JP7287822B2 - シューパフ用水系組成物、シューパフ用油中水型乳化物、シューパフ生地、及びシューパフ - Google Patents

シューパフ用水系組成物、シューパフ用油中水型乳化物、シューパフ生地、及びシューパフ Download PDF

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Description

本発明は、シュークリーム等のシュー菓子の外皮を構成するシューパフに用いられるシューパフ用組成物に関する。
シュークリーム等のシュー菓子の外皮を構成するシューパフは、バター、ショートニング、植物油等の油脂と水とを合わせて加熱し、これに小麦粉を加えてそのα化を促し、温度を下げた後に液卵を加えて適度な粘度に調製し、天板に絞り出してオーブンに入れ焼成することにより製造するのが一般的である。しかしながら、その製造には、各工程にわたる温度管理や配合割合等に熟練を要する側面があり、得られるシューパフの品質にバラツキも生じやすく、品質の良いシューパフを安定に大量生産することが難しいという問題があった。更に、近年では、より大型のシュー菓子や、卵の配合量が多く、膨らますことが難しい生地を用いたシュー菓子など、消費者の嗜好の多様化にも応えなければならないという問題があった。
このような問題に対して、従来、カゼインやカゼインの塩(例えば、カゼインナトリウム)が有用であることが知られている。すなわち、カゼイン原料をシューパフ生地に配合すると、その生地は、焼成時に生じる水蒸気や膨張剤によるガスを保持する被膜作用が強くなって、大きく膨れ易くなる。また、カゼイン原料は生地の乳化状態の安定化にも寄与している。よって、シューパフに配合する原料として、カゼインやカゼインの塩が広く用いられるようになっている。その利用形態としては、マーガリン様の油脂組成物の水相にカゼイン原料を分散させたうえで、上記製造工程において小麦粉と合わせるバター、ショートニング、植物油等の油脂の代わり、あるいはその油脂の一部として用いて、シューパフ生地を調製するように用いられる形態のものが知られている。このようにカゼイン原料を油脂組成物に含有させたうえで使用すると、水や小麦粉等他の原料との混合工程を簡易化もしくは簡略化できるので、より好ましい利用形態であるといえる。
一方、カゼイン原料をシューパフ生地に配合することには、得られるシューパフの歯切れが悪くなったり、風味が悪くなったりするなどの一定の不利な側面もあった。
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、カゼインナトリウムを含有するシュー皮用乳化油脂組成物の水相のpHを5.2~5.9に調整することにより、焼色や食感や風味が良好なシューパフを製造することが記載されている。
また、例えば、特許文献2には、発酵乳やpH調整剤で酸性に調整したカゼイン分散液を使用することにより、全卵の量の多い配合のシュー皮の製造においても、食感(歯切れ)および風味に優れ、しかも、形状が良好で、内相も良好なシュー皮を安定に製造することが記載されている。
特開平06-165632号公報 特開2007-110917号公報
しかしながら、上記特許文献1,2の技術では、シューパフの容積を増加させる効果が十分とはいえなかった。
そこで、本発明の目的は、容積が大きく、食感が良好なシューパフが得られるシューパフ用組成物を提供することにある。また、そのシューパフ用組成物を利用したシューパフ生地及びシューパフを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、カゼイン原料とともに特定の有機酸を用いることで、容積が大きく、食感が良好なシューパフが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第1には、フィチン酸、フィチン酸塩、フマル酸、及びフマル酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸と、カゼイン及びカゼインの塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むカゼイン原料とを含有することを特徴とするシューパフ用水系組成物を提供するものである。
本発明によるシューパフ用水系組成物によれば、カゼイン又はその塩による焼成時の膨化促進作用が、特定の有機酸により更により促進されるので、例えば、そのカゼイン原料の配合量を減らしても、容積の大きなシューパフが得られる。よって、カゼイン原料の配合量を任意に減らすことで、そのカゼイン原料に起因した歯切れの悪さや異味を低減することが可能であり、それでいてシューパフの容積に遜色がなく、もしくは少なくとも影響が少ない。
本発明によるシューパフ用水系組成物においては、前記有機酸として、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩を、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して、フィチン酸に換算して0.05~27質量%含有することが好ましい。
また、上記シューパフ用水系組成物においては、前記有機酸として、フマル酸及び/又はフマル酸塩を、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して、フマル酸に換算して0.05~27質量%含有することが好ましい。
また、上記シューパフ用水系組成物においては、前記有機酸を、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.05~27質量%含有することが好ましい。
また、上記シューパフ用水系組成物においては、pHが5.0~9.0であることが好ましい。
また、上記シューパフ用水系組成物においては、前記カゼイン原料を、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して0.5~40質量%含有することが好ましい。
また、本発明は、第2には、フィチン酸、フィチン酸塩、フマル酸、及びフマル酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸と、カゼイン及びカゼインの塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むカゼイン原料とを含有することを特徴とするシューパフ用油中水型乳化物を提供するものである。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物によれば、カゼイン又はその塩による焼成時の膨化促進作用が、特定の有機酸により更により促進されるので、例えば、そのカゼイン原料の配合量を減らしても、容積の大きなシューパフが得られる。よって、カゼイン原料の配合量を任意に減らすことで、そのカゼイン原料に起因した歯切れの悪さや異味を低減することが可能であり、それでいてシューパフの容積に遜色がなく、もしくは少なくとも影響が少ない。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物においては、前記有機酸として、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩をフィチン酸に換算して0.05~4.0質量%含有することが好ましい。
また、上記シューパフ用油中水型乳化物においては、前記有機酸として、フマル酸及び/又はフマル酸塩をフマル酸に換算して0.05~4.0質量%含有することが好ましい。
また、上記シューパフ用油中水型乳化物においては、前記有機酸を、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.05~4.0質量%含有することが好ましい。
また、上記シューパフ用油中水型乳化物においては、水相のpHが5.0~9.0であることが好ましい。
また、上記シューパフ用油中水型乳化物においては、前記カゼイン原料を0.5~14質量%含有することが好ましい。
一方、本発明は、他に、上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物を含むシューパフ生地を提供するものである。
また、本発明は、更に、上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物を含むシューパフ生地が焼成されたシューパフを提供するものである。
本発明によれば、容積が大きく、食感が良好なシューパフが得られる、シューパフ用組成物及びシューパフ生地を提供することができる。また、そのシューパフ用組成物を利用して、容積が大きく、食感が良好なシューパフを提供することができる。
本発明は、シュー菓子の外皮を構成するシューパフに用いられる技術を提供するものである。ここで、シュー菓子とは、例えば、シュークリーム、エクレア、パリ・ブレスト等が挙げられる。
本発明によるシューパフ用水系組成物は、少なくともカゼイン原料と有機酸を含有し、カゼイン原料と有機酸が水に溶解、または分散された、水系組成物である。ここで、本明細書において「水系組成物」とは、水を連続相とする組成物で、水に相溶性のない油分を、典型的には60質量%を超えて含有しない組成物をいい、より典型的には50質量%を超えて含有しない組成物をいい、更に典型的には40質量%を超えて含有しない組成物をいうものとする。
本発明に用いるカゼイン原料としては、食用として認められているカゼイン原料であれば特に制限されず、例えば、乳に酸を添加あるいは発酵による乳酸の生成による酸沈殿によって得られる酸カゼインや、乳にレンネットを添加して沈殿させる方法で得られるレンネットカゼインや、上記酸カゼインをアルカリで中和して得られるカゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム等のカゼインの塩や、乳から脂肪、乳糖、ミネラル等の低分子成分を除いて得られる総合乳蛋白や、カゼインを含有する乳原料である全粉乳、脱脂粉乳等が挙げられる。これらの中から選ばれた1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。好ましくは酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインの塩、総合乳蛋白、より好ましくは酸カゼイン、カゼインの塩、最も好ましくはカゼインナトリウム、カゼインカリウムである。また、本発明に用いるカゼイン原料に含まれる蛋白質含量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
本発明によるシューパフ用水系組成物に含まれるカゼイン原料の含有量は、水系組成物の油分を除いた質量に対して、その下限が0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.8質量%以上であることが更に好ましく、2.2質量%以上であることが最も好ましく、その上限が40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることが更に好ましく、24質量%以下であることが最も好ましい。カゼイン原料の含有量が上記下限値の範囲未満では、そのシューパフ用水系組成物を使用してシューパフ生地を調製したときの、カゼインやカゼインの塩の存在量を十分に確保できなくなる場合がある。また、カゼイン原料の含有量が上記上限値の範囲を超えると、そのシューパフ用水系組成物中の、カゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、これを使用したシューパフ生地において、十分にカゼインやカゼインの塩を生地中に分散させることができずに、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
本発明に用いる有機酸としては、フィチン酸、フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カルシウム、フィチン酸マグネシウム、フィチン酸カリウム等のフィチン酸塩、フマル酸、フマル酸ナトリウム、フマル酸カルシウム、フマル酸マグネシウム、フマル酸カリウム等のフマル酸塩等が挙げられる。これらの中から選ばれた1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
本発明によるシューパフ用水系組成物に含まれる上記有機酸の含有量は、水系組成物の油分を除いた質量に対して、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して、その下限が0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが最も好ましく、その上限が27質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、9.0質量%以下であることが更に好ましく、8.0質量%以下であることが最も好ましい。また、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩を用いて、フマル酸及びフマル酸塩を用いない場合には、水系組成物の油分を除いた質量に対して、フィチン酸に換算して、その下限が0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが最も好ましく、その上限が27質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、9.0質量%以下であることが更に好ましく、8.0質量%以下であることが最も好ましい。また、フマル酸及び/又はフマル酸塩を用いて、フィチン酸及びフィチン酸塩を用いない場合には、水系組成物の油分を除いた質量に対して、フマル酸に換算して、その下限が0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが最も好ましく、その上限が27質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、9.0質量%以下であることが更に好ましく、8.0質量%以下であることが最も好ましい。上記有機酸の含有量が上記下限値の範囲未満では、そのシューパフ用水系組成物を使用してシューパフ生地を調製したときの、上記有機酸の存在量を十分に確保できなくなる場合がある。また、上記有機酸の含有量が上記上限値の範囲を超えると、そのシューパフ用水系組成物中の、カゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、これを使用したシューパフ生地において、十分にカゼインやカゼインの塩を生地中に分散させることができずに、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
本発明によるシューパフ用水系組成物は、そのpHが、その下限がpH5.0以上であることが好ましく、pH5.1以上であることがより好ましく、pH5.2以上であることが最も好ましく、その上限がpH9.0以下であることが好ましく、pH8.8以下であることがより好ましく、pH8.7以下であることが最も好ましい。シューパフ用水系組成物のpHの下限が上記範囲未満では、そのシューパフ用水系組成物中でカゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となったり、油分との乳化物を調製する場合にその調製が困難となったり、調製した乳化物の乳化状態が不安定となる場合がある。また、シューパフ用水系組成物のpHの上限が上記範囲を超えると、同様に、そのシューパフ用水系組成物中でカゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となったり、油分との乳化物を調製する場合にその調製が困難となったり、調製した乳化物の乳化状態が不安定となる場合がある。
なお、本発明によるシューパフ用水系組成物のpHは、例えば、市販のpHメーターで測定する等により、適宜当業者に周知の方法で測定することができる。pHの測定は、その精度を確保する観点からは、例えば25℃等、所定の温度環境下で行うことがより好ましい。
本発明によるシューパフ用水系組成物には、上記に説明した以外の有機酸や無機酸等をpH調整剤として含有させてもよい。例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、氷酢酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これにより、上記フィチン酸、フマル酸等の有機酸の含有量を所望の範囲に調整しつつ、シューパフ用水系組成物のpHを所望の範囲に調整することがより容易となる。pH調整剤として、より好ましくは炭酸ナトリウム、クエン酸等である。
本発明によるシューパフ用水系組成物には、本発明によって奏される効果を妨げない範囲で、適宜、乳化剤や、食塩、リン酸塩等の塩類や、カゼイン原料以外の乳性蛋白質、大豆蛋白質、卵白、小麦蛋白質等の蛋白質や、アミノ酸や、トランスグルタミナーゼ、プロテアーゼ等の酵素や、糖質、澱粉、加工澱粉、増粘多糖類、食物繊維、香料、色素、酸化防止剤、等の1種又は2種以上を含有させてもよい。また、上記した水系組成物の条件を満たす範囲で油脂を含んでもよく、適当な油脂や乳化剤の選択により、水を連続相とする水中油型の乳化組成物の形態をなしてもよい。
本発明によるシューパフ用水系組成物は、シューパフ生地を調製する際にその他のシューパフの原料とともに使用することができる。また、後述するシューパフ用油中水型乳化物のような油中水型乳化物を調製するための水系部として用いることもできる。好ましくは、油中水型乳化物の水系部としての使用である。
一方、本発明によるシューパフ用油中水型乳化物は、油脂を主な構成成分とし、油相に水相が分散してなる油中水型乳化物の形態をとるものである。また、少なくともカゼイン原料と有機酸を含有してなるものである。
油脂としては、食用として認められている油脂であれば特に制限されず、例えば、アマニ油、エゴマ油、くるみ油、サフラワー油、ぶどう油、大豆油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、なたね油、落花生油、オリーブ油、パーム油、やし油、牛脂、豚脂、鶏脂、羊脂、鯨油、魚油、乳脂、又はこれらの脱臭油、分別油、水素添加油、エステル交換油等の加工油脂等が挙げられる。これらの中から選ばれた1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。また、油脂は、菓子等の食品への添加用や練り込み用のマーガリン、ショートニング、ファストスプレッド等、所定の形態に調製されたものを用いてもよい。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物に含まれる油脂の含有量は、その下限が35質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが最も好ましく、その上限が90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、79質量%以下であることが最も好ましい。油脂の含有量が上記下限値の範囲未満では、油相を構成する油系原料の含有量を確保できずに、ひいては油中水型乳化物の状態が不安定となる場合がある。また、油脂の含有量が上記上限値の範囲を超えると、水相を構成する水系原料の含有量を確保できずに、ひいては主にその水相に溶解又は分散等する形態で含有されるカゼイン原料や有機酸の含有量が低くなるため、容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物に含まれる水の含有量は、その下限が3質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましく、14質量%以上であることが最も好ましく、その上限が65質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以下であることが最も好ましい。水の含有量が上記下限値の範囲未満では、水相を構成する水系原料の含有量を確保できずに、ひいては主にその水相に溶解又は分散等する形態で含有されるカゼイン原料や有機酸の含有量が低くなるため、容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。また、水の含有量が上記上限値の範囲を超えると、油相を構成する油系原料の含有量を確保できずに、ひいては油中水型乳化物の状態が不安定となる場合がある。
本発明に用いるカゼイン原料としては、上述したように、食用として認められているカゼイン原料であれば特に制限されず、例えば、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウム等のカゼインの塩、総合乳蛋白、カゼインを含有する乳原料である全粉乳、脱脂粉乳等が挙げられる。これらの中から選ばれた1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。好ましくは酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインの塩、総合乳蛋白、より好ましくは酸カゼイン、カゼインの塩、最も好ましくはカゼインナトリウム、カゼインカリウムである。また、本発明に用いるカゼイン原料に含まれる蛋白質含量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物に含まれるカゼイン原料の含有量は、その下限が0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが最も好ましく、その上限が14質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましく、6.5質量%以下であることが最も好ましい。カゼイン原料の含有量が上記下限値の範囲未満では、そのシューパフ用油中水型乳化物を使用してシューパフ生地を調製したときの、カゼインやカゼインの塩の存在量を十分に確保できなくなる場合がある。また、カゼイン原料の含有量が上記上限値の範囲を超えると、そのシューパフ用油中水型乳化物中の、カゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、これを使用したシューパフ生地において、十分にカゼインやカゼインの塩を生地中に分散させることができずに、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
本発明に用いる有機酸としては、上述したように、フィチン酸、フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カルシウム、フィチン酸マグネシウム、フィチン酸カリウム等のフィチン酸塩、フマル酸、フマル酸ナトリウム、フマル酸カルシウム、フマル酸マグネシウム、フマル酸カリウム等のフマル酸塩等が挙げられる。これらの中から選ばれた1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物に含まれる上記有機酸の含有量は、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して、その下限が0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることが更に好ましく、0.15質量%以上であることが最も好ましく、その上限が4.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが更に好ましく、1.5質量%以下であることが最も好ましい。また、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩を用いて、フマル酸及びフマル酸塩を用いない場合には、フィチン酸に換算して、その下限が0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることが更に好ましく、0.15質量%以上であることが最も好ましく、その上限が4.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが更に好ましく、1.5質量%以下であることが最も好ましい。また、フマル酸及び/又はフマル酸塩を用いて、フィチン酸及びフィチン酸塩を用いない場合には、フマル酸に換算して、その下限が0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.13質量%以上であることが更に好ましく、0.15質量%以上であることが最も好ましく、その上限が4.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることが更に好ましく、1.5質量%以下であることが最も好ましい。上記有機酸の含有量が上記下限値の範囲未満では、そのシューパフ用油中水型乳化物を使用してシューパフ生地を調製したときの、上記有機酸の存在量を十分に確保できなくなる場合がある。また、上記有機酸の含有量が上記上限値の範囲を超えると、そのシューパフ用油中水型乳化物中の、カゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、これを使用したシューパフ生地において、十分にカゼインやカゼインの塩を生地中に分散させることができずに、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物を構成する水相は、そのpHが、その下限がpH5.0以上であることが好ましく、pH5.1以上であることがより好ましく、pH5.2以上であることが最も好ましく、その上限がpH9.0以下であることが好ましく、pH8.8以下であることがより好ましく、pH8.7以下であることが最も好ましい。水相のpHの下限が上記範囲未満では、そのシューパフ用油中水型乳化物中でカゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となったり、油中水型乳化物の調製が困難となったり、油中水型乳化物の乳化状態が不安定となる場合がある。また、水相のpHの上限が上記範囲を超えると、同様に、そのシューパフ用油中水型乳化物中でカゼインやカゼインの塩の分散状態が悪くなり、ひいては容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となったり、油中水型乳化物の調製が困難となったり、油中水型乳化物の乳化状態が不安定となる場合がある。
なお、油中水型乳化物を構成する水相のpHは、例えば、油相と混合、乳化する前の水相、または油中水型乳化組成物を加熱溶解し、遠心分離を行うなどして得た水相を、市販のpHメーターで測定する等により、適宜当業者に周知の方法で測定することができる。pHの測定は、その精度を確保する観点からは、例えば25℃等、所定の温度環境下で行うことがより好ましい。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物には、上記に説明した以外の有機酸や無機酸等をpH調整剤として含有させてもよい。例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、氷酢酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これにより、上記フィチン酸、フマル酸等の有機酸の含有量を所望の範囲に調整しつつ、シューパフ用油中水型乳化物の水相のpHを所望の範囲に調整することがより容易となる。pH調整剤として、より好ましくは炭酸ナトリウム、クエン酸等である。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物には、乳化や油脂結晶調整等の目的のために、乳化剤等を含有させてもよい。その乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄等の合成乳化剤でない乳化剤を用いることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の乳化剤を用いることができる。これにより、シューパフ用油中水型乳化物の乳化状態の安定化がより容易となる。乳化剤として、より好ましくはレシチン、グリセリン脂肪酸エステル等である。
更に、本発明によるシューパフ用油中水型乳化物には、本発明によって奏される効果を妨げない範囲で、適宜、食塩、リン酸塩等の塩類や、カゼイン原料以外の乳性蛋白質、大豆蛋白質、卵白、小麦蛋白質等の蛋白質や、アミノ酸や、トランスグルタミナーゼ、プロテアーゼ等の酵素や、糖質、澱粉、加工澱粉、増粘多糖類、食物繊維、香料、色素、酸化防止剤、等の1種又は2種以上を含有させてもよい。
本発明によるシューパフ用油中水型乳化物は、例えば、次の手順で調製することができる。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体的手段によって、何ら制限を受けるものではない。
(シューパフ用油中水型乳化物)
油脂を50~70℃程度に加温して溶融させて、その他の油系原料(油に相溶性のある原料)を添加し、溶解あるいは分散させ、主に油脂で構成された油系組成物とする。また、50~90℃程度に加温した水にカゼインナトリウム等のカゼイン原料、食塩等の水系原料(水に相溶性のある原料)を添加し、溶解あるいは分散させ、主に水分で構成された水系組成物とする。この水系組成物は上記シューパフ用水系組成物であってもよい。つづいて、油系組成物を撹拌しながら、水系組成物を添加して調合液とし、50~70℃程度から5~30℃程度へと冷却しながら練りあわせを行い、可塑性油中水型乳化物を得る。油脂の選択によっては、必ずしも可塑性のある油中水型乳化物である必要はなく、例えば、ペースト状、流動状等の形態の油中水型乳化物でもよい。
一方、本発明により提供されるシューパフ生地やシューパフは、上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物を用いる以外は、当業者に周知のシューパフの調製方法により、適宜に調製すればよい。具体的には、例えば、次の手順で調製することができる。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体的手段によって、何ら制限を受けるものではない。
(シューパフ生地・シューパフ)
上記シューパフ用油中水型乳化物、ないしは上記シューパフ用水系組成物に適当な油脂を加えてなる組成物を、水とともに加熱し、これに、小麦粉等の澱粉質原料を含む粉類を添加して混合する。これにより、澱粉質原料の澱粉のα化が促される。次に、ミキシングしながら、全卵を数回に分けて添加し、生地が均一になるまで混合する。必要に応じて膨張剤を加え、残りの全卵で生地の硬さを調整する。得られたシューパフ生地を必要量ずつ絞り、オーブンなどにより焼成して、シューパフを得る。
シューパフ生地の配合は、典型的には、小麦粉等の澱粉質原料100質量部に対して、上記シューパフ用油中水型乳化物、ないしは上記シューパフ用水系組成物に適当な油脂を加えてなる組成物を70~150質量部、水を50~200質量部、全卵を150~300質量部から構成される配合が好ましい。また、必要に応じて、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、ベーキングパウダー等の膨張剤を加えることができる。その他、食感改良のため、小麦粉の代わりにあるいはその一部として、米粉、ライ麦粉、ジャガイモの乾燥粉末や、コーン澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉等の澱粉や、それらの加工澱粉などを使用してもよい。もしくは市販のミックス粉などを使用してもよい。また、全卵の代わりにあるいはその一部として、卵黄、卵白等を使用してもよい。
調製されたシューパフ生地における、上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物に由来する、フィチン酸、フィチン酸塩、フマル酸、及びフマル酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸の配合割合としては、小麦粉等の澱粉質原料100質量部あたり、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して、その下限は0.07質量部以上であることが好ましく、0.14質量部以上であることがより好ましく、0.18質量部以上であることが更に好ましく、0.21質量部以上であることが最も好ましく、その上限は2.8質量部以下であることが好ましく、2.1質量部以下であることがより好ましく、1.4質量部以下であることが最も好ましい。また、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩を用いて、フマル酸及びフマル酸塩を用いない場合には、フィチン酸に換算して、その下限は0.07質量部以上であることが好ましく、0.14質量部以上であることがより好ましく、0.18質量部以上であることが更に好ましく、0.21質量部以上であることが最も好ましく、その上限は2.8質量部以下であることが好ましく、2.1質量部以下であることがより好ましく、1.4質量部以下であることが最も好ましい。また、フマル酸及び/又はフマル酸塩を用いて、フィチン酸及びフィチン酸塩を用いない場合には、フマル酸に換算して、その下限は0.07質量部以上であることが好ましく、0.14質量部以上であることがより好ましく、0.18質量部以上であることが更に好ましく、0.21質量部以上であることが最も好ましく、その上限は2.8質量部以下であることが好ましく、2.1質量部以下であることがより好ましく、1.4質量部以下であることが最も好ましい。上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物を使用して調製されたシューパフ生地における、上記有機酸の配合割合が上記範囲を外れると、容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
調製されたシューパフ生地における、上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物に由来する、カゼイン原料の配合割合としては、小麦粉等の澱粉質原料100質量部あたり、その下限は0.7質量部以上であることが好ましく、1.4質量部以上であることがより好ましく、4.2質量部以上であることが更に好ましく、その上限は9.8重量部以下であることが好ましく、9.1重量部以下であることがより好ましい。上記シューパフ用水系組成物、ないしは上記シューパフ用油中水型乳化物を使用して調製されたシューパフ生地における、上記カゼイン原料の配合割合が上記範囲を外れると、容積の大きなシューパフを得ることができるという本発明により奏される作用効果が不十分となる場合がある。
更に、本発明によるシューパフ生地あるいはシューパフには、本発明によって奏される効果を妨げない範囲で、適宜、食塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、炭酸塩等の塩類、カゼイン原料以外の乳性蛋白質、大豆蛋白質、卵白、小麦蛋白質等の蛋白質、アミノ酸、トランスグルタミナーゼ、プロテアーゼ等の酵素、糖質、澱粉、加工澱粉、増粘多糖類、食物繊維、香料、色素、酸化防止剤、等の1種又は2種以上を含有させてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
なお、以下に示す試験例においては、シューパフは、シュー用の油脂として各調製例のシューパフ用油中水型乳化物を使用して、表1に示される配合により、以下のとおり調製した。
Figure 0007287822000001
表1の配合に従い、水、食塩、シューパフ用油中水型乳化物を合わせて煮沸した後、薄力粉を加え、ミキサーで撹拌し、全卵を2~3回に分けて加え、更に撹拌した後、炭酸水素アンモニウムを加えて撹拌し、シューパフ生地を得た。この生地を約25gずつ天板に絞り出し、200℃前後で焼成した。
[試験例1]
表2の配合に従い、油系組成物と水系組成物とを調製し、それらを混合してシューパフ用油中水型乳化物を調製した。なお、別途、水系組成物のpHを25℃で測定した。また、表2の配合中に用いたカゼインNaの蛋白質含量は91質量%であった。
表2の配合に従い調製された、調製例1~調製例12のシューパフ用油中水型乳化物を使用し、シューパフを調製してその容積を体積測定器(商品名「Volscan profiler 600」、Stable Micro Systems製)で測定した。
水系組成物のpHとシューパフの容積の結果を、表2の下段に示す。
Figure 0007287822000002
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)カゼインナトリウムの含有量が3.5質量%であり、pHをそれぞれ5.22、6.22、5.77、5.00に調整した、調製例1~4のシューパフ用油中水型乳化物では、得られたシューパフの容積がそれぞれ222、227、234、236mLであったのに対して、フィチン酸を0.05、0.15、0.4、2.0質量%配合するとともにその他のpH調整剤によりpHをそれぞれ5.13、5.20、5.01、5.27に調整した、調製例5~8のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積としてそれぞれ240、292、265、262mLが得られた。
(2)カゼインナトリウムの含有量が3.5質量%であり、pHをそれぞれ5.22、6.22、5.77、5.00に調整した、調製例1~4のシューパフ用油中水型乳化物では、得られたシューパフの容積がそれぞれ222、227、234、236mLであったのに対して、フマル酸を0.05、2.0質量%配合するとともにその他のpH調整剤によりpHをそれぞれ5.25、5.47に調整した、調製例9~10のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積としてそれぞれ245、250mLが得られた。
(3)カゼインナトリウムの含有量が3.5質量%であり、フィチン酸を0.10質量%、フマル酸を0.03質量%、これらを併用して配合するとともにその他のpH調整剤によりpHを5.18に調整した、調製例11のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積として273mLが得られた。
(4)カゼインナトリウムの含有量が3.5質量%であり、フィチン酸を0.15質量%配合するとともにその他のpH調整剤によりpHを8.7に調整した、調製例12のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積として285mLが得られた。試験例12の水系組成物は増粘し、これ以上pHを上げることは困難であった。
以上の結果から、フィチン酸又はフマル酸は、その含有量が0.05~2.0質量%の範囲で、フィチン酸及びフマル酸を含有しないものよりも、シューパフの容積を増加させることができることが明らかとなった。また、フィチン酸及びフマル酸の併用でも同様の効果が認められた。更に、シューパフ用油中水型乳化物の水相のpHとしては、pH5.0~8.7の範囲で、同様に、シューパフの容積を増加させる効果が得られることが明らかとなった。
[試験例2]
表3の配合に従い、調製例13~調製例17のシューパフ用油中水型乳化物を調製し、その際の水系組成物のpHと、得られたシューパフの容積を、試験例1と同様にして測定した。なお、表3の配合中に用いたカゼインNaの蛋白質含量は91質量%であった。結果を表3の下段に示す。
Figure 0007287822000003
その結果、以下のことが明らかとなった。
(1)カゼインナトリウムの含有量が0.5質量%である調製例13のシューパフ用油中水型乳化物では、得られたシューパフの容積が179mLであったのに対して、更にフィチン酸を0.15質量%配合した調製例15のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積として234mLが得られた。
(2)カゼインナトリウムの含有量が0.5質量%である調製例13のシューパフ用油中水型乳化物では、得られたシューパフの容積が179mLであったのに対して、更にフマル酸を0.05質量%配合した調製例16のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積として227mLが得られた。
(3)カゼインナトリウムの含有量が6.5質量%である調製例14のシューパフ用油中水型乳化物では、得られたシューパフの容積が242mLであったのに対して、更にフィチン酸を0.3質量%配合した調製例17のシューパフ用油中水型乳化物では、シューパフの容積として265mLが得られた。
以上の結果から、カゼインナトリウムの含有量が0.5~6.5質量%の範囲で、フィチン酸又はフマル酸を含有するものほうが、フィチン酸及びフマル酸を含有しないものよりも、シューパフの容積を増加させることができることが明らかとなった。
[試験例3]
試験例1で調製した調製例8と、試験例2で調製した調製例14のシューパフ用油中水型乳化物を使用して得られたシューパフについて、食感に関する官能評価を行った。具体的には、得られたシューパフを8名のパネルが食べて、その食感を評価してもらい、2サンプルの比較で歯切れの良いほうを選択してもらった。表4にはその結果を、調製例8、14のそれぞれの配合と、それらの試験例1、2における結果ともに示す。
Figure 0007287822000004
その結果、カゼインナトリウムの含有量が6.5質量%である調製例14のシューパフ用油中水型乳化物を使用すると、シューパフの容積として242mLが得られたが、食感として歯切れが悪くなった。これに対し、カゼインナトリウムの含有量が3.5質量%であり、更にフィチン酸を2質量%配合した調製例8のシューパフ用油中水型乳化物を使用すると、シューパフの容積として262mLが得られ、なお且つ、歯切れがよく食感も良好となった。

Claims (16)

  1. フィチン酸、フィチン酸塩、フマル酸、及びフマル酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸と、カゼイン及びカゼインの塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むカゼイン原料とを含有するシューパフ用水系組成物であって、前記シューパフ用水系組成物に由来する前記有機酸を、調製されたシューパフ生地における澱粉質原料100質量部あたり、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.07質量部以上2.8質量部以下となるようにし、前記シューパフ用水系組成物に由来する前記カゼイン原料を、前記調製されたシューパフ生地における澱粉質原料100質量部あたり、0.7質量部以上9.8質量部以下となるようにするためのものである、該シューパフ用水系組成物
  2. 前記有機酸として、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩をフィチン酸に換算して0.05~27質量%含有する請求項1に記載のシューパフ用水系組成物。
  3. 前記有機酸として、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して、フマル酸及び/又はフマル酸塩をフマル酸に換算して0.05~27質量%含有する請求項1に記載のシューパフ用水系組成物。
  4. 前記有機酸を、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.05~27質量%含有する請求項1に記載のシューパフ用水系組成物。
  5. pHが5.0~9.0である請求項1~4のいずれか1つに記載のシューパフ用水系組成物。
  6. 前記カゼイン原料を、前記水系組成物の油分を除いた質量に対して0.5~40質量%含有する請求項1~5のいずれか1つに記載のシューパフ用水系組成物。
  7. フィチン酸、フィチン酸塩、フマル酸、及びフマル酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸と、カゼイン及びカゼインの塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むカゼイン原料とを含有するシューパフ用油中水型乳化物であって、前記シューパフ用油中水型乳化物に由来する前記有機酸を、調製されたシューパフ生地における澱粉質原料100質量部あたり、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.07質量部以上2.8質量部以下となるようにし、前記シューパフ用油中水型乳化物に由来する前記カゼイン原料を、前記調製されたシューパフ生地における澱粉質原料100質量部あたり、0.7質量部以上9.8質量部以下となるようにするためのものである、該シューパフ用油中水型乳化物
  8. 前記有機酸として、フィチン酸及び/又はフィチン酸塩をフィチン酸に換算して0.05~4.0質量%含有する請求項7に記載のシューパフ用油中水型乳化物。
  9. 前記有機酸として、フマル酸及び/又はフマル酸塩をフマル酸に換算して0.05~4.0質量%含有する請求項7に記載のシューパフ用油中水型乳化物。
  10. 前記有機酸を、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.05~4.0質量%含有する請求項7に記載のシューパフ用油中水型乳化物。
  11. 水相のpHが5.0~9.0である請求項7~10のいずれか1つに記載のシューパフ用油中水型乳化物。
  12. 前記カゼイン原料を0.5~14質量%含有する請求項7~11のいずれか1つに記載のシューパフ用油中水型乳化物。
  13. シューパフ生地の製造方法であって、澱粉質原料100質量部あたり、フィチン酸、フィチン酸塩、フマル酸、及びフマル酸塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸を、フィチン酸及びフマル酸の合計量に換算して0.07質量部以上2.8質量部以下となるよう、前記シューパフ生地中に添加し、カゼイン及びカゼインの塩からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むカゼイン原料を0.7質量部以上9.8質量部以下となるよう、前記シューパフ生地中に添加する、シューパフ生地の製造方法。
  14. 前記有機酸及び前記カゼイン原料は、該有機酸と該カゼイン原料とを含有するシューパフ用水系組成物の形態で前記シューパフ生地中に添加する、請求項13記載のシューパフ生地の製造方法。
  15. 前記有機酸及び前記カゼイン原料は、該有機酸と該カゼイン原料とを含有するシューパフ用油中水型乳化物の形態で前記シューパフ生地中に添加する、請求項13記載のシューパフ生地の製造方法。
  16. 請求項13~15のいずれか1つに記載の製造方法によりシューパフ生地を得、これを焼成する、シューパフの製造方法。
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