JP7281967B2 - 焼成色鉛筆芯 - Google Patents
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また、前述した色鉛筆芯をシャープペンシルやホルダーなどに使用した場合に、染料と溶剤の組み合わせによっては、経時後に、溶剤がシャープペンシルやホルダーなどの部品を腐食するおそれがあった。
すなわち、本発明は、
「1.体質材と無機系結合材とを含む焼成芯体の気孔中に、ポリオキシエチレン系界面活性剤と、沸点が160℃以上のグリコールエーテルと、染料とを含むインキを含浸したことを特徴とする、焼成色鉛筆芯。
2.前記界面活性剤が、ポリオキシエチレン多環フェニル系界面活性剤であることを特徴とする、前記1項に記載の焼成色鉛筆芯。
3.前記界面活性剤のHLB値が15以下であることを特徴とする、前記1項または2項に記載の焼成色鉛筆芯。」に関する。
さらに、本発明による焼成色鉛筆芯をシャープペンシルに使用した場合には、金属材からなるシャープペンシルの先端開口部やチャック、芯収容筒などの部品を腐食することがない。
ポリオキシエチレン系界面活性剤としては、染料の溶解性に優れ、焼成芯体の気孔中への含浸性に優れ、さらに、焼成色鉛筆芯をシャープペンシルに使用した場合に、金属材からなるシャープペンシルの部品を腐食しづらいことを考慮すれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルを用いることが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリステルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチレン化メチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化メチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルなどが挙げられる。
これらのポリオキシエチレン系界面活性剤は、1種または2種以上の混合物として使用してもよい。
本発明で用いるポリオキシエチレン多環フェニル系界面活性剤とは、分子骨格中にフェニル基を2つ以上有し、エチレンオキサイドが付加された構造を有するものであり、一般的に次式で表すことができる。また、フェニル基は置換基を有してもよい。
なお、ここでいう「多環フェニル基」とは、「単環芳香族炭化水素基(例えばフェニル基、フェニレン基等)を少なくとも2つ有する基」、又は「多環芳香族炭化水素基(具体的には、少なくとも2つのベンゼン環が縮合している基であり、例えば、ナフチル基、フェナントリル基等が挙げられる)を少なくとも1つ有する基」である。
前記式中の「多環フェニル基」は、例えば下記式(a)~(d)の構造を有する。
また、染料の溶解性や安定性、ならびに焼成芯体へのインキの含浸性を考慮して、常温で液体のポリオキシエチレン系界面活性剤が好ましい。
なお、本発明において、ポリオキシエチレン系界面活性剤のHLB値とは、グリフィン法から算出される値であり、下記式によって算出される。
HLB値=20×(親水基の質量%)=20×(親水基の式量の総和/界面活性剤の分子量)
また、後述する蛍光染料を用いる場合には、前記ポリオキシエチレン系界面活性剤と前記沸点が160℃以上のグリコールエーテルの配合比率としては、1:99~1:1の範囲であることが好ましい。ポリオキシエチレン系界面活性剤の配合比率がこの範囲より少ないと、インキへの蛍光染料の溶解性が低下して、焼成色鉛筆芯の発色性が劣る傾向があり、この範囲より多いと、インキの粘度が上昇して、焼成芯体にインキが含浸され難くなり、焼成色鉛筆芯の発色性が劣る傾向がある。
さらに好ましくは、5:99~2:3の範囲であり、さらに好ましくは、1:9~3:7の範囲である。この範囲にあると、インキへの蛍光染料の溶解性や、焼成芯体へのインキの含浸性が良好で、焼成色鉛筆芯の発色性が良好となる。
一般染料は、前記ポリオキシエチレン系界面活性剤および沸点が160℃以上のグリコールエーテルに溶解し、発色性が高ければ、特に限定はないが、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。より具体的には、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB-B、BASE OF BASIC DYES RO6G-B、BASE OF BASIC DYES VPB-B、BASE OF BASIC DYES VB-B、BASE OF BASIC DYES MVB-3(オリエント化学工業株式会社)、アイゼンスピロンブラック GMH-スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C-RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C-RH、アイゼンスピロンレッド C-GH、アイゼンスピロンレッド C-BH、アイゼンスピロンイエロー C-GNH、アイゼンスピロンイエロー C-2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH-スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.バイオレット510、S.B.N.イエロー530、S.R.C-BH(保土谷化学工業株式会社)等が挙げられる。これらの染料は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
さらに、焼成色鉛筆芯の性能に影響を及ぼさない範囲で、筆跡の色を調整するなどのために、前記一般染料以外の染料を併用してもよい。
また、樹脂粒子を前記染料で染着した着色樹脂粒子などを用いてもよい。
特に、アゾメチン系、キサンテン系、トリフェニルメタン系の蛍光染料との、溶解性、インキ安定性を考慮すれば、HLB値が15以下であるポリオキシエチレン系界面活性剤、沸点が160℃以上のジグリコールエーテルと併用して用いることが好ましい。
具体的には、アゾメチン系の蛍光染料としては、ベーシックイエロー1、同40、キサンテン系の蛍光染料としては、ベーシックレッド1:1、ベーシックバイオレット11:1、トリフェニルメタン系の蛍光染料としては、ベーシックバイオレット1などが特に好ましい染料として挙げられる。これらの蛍光染料は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
さらに、焼成色鉛筆芯の性能に影響を及ぼさない範囲で、筆跡の色を調整するなどのために、前記蛍光染料以外の染料を併用してもよい。
また、樹脂粒子を前記蛍光染料で染着した着色樹脂粒子などを用いてもよい。
(実施例1)
(焼成色鉛筆芯の製造)
(1a)焼成芯体の製造
窒化ホウ素 45質量部
シリカ 45質量部
ポリビニルアルコール 10質量部
水 100質量部
上記配合物をニーダー、三本ロールにて水分を蒸発しながら加熱混練し、得られた混練物を所定の径にて押出成形を行い、成形物を得た。この成形物をアルゴンガス中において、昇温速度10℃/時間で600℃まで昇温し5時間保持し、その後、酸素雰囲気として、100℃/hrで昇温し、1100℃で1時間焼成して、気孔率が30%の焼成芯体を得た。
(1b)含浸インキの製造
ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル 50質量部
(第一工業製薬株式会社製、商品名:ノイゲンEA-87、エチレンオキサイド平均付加モル数:7、HLB値:10.6)
ジエチレングリコールモノベンジルエーテル 15質量部
黄色一般染料 35質量部
(アゾメチン系染料、ベーシックイエロー28)
上記配合物を70℃に加温しながら、均一に混合するまで攪拌をし、含浸インキ(1)を得た。
(1c)焼成色鉛筆芯の製造
上記(1a)で得られた焼成芯体を、(1b)で作製した含浸インキ(1)中に70℃に加温した状態で浸漬し、10時間保持をした。次に焼成芯体の表面をエタノールで洗浄し、表面に付着した過剰のインキを除去し、焼成色鉛筆芯を得た。
(b)含浸インキの製造
(表1)に示した配合とした以外は実施例1と同じ方法により、含浸インキ(2)~(14)を作製した。
・赤色一般染料:キサンテン系染料、ベーシックレッド1
・青色一般染料:トリフェニルメタン系染料、ベーシックブルー7
・桃色蛍光染料:キサンテン系染料、ベーシックバイオレット11:1/ベーシックレッド1:1
・紫色蛍光染料:トリフェニルメタン系染料、ベーシックバイオレット1
・ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル
(第一工業製薬株式会社製、商品名:ノイゲンEA-87、エチレンオキサイド平均付加モル数:7、HLB値:10.6)
・ポリオキシエチレンジスチレン化メチルフェニルエーテル
(日本乳化剤株式会社製、商品名:ニューコール780、エチレンオキサイド平均付加モル数:80、HLB値:18.9)
・ソルビタンモノラウレート
(花王株式会社製、商品名:レオドールSP-L10、HLB値:8.6)
・ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(沸点:302.0℃)
・ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:283.0℃)
・プロピレングリコールモノフェニルエーテル(沸点:242.7℃)
・エチルアルコール
(c)焼成鉛筆芯の製造
実施例1の(1a)で得られた焼成芯体と、(表1)に示した含浸インキを用いた以外は、実施例1と同じ方法により、実施例2~10、比較例1~4の焼成色鉛筆芯を得た。
○ :非常に発色が良く、蛍光色が鮮やかに視認できる。
△ :筆跡が薄く、やや発色に劣るが、蛍光色として視認可能。
× :筆記することができず、筆跡を視認できない。
書き味1(初期):焼成色鉛筆芯を用いて、前記上質紙に筆記し、その時の書き味を官能試験により評価した。
○ :滑らかに筆記可能。
△ :筆感がややざらつき重い。
× :筆感がざらつき重く、筆記できない。
○ :初期と変わりなく非常に発色が良く、蛍光色が鮮やかに視認できる。
△ :初期と比べて筆跡が薄く、やや発色に劣るが、蛍光色として視認可能。
× :筆記することができず、筆跡を視認できない。
書き味2(経時):製造後、25℃環境下で4週間放置した焼成色鉛筆芯を用いて、前記上質紙に筆記し、その時の書き味を官能試験により評価した。
○ :滑らかに筆記可能。
△ :筆感がややざらつき重い。
× :筆感がざらつき重く、筆記できない。
また、実施例1~10の焼成色鉛筆芯を、真鍮製のチャックを有し且つ該チャックを前進させて鉛筆芯を繰り出すシャープペンシルに用いたところ、焼成色鉛筆芯をチャックに保持した状態で、50℃環境下で8週間放置しても、チャックが腐食されることがなかった。
一方、比較例1においては、実施例に比較して、初期の書き味は一定の性能を保っていたが、経時後の書き味が悪く、発色性も悪く、焼成色鉛筆芯としての性能を満たしていなかった。また、比較例2~4においては、実施例に比較して、初期の性能は、満足するものか一定の性能を保っているものであったが、経時的に発色性ならびに書き味が劣り、焼成色鉛筆芯としての性能を満たしていなかった。
Claims (2)
- 体質材と無機系結合材とを含む焼成芯体の気孔中に、ポリオキシエチレン系界面活性剤と、沸点が160℃以上のグリコールエーテルと、染料とを含むインキを含浸したことを特徴とする、焼成色鉛筆芯であって、前記ポリオキシエチレン系界面活性剤が、ポリオキシエチレン多環フェニル系界面活性剤である、焼成色鉛筆芯。
- 前記界面活性剤のHLB値が15以下であることを特徴とする、請求項1に記載の焼成色鉛筆芯。
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