が例示される。金属ナノ粒子の分散体は、所定の濃度に希釈又は濃縮可能であり、使用用途に応じて濃度を調整してもよい。
反応生成物が繊維粒子、樹脂粒子、有機結晶、半導体粒子、オリゴマー粒子、ポリマー粒子、繊維ナノ粒子、樹脂ナノ粒子、有機ナノ結晶、半導体ナノ粒子、オリゴマーナノ粒子、ポリマーナノ粒子等のその他の粒子の分散体である場合について説明する。
モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステル類、スチレン類等が例示される。そして、重合開始剤は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等のアゾ系開始剤、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等のノンシアン系開始剤等が例示される。
酸化重合にて得られる重合体の分散体を製造する場合、第1の物質R1及び第2の物質R2のうち一方をモノマーとし、第1の物質R1及び第2の物質R2のうち他方を酸化剤とする。この場合、モノマーの具体例としては、ピロール類、チオフェン類等が例示される。そして、酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過硫酸等が例示される。
第1の物質R1と第2の物質R2とを中和反応又はイオン交換反応させる場合、反応生成物を析出させて、析出物の分散体を製造できる。この場合、第2の物質R2は、第2の溶液L2に含まれていても、低誘電率液体LLに含まれていてもよい。ただし、第2の物質R2は第2の溶液L2に含まれていることが好ましい。
<1> 第1の物質と第2の物質とを反応させる反応生成物製造装置であって、
前記第1の物質を含む第1の溶液を噴出させるノズルと、
前記ノズルに対向して配置され、前記第2の物質を含む第2の溶液からなる液相P2と、
前記ノズルと前記液相P2の界面との間で電場を形成するための電極とを備え、
前記ノズルと前記電極の間に電位差を与えることで前記ノズルから静電噴霧された前記第1の溶液を含む微小液滴を、前記液相P2の界面に到達させて前記第1の物質と前記第2の物質とを混合せしめることで、前記第1の物質と前記第2の物質とを反応させる反応生成物製造装置であり、
前記液相P2内の第1の面を給液部とし、前記第1の面と対向する第2の面を排液部とし、
前記給液部である前記第1の面から前記排液部である第2の面への押し出し流れを形成させる、反応生成物製造装置。
<2> 前記第1の面と前記第2の面との間に位置する部分の前記液相P2が、前記第1の物質と前記第2の物質とが反応する反応場である、<1>の反応生成物製造装置。
<3> 前記第1の端面と前記第2の端面とが互いに平行な一対の面である、<1>又は<2>の反応生成物製造装置。
<4> 前記ノズルの噴出口と前記液相P2の間に低誘電率液体からなる液相PLをさらに備える、<1>~<3>のいずれかの反応生成物製造装置。
<5> 前記液相P2を収容する容器である反応槽をさらに備える、<4>の反応生成物製造装置。
<6> 前記反応槽が前記液相P2と前記液相PLとを相分離させた状態で、前記液相P2と前記液相PLとを収容する、<5>の反応生成物製造装置。
<7> 前記反応槽が、前記第1の端面の上流側の前記液相P2に前記第2の溶液を供給する供給部と、前記第2の端面の下流側の前記液相P2から前記第2の溶液を排出する排出部と、を有する、<5>又は<6>の反応生成物製造装置。
<8> 前記液相PLが前記反応槽の頂部側に配置され、前記液相P2が前記反応槽の底部側に配置されている、<5>~<7>のいずれかの反応生成物製造装置。
<9> 前記ノズルの噴出口が前記液相PLに接するか又は前記液相PL中に配置される、<4>~<8>のいずれかの反応生成物製造装置。
<10> 前記液相P2の前記給液部である前記第1の端面から、前記排液部である前記第2の端面に向けて、前記押し出し流れの方向を規制する整流仕切板を備える、<1>~<9>のいずれかの反応生成物製造装置。
<11> <1>~<10>のいずれかの反応生成物製造装置を用いる、反応生成物製造方法。
≪1≫ 第1の物質を含む第1の溶液を噴出させるノズルと、
前記ノズルに対向して配置される第2の物質を含む第2の溶液からなる第2の液相と、
前記第2の液相に前記ノズルと前記第2の液相の界面との間で電場を形成するための電極とを備え、
前記ノズルと前記電極の間に電位差を与え帯電させることで前記第1の溶液を前記ノズルから静電噴霧させ微小液滴を前記第2の液相の界面に到達させて、前記第1の物質と前記第2の物質とを混合せしめることで、前記第1の物質と前記第2の物質とを反応させる反応生成物製造装置において、
前記第2の液相の一端面を給液部とし、対向する他端面を排液部とし、
前記給液部である一端面から前記排液部である他端面への押し出し流れを形成させることを特徴とする、反応生成物製造装置。
≪2≫ 前記ノズルの噴出口と前記第2の液相の間に低誘電率液体からなる液相をさらに備えることを特徴とする、≪1≫に記載の反応生成物製造装置。
≪3≫ 前記ノズルの噴出口が前記低誘電率液体からなる液相に接するか又は前記低誘電率液体からなる液相中に配置されることを特徴とする、≪2≫に記載の反応生成物製造装置。
≪4≫ 前記第2の液相の前記給液部の一端面から前記排液部の他端面に向けて押し出し流れを規制する整流仕切板を備えることを特徴とする≪1≫~≪3≫のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置。
≪5≫ ≪1≫~≪1≫のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置を用いることを特徴とする、反応生成物製造方法。
20 反応槽
30 電極
40 電源
B 界面
D 微小液滴
E1 第1の面(反応場の第1の端面)
E2 第2の面(反応場の第2の端面)
LL 低誘電率液体
L1 第1の溶液
L2 第2の溶液
P2 第2の溶液からなる液相
PL 低誘電率液体からなる液相
R1 第1の物質
R2 第2の物質
Claims (11)
- 第1の物質と第2の物質とを反応させる反応生成物製造装置であって、
前記第1の物質を含む第1の溶液を噴出させるノズルと、
前記ノズルに対向して配置され、前記第2の物質を含む第2の溶液からなる液相P2と、
前記ノズルと前記液相P2の界面との間で電場を形成するための電極と、
を備え、
前記ノズルと前記電極の間に電位差を与えることで前記ノズルから静電噴霧された前記第1の溶液を含む微小液滴を、前記液相P2の界面に到達させて前記第1の物質と前記第2の物質とを混合せしめることで、前記第1の物質と前記第2の物質とを反応させる反応生成物製造装置であり、
前記液相P2内において、給液部となる第1の所定箇所から排液部となる第2の所定箇所に向けて直線状の流れを形成させる、反応生成物製造装置。 - 前記第1の所定箇所と前記第2の所定箇所との間に位置する部分の前記液相P2が、前記第1の物質と前記第2の物質とが反応する反応場である、請求項1に記載の反応生成物製造装置。
- 前記第1の所定箇所と前記第2の所定箇所とが互いに平行な一対となる位置にある、請求項1又は2に記載の反応生成物製造装置。
- 前記ノズルの噴出口と前記液相P2の間に、前記第1の溶液および第2の溶液よりも低誘電率の液体からなる液相PLをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置。
- 前記液相P2を収容する容器である反応槽をさらに備える、請求項4に記載の反応生成物製造装置。
- 前記反応槽が前記液相P2と前記液相PLとを相分離させた状態で、前記液相P2と前記液相PLとを収容する、請求項5に記載の反応生成物製造装置。
- 前記反応槽が、前記第1の所定箇所の上流側の前記液相P2に前記第2の溶液を供給する供給部と、前記第2の所定箇所の下流側の前記液相P2から前記第2の溶液を排出する排出部と、を有する、請求項5又は6に記載の反応生成物製造装置。
- 前記液相PLが前記反応槽の頂部側に配置され、前記液相P2が前記反応槽の底部側に配置されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置。
- 前記ノズルの噴出口が前記液相PLに接するか又は前記液相PL中に配置される、請求項4~8のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置。
- 前記液相P2の前記給液部である前記第1の所定箇所から、前記排液部である前記第2の所定箇所に向けて、前記直線状の流れの方向を規制する整流仕切板を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の反応生成物製造装置を用いる、反応生成物製造方法。
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