<第1の実施形態>
第1の実施形態について図1から図10を参照して説明する。
(基本構成)
図1に示すように、第1の実施形態に係る基板処理装置10は、処理室20と、テーブル30と、回転機構40と、樹脂供給部50と、加熱部60と、制御部70とを備えている。
処理室20は、被処理面Waを有する基板Wを処理するための処理ボックスである。この処理室20は、例えば、箱形状に形成されており、テーブル30、回転機構40の一部、樹脂供給部50の一部、加熱部60などを収容する。基板Wとしては、例えば、ウェーハや液晶基板が用いられる。この基板Wは、エッチング処理の対象、すなわちエッチング対象となる。
前述の処理室20の上面には、クリーンユニット21が設けられている。このクリーンユニット21は、例えば、HEPAフィルタなどのフィルタやファン(いずれも図示せず)を有しており、基板処理装置10が設置されるクリーンルームの天井から吹き降ろすダウンフローを浄化して処理室20内に導入し、処理室20内に上から下に流れる気流を生じさせる。クリーンユニット21は制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。
テーブル30は、処理室20内の中央付近に位置付けられ、回転機構40上に水平に設けられており、水平面内で回転可能になっている。このテーブル30は、例えば、スピンテーブル(回転テーブル)と呼ばれる。基板Wの被処理面Waの中心は、テーブル30の回転軸上に位置付けられる。テーブル30は、例えば、その上面に載置された基板Wを吸着して保持する(吸着保持)。
回転機構40は、テーブル30を支持し、そのテーブル30を水平面内で回転させるように構成されている。例えば、回転機構40は、テーブル30の中央に連結された回転軸やその回転軸を回転させるモータ(いずれも図示せず)を有している。この回転機構40は、モータの駆動により回転軸を介してテーブル30を回転させる。回転機構40は制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。
樹脂供給部50は、貯留ユニット51と、供給ノズル52と、ノズル移動機構53とを有している。この樹脂供給部50は、ノズル移動機構53により供給ノズル52を移動させてテーブル30上の基板Wの外周端部A1の上方に位置付け、貯留ユニット51から供給ノズル52に軟化状態の熱可塑性樹脂を送り、供給ノズル52からテーブル30上の基板Wの外周端部A1に軟化状態の熱可塑性樹脂を供給する。なお、基板Wの外周端部A1の詳細については、後述する。
ここで、熱可塑性樹脂としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ウレタン系樹脂が用いられる。この熱可塑性樹脂は、エッチング工程で用いられるエッチング液に対して難溶性、すなわち耐性を有しており、エッチング液から基板Wを保護する保護材として機能する。熱可塑性樹脂は、例えば、その温度が150℃以上になると軟化し、150℃より低くなると硬化する。硬化状態は、ゲル状であっても良い。
貯留ユニット51は、タンク51aと、開閉弁51bと、ポンプ51cとを有している。タンク51aは、ヒータ51a1を有しており、ヒータ51a1により熱可塑性樹脂を加熱して軟化状態の熱可塑性樹脂を貯留する。ヒータ51a1は、熱により熱可塑性樹脂を軟化させる加熱部として機能する。タンク51aは、供給ノズル52に供給管51a2を介して接続されている。開閉弁51b及びポンプ51cは、供給管51a2の経路途中に設けられている。電磁弁などの開閉弁51bは供給管51a2を流れる軟化状態の熱可塑性樹脂の流通(供給量や供給タイミングなど)を制御し、ポンプ51cはタンク51a内の軟化状態の熱可塑性樹脂を供給ノズル52に送るための駆動源である。開閉弁51b及びポンプ51c、ヒータ51a1などの加熱部は、制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。なお、供給管51a2の外周壁にも、供給管51a2の延伸経路に沿って延伸するヒータ(図示せず)を設けることが好ましい。この場合、そのヒータも、熱により熱可塑性樹脂を軟化させる加熱部として機能し、供給管51a2を流れる熱可塑性樹脂の軟化状態を維持する。
供給ノズル52は、ノズル移動機構53によりテーブル30の上方をテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って水平方向に揺動可能に形成されており、また、鉛直方向に移動可能に形成されている。この供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周端部A1に対向し、タンク51aから供給管51a2を介して供給された軟化状態の熱可塑性樹脂をテーブル30上の基板Wの外周端部A1に向けて供給する。供給ノズル52としては、例えば、ディスペンサが用いられる。また、供給ノズル52は、ヒータ52aを有している。このヒータ52aは、熱により熱可塑性樹脂を軟化させる加熱部として機能し、供給ノズル52を流れる熱可塑性樹脂の軟化状態を維持する。ヒータ52aは制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。
ノズル移動機構53は、可動アーム53aと、アーム移動機構53bとを有している。可動アーム53aは、アーム移動機構53bによって水平に支持され、一端に供給ノズル52を保持している。アーム移動機構53bは、可動アーム53aにおける供給ノズル52と反対側の一端を保持し、その可動アーム53aをテーブル30上の基板Wの被処理面Waに沿って水平方向に揺動させ、また、鉛直方向に昇降させる。このアーム移動機構53bは制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。
例えば、ノズル移動機構53は、テーブル30上の基板Wの外周端部A1の直上の供給位置と、テーブル30の上方から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置との間で供給ノズル52を移動させる。なお、図1に示す供給ノズル52は供給位置にある。
加熱部60は、テーブル30の回転動作を妨げないようにテーブル30の周囲に設けられている。この加熱部60は、基板Wに対する熱可塑性樹脂の密着性を向上させるため、基板Wの外周端部A1に塗布された熱可塑性樹脂を非接触で加熱する。加熱部60としては、熱風により加熱を行うヒータ、あるいは、放射熱により加熱を行うヒータなどが用いられる。この加熱部60は制御部70に電気的に接続されており、その駆動は制御部70により制御される。図示は、熱風によるヒータを示す。
制御部70は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)を具備している。この制御部70は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて、回転機構40によるテーブル30の回転動作、樹脂供給部50による熱可塑性樹脂の供給動作、加熱部60の加熱動作などの制御(制御に係る各種処理も含む)を行う。
ここで、図2に示すように、基板Wの外周端部A1は、基板Wの上面(被処理面Wa)の外周領域A1aと、基板Wの外周面(基板Wの外周の端面)A1bと、基板Wの下面の外周領域A1cとにより構成されている。また、図2及び図3に示すように、基板Wの上面には、エッチング処理工程においてエッチング処理の対象となるエッチング対象領域R1がある。エッチング対象領域R1は、基板Wの上面の外周領域A1aを除いた基板Wの上面の領域である。このエッチング対象領域R1以外の領域は、エッチング処理工程においてエッチング処理の対象でない非エッチング対象領域である。図3では、エッチング対象領域R1は円状の領域であり、基板Wの上面の外周領域A1a、また、基板Wの下面の外周領域A1c(図2参照)は、それぞれ基板Wの外周から内側(基板Wの中心側)に数mm(例えば4mm以下)の所定幅を有する円環状の領域である。
例えば、供給ノズル52は、図2に示すように、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの直上に位置し、その外周面A1bの上部に軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。なお、軟化状態の熱可塑性樹脂B1は、所望の粘性を有しているので、基板Wの外周面A1bの上部に供給された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの外周面A1bを覆うように下方に広がっていく。熱可塑性樹脂B1は供給ノズル52から吐出されると表層から徐々に硬化し始め、基板Wに付着すると熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がり、基板Wに付着した部分の熱可塑性樹脂は急速に硬化する。テーブル30上の基板Wの温度は処理室20内の気流(例えば、上から下に流れる気流)により低下している。このため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1が基板Wに付着すると、熱可塑性樹脂B1の温度は急激に下がる傾向にある。
この樹脂供給時、テーブル30は回転機構40により回転しているため、テーブル30上の基板Wも回転している状態である。このため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの回転に応じて基板Wの外周面A1bに沿って順次付着していく。これにより、図3に示すように、基板Wの外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる(樹脂塗布済)。そして、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1は温度低下により硬化する。その後、テーブル30が回転している状態で、硬化状態の熱可塑性樹脂B1が加熱部60により加熱されると、その熱可塑性樹脂B1は軟化して基板Wの外周面A1bに接着する。これにより、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が向上する。このとき、加熱部60は、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1を、その熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bに接触していない面側(図2参照)から瞬間的に(例えば数秒)加熱し、熱可塑性樹脂B1を軟化させる。ここで、加熱部60による熱可塑性樹脂B1の加熱温度は、熱可塑性樹脂B1の粘度が、熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bから垂れることのない程度の粘度に維持される温度以下に制限される。なお、熱可塑性樹脂材料の一部が無駄になるが、熱可塑性樹脂B1の一部が基板Wの外周面A1bから垂れるような加熱温度であっても、最終的に基板Wの外周面A1bに、必要とする厚さの熱可塑性樹脂B1が塗布できるのであれば、その加熱温度を制限温度としても構わない。この制限温度は、用いる熱可塑性樹脂B1の種類などで異なり、予め実験的に求められている。この樹脂塗布済の基板Wは、ロボットハンドなどを有する搬送装置(図示せず)により処理室20から搬出され、基板処理装置10と別体のエッチング処理装置(図示せず)に搬入され、エッチング液によって処理される(詳しくは、後述する)。
なお、供給ノズル52が供給位置にある状態において、供給ノズル52とテーブル30上の基板Wとの垂直離間距離は、所定距離に設定されている。この所定距離は、使用する熱可塑性樹脂B1の種類(軟化状態での粘度)に応じ、熱可塑性樹脂の供給量やテーブル30の回転数などとともに、実験的にあらかじめ求められている。つまり、所定距離や熱可塑性樹脂の供給量やテーブル30の回転数などは、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bだけを覆って硬化するようにあらかじめ設定されている。また、先に述べた加熱部60による加熱温度と同様に、加熱部60による加熱時間も、使用する熱可塑性樹脂B1の種類(軟化状態での粘度)に応じ、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1が軟化して基板Wの外周面A1bから垂れることのない、あるいは、垂れたとしても、最終的に基板Wの外周面A1bに必要とする厚さの熱可塑性樹脂B1が塗布できるよう、実験的にあらかじめ求められ設定されている。
(基板処理工程)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板処理工程の流れについて説明する。この基板処理工程において制御部70が各部の動作を制御する。
図4に示すように、ステップS1において、ロボットハンドにより未処理の基板Wが処理室20内に搬入されてテーブル30上に載置され、その載置された基板Wがテーブル30によって吸着保持される。ロボットハンドは、基板Wの載置後、処理室20から退避する。なお、基板Wの搬入時には、供給ノズル52は待機位置にある。
前述のロボットハンドが処理室20から退避すると、ステップS2において、テーブル30の回転が回転機構40により開始され、ステップS3において、軟化状態の熱可塑性樹脂がテーブル30上の基板Wの外周端部A1に塗布される。具体的には、次の手順で行われる。供給ノズル52はノズル移動機構53により待機位置から供給位置に移動する。供給ノズル52が供給位置に到達すると、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの直上に位置し(図2参照)、テーブル30の回転数が所定の回転数(例えば10rpm)となると、基板Wの外周面A1bの上部に向けて軟化状態の熱可塑性樹脂B1を吐出する。供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周面A1bに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、基板Wの外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され(図3参照)、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1の厚みは、例えば0.5~3mmである。なお、外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1は、温度低下により硬化状態となる。
この樹脂塗布が完了して吐出が停止されると、供給ノズル52は塗布位置から待機位置に移動し、ステップS4において、加熱部60の加熱動作が開始される。基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1は加熱部60により加熱される。この加熱は、基板Wの回転に応じ、基板Wの外周面A1bの全体にわたって所定時間行われる。所定時間経過後、加熱部60の加熱動作が停止される。この加熱動作により、基板Wの外周面A1bに塗布された硬化状態の熱可塑性樹脂B1は再度軟化し、基板Wの外周面A1bに接着するため、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が向上する。その後、この密着性が向上した状態で熱可塑性樹脂B1は硬化(再硬化)する。この樹脂加熱が完了すると、ステップS5において、テーブル30の回転が停止される。
前述の供給ノズル52が待機位置に戻り、また、テーブル30の回転が停止されると、ステップS6において、樹脂塗布済の基板Wが、テーブル30上から前述のロボットハンド(図示せず)によって処理室20外に搬出され、エッチング処理装置(図示せず)に搬入される。そして、エッチング処理装置により基板Wの被処理面Waがエッチング液により処理される。エッチング工程では、例えば50rpmで回転する基板Wの被処理面Waの中央付近にエッチング液が供給され、供給されたエッチング液は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。これにより、基板Wの被処理面Wa上にはエッチング液の液膜が形成され、基板Wの被処理面Waはエッチング液によって処理される。このとき、硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、エッチング液から基板Wの外周面A1bを保護する保護材として機能する。エッチング処理後の基板Wは、エッチング処理装置内にて、洗浄液を用いた洗浄処理、基板Wを高速回転させることによる乾燥処理が順次行われる。
このような基板処理工程では、軟化状態の熱可塑性樹脂B1がテーブル30上の基板Wの外周端部A1の一部である外周面A1bに塗布され、その外周面A1bの全面だけが硬化状態の熱可塑性樹脂B1により覆われる。これにより、後工程であるエッチング工程において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1がエッチング液から基板Wの外周面A1bを保護する保護材として機能するため、基板Wの外周面A1bがエッチング液により浸食されることが抑制され、基板Wの直径が小さくなること、すなわち基板サイズの縮小を抑えることができる。その結果、基板Wの外周部分においても所望サイズのデバイスチップを得ることが可能となるので、デバイスチップロスの発生を抑制することができる。また、後工程でのロボットによる搬送など、後工程での基板搬送を可能にし、歩留まりを向上させることができる。
ここで、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は表層から徐々に硬化し始め、また、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1が基板Wに付着すると、熱可塑性樹脂B1の温度は急激に下がる。これらのことから、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が低くなる傾向がある。そこで、基板Wの外周面A1bに塗布された硬化状態の熱可塑性樹脂B1を加熱部60により加熱して軟化させることで、熱可塑性樹脂B1を基板Wに確実に接着させることが可能となり、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性を向上させることができる。そして、この密着性が向上させられた状態で熱可塑性樹脂B1は硬化する。これにより、エッチング工程において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1がエッチング液の流れや回転による遠心力などによって剥がれることや、基板Wと熱可塑性樹脂B1との間の密着性が良くないところからエッチング液が流れ込んで外周面A1bに達することを抑制することが可能となり、より確実に基板サイズの縮小を抑えることができる。
また、この実施形態では、加熱部60による加熱を、基板Wに熱可塑性樹脂B1を塗布しているときには行わず、塗布後に開始するように構成した。塗布時における熱可塑性樹脂B1の軟化が抑えられるので、基板Wに塗布された熱可塑性樹脂B1の塗布幅や膜厚に関して、特に高い精度や均一性が求められる場合には、塗布後に加熱を開始することが好ましい。
以上説明したように、第1の実施形態によれば、軟化状態の熱可塑性樹脂をテーブル30上の基板Wの外周端部A1、例えば、基板Wの外周面A1bに供給することによって、その外周面A1bが硬化状態の熱可塑性樹脂B1により覆われる。さらに、基板Wの外周面A1bを覆う熱可塑性樹脂B1を加熱して軟化させることによって、熱可塑性樹脂B1が基板Wに確実に接着するため、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が向上する。したがって、エッチング工程において、基板Wの外周面A1bを覆う熱可塑性樹脂B1が剥がれたり、基板Wと熱可塑性樹脂B1との間の密着性が良くないところからエッチング液が浸入したりすることが抑えられ、基板Wの外周面A1bは硬化状態の熱可塑性樹脂B1により確実に保護される。これにより、基板Wの外周面A1bがエッチング液によって浸食されることを抑制することが可能になり、基板サイズの縮小を抑えることができる。
(樹脂塗布の他の例)
前述の供給ノズル52による樹脂塗布の例を第1の例とし、樹脂塗布の他の例として第2の例及び第3の例について図5から図7を参照して説明する。
第2の例として、図5に示すように、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周領域A1aの直上、例えば、外周領域A1aにおいて基板Wの外側に近い位置の真上に位置し、その外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。第2の例では、第1の例よりも軟化状態の熱可塑性樹脂B1の供給量は多い。基板Wの外周領域A1aに供給された熱可塑性樹脂B1は、その外周領域A1aを覆うように、さらに、外周領域A1aにつながる外周面A1bを覆うように広がっていく。この樹脂供給時には、テーブル30上の基板Wはテーブル30と共に回転しているため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周領域A1a及び外周面A1bに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、図6に示すように、基板Wの外周領域A1aの全体及び外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周領域A1aの全面及び外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。
第3の例として、図7に示すように、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周領域A1aの直上、例えば、外周領域A1aにおいて第2の例の位置よりも基板Wの内側に近い位置の真上に位置し、その外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。第3の例では、第2の例よりも軟化状態の熱可塑性樹脂B1の供給量は少ない。基板Wの外周領域A1aに供給された熱可塑性樹脂B1は、基板Wの外周領域A1aを覆うように広がっていく。この樹脂供給時には、テーブル30上の基板Wはテーブル30と共に回転しているため、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周領域A1aに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、基板Wの外周領域A1aの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、その基板Wの外周領域A1aの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。
前述の第2及び第3の例でも、前述の第1の例と同様、基板サイズの縮小を抑えることができる。なお、熱可塑性樹脂B1の供給時における、供給ノズル52とテーブル30上の基板Wとの垂直離間距離、供給位置、供給量、テーブル30の回転数などは、実験的にあらかじめ求められている点は、第1の例と同様である。また、第2の例、第3の例で、基板Wに塗布された熱可塑性樹脂B1を加熱部60によって加熱して軟化させるようにする点も、第1の例と同様である。第3の例では、基板Wの外周面A1bの全面が熱可塑性樹脂B1により覆われていないが、基板Wの外周領域A1aの全面が熱可塑性樹脂B1により覆われている(図7参照)。エッチング工程では、回転する基板Wの被処理面Waの中央付近に供給されたエッチング液が、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。この広がったエッチング液は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの外に向かって飛散するが、このとき、基板Wの外周領域A1aに付着した硬化状態の熱可塑性樹脂B1によって、エッチング液の飛散方向が水平面に対して上方に偏向される。このため、エッチング液が基板Wの外周面A1bに流れ込むことが抑制される。これにより、前述の第1の例と同様、基板サイズの縮小を抑えることができる。なお、第3の例は、基板Wの外周面A1bや下面が、SiNやSiO2で被膜されているときに用いられることが好ましい。ただし、基板Wの外周面A1bをエッチング液の浸食から確実に保護するためには、熱可塑性樹脂B1により外周面A1bの全面を完全に覆うことが望ましい。
なお、制御部70は、前述の第1から第3の例の樹脂塗布の方法において、供給ノズル52がテーブル30上の基板Wに熱可塑性樹脂を供給する供給位置、すなわち熱可塑性樹脂が供給される基板W上の位置を変えるようにノズル移動機構53を制御する。例えば、制御部70は、供給ノズル52がテーブル30上の基板Wの外周面A1bに熱可塑性樹脂B1を供給する場合(第1の例)と、テーブル30上の基板Wの上面の外周領域A1a及び外周面A1bに熱可塑性樹脂B1を塗布する場合(第2の例)とで、テーブル30上の基板Wに熱可塑性樹脂B1を供給する供給位置を変えるようにノズル移動機構53を制御する。
ここで、例えば前述の第3の例で、基板Wに熱可塑性樹脂B1が塗布された後において、加熱部60による加熱が実行されない場合には、図8に示すように、基板Wの被処理面Waに供給された熱可塑性樹脂B1において、熱可塑性樹脂B1が基板Wに接触していない部分である未接着部C1が生じることがある。この未接着部C1は、熱可塑性樹脂B1の始点B1aと終点B1bとが重なることで発生する。熱可塑性樹脂B1の始点(付着開始点)B1aは、供給ノズル52が基板Wに対する熱可塑性樹脂の供給を開始する位置(供給開始位置)の直下の位置であり、熱可塑性樹脂B1の終点(付着終了点)B1bは、供給ノズル52が基板Wに対する熱可塑性樹脂の供給を停止する位置(供給停止位置)の直下の位置である。この熱可塑性樹脂B1の未接着部C1が加熱部60により加熱されると、その未接着部C1が軟化し、基板Wの被処理面Waに接触して接着する。
エッチング工程では、回転する基板Wの被処理面Waの中央付近に供給されたエッチング液が、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの被処理面Waの全体に広がる。ところが、前述の未接着部C1が存在すると、未接着部C1から基板Wの外周面A1bにエッチング液が流れ込み、基板Wの外周面A1bがエッチング液により浸食されることになる。そこで、加熱部60により熱可塑性樹脂B1の未接着部C1を加熱することで、その未接着部C1が軟化して基板Wに接着する。このため、基板Wの被処理面Waに供給された熱可塑性樹脂B1において未接着部C1を無くすことができる。つまり、熱可塑性樹脂B1の塗布時点に未接着部C1が生じたとしても、加熱部60によって、少なくともこの未接着部C1を加熱することで、未接着部C1を消滅させ、修復することができる。これにより、エッチング液が基板Wの外周面A1bに流れ込むことが抑制されるので、基板サイズの縮小を確実に抑えることができる。
また、熱可塑性樹脂B1における未接着部C1の箇所以外の密着性に問題がない場合には、未接着部C1だけを無くせば良い。これには、例えば、未接着部C1が加熱部60に向い合う位置で基板Wの回転を停止させ、加熱部60により未接着部C1を加熱して軟化させるようにしても良い。なお、供給ノズル52による供給開始位置及び供給停止位置はあらかじめ設定されているため、それらの供給開始位置及び供給停止位置に基づいて、未接着部C1が加熱部60に向い合う位置で基板Wの回転を停止させることが可能である。加熱部60を、基板Wの外周端部A1に対して接離する方向、例えば水平方向に移動可能としても良い。加熱部60が所定温度になるまで時間がかかる場合において、基板Wから離れた位置で事前に加熱部60を加熱駆動させておき、未接着部C1を加熱する時に、加熱部60を未接着部C1に近づけるように移動させる。
(加熱部配置の他の例)
前述の加熱部60の配置を第1の例とし、配置の他の例として第2の例及び第3の例について図9及び図10を参照して説明する。
第2の例として、図9に示すように、加熱部60は、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの下方に設けられている。この加熱部60は、テーブル30上の基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1を直接加熱する。これにより、熱可塑性樹脂B1を直接加熱して全体的に軟化させ、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性を向上させることができる。
第3の例として、図10に示すように、加熱部60は、テーブル30上の基板Wの外周領域A1cの下方に設けられている。この加熱部60は、基板Wを非接触で加熱することによって、テーブル30上の基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1を間接的に加熱する。これにより、基板Wに接触している熱可塑性樹脂の一部分(基板W側の部分)だけを軟化させて、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性を向上させることができる。
なお、加熱部60は、テーブル30上の基板Wの外周端部A1に塗布された熱可塑性樹脂B1を直接的又は間接的、あるいは、直接的及び間接的に加熱することが可能な位置に設けられていれば良く、例えば、テーブル30上の基板Wの外周端部A1の上方に設けられていても良く、また、テーブル30上の基板Wの外周端部A1の上方、下方及び側方のどちらか又は全てに設けられても良い。例えば、加熱部60を上方及び側方に設けたり、下方及び側方に設けたり、上方、下方及び側方に設けたりした場合には、それらの加熱部60(各加熱部60により構成される加熱部)が、第1の例のようにテーブル30上の基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1を、その熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bに接触していない面側(部分側)から加熱することに加え、第2の例や第3の例のように基板W自体を加熱することになる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点(加熱部及び基板処理工程)について説明し、その他の説明を省略する。
図11に示すように、第2の実施形態では、加熱部60は、放射熱により基板Wを加熱するハロゲンランプヒータ又はマイカヒータ(例えば、円環状のマイカヒータ)であり、テーブル30の直上に設けられている。この加熱部60は、熱可塑性樹脂B1の塗布前に、基板Wを非接触で加熱しておき、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1に基板Wから熱を伝えることで、テーブル30上の基板Wの外周端部A1(例えば、外周面A1b)に塗布された熱可塑性樹脂B1を間接的に加熱する。
(基板処理工程)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板処理工程の流れについて説明する。この基板処理工程においては、制御部70が各部の動作を制御する。
図12に示すように、ステップS11において、第1の実施形態と同様、ロボットハンドにより未処理の基板Wが処理室20内に搬入されてテーブル30上に載置され、その載置された基板Wがテーブル30によって吸着保持される。ロボットハンドは、基板Wの載置後、処理室20から退避する。なお、基板Wの搬入時には、供給ノズル52は待機位置にある。
前述のロボットハンドが処理室20から退避すると、ステップS12において、テーブル30の回転が回転機構40により開始され、加熱部60の加熱動作が開始される。この加熱により、基板Wの温度が所定温度(例えば150℃)以上に上昇する。基板Wの温度が所定温度以上になると、ステップS13において、軟化状態の熱可塑性樹脂B1がテーブル30上の基板Wの外周端部A1に塗布される。具体的には、次の手順で行われる。第1の実施形態と同様、供給ノズル52はノズル移動機構53により待機位置から供給位置に移動する。供給ノズル52が供給位置に到達すると、供給ノズル52は、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの直上に位置し、テーブル30の回転数が所定の回転数(例えば10rpm)となると、基板Wの外周面A1bの上部に向けて軟化状態の熱可塑性樹脂B1を吐出する。供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は基板Wの回転に応じて基板Wの外周面A1bに沿って順次付着していく。そして、例えば基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、基板Wの外周面A1bの全面に熱可塑性樹脂B1が塗布され、テーブル30上の基板Wの外周面A1bの全面だけが熱可塑性樹脂B1により覆われる。外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1の厚みは、例えば0.5~3mmである。
この塗布動作中、基板Wの温度は所定温度以上になっており、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1には基板Wから熱が伝わるため、基板Wの外周面A1bに接触した熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がることが抑えられ、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1の表層も軟化する。したがって、熱可塑性樹脂B1が基板Wに接触してすぐに硬化することが抑制され、基板Wの外周面A1bに確実に接着する。これにより、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が向上する。
前述の樹脂塗布が完了して吐出が停止されると、供給ノズル52は塗布位置から待機位置に移動し、ステップS14において、テーブル30の回転が停止され、加熱部60の加熱動作が停止される。なお、基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周した時点で供給ノズル52から熱可塑性樹脂B1の吐出が停止した後も、加熱部60により基板Wの加熱を所定時間だけ、継続させるようにしても良い。ここでの所定時間とは、例えば図8に示した未接着部C1が万一生じた時でも、その未接着部C1が修復できる時間である。この所定時間は、第1の実施の形態における、加熱部60による加熱時間よりは短くて構わず、テーブル30の1回転分の時間でも良い。加熱部60による加熱動作が停止すると、外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1は、温度低下により硬化状態となる。前述の供給ノズル52が待機位置に戻り、また、テーブル30の回転が停止されると、ステップS15において、第1の実施形態と同様、樹脂塗布済の基板Wが、テーブル30上から前述のロボットハンド(図示せず)によって処理室20外に搬出され、エッチング処理装置(図示せず)に搬入される。その後、第1の実施形態と同様、エッチング処理装置により基板Wの被処理面Waがエッチング液により処理される。
このような基板処理工程では、第1の実施形態と同様、軟化状態の熱可塑性樹脂がテーブル30上の基板Wの外周端部A1の一部である外周面A1bに塗布され、その外周面A1bの全面だけが硬化状態の熱可塑性樹脂B1により覆われる。これにより、後工程であるエッチング工程において、硬化状態の熱可塑性樹脂B1がエッチング液から基板Wの外周面A1bを保護する保護材として機能するため、基板Wの外周面A1bがエッチング液により浸食されることが抑制され、基板サイズの縮小を抑えることができる。その結果、基板Wの外周部分においても所望サイズのデバイスチップを得ることが可能となるので、デバイスチップロスの発生を抑制することができる。また、後工程でのロボットによる搬送など、後工程での基板搬送を可能にし、歩留まりを向上させることができる。
また、基板Wの被処理面Waに対する熱可塑性樹脂B1の供給前に(供給前から)基板Wを加熱することによって、供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周面A1bに接触すると、その熱可塑性樹脂B1に基板Wから熱が伝わる。このため、基板Wの外周面A1bに接触した熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がることが抑えられ、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1の表層も軟化するので、熱可塑性樹脂B1が基板Wに接触してすぐに硬化することが抑制される。したがって、基板Wを加熱することで、熱可塑性樹脂B1の硬化を遅延させて基板Wの外周面A1bに熱可塑性樹脂B1を確実に接着させることが可能になるので、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性を向上させることができる。そして、この密着性が向上させられた状態で熱可塑性樹脂B1は硬化する。これにより、エッチング工程において、基板Wの外周面A1bを覆う熱可塑性樹脂B1がエッチング液の流れや回転による遠心力などによって剥がれることや、基板Wと熱可塑性樹脂B1との間の密着性が良くないところからエッチング液が流れ込んで外周面A1bに達することを抑制することが可能になるので、より確実に基板サイズの縮小を抑えることができる。
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、熱可塑性樹脂B1の塗布前に基板Wを加熱しておき、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1に基板Wから熱を伝えることで、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1を間接的に加熱する。これにより、供給ノズル52から吐出されて基板Wに付着した熱可塑性樹脂B1の温度が急激に下がることが抑えられ、基板Wの外周面A1bに塗布された熱可塑性樹脂B1の表層も軟化する。このため、熱可塑性樹脂B1の硬化が遅延し、熱可塑性樹脂B1が基板Wに確実に接着するため、基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が向上する。したがって、エッチング工程において、基板Wの外周面A1bを覆う熱可塑性樹脂B1が剥がれることや、基板Wと熱可塑性樹脂B1との間の密着性が良くないところからエッチング液が流れ込んで外周面A1bに達することが抑えられ、基板Wの外周面A1bは硬化状態の熱可塑性樹脂B1により確実に保護される。これにより、基板Wの外周面A1bがエッチング液によって浸食されることを抑制することが可能になり、基板サイズの縮小を抑えることができる。
<第3の実施形態>
第3の実施形態について図13及び図14を参照して説明する。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態との相違点(樹脂塗布の他の例)について説明し、その他の説明を省略する。
第3の実施形態に係る樹脂塗布は、第1の実施形態に係る樹脂塗布の第3の例と基本的に同じであるが、軟化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wの外周領域A1aに基板Wの外周に沿って環状に塗布する回数が異なる。第1の実施形態に係る樹脂塗布の第3の例では、軟化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wの外周領域A1aの幅(半径方向の幅)で基板Wの一周分環状に塗布する。一方、第3の実施形態では、図13に示すように、基板Wの外周領域A1aの幅より狭い所定幅で熱可塑性樹脂B1を基板Wの一周分環状に塗布することを所定回数(図13では二回)繰り返す。所定幅(塗布幅)は、基板Wの外周領域A1aの幅を塗布回数で割ることによって、あらかじめ設定されている。例えば、基板Wの外周領域A1aの幅が4mmで、塗布回数が二回である場合には、所定幅は2mmとなる。
基板処理工程において、供給ノズル52は、図13に示すように、テーブル30上の基板Wの外周領域A1aの内側(基板Wの中心側)に軟化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wの一周分環状に塗布し、その後、基板Wの外周領域A1aの外側に向かって基板Wの半径方向に移動し、その外側に軟化状態の熱可塑性樹脂B1を内側の塗布済の熱可塑性樹脂B1に隣接させて基板Wの一周分環状に塗布する。これにより、基板Wの外周領域A1aには、隣接する複数の環状(図13では二つの円環状)に熱可塑性樹脂B1が塗布され、塗布された熱可塑性樹脂B1は基板Wの外周領域A1a上で硬化する。その後、所定時間、加熱部60の加熱動作が行われる。基板Wの外周領域A1a上の硬化状態の熱可塑性樹脂B1は、前述の加熱動作により再度軟化し、図14に示すように、一体化して一つの環(図14では円環)となり、基板Wの外周領域A1aに接着する。基板Wに対する熱可塑性樹脂B1の密着性が向上し、加熱動作が停止されると、熱可塑性樹脂B1は再び硬化する。なお、前述のような供給ノズル52による軟化状態の熱可塑性樹脂B1の供給(例えば、供給開始タイミングや供給停止タイミング)や、供給ノズル52と基板Wとの相対移動(例えば、基板Wの回転動作)などは制御部70によって制御される。
ここで、図13に示すように、軟化状態の熱可塑性樹脂B1が所定幅で基板Wの一周分環状に塗布されるとき、熱可塑性樹脂B1は、一つの環(円環)において終点(付着終了点)B1bが始点(付着開始点)B1aを超えるように塗布され、オーバーラップ部(重なり部分)B1cが形成される。終点B1bが始点B1aを超えずにその始点B1aに接触する程度に塗布が行われると、始点B1aの周囲において、基板Wの外周領域A1aが熱可塑性樹脂B1により覆われず、基板Wの外周領域A1aが露出する箇所が生じる。この基板Wの外周領域A1aの一部が露出した状態でエッチング処理が行われると、その露出した部分がエッチングされてしまう(不要なエッチング)。この不要なエッチングを回避するため、前述のように終点B1bが始点B1aを超えるように塗布が行われる。なお、供給ノズル52からの単位時間当たりの吐出量が多くなると、基板Wに塗布された熱可塑性樹脂B1の幅や厚さを共に制御し難くなる。このため、不要なエッチングを回避するためには、塗布幅が広くなると、オーバーラップ部B1cの長さを長くする必要があり、塗布幅とオーバーラップ部B1cの長さには比例関係がある。
しかしながら、一つの環において終点B1bが始点B1aを超えるように塗布が行われると、オーバーラップ部B1cは他の部分(未重なり部分)に比べて熱可塑性樹脂B1の量が多くなる。この量が抑えられていれば問題はないが、軟化状態の熱可塑性樹脂B1が基板Wの外周領域A1aの幅で基板Wの一周分環状に塗布される場合のように、オーバーラップ部B1cの熱可塑性樹脂B1の量が多くなると、加熱部60の加熱動作による再度の軟化時、オーバーラップ部B1cの熱可塑性樹脂B1が広がってエッチング対象領域R1に進入し、エッチング対象領域R1の一部が熱可塑性樹脂B1によって覆われることがある。この状態でエッチング処理が行われると、エッチング対象領域R1においてエッチングされない箇所が発生してしまう(未エッチング)。
そこで、本実施形態では、基板Wの外周領域A1aの幅より狭い所定幅で熱可塑性樹脂B1を基板Wの一周分環状に塗布することが複数回繰り返される。この場合には、一つの環において終点B1bが始点B1aを超えるように塗布が行われても、前述の基板Wの外周領域A1aの幅で基板Wの一周分環状に塗布を行う場合と比べ、一周分の塗布幅が狭くなるため、オーバーラップ部B1cの長さを短くすることが可能であり、オーバーラップ部B1cの熱可塑性樹脂B1の量を抑えることができる。これにより、加熱部60の加熱動作による再度の軟化時、熱可塑性樹脂B1が広がってエッチング対象領域R1に進入することを抑制することが可能となり、再硬化後の塗布幅を均一にすることができる。これは、前述の基板Wの外周領域A1aの幅で基板Wの一周分環状に塗布を行う場合と比べると、供給ノズル52からの単位時間当たりの吐出量を少なくすることが可能であり、基板Wに塗布された熱可塑性樹脂B1の幅や厚さを共に制御しやすくなるからである。したがって、基板Wの外周領域A1aの一部が露出することを抑え、不要なエッチングを回避しつつ、加熱部60の加熱動作による再度の軟化時、熱可塑性樹脂B1が広がってエッチング対象領域R1に進入することを抑え、未エッチングを回避することが可能になるので、前述の不要なエッチングや未エッチングによる基板Wの品質低下を抑制することができる。
なお、環ごとのオーバーラップ部B1cの長さ、すなわちオーバーラップ量(重なり量:終点B1bが始点B1aを超えて延びる長さ)は同一であるが、これに限るものではなく、異なっていても良い。例えば、オーバーラップ量は、始点B1aの周囲において基板Wの外周領域A1aが露出することを抑えることができる範囲内で、前述のオーバーラップ部B1cの熱可塑性樹脂B1の広がりによる未エッチングを回避するため、できるだけ少ない方が好ましい。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、供給ノズル52は、テーブル30により支持された基板Wの外周領域A1aに対し、基板Wの外周に沿って延伸して互いに隣接する複数の環状(例えば、同心円の環状)に軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給し、かつ、外周領域A1aに供給された複数の環状の熱可塑性樹脂B1が環ごとに外周領域A1aに対する熱可塑性樹脂B1の始点B1aで重なるように軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。これにより、環ごとの始点B1aにそれぞれオーバーラップ部B1cが形成されるので、始点B1aの周囲において基板Wの外周領域A1aの一部が露出することを抑えることが可能となり、不要なエッチングを回避することができる。また、環ごとのオーバーラップ部B1cの熱可塑性樹脂B1の量が抑えられるので、加熱部60の加熱動作による再度の軟化時、熱可塑性樹脂B1が広がってエッチング対象領域R1に進入することを抑制することが可能となり、未エッチングを回避することができる。したがって、前述の不要なエッチングや未エッチングによる基板Wの品質低下を抑えることができる。
また、供給ノズル52は、外周領域A1aに供給された環状の熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)B1のオーバーラップ部B1cを、当該環状の熱可塑性樹脂B1に隣接する環状の熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)B1のオーバーラップ部B1cに対して基板Wの周方向にずらし、軟化状態の熱可塑性樹脂B1を供給する。詳しくは、供給ノズル52は、環ごとの始点B1a及び終点B1bが、隣接する環において隣り合わないよう、環ごとの始点B1a及び終点B1bを隣接する環において基板Wの周方向(例えば、円周方向)にずらし、軟化した熱可塑性樹脂B1を複数の環状に塗布する。これにより、環ごとの始点B1a及び終点B1bが、隣接する環でそれぞれ隣り合わないため、環ごとのオーバーラップ部B1cも、隣接する環で隣り合わない。したがって、環ごとのオーバーラップ部B1cが、隣接する環で隣り合う場合に比べ、加熱部60の加熱動作による再度の軟化時、熱可塑性樹脂B1がエッチング対象領域R1に向かって流れる量を減らすことが可能になるので、熱可塑性樹脂B1が広がってエッチング対象領域R1に進入することを確実に抑えることができる。
<他の実施形態>
なお、熱可塑性樹脂B1の供給においては、テーブル30上の基板Wと供給ノズル52とを相対移動させれば良く、例えば、テーブル30の回転を行わず、テーブル30上の基板Wの外周端部A1に対して供給ノズル52を移動させ、熱可塑性樹脂B1の供給を行うようにしても良い。基板W及び供給ノズル52を相対移動させる移動機構としては、テーブル30を回転させる回転機構40以外にも、例えば、供給ノズル52を円環や矩形環などの環、また、直線に沿って移動させる移動機構(一例として、供給ノズル52を支持して曲線状や直線状にスライド移動可能にするガイド、スライド移動の駆動源となるモータなど)を用いることが可能である。熱可塑性樹脂B1を円環状に塗布する以外にも、矩形環状などの各種形状の環状に塗布するようにしても良い。
また、図3では、加熱部60をテーブル30の周囲の1箇所に配置する例を示したが、テーブル30の周囲に複数個設けても良い。例えば図3に示す加熱部60に対し、テーブル30の回転中心を挟んで反対側にもう1つの加熱部を配置しても構わない。この場合、例えば、熱可塑性樹脂B1の付着開始点は、少なくとも半周する間に1度加熱されるから、硬化の度合いが抑えられ、密着性の向上が期待できる。また、加熱部60は、基板Wの周囲を囲むように配置された、環状の加熱部であっても良い。
また、図11において、テーブル30の直上に設けられる加熱部60によって、熱可塑性樹脂B1の塗布前に(塗付前から)、基板Wを加熱するようにした。しかし、図1や図9、図10に示すように、加熱部60を、テーブル30の周囲、あるいは基板Wの下方に配置しても良い。
また、基板Wにおける熱可塑性樹脂B1の付着開始点が1周すると、供給ノズル52からの熱可塑性樹脂B1の吐出を停止させるようにしたが、供給ノズル52からの熱可塑性樹脂B1の吐出を、付着開始点が2周以上にわたって移動した後に停止させるようにしても構わない。特に、図5や図7に示したように、基板Wにおける、重力方向に直交する外周領域A1aに塗布する場合には、2周以上にわたって塗布することが好ましい。これは、1周で塗布する時と比べると、同じ塗付幅、同じ膜厚の熱可塑性樹脂B1を得るのに、供給ノズル52からの単位時間当たりの吐出量を少なくできる。このため、基板Wに塗布された熱可塑性樹脂B1の幅、厚さを、共に制御しやすくなるからである。さらにこの場合、周回ごとに供給ノズル52を基板の半径方向にずらすようにしても良い。
また、第2の実施形態では、加熱部60により基板Wの加熱が、供給ノズル52による熱可塑性樹脂B1の塗布前、塗布中、さらには塗付後も継続して行われるようにしたが、熱可塑性樹脂B1を塗布する前段階においてだけ、加熱部60を作動させるようにしても良い。つまり、加熱部60によって基板Wの予熱だけを行い、予熱状態の基板Wに対して、供給ノズル52から熱可塑性樹脂B1の吐出を行うようにしても良い。
また、熱可塑性樹脂B1が供給ノズル52から適正に吐出されるように、供給位置での吐出動作前に試し吐出を行うようにしても良い。例えば、供給ノズル52が供給位置に位置付けられるときには、事前に待機位置にて供給ノズル52から熱可塑性樹脂B1を吐出させる(事前吐出)。供給ノズル52から吐出された熱可塑性樹脂B1は、供給ノズル52の下方に設けた受け皿にて受けるようにしても良い。
また、供給ノズル52による熱可塑性樹脂B1の塗布を、供給ノズル52を移動させながら、例えば、テーブル30の回転半径方向に移動させながら行っても良い。
また、テーブル30として、基板Wを吸着して保持するテーブル以外にも、複数(例えば、三個)の保持部材を有し、それらの保持部材により基板Wを挟み込み、水平状態に保持するテーブルを用いるようにしても良い。
また、基板処理装置10の外でエッチング処理を実行する以外にも、処理室20内にエッチング液(処理液の一例)を供給する供給ノズルを設け、基板処理装置10内でエッチング処理を実行するようにしても良い。
また、第3の実施形態では、基板Wの外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wの外周に沿って延びる複数の環状に塗布する場合、基板Wの外周領域A1aの内側から外側に順番に塗布を行うことを例示したが、これに限るものではなく、基板Wの外周領域A1aの外側から内側に順番に塗布を行うようにしても良く、また、複数の環が三つ以上である場合には、順番ではなくランダムに塗布を行うようにしても良い。
また、第3の実施形態では、基板Wの外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wの外周に沿って延びる複数の環状に塗布する場合、環ごとの始点B1a及び終点B1bを隣接する環において基板Wの周方向にずらし、環ごとのオーバーラップ部B1cを、隣接する環で隣り合わせないようにすることを例示したが、これに限るものではない。環ごとの始点B1a及び終点B1bを基板Wの周方向にずらさず、すなわち、それぞれ同一半径上に位置付け、環ごとのオーバーラップ部B1cを、隣接する環で隣り合わせるようにしても良い。ただし、熱可塑性樹脂B1が広がってエッチング対象領域R1に進入することをより確実に抑えるためには、環ごとのオーバーラップ部B1cを、隣接する環で隣り合わせないようにすることが望ましい。
また、第3の実施形態では、基板Wの外周領域A1aに軟化状態の熱可塑性樹脂B1を塗布するときの塗布幅は環ごとに同じであることを例示したが、これに限るものではなく、その塗布幅は環ごとに異なっていても良い。例えば、基板Wの外周領域A1aの内側から外側に徐々に塗布幅を太く又は細くするようにしても良く、また、複数の環が三つ以上である場合には、ランダムに塗布幅を変更するようにしても良い。
また、熱可塑性樹脂B1は、熱硬化性樹脂などの材料に比べて基板Wに対する密着度が低いため、基板Wを破損させず、基板Wに密着して硬化した熱可塑性樹脂B1を機械的に剥離することが可能である。そこで、エッチング工程後、基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離する剥離部を設けるようにしても良い。例えば、剥離ハンド(クランプ状やピンセット状のハンド、ニクロム線などの発熱体、あるいは、吸引部)により硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかみ、硬化状態の熱可塑性樹脂B1の一部をつかんだ剥離ハンドを移動させて、基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を剥離することが可能である。なお、基板Wに密着して硬化した熱硬化性樹脂を機械的に剥離しようとすると、基板Wは破損する。熱硬化性樹脂は一度硬化すると、熱によって熱硬化性樹脂を軟化させることも不可能であり、基板Wを損傷させずに硬化状態の熱硬化性樹脂を除去するためには、薬液などで熱硬化性樹脂を溶解させる必要がある。したがって、薬液を用いて、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を溶解して基板Wから除去する場合に比べ、硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから剥離することで、短時間で硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから除去することができ、また、薬液を使用しないため、薬液の廃棄による環境面への負荷を抑えることができる。なお、熱可塑性樹脂B1は熱硬化性樹脂に比べて基板Wへの密着度が低いものであるため、熱硬化性樹脂ではなく熱可塑性樹脂B1を用いることで、基板W上の硬化状態の熱可塑性樹脂B1を基板Wから剥離することが容易となり、基板Wを損傷させずに基板Wから硬化状態の熱可塑性樹脂B1を除去することができる。熱硬化性樹脂を用いた場合、基板Wを損傷させずに硬化状態の熱硬化性樹脂を基板Wから除去するためには、薬液などによる除去を行う装置が必要となり、装置の複雑化やコストアップを招くことになる。
また、剥離した熱可塑性樹脂B1を回収部により回収するようにしても良く、さらに、回収した熱可塑性樹脂B1を再利用するようにしても良い。例えば、回収手段としては、前述の剥離ハンドが回収部の直上で硬化状態の熱可塑性樹脂B1を落とし、回収部は、落下してきた硬化状態の熱可塑性樹脂B1を受けって収容する。また、再利用手段としては、処理室20内に、ヒータを有する回収部を設け、回収部と貯留ユニット51のタンク51aとを配管により接続し、回収した硬化状態の熱可塑性樹脂B1をヒータにより加熱して軟化させ、軟化状態の熱可塑性樹脂B1を配管によりタンク51aに戻すようにしても良い。この場合には、熱可塑性樹脂B1を再利用することが可能になるので、コストを抑えることができ、また、熱可塑性樹脂B1の廃棄による環境面への負荷を抑えることができる。なお、供給ノズル52を回収部の上方に位置付け、事前吐出を行うようにしても良い。また、熱可塑性樹脂B1を再利用する構成では、待機時に供給ノズル52を回収部の上方に位置付け、熱可塑性樹脂B1を連続的に吐出し続けるようにしても良い。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。