JP7283670B2 - 防縮性獣毛繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、耐水系洗濯性に優れた防縮性獣毛繊維の製造方法、特に、製造工程からの吸着性有機塩素化合物の排出および繊維内の塩素化合物の残留を最小限に制御した環境に優しい防縮性獣毛繊維の製造方法を提供する。
羊毛繊維の防縮処理に関しては、すでに、1953年、R.W.Moncrieffの総説があり、London The National Trade Press LTDから出版されている。報告されている主な処理方法は、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸または塩素ガスを用いる塩素化処理、過マンガン酸カリウムおよびオゾンによる酸化処理、クロラミン処理、ならびに酵素処理であった。しかし、その主流は塩素化処理であり、今日も継続され、編物、織物、ソックス等に適用されるに至っている。非水系からなる液/液界面重合方法では、後述する特許文献5,6に記載する織物、編物、不織布の布帛処理の実例があるが、獣毛繊維束の連続体であるスライバーへの処理実例はない。
その反面、水系では、非常に多くの開発があり、近年に至って、羊毛の篠状のスライバーを連続的に処理する方法が、1986年、カナダのクロイ社(Kroy Unshrinkable Wools Ltd)が開発した(特許文献1)。それ以前に、オーストラリア、連邦科学産業研究機構(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organization, CSIRO)が、羊毛トップスライバーを用いた次亜塩素酸による塩素化処理を開発、続いてポリアミド・エピクロロヒドリンナイロン樹脂( Hercules Powder社製Hercosett 57 )による連続防縮方法(Cl/Hercosett)を開発した。更に、ドイツ、Fleissner社のSplit Pad Chlorinator方法は、処理原理として、CSIROでの研究開発に基づいて、羊毛を塩素化処理し、続いてハーコセット樹脂(Hercosett)を繊維上に被覆する、所謂、塩素化/樹脂処理であった。これ等は、中国を中心に広く浸透し、大量生産が行われ、製造コストも安価に提供されている。これ等の点から、羊毛の防縮加工の大半は、羊毛トップスライバーを用い、塩素化処理方法を用いる連続防縮処理として纏めることが出来る。
塩素化/樹脂方法は、塩素を用いる関係上、連続処理工程中に、塩素と界面活性剤との反応、還元剤処理中の羊毛から流出する可溶性タンパク質との反応、柔軟剤との反応等により、吸着性有機塩素化合物(AOX -Absorbable Organic Halogens)を河川に排出させる。それを魚類が摂取し、食物連鎖により、人間が摂取すると「癌」の発生を来すことが報告されている。更に、塩素は羊毛中のタンパク質に反応して、残留塩素として羊毛繊維内に残存することも確認されている。
今日、羊毛防縮加工での最大の開発項目は、塩素を使用しない、環境に優しい、大量生産方式の連続防縮加工処理の開発が、叫ばれているが、いまだに開発されていない。しかも、 近年において、羊毛繊維の防縮加工は、スライバー処理する方法が大勢で、その生産性、製造コストの面で優位性を誇り、トップから紡績糸にすることにより、編物、織物、ソックス、セーター等の製品化が可能である点、防縮スライバーが、世界の羊毛業界、特に、中国で大量に生産されている。
羊毛繊維からなる編物、織物への防縮加工は、塩素剤等の酸化剤を使用する水溶液処理のため、織物、編物を構成する糸の撚り、編み,織り密度のため、処理液の浸透斑のため、処理斑が発生し易く、染色斑等につながり、可なりの生産管理が必要である。その点、スライバー処理は、防縮処理後に、ギル工程、コーミング工程等によって、処理斑が是正するため、防縮の均整性が保たれ、均一な羊毛防縮紡績糸の製造が可能である。この意味で、現在では、羊毛のスライバーを用いる連続防縮加工が主力となっている。
羊毛スライバーに対して処理する際、処理の均整性が重大な要因となり、未防縮成分が、その集団内に、10%程度含まれると、その全体が未防縮繊維と同じ収縮挙動を示すことが経験的に確認されている。この点から、処理を均一するための装置が、ドイツ、フライスナー社、カナダ、クロイ社によって開発され、世界中に広がっている。特に、中国に於いてその普及がすさまじい。これは、羊毛単繊維を均一に次亜塩素酸や塩素ガスで塩素酸化する装置であり、防縮性を完成させるために、水溶性のポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を羊毛表面に、後の工程で被覆する方法である。しかし、この方法は、羊毛表面を塩素酸化処理する事により、羊毛本来の性質である撥水機能を阻害して、防縮性のみを付与させる方法である。そのことから、羊毛繊維の撥水性を損なうことなく防縮性を付与することが、今日の大きな研究開発の課題である。
羊毛繊維を樹脂加工する際、羊毛表面を親水性化する事によって、初めて、親水性の樹脂、例えば、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(ディックハーキュレス社、ハーコセット57 Hercosett )を被覆することが可能である。しかし、疎水性の羊毛に水溶性のハーコセット樹脂を均一に被覆する事は出来なかった。例えば、図3の中央部に示すように、羊毛繊維表面に「海草昆布」状の被覆が起こったり、または図3における当該中央部の両側に示すように、繊維間で接着が起こったりした。それらの結果、ギル等による繊維開繊は出来なかった。特に繊維間で接着が起こったときの繊維表面を図4に示す。図3は、疎水性の羊毛表面に水溶性のハーコセット樹脂を被覆しようとしたときの、処理後の羊毛繊維を示す写真である。図4は、繊維間で接着が起こったときの、羊毛繊維の表面状態を示す電子顕微鏡写真である(倍率1000倍)。
1963年、アメリカ農工務省のWestern Regional Research Laboratory (WRRL)で開発された界面重合方法は、毛織物に適用されたが、羊毛トップの研究開発例のみである。当時、用いた溶剤は、パークロロエチレン、四塩化炭素、クロロホルム、キシレン、トルエン、ベンゼン等であった。しかしながら、これらの溶剤は、今日では、健康や環境に対して有害物質であり、安全な作業環境で作業が出来ない事から、全く工業化は出来ない。更に、ジアミンの分解や二塩基酸ジクロライドの加水分解とその生成物の濾過、更に溶剤中の水分駆除、等々の問題で、半世紀近く注目されなかった。
繊維加工技術の内、繊維表面を取り扱ったものが実に多い。合成繊維の表面は疎水性であり、それを改良するために親水化する各種の技術が開発されているが、羊毛繊維は動物繊維であり、全ての動物繊維の表面は、その生体を保護するために水を撥じく、疎水性である。羊毛繊維を親水化すると水の吸着・脱着に伴う熱損失が激しくなりそれだけ生体の生命維持に影響することになる。今日、羊毛繊維の表面処理について開発されたものの大半は、親水化する技術である。その代表的なものに、羊毛の水洗濯時の収縮を抑える防縮加工として、塩素化剤や過硫酸らによる前処理を羊毛繊維表面に施して親水化し、その表面を親水性のポリマーで被覆する方法が全世界中に普及している(塩素化樹脂方法‐CL/Hercosett法:一例として、特許文献1(クロイ・アンシュリンカブル・ウールズ・リミテッド)がある)。羊毛を親水化することによって防縮性は付与されるが、水に対する親和性が増すため、保温性が低下し、再汚染され易く、セーター等の水洗濯で「伸び」や「たらつき」、繊維強度の低下、光熱黄変を助長する結果となる。
本発明の特徴の1つは、羊毛の本来の性質を損傷することなく、羊毛繊維表面に疎水性の合成高分子を被覆して防縮性を付与し羊毛本来の疎水性を保持する点である。この構想を導く基本技術は、水相と有機相からなる界面を利用する液・液界面重合方法である。この界面重合方法を利用した羊毛トップや毛織物への技術開発(特許文献2)は古く1963年代まで遡ることができるが、有機相に健康や環境に対して有害物質であるパークロロエチレン、トルエン、四塩化炭素等からなる溶剤を用いるため工業的には成功を収めることが出来なかった。
更に、ジアミンを含む水溶液相に毛織物を浸漬して絞り、直ちに、二塩基酸ジクロライドを溶解したトルエン有機溶剤に浸漬して、羊毛繊維表面で形成した液・液界面を利用して界面重合を行なっているが、毛織物に付着した水が、必然的に有機溶剤相に浸入するため、二塩基酸ジクロライドは水と反応してジカルボン酸となり界面重合反応を減速する結果となる。この二塩基酸ジクロライドの加水分解をどの様に解決するかが大きな課題となり、実用化を阻害しているのが現状である。
近年、環境保全の問題からドライクリーニング業界では、パークロロエチレンを無公害型の新規溶剤-シリコーン溶剤(三菱重工産業機器(株)・信越化学工業(株)社製-ダイヤシリコーン及びグリーン・アース・クリーニング・リミテッド・カンパニー(Green Earth Ltd. Co.社製-シリコーンドライ)等に代替することが行なわれている。
グリーン・アース社は、特許文献3および特許文献4でオクタメチル-シクロテトラシロキサン(テトラマー)、デカメチル-シクロペンタシロキサン(ペンタマー)およびドデカメチル-シクロヘキサシロキサン(ヘキサマー)の環状シリコンを開示している。一方、三菱重工産業機器(株)社製のシリコーン溶剤は直鎖状のデカメチルテトラシロキサンとして市販されている。
羊毛繊維の臨界界面張力は、単繊維で45-50dyn/cm、繊維集団で30dyn/cmと言われている。グリーン・アース社のシリコーン溶剤の臨界界面張力は、17.8dyn/cmであり、羊毛繊維集団内の各単繊維の表面にも容易にシリコーン溶剤が拡張することが可能であり、界面重合が均一に行なわれることを意味している。一方、羊毛繊維の水溶液処理では、水の臨界界面張力が、72-76dyn/cm前後であり、羊毛繊維表面を水に「ぬらす」ために、浸透剤を水溶液に入れても完全に「ぬらす」ことは難しい。そのため、水溶液処理は、溶剤処理と比較して処理の均一性に欠けることになり、疎水性のポリマーを水溶液媒体で処理することは、均一性から問題となる。
日本国内では、環境保全のための法規制が設定されているが、テトラクロロエチレンについての法規制について列記すると表1のようになる(非特許文献1)。
Figure 0007283670000001
一方、シリコーン溶剤の法規制は表2のように、非常に環境に優しい溶剤である(非特許文献1より)。従って、シリコーン溶剤は、更に、臭気がなく、化学火傷もなく、取り扱い易い溶剤であり、界面重合処理を行なうには好都合な溶剤である(非特許文献1)。
Figure 0007283670000002
有機溶剤を用いる場合、作業環境法や労働安全衛生法に規制されない安全な操業が出来ることが必要であり、更に、大気汚染防止法や水質汚濁防止法にも規制されない溶剤であることが必要である。しかし、本発明に用いたシリコン溶剤はこれらの必要性に適合し、又、水と混入しない(Water Immiscible)溶剤である。このため、水相と溶剤相の間で、液・液の界面が形成されており、最初、室温で、容器に0.1mol/l ヘキサメチレンジアミン水溶液を入れ、次に、室温で、シリコン溶剤液に0.1mol/l 二塩基酸クロライドを溶解した溶液をこの容器に注ぎ込んだ所、水相と溶剤相の界面で、図5に示すように、ナイロン・ポリマーが形成されていることを確認し本発明を追行するに至った。図5は、本発明の考案の基礎となる実験を示す。図5中の I は、水とシリコン溶剤とで形成される液・液界面を示し、比重の関係から底部は水を上部はシリコン溶剤を示し、図5中のII は、液・液界面でのナイロン・ポリマー(白色)の形成を示す。
これは、水相のジアミンが有機溶剤相へと拡散し、二塩基酸クロライドと反応してナイロン・ポリマーを室温の液・液界面で、直ちに、形成されるものである。しかし、二塩基酸クロライドと水との反応が付随して起こり、ジカルボン酸となりナイロン・ポリマーの形成を阻害する結果となり、それ故に、液・液界面重合方法の実用化を阻害していた。
この問題を解決するために、特許文献5,6では、毛織物をジアミン水溶液に浸漬して絞り、風乾して繊維上の水分を駆除して固体表面を形成させた後、二塩基酸クロライドを含むシリコン溶剤液に浸漬して、固・液界面を形成して界面重合を行なう方法が提案されている。このような方法において、ジアミン水溶液は、獣毛繊維の加水分解を防止するため、加熱されることなく、室温(約25℃)で使用されている。
特公昭61-39430号公報 USA Patent,3,078,138, Patented Feb. 19,1963 特表2002-520508号公報 特表2003-518426号公報 特許第5214181号公報 特許第5629794号公報
名古屋テキスタイル研究会主催、「ドライクリーニング最前線―シリコーンドライシステムについて」、三洋電機テクノクリエイト(株)、講演資料より(平成18年7月27日、名古屋市工業研究所)
しかしながら、特許文献5,6に記載のような方法を、獣毛繊維の連続体であるスライバーに対して連続的に適用すると、風乾工程が煩雑であり、防縮性獣毛繊維の製造効率が低下した。そこで、風乾工程を省略すると、耐水系洗濯性が低下し、防縮性が十分に得られなかった。
本発明の目的は、獣毛繊維の特質の一つである本来の撥水性を保持しつつ、風合いやその他の特性を損なうことなく、耐水系洗濯性に十分に優れた防縮性獣毛繊維をスライバー形態で効率よく製造する方法を提供しようとするものである。
本発明の目的は、更に、処理工程から排出される吸着性有機塩素化合物(AOX)の流出がなく、加えて、獣毛繊維内に残留塩素物質を含まない防縮性獣毛繊維の製造方法を提供しようとするものである。
本発明は、獣毛繊維の連続体であるスライバーを、30~45℃のアルカリ剤含有ジアミン水溶液に浸漬してジアミンが付着した状態で、二塩基酸クロライドを溶解したシリコン溶剤に浸漬して、ポリアミドを獣毛繊維表面に被覆することを特徴とする、防縮性獣毛繊維の製造方法に関する。
本発明者等は、上記課題の解決のために鋭意研究を重ねてきた結果、本発明に到達した。即ち、本発明においては、獣毛繊維のスライバーを、加温したアルカリ剤含有ジアミン水溶液に浸漬して絞り、環境破壊や作業環境の悪化を引き起こさないシリコン溶剤に二塩基酸クロライドを溶解した溶液に浸漬することにより、液/液界面での界面重合による繊維表面へのポリアミドの形成を行う。その後の好ましい実施態様においては、獣毛繊維スライバーに付着したシリコン溶剤を乾燥蒸発させて溶剤回収することなく、当該スライバーをギ酸水溶液に直ちに浸漬してオリゴマーを駆除し、中和・水洗を行い、乾燥する。一方、獣毛繊維トップスライバーに付着したシリコン溶剤は、水洗処理後の廃液の比重差による分離方法で回収する。獣毛繊維にポリマー処理する際、表面のクリーン性が非常に重要な要因であるが、近年のトップスライバーは、大量生産低コスト方式のため、獣毛繊維の原毛洗いは、問題が多く、残脂量、繊維のpH、泥砂等の夾雑物の管理が不十分であった。本発明においては、繊維表面をクリーンにして、疎水性のポリマーを被覆することが好ましい。
本発明によれば、獣毛繊維の本来の撥水性能を損なうことなく、疎水性のポリマーで処理することによって優れた防縮性を付与することが出来る。空気は疎水性であり、本発明の方法に従って処理された獣毛繊維は強固な疎水性を示し、その結果、獣毛繊維間の微小空気層を強く保持するために、本発明は、保温性が高く、かつ、撥水性のある獣毛繊維製品を提供することが可能である。又、本発明は、工程処理中に、吸着性有機塩素化合物を流出しない、繊維内に残留塩素化合物を含まない、環境に優しい防縮性獣毛繊維スライバーの連続的製造方法を提供する。
本発明の製造方法により製造された防縮性獣毛繊維の表面を倍率400倍で光学顕微鏡観察したときの顕微鏡写真である。 本発明の製造方法を実施するための装置を示す模式図である。 疎水性の羊毛表面に水溶性のハーコセット樹脂を被覆したときの、処理後の羊毛繊維を示す写真である。 繊維間で接着が起こったときの、羊毛繊維の表面状態を示す電子顕微鏡写真である(倍率1000倍)。 本発明の考案の基礎となる実験を示し、 I は、水とシリコン溶剤とで形成される液・液界面を示し、II は、液・液界面でのポリアミド(白色)の形成を示す。
本発明は、1963年、アメリカ農工務省のWestern Regional Research Laboratory (WRRL)が発表した界面重合方法を改良し、鋭意研究した結果、到達した防縮性獣毛繊維の製造方法に関する方法である。詳しくは、環境規制のないシリコン溶剤を用いて、獣毛繊維(特に羊毛繊維)表面上に合成高分子を合成し、当該高分子で、獣毛繊維表面全体を網状(図1参照)に、獣毛繊維一本一本ごとに被覆する。これにより、完全な防縮性を獣毛繊維に付与することに成功し、現在の羊毛繊維業界の最大の問題を解決しようとするものである。図1は、本発明の製造方法により製造された防縮性獣毛繊維の表面を倍率400倍で光学顕微鏡観察したときの顕微鏡写真である。
(ジアミン水溶液への浸漬工程)
本発明の獣毛繊維の製造方法においては、獣毛繊維のスライバーを、所定温度のアルカリ剤含有ジアミン水溶液に浸漬して、ジアミンを付着させる。
本発明における獣毛繊維とは、羊毛、カシミヤ、モヘア、アンゴラ、キャメル等からなる群から選択される1種以上の天然ケラチン質繊維を意味する。スライバーとは、撚りがかかっていない篠状に並べられた繊維束のことであり、通常は数百メートル以上の長さを有する連続形態の繊維集団である。スライバーは、いわゆる洗浄処理、カード処理、ギル処理、コーミング処理、から選択される1つ以上の処理が行われたものであってもよい。洗浄処理は、獣毛繊維表面の油脂および泥・砂等の夾雑物を駆除(または除去)することを目的として行われる処理である。カード処理は、獣毛繊維をほぐして連続した繊維束にすることを目的として行われる処理である。ギル処理は、繊維束を引き揃えて均一にすることを目的として行われる処理である。コーミング処理は、繊維束の中の短い繊維や夾雑物を除去し、さらに繊維を平行に引き揃えることを目的として行われる処理である。本発明においては、繊維表面へのポリアミドの被覆の観点から、スライバーは洗浄されていることが好ましい。詳しくは、スライバーの油脂残量は、特に限定されないが、繊維表面へのポリアミドの被覆の観点から、例えば、通常0.8%owf 以下(特に0.3~0.8%owf)であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.5%owfである。
獣毛繊維のスライバーは、市場から、いわゆるトップスライバーを購入することにより入手してもよい。獣毛繊維のスライバーは、市場から購入したものを洗浄処理して用いてもよい。
好ましい実施態様においては、獣毛繊維トップスライバーをバックウォッシャーを用いて、油脂残量を0.4~0.8%owf (洗浄処理前は、1.3%owf)、pHを7.0程度とし、かつ泥および砂等を完全に駆除し、乾燥処理後のトップスライバーを用いる。
獣毛繊維のスライバーの単位長さあたりの質量は通常、10~40g/m、特に20~30g/mである。
獣毛繊維のスライバーは、他繊維を混合して使用されてよい。他繊維との混合使用として、ポリエステル、アクリル、ナイロン、アラミド、塩化ビニール等の合成繊維や絹、綿、麻、レーヨン等の再生セルロース繊維が含まれてもよい。
ジアミン水溶液は、30~45℃の温度を有し、かつアルカリ剤を含有する。獣毛繊維(特に羊毛繊維)は、水温によって、「スケール」の立ち上がりの程度が異なる。例えば、「冷水」では、「スケール」の立ち上がりはない。また例えば、温水 (40℃)では立ち上がりが見られ、獣毛繊維内部に水が浸透する。また例えば、水蒸気(100℃)は、容易に、獣毛繊維内部に浸透拡散する。このため、アミンの吸収は処理温度に依存している。本発明では、ジアミン水溶液の温度を上記温度にすることにより、獣毛繊維の「スケール」が立ち上がり、濃度の高いジアミンの取り込みが起こり、その表皮層に濃度の高いジアミン相を形成する。そのため、次工程で、シリコン溶剤に溶解した二塩基酸クロリドが当該ジアミン相を攻撃して界面重合反応が成立することを見出した。また、獣毛繊維のスライバーを連続的に防縮加工処理することが可能となることを見出した。それらの結果、図1に示す様に、獣毛単繊維、一本一本にナイロン被膜を網状かつ均一に被覆することが出来た。ジアミン水溶液の温度が低過ぎると、ジアミン水溶液の獣毛繊維への浸透が抑制されるため、当該繊維の表面でのジアミンの吸着量は少なく、二塩基酸クロリドとの界面重合反応が制限される。その結果、ポリアミドの被覆生成量は少なく、耐水系洗濯性が低下する。これに対して、ジアミンの吸収量を増やすために、ジアミン水溶液の温度を上げ過ぎると、獣毛繊維(特に羊毛繊維)の加水分解が起きる。
獣毛繊維(特に羊毛繊維)は、両性のタンパク質であり、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸,中性アミノ酸から構成されている。ジアミン水溶液中のジアミンは、獣毛繊維のカルボキシル残基を持つ酸性アミノ酸や脂質に吸着される。更に、ジアミン水溶液を上記温度まで昇温し、かつ後述のようにジアミン水溶液にアルカリ剤を加える。これらの結果、獣毛繊維へのジアミンの吸収と、次工程の二塩基酸クロライドの加水分解による塩酸の駆除とが促進される。このため、次工程において、ポリアミドが獣毛繊維表面に均一に被覆されるものと考えられる。
ジアミン水溶液の温度は、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは35~45℃であり、より好ましくは36~44℃であり、さらに好ましくは38~42℃であり、最も好ましくは39~41℃である。ジアミン水溶液が上記した好ましい範囲の温度を有するときに、防縮性、風合いおよび撥水性がさらに向上する現象の詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。すなわち、獣毛繊維を有する獣(特に羊)の体温は通常、約39~40℃であり、この温度に近づくほど、獣毛繊維における上記した「スケール」の立ち上がり効果が高くなるため、ポリアミドが獣毛繊維表面に、より細かな網状にかつより均一に被覆される。その結果、防縮性、風合いおよび撥水性がさらに向上する。
本発明で用いるジアミン水溶液中のジアミンは通常、水溶性ジアミンである。水溶性ジアミンとしては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;およびパラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。ジアミンは、特にこれらに限定されるものではなく、又、これらのジアミン2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましいジアミンは脂肪族ジアミン、特にヘキサメチレンジアミンである。
ジアミン水溶液におけるジアミンの濃度は特に限定されず、通常は、0.01~0.7mol/Lであり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.02~0.15mol/L、より好ましくは0.03~0.08mol/Lである。ジアミン水溶液におけるジアミンの濃度は、ジアミン水溶液全量に対する濃度である。
ジアミン水溶液はアルカリ剤を含み、さらに浸透剤等の添加剤を含んでもよい。
アルカリ剤は、ジアミンと二塩基酸クロライドとが反応して生成される塩酸を駆除(すなわち除去)するために使用される。ジアミン水溶液がアルカリ剤を含まない場合、塩酸が駆除されないため、ポリアミドの形成が阻害され、結果として防縮性が低下する。アルカリ剤としては、塩酸を中和し得る物質であれば特に限定されない。アルカリ剤の具体例として、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。ジアミン水溶液中におけるアルカリ剤の濃度は特に限定されず、通常は、0.01~0.7mol/Lであり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.02~0.15mol/L、より好ましくは0.03~0.08mol/Lである。アルカリ剤の濃度は、獣毛繊維への黄変等を考慮して、出来るだけ低い方がよい。
浸透剤は、ジアミンの獣毛繊維への浸透を促進するために使用される。浸透剤の具体例として、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。このような非イオン系界面活性剤は、例えば、市販の松本油脂製薬(株)製SSK630(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)等として入手可能である。ジアミン水溶液中における浸透剤の濃度は特に限定されず、通常は、0.1~2.0%soln.であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.5~1.5%soln.、より好ましくは0.8~1.2%soln.である。「%soln.」は体積割合に基づく単位である。
スライバーとジアミン水溶液との接触時間は、次工程で獣毛繊維表面にポリアミドが形成される限り特に限定されず、通常は1秒間~10分間であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは2秒間~5分間であり、より好ましくは5秒間~3分間、さらに好ましくは10秒間~3分間、特に好ましくは20秒間~3分間、十分に好ましくは30秒間~3分間、最も好ましくは1.5分間~3分間である。スライバーとジアミン水溶液との接触時間は、後述する稼働速度を調整することにより、制御することができる。
本工程において、スライバーをジアミン水溶液に浸漬した後は、通常、絞り処理に付す。絞り処理方法は、スライバー内に含まれる過剰な液体を絞り出すことができる方法であれば特に限定されず、例えば、マングルを用いる方法が挙げられる。絞り率は特に限定されず、通常は50~90%であり、好ましくは60~90%であり、より好ましくは70~90%である。絞り率とは、スライバーに付着した液体分の質量をx、スライバーの質量をyとしたとき、{x/(x+y)}×100(%)で表される値である。以下の工程における絞り率も同様である。
(二塩基酸クロライド溶液への浸漬工程)
ジアミンが付着したスライバーを、二塩基酸クロライドを溶解したシリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)に浸漬して、ポリアミドを獣毛繊維表面に被覆する。
本工程で使用される溶剤は、第一条件として、法的規制を受けない環境に優しい溶剤(すなわち環境保全のための法規制対象でない溶剤)であることが必要である。本工程で使用される溶剤は、第二条件として水と混入しない(Water Immiscible)溶剤であることが必要であり、それによって液・液界面が形成される。本工程で使用される溶剤は、第三条件として溶剤が不活性であることが必要である。これらの条件に適合する溶剤として、シリコン溶剤、特にシリコーン溶剤が使用される。シリコン溶剤の具体例として、例えば、三菱重工産業機器(株)社製の直鎖状シリコン(特に直鎖状シリコーン)、即ち、デカメチルテトラシロキサン、およびグリーン・アース社製の環状シリコン(特に環状シリコーン)、即ち、オクタメチル-シクロテトラシロキサン(テトラマー)、デカメチル-シクロペンタシロキサン(ペンタマー)およびドデカメチル-シクロヘキサシロキサン(ヘキサマー)が挙げられる。従って、好ましい溶剤としては、シリコーン溶剤(特にシロキサン溶剤)であり、直鎖状または環状シリコーン(特に直鎖状または環状シロキサン)が例示される。より好ましい溶剤は、直鎖状または環状シロキサン類である。特に好ましくは、三菱重工産業機器(株)社製のダイヤシリコーンが挙げられる。
本発明で使用する二塩基酸クロライドとしては、コハク酸クロライド、アジピン酸クロライド、ピメリン酸クロライド、スベリン酸クロライド、アゼライン酸クロライド、セバチン酸クロライド、シクロヘキサンジカルボン酸クロライド等の脂肪族ジカルボン酸クロライド;テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、オルソフタル酸クロライド等の芳香族ジカルボン酸クロライド;およびヘキサンディオールビスクロロフォルメイト、デカンディオールビスクロロフォルメイト等のビスクロロフォルメイトが挙げられる。二塩基酸クロライドは、特にこれらに限定されるものではなく、又、これらの二塩基酸クロライド2種以上を組み合わせて使用してもよい。二塩基酸クロライドは通常、2つのカルボキシル基に由来の2つのヒドロキシル基のうち、少なくとも1つのヒドロキシル基が塩素原子により置換されていればよいが、好ましくは2つのヒドロキシル基が塩素原子により置換されている。好ましい二塩基酸クロライドは脂肪族ジカルボン酸クロライド、特にセバチン酸二塩化物である。
シリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)における二塩基酸クロライドの濃度は特に限定されず、通常は、0.01~0.7mol/Lであり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上の観点から、好ましくは0.02~0.15mol/L、より好ましくは0.03~0.08mol/Lである。シリコン溶剤における二塩基酸クロライドの濃度は、シリコン溶剤と二塩基酸クロライドとの全量(すなわち二塩基酸クロライド溶液全量)に対する濃度である。
シリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)は水吸収剤(例えば、モレキュラー・シーブ4A1/8(Molecular Sieve))等の添加剤をさらに含んでもよい。
シリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)の温度は、特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは室温(例えば15~25℃)である。
スライバーとシリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)との接触時間は、本工程で獣毛繊維表面にポリアミドが形成される限り特に限定されず、通常は1秒間~1分間であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは1~30秒間であり、より好ましくは5~20秒間である。スライバーとシリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)との接触時間は、後述する稼働速度を調整することにより、制御することができる。
本工程において、スライバーをシリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)に浸漬した後は、通常、絞り処理に付す。絞り処理方法は、ジアミン水溶液への浸漬工程における絞り処理方法と同様の方法が使用され、例えば、マングルを用いる方法が使用される。絞り率は特に限定されず、通常は50~90%であり、好ましくは60~90%であり、より好ましくは70~90%である。
(他の工程)
二塩基酸クロライド溶液への浸漬工程を終えた後は、特に限定されず、通常乾燥工程を行う。本発明においては、乾燥工程までの間に、水洗工程、酸洗浄工程、柔軟処理工程を行ってもよい。好ましい実施態様においては、二塩基酸クロライド溶液への浸漬工程を終えた後、第1水洗工程、酸洗浄工程、第2水洗工程、柔軟処理工程および乾燥工程を順次、行う。特に酸洗浄工程を行うことにより、獣毛繊維間に余分なポリアミドが生成している場合、当該余分なポリアミドを駆除することができる。
・第1水洗工程
第1水洗工程においては、スライバーを水に浸漬することにより、繊維表面にあるジアミン成分、二塩基酸クロライド成分およびアルカリ剤成分を駆除する。本工程においては、二塩基酸クロライド溶液への浸漬工程で形成されたオリゴマーも駆除されてもよい。
第1水洗工程における水の温度は、特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは室温(例えば15~25℃)である。
第1水洗工程におけるスライバーと水との接触時間は、上記した駆除が達成される限り特に限定されず、通常は1秒間~1分間であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは5~40秒間であり、より好ましくは10~30秒間である。スライバーと水との接触時間は、後述する稼働速度を調整することにより、制御することができる。
第1水洗工程において、スライバーを水に浸漬した後は、通常、絞り処理に付す。絞り処理方法は、ジアミン水溶液への浸漬工程における絞り処理方法と同様の方法が使用され、例えば、マングルを用いる方法が使用される。絞り率は特に限定されず、通常は50~90%であり、好ましくは60~90%であり、より好ましくは70~90%である。
本工程に供されるスライバーには、シリコン溶剤(すなわち二塩基酸クロライド溶液)が付着している。このため、本工程の水には、スライバーに付着していたシリコン溶剤が混合されるが、このようなシリコン溶剤は、水との比重差を利用して分離および回収することができる。詳しくは、本工程で使用される水を収容した槽内において、シリコン溶剤は水との比重差に基づいて上位に位置づけられる一方、水は下位に位置づけられる。このため、槽内の上部からシリコン溶剤を分離および回収することができる。
・酸洗浄工程
酸洗浄工程においては、スライバーを酸水溶液に浸漬することにより、繊維表面にある、ポリアミド生成時に形成されたオリゴマーを駆除する。本工程においては、残留するジアミン成分および二塩基酸クロライド溶液への浸漬工程で過剰に形成されたポリアミドが駆除されてもよい。
酸水溶液中の酸は、特に限定されず、例えば、ギ酸等の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。本工程で使用される酸は、特にこれらに限定されるものではなく、又、これらの酸2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましい酸は脂肪族モノカルボン酸、特にギ酸である
酸水溶液における酸の濃度は特に限定されず、通常は、0.01~10%であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは0.1~5%、より好ましくは0.5~2%である。ここで、濃度の単位「%」は、全量に対する体積割合のことである。
酸洗浄工程における酸水溶液の温度は、特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは室温(例えば15~25℃)である。
スライバーと酸水溶液との接触時間は、上記した駆除が達成される限り特に限定されず、通常は1秒間~1分間であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは5~40秒間であり、より好ましくは10~30秒間である。スライバーと酸水溶液との接触時間は、後述する稼働速度を調整することにより、制御することができる。
酸洗浄工程において、スライバーを酸水溶液に浸漬した後は、通常、絞り処理に付す。絞り処理方法は、ジアミン水溶液への浸漬工程における絞り処理方法と同様の方法が使用され、例えば、マングルを用いる方法が使用される。絞り率は特に限定されず、通常は50~90%であり、好ましくは60~90%であり、より好ましくは70~90%である。
・第2水洗工程
第2水洗工程においては、スライバーを水に浸漬することにより、繊維表面にあるジアミン成分、二塩基酸クロライド成分およびアルカリ剤成分をより十分に駆除する。
第2水洗工程における水の温度は、特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは室温(例えば15~25℃)である。
第2水洗工程におけるスライバーと水との接触時間は、上記した駆除が達成される限り特に限定されず、通常は1秒間~1分間であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上よびと製造効率とのバランスの観点から、好ましくは5~40秒間であり、より好ましくは10~30秒間である。スライバーと水との接触時間は、後述する稼働速度を調整することにより、制御することができる。
第2水洗工程において、スライバーを水に浸漬した後は、通常、絞り処理に付す。絞り処理方法は、ジアミン水溶液への浸漬工程における絞り処理方法と同様の方法が使用され、例えば、マングルを用いる方法が使用される。絞り率は特に限定されず、通常は50~90%であり、好ましくは60~90%であり、より好ましくは70~90%である。
・柔軟処理工程
柔軟処理工程においては、スライバーを柔軟剤水溶液に浸漬することにより、繊維に柔軟性を付与する。
柔軟剤水溶液中の柔軟剤は、繊維(特に獣毛繊維または羊毛繊維の分野で柔軟性を付与し得る薬剤として知られている薬剤であれば特に限定されず、例えば、パラフィン系化合物等が挙げられる。パラフィン系化合物は、市販の松本油脂製薬(株)製ブリアンLC-35(非イオン性、固形パラフィン柔軟剤)として入手可能である。
柔軟剤水溶液における柔軟剤の濃度は特に限定されず、通常は、0.01~10%であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは0.1~5%、より好ましくは0.5~2%である。ここで、濃度の単位「%」は、全量に対する体積割合のことである。
柔軟処理工程における柔軟剤水溶液の温度は、特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは20~50℃であり、より好ましくは30~50℃である。
スライバーと柔軟剤水溶液との接触時間は、繊維に柔軟性が付与される限り特に限定されず、通常は1秒間~1分間であり、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは5~40秒間であり、より好ましくは10~30秒間である。スライバーと柔軟剤水溶液との接触時間は、後述する稼働速度を調整することにより、制御することができる。
柔軟処理工程において、スライバーを柔軟剤水溶液に浸漬した後は、通常、絞り処理に付す。絞り処理方法は、ジアミン水溶液への浸漬工程における絞り処理方法と同様の方法が使用され、例えば、マングルを用いる方法が使用される。絞り率は特に限定されず、通常は50~90%であり、好ましくは60~90%であり、より好ましくは70~90%である。
・乾燥工程
乾燥工程においては、これまでの工程で湿潤したスライバーを乾燥させる。
乾燥方法は、繊維(特に獣毛繊維または羊毛繊維)の分野で知られている、あらゆる乾燥方法が使用可能である。乾燥方法の具体例として、例えば、吸引を行いながら乾燥を行うサクション乾燥方法、フライスナー製サクションドラムドライヤー等が挙げられる。
乾燥工程における乾燥温度は、繊維(特に獣毛繊維または羊毛繊維)にダメージを与えることなく、乾燥を達成できる温度であれば特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは50~100℃であり、より好ましくは70~90℃である。
本発明においては、上記した工程を連続的に行うことが好ましい。稼働速度は、上記した接触時間が確保される限り特に限定されず、防縮性、風合いおよび撥水性のさらなる向上と製造効率とのバランスの観点から、好ましくは0.1~10m/分、より好ましくは0.5~3m/分、さらに好ましくは1.5~3m/分である。
本発明においては、乾燥工程を終えたスライバーに対して、ギル処理、コーミング処理、から選択される1つ以上の後処理が行われてもよい。ギル処理およびコーミング処理はそれぞれ、ジアミン水溶液への浸漬工程の説明で言及したギル処理およびコーミング処理と同様の処理である。
本発明においては、スライバーを、ジアミン水溶液に浸漬し、次に、二塩基酸クロライドを溶解したシリコン溶剤に浸漬して、ポリアミドを獣毛繊維表面に被覆する際、排出される吸着性有機塩素化合物(AOX)及び該繊維内に残存する有機塩素化合物を最小限に制御されている。
詳しくは、二塩基酸クロライド溶液への浸漬工程で絞り処理したときの全排液における吸着性有機塩素化合物(AOX)の含有量が1mg/kg未満である。当該含有量は、活性炭吸着―燃焼法で測定された値、詳しくはISO9562(2004)に基づいて測定された値を用いている。
また、得られたスライバー(獣毛繊維)に含まれる塩化物イオン濃度は2.0mg/L以下、特に1.2mg/L以下である。塩化物イオン濃度は、(液体クロマトグラフ法に基づく煮沸抽出法で測定された値、詳しくはJIS K 0127通則 塩化物イオン濃度に基づいて測定された値を用いている。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前述の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更して実施することはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
(加工処理試料)
オーストラリア産メリノ羊毛(平均繊維径18.5μm)を、バックウォッシャー上がりのトップスライバーの油脂残量が0.3~0.5%owfとなるように、洗浄処理して用いた。
(防縮性評価)
ISO 6330 に基づくWool Mark 試験法 TM 31に従って耐水系洗濯性を評価した。実施例/比較例の各々で得られたトップスライバーを2/28Nmに紡出し、撚数を単糸 Z 370回/m, 双糸 S213回/mに設定し、紡績後、平編地し編製し、カバーファクター0.41になるように編密度を調整し、得られた編地を防縮性の評価試験に供した。
ISO 6330に基づくIWS TM 31に従って耐水系洗濯性を評価した。評価規定として、
「伸び」:洗濯によって引き起こされた長さ或いは幅寸法の増加を示し、正(+)の寸法変化として表す。
「収縮」:洗濯によって引き起こされた長さ或いは幅寸法の減少を示し、負(-)の寸法変化として表す。
と定義されており、ISO 6330 5A 及び7A洗濯サイクルプログラムによって評価され、両プログラムとも負荷を 1kg に軽減して行い、洗濯サイクル及び洗濯回数は製品によって決定される。
計算式として、幅(WS)及び長さ(LS)方向の緩和寸法変化率、フェルト寸法変化率、合計寸法変化率を下記の式で算出する。
緩和寸法変化率(%)=(RM―OM)/OM x 100
フェルト寸法変化率(%)=(FM―RM)/RM x 100
合計寸法変化率(%) =(FM-OM)/OM x 100
OM= 原長
RM = 緩和処理後の測定値
FM = フェルト処理後の測定値
面積寸法変化率は、下記の式で算出する。
面積寸法変化率(%)= WS + LS ―(WS x LS ) /100
◎◎:面積寸法変化率≦3.0(最良);
◎:3.0<面積寸法変化率の絶対値≦5.0(優良);
○:5.0<面積寸法変化率の絶対値≦8.0(良);
△:8.0<面積寸法変化率の絶対値≦10.0(可(実用上問題なし))
×:10.0<面積寸法変化率の絶対値(実用上問題あり)。
(風合い評価)
防縮性評価で製造された試験前の編地(試料)を、対照としての未処理の編地と比較し、風合いについて、以下の基準にて評価した。対照としての未処理の編地は、未処理のスライバーを用いたこと以外、防縮性評価における編地の製造方法と同様の方法により、製造されたものである。風合いは、編地の粗さおよび硬さに関する手触りに基づく感触である。
◎:編地(試料)は、未処理の編地よりも良好な風合いを示した(優良);
○:編地(試料)は、未処理の編地と同程度の風合いを示した(良);
△:編地(試料)は、未処理の編地よりも、僅かに粗くかつ堅かったが、実用上問題のない範囲であった;
×:編地(試料)は、未処理の編地よりも、明らかに粗くかつ堅かった(実用上問題あり)。
(撥水性評価)
JIS L 1092-1992 のスプレー試験及び記載された評価基準に従って、編地表面の撥水性能を試験し、表3の基準に基づいて評価した。評価対象の編地は、防縮性評価で製造された試験前の編地(試料)である。2以上が実用上問題のない範囲であり、3は「良」、4は「優良」、5は「最良」であった。
Figure 0007283670000003
(吸着性有機塩素化合物の定量)
吸着性有機塩素化合物(Absorbable Organic Halogens)の測定は、ISO9562(2004)に準用し、加工時の各工程中に排出される排液をサンプリングし、その液中にふくまれるAOX量を活性炭吸着―燃焼法で測定した。測定は、株式会社カネカテクノリサーチ分析部高砂分析センターに依頼した。以下の結果における「本件の製造処理排液」は実施例1における第2工程で絞ったときの排液である。
Figure 0007283670000004
(塩化物イオン濃度の測定)
実施例1で得られた羊毛繊維に含まれる塩化物イオン濃度は以下の方法にしたがって測定した。JIS K 0127 塩化物イオン濃度に従って、羊毛サンプルを蒸留水で煮沸し、抽出された塩素イオンをイオンクロマトグラフィーで測定した。測定は、「あいち産業科学技術総合センター」の産業技術センター環境材料室に依頼した。
Figure 0007283670000005
(実施例1)
図2に示す装置を用い、以下の方法に従って、防縮性獣毛繊維を連続的に製造した。
第1工程:よく洗浄された羊毛トップスライバー(Aust.Merino Wool Top 18.5μm)25g/m、(一本))を、稼働速度2m/分で、第1槽内の第1浴(ヘキサメチレンジアミン0.2mol/L、水酸化ナトリウム0.2mol/Lおよび浸透剤1g/L soln. 松本油脂製薬(株)製 SSK630 からなる水溶液、温度40℃)に、2分間、浸漬処理し、マングルで80%に絞った。
第2工程:次に、第1工程を経たスライバーを、第2槽内の第2浴(セバチン酸二塩化物を0.2mol/Lで溶解したシリコン溶剤(詳しくは、デカメチル-シクロペンタシロキサン(ペンタマー))であって、モレキュラー・シーブ4A 1/8” ペレットを含む溶剤、温度25℃)に、10秒間、浸漬し、マングルで80%に絞った。
第3工程:第2工程を経たスライバーを、第3槽内の水(温度25℃に、20秒間、浸漬することにより、水洗処理を行い、マングルで80%に絞った。本工程では、水酸化ナトリウムの駆除、低分子量のナイロン樹脂の駆除、生成した白色沈澱物であるセバチン酸の駆除を行った。
第4工程:第3工程を経たスライバーを、第4槽内の1%ギ酸水溶液(温度25℃)に、20秒間、浸漬し、マングルで80%に絞った。本工程では、繊維間に余分なポリアミドが生成している場合、当該余分なポリアミドを駆除する。
第5工程:第4工程を経たスライバーを、第5槽内の水(温度25℃)に、20秒間、浸漬することにより、水洗処理を行い、マングルで80%に絞った。
第6工程:第5工程を経たスライバーを、第6槽内の柔軟剤水溶液(柔軟剤;松本油脂製薬(株)製ブリアンLC35の1%溶液、温度40℃)に、20秒間、浸漬することにより、水洗処理を行い、マングルで80%に絞った。
第7工程:第6工程を経たスライバーを、サクションドラム乾燥機で85℃にて乾燥し、防縮性獣毛繊維を得た。
羊毛繊維の防縮加工の性能を評価するために設定したIWS TM 31に記載する方法で作成した試料の耐水系洗濯性の評価を行なった。
ドラムドライヤーで乾燥後、インターセクチング ギルでドラフト6倍で開繊し、紡出番手2/28Nm に紡績し、規定の防縮性評価試験に供した。
Wool Mark 試験法 TM 31に記載する Wascator 試験機を用い、5Aプログラムで5回、洗濯した後、面積寸法変化率を求めた。
(実施例2)
第1浴のヘキサメチレンジアミンの濃度を0.1mol/Lに、第1浴の水酸化ナトリウムの濃度を0.1mol/Lに変えたこと、および第2浴のセバチン酸二塩化物の濃度を0.1mol/L に変えたこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。
(実施例3)
第1浴のヘキサメチレンジアミンの濃度を0.05mol/Lに、第1浴の水酸化ナトリウムの濃度を0.05mol/Lに変えたこと、および第2浴のセバチン酸二塩化物の濃度を0.05mol/L に変えたこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。
(実施例4)
稼働速度を4m/分 に変えたこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。本実施例における各工程の処理時間(接触時間)はいずれも、実施例1において対応する各工程の処理時間に対して1/2であった。
(実施例5)
稼働速度を4m/分 に変えたこと、第1浴のヘキサメチレンジアミンの濃度を0.1mol/Lに、第1浴の水酸化ナトリウムの濃度を0.1mol/Lに変えたこと、および第2浴のセバチン酸二塩化物の濃度を0.1mol/L に変えたこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。本実施例における各工程の処理時間(接触時間)はいずれも、実施例1において対応する各工程の処理時間に対して1/2であった。
(実施例6)
稼働速度を4m/分 に変えたこと、第1浴のヘキサメチレンジアミンの濃度を0.05mol/Lに、第1浴の水酸化ナトリウムの濃度を0.05mol/Lに変えたこと、および第2浴のセバチン酸二塩化物の濃度を0.05mol/L に変えたこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。本実施例における各工程の処理時間(接触時間)はいずれも、実施例1において対応する各工程の処理時間に対して1/2であった。
(実施例7)
第1浴の温度を37℃に変えたこと以外、実施例3と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。
(実施例8)
第1浴の温度を35℃に変えたこと以外、実施例3と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。
(比較例1)
第1浴の温度を25℃に変えたこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。
(比較例2)
第1浴が水酸化ナトリウムを含まなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、防縮性獣毛繊維の製造および評価を行った。
(比較例3)
第1工程~第7工程を実施することなく、羊毛トップスライバーをそのまま評価に供したこと以外、実施例1と同様の方法により、評価を行った。
Figure 0007283670000006
実施例1を基準として、ヘキサメチレンジアミン 0.2mol/L,水酸化ナトリウム、0.2mol/L ,液温 40℃で界面重合処理行った。その結果、羊毛トップスライバーの繊維上に形成されたナイロンポリマー量が許容範囲内で増え、TM31による洗濯試験の結果で面積寸法変化率-9.0%であった。
実施例2に於いて、ヘキサメチレンジアミン 0.1mol/L 水酸化ナトリウム、0.1mol/L ,液温 40℃での界面重合処理では、繊維上に形成されたナイロンポリマーの生成量は、可なり少なくなった。TM31の試験では-7.5%を示し、防縮性がある程度向上した羊毛糸が出来た。
実施例3の条件で、ヘキサメチレンジアミン 0.05mol/L, 水酸化ナトリウム0.05mol/L,液温40℃で処理した。その結果、繊維上に形成されたナイロンポリマーは、図1に示す様に、羊毛表面に均一に、被膜しており、そのため、TM 31の試験で -2.7%と言う十分に満足すべき結果を得た。
これは、羊毛繊維表面にナイロン・ポリマーを均一かつ網状に被覆する事により、羊毛繊維のフェルト化の原因である表面摩擦係数の異方性(DFE)を無くする為の最適な条件であった。この条件を超えると、ナイロン・ポリマーがガムアップし、羊毛繊維間の接着が増え、防縮性を低下すると言う結果を得た。
実施例4、5、6では、機械の稼働速度を4m/分に変え、ヘキサメチレンジアミン浴、セバチン酸二塩化物浴、ギ酸処理浴の溶液処理反応時間を変えて、防縮性を評価した。各薬剤の接触時間を約半分にすると、防縮性の低下が見られた。
比較例1,2に於いて、ヘキサメチレンジアミン処理の液温を25℃にした場合、 ヘキサメチレンジアミン水溶液の羊毛繊維への浸透が抑制されるため、羊毛繊維の表面でのヘキサメチレンジアミンの吸着量は少なく、セバチン酸二塩化物と界面重合反応が制限され、ナイロンポリマーの被覆生成量は少なく、耐水系洗濯性の低下を持たらす結果となった。
比較例2の場合、水酸化ナトリウムは、ヘキサジアミンとセバチン酸二塩化物との界面重合反応で生じる「塩酸」を中和し、重合反応を触媒的に加速する役割を演じている。塩濃度を増すことにより、本件の界面重合は促進される。一方、セバチン酸二塩化物と水との反応で塩酸が発生し、水酸化ナトリウムの中和作用で、更に、重合反応に貢献している。
液・液界面重合について開示されている、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、トリクロロエチレン、クロロホルム、Socal 25, Stoddard Solvent、パークロロエチレン等は、地球環境の保全の立場から、規制される物質であり、これを使用した生産処理は非常に制約されるものである。この問題を解決する手段として、シリコン溶剤がある。本発明は、シリコン溶剤を用いても界面重合反応が可能であることを明らかにした。
溶剤を用いた獣毛繊維の加工処理は、大気汚染、水質汚濁、労働衛生、作業環境、廃棄物処理、土壌汚染等々の問題から敬遠されてきたが、本発明で実施した無機系のシリコン溶剤を用いることによって、獣毛トップ・スライバーの連続防縮製造が可能となった。本発明は、更に、処理工程中から排出される吸着性有機塩素化合物 AOX( Absorbable Organic Halogens )と、獣毛繊維内に「残留塩素化合物」を、同時に、最小限に制御した、羊毛業界初めての新規な防縮性獣毛繊維スライバーの連続的製造方法を提供するものである。

Claims (16)

  1. 以下の工程(a)、(b)および(c)この順に連続的に行うことを特徴とする、防縮性獣毛繊維の製造方法。
    (a)ジアミン化合物および前記ジアミン化合物以外の塩基性物質を含有する30~45℃の水溶液に、獣毛繊維の連続体であるスライバーを浸漬する工程。
    (b)前記浸漬されたスライバーを絞り、以下の式により算出される絞り率が50~90%であるスライバーとする工程。
    Figure 0007283670000007
    x:スライバーに付着した液体分の質量(kg)
    y:スライバーの質量(kg)
    (c)二塩基酸クロライドを溶解してなる15℃~25℃のシリコン溶剤組成物に、前記スライバーを浸漬して、ポリアミド重合体前記スライバー表面形成する工程であって、前記シリコン溶剤は、15℃~25℃において水に非相溶性であり、塩素原子を含有しない有機ケイ素化合物である工程
  2. 前記ジアミン化合物以外の塩基性物質が、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選ばれる、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  3. 前記シリコン溶剤が、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチル-シクロテトラシロキサンデカメチル-シクロペンタシロキサンドデカメチル-シクロヘキサシロキサンからなるから選ばれシロキサン化合物である、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  4. 前記ジアミン化合物および前記ジアミン化合物以外の塩基性物質を含有する水溶液におけるジアミン化合物の濃度が0.01~0.7mol/Lである、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  5. 前記スライバーの、前記ジアミン化合物および前記ジアミン化合物以外の塩基性物質を含有する水溶液との接触時間が1秒間~10分間である、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  6. 前記シリコン溶剤組成物における二塩基酸クロライドの濃度が0.01~0.7mol/Lである、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  7. 前記スライバーの前記シリコン溶剤組成物との接触時間が1秒間~1分間である、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  8. 前記ジアミン化合物以外の塩基性物質が塩酸を中和する物質である、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  9. 前記工程(c)の後に排出される排液における吸着性有機塩素化合物(AOX)の含有量(ISO9562(2004))が1mg/kg未満である、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  10. 前記工程(c)の後以下の工程(d)を行う、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
    (d)前記スライバーを水に浸漬して、スライバー表面に残存するジアミン化合物、二塩基酸クロライド化合物前記ジアミン化合物以外の塩基性物質、前記シリコン溶剤を除去するとともに、前記水に非相溶性であるシリコン溶剤を分液回収する工程。
  11. 前記工程(d)の後以下の工程(e)を行う、請求項10に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
    (e)前記スライバーを酸水溶液に浸漬して、前記スライバー表面に生成したポリアミドオリゴマーを除去する工程。
  12. 前記獣毛繊維は、羊毛、カシミヤ、モヘヤ、アンゴラ、キャメルからなる群から選ばれる天然ケラチン質繊維であり、前記天然ケラチン質繊維は繊維束の連続である、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  13. 前記ジアミン化合物および前記ジアミン化合物以外の塩基性物質を含有する水溶液における前記ジアミン化合物以外の塩基性物質の濃度が0.01~0.7mol/Lである、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  14. 前記ポリアミド重合体は液/液界面での界面重合により前記繊維表面に形成される、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  15. 前記工程を0.1~10m/分の稼働速度にて連続的に行う、請求項1に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法。
  16. 前記工程(e)の後、以下の工程(f):
    (f)前記スライバーを乾燥させる工程;
    を行う、請求項11に記載の防縮性獣毛繊維の製造方法であって、
    前記工程(f)で得られたスライバーに含まれる塩化物イオン濃度が2.0mg/L以下であり、前記塩化物イオン濃度はJIS K 0127に基づいて測定された値である、防縮性獣毛繊維の製造方法。
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