JP2005264400A - カーボンナノチューブを天然繊維へ被覆する方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】天然繊維に天然繊維本来の特質を保持させたまま導電性,熱伝導性を付与し、炭素繊維よりも高機能の新規材料を提供する。

【解決手段】カーボンナノチューブに質量比で該カーボンナノチューブの5〜20倍の界面活性剤を混合し、更に蒸留水を加えてスラリー状処理液とし、該処理液に天然繊維を浸漬・含浸させ、天然繊維表面にカーボンナノチューブを被覆せしめる。

なお、界面活性剤としてはノニオン系,アニオン系,カチオン系の何れの界面活性剤も使用可能であるが、実用上はノニオン系,アニオン系界面活性剤が好ましい。。

【選択図】 図1



Description


本発明は天然繊維に従来有していない特性、例えば導電性,熱伝導性等を付与するためカーボンナノチューブを天然繊維表面に付着させ、被覆する方法に関するものである。

天然繊維素材はしなやかで強いという特長をもち、使用中も使用後も環境負荷が少なく、しかも繊維を構成する分子の構造上、その表面には親水性の官能基が多く存在するため、保水性や環境との調和性では合成繊維素材より優れており、また、官能基の存在により化学結合を介して様々な染料,顔料をのせることができることから、古くから現在に至るまで衣料用のみならず産業用にも幅広く利用されているが、天然繊維素材はその性質上、制電性はあるにしても、導電性,熱伝導性は具有していない。

しかし、近年、IT技術の発展により高い電磁波シールドや高い制電性を求める風潮が強く、上記特性を有する天然繊維に対しても、その特性を保持したまま、導電性,熱伝導性を併せ有する素材への関心が昂まって来た。

ところで、繊維に導電性等を与える手段としては従来、導電性成分を共重合するか、混合紡糸する方法や、繊維に炭素粒子を侵入させたり、銀,銅などの金属で被覆する方法などが知られている。(例えば非特許文献文献1参照)

また、熱可塑性樹脂を炭素繊維に付着させたり、炭素繊維に対し気相成長炭素繊維及び/又はカーボンナノチューブを付着することも提案されている。(例えば特許文献1)

昭和54年6月25日 日本繊維機械学会発行「産業用繊維資材ハンドブック」461頁 特開2003−239171号

しかし、上記各導電性付与手法は何れも合成繊維、あるいは炭素繊維に加工を施すものであり、綿糸の如き天然繊維ならびに天然繊維構造物に対し導電性,熱伝導性を付与することについては触れていない。

そこで、本発明者らはカーボンナノチューブの利用に着目し、天然繊維素材に対し導電性,熱伝導性を付与することを試みた。

カーボンナノチューブは黒鉛のシートを巻いて筒状にした形状で、直径はおよそ数nmから数十nm,長さは数μmであり、導電性,熱伝導性,耐酸化性などの炭素材料が示す高機能を保持した粉体状の物質である。

従って、この物質を天然繊維上に加工するか、または天然繊維素材上に被覆することができれば、天然素材のしなやかさと、カーボンナノチューブの機能を併せ持つ新機能材料を得ることができる可能性がある。

しかし、カーボンナノチューブは水系には極めて分散しにくい性質を持ち、そのままでは天然繊維表面に加工,被覆することは困難であり、何らかの処理が必要となる。

また、天然繊維である綿糸等の表面には脂分が残留しているため、未処理のままでは水系との親和性は低い。

そのため、カーボンナノチューブを天然繊維に被覆する場合には、なお種々の問題があり、とりわけ以下の2つの課題を解決することが不可欠であることを知見した。

(1)天然繊維への被覆力を持った安定したカーボンナノチューブ分散系を得ること。

(2)カーボンナノチューブ被覆に適した天然繊維の表面改質法を開発すること。

また、炭素系の優れた機能を発現させるためには、カーボンナノチューブを繊維表面に規則正しく配列させることが必要である。

本発明は上述の如き実状に対し、特に上記課題の解決を見出すことにより天然繊維素材に欠如している導電性及び熱伝導性を付与し、天然繊維の特質を保持し、現在使用されている炭素繊維よりも高機能を有する材料を提供することを目的とするものである。

即ち、上記目的を達成する本発明の特徴は、カーボンナノチューブに質量比で該カーボンナノチューブの5〜20倍の界面活性剤を混合し、更に蒸留水を加えてスラリー状のカーボンナノチューブを分散させた処理液を作り、天然繊維素材をこの処理液の中に浸漬・含浸させ天然繊維素材の表面にカーボンナノチューブを被覆せしめる方法にある。

ここで混合する界面活性剤はアニオン系,ノニオン系,カチオン系の何れでもよいが、好ましくはアニオン系,ノニオン系の界面活性剤である。

従来、疎水性粒子を水系に分散させる方法としては、界面活性剤を少量水系に添加し、安定な分散液を作ることが行われてきた。

カーボンナノチューブ分散系についてもこの手法を適用することはできるが、安定な分散系が得られてもこれがカーボンナノチューブと天然繊維との間に十分な結合力をもたらすものとは限らない。

そこで、本発明は、カーボンナノチューブに所要量、特にカーボンナノチューブの5〜20倍の界面活性剤を混合し、スラリー状として処理液を作り、この中に天然繊維を浸漬し、含浸させることによりその表面にカーボンナノチューブを被覆固定せしめるようにした。

ここで、混合する界面活性剤としては前記の如くアニオン系,ノニオン系,カチオン系の何れも使用可能であるが、なかでもアニオン系,ノニオン系、特にノニオン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン誘導体を始め、既知の界面活性剤が用いられる。

しかし、アニオン系,カチオン系の各種界面活性剤も使用することができる。

上記本発明方法によれば、天然繊維素材の表面にカーボンナノチューブを十分な結合力をもって付着、被覆することができ、天然繊維の特性を保持し、しかも導電性,熱伝導性を備えた新機能材料を得ることができ、衣料用,産業用として各種用途への利用が期待される。

上述したように本発明は、基本的に天然繊維にカーボンナノチューブを付着させるのに適した処理液の調製と、効果的に処理液からカーボンナノチューブを天然繊維に付着させるために不可欠な天然繊維の表面改質によって構成される。

カーボンナノチューブは、嵩密度が低く非常に微細な粒子であり、取り扱いには十分な注意が必要である。

そのため、本発明で実施する天然繊維への付着・被覆の場合には、カーボンナノチューブを直接、付着させることは事実上、不可能であり、従って、ここで示すように処理液にカーボンナノチューブを分散させておき、その中に天然繊維を含浸させ被覆する方法が採用される。

しかしながら、カーボンナノチューブ自体は疎水性が極めて強く、水には容易に分散ではない。そこでカーボンナノチューブ表面を親水化する方法として、プラズマ処理や薬品による酸化処理が考えられるが、処理後の洗浄・処理に使う薬品の除去などに余分な工程が必要となるので好ましくない。

また、界面活性剤の疎水基をカーボンナノチューブ表面と結合させることによりカーボンナノチューブを親水化することはできるが、カーボンナノチューブの表面は99%以上が疎水性のグラフェン面であるので、安定した分散系を得るためには少量の活性剤添加では効果を発揮できない。

そこで、本発明においては前記の如く特に質量比でカーボンナノチューブに対し5〜20倍の界面活性剤を混合したスラリーを処理液に使用するようにした。

次に、本発明におけるスラリー状処理液の具体的な調製手順の概要を示す。

(1)先ず、容器にカーボンナノチューブを適宜量を計りとり、ここに界面活性剤を添加する。この場合、カーボンナノチューブと界面活性剤との配合割合としては、界面活性剤がカーボンナノチューブに対し所要適量であることが必要であり、例えばカーボンナノチューブ量に対し界面活性剤を5〜20倍程度の割合で添加する。

そして、上記得られた添加物に次に蒸留水を所定量、好ましくはカーボンナノチューブと界面活性剤の総量の2倍程度の蒸留水を加え、これらを混合し、次いで蓋付きガラス容器に移して30分×4回程度、超音波照射を行い均一化する。

(2)天然繊維の前処理1−脱脂・官能基の活性化

一方、天然繊維に対し、夫々試料を作成し、所要時間、例えば1時間又は64時間、アルカリ溶液、例えば水酸化ナトリウム又はカリウム溶液に浸漬する。この場合、水酸化ナトリウム又はカリウムの濃度としては通常、0.3〜0.7mol/L程度が好ましい。

そして、浸漬後、取り出して十分に水洗し、蒸留水中に保存する。

(3)カーボンナノチューブ被覆操作の手順

かくして、上記の手順を経た後、前記カーボンナノチューブを分散したスラリー状の処理液に(2)に示した前処理を施した天然繊維を夫々浸漬し、所要時間後に引き上げ、過剰となった液を除き、60℃前後の恒温乾燥機で所要時間、例えば2時間乾燥する。

なお、上記本発明において天然繊維とは、天然に得られる繊維の外、天然で得られる素材を加工,再生した繊維を総称し、綿,麻の如き植物性繊維,絹,羊毛の如き動物性繊維,石綿の如き鉱物性繊維及びトウモロコシ,大豆等より作られた再生繊維や動植物性タンパクから作られた再生繊維が含まれるが、特に綿,麻の如き植物性繊維が最も効果的であり、綿糸,麻糸など、糸に限らず該繊維による織物,編物,不織布などの各構造体も含むものである。

以下、更に本発明の実施例として実験例を述べる。

先ず容器に表1に示す組成割合でカーボンナノチューブ2gにノニオン系界面活性剤30gを添加し、更に蒸留水を70g加えて処理液を作成した。

Figure 2005264400
そして、上記処理液を蓋付きガラス容器に移して30分×4回超音波照射を行い、均一化してスラリー状処理液を作成した。

一方、天然繊維として綿番手10番手の綿糸を10cm位の長さにカットして試料1,2を作り、夫々を0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液に浸漬し、1時間後、試料1を、また64時間後、試料2を夫々液中より取り出し、蒸留水中に保存した。

次いで、前記のカーボンナノチューブを分散したスラリー状処理液に前記前処理を施した夫々の綿糸を浸漬し5分後、綿糸を処理液より引き上げ、過剰となった液を除き、60℃の恒温乾燥機で2時間乾燥した。

上記のようにしてカーボンナノチューブを被覆後、乾燥した綿糸表面は図1の走査型電子顕微鏡写真に示す如くであった。

同写真より本発明において綿糸表面がカーボンナノチューブを含む処理液で均一に被覆されていることが観察される。

次に上記の処理された綿糸を利用し、織物を作成したものは天然繊維のしなやかさ及び感触にカーボンナノチューブによる炭素特有の特性が付加され、今後の各用途への利用に十分期待できることが確認された。

本発明方法(非イオン系前処理1時間)を実施した天然繊維表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)である。 本発明方法(非イオン系前処理64時間)を実施した天然繊維表面の走査電子顕微鏡写真(倍率100倍)である。

Claims (2)


  1. カーボンナノチューブに、質量比で該カーボンナノチューブの5〜20倍の界面活性剤を混合し、次いで蒸留水を加えてスラリー状処理液とし、該処理液に天然繊維を浸漬・含浸させ、天然繊維表面にカーボンナノチューブを被覆せしめることを特徴とするカーボンナノチューブを天然繊維へ被覆する方法。

  2. 界面活性剤がアニオン系又はノニオン系界面活性剤である請求項1記載のカーボンナノチューブを天然繊維へ被覆する方法。
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