<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図8を参照して説明する。
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る基板処理装置10は、処理室20と、テーブル30と、回転機構40と、樹脂供給部50と、剥離部60と、回収部70と、制御部80とを備えている。
処理室20は、被処理面Waを有する基板Wを処理するための処理ボックスである。この処理室20は、例えば、箱形状に形成されており、テーブル30、回転機構40の一部、樹脂供給部50の一部、剥離部60などを収容する。基板Wとしては、例えば、ウェーハや液晶基板が用いられる。この基板Wは、エッチング処理の対象、すなわちエッチング対象となる。
前述の処理室20の上面には、クリーンユニット21が設けられている。このクリーンユニット21は、例えば、HEPAフィルタなどのフィルタやファン(いずれも図示せず)を有しており、基板処理装置10が設置されるクリーンルームの天井から吹き降ろすダウンフローを浄化して処理室20内に導入し、処理室20内に上から下に流れる気流を生じさせる。クリーンユニット21は制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
テーブル30は、処理室20内の中央付近に位置付けられて回転機構40上に水平に設けられ、水平面内で回転可能になっている。このテーブル30は、例えば、スピンテーブル(回転テーブル)と呼ばれる。基板Wの被処理面Waの中心は、テーブル30の回転軸上に位置付けられる。テーブル30は、例えば、その上面に載置された基板Wを吸着して保持する(吸着保持)。
回転機構40は、テーブル30を支持し、そのテーブル30を水平面内で回転させるように構成されている。例えば、回転機構40は、テーブル30の中央に連結された回転軸やその回転軸を回転させるモータ(いずれも図示せず)を有している。この回転機構40は、モータの駆動により回転軸を介してテーブル30を回転させる。回転機構40は制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
樹脂供給部50は、貯留ユニット51と、供給ノズル52と、ノズル移動機構53とを有している。この樹脂供給部50は、ノズル移動機構53により供給ノズル52を移動させてテーブル30上の基板Wの外周端部A1の上方に位置付け、貯留ユニット51から供給ノズル52に軟化状態の熱可塑性樹脂を送り、供給ノズル52からテーブル30上の基板Wの外周端部A1に軟化状態の熱可塑性樹脂を供給する。なお、基板Wの外周端部A1の詳細については、後述する。
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ウレタン系樹脂が用いられる。この熱可塑性樹脂は、エッチング工程で用いられるエッチング液に対して難溶性、すなわち耐性を有しており、エッチング液から基板Wを保護する保護材として機能する。熱可塑性樹脂は、例えば、その温度が150℃以上になると軟化し、150℃より低くなると硬化する。硬化状態は、ゲル状であっても良い。
貯留ユニット51は、タンク51aと、開閉弁51bと、ポンプ51cとを有している。タンク51aは、ヒータ51a1を有しており、ヒータ51a1により熱可塑性樹脂を加熱して軟化状態の熱可塑性樹脂を貯留する。ヒータ51a1は、熱により熱可塑性樹脂を軟化させる加熱部として機能する。タンク51aは、供給ノズル52に供給管51a2を介して接続されている。開閉弁51b及びポンプ51cは、供給管51a2の経路途中に設けられている。電磁弁などの開閉弁51bは供給管51a2を流れる軟化状態の熱可塑性樹脂の流通(供給量や供給タイミングなど)を制御し、ポンプ51cはタンク51a内の軟化状態の熱可塑性樹脂を供給ノズル52に送るための駆動源である。開閉弁51b及びポンプ51c、ヒータ51a1などの加熱部は、制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。なお、供給管51a2の外周壁にも、供給管51a2の延伸経路に沿って延伸するヒータ(図示せず)を設けることが好ましい。この場合、そのヒータも、熱により熱可塑性樹脂を軟化させる加熱部として機能し、供給管51a2を流れる熱可塑性樹脂の軟化状態を維持する。
供給ノズル52は、ノズル移動機構53によりテーブル30の上方をテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って水平方向に揺動可能に形成されており、また、鉛直方向に移動可能に形成されている。この供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周端部A1に対向し、タンク51aから供給管51a2を介して供給された軟化状態の熱可塑性樹脂をテーブル30上の基板Wの外周端部A1に向けて供給する。供給ノズル52としては、例えば、ディスペンサが用いられる。また、供給ノズル52は、ヒータ52aを有している。このヒータ52aは、熱により熱可塑性樹脂を軟化させる加熱部として機能し、供給ノズル52を流れる熱可塑性樹脂の軟化状態を維持する。ヒータ52aは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
ノズル移動機構53は、可動アーム53aと、アーム移動機構53bとを有している。可動アーム53aは、アーム移動機構53bによって水平に支持され、一端に供給ノズル52を保持している。アーム移動機構53bは、可動アーム53aにおける供給ノズル52と反対側の一端を保持し、その可動アーム53aをテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って水平方向に揺動させ、また、鉛直方向に昇降させる。このアーム移動機構53bは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
例えば、ノズル移動機構53は、テーブル30上の基板Wの外周端部A1の直上の供給位置と、テーブル30の上方から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置との間で供給ノズル52を移動させる。なお、図1に示す供給ノズル52は供給位置にある。
ここで、図2に示すように、基板Wの外周端部A1は、基板Wの上面(被処理面Wa)の外周領域A1aと、基板Wの外周面(基板Wの外周の端面)A1bと、基板Wの下面の外周領域A1cとにより構成されている。また、図2及び図3に示すように、基板Wの上面には、エッチング処理工程においてエッチング処理の対象となるエッチング対象領域R1がある。エッチング対象領域R1は、基板Wの上面の外周領域A1aを除いた基板Wの上面の領域である。このエッチング対象領域R1以外の領域は、エッチング処理工程においてエッチング処理の対象でない非エッチング対象領域である。図3では、エッチング対象領域R1は円状の領域であり、基板Wの上面の外周領域A1a、また、基板Wの下面の外周領域A1c(図2参照)は、それぞれ基板Wの外周から内側(基板Wの中心側)に数mm(例えば4mm以下)の所定幅を有する円環状の領域である。
例えば、供給ノズル52は、図2に示すように、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの直上に位置し、その外周面A1bの上部に軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。なお、軟化状態の熱可塑性樹脂B1は、所望の粘性を有しているので、基板Wの外周面A1bの上部に供給された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの外周面A1bを覆うように下方に広がっていく。熱可塑性樹脂B1は供給ノズル52から吐出されると表層から徐々に硬化し始め、基板Wに付着すると熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がり、基板Wに付着した部分の熱可塑性樹脂B1は急速に硬化する。テーブル30上の基板Wの温度は処理室20内の気流(例えば、上から下に流れる気流)により低下している。このため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1が基板Wに付着すると、熱可塑性樹脂B1の温度は急激に下がる傾向にある。
この樹脂供給時、テーブル30は回転機構40により回転しているため、テーブル30上の基板Wも回転している状態である。このため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの回転に応じて基板Wの外周面A1bに沿って順次付着していく。これにより、図3に示すように、基板Wの外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる(樹脂塗布済)。この樹脂塗布済の基板Wは、ロボットハンドなどを有する搬送装置(図示せず)により処理室20から搬出され、基板処理装置10と別体のエッチング処理装置(図示せず)に搬入され、エッチング液によって処理される(詳しくは、後述する)。
なお、供給ノズル52が供給位置にある状態において、供給ノズル52とテーブル30上の基板Wとの垂直離間距離は、所定距離に設定されている。この所定距離は、使用する熱可塑性樹脂B1の種類(軟化状態での粘度)に応じ、熱可塑性樹脂B1の供給量やテーブル30の回転数などとともに、実験的にあらかじめ求められている。つまり、所定距離や熱可塑性樹脂B1の供給量やテーブル30の回転数などは、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bだけを覆って硬化するようにあらかじめ設定されている。
図1に戻り、剥離部60は、剥離ハンド61と、ハンド移動機構62とを具備している。この剥離部60は、ハンド移動機構62により剥離ハンド61を移動させてテーブル30の外周端部A1の上方に位置付け、その剥離ハンド61によりテーブル30上の基板Wの外周端部A1から硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離する。
ここで、熱可塑性樹脂B1は、熱硬化性樹脂などの材料に比べて基板Wに対する密着度が低いため、基板Wを破損させず、基板Wに密着して硬化した熱可塑性樹脂B1を機械的に剥離することが可能である。一方、基板Wに密着して硬化した熱硬化性樹脂を機械的に剥離しようとすると、基板Wは破損する。なお、熱硬化性樹脂は一度硬化すると、熱によって熱硬化性樹脂を軟化させることも不可能であり、熱硬化性樹脂を除去するためには、薬液などで熱硬化性樹脂を溶解させる必要がある。
剥離ハンド61は、ハンド移動機構62によりテーブル30の上方を移動可能に形成されている。この剥離ハンド61は、ハンド移動機構62によりテーブル30上の基板Wの外周端部A1に対向して下降し、その外周端部A1の硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかみ上昇してテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って移動し、テーブル30上の基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離する。剥離ハンド61としては、例えば、クランプ状やピンセット状のハンドが用いられる。
ハンド移動機構62は、可動アーム62aと、アーム移動機構62bとを有している。可動アーム62aは、アーム移動機構62bによって支持され、一端に剥離ハンド61を保持している。アーム移動機構62bは、可動アーム62aにおける剥離ハンド61と反対側の一端を保持し、その一端を回転中心とする上下方向における可動アーム62aの揺動と、アーム移動機構62b自体の水平方向における揺動により、剥離ハンド61を移動させる。このアーム移動機構62bは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
例えば、前述のハンド移動機構62は、テーブル30上の基板Wの外周端部A1の直上の剥離開始位置(一例として基板Wの外周面A1bの直上位置近傍)と、その剥離開始位置に対してテーブル30の回転軸(基板Wの回転軸)を中心として点対象となる剥離終了位置と、回収部70の直上の回収位置と、基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置との間で剥離ハンド61を移動させる。なお、図1に示す剥離ハンド61は待機位置にある。
回収部70は、テーブル30の回転動作を妨げないようにテーブル30の周囲に設けられている。この回収部70は、剥離ハンド61により剥離された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を回収する。例えば、回収部70は、上部開口の箱形状に形成されており、剥離ハンド61から離されて落下する硬化状態の熱可塑性樹脂B1を受け取って回収する。
制御部80は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を具備している。この制御部80は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて、回転機構40によるテーブル30の回転動作、樹脂供給部50による熱可塑性樹脂B1の供給動作、剥離部60による熱可塑性樹脂B1の剥離動作などの制御(制御に係る各種処理も含む)を行う。
(基板処理工程)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板処理工程の流れについて説明する。この基板処理工程において制御部80が各部の動作を制御する。
図4に示すように、ステップS1において、ロボットハンドにより未処理の基板Wが処理室20内に搬入されてテーブル30上に載置され、その載置された基板Wがテーブル30によって吸着保持される。ロボットハンドは、基板Wの載置後、処理室20から退避する。なお、基板Wの搬入時には、供給ノズル52や剥離ハンド61は待機位置にある。
前述のロボットハンドが処理室20から退避すると、ステップS2において、軟化状態の熱可塑性樹脂B1がテーブル30上の基板Wの外周端部A1に塗布される。まず、テーブル30が回転機構40により回転を開始し、また、供給ノズル52はノズル移動機構53により待機位置から供給位置に移動する。供給ノズル52が供給位置に到達すると、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの直上に位置し(図2参照)、テーブル30の回転数が所定の回転数(例えば10rpm)となると、基板Wの外周面A1bの上部に向けて軟化状態の熱可塑性樹脂B1を吐出する。供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周面A1bに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、基板Wの外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され(図3参照)、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1の厚みは、例えば0.5~3mmである。この樹脂塗布が完了して吐出が停止されると、テーブル30は回転を停止し、供給ノズル52は塗布位置から待機位置に移動する。なお、外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1は、温度低下により硬化状態となる。
前述の供給ノズル52が待機位置に戻ると、ステップS3において、樹脂塗布済の基板Wが、テーブル30上から前述のロボットハンド(図示せず)によって処理室20外に搬出され、エッチング処理装置(図示せず)に搬入される。そして、エッチング処理装置により基板Wの被処理面Waがエッチング液により処理される。エッチング工程では、例えば50rpmで回転する基板Wの被処理面Waの中央付近にエッチング液が供給され、供給されたエッチング液は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。これにより、基板Wの被処理面Wa上にはエッチング液の液膜が形成され、基板Wの被処理面Waはエッチング液によって処理される。このとき、硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、エッチング液から基板Wの外周面A1bを保護する保護材として機能する。エッチング処理後の基板Wは、エッチング処理装置内にて、洗浄液を用いた洗浄処理、基板Wを高速回転させることによる乾燥処理が順次行われる。
ステップS4において、前述のロボットハンドによりエッチング処理済の基板Wが処理室20内に再度搬入されてテーブル30上に載置され、その載置された基板Wがテーブル30によって吸着保持される。ロボットハンドは、基板Wの載置後、処理室20から退避する。なお、基板Wの搬入時には、供給ノズル52や剥離ハンド61は待機位置にある。
前述のロボットハンドが処理室20から退避すると、ステップS5において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1がテーブル30上の基板Wの外周端部A1から除去される。まず、剥離ハンド61はハンド移動機構62により待機位置から剥離開始位置に移動する。剥離ハンド61が剥離開始位置に到達すると、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの直上に位置して下降し、外周面A1bに付着している硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかむ。なお、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が弾性を有していれば、剥離ハンド61によるつかみは、きわめて容易に行なえる。剥離ハンド61は、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかんだ状態で上昇し、剥離開始位置から剥離終了位置に向って移動し、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wの外周面A1bから剥がす。これにより、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が基板Wから除去される。この樹脂除去が完了すると、剥離ハンド61は剥離終了位置から回収位置に移動し、回収位置に到達すると硬化状態の熱可塑性樹脂B1を離して回収部70に向けて落とす。回収部70は、落下してきた硬化状態の熱可塑性樹脂B1を受けって収容する。剥離ハンド61は、回収位置で硬化状態の熱可塑性樹脂B1を落とすと、回収位置から待機位置に移動する。
前述の剥離ハンド61が待機位置に戻ると、ステップS6において、樹脂剥離済の基板Wが、テーブル30上から前述のロボットハンド(図示せず)によって処理室20外に搬出され、次工程のために搬送装置によって搬送されていく。
このような基板処理工程では、軟化状態の熱可塑性樹脂B1がテーブル30上の基板Wの外周端部A1の一部である外周面A1bに塗布され、その外周面A1bの全面だけが硬化状態の熱可塑性樹脂B1により覆われる。これにより、後工程であるエッチング工程において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1がエッチング液から基板Wの外周面A1bを保護する保護材として機能するため、基板Wの外周面A1bがエッチング液により浸食されることが抑制され、基板Wの直径が小さくなること、すなわち基板サイズの縮小を抑えることができる。その結果、基板Wの外周部分においても所望サイズのデバイスチップを得ることが可能となるので、デバイスチップロスの発生を抑制することができる。また、後工程でのロボットによる搬送など、後工程での基板搬送を可能にし、歩留まりを向上させることができる。
また、硬化状態の熱可塑性樹脂B1は剥離ハンド61により剥離され、基板Wから除去される。これにより、薬液により硬化状態の熱可塑性樹脂B1を溶解して基板Wから除去する場合に比べ、短時間で硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから除去することができ、また、薬液を使用しないため、薬液の廃棄による環境面への負荷を抑えることができる。なお、熱可塑性樹脂B1は、熱硬化性樹脂に比べて基板Wへの密着度が低いものである。このため、熱硬化性樹脂ではなく熱可塑性樹脂B1を用いることで、基板W上の硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから剥離することが容易となり、基板Wを損傷させずに基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を除去することができる。熱硬化性樹脂を用いた場合、基板Wを損傷させずに硬化状態の熱硬化性樹脂を基板Wから除去するためには、薬液などによる除去を行う装置が必要となり、装置の複雑化やコストアップを招くことになる。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、軟化状態の熱可塑性樹脂B1をテーブル30上の基板Wの外周端部A1、例えば、基板Wの外周面A1bに供給することによって、その外周面A1bが硬化状態の熱可塑性樹脂B1により覆われる。これにより、エッチング工程において、基板Wの外周面A1bが硬化状態の熱可塑性樹脂B1により保護され、エッチング液によって浸食されることが抑制されるので、基板サイズの縮小を抑えることができる。
(樹脂塗布の他の例)
前述の供給ノズル52による樹脂塗布の例を第1の例とし、樹脂塗布の他の例として第2の例、第3の例及び第4の例について説明する。
第2の例として、図5に示すように、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周領域A1aの直上、例えば、外周領域A1aにおいて基板Wの外側に近い位置の真上に位置し、その外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。第2の例では、第1の例よりも軟化状態の熱可塑性樹脂B1の供給量は多い。基板Wの外周領域A1aに供給された熱可塑性樹脂B1は、その外周領域A1aを覆うように、さらに、外周領域A1aにつながる外周面A1bを覆うように広がっていく。この樹脂供給時には、テーブル30上の基板Wはテーブル30と共に回転しているため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周領域A1a及び外周面A1bに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、図6に示すように、基板Wの外周領域A1aの全体及び外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周領域A1aの全面及び外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。
第3の例として、図7に示すように、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周領域A1aの直上、例えば、外周領域A1aにおいて第2の例の位置よりも基板Wの外側に近い位置の真上に位置し、その外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。第3の例では、第2の例よりも軟化状態の熱可塑性樹脂B1の供給量は多い。基板Wの外周領域A1aに供給された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの外周領域A1aを覆うように、さらに、外周領域A1aにつながる外周面A1b、外周面A1bにつながる外周領域A1cを覆うように広がっていく。この樹脂供給時には、テーブル30上の基板Wはテーブル30と共に回転しているため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周領域A1a、外周面A1b及び外周領域A1cに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、基板Wの外周領域A1aの全面、外周面A1bの全面及び外周領域A1cの一部に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周領域A1aの全面、外周面A1bの全面及び外周領域A1cの一部だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。
第4の例として、図8に示すように、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周領域A1aの直上、例えば、外周領域A1aにおいて第2の例の位置よりも基板Wの内側に近い位置の真上に位置し、その外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。第4の例では、第2の例よりも軟化状態の熱可塑性樹脂B1の供給量は少ない。基板Wの外周領域A1aに供給された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの外周領域A1aを覆うように広がっていく。この樹脂供給時には、テーブル30上の基板Wはテーブル30と共に回転しているため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周領域A1aに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、基板Wの外周領域A1aの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周領域A1aの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。
前述の第2から第4の例でも、前述の第1の例と同様、基板サイズの縮小を抑えることができる。なお、熱可塑性樹脂B1の供給時における、供給ノズル52とテーブル30上の基板Wとの垂直離間距離、供給位置、供給量、テーブル30の回転数などは、実験的にあらかじめ求められている点は、第1の例と同様である。第4の例では、基板Wの外周面A1bの全面が熱可塑性樹脂B1により覆われていないが、基板Wの外周領域A1aの全面が熱可塑性樹脂B1により覆われている(図8参照)。エッチング工程では、回転する基板Wの被処理面Waの中央付近に供給されたエッチング液が、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。この広がったエッチング液は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの外に向かって飛散するが、このとき、基板Wの外周領域A1aに付着した硬化状態の熱可塑性樹脂B1によって、エッチング液の飛散方向が水平面に対して上方に偏向される。このため、エッチング液が基板Wの外周面A1bに流れ込むことが抑制される。これにより、前述の第1の例と同様、基板サイズの縮小を抑えることができる。第4の例は、基板Wの外周面A1bや下面が、SiNやSiO2で被膜されているときに用いられることが好ましい。ただし、基板Wの外周面A1bをエッチング液の浸食から確実に保護するためには、熱可塑性樹脂B1により外周面A1bの全面を完全に覆うことが好ましい。
なお、制御部80は、前述の第1から第4の例の樹脂塗布の方法において、供給ノズル52がテーブル30上の基板Wに熱可塑性樹脂B1を供給する供給位置、すなわち熱可塑性樹脂B1が供給される基板W上の位置を変えるようにノズル移動機構53を制御する。例えば、制御部80は、供給ノズル52がテーブル30上の基板Wの外周面A1bに熱可塑性樹脂B1を供給する場合(第1の例)と、テーブル30上の基板Wの上面の外周領域A1a及び外周面A1bに熱可塑性樹脂B1を塗布する場合(第2の例)とで、テーブル30上の基板Wに熱可塑性樹脂B1を供給する供給位置を変えるようにノズル移動機構53を制御する。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図9から図14を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(テーブル、カップ及び処理液供給部)について説明し、その他の説明を省略する。
図9に示すように、第2の実施形態に係る基板処理装置10は、第1の実施形態に係る各部20~80に加え、カップ85と、処理液供給部90とを備えている。なお、第2の実施形態に係るテーブル30は、第1の実施形態と基板保持機構が異なるテーブルである。
テーブル30は、第1の実施形態のように基板Wを吸着して保持するのではなく、複数の保持部材31を有しており、それらの保持部材31によりテーブル30の上面側で基板Wを挟み込み、水平状態に保持する。例えば、保持部材31の個数は6個である。
各保持部材31は、図10に示すように、それぞれ回転部材31a及びピン31bを有している。回転部材31aは、テーブル30により回転可能に支持されており、コイルバネなどの付勢部材31cにより鉛直方向において下方に向けて付勢されている。ピン31bは、回転部材31aの上面に、回転部材31aの回転中心に対して偏心して設けられている。6個の回転部材31aは、回転昇降機構32によって回転と昇降が可能となるように形成されている。例えば、平面視で各回転部材31aが時計方向に回転すると、各ピン31bは偏心回転し、基板Wの外周面A1bに水平方向からそれぞれ当接し、基板Wを挟み込んで保持する。また、各回転部材31aが平面視で反時計方向に回転すると、各ピン31bによる基板Wの保持が開放される。なお、図12に示すように、各保持部材31に対応させて、テーブル30の中心を中心として60度ごとに切欠き部30aが位置付けられ、それぞれ保持部材31の把持動作や昇降動作を妨げないようにテーブル30に形成されている。
回転昇降機構32は、図10に示すように、回転機構32aと、昇降機構32bとを有している。回転機構32aは、テーブル30に対し、6個の回転部材31aを同期させて回転させる。昇降機構32bは、6個の回転部材31aを同期させて鉛直方向に昇降させる。例えば、回転機構32aとしては歯車が用いられ、昇降機構32bとしてはエアシリンダ32b1で昇降される円環状の板32b2が用いられる。昇降機構32bは各保持部材31を一緒に押し上げて上昇させる。この押上げ状態が解除されると、各保持部材31はそれぞれの付勢部材31cによる付勢力により押し下げられて下降し、元の位置に戻る。回転昇降機構32は制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
図9に戻り、例えば、回転昇降機構32は、テーブル30上の基板Wをカップ85内に位置付けてその基板Wの被処理面Waから飛散する処理液をカップ85の内周面で受ける処理位置と、テーブル30上の基板Wをカップ85外に位置付けて基板Wの搬入や搬出を可能とする搬入搬出位置との間で各保持部材31を移動させる。なお、図9に示す各保持部材31は処理位置にある。
カップ85は、テーブル30を収容し、そのテーブル30により保持された基板Wの被処理面Waから飛散した処理液を受け取るように形成されている。例えば、カップ85は上部開口の円筒状に形成されている。このカップ85の周壁の上部は、内側に向かって傾斜し、テーブル30上の基板Wの被処理面Waを露出させるように開口している。カップ85は、テーブル30の回転によりテーブル30上の基板Wの被処理面Waから飛散する処理液を内周面で受ける。飛散した処理液は、カップ85の内周面に衝突し、カップ85の内周面に沿ってカップ85の下方に流れ落ち、カップ85の底面にある排出口(図示せず)から排出される。
処理液供給部90は、複数の供給ノズル91と、ノズル移動機構92とを有している。この処理液供給部90は、ノズル移動機構92により各供給ノズル91を移動させてテーブル30の中央付近の上方に位置付け、それらの供給ノズル91からそれぞれテーブル30上の基板Wの被処理面Waの中央付近に処理液を供給する。
各供給ノズル91は、ノズル移動機構92によりテーブル30の上方をテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って水平方向に揺動可能に形成されている。これらの供給ノズル91は、テーブル30上の基板Wの被処理面Waの中央付近の直上に位置し、その被処理面Waに向けて処理液(例えば、エッチング液や洗浄液、超純水)をそれぞれ供給する。なお、各供給ノズル91には、それぞれ処理室20外のタンク(図示せず)から処理液が供給される。例えば、各供給ノズル91のうち一つの供給ノズル91にはエッチング液が供給され、他の一つの供給ノズル91には洗浄液が供給され、他の一つの供給ノズル91には超純水が供給される。
ノズル移動機構92は、可動アーム92aと、アーム移動機構92bとを有している。可動アーム92aは、アーム移動機構92bによって水平に支持され、一端に各供給ノズル91を保持している。アーム移動機構92bは、可動アーム92aにおける各供給ノズル91と反対側の一端を保持し、その可動アーム92aをテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って水平方向に揺動させる。このアーム移動機構92bは制御部80に電気的に接続されており、その駆動は制御部80により制御される。
例えば、ノズル移動機構92は、テーブル30上の基板Wの被処理面Waの中央付近の直上の供給位置と、テーブル30の上方から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置との間で各供給ノズル91を移動させる。なお、図9に示す各供給ノズル91は供給位置にある。
ここで、図11及び図12に示すように、テーブル30は、処理位置にある各保持部材31により保持されている基板W、すなわち処理位置にある各保持部材31上の基板Wの外周面A1bを囲むように形成されている。図11に示すように、テーブル30の上面の高さ位置と、処理位置にある各保持部材31上の基板Wの上面の高さ位置とは、ほぼ同じである。なお、図12において、各保持部材31は、テーブル30の回転軸を中心とする同一円周上に60度ごとに配置されている。
供給ノズル52は、図11に示すように、各保持部材31上の基板Wとテーブル30の上面との隙間の直上に位置し、その隙間(例えば0.1mm~0.5mm程度)に向けて軟化状態の熱可塑性樹脂B1を吐出し、各保持部材31上の基板Wとテーブル30の上面との隙間、各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部及びその外周領域A1aに隣り合うテーブル30の上面の一部を覆うように軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。なお、軟化状態の熱可塑性樹脂B1は、所望の粘性を有しているので、前述の隙間に向けて吐出された熱可塑性樹脂B1は、その隙間を覆うように広がっていく。熱可塑性樹脂B1は供給ノズル52から吐出されると表層から徐々に硬化し始め、テーブル30や各保持部材31、基板Wに付着すると熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がり、それらに付着した部分の熱可塑性樹脂B1は急速に硬化する。
この樹脂供給時には、テーブル30は回転機構40により回転しているため、テーブル30上の基板Wも回転している状態である。このとき、保持部材31はテーブル30に支持されているので、保持部材31に保持されている基板Wと、テーブル30と、の相対移動は生じない。このため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの回転に応じて、各保持部材31上の基板Wとテーブル30の上面との隙間を覆うように、各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部及びその外周領域A1aに隣り合うテーブル30の上面の一部に順次付着していく。これにより、図12に示すように、熱可塑性樹脂B1が所定幅の環状領域に塗布され、所定幅の環状領域だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる(樹脂塗布済)。この樹脂塗布済の基板Wは、処理室20内でエッチング液によって処理される(詳しくは、後述する)。
(基板処理工程)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板処理工程の流れについて説明する。この基板処理工程においては、制御部80が各部の動作を制御する。
図13に示すように、ステップS11において、ロボットハンドにより未処理の基板Wが処理室20内に搬入されてテーブル30に供給され、その供給された基板Wがテーブル30の各保持部材31により挟まれて保持される。ロボットハンドは、基板Wの供給後、処理室20から退避する。なお、基板Wの搬入時には、供給ノズル52や剥離ハンド61、各供給ノズル91は待機位置にある。
前述のロボットハンドが処理室20から退避すると、ステップS12において、軟化状態の熱可塑性樹脂B1が前述の所定幅の環状領域に塗布される。まず、テーブル30が回転機構40により回転を開始し、また、供給ノズル52はノズル移動機構53により待機位置から供給位置に移動する。供給ノズル52が供給位置に到達すると、供給ノズル52は、各保持部材31上の基板Wとテーブル30の上面との隙間の直上に位置し(図11参照)、テーブル30の回転数が所定の回転数となると、前述の隙間に向けて軟化状態の熱可塑性樹脂B1を吐出する。供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの回転に応じて、各保持部材31上の基板Wとテーブル30の上面との隙間を覆うように、各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部及びその外周領域A1aに隣り合うテーブル30の上面の一部に順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、熱可塑性樹脂B1が所定幅の環状領域に塗布され(図12参照)、前述の所定幅の環状領域だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。この樹脂塗布が完了して吐出が停止されると、供給ノズル52は塗布位置から待機位置に移動する。なお、塗布された熱可塑性樹脂B1は、温度低下により硬化状態となる。
前述の供給ノズル52が待機位置に戻ると、ステップS13において、一連のエッチング処理が実行される。まず、各供給ノズル91はノズル移動機構92により待機位置から供給位置に移動する。各供給ノズル91が供給位置に到達すると、回転している基板Wの被処理面Waの中央付近にそれぞれ順番に処理液を供給する。処理液の供給順番は、エッチング液、洗浄液及び超純水の順番である。基板Wの被処理面Waの中央付近に供給された処理液は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。これにより、基板Wの被処理面Wa上には処理液の液膜が形成され、基板Wの被処理面Waは処理液によって処理される。最初に、エッチング液の供給が開始され、エッチング液の供給開始から所定時間が経過すると、洗浄液の供給が開始され、エッチング液の供給が停止される。その後、洗浄液の供給開始から所定時間が経過すると、超純水の供給が開始され、洗浄液の供給が停止される。超純水の供給開始から所定時間が経過すると、超純水の供給が停止され、各供給ノズル91は塗布位置から待機位置に移動する。
前述の超純水の供給が停止されると、ステップS14において、乾燥処理が実行される。つまり、超純水の供給が停止されると、テーブル30の回転数が所定の回転数に上げられる(液の振り切り乾燥)。このときの回転数は、ステップS12やS13の回転数よりも大きい。超純水の供給停止から所定時間が経過すると、テーブル30は回転を停止する。
前述の各供給ノズル91が待機位置に到達し、テーブル30の回転が停止すると、ステップS15において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が前述の所定幅の環状領域から除去される。まず、剥離ハンド61はハンド移動機構62により待機位置から剥離開始位置に移動し、また、各保持部材31は回転昇降機構32によりテーブル30の上面よりも上昇する。この上昇により、図14に示すように、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が、テーブル30の上面の一部から剥がされる。剥離ハンド61が剥離開始位置に到達すると、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの近傍の直上に位置し、その後下降して、各保持部材31の上面や各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部に付着している硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかむ。そして、剥離ハンド61は、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかんだ状態で上昇し、剥離開始位置から剥離終了位置に向って移動し、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから剥がす。これにより、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が基板Wから除去される。この樹脂除去が完了すると、剥離ハンド61は剥離終了位置から回収位置に移動し、回収位置に到達すると硬化状態の熱可塑性樹脂B1を離して回収部70に向けて落とす。回収部70は、落下してきた硬化状態の熱可塑性樹脂B1を受けって収容する。剥離ハンド61は、回収位置で硬化状態の熱可塑性樹脂B1を落とすと、回収位置から待機位置に移動する。
前述の剥離ハンド61が待機位置に戻ると、ステップS16において、樹脂剥離済の基板Wが、各保持部材31上から前述のロボットハンド(図示せず)によって処理室20外に搬出され、次工程のために搬送装置によって搬送されていく。
このような基板処理工程では、軟化状態の熱可塑性樹脂B1が、各保持部材31上の基板Wの上面とテーブル30の上面との間の隙間を覆うように所定幅の環状領域に塗布され、その所定幅の環状領域が硬化状態の熱可塑性樹脂B1により覆われる。基板Wの上面に供給されたエッチング液は、遠心力により、基板Wの上面から熱可塑性樹脂B1の上面を経由してテーブル30の上面に乗り移り、テーブル30の外周から排出される。これにより、後工程であるエッチング工程において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1がエッチング液から基板Wの外周面A1bを保護する保護材として機能する。このため、基板Wの外周面A1bがエッチング液により浸食されることが抑制され、基板サイズの縮小を抑えることができる。その結果、基板Wの外周部分においても所望サイズのデバイスチップを得ることが可能となるので、デバイスチップロスの発生を抑制することができる。また、後工程でのロボットによる搬送など、後工程での基板搬送を可能にし、歩留まりを向上させることができる。
また、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから除去する工程では、剥離ハンド61により基板W上の熱可塑性樹脂B1の一部をつかむ前に、基板Wを保持する各保持部材31が回転昇降機構32により上昇し、テーブル30の上面の一部から硬化状態の熱可塑性樹脂B1が剥がされる。これにより、剥離ハンド61が硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかみやすくなるので、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから除去する作業を容易化することができる。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、各保持部材31上の基板Wの上面とテーブル30の上面との間の隙間を覆うように所定幅の環状領域に軟化状態の熱可塑性樹脂B1を塗布することで、テーブル30上の基板Wの外周面A1bに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を直接塗布する場合に比べ、樹脂塗布に係る各種設定や装置調整を容易化することができる。これは、第1の実施形態では、基板Wの外周面A1bの上部に供給された熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bを覆うように下方に広がっていくことで、外周面A1bに熱可塑性樹脂B1を塗布するものであった。これに対し、第2の実施形態では、テーブル30の上面、基板Wの上面、両者間の隙間のそれぞれに熱可塑性樹脂B1が塗布されるようにすれば良いためである。基板Wの外周面A1bに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を直接塗布する場合、使用する熱可塑性樹脂B1の粘度などによっては、樹脂塗布に係る各種設定や装置調整が難しいことがある。
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図15から図17を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第2の実施形態との相違点(テーブル及びガイド部材)について説明し、その他の説明を省略する。
図15に示すように、第3の実施形態に係る基板処理装置10は、第2の実施形態に係る各部20~90に加え、ガイド部材100を備えている。なお、第3の実施形態に係るテーブル30は、第2の実施形態と一部が異なるテーブルである。
テーブル30は、回転中心部に中空部30bを有している。この中空部30bには、複数の供給ノズル33が固定配置されている。従って、各供給ノズル33は、テーブル30と共には回転しない。例えば、テーブル30に連結された回転軸となる筒状の支柱内が中空部30bとされる。これらの供給ノズル33は、それぞれテーブル30上の基板Wの下面の中央付近に向けて処理液(例えば、超純水)を供給する。これにより、基板Wの下面を超純水によって清浄にすることができる。
ガイド部材100は、処理位置にある各保持部材31により基板Wが保持されている状態で、その基板Wの外周面A1bを囲うよう、例えば、円環状に形成されており、テーブル30の上面に設けた複数の支柱101によりテーブル30の上面から離間してテーブル30の上面の上方に位置するように設けられている。各支柱101は、ガイド部材100の円環の中心を中心とする同一円周上に60度ごとに配置されている。なお、ガイド部材100の上面の高さ位置と、処理位置にある各保持部材31により保持されている基板Wの上面の高さ位置とは、ほぼ同じである。
前述のガイド部材100には、図16に示すように、各保持部材31に対応させて複数の切欠き部102が形成されている。つまり、各切欠き部102は、各保持部材31に対応させてガイド部材100の円環の中心を中心として60度ごとに配置されており、それぞれ保持部材31の把持動作や昇降動作を妨げないように形成されている。
供給ノズル52は、図17に示すように、各保持部材31上の基板Wとガイド部材100の上面との隙間の直上に位置し、その隙間に向けて軟化状態の熱可塑性樹脂B1を吐出し、各保持部材31上の基板Wとガイド部材100の上面との隙間、各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部及びその外周領域A1aに隣り合うガイド部材100の上面の一部を覆うように軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。なお、軟化状態の熱可塑性樹脂B1は、所望の粘性を有しているので、前述の隙間に向けて吐出された熱可塑性樹脂B1は、その隙間を覆うように広がっていく。熱可塑性樹脂B1は供給ノズル52から吐出されると表層から徐々に硬化し始め、ガイド部材100や各保持部材31、基板Wに付着すると熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がり、それらに付着した部分の熱可塑性樹脂B1は急速に硬化する。
この樹脂供給時には、テーブル30は回転機構40により回転しているため、テーブル30上の基板Wも回転し、基板Wとガイド部材100との間に相対移動は生じない状態である。このため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、各保持部材31上の基板Wとガイド部材100の上面との隙間を覆うように、各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部及びその外周領域A1aに隣り合うガイド部材100の上面の一部に順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、熱可塑性樹脂B1が所定幅の環状領域に塗布され、その所定幅の環状領域だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる(樹脂塗布済)。この樹脂塗布済の基板Wは、処理室20内でエッチング液によって処理される。
エッチング工程では、第2の実施形態のように処理液(エッチング液、洗浄液及び超純水)が供給されるが、この処理液の供給中、各保持部材31上の基板Wの下面の全体に超純水が各供給ノズル33から供給される。これにより、エッチング処理中でも、基板Wの下面を清浄に維持することができる。このとき、ガイド部材100が存在するため、各保持部材31上の基板Wの下面に供給され、その基板Wの下面に沿って基板Wの外周に向けて流れる超純水をガイド部材100とテーブル30の上面との間の空間に流し、テーブル30外に排出することが可能となる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ガイド部材100を設けることで、各保持部材31上の基板Wとガイド部材100の上面との隙間、各保持部材31上の基板Wの外周領域A1aの一部及びその外周領域A1aに隣り合うガイド部材100の上面の一部を、熱可塑性樹脂B1で覆うことができる。これにより、エッチング液から基板Wの外周面A1bを保護しつつ、基板Wの下面に供給された超純水をテーブル30外に排出することが可能となる。これにより、基板Wの下面に超純水を供給することができるので、基板Wの下面を清浄に維持することができる。
<第4の実施形態>
第4の実施形態について図18から図20を参照して説明する。なお、第4の実施形態では、第1の実施形態との相違点(剥離ハンド61及び回収部70)について説明し、その他の説明を省略する。
図18に示すように、第4の実施形態に係る剥離ハンド61は、先端が尖った針状のピンである。この剥離ハンド61は、熱伝導性が高い材料により形成されており、ニクロム線などの加熱体62cを内蔵している。この加熱体62cは剥離ハンド61を加熱する。可動アーム62aは、回転機構62dにより途中で折れ曲がることが可能に形成されている。回転機構62dは、回転軸やモータ(いずれも図示せず)を有しており、自在な折れ曲がりを実現する関節として機能する。剥離ハンド61は、回転機構62eを介して可動アーム62aに連結されている。回転機構62eは、回転軸やモータ(いずれも図示せず)を有しており、回転軸を回転中心として剥離ハンド61を回転させる回転駆動部として機能する。加熱体62cや各回転機構62d、62eは、それぞれ制御部80に電気的に接続されており、それらの駆動は制御部80により制御される。
図19に示すように、第4の実施形態に係る回収部70は、本体71と、除去部72とを有している。本体71の一部は処理室20内に設けられており、他の部分が処理室20外に設けられている。本体71における処理室20内の空間は硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離ハンド61から除去するための空間であり、処理室20外の空間は硬化状態の熱可塑性樹脂B1を収容するための空間である。本体71は、上面に開口部71aを有しており、この開口部71aは、剥離ハンド61が硬化状態の熱可塑性樹脂B1を保持した状態で本体71内に進入することが可能な大きさに形成されている。除去部72は、開閉可能な一対のシャッター部材(除去部材の一例)72aを有している。これらのシャッター部材72aは、本体71の上端の開口部71aを塞ぐ蓋体として互いに対向するように設けられており、近づく方向及び離れる方向に移動機構72bにより移動可能に形成されている。移動機構72bは連動部材やモータ(いずれも図示せず)などにより構成されており、モータは制御部80に電気的に接続され、その駆動は制御部80により制御される。
一対のシャッター部材72aは、図20に示すように、互いに移動して完全に閉じた状態となるが、完全に閉じた状態でも、針状の剥離ハンド61だけが通過することが可能な貫通孔H1を有するように形成されている。すなわち、一対のシャッター部材72aが完全に閉じた状態において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を保持した剥離ハンド61が貫通孔H1を通過するとき、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1は一対のシャッター部材72aに当接することになる。
樹脂剥離工程では、剥離ハンド61が加熱体62cにより加熱され、加熱された剥離ハンド61が剥離開始位置から接触位置まで下降する。剥離ハンド61の移動は、第1の実施形態と同様、ハンド移動機構62により行われる(以下同様)。剥離ハンド61は、寝た状態(ほぼ水平な状態)のまま、基板W上の硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部に接触し、加熱体62cによる熱によって基板W上の硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を軟化(溶融)させる。その後、剥離ハンド61が熱可塑性樹脂B1の一部に接触した状態で、剥離ハンド61に対する加熱体62cによる加熱が停止され、熱により軟化した熱可塑性樹脂B1の一部は放冷によって再び硬化する。これにより、剥離ハンド61が熱可塑性樹脂B1に接着され、剥離ハンド61は熱可塑性樹脂B1を確実に保持する。なお、ここでは、熱可塑性樹脂B1は直接加熱されていないが、剥離ハンド61が接触する領域の熱可塑性樹脂B1をあらかじめスポットハロゲンランプなどの加熱部(図示せず)により加熱するようにしても良い。この場合、硬化状態の熱可塑性樹脂B1に対する剥離ハンド61の接着をより容易化することができる。
次いで、剥離ハンド61は、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を保持した状態で、接触位置から剥離開始位置まで上昇し、基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を剥がす。剥離開始位置に位置した剥離ハンド61は、回転機構62dにより回転軸を回転中心として回転しつつ、剥離開始位置から剥離終了位置に向って基板Wの表面に沿って移動し、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を巻き取って基板Wの外周面A1bから剥がす(図18参照)。これにより、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が基板Wから剥離される。
この樹脂剥離工程によれば、硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、剥離ハンド61により巻き取られて基板Wから除去される。これにより、剥離ハンド61による巻き取りを実行せず、剥離ハンド61を移動させて熱可塑性樹脂B1の除去を行う場合に比べ、熱可塑性樹脂B1を剥離するときの移動距離である移動ストロークを短くすることが可能になる。したがって、装置内における剥離ハンド61の移動スペースを最小限に抑えることができる。また、剥離ハンド61による巻き取りを実行せず、剥離ハンド61を移動させて熱可塑性樹脂B1の除去を行う場合に比べ、熱可塑性樹脂B1を小さくまとめて回収することができる。
前述の樹脂剥離工程が完了すると、剥離ハンド61は、剥離終了位置から回収部70の直上の回収待機位置に移動して回収待機位置に到達し、寝た状態から立った状態(ほぼ鉛直な状態で先端が下方を向いている状態)となる。このとき、除去部72の一対のシャッター部材72aは互いに離れ、剥離ハンド61が硬化状態の熱可塑性樹脂B1を保持した状態で本体71内に進入することが可能なサイズに開口しており、剥離ハンド61は一対のシャッター部材72aの開口の直上に位置している。剥離ハンド61が回収待機位置から鉛直方向に所定距離下降すると、一対のシャッター部材72aが移動機構72bにより閉じられ、それらのシャッター部材72aは剥離ハンド61を挟んで向かい合う。一対のシャッター部材72aが剥離ハンド61を挟んで向かい合っている状態で、剥離ハンド61は回転機構62eにより回転しながら上昇し、元の回収待機位置に戻る。このとき、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、一対のシャッター部材72aの下端に当接し(図19参照)、一対のシャッター部材72aによりせき止められ、剥離ハンド61の上昇によって剥離ハンド61の下端(先端)に向かって徐々に移動し、剥離ハンド61から抜け落ちる。剥離ハンド61から抜けた硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、本体71の底面に向けて落下し、本体71によって収容される。
この樹脂回収工程では、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1が、剥離ハンド61の移動に応じて、一対のシャッター部材72aによって取り除かれる。これにより、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離ハンド61から除去することが可能になる。したがって、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を除去して回収する回収作業が自動化されるので、作業者(ユーザ)が剥離ハンド61を清掃して剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を回収する回収作業を行う場合に比べ、生産効率を向上させることができ、また、基板Wの汚染を抑えることができる。作業員が作業を行うということは、装置の扉を開けてから作業を行うことになるため、装置を停止させてからの作業が必須となる。したがって、作業時間もかかる分、生産効率が落ちる。回収作業が自動化されると、回収している最中に、別の基板Wに熱可塑性樹脂B1を塗布することができるので、生産効率が向上する。また、作業者の作業により熱可塑性樹脂B1を取るため、装置の扉を開けてから作業を行うことになる。つまり、装置の扉を開けるということは、装置内に外部からの雰囲気を入れることになるため、装置内が清浄な雰囲気に保たれず、基板Wが汚染される場合がある。回収作業が自動化されると、装置内の雰囲気を清浄に保ちつつ、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を回収することができる。
以上説明したように、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、除去部72は、開閉可能な一対のシャッター部材72aを有しており、それらのシャッター部材72aは、剥離ハンド61を挟んで向かい合い、剥離ハンド61の移動に応じ、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1に当接し、剥離ハンド61から硬化状態の熱可塑性樹脂B1を除去する。これにより、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を除去して回収する回収作業が自動化されるので、作業者が回収作業を行う場合に比べ、生産効率を向上させることができ、また、基板Wの汚染を抑えることができる。
なお、樹脂回収工程において、剥離ハンド61を上方に移動させるとき、剥離ハンド61を回転させているが、これに限るものではなく、回転させなくても良い。ただし、除去効率を向上させるためには、剥離ハンド61を上方に移動させつつ、剥離ハンド61を回転させることが好ましい。また、剥離ハンド61に一対のシャッター部材72aを接触させていないが、これに限るものでなく、接触させても良い。ただし、剥離ハンド61や一対のシャッター部材72aの損傷、また、損傷によるゴミの発生を抑えるためには、剥離ハンド61に一対のシャッター部材72aを接触させないことが望ましい。
<第5の実施形態>
第5の実施形態について図21及び図22を参照して説明する。なお、第5の実施形態では、第4の実施形態との相違点(回収部70)について説明し、その他の説明を省略する。
図21及び図22に示すように、第5の実施形態に係る本体71は、上面に開口部71bを有している。この開口部71bは、剥離ハンド61が硬化状態の熱可塑性樹脂B1を保持した状態で本体71内に進入することが可能な大きさに形成されている。また、第5の実施形態に係る除去部72は、複数のローラ72cを有している。これらのローラ72cは、剥離ハンド61が移動する方向に二列に並べられており、それらの列が所定距離離れるように設けられている。また、各ローラ72cは、連動して本体71の内側(図21中の矢印方向)に回転機構72dにより回転するように形成されている。回転機構72dは連動部材やモータ(いずれも図示せず)などにより構成されており、モータは制御部80に電気的に接続され、その駆動は制御部80により制御される。前述の列間の所定距離は、各ローラ72cが、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1に接触してその熱可塑性樹脂B1を挟み込むことが可能な距離に設定されている。各ローラ72cは、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離ハンド61の先端側(図21の下端側)に移動させ、剥離ハンド61から抜き取る方向に回転する。
樹脂回収工程では、剥離ハンド61は剥離終了位置から回収待機位置に移動して、回収待機位置に到達し、寝た状態から立った状態となる。このとき、剥離ハンド61は、立った状態で本体71の開口部71bの直上に位置し、除去部72の各ローラ72cは、剥離ハンド61の先端から硬化状態の熱可塑性樹脂B1を抜き取る方向に回転し始める。次いで、剥離ハンド61は、回転機構62eにより回転しながら、回収待機位置から鉛直方向に所定距離下降する。各ローラ72cは、回転しつつ、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を挟み込み、剥離ハンド61から硬化状態の熱可塑性樹脂B1を下方に移動させる。また、剥離ハンド61は、所定距離下降すると、各ローラ72cにより硬化状態の熱可塑性樹脂B1が挟み込まれた状態で回転しながら上昇し、元の回収待機位置に戻る。このとき、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、各ローラ72cの回転及び剥離ハンド61の上昇によって剥離ハンド61の下端(先端)に向かって移動し、剥離ハンド61から抜け落ちる。剥離ハンド61から抜けた硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、本体71の底面に向けて落下し、本体71によって収容される。剥離ハンド61が元の回収待機位置に戻ると、各ローラ72cの回転は停止される。
この樹脂回収工程では、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1が、各ローラ72cの回転及び剥離ハンド61の移動に応じ、各ローラ72cにより剥離ハンド61から抜き取られる。これにより、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離ハンド61から除去して回収することが可能になる。したがって、第4の実施形態と同じように、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を除去して回収する回収作業が自動化されるので、作業者が回収作業を行う場合に比べ、生産効率を向上させることができ、また、基板Wの汚染を抑えることができる。
以上説明したように、第5の実施形態によれば、第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、除去部72は、回転可能な一対のローラ72cを有しており、それらのローラ72cは、剥離ハンド61により保持された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を挟み込んで回転し、剥離ハンド61から硬化状態の熱可塑性樹脂B1を除去する。これにより、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を除去して回収する回収作業が自動化されるので、作業者が回収作業を行う場合に比べ、生産効率を向上させることができ、また、基板Wの汚染を抑えることができる。
なお、除去部72としては、各ローラ72cによる除去以外にも、例えば、各ローラ72cにかえて、本体71の内部にチャックハンドを設け、剥離ハンド61に巻き付けられた熱可塑性樹脂B1を掴み、移動機構によりチャックハンドを下降させ、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を除去するようにしても良い。また、ローラ機構あるいはシャッター機構により熱可塑性樹脂B1を除去したが、これに限るものではなく、例えば水平に設けられた除去部材(例えば板材)の側面に、剥離ハンド61が挿入できる直線状の溝を上下方向に設け、その除去部材(U字形状の部材)の溝の延伸方向に交差する方向(例えば直交する方向)から溝内に剥離ハンド61を入れ、その剥離ハンド61を溝の延伸方向に引き上げ、除去部材に熱可塑性樹脂B1を引っかけて取る機構を用いることも可能である。除去部材は、剥離ハンド61を間にし、剥離ハンド61の移動に応じて、剥離ハンド61により保持された熱可塑性樹脂B1に当接し、剥離ハンド61により保持された熱可塑性樹脂B1を剥離ハンド61から除去する。なお、前述の一対のシャッター部材72aも除去部材の一例である。
また、樹脂回収工程において、各ローラ72cにより剥離ハンド61から硬化状態の熱可塑性樹脂B1を除去するとき、剥離ハンド61を上方に移動させているが、これに限るものではなく、移動させずに固定するようにしても良い。また、樹脂回収工程において、剥離ハンド61を上方に移動させるとき、剥離ハンド61を回転させているが、これに限るものではなく、剥離ハンド61の移動時や固定時に回転させても、あるいは、回転させなくても良い。ただし、除去効率を向上させるためには、剥離ハンド61を上方に移動させつつ、剥離ハンド61を回転させることが望ましい。
<他の実施形態>
前述の説明においては、剥離ハンド61として、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかむクランプ状やピンセット状のハンドを用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、針状のハンド(ピン)、フォーク状のハンド、ニクロム線やランプなどの発熱体、また、吸引部を用いるようにしても良い。針状のハンドは、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部に突き刺さって熱可塑性樹脂B1の一部を保持する。発熱体は、線状や環状、棒状などに形成されており、発熱して硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を溶かし、その一部に付着して熱可塑性樹脂B1の一部を保持する。吸引部は、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を吸引して保持する。
また、前述の説明においては、剥離ハンド61の材質を特に限定するものではないが、剥離ハンド61の材質としては、剥離ハンド61が加熱体62cなどの加熱機構を有する場合、熱伝導性を有する金属やセラミックなどを採用することが可能である。また、剥離ハンド61から熱可塑性樹脂B1を除去しやすくするためには、剥離ハンド61の表面を例えばフッ素樹脂などの材料によりコーティングすることも可能である。
また、前述の説明においては(第4の実施形態や第5の実施形態参照)、剥離ハンド61に接触した熱可塑性樹脂B1を加熱後に放冷することを例示したが、これに限るものではなく、剥離ハンド61の内部に冷却機構(例えば、ペルチェ素子)を設け、冷却機構により剥離ハンド61を冷やし、剥離ハンド61に接触した熱可塑性樹脂B1を冷却するようにしても良い。
また、前述の説明においては、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を保持した剥離ハンド61を一方向に移動させて基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部を保持した剥離ハンド61を回転させて硬化状態の熱可塑性樹脂B1を巻き取り、基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離するようにしても良い(第4の実施形態や第5の実施形態参照)。
また、前述の説明においては、回収部70が硬化状態の熱可塑性樹脂B1を回収することだけを例示したが、これに限るものではなく、例えば、回収部70にヒータを設け、回収部70と貯留ユニット51のタンク51aとを配管により接続し、回収した硬化状態の熱可塑性樹脂B1をヒータにより加熱して軟化させ、軟化状態の熱可塑性樹脂B1を配管によりタンク51aに戻すようにしても良い。この場合には、熱可塑性樹脂B1を再利用することが可能になるので、コストを抑えることができ、また、熱可塑性樹脂B1の廃棄による環境面への負荷を抑えることができる。
また、熱可塑性樹脂B1が供給ノズル52から適正に吐出されるように、供給位置での吐出動作前に試し吐出を行うようにしても良い。例えば、供給ノズル52が供給位置に位置付けられるときには、事前に待機位置にて供給ノズル52から熱可塑性樹脂B1を吐出させる(事前吐出)。供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、供給ノズル52の下方に設けた受け皿にて受けるようにする。供給ノズル52を回収部70の上方に位置付けて、事前吐出を行うようにしても良い。上記した熱可塑性樹脂B1を再利用する構成では、待機時に供給ノズル52を回収部70の上方に位置付け、熱可塑性樹脂B1を連続的に吐出し続けるようにしても良い。
また、剥離ハンド61を用いて、硬化した熱可塑性樹脂B1を剥がす際、硬化した熱可塑性樹脂B1に加熱流体を吹き付け、熱可塑性樹脂B1の一部を溶かした状態でつかむようにしても良い。
また、剥離ハンド61の離型性が向上するのであれば、回収部70に位置付けられた剥離ハンド61、あるいは剥離ハンド61が保持する熱可塑性樹脂B1を加熱する、温風ヒータなどの加熱部材を設けても良い。
また、供給ノズル52による熱可塑性樹脂B1の塗布を、供給ノズル52を移動させながら、例えば、テーブル30の回転半径方向に移動させながら行っても良い。
また、熱可塑性樹脂B1の供給においては、テーブル30上の基板Wと供給ノズル52とを相対移動させれば良く、例えば、テーブル30の回転を行わず、テーブル30上の基板Wの外周端部A1に対して供給ノズル52を移動させ、熱可塑性樹脂B1の供給を行うようにしても良い。基板W及び供給ノズル52を相対移動させる移動機構としては、テーブル30を回転させる回転機構40以外にも、例えば、供給ノズル52を円環や矩形環などの環、また、直線に沿って移動させる移動機構(一例として、供給ノズル52を支持して曲線状や直線状にスライド移動可能にするガイド、スライド移動の駆動源となるモータなど)を用いることが可能である。
また、基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、供給ノズル52からの熱可塑性樹脂B1の吐出を停止させるようにしたが、供給ノズル52からの熱可塑性樹脂B1の吐出を、付着開始点が2周以上にわたって移動した後に停止させるようにしても構わない。特に、図5以降に示す実施形態のように、基板Wにおける、重力方向に直交する外周領域A1aに塗布する場合には、2周以上にわたって塗布することが好ましい。1周で塗布する時と比べると、同じ塗付幅、同じ膜厚の熱可塑性樹脂B1を得るのに、供給ノズル52からの単位時間当たりの吐出量を少なくできる。このため、基板W、テーブル30、あるいはガイド部材100に塗布された熱可塑性樹脂B1の幅、厚さを、共に制御しやすくなるからである。さらにこの場合、周回ごとに供給ノズル52を基板の半径方向にずらすようにしても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。