A.第1実施形態:
A-1.装置構成:
図1は、本実施形態における静電チャック100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における静電チャック100のXZ断面構成を概略的に示す説明図であり、図3は、本実施形態における静電チャック100のXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
静電チャック100は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを保持するために使用される。静電チャック100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された板状部材10およびベース部材20を備える。板状部材10とベース部材20とは、板状部材10の下面S2(図2参照)とベース部材20の上面S3とが上記配列方向に対向するように配置される。静電チャック100は、特許請求の範囲における保持装置に相当する。
板状部材10は、上述した配列方向(Z軸方向)に略直交する略円形平面状の上面(以下、「吸着面」という。)S1を有する板状の部材であり、例えばセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)により形成されている。板状部材10の直径は例えば50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の厚さは例えば1mm~10mm程度である。板状部材10の吸着面S1は、特許請求の範囲における第1の表面に相当し、板状部材10の下面S2は、特許請求の範囲における第2の表面に相当し、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を「面方向」といい、図3に示すように、面方向の内、吸着面S1の中心点CPを中心とする円周方向を「円周方向CD」といい、面方向の内、円周方向CDに直交する方向を「径方向RD」という。
図2に示すように、板状部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されたチャック電極40が配置されている。Z軸方向視でのチャック電極40の形状は、例えば略円形である。チャック電極40に電源(図示しない)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが板状部材10の吸着面S1に吸着保持される。
板状部材10の内部には、また、それぞれ導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成された、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのドライバ電極層51および各種ビア53,54とが配置されている。本実施形態では、ヒータ電極層50はチャック電極40より下側に配置され、ドライバ電極層51はヒータ電極層50より下側に配置されている。
ベース部材20は、例えば板状部材10と同径の、または、板状部材10より径が大きい円形平面の板状部材であり、例えば金属(アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されている。ベース部材20の直径は例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm)であり、ベース部材20の厚さは例えば20mm~40mm程度である。ベース部材20の上面S3は、特許請求の範囲における第3の表面に相当し、ベース部材20の下面S4は、特許請求の範囲における第4の表面に相当する。
ベース部材20は、板状部材10の下面S2とベース部材20の上面S3との間に配置された接着部30によって、板状部材10に接合されている。接着部30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。接着部30の厚さは、例えば0.1mm~1mm程度である。
ベース部材20の内部には冷媒流路21が形成されている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、ベース部材20が冷却され、接着部30を介したベース部材20と板状部材10との間の伝熱(熱引き)により板状部材10が冷却され、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度分布の制御が実現される。
A-2.ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成:
次に、ヒータ電極層50の構成およびヒータ電極層50への給電のための構成について詳述する。上述したように、板状部材10には、ヒータ電極層50と、ヒータ電極層50への給電のためのドライバ電極層51および各種ビア53,54とが配置されている。また、静電チャック100には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成(後述する端子用孔Htに収容されたパッド側給電端子72等)が設けられている。図4は、ヒータ電極層50およびヒータ電極層50への給電のための構成を模式的に示す説明図である。図4の上段には、板状部材10に配置されたヒータ電極層50の一部のYZ断面構成が模式的に示されており、図4の中段には、板状部材10に配置されたドライバ電極層51の一部のXY平面構成が模式的に示されており、図4の下段には、ヒータ電極層50への給電のための他の構成のYZ断面構成が模式的に示されている。
ここで、図3に示すように、本実施形態の静電チャック100では、板状部材10に、面方向(Z軸方向に直交する方向)に並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSE(図3において破線で示す)が設定されている。より詳細には、Z軸方向視で、板状部材10が、吸着面S1の中心点CPを中心とする同心円状の複数の第1の境界線BL1によって複数の仮想的な環状領域(ただし、中心点CPを含む領域のみは円状領域)に分割され、さらに各環状領域が、径方向RDに延びる複数の第2の境界線BL2によって円周方向CDに並ぶ複数の仮想的な領域であるセグメントSEに分割されている。図4の上段には、一例として、板状部材10に設定された6つのセグメントSEが示されている。
図4の上段に示すように、ヒータ電極層50は、複数のヒータ電極500を含んでいる。ヒータ電極層50に含まれる複数のヒータ電極500のそれぞれは、板状部材10に設定された複数のセグメントSEの1つに配置されている。すなわち、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに、1つのヒータ電極500が配置されている。換言すれば、板状部材10において、1つのヒータ電極500が配置された部分(主として該ヒータ電極500により加熱される部分)が、1つのセグメントSEとなる。
図5は、各セグメントSEに配置されたヒータ電極500のXY断面構成を模式的に示す説明図である。図5に示すように、ヒータ電極500は、Z軸方向視で線状の抵抗発熱体であるヒータライン部502と、ヒータライン部502の両端部に接続されたヒータパッド部504とを有する。本実施形態では、ヒータライン部502は、Z軸方向視で、セグメントSE内の各位置をできるだけ偏り無く通るような形状とされている。他のセグメントSEに配置されたヒータ電極500の構成も同様である。ヒータ電極500のヒータライン部502は、特許請求の範囲におけるヒータに相当する。
なお、上述したように、本実施形態の静電チャック100では、複数のセグメントSEのそれぞれに1つのヒータ電極500が配置されているが、ここで言う1つのヒータ電極500とは、独立して制御可能なヒータ電極500の単位を意味しており、必ずしも単一のヒータ電極500に限定されるものではない。例えば、1つのセグメントSEに、互いに共通に制御される複数のヒータ電極500が配置されているとしてもよい。また、1つのセグメントSEに配置されたヒータ電極500のヒータライン部502の構成が、Z軸方向における位置が互いに異なる複数層のヒータライン部502の部分が互いに直列に接続された構成であるとしてもよい。
また、図4の中段に示すように、板状部材10に配置されたドライバ電極層51は、複数のドライバ電極510を有している。本実施形態では、ドライバ電極510は、Z軸方向視で、ある程度の幅を有する線状の導電部材である。複数のヒータ電極500のそれぞれについて、ヒータ電極500の一端は、ビア53を介して、1つのドライバ電極510に電気的に接続されており、該ヒータ電極500の他端は、ビア53を介して、他の1つのドライバ電極510に電気的に接続されている。なお、図4に示す例のように、各ヒータ電極500の一端については、互いに同一のドライバ電極510に電気的に接続されていてもよい。
また、図2および図4に示すように、静電チャック100には、複数の端子用孔Htが形成されている。図6は、静電チャック100における端子用孔Ht付近の部分(図4におけるX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。図6に示すように、各端子用孔Htは、ベース部材20を上面S3から下面S4まで貫通する第1の貫通孔22と、接着部30を上下方向に貫通する第2の貫通孔32と、板状部材10の下面S2によって形成され、上方に凹む位置決め用凹部13と、位置決め用凹部13の底面によって形成され、上方に凹む凹部12とが、互いに連通することにより構成された一体の孔である。なお、本実施形態では、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22と接着部30の第2の貫通孔32とは、略同径であるが、板状部材10に形成された位置決め用凹部13の径は、第1の貫通孔22および第2の貫通孔32の径より小さく、位置決め用凹部13の底面によって形成された凹部12の径(凹部12の凹み方向に直交する幅)は、位置決め用凹部13の径より小さい。また、本実施形態では、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22は、その下端部(以下、「第1の貫通孔下端部23」という。)において拡径している。位置決め用凹部13の直径(位置決め用凹部13の凹み方向に直交する幅)は例えば6mm~12mm程度であり、位置決め用凹部13の凹み方向の深さは例えば0.1mm~1.0mm程度である。第1の貫通孔22の直径(第1の貫通孔22の延伸方向に直交する幅)は例えば6mm~15mm程度である。第2の貫通孔32の直径(第2の貫通孔32の延伸方向に直交する幅)は例えば6mm~15mm程度である。なお、板状部材10の位置決め用凹部13は、特許請求の範囲における凹部に相当する。第1の貫通孔22は、特許請求の範囲における端子用孔に相当する。
板状部材10の下面S2における各端子用孔Htに対応する位置(Z軸方向において端子用孔Htと重なる位置)には、導電性材料により構成された複数の給電パッド(給電電極)70が形成されている。より詳細には、図6に示すように、複数の給電パッド70は、板状部材10の下面S2においてZ軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13に重なるように上下方向に略直交する方向に並んで配置されている。
各給電パッド70は、ビア54を介して、ドライバ電極層51のドライバ電極510に電気的に接続されている。給電パッド70は、特許請求の範囲における給電電極に相当する。
図2、図4および図6に示すように、各端子用孔Htにおいて、各給電パッド70上には、導電性材料により構成されたパッド側給電端子72が設けられている。より詳細には、各パッド側給電端子72は、第1の貫通孔22の内部に配置されている。各パッド側給電端子72は、基部74と、基部74から延びる棒状部76とを有している。パッド側給電端子72の基部74は、例えばろう材78を用いたろう付けにより給電パッド70に接合されている。パッド側給電端子72は、特許請求の範囲における給電端子に相当する。
また、図2、図4および図6に示すように、各端子用孔Ht内には、上側コネクタ200が収容されている。上側コネクタ200は、端子用孔Ht内における上側の端部付近に位置している。上側コネクタ200は、第1のハウジング210と、第2のハウジング220と、ソケット230とを備える。上側コネクタ200は、特許請求の範囲におけるコネクタに相当する。
上側コネクタ200の第1のハウジング210は、柱状の部材であり、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。Z軸方向視での第1のハウジング210の直径は、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22および接着部30の第2の貫通孔32の直径より小さく、かつ、板状部材10の位置決め用凹部13の直径より小さい。なお、第1のハウジング210の下側部分214は、他の部分より縮径している。上側コネクタ200の第1のハウジング210は、板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込まれている。より詳細には、第1のハウジング210の上面における外周付近の領域は、板状部材10の下面S2(より詳細には、板状部材10の位置決め用凹部13の底面)に当接している。これにより、板状部材10に対する(すなわち、給電パッド70やパッド側給電端子72に対する)第1のハウジング210のZ軸方向の位置決めがなされる。第1のハウジング210の下側部分214は、また、板状部材10の位置決め用凹部13の側面に当接している。これにより、板状部材10に対する(すなわち、給電パッド70やパッド側給電端子72に対する)第1のハウジング210の面方向の位置決めがなされる。また、第1のハウジング210には、Z軸方向に延びる複数の貫通孔212が形成されており、各貫通孔212にパッド側給電端子72の棒状部76が挿通されている。これにより、板状部材10に対する(すなわち、給電パッド70やパッド側給電端子72に対する)第1のハウジング210の面方向の位置決めがなされる。上側コネクタ200の第1のハウジング210の貫通孔212は、特許請求の範囲における端子挿通用孔に相当する。なお、第1のハウジング210の上面と、板状部材10の凹部12の底面および側面とにより囲まれた空間には、各給電パッド70間や各パッド側給電端子72間の絶縁のために、樹脂接着剤79が充填されている。また、第1のハウジング210の側面は、端子用孔Htの側面(端子用孔Htを構成する第2の貫通孔32および第1の貫通孔22の側面)から離間しており、両者の間に空間が存在している。
上側コネクタ200の第2のハウジング220は、柱状の部材であり、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。Z軸方向視での第2のハウジング220の直径は、第1のハウジング210の直径と略同一である。第2のハウジング220の上面側には、第1のハウジング210の下側部分214と嵌合する凹部224が形成されている。第2のハウジング220は、第2のハウジング220の凹部224に第1のハウジング210の下側部分214が嵌合した状態で、第1のハウジング210の下面に当接している。これにより、第1のハウジング210に対する(すなわち、板状部材10や給電パッド70、パッド側給電端子72に対する)第2のハウジング220のZ軸方向および面方向の位置決めがなされる。また、図示しないが、第2のハウジング220の凹部224の側面と、第1のハウジング210の下側部分214の側面と、の一方には凸部が形成され、他方には該凸部と嵌合する凹部が形成されている。これらの凸部と凹部とが嵌合することにより、第1のハウジング210に対する(すなわち、板状部材10や給電パッド70、パッド側給電端子72に対する)第2のハウジング220の回転方向の位置決めがなされる。また、第2のハウジング220には、Z軸方向に延びる複数の貫通孔222が形成されており、各貫通孔222にはソケット230が挿入(圧入)されている。また、第2のハウジング220の側面は、端子用孔Htの側面(端子用孔Htを構成する第2の貫通孔32および第1の貫通孔22の側面)から離間しており、両者の間に空間が存在している。
上側コネクタ200のソケット230は、略円柱状の部材であり、例えば金属等の導電性材料により形成されている。ソケット230の上面側には、パッド側給電端子72の棒状部76が挿入される孔232が形成されている。ソケット230の孔232にパッド側給電端子72の棒状部76が挿入された状態では、ソケット230とパッド側給電端子72とが電気的に接続される。なお、この状態では、各パッド側給電端子72間は、樹脂接着剤79や第1のハウジング210、第2のハウジング220が介在することによって互いに絶縁される。
また、図2、図4および図6に示すように、各端子用孔Ht内には、下側コネクタ300が収容されている。下側コネクタ300は、端子用孔Ht内における下側の端部付近に位置している。下側コネクタ300は、ハウジング310と、ソケット330とを備える。
下側コネクタ300のハウジング310は、略円柱状の部材であり、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。Z軸方向視でのハウジング310の直径は、端子用孔Htを構成するベース部材20の第1の貫通孔22の直径と略同一である。そのため、ハウジング310の側面は、端子用孔Htの側面(第1の貫通孔22の側面)と接している。ハウジング310には、Z軸方向に延びる複数の貫通孔312が形成されており、各貫通孔312にはソケット330が挿入(圧入)されている。
また、ハウジング310の側面には、面方向に延びるスリット314が形成されている。該スリット314には、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されたCリング352が挿入されている。Cリング352における外周側の一部分は、スリット314からはみ出しており、該はみ出した部分の上面は、ベース部材20の第1の貫通孔下端部23の上面に当接している。これにより、ベース部材20に対するハウジング310のZ軸方向の位置決めがなされる。また、この第1の貫通孔下端部23内には、ハウジング310の下側部分を取り囲むような略円筒状の押さえプレート356が配置されており、該押さえプレート356は、止めネジ354によりベース部材20に固定されている。これにより、ハウジング310(下側コネクタ300)が、ベース部材20に固定される。なお、押さえプレート356は、例えば樹脂等の絶縁材料により形成されている。
また、ハウジング310におけるZ軸方向視での中心付近には、Z軸方向に延びる貫通孔315が形成されており、該貫通孔315には、例えば樹脂等の絶縁材料により形成された押さえ部材340が挿通されている。押さえ部材340は、ハウジング310の貫通孔315の内周面に形成されたネジに螺号することにより、ハウジング310に固定されている。また、押さえ部材340の上端は、上側コネクタ200の第2のハウジング220における下面226(すなわち、板状部材10に対向する側とは反対側の表面)に当接している。押さえ部材340の存在により、上側コネクタ200の第2のハウジング220の下方向への移動(すなわち、上側コネクタ200の第2のハウジング220のパッド側給電端子72からの抜け)が規制される。
下側コネクタ300のソケット330は、略円柱状の部材であり、例えば金属等の導電性材料により形成されている。ソケット330の下面側には、電源側の端子が挿入される孔332が形成されている。また、ソケット330は、リード線80を介して、上側コネクタ200のソケット230と電気的に接続されている。
このような構成において、各ヒータ電極500は、電源(図示しない)に対して互いに並列に接続されている。電源から、下側コネクタ300のソケット330、リード線80、上側コネクタ200のソケット230、パッド側給電端子72、給電パッド70、ビア54、ドライバ電極510およびビア53を介して、ヒータ電極500に電圧が印加されると、ヒータ電極500が発熱する。これにより、ヒータ電極500が配置されたセグメントSEが加熱され、板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御(ひいては、板状部材10の吸着面S1に保持されたウェハWの温度分布の制御)が実現される。本実施形態では、各ヒータ電極500がヒータ用電源に対して互いに並列に接続されているため、各ヒータ電極500単位で(すなわち、各セグメントSE単位で)ヒータ電極500の発熱量を制御することができ、セグメントSE単位での板状部材10の吸着面S1の温度分布の制御(すなわち、よりきめ細かい単位での温度分布制御)を実現することができる。
A-3.板状部材10の位置決め用凹部13付近の詳細構成:
次に、静電チャック100における板状部材10の位置決め用凹部13付近の部分について、さらに詳細に説明する。
A-3-1.板状部材10の位置決め用凹部13の構成
図7は、静電チャック100における板状部材10の位置決め用凹部13付近の部分(図6のX2の部分)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図7に示すように、板状部材10の位置決め用凹部13のZ軸方向視における外周線OL1は、六角形である。言い換えると、位置決め用凹部13の凹み方向に直交する断面形状は、六角形である。ここでいう「六角形」は、辺の真直度が高い六角形や、2辺がつくる角にカーブがかかっていない六角形などの狭義の六角形に限らず、辺の真直度が低い六角形や、2辺がつくる角にカーブがかかっている六角形などをも含む広義の六角形を意味する(以下において、六角形または六角形以外の多角形をいうときも同様)。
図7に示すように、板状部材10の位置決め用凹部13は、Z軸方向視で第1の貫通孔22の外周線OL2の内側に収まっている。
A-3-2.上側コネクタ200の構成
図8は、静電チャック100における上側コネクタ200の第1のハウジング210付近の部分(図6のX2の部分)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図8に示すように、位置決め用凹部13にはめ込まれている上側コネクタ200の第1のハウジング210のZ軸方向視における外周線OL3は、6つの角部211を有する六角形である。言い換えると、上側コネクタ200における位置決め用凹部13の凹み方向に直交する断面形状は、六角形である。
図8に示すように、上側コネクタ200の第1のハウジング210のZ軸方向視における外周線OL3は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する。ここでいう「上側コネクタ200の第1のハウジング210のZ軸方向視における外周線OL3は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する」は、下記の条件(A1)および条件(A2)を満たすことを意味する。
条件(A1)
Z軸方向視において、上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3の各角部211の少なくとも一部(以下、「特定部分」という。)における直径(例えば、仮想線分D1の長さ)は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1の少なくとも一部における直径(例えば、仮想線分D2の長さ)の90%以上である。ここでいう「上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3の直径」は、Z軸方向視において、上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3によって形成される平面図形(六角形の図形)の重心C1(当該平面図形が自由な回転運動をするときの回転軸。以下、単に「上側コネクタ200の重心C1」ともいう。)を通る仮想直線上に位置する2点間を結ぶ仮想線分(例えば、点P1と点P2との間を結ぶ仮想線分D1)の長さである。また、ここでいう「板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1の直径」は、Z軸方向視において、上側コネクタ200の重心C1を通る仮想直線上に位置する2点間を結び、仮想線分D1を包含する仮想線分(例えば、点P3と点P4との間を結ぶ仮想線分D2)の長さである。
条件(A2)
Z軸方向視において、上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3の上記特定部分における径(仮想線分。例えば、仮想線分D1)を、上側コネクタ200の重心C1を回転軸心としてθ1(0°≦θ1≦5°(より好ましくは、0°≦θ1≦1°))だけ回転させた仮想線分(例えば、仮想線分D3)は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1と重なる。
なお、図8では、図の理解が容易となるように、便宜上、上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3と、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1との形状(特に、大きさ)の違いが誇張して示されている(図13,図16も同様)。
上記の条件(A1)および条件(A2)を満たす構成とされた場合には、板状部材10の位置決め用凹部13の存在によって、Z軸方向視における上側コネクタ200の回転(以下、単に「上側コネクタ200の回転」という。)が抑止される。
A-4.静電チャック100の製造方法:
図9は、本実施形態における静電チャック100の製造方法を示すフローチャートである。図10は、本実施形態における静電チャック100の製造方法の概要を示す説明図である。図11は、本実施形態の静電チャック100の製造方法で用いられる位置決め用治具JのXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。
はじめに、板状部材10とベース部材20とを準備する(S110)。板状部材10およびベース部材20は、公知の製造方法によって製造可能である。例えば、板状部材10は以下の方法で製造される。すなわち、セラミックスグリーンシートを複数枚作製し、所定のセラミックスグリーンシートに所定の加工を行う。所定の加工としては、例えば、ヒータ電極層50やドライバ電極層51、給電パッド70等の形成のためのメタライズペーストの印刷、各種ビア53,54の形成のための孔空けおよびメタライズペーストの充填等が挙げられる。このとき、複数の給電パッド70が上下方向に略直交する方向に並んで配置されるようにする。これらのセラミックスグリーンシートを積層して熱圧着し、切断等の加工を行うことにより、セラミックスグリーンシートの積層体を作製する。作製されたセラミックスグリーンシートの積層体を焼成することにより、板状部材10が製造される。
次に、板状部材10の下面S2に、例えばマシニング加工により位置決め用凹部13を形成する(S120、図10のA欄参照)。このとき、Z軸方向視で各給電パッド70に重なるように位置決め用凹部13を形成する。S110,S120の一連の工程を経て、位置決め用凹部13が形成された板状部材10と、板状部材10の下面S2においてZ軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13に重なるように上下方向に略直交する方向に並んで配置された複数の給電パッド70と、を備える複合体600が用意される(図10のA欄参照)。
次に、Z軸方向視で外周線OL4が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する位置決め用治具Jを用意し、複数のパッド側給電端子72を保持した位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込む(S130、図10のB欄参照)。図11に示すように、位置決め用治具JのZ軸方向視における外周線OL4は、6つの角部J2を有する六角形である。言い換えると、位置決め用治具Jにおける位置決め用凹部13の凹み方向に直交する断面形状は、六角形である。また、位置決め用治具Jには、複数の貫通孔J1が形成されている。各パッド側給電端子72は、位置決め用治具Jに形成された各貫通孔J1に挿入されており、例えばテープ等により位置決め用治具Jに保持されている。このとき、各パッド側給電端子72は、位置決め用治具Jが板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込まれた際に各給電パッド70に接する位置に配置される。位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むことにより、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めがなされ、その結果、各パッド側給電端子72は、各給電パッド70に接した状態となる。なお、位置決め用治具Jが軽いと、位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込む作業が困難となるため、図10に示すように、位置決め用治具Jに重りWtを固定した上で当該作業を行ってもよい。なお、位置決め用治具Jは、特許請求の範囲における治具に相当する。
ここでいう「Z軸方向視で位置決め用治具Jの外周線OL4が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する」は、下記の条件(B1)および条件(B2)を満たすことを意味する。
条件(B1)
Z軸方向視において、位置決め用治具Jの外周線OL4の各角部J2の少なくとも一部(以下、「特定部分」という。)における直径(例えば、仮想線分D4の長さ)は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1の少なくとも一部における直径(例えば、仮想線分D5の長さ)の90%以上である。また、ここでいう「位置決め用治具Jの外周線OL4の直径」は、Z軸方向視において、位置決め用治具Jの外周線OL4によって形成される平面図形(六角形の図形)の重心C2(当該平面図形が自由な回転運動をするときの回転軸。以下、単に「位置決め用治具Jの重心C2」ともいう。)を通る仮想直線上に位置する2点間を結ぶ仮想線分(例えば、点P5と点P6との間を結ぶ仮想線分D4)の長さである。「板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1の直径」は、Z軸方向視において、位置決め用治具Jの重心C2を通る仮想直線上に位置する2点間を結び、仮想線分D4を包含する仮想線分(例えば、点P7と点P8との間を結ぶ仮想線分D5)の長さである。
条件(B2)
Z軸方向視において、位置決め用治具Jの外周線OL4の上記特定部分における径(仮想線分。例えば、仮想線分D4)を、位置決め用治具Jの重心C2を回転軸心としてθ2(0°≦θ2≦5°(より好ましくは、0°≦θ2≦1°))だけ回転させた仮想線分(例えば、仮想線分D6)は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1と重なる。
なお、図11では、図の理解が容易となるように、便宜上、位置決め用治具Jの外周線OL4と、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1との形状(特に、大きさ)の違いが誇張して示されている(図14,図17も同様)。
上記の条件(B1)および条件(B2)を満たす構成とされた場合には、板状部材10の位置決め用凹部13の存在によって、Z軸方向視における位置決め用治具Jの回転(以下、単に「位置決め用治具Jの回転」という。)が抑止される。そのため、位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むだけで、各パッド側給電端子72を適切な位置(各パッド側給電端子72が各給電パッド70に接するような位置)に配置することが可能である。
次に、板状部材10に形成された給電パッド70に、パッド側給電端子72を、例えばろう付けにより接合する(S140)。
次に、上側コネクタ200、ベース部材20、下側コネクタ300を組み付ける(S150)。具体的には、まず、板状部材10の位置決め用凹部13から位置決め用治具Jを取り外した上で、上側コネクタ200を構成する第1のハウジング210を、板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込み、樹脂接着剤79により、板状部材10に接合する。このとき、第1のハウジング210に形成された各貫通孔212に、パッド側給電端子72の棒状部76が挿通されるようにする。上側コネクタ200を構成する第1のハウジング210を板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むことにより、上側コネクタ200を構成する第1のハウジング210の面方向および回転方向の位置決めがなされる。次に、上側コネクタ200を構成する第2のハウジング220を、第1のハウジング210に取り付ける。このとき、第2のハウジング220の各貫通孔222にはソケット230が圧入されており、また、ソケット230にはリード線80を介して下側コネクタ300(ソケット330が圧入されたハウジング310)が接続されている。第2のハウジング220の取り付けの際には、第1のハウジング210の下側部分214の側面、および、該側面に形成された凸部または凹部をガイドにして、第2のハウジング220の面方向の位置決めを行う。第2のハウジング220の取り付けが完了した状態では、各ソケット230の孔232にパッド側給電端子72の棒状部76の先端部が挿入され、各ソケット230と各パッド側給電端子72とが電気的に接続される。次に、例えばシート状の接着部30を用いて、板状部材10とベース部材20とを接合する。次に、下側コネクタ300のハウジング310のスリット314にCリング352を取り付け、Cリング352の上面がベース部材20の第1の貫通孔下端部23の下面に当接した状態で、押さえプレート356を止めネジ354によりベース部材20に固定する。これにより、下側コネクタ300がベース部材20に固定される。次に、下側コネクタ300のハウジング310の貫通孔315に押さえ部材340を挿入し、押さえ部材340の上端が上側コネクタ200の第2のハウジング220の下面226に当接した状態でネジ止めすることにより、上側コネクタ200の第2のハウジング220のZ軸方向への移動(上側コネクタ200の第1のハウジング210のパッド側給電端子72からの抜け)を規制する。主として以上の工程により、本実施形態の静電チャック100が製造される。
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の静電チャック100は、板状部材10と、複数の給電パッド70と、複数のパッド側給電端子72とを備える。板状部材10は、上下方向(Z軸方向)に略直交する吸着面S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2とを有し、下面S2の一部によって、Z軸方向視で外周線OL1が六角形である位置決め用凹部13が形成されている。複数の給電パッド70は、板状部材10の下面S2側においてZ軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13に重なるように上下方向に略直交する方向に並んで配置されている。パッド側給電端子72は、各給電パッド70に接続されている。
また、本実施形態の静電チャック100の製造方法は、位置決め用凹部13が形成された板状部材10と、板状部材10の下面S2においてZ軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13に重なるように上下方向に略直交する方向に並んで配置された複数の給電パッド70と、を備える複合体600を用意する工程(S110,S120の一連の工程。以下、「第1工程」という。)と、Z軸方向視で外周線OL4が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する位置決め用治具Jであって、複数のパッド側給電端子72を保持した位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むことにより、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをする工程(S130の工程。以下、「第2工程」という。)とを備える。
位置決め用凹部13の外周線OL1が円形である構成においては、単に位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むだけでは、Z軸方向視における位置決め用治具Jの回転方向(周方向)の位置(以下、単に「位置決め用治具Jの回転方向の位置」という。)が適切な位置からずれることがあるため、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めを容易かつ適切に行うことは困難である。また、位置決め用治具Jの回転方向の位置が適切な位置からずれたままの静電チャックが製造された際には、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の相対的位置がずれることにより、各給電パッド70と各パッド側給電端子72との電気的接続の不良等が生じるおそれがある。
これに対し、本実施形態の静電チャック100の製造方法では、上述の通り、第1工程において、外周線OL1が六角形である位置決め用凹部13が形成された板状部材10を用意する。第2工程において、Z軸方向視で外周線OL4が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する位置決め用治具Jを位置決め用凹部13にはめ込むことにより、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをする。板状部材10の位置決め用凹部13および位置決め用治具Jが上述した形状であるため、板状部材10の位置決め用凹部13の存在によって、位置決め用治具Jの回転が抑止される。そのため、位置決め用治具Jを板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むだけで、各パッド側給電端子72を適切な位置(各パッド側給電端子72が各給電パッド70に接するような位置)に配置することが可能である。従って、本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、容易かつ適切に、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをすることができる。
また、本実施形態の静電チャック100は、給電パッド70に電気的に接続される発熱抵抗体により構成されたヒータ電極500のヒータライン部502を有する。本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、上述の通り、容易かつ適切に、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをすることができる。そのため、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の相対的位置がずれることを、より確実に防止することができる。従って、本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の相対的位置がずれることに起因するヒータ電極500(より厳密には、ヒータ電極500のヒータライン部502)の加熱性能の低下を抑制することができ、ひいてはヒータ電極500の加熱による吸着面S1(対象物を保持する保持面)における温度分布(ひいては、吸着面S1に保持される対象物の温度分布)の制御性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の静電チャック100は、上面S3と、上面S3とは反対側の下面S4と、を有し、上面S3が板状部材10の下面S2に対向するように配置されたベース部材20であって、内部に複数のパッド側給電端子72が配置される孔である第1の貫通孔22が形成され、冷媒流路21が形成されたベース部材20を備える。位置決め用凹部13は、Z軸方向視で第1の貫通孔22の外周線OL2の内側に収まっている。
ベース部材20において、第1の貫通孔22が形成された部分および位置決め用凹部13が形成された部分には、冷媒流路21を配置することができない。そのため、板状部材10の内、Z軸方向視で第1の貫通孔22と位置決め用凹部13との少なくとも一方と重なる部分は、他の部分と比較して、ベース部材20に形成された冷媒流路21への冷媒供給による冷却作用が及びにくく、高温の温度特異点となりやすい。これにより、吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持された対象物の温度分布の制御性)が低下するおそれがある。ここで、Z軸方向視で位置決め用凹部13が第1の貫通孔22の外周線OL2に収まっていない構成では、収まっている構成と比べて、Z軸方向視で第1の貫通孔22と位置決め用凹部13との少なくとも一方に重なる部分の面積が広くなる。従って、この構成では、温度特異点となる範囲が広くなり、ひいては吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持された対象物の温度分布の制御性)が更に低下するおそれがある。
本実施形態の静電チャック100は、上述の通り、位置決め用凹部13がZ軸方向視で第1の貫通孔22の外周線OL2の内側に収まっている。そのため、Z軸方向視で位置決め用凹部13が第1の貫通孔22の外周線OL2に収まっていない構成と比べて、Z軸方向視における温度特異点の範囲が狭くなる。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、吸着面S1の温度分布の制御性(ひいては、吸着面S1に保持された対象物の温度分布の制御性)の低下を抑制することができる。本実施形態の静電チャック100の製造方法によれば、上述の第1工程および第2工程を備えることにより、このような構成である静電チャック100における各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の相対的位置がずれることを抑制することができる。
また、本実施形態の静電チャック100は、上述の通り、板状部材10と、複数の給電パッド70と、複数のパッド側給電端子72と、上側コネクタ200とを備える。板状部材10は、上下方向に略直交する吸着面S1と、吸着面S1とは反対側の下面S2とを有し、下面S2の一部によって、Z軸方向視で外周線OL1が六角形である位置決め用凹部13が形成されている。複数の給電パッド70は、板状部材10の下面S2側においてZ軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13に重なるように上下方向に略直交する方向に並んで配置されている。パッド側給電端子72は、各給電パッド70に接続されている。上側コネクタ200(厳密には、上側コネクタ200の第1のハウジング210)は、各パッド側給電端子72が挿通する複数の貫通孔212を有する。上側コネクタ200は、板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込まれている。Z軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1および位置決め用凹部13にはめ込まれている上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3は、互いに略一致する六角形である。
このような構成である本実施形態の静電チャック100においては、上述した製造方法における効果が得られるのに加え、下記の効果も得られる。
本実施形態の静電チャック100では、Z軸方向視で板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1および上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3は、互いに略一致する六角形である。そのため、板状部材10の位置決め用凹部13の存在によって、上側コネクタ200(より厳密には、上側コネクタ200の第1のハウジング210)の回転が抑止される。そのため、本実施形態の静電チャック100によれば、上側コネクタ200(より厳密には、上側コネクタ200の第1のハウジング210)の回転方向の位置ずれに起因して各給電パッド70と各パッド側給電端子72との電気的接続の不良等が生じることを抑制することができる。
B.第2実施形態:
図12は、第2実施形態における静電チャック100aにおける板状部材10aの位置決め用凹部13a付近の部分(図6のX2の部分に対応)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図13は、第2実施形態における静電チャック100aにおける上側コネクタ200aの第1のハウジング210a付近の部分(図6のX2の部分に対応)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図14は、第2実施形態における静電チャック100aの製造方法で用いられる位置決め用治具JaのXY平面(上面)構成を概略的に示す説明図である。図12および図13に示すように、第2実施形態の静電チャック100aの構成は、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と比較して、板状部材10aの位置決め用凹部13aの構成が異なっており、上側コネクタ200aの構成が異なっている。また、図14に示すように、第2実施形態の静電チャック100の製造方法では、上述した第1実施形態の静電チャック100の製造方法と比較して、位置決め用治具Jaの構成が異なっている。以下では、第2実施形態の静電チャック100aの構成の内、上述した第1実施形態の静電チャック100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
B-1.板状部材10aの位置決め用凹部13aの構成
図12に示すように、板状部材10aの位置決め用凹部13aのZ軸方向視における外周線OL5は、楕円形である。言い換えると、位置決め用凹部13aの凹み方向に直交する断面形状は、楕円形である。
B-2.上側コネクタ200aの構成
図13に示すように、位置決め用凹部13aにはめ込まれている上側コネクタ200aの第1のハウジング210aのZ軸方向視における外周線OL6は、楕円形である。言い換えると、上側コネクタ200aにおける位置決め用凹部13aの凹み方向に直交する断面形状は、楕円形である。
上側コネクタ200aのZ軸方向視における外周線OL6は、板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5に略一致する。ここでいう「上側コネクタ200aのZ軸方向視における外周線OL6は、板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5に略一致する」は、下記の条件(C1)および条件(C2)を満たすことを意味する。
条件(C1)
Z軸方向視において、上側コネクタ200aの外周線OL6の少なくとも一部(以下、「特定部分」という。)における直径(例えば、仮想線分D7の長さ)は、板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5の少なくとも一部における直径(例えば、仮想線分D8の長さ)の90%以上である。ここでいう「上側コネクタ200aの外周線OL6の直径」は、Z軸方向視において、上側コネクタ200aの外周線OL6によって形成される平面図形(楕円の図形)の重心C3(当該平面図形が自由な回転運動をするときの回転軸。以下、単に「上側コネクタ200aの重心C3」ともいう。)を通る仮想直線上に位置する2点間を結ぶ仮想線分(例えば、点P9と点P10との間を結ぶ仮想線分D7)の長さである。また、ここでいう「板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5の直径」は、Z軸方向視において、上側コネクタ200aの重心C3を通る仮想直線上に位置する2点間を結び、仮想線分D7を包含する仮想線分(例えば、点P11と点P12との間を通る仮想線分D8)の長さである。
条件(C2)
Z軸方向視において、上側コネクタ200aの外周線OL6の上記特定部分における径(仮想線分。例えば、仮想線分D7)を、上側コネクタ200aの重心C3を回転軸心としてθ3(0°≦θ3≦5°(より好ましくは、0°≦θ3≦1°))だけ回転させた仮想線分(例えば、仮想線分D9)は、板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5と重なる。
上記の条件(C1)および条件(C2)を満たす構成とされた場合には、板状部材10aの位置決め用凹部13aの存在によって、Z軸方向視における上側コネクタ200aの回転(以下、単に「上側コネクタ200aの回転」という。)が抑止される。
B-3.位置決め用治具Jaの構成
図14に示すように、位置決め用治具JaのZ軸方向視における外周線OL7は、楕円形である。言い換えると、位置決め用治具Jaにおける位置決め用凹部13aの凹み方向に直交する断面形状は、楕円形である。
位置決め用治具JaのZ軸方向視における外周線OL7は、板状部材10aの位置決め用凹部13aのZ軸方向視における外周線OL5に略一致している。
ここでいう「位置決め用治具JaのZ軸方向視における外周線OL7は、板状部材10aの位置決め用凹部13aのZ軸方向視における外周線OL5に略一致している」は、下記の条件(D1)および条件(D2)を満たすことを意味する。
条件(D1)
Z軸方向視において、位置決め用治具Jaの外周線OL7の少なくとも一部(以下、「特定部分」という。)における直径(例えば、仮想線分D10の長さ)は、板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL7の少なくとも一部における直径(例えば、仮想線分D11の長さ)の90%以上である。また、ここでいう「位置決め用治具Jaの外周線OL7の直径」は、Z軸方向視において、位置決め用治具Jaの外周線OL7によって形成される平面図形(楕円の図形)の重心C4(当該平面図形が自由な回転運動をするときの回転軸。以下、単に「位置決め用治具Jaの重心C4」ともいう。)を通る仮想直線上に位置する2点間を結ぶ仮想線分(例えば、点P13と点P14との間を結ぶ仮想線分D10)の長さである。「板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL7の直径」は、Z軸方向視において、位置決め用治具Jaの重心C4を通る仮想直線上に位置する2点間を結び、仮想線分D10を包含する仮想線分(例えば、点P15と点P16との間を結ぶ仮想線分D11)の長さである。
条件(D2)
Z軸方向視において、位置決め用治具Jaの外周線OL7の上記特定部分における直径を(線分。仮想線分D10)例えば、位置決め用治具Jaの重心C4を回転軸心としてθ4(0°≦θ4≦5°(より好ましくは、0°≦θ4≦1°))だけ回転させた仮想線分(例えば、仮想線分D12)は、板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL7と重なる。
上記の条件(D1)および条件(D2)を満たす構成とされた場合には、板状部材10aの位置決め用凹部13aの存在によって、Z軸方向視における位置決め用治具Jaの回転(以下、単に「位置決め用治具Jaの回転」という。)が抑止される。そのため、位置決め用治具Jaを板状部材10aの位置決め用凹部13aにはめ込むだけで、各パッド側給電端子72を適切な位置(各パッド側給電端子72が各給電パッド70に接するような位置)に配置することが可能である。
B-4.第2実施形態の効果:
第2実施形態の静電チャック100aの製造方法では、第1工程(図9のS110,S120の一連の工程)において、外周線OL5が楕円形である位置決め用凹部13aが形成された板状部材10aを用意する。第2工程(図9の130の工程)において、Z軸方向視で外周線OL7が板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5に略一致する位置決め用治具Jaを位置決め用凹部13aにはめ込むことにより、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをする。板状部材10aの位置決め用凹部13aおよび位置決め用治具Jaが上述した形状であるため、板状部材10aの位置決め用凹部13aの存在によって、位置決め用治具Jaの回転が抑止される。そのため、位置決め用治具Jaを板状部材10aの位置決め用凹部13aにはめ込むだけで、各パッド側給電端子72を適切な位置(各パッド側給電端子72が各給電パッド70に接するような位置)に配置することが可能である。従って、第2実施形態の静電チャック100aの製造方法によれば、容易かつ適切に、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをすることができる。
また、第2実施形態の静電チャック100aは、Z軸方向視で外周線OL5が楕円形である位置決め用凹部13aが形成された板状部材10aと、上側コネクタ200aとを備えている。Z軸方向視で板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5および位置決め用凹部13aにはめ込まれている上側コネクタ200aの外周線OL6は、互いに略一致する楕円形である。
このような構成である第2実施形態の静電チャック100aにおいては、上述した製造方法における効果が得られるのに加え、下記の効果も得られる。
第2実施形態の静電チャック100aでは、Z軸方向視で板状部材10aの位置決め用凹部13aの外周線OL5および上側コネクタ200aの外周線OL6は、互いに略一致する楕円形である。そのため、板状部材10aの位置決め用凹部13aの存在によって、上側コネクタ200aの回転が抑止される。そのため、第2実施形態の静電チャック100aによれば、上側コネクタ200aの回転方向に位置ずれに起因して各給電パッド70と各パッド側給電端子72との電気的接続の不良等が生じることを抑制することができる。
C.変形例:
上記実施形態における静電チャック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
例えば、上記第1実施形態において、板状部材10の位置決め用凹部13のZ軸方向視における外周線OL1、上側コネクタ200の第1のハウジング210のZ軸方向視における外周線OL3、および位置決め用治具JのZ軸方向視における外周線OL4は、六角形以外の多角形であってもよい。例えば、図15、図16および図17に示すように、板状部材10bの位置決め用凹部13bのZ軸方向視における外周線OL8、上側コネクタ200bの第1のハウジング210bのZ軸方向視における外周線OL9、位置決め用治具JbのZ軸方向視における外周線OL10は五角形であってもよい。この構成においても「上側コネクタ200bの第1のハウジング210bのZ軸方向視における外周線OL9は、板状部材10bの位置決め用凹部13bの外周線OL8に略一致する」の意味、および「Z軸方向視で位置決め用治具Jbの外周線OL10が板状部材10bの位置決め用凹部13bの外周線OL8に略一致する」の意味は、上記第1実施形態と同様である。すなわち、上述した第1実施形態における「六角形」を「五角形」と読み替えればよい。六角形と五角形以外の多角形である構成においても同様である。これらの構成においても、上記第1実施形態等と同様の理由から、位置決め用治具を板状部材の位置決め用凹部にはめ込むだけで、各パッド側給電端子72を適切な位置(各パッド側給電端子72が各給電パッド70に接するような位置)に配置することが可能である。従って、これらの構成においても、容易かつ適切に、各給電パッド70に対する各パッド側給電端子72の位置決めをすることができる。また、これらの構成においても、上記第1実施形態等と同様に、板状部材の位置決め用凹部の存在により、上側コネクタの回転方向の位置ずれが抑止される。従って、この構成においても、上側コネクタの回転方向の位置ずれに起因して各給電パッド70と各パッド側給電端子72との電気的接続の不良等が生じることを抑制することができる。なお、位置決め用凹部の外周線の多角形の角部の個数が多いほど、個数が多いという観点からは上側コネクタおよび位置決め用治具の回転を抑止する効果(以下、単に「回転抑止効果」という。)が高くなるが、一方で、個々の角部による回転抑止効果は小さくなる。この点を考慮すると、多角形の角部の個数は、4~8個であることが好ましく、4~6個であることが特に好ましい。また、多角形は、回転抑止効果等の観点から、正多角形に近い形状であるほど、より好ましい。
また、上記実施形態では、給電パッド70は、板状部材10の下面S2に配置されているが、少なくとも一部が外部に露出していれば、その他の部分が板状部材10の内部に埋まっていてもよい。
また、上記実施形態において、Z軸方向視で位置決め用治具Jの一部のみの外周線が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する構成である位置決め用治具Jを採用し、上記第2工程において位置決め用治具Jの当該一部を位置決め用凹部にはめ込むようにしてもよい。この構成においても「Z軸方向視で位置決め用治具Jの一部のみの外周線が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する」の意味は、上記第1実施形態と同様である。すなわち、上述した第1実施形態における「位置決め用治具Jの外周線OL4」を「位置決め用治具Jの一部のみの外周線」と読み替えればよい。この構成においても、板状部材10の位置決め用凹部13の存在によって、上側コネクタ200の回転が抑止される。そのため、この構成においても、位置決め用治具Jの上記一部を板状部材10の位置決め用凹部13にはめ込むだけで、各パッド側給電端子72を適切な位置(各パッド側給電端子72が各給電パッド70に接するような位置)に配置することが可能である。
また、上記実施形態において、Z軸方向視で上側コネクタ200の一部のみの外周線が板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する構成である上側コネクタ200を採用してもよい。この構成においても「Z軸方向視で上側コネクタ200の第1のハウジング210の一部のみの外周線OL3は、板状部材10の位置決め用凹部13の外周線OL1に略一致する」の意味は、上記第1実施形態と同様である。すなわち、上述した第1実施形態における「上側コネクタ200の第1のハウジング210の外周線OL3」を「上側コネクタ200の一部のみの外周線」と読み替えればよい。この構成においても、板状部材10の位置決め用凹部13の存在によって、上側コネクタ200の回転方向の位置ずれが抑止される。そのため、この構成においても、上側コネクタ200の回転方向の位置ずれに起因して各給電パッド70と各パッド側給電端子72との電気的接続の不良等が生じることを抑制することができる。
また、上記実施形態の静電チャック100の各部材(板状部材10、ベース部材20、接着部30等)の形成材料は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態では、板状部材10がセラミックスにより形成されているが、板状部材10がセラミックス以外の材料(例えば、樹脂材料)により形成されるとしてもよい。
また、本発明は、板状部材と、複数の給電パッド70と、複数のパッド側給電端子72とを備え、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャックに限らず、板状部材と、複数の給電パッドと、パッド側給電端子とを備え、板状部材の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、CVDヒータ等のヒータ装置や真空チャック等)にも適用可能である。