本発明の一実施形態を図1から図13によって説明する。本実施形態では、貯蔵庫として冷温蔵装置1を例示する。本実施形態の冷温蔵装置1は、図1に示すように、カート10と、カート10が出し入れ可能に格納されるステーション30と、を備える。カート10は断熱室11B(貯蔵室)を構成する断熱箱11A(箱体)を有するカート本体11と、トレイ40を収納するフレームカート20と、を備えている。断熱箱11Aは前後両面が開口されており、断熱箱11Aには、前後の開口をそれぞれ開閉する観音開き式の断熱扉12が装着されている。なお、図1では前側の開口の右側の開閉扉については省略して示している。また、断熱箱11Aの底面にはキャスタ13が設けられている。
フレームカート20はキャスタ22を設けた底板21の左右の側縁から金属製のフレーム23が立ち上げられた構造である。フレームカート20はカート本体11内に前面側から出し入れ可能となっている。フレームカート20の左右方向の略中央部分には前後方向全域に亘って断熱製の仕切壁24が設けられている。仕切壁24は複数の単位仕切壁24Aを積み上げた形状である。トレイ40は前後両面から上下の単位仕切壁24Aの間を貫通しつつ複数段に亘って収納される。
図2に示すように、フレームカート20がカート本体11内に収納されると仕切壁24によって断熱室11Bが左右に仕切られることにより、左側にトレイ40上の温食(貯蔵物)を収容することが可能な冷温蔵室25H(貯蔵室)が形成され、右側にトレイ40上の冷食を収容することが可能な冷蔵室25C(貯蔵室)が形成される。図3に示すように、カート本体11の内側には左側の断熱壁16L(断熱箱11Aを構成する壁部)から間隔をおいて左側インナーパネル14Aが設けられており、左側の断熱壁16Lと左側インナーパネル14Aとによって第1の空気循環通路41が形成されている。また、カート本体11の内側には右側の断熱壁16Rから間隔をおいて右側インナーパネル14Dが設けられており、右側の断熱壁16Rと右側インナーパネル14Dとによって第2の空気循環通路42が形成されている。左側インナーパネル14A及び右側インナーパネル14Dにはカート本体11内に空気を流入させるための複数の吹出孔14B(図1参照)が形成されている。
図1に示すように、断熱箱11Aの天井15には複数の開口17A~17Dが形成されている。開口17Aは、図9に示すように、第1の空気循環通路41の上方に形成されており、開口17Bは冷温蔵室25Hの上方に形成されている。また、開口17Cは冷蔵室25Cの上方に形成されており、開口17Dは第2の空気循環通路42の上方に形成されている。
図1に示すように、ステーション30は正面に開口30Eを有する略箱形をなしている。カート10は、開口30Eを通じて、ステーション30内部に出し入れ可能となっている。ステーション30の上部には機械室36が区画形成されている。機械室36には冷却装置37を構成する圧縮機38や凝縮器(図示せず)などが収容されている。図3に示すように、ステーション30における機械室36の下方には第1の熱交換室31と第2の熱交換室32とが左右に並んで区画形成されている。第1の熱交換室31は冷温蔵室25Hの上方に配されている。第1の熱交換室31には第1の冷却器33A(蒸発器、冷却手段)、ヒータ34(加熱手段)、及び第1の循環ファン35Aが収容されている。第1の冷却器33Aは冷却装置37の一部を構成するものである。ヒータ34は、熱交換室31内の空気を加熱することが可能となっており、冷却器33Aは、熱交換室31内の空気を冷却することが可能となっている。
第2の熱交換室32は冷蔵室25Cの上方に配されている。第2の熱交換室32には第2の冷却器33B(蒸発器、冷却手段)及び第2の循環ファン35Bが収容されている。第2の冷却器33Bは冷却装置37の一部を構成するものであり、熱交換室32内の空気を冷却することが可能となっている。第1の冷却器33A及び第2の冷却器33Bは、冷媒管や開閉弁(図示せず)を介して圧縮機38や凝縮器と並列接続されている。制御部80(図11参照、後述)は開閉弁を切り替えることにより、冷却器33A、33Bに対する冷媒の供給を制御することができる。これにより、制御部80は、第1の冷却器33Aと第2の冷却器33Bとが両方作動している状態、第1の冷却器33Aのみが作動している状態、及び、第2の冷却器33Bのみが作動している状態を切り替えることができる。
また、熱交換室31には、温度センサ61Hが配され、熱交換室32には、温度センサ61Cが配されている。温度センサ61H(ステーション側温度センサ)は、循環ファン35Aの吸入側に隣接する形で配され、循環ファン35Aによって吸入された冷温蔵室25Hの空気(冷温蔵室25Hから熱交換室31に向かう空気)の温度を検出することが可能となっている。温度センサ61C(ステーション側温度センサ)は、循環ファン35Bの吸入側に隣接する形で配され、循環ファン35Bによって吸入された冷蔵室25Cの空気(冷蔵室25Cから熱交換室32に向かう空気)の温度を検出することが可能となっている。また、熱交換室31には、循環ファン35Aの吐出側に隣接する形で、温度センサ62Hが設けられている。この温度センサ62Hは、循環ファン35Aによって冷温蔵室25Hに送られる空気の温度を検出することが可能となっている。なお、制御部80は温度センサ62Hの検知温度に基づいてヒータ34を停止することで、高温の空気が冷温蔵室25Hに向かう事態を抑制し、冷温蔵室25Hの食器等を保護することができる。なお、温度センサ61H,61C,62H,63H,63Cとしては、例えばサーミスタを用いることができるが、これに限定されない。
図3に示すように、熱交換室31,32の下方には、4本のダクト52,53,54,55と、ダクト52,53,54,55を伸縮させる伸縮装置50と、が配されている。熱交換室31,32と、断熱室11B(冷温蔵室25H及び冷蔵室25C)とは、ダクト52~55を介して連通される構成となっている。伸縮装置50は、図7及び図9に示すように、ダクト52,53,54,55を保持するダクト保持部材51と、ダクト保持部材51を上側に引っ張るバネ部材56(コイルばね)と、回動軸57Aと、回動軸57Aに取り付けられているカム板57C、カム板57Cにおける先端部(回動軸57Aと反対側の端部)に回動可能に取り付けられたローラ57Dと、回動軸57Aの前端部に設けられた歯車57Eと、歯車57Eと噛み合う歯車57Fと、歯車57Fを回動させるモータ57Gと、を備える。
図8に示すようにダクト保持部材51は上方に開口する箱状をなしており、その4隅が4つのバネ部材56(図3参照)によって吊り下げられている。なお、バネ部材56の上端は、例えば、熱交換室31,32を構成する底壁に取り付けられている。また、図2ではバネ部材56が2つしか示されていないが、バネ部材56は合計4つ設けられている。
図8に示すように、ダクト保持部材51において、断熱箱11Aの天井15に形成されている各開口17A,17B,17C,17Dに対応する位置には各開口51A,51B,51C,51Dがそれぞれ形成されている。図9に示すように、ダクト52~55は、熱交換室31(又は熱交換室32)から下方(断熱室11B側)に延びている。ダクト52~55は、ゴム材で形成された蛇腹状の部材であり、上下方向に伸縮可能となっている。ダクト52はフランジ52Aと、フランジ52Bとを有している。上側のフランジ52Aは第1の熱交換室31の底壁に形成されている通口を囲むようにしてその底壁に固定されている。
下側のフランジ52Bは二重に形成されており、二重に形成されているフランジ52Bの間にダクト保持部材51の開口51Aの周辺縁部が差し込まれることによって、ダクト52は、ダクト保持部材51に固定されている。ダクト52の下端部52Cはラッパ状に広がっており、ダクト保持部材51よりも下方に配されている。なお、ダクト53~55の構成は基本的にはダクト52と同様である。ダクト53~55は、その上端において対応する熱交換室の底壁に固定され、下側のフランジにおいて、対応する開口51B~51Dに接続されている。また、図8に示すように、ダクト52,55は、互いに同じ形状をなし、ダクト53,54は、互いに同じ形状をなしている。なお、ダクト52,55(開口51A,51D)は、ダクト53,54(開口51B,51C)に比べて、前後方向の長さが大きく設定され、左右方向の長さが小さく設定されている。
回動軸57Aは、図7に示すように、ステーション30の前後方向に沿って延びるパイプによって構成され、カム板57Cは回動軸57Aの軸方向に離間して二つ設けられている。また、ダクト保持部材51の前側及び後側の各壁部には、図8に示すように、上方に開口された切欠部51Eが形成されている。ダクト保持部材51が上昇位置にある状態(図9の状態)では、回動軸57Aは、切欠部51Eに嵌合されている。また、図2及び図6に示すように、ステーション30は前面の一部を構成するパネル部材30Aと、パネル部材30Aの後方に配されるパネル部材30Bと、を備える。図6に示すように、回動軸57Aの前端は、パネル部材30Bに対して回動可能に固定されており、モータ57Gは、パネル部材30Bに対して固定されている。
図8に示すように、ダクト保持部材51の底面において幅方向における中央位置且つ前後両端部には、ローラ57Dが当接する被当接板58が設けられ、各被当接板58の正面視における左側縁には、ストッパ板59が立ち上がる形で形成されている。図9に示す状態から、モータ57Gが回動軸57Aを時計回りに回動させるとカム板57Cが回動し、ローラ57Dが、ダクト保持部材51に設けられた被当接板58を押し下げることで、図10に示すようにダクト保持部材51が押し下げられる。
ダクト保持部材51が押し下げられるとダクト52~55がカート10の断熱室11B側に伸び、各ダクト52~55の下端部が断熱箱11Aの天井15の開口17A~17Dを囲むようにして天井15に当接する。これにより、ダクト52によって第1の熱交換室31と第1の空気循環通路41とが接続(連通)され、ダクト53によって第1の熱交換室31と冷温蔵室25Hとが接続(連通)される。また、ダクト54によって第2の熱交換室32と冷蔵室25Cとが接続(連通)され、ダクト55によって第2の熱交換室32と第2の空気循環通路42とが接続(連通)される。
また、図10に示す状態からモータ57Gが回動軸57Aを反時計回りに回動させるとローラ57Dによる被当接板58の押圧が解除され、バネ部材56が弾性復帰することで、ダクト保持部材51が上昇する。これにより、ダクト52~55が縮むことで、各ダクト52~55の下端が天井15から離間する。つまり、伸縮装置50は、ダクト52~55における断熱室11B側の端部(下端部)を断熱室11B(冷温蔵室25H及び冷蔵室25C)から遠い側(上側)に変位させることでダクト52~55と断熱室11Bとの接続を解除する解除装置の一例である。このように、本実施形態では、伸縮装置50(より詳しくはモータ57G)を動作させることで、ダクト52~55を伸縮させることができ、断熱室11Bに対するダクト52~55の接続及び非接続を切り替えることができる。これにより、カート10に対してステーション30を出し入れする際に、ダクト52~55とカート10とが干渉する事態を抑制することができる。
カート10(より詳しくは断熱室11B)にダクト52,53が接続されている状態で第1の循環ファン35Aが回転すると、冷温蔵室25H内の空気がダクト53から第1の熱交換室31に吸い込まれる。第1の熱交換室31に吸い込まれた空気は、第1の冷却器33Aによって冷却され(又はヒータ34によって加熱され)、ダクト52から第1の空気循環通路41に送り込まれる。第1の空気循環通路41に送り込まれた空気は左側インナーパネル14Aに形成されている複数の吹出孔14B(図1参照)から冷温蔵室25Hに流入する。つまり、循環ファン35Aは、ダクト52,53を介して、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間で空気を循環させることが可能となっている。
また、カート10(より詳しくは断熱室11B)にダクト54,55が接続されている状態で第2の循環ファン35Bが回転すると、冷蔵室25C内の空気がダクト54から第2の熱交換室32に吸い込まれる。第2の熱交換室32に吸い込まれた空気は第2の冷却器33Bによって冷却され、ダクト55から第2の空気循環通路42に送り込まれる。第2の空気循環通路42に送り込まれた空気は右側インナーパネル14Dに形成されている複数の吹出孔(図示せず)から冷蔵室25Cに流入する。つまり、循環ファン35Bは、ダクト54,55を介して、冷蔵室25Cと熱交換室32との間で空気を循環させることが可能となっている。
また、カート10は、図3に示すように、冷温蔵室25Hの温度を検出することが可能な温度センサ63H(カート側温度センサ)と、冷蔵室25Cの温度を検出することが可能な温度センサ63C(カート側温度センサ)と、を備える。温度センサ63Hは、第1の空気循環通路41の下部に配されている。温度センサ63Hには配線64Hが接続されている。配線64Hは、空気循環通路41内を通って温度センサ63Hから上方に延びた後、断熱箱11Aの天井15内を通って断熱箱11Aの右側に延び、その延設端部において、断熱箱11Aの外面に設けられたコネクタ65(図5参照)に接続されている。図3に示すように、温度センサ63Cは、第2の空気循環通路42の下部に配されている。温度センサ63Cには配線64Cが接続されている。配線64Cは、空気循環通路42内を通って温度センサ63Cから上方に延びた後、その延設端部において、コネクタ65に接続されている。
図1に示すように、冷温蔵装置1は、カート10とステーション30とを電気的に接続する接続ケーブル70を備える。接続ケーブル70は、図5に示すように、配線71と、配線71におけるカート10側の端部に設けられたコネクタ72と、配線71におけるステーション30側の端部に設けられたコネクタ73と、を備える。図4及び図5に示すように、コネクタ72は、コネクタ65と嵌合される。また、パネル部材30Aの右下部分は切欠部30Dとされ、切欠部30Dに対応する箇所には、コネクタ76が配されている。つまり、コネクタ76は、ステーション30の外面に設けられている。コネクタ73及びコネクタ76は、互いに嵌合されている。また、配線71は、ステーション30の開口30Eを構成するパネル部材30Fに設けられたクリップ30Gによって保持されている。
また、図6に示すように、パネル部材30Aの裏側(パネル部材30Bの前側)には、電装箱75が配されている。コネクタ76は、パネル部材30Bの前面に配された配線77を介して、電装箱75と接続されている。また、電装箱75は、機械室36に配された電装箱78と電気的に接続されている。
(冷温蔵装置の電気的構成)
次に、冷温蔵装置1の電気的構成について説明する。図11に示すように、冷温蔵装置1は、制御部80を備える。制御部80には、タッチパネル74、温度センサ61H,61C,62H,63H,63C、モータ57G、循環ファン35A,35B、ヒータ34、冷却装置37(より具体的には圧縮機38や開閉弁)、計時部62、記憶部63が電気的に接続されている。
制御部80は、例えばCPUを主体に構成され、記憶部63は、例えばROMやRAMなどによって構成されている。制御部80は、記憶部63に記憶されたプログラムを実行することで、制御部80に接続された各機器(タッチパネル74、モータ57G、循環ファン35A,35B、ヒータ34、冷却装置37(ひいては冷却器33A,33B))の動作を制御することが可能となっている。なお、制御部80、計時部62、記憶部63は、例えば、電装箱75及び電装箱78に収容された各機器(回路基板等)によって構成されている。上述したように、温度センサ63H,63Cは、互いに嵌合された一対のコネクタ65,72や一対のコネクタ73,76を介して、電装箱75と電気的に接続されている。つまり、制御部80と温度センサ63H,63Cは、一対のコネクタ65,72や一対のコネクタ73,76を介して電気的に接続されている。
また、図6に示すように、パネル部材30Aの裏側(パネル部材30Bの前側)には、タッチパネル74(より詳しくはタッチパネル付き液晶パネル)が配されている。タッチパネル74は、図2に示すように、ステーション30の前面に露出された表示面74Aを有しており、表示面74Aに画像を表示する表示部としての機能と使用者が操作可能な操作部としての機能とを備える。使用者は、タッチパネル74に表示されるスイッチを操作することで、冷温蔵装置1の運転に関する操作や各種設定(例えば、調理完了時刻や目標温度などの入力)、及び運転履歴の確認などを行うことができる。計時部62は、現在時刻を計時するものとされ、制御部80は、計時部62の現在時刻に基づいて、各機器の制御を行うことが可能となっている。
本実施形態では、使用者は、カート10がステーション30から取り出された状態で、温食及び冷食が配置されたトレイ40を冷蔵室25C及び冷温蔵室25Hに亘って収納する。次に、使用者は、カート10をステーション30に格納し、接続ケーブル70をコネクタ65及びコネクタ76の各々に接続する。これにより、温度センサ63H,63Cが制御部80と電気的に接続される。次に、使用者は、タッチパネル74を操作することで、運転コースを選択する。その後、制御部80は、モータ57Gを動作させることで、縮んだ状態にあるダクト52~55を伸ばし、断熱室11Bに対して接続する。次に、制御部80は、選択された運転コースに基づいて、温度センサ61H,61Cによる検出温度が予め設定された設定温度となるように、各機器(ヒータ34、冷却装置37、循環ファン35A及び循環ファン35Bなど)の制御を行う。運転コースとしては、例えば、予冷運転、チルド運転、加熱運転等を例示することができる。なお、制御部80は、冷却装置37が備える開閉弁の開閉切替や、圧縮機38のオンオフ切替を行うことで、冷却器33A,33Bの作動又は非作動を制御する。
チルド運転とは、冷蔵室25C及び冷温蔵室25Hをチルド冷蔵する運転であり、制御部80は、冷却器33A,33B、循環ファン35A及び循環ファン35Bを動作させる。加熱運転とは、冷蔵室25Cを保冷し、冷温蔵室25Hを加熱する運転であり、制御部80は、冷却器33Aの動作を停止させ、ヒータ34、冷却器33B、循環ファン35A及び循環ファン35Bを動作させる。また、予冷運転とは、加熱運転後、次の食事を入れる前に空の状態の断熱室11B内を冷やすための運転であり、制御部80は、冷却器33A,33B、循環ファン35A及び循環ファン35Bを動作させる。
ところで、トレイ40上に設置された設置物(例えば食札や調味料が入った袋等)によって、熱交換室31,32と断熱室11Bの間の空気循環路(例えば吹出孔14B)が部分的に塞がれることによって、熱交換室31,32と断熱室11Bとの間の空気の循環が十分に行われない事態が懸念される。そこで、制御部80は、温度センサ63H(又は温度センサ63C)の検出温度に基づいて、熱交換室31,32と断熱室11Bの間の空気の循環が正常に行われているか否かを判定する判定処理を実行する。このような判定処理は、各運転コースにおいて、例えば、温度センサ61H,61Cによる検出温度が予め設定された設定温度になった時点で行われる。ここでは、判定処理として、加熱運転に伴って実行され、制御部80が、温度センサ63Hの検出温度に基づいて、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の空気の循環が正常に行われているか否かを判定するものを例示する。
図12に示すように、加熱運転が開始されると、制御部80は、ヒータ34及び循環ファン35Aの動作を開始し(ステップS1)、その後、温度センサ61Hの検出温度T1が予め設定された設定温度T2になる(ステップS2がYES)と、ヒータ34の動作を停止する(ステップS3、加熱運転完了)。そして、制御部80は、温度センサ61Hの検出温度T1が、温度センサ63Hの検出温度T3よりも所定温度T4高いか否かを判定し(判定処理、ステップS4)、検出温度T1が温度センサ63Hの検出温度T3よりも所定温度T4高い場合(T1>T3+T4の場合、ステップS4でYES)には、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の空気の循環が正常に行われていないと判定し、タッチパネル74を動作させて、報知処理(ステップS5)を行う。なお、所定温度T4は、例えば20℃で設定されているが、これに限定されず適宜変更可能である。報知処理では、制御部80は、例えば、「冷温蔵室25Hと熱交換室31との空気の循環が正しく行われていない」ことを報知する警告メッセージをタッチパネル74の表示面74Aに表示する。
なお、タッチパネル74に警告メッセージが表示された場合、例えば、使用者は、冷温蔵室25Hと熱交換室31との空気の循環を妨げている原因を解消した後、タッチパネル74を操作して、再度加熱運転を実行する。また、警告メッセージと共に、冷温蔵室25Hと熱交換室31との空気の循環を妨げている原因として想定される事項を表示面74Aに表示してもよい。これにより、警告メッセージを確認した使用者は、当該原因を速やかに解消することができる。なお、制御部80は、ステップS3においてヒータ34を停止させた後、循環ファン35Aを動作させつつ、ヒータ34のオンオフを繰り返すことで、設定された時間だけ、設定温度T2を維持するような制御を行う。言い換えると、ステップS3から設定された時間が経過した後、循環ファン35及びヒータ34の双方が停止した状態となる。
また、検出温度T1が(検出温度T3+所定温度T4)以下である場合(ステップS4でNO、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の空気の循環が正常に行われている場合)には、制御部80は、タッチパネル74の表示面74Aに「接続ケーブル70をコネクタ65又はコネクタ76から取り外す」ことを使用者に促すメッセージ(例えば「接続ケーブルを外して下さい」等)を表示する(ステップS6、メッセージ表示処理)。この表示を視た使用者は、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合を解除する。これにより、接続ケーブル70によるステーション30とカート10の接続が解除される。なお、一対のコネクタ73,76の嵌合と一対のコネクタ65,72の嵌合の双方を解除してもよい。
次に、制御部80は、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合が解除された場合(ステップS7でYES)には、図13に示すように、タッチパネル74の表示面74Aに操作ボタン74Bを表示する(図12のステップS8、表示処理)。なお、図13では操作ボタン74Bとして「カート取出」の文言が表示されたものを例示している。そして、図13に示すように、制御部80は、操作ボタン74Bが操作(タッチ操作)された場合(ステップS9でYES)に解除処理を実行する。解除処理では、制御部80は、モータ57G(解除装置の一部)を動作させることでダクト保持部材51を上昇させ、伸びた状態にあるダクト52~55を縮んだ状態にすることで、ダクト52~55と断熱室11Bとの接続を解除する(ステップS10)。これにより、ダクト52~55によるステーション30とカート10の接続が解除されるため、使用者は、カート10をステーション30から取り出すことができる。
なお、本実施形態では、温度センサ63H、63Cとして、NTCサーミスタが用いられている。NTCサーミスタは、温度が下降する程、電気抵抗が大きくなる性質を有している。このため、例えば、制御部80は、温度センサ63H(又は温度センサ63C)の検出温度が最低使用温度より低い場合に、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合が解除された(温度センサ63H又は温度センサ63Cに係る配線が断線した)と判定することができる。なお、ここで言う、温度センサの最低使用温度とは、温度センサに予め設定された使用温度範囲の下限値である。つまり「温度センサの検出温度が最低使用温度より低い」とは、NTCサーミスタである温度センサの電気抵抗が通常取り得る範囲よりも大きい値であること(言い換えると、温度センサに係る配線が断線している状態であること)に相当する。なお、制御部80による一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合が解除されたか否かの判定方法は上記したものに限定されず適宜変更可能である。例えば、制御部80は、近接センサ等を用いて一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)が所定距離離間した場合に、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合が解除されたと判定してもよい。
次に、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、制御部80と温度センサ63Hとは、一対のコネクタ73,76及び一対のコネクタ65,72を介して電気的に接続されている。これにより、制御部80は、温度センサ63Hによって検出された冷温蔵室25Hの温度に基づいて冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の空気の循環が正常に行われているか否かを判定することができる。そして、冷温蔵装置1の使用者は一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合を解除することで、制御部80と温度センサ63Hとの接続を解除することができ、ステーション30からカート10を取り出すことができる。
また、一対のコネクタ73,76は、ステーション30の外面に設けられ、一対のコネクタ65,72は、断熱箱11Aの外面に設けられている。一対のコネクタ73,76が断熱箱11A及びステーション30の外部に配されるため、使用者は容易に一対のコネクタ73,76の嵌合を解除することができる。
また、熱交換室31には、ヒータ34が収容され、ステーション30は、冷温蔵室25Hから熱交換室31に向かう空気の温度を検出することが可能な温度センサ61Hを備え、制御部80は、判定処理において、温度センサ61Hの検出温度が、温度センサ63Hの検出温度よりも所定温度高い場合に、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の空気の循環が正常に行われていないと判定する。
熱交換室31にヒータ34が収容されていることから、ヒータ34及び循環ファン35Aを動作させることで、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間で温風を循環させることができる。ここで、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の温風の循環が正常に行われている場合には、熱交換室31から冷温蔵室25Hに向かった温風は貯蔵物(温食)を温めた後、温度が低下した状態で熱交換室31に戻る。このため、温度センサ61Hの検出温度は、温度センサ63Hの検出温度よりも低くなる。一方、冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の温風の循環が正常に行われていない場合には、温風が冷温蔵室25Hの下部に届かずに熱交換室31に戻り易くなるため、温度センサ63Hの検出温度が上がり難く、温度センサ61Hの検出温度が上がり易くなる。そこで、制御部80は、温度センサ61Hの検出温度T1が、温度センサ63Hの検出温度T3よりも所定温度T4高い場合(T1>T3+T4である場合)に、温風(空気)の循環が正常に行われていないと判定することができる。
また、ステーション30は、ダクト52~55における断熱室11B側の端部を断熱室11Bから遠い側に変位させることでダクト52~55と断熱室11Bとの接続を解除する伸縮装置50と、タッチパネル74と、を備え、制御部80は、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合が解除された場合にタッチパネル74の表示面74Aに操作ボタン74Bを表示する表示処理と、操作ボタン74Bが操作された際に、伸縮装置50を動作させることでダクト52~55と断熱室11Bとの接続を解除する解除処理と、を実行する。
本実施形態では、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)の嵌合(接続ケーブル70によるカート10とステーション30との接続)が解除された場合に操作ボタン74Bが表示され、その操作ボタン74Bを操作することで、ダクト52~55と断熱室11Bとの接続を解除する解除処理が実行される。言い換えると、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)が嵌合されている状態で解除処理を実行することができない。そして、ダクト52~55と断熱室11Bとが接続されている状態では、ステーション30からカート10を取り出すことは困難である。このため、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)が嵌合されている状態でステーション30からカート10が取り出される事態を抑制することができ、一対のコネクタ73,76(又は一対のコネクタ65,72)が損傷する事態を抑制できる。
また、制御部80は、温度センサ63Cの検出温度に基づいて、冷蔵室25Cと熱交換室32との間の空気の循環が正常に行われているか否かを判定する判定処理を実行してもよい。この場合、制御部80は、冷却装置37の動作を開始し、その後、温度センサ61Cの検出温度T11が予め設定された設定温度T12になると、冷却装置37の動作を停止する。その後、制御部80は、温度センサ63Cの検出温度T13が、温度センサ61Cの検出温度T11よりも高いか否かを判定し(判定処理)、検出温度T13が検出温度T11よりも高い場合には、冷蔵室25Cと熱交換室32との間の空気の循環が正常に行われていないと判定し、タッチパネル74を動作させて、報知処理を行う。報知処理においては、制御部80は、例えば、「冷蔵室25Cと熱交換室32との空気の循環が正しく行われていない」ことを報知する警告メッセージをタッチパネル74に表示する。
冷蔵室25Cと熱交換室32との間の冷風の循環が正常に行われている場合には、熱交換室32から冷蔵室25Cに向かった冷風は貯蔵物を冷やした後、温度が上昇した状態で熱交換室32に戻るため、温度センサ61Cの検出温度は、温度センサ63Cの検出温度よりも高くなる。一方、冷蔵室25Cと熱交換室32との間の冷風の循環が正常に行われていない場合には冷風が冷蔵室25Cの下部に届かずに熱交換室32に戻り易くなるため、温度センサ63Cの検出温度が下がり難く、温度センサ61Cの検出温度が下がり易くなる。このため、制御部80は、温度センサ63Cの検出温度が、温度センサ61Cの検出温度よりも高い場合に、冷風(空気)の循環が正常に行われていないと判定することができる。なお、制御部80は、冷温蔵室25Hを冷却する運転が完了した際に、温度センサ63Hの検出温度が温度センサ61Hの検出温度よりも高い場合に冷温蔵室25Hと熱交換室31との間の空気の循環が正常に行われていないと判定し、タッチパネル74を動作させて、報知処理を行ってもよい。
なお、熱交換室31,32と断熱室11Bの間の空気循環路が部分的に塞がれた場合、断熱室11Bにおいて、熱交換室31,32から遠い下部(カート10の下段)は、より空気が循環し難くなる。このため、温度センサ63H,63Cは空気循環通路41,42の下部に設けられ、断熱室11Bの下部の温度を検出することが可能な構成となっている。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)温度センサ63H,63Cと制御部80とが、一対のコネクタ73,76及び一対のコネクタ65,72のうちいずれか一方のみを介して電気的に接続されていてもよい。
(2)上記実施形態では、温度センサとしてサーミスタを例示したが、これに限定されない。
(3)報知処理では、ブザーやランプを動作させることで「空気の循環が正しく行われていない」ことを使用者に報知してもよい。