JP7273286B2 - セルロースナノファイバーカーボンとその製造方法 - Google Patents

セルロースナノファイバーカーボンとその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロースナノファイバーカーボンとその製造方法に関する。
カーボンナノファイバーは、一般的に5~100nmの外径で、ファイバー長は外径の10倍以上の繊維状である。その特異な形状により、高導電率、高比表面積といった特徴を有する。
従来、カーボンナノファイバーの製造方法は、例えば電極放電法、気相成長法、及びレーザー法などが知られている(非特許文献1,2)。
S. Iijima et al."Single-shell carbon nanotubes", Nature, Vol. 363, 17 JUNE 1993. J. Kong et al."Chemical vapor deposition of methane for single-walled carbon nanotubes", Chemical Physics Letters 292, 567-574,1998.
従来の製造方法によって製造されたカーボンナノファイバーは、弾性がなく、圧縮や折り曲げに対して元の形状に戻ることが出来ない塑性変形し、機械的強度が低いという課題がある。
また、天然物由来であるセルロースから、セルロースナノファイバーを製造する方法も検討されているが、セルロースナノファイバーを熱処理してカーボン材料を得ようとすると、セルロースナノファイバーを乾燥する際に凝集してしまい、熱処理時に焼結し、密度の高いカーボン材料となり、大きな比表面積を持たせることが困難であるという課題がある。
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、伸縮性を持ち、機械的強度が高く、比表面積を大きくすることが可能なセルロースナノファイバーカーボンとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るセルロースナノファイバーカーボンの製造方法は、前記セルロースナノファイバーを含む分散液又はゲルを熱媒により半炭化させて半炭化体を得る半炭化工程と、前記半炭化体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させてセルロースナノファイバーカーボンを得る炭化工程とを含む。
また、本発明の一態様に係るセルロースナノファイバーカーボンは、セルロースナノファイバーが連なった共連続体の三次元ネットワーク構造を有することを要旨とする。
また、本発明の一態様に係るセルロースナノファイバーカーボンは、バクテリア産生ゲルのナノファイバーが連なった共連続体である三次元ネットワーク構造を有する。
本発明によれば、伸縮性を持ち、機械的強度が高く、比表面積を大きくすることが可能なセルロースナノファイバーカーボンとその製造方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係るセルロースナノファイバーカーボンの製造方法を示すフローチャートである。 第1実施形態の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンのSEM画像である。 第1実施形態とは異なる製造方法によって作製されたカーボン材料のSEM画像である。 第1実施形態の変形例の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンのSEM画像である。 本発明の第2実施形態に係るセルロースナノファイバーカーボンの製造方法を示すフローチャートである。 実験例1で得られたカーボン材料の表皮部のSEM画像である。 実験例3で得られた、実験例1のカーボン材料の断面のSEM画像である。 実験例2で得られたカーボン材料のSEM画像である。 実験例4で得られたカーボン材料の表皮部のSEM画像である。 実験例6で得られた、実験例4のカーボン材料の断面のSEM画像である。 実験例5で得られたカーボン材料のSEM画像である。 比較例1で得られたカーボン材料のSEM画像である。 比較例2で得られたカーボン材料のSEM画像である。 本発明の第3実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。 第3実施形態の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンのSEM画像である。 第3実施形態とは異なる製造方法によって作製されたカーボン材料のSEM画像である。 第3実施形態の変形例の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンのSEM画像である。 本発明の第4実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。 実験例1で得られたカーボン材料の表皮部のSEM画像である。 実験例3で得られた、実験例1のカーボン材料の断面のSEM画像である。 実験例2で得られたカーボン材料のSEM画像である。 実験例4で得られたカーボン材料の表皮部のSEM画像である。 実験例6で得られた、実験例4のカーボン材料の断面のSEM画像である。 実験例5で得られたカーボン材料のSEM画像である。 比較例1で得られたカーボン材料のSEM画像である。 比較例2で得られたカーボン材料のSEM画像である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るセルロースナノファイバーカーボンの製造方法を示すフローチャートである。以降の説明において、セルロースナノファイバーカーボンを「カーボン材料」と称することもある。
本実施形態のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法は、分散工程(ステップS1)、半炭化工程(ステップS2)、及び炭化工程(ステップS3)を含む。この製造方法では、セルロースナノファイバーを含む分散液(以下、「セルロースナノファイバー分散液」という)が必要である。
セルロースナノファイバー分散液中のセルロースナノファイバーの形態は、分散した形態が好ましい。よって、図1に示す製造工程では、分散工程(ステップS1)を含むが、分散工程(ステップS1)は無くても良い。つまり、セルロースナノファイバーが分散した形態のセルロースナノファイバー分散液を用いる場合は、当該工程は不要である。
分散工程は、セルロースナノファイバー分散液に含まれるセルロースナノファイバーを分散する。分散媒は、水(HO)などの水系、または、カルボン酸、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)、プロパノール(COH)、n-ブタノール、イソブタノール、n-ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系のうちの1種類であってもよく、または、これらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。
セルロースナノファイバーの分散は、例えば、ホモジナイザー、超音波洗浄器、超音波ホモジナイザー、マグネチックスターラー、撹拌機、振とう器等を用いれば良い。
また、セルロースナノファイバー分散液のセルロースナノファイバーの固形分濃度は、0.001~80質量%が好ましく、0.01~30質量%がより好ましい。
半炭化工程は、セルロースナノファイバー分散液を熱媒に含浸させることで、半炭化体を得る(ステップS2)。セルロースの化学組成は(C10であり、熱処理を行うことで、脱水反応が進行し、最終的にはカーボンが残る。半炭化体とは、上記の脱水反応を途中で打ち切り、セルロースからOH基を一部、除去した物のことを指す。本実施形態では、半炭化体を、このように定義する。
半炭化工程は、例えば、セルロースナノファイバー分散液を250℃に加熱したシリコーンオイル中に含浸し、前記セルロースナノファイバー分散液に含まれる分散媒を気化させ、その後更に、熱処理を継続することで行う。半炭化させる手法は、セルロースナノファイバーが、半炭化できれば、特に限定されるものではない。熱媒は、シリコーンオイル類、多価アルコール類、フェノール類及びフェノール性エーテル類、ポリフェニル類、塩素化ベンゼン及びポリフェニル、ケイ酸エステル類、分留タール及び石油類、食用油などのうちの1種類であってもよく、あるいは、これらのうち2種類以上を混合してもよい。
また、熱媒の温度は、使用する熱媒によって異なるが、セルロースナノファイバーが半炭化する温度であれば特に制限されない。例えば、熱媒にシリコーンオイル、セルロースナノファイバー分散液の分散媒に水を使用した場合、セルロースナノファイバー分散液を200℃のシリコーンオイルに含浸させれば、分散媒の水が、急激に気化し、その後、セルロースナノファイバーの半炭化が開始される。セルロースナノファイバーの半炭化温度は、200℃程度であるため、熱媒の温度は、200℃以上が好適である。
また、半炭化後には、半炭化したセルロースナノファイバー内に熱媒が含有されているため、水やアルコールなどで洗浄する洗浄工程を入れてもよい。
半炭化体は、伸縮性を有しているため、半炭化体を乾燥させる際に、液体の表面張力の影響を受けたとしても、凝集すること無く、元の形状(分散質であるセルロースナノファイバーが固定された三次元ネットワーク構造)を維持することが可能である。
炭化工程は、半炭化工程で半炭化させた半炭化体を、燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化し、セルロースナノファイバーカーボンを得る(ステップS3)。セルロースナノファイバーの炭化は、不活性ガス雰囲気中で200℃~2000℃、より好ましくは、600℃~1800℃で焼成して炭化すればよい。セルロースが燃焼しないガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであればよい。また、セルロースが燃焼しないガスは、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスであってもよく、また、二酸化炭素ガスであってもよい。カーボン材料に対し賦活効果を有し、高活性化が期待できる二酸化炭素ガスまたは一酸化炭素ガスがより好ましい。
以上述べたセルロースナノファイバーカーボンの製造方法によれば、半炭化工程により分散質であるセルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造を維持したままのセルロースナノファイバーが取り出せる。したがって、十分な比表面積を得ることができ、高比表面積のカーボン材料の作製が容易になる。
すなわち、本実施形態で作製されたセルロースナノファイバーカーボンは、非共有結合によって一体とされた複数のセルロースナノファイバーが連なった共連続体の三次元ネットワーク構造を有する。共連続体は、多孔体であり、一体構造とされている。複数のセルロースナノファイバーが非共有結合によって一体とされている三次元ネットワーク構造の共連続体は、セルロースナノファイバー同士の結合部が変形可能とされており、伸縮性を有した構造となっている。
図2Aおよび図2Bは、セルロースナノファイバーカーボンのSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。倍率は10000倍である。
図2Aは、本実施形態の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンのSEM画像である。当該画像から、セルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造が構築されている様子が分かる。
図2Bは、本実施形態の製造方法とは異なり、セルロースナノファイバー分散液を大気中で乾燥させて炭化させた場合のセルロースナノファイバーカーボンの様子を示す。セルロースナノファイバーが分散した分散液は、乾燥中に、分散媒の表面張力の影響を受け、固定化していないセルロースナノファイバーが凝集するため、セルロースナノファイバーの三次元ネットワーク構造が破壊されてしまう。図2Bに示すように、三次元ネットワーク構造が破壊されてしまうと、高比表面積のカーボン材料の作製は困難である。
以上述べたように、本実施形態の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンは、セルロースナノファイバーが連なった共連続体の三次元ネットワーク構造を有し、伸縮性を有するカーボン材料である。また、本実施形態のセルロースナノファイバーカーボンは、高導電性、耐腐食性、及び高比表面積を有する。
したがって、本実施形態の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンは、電池、キャパシター、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、医療用機器、美容器具、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等として好適である。
〔第1実施形態の変形例〕
本変形例のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法は、図1に示す第1実施形態の製造方法において、半炭化工程で使用する熱媒に高温高圧の熱水を用いる点で異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。
具体的には、本変形例のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法は、図1に示すように、分散工程(ステップS1)、半炭化工程(ステップS2)、及び炭化工程(ステップS3)を含む。分散工程、及び炭化工程については、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本変形例の半炭化工程は、セルロースナノファイバー分散液を、熱媒である高温高圧の熱水(高温高圧水)に含浸させることで、半炭化体を得る(ステップS2)。
本変形例の半炭化工程は、例えば、セルロースナノファイバー分散液を水熱合成容器に入れ、自生圧化、250℃で熱処理することで行う。半炭化させる手法は、セルロースナノファイバーが、半炭化できれば、特に限定されるものではないが、セルロースナノファイバーの半炭化温度は、200℃程度であるため、温度は、200℃以上が好適である。
半炭化体は、伸縮性を有しているため、半炭化体を乾燥させる際に、液体の表面張力の影響を受けたとしても、凝集すること無く、元の形状を維持することが可能である。
本変形例のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法によれば、半炭化工程により分散質であるセルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造を維持したままのセルロースナノファイバーが取り出せる。したがって、十分な比表面積を得ることができ、高比表面積のカーボン材料の作製が容易になる。
図3は、本変形例の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンのSEM画像である。倍率は10000倍である。当該画像から、セルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造が構築されている様子が分かる。
本変形例の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンは、第1実施形態と同様に、セルロースナノファイバーが連なった共連続体の三次元ネットワーク構造を有し、伸縮性を有するカーボン材料である。また、本変形例のセルロースナノファイバーカーボンは、第1実施形態と同様に、高導電性、耐腐食性、及び高比表面積を有する。
したがって、本変形例の製造方法によって作製されたセルロースナノファイバーカーボンは、電池、キャパシター、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、医療用機器、美容器具、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等として好適である。
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態に係るセルロースナノファイバーカーボンの製造方法を示すフローチャートである。図4に示す製造方法は、第1実施形態の製造方法において、粉砕工程(ステップS4)、混合工程(ステップS5)、及び乾燥工程(ステップS6)を、さらに含む。
粉砕工程は、上記の炭化工程(ステップS3)で炭化させた乾燥体(セルロースナノファイバーカーボン)を粉砕する(ステップS4)。粉砕工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライターなどを使用して、セルロースナノファイバーカーボンを粉末またはスラリー状にする。
この場合、セルロースナノファイバーカーボンは、二次粒子径が10nm~20mmが好ましく、50nm~1mmがより好ましい。これは、二次粒子径が10nm以下になるまで粉砕した場合、セルロースナノファイバーによる共連続な構造が壊れ、十二分な結着力及び導電パスを得ることが困難となり、電気的な抵抗が増大するためである。また、二次粒子径が20mm以上の場合、結着剤として機能するセルロースナノファイバーが十二分に分散せず、シート状に維持することが困難となる。
また、セルロースナノファイバーカーボンは、気孔率が高く、密度が低いため、セルロースナノファイバーカーボンを単独で粉砕した場合、粉砕時または粉砕後にセルロースナノファイバーカーボンの粉末が舞い、取扱いが困難である。そのため、セルロースナノファイバーカーボンに液体を含浸させてから粉砕することが好ましい。ここで用いる液体は、特に限定されないが、例えば、水(HO)などの水系、または、カルボン酸、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)、プロパノール(COH)、n-ブタノール、イソブタノール、n-ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系のうちの1種類であってもよく、または、これらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。
混合工程は、粉砕工程(ステップS4)で粉砕した材料(セルロースナノファイバーカーボン)と、分散工程(ステップS1)で分散したセルロースナノファイバー分散液とを混合させて混合液を得る(ステップS5)。混合液は、スラリー状であり、この混合スラリーを乾燥させることで、セルロースナノファイバーカーボンをシート状に加工することが可能である。なお、粉砕工程と、混合工程とを、1つの工程として同時に行うこととしてもよい。
乾燥工程は、混合液から液体を除去する(ステップS6)。スラリー状の混合液(混合スラリー)を乾燥する際に、恒温槽、真空乾燥機、赤外線乾燥機、熱風乾燥機、吸引乾燥機等を用いても良い。更に、アスピレーター等を用いて吸引濾過を行うことで、迅速に乾燥することができる。
以上述べた本実施形態の製造方法で得られた混合スラリーを乾燥させ、シート状にした後、所望の形状に加工しても良い。また、混合スラリーを任意の形状に塗布した後、乾燥させることで、シート状カーボン材料を所望の形状に加工することもできる。任意の形状に塗布することで、切り抜き加工で生じる切れ端などの材料コストを軽減することができ、ユーザーの好みによる任意形状のカーボン材料を得ることができる。また、カーボン材料の強度を高めることもできる。
なお、本実施形態の製造方法は、全ての工程を含まなくても良い。例えば、粉砕工程まで行い粉砕した状態のセルロースナノファイバーカーボンを用いても良い。用いるとは、その状態で流通させることである。同様に混合工程まで行い混合スラリーの状態で流通させても良い。
〔第2実施形態の変形例〕
本変形例のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法は、図4に示す第2実施形態の製造方法において、半炭化工程で使用する熱媒に高温高圧の熱水を用いる点で異なり、それ以外は第2実施形態と同様である。
具体的には、本変形例のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法は、半炭化工程の熱媒に高温高圧の熱水を用いる第1実施形態の変形例の製造方法に、粉砕工程(ステップS4)、混合工程(ステップS5)、及び乾燥工程(ステップS6)を、さらに含む。
本変形例の粉砕工程、混合工程、及び乾燥工程は、第2実施形態と同様である。すなわち、本変形例の粉砕工程は、第1実施形態の変形例の炭化工程(ステップS3)で炭化させた乾燥体(セルロースナノファイバーカーボン)を粉砕する(ステップS4)。混合工程は、粉砕工程(ステップS4)で粉砕した材料(セルロースナノファイバーカーボン)と、分散工程(ステップS1)で分散したセルロースナノファイバー分散液とを混合させてスラリー状の混合液(混合スラリー)を得る(ステップS5)。乾燥工程は、混合液から液体を除去する(ステップS6)。
本変形例の製造方法で得られた混合スラリーを乾燥させ、シート状にした後、所望の形状に加工しても良い。また、混合スラリーを任意の形状に塗布した後、乾燥させることで、シート状カーボン材料を所望の形状に加工することもできる。任意の形状に塗布することで、切り抜き加工で生じる切れ端などの材料コストを軽減することができ、ユーザーの好みによる任意形状のカーボン材料を得ることができる。また、カーボン材料の強度を高めることもできる。
なお、本変形例の製造方法は、全ての工程を含まなくても良い。例えば、粉砕工程まで行い粉砕した状態のセルロースナノファイバーカーボンを用いても良い。用いるとは、その状態で流通させることである。同様に混合工程まで行い混合スラリーの状態で流通させても良い。
〔第1実施形態、第2実施形態、及び変形例の実験例〕
以上述べた第1実施形態および第2実施形態の製造方法の効果を確認する目的で、第1実施形態および第2実施形態の製造方法で作製したカーボン材料(実験例1-3)と、当該実施形態とは異なる製造方法で作製したカーボン材料(比較例1、2)とを比較する実験を行った。また、第1実施形態の変形例および第2実施形態の変形例の製造方法で作製したカーボン材料(実験例4-6)についても、同様に実験を行った。
(実験例1)
実験例1は、第1実施形態(図1参照)の製造方法で作成したカーボン材料(セルロースナノファイバーカーボン)の実験例である。
セルロースナノファイバー(日本製紙株式会社製)を用い、セルロースナノファイバー1g、超純水10gをホモジナイザー(エスエムテー製)で12時間撹拌することで、セルロースナノファイバーの分散液を調整した。
上記分散液を250℃に加熱したシリコーンオイルに24時間浸すことでセルロースナノファイバー分散液に含まれる水を完全に気化させ、更にセルロースナノファイバーを半炭化した。セルロースナノファイバー分散液を完全に半炭化させた後、半炭化させたセルロースナノファイバーを取り出し、これを超純水で洗浄した。
洗浄した後は、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、セルロースナノファイバーをカーボン化させ、これにより実験例1のカーボン材料を作製した。
(実験例2)
実験例2は、第2実施形態(図4参照)の製造方法で作成したカーボン材料(セルロースナノファイバーカーボン)の実験例である。
実験例2では、実験例1で作製したカーボン材料に水を含浸させた後に、ホモジナイザー(エスエムテー製)でカーボン材料及びセルロースナノファイバー分散液(カーボン材料:セルロースナノファイバー分散液の重量比1:1)を12時間撹拌することで、粉砕・混合を行った。ここでは、図4の粉砕工程(ステップS4)と、混合工程(ステップS5)とを1つの工程で同時に行った。この混合物(混合液)はスラリー状であり、アスピレーター(柴田科学株式会社製)を用いて、吸引濾過し、ろ紙から、カーボン材料を剥離した。その後、カーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行って、実験例2のカーボン材料を作製した。
(実験例3)
実験例3は、第1実施形態(図1参照)の製造方法で作成したカーボン材料(セルロースナノファイバーカーボン)の実験例である。
実験例3では、実験例1で作製したカーボン材料の表皮部を、カッターなどを用いて表皮部のみを剥ぐことによりカーボン材料を作製した。すなわち、実験例1で作製したカーボン材料の表面を取り除き、実験例3のカーボン材料を作製した。
(実験例4)
実験例4は、第1実施形態の変形例(図1参照)の製造方法で作成したカーボン材料(セルロースナノファイバーカーボン)の実験例である。
セルロースナノファイバー(日本製紙株式会社製)を用い、セルロースナノファイバー1g、超純水10gをホモジナイザー(エスエムテー製)で12時間撹拌することで、セルロースナノファイバーの分散液を調整した。
上記分散液を水熱合成容器に入れ、250℃に加熱し、セルロースナノファイバーを半炭化した。
半炭化後は、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、セルロースナノファイバーをカーボン化させ、これにより実験例4のカーボン材料を作製した。
(実験例5)
実験例5は、第2実施形態の変形例(図3参照)の製造方法で作成したカーボン材料(セルロースナノファイバーカーボン)の実験例である。
実験例5では、実験例4で作製したカーボン材料に水を含浸させた後に、ホモジナイザー(エスエムテー製)でカーボン材料及びセルロースナノファイバー分散液(カーボン材料:セルロースナノファイバー分散液の重量比1:1)を12時間撹拌することで、粉砕・混合を行った。ここでは、図4の粉砕工程(ステップS4)と、混合工程(ステップS5)とを1つの工程で同時に行った。この混合物はスラリー状であり、アスピレーター(柴田科学株式会社製)を用いて、吸引濾過し、ろ紙から、カーボン材料を剥離した。その後、カーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行って、実験例2のカーボン材料を作製した。
(実験例6)
実験例6は、第1実施形態の変形例(図1参照)の製造方法で作成したカーボン材料(セルロースナノファイバーカーボン)の実験例である。
実験例6では、実験例4で作製したカーボン材料の表皮部を、カッターなどを用いて表皮部のみを剥ぐことにより実験例6のカーボン材料を作製した。すなわち、実験例4で作製したカーボン材料の表面を取り除き、実験例6のカーボン材料を作製した。
(比較例1)
比較例1は、上記の半炭化工程を行わず通常乾燥で作製したカーボン材料である。
比較例1では、実験例1で調整したセルロースナノファイバー分散液をシャーレに流し込み、恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行った。その後、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、セルロースナノファイバーをカーボン化させ、これにより比較例1のカーボン材料を作製した。
(比較例2)
比較例2では、比較例1(通常乾燥)で作製したカーボン材料に水を含浸させた後に、ホモジナイザー(エスエムテー製)でカーボン材料及びセルロースナノファイバー分散液(カーボン材料:セルロースナノファイバー分散液の重量比1:1)を12時間撹拌することで、粉砕・混合を行った。この混合物はスラリー状であり、アスピレーター(柴田科学株式会社製)を用いて、吸引濾過し、ろ紙から、カーボン材料を剥離した。その後、カーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行って、比較例2のカーボン材料を作製した。
(評価方法)
実験例1-6、及び比較例1、2で得られたカーボン材料を、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行うことで、評価した。このカーボン材料は、XRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01-071-4630)単相であることを確認した。なお、PDFカードNoは、国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Data,ICDD)が収集したデータベースであるPDF(Powder Diffraction File)のカード番号である。
作製したカーボン材料のSEM画像を図5A~図5Hに示す。また、測定して得られた評価値を表1に示す。
図5A~図5Cは、実験例1-3で得られたカーボン材料のSEM画像である。図5Aは、実験例1で得られたカーボン材料の表皮部(表面)のSEM画像である。図5Aに示すように、実験例1のカーボン材料の表皮部は、一部凝集が見られる。図5Bは、実験例3のSEM画像であって、実験例1(図5A)のカーボン材料の表皮部を除去するために切断した断面のSEM画像である。図5Cは、実験例2で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。
図5D~図5Fは、実験例4-6で得られたカーボン材料のSEM画像である。図5Dは、実験例4で得られたカーボン材料の表皮部(表面)のSEM画像である。図5Dに示すように、実験例4のカーボン材料の表皮部は、一部凝集が見られる。図5Eは、実験例6のSEM画像であって、実験例4(図5D)のカーボン材料の表皮部を除去するために切断した断面のSEM画像である。図5Fは、実験例5で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。
図5G~図5Hは、比較例1、2で得られたカーボン材料のSEM画像である。図5Gは、比較例1で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。図5Hは、比較例2で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。図5A~図5HのSEM画像の倍率は、いずれも1万倍である。
図5A-図5C(実験例1-3)に示すように、第1実施形態および第2実施形態の製造方法で得られたカーボン材料は、繊維径数十nmのナノファイバーが連続して連なった共連続体であることが確認できる。
同様に、図5D-図5F(実験例4-6)に示すように、第1実施形態の変形例、及び第2実施形態の変形例の製造方法で得られたカーボン材料は、繊維径数十nmのナノファイバーが連続して連なった共連続体であることが確認できる。
一方、図5Gおよび図5H(比較例1、2)に示すように、セルロースナノファイバー分散液を通常乾燥させたカーボン材料は、気孔がなく、密に凝集したカーボン材料であることが確認できる。
表1に示すように、第1実施形態及び第2実施形態のカーボン材料(実験例1-3)と、これらの変形例のカーボン材料(実験例4-6)とは、通常乾燥を行う比較例1、2よりも、分散媒の蒸発に伴う水の表面張力による凝集を抑制することが可能である。その結果、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つカーボン材料を提供できることが確認できた。
また、実験例3は、実験例1で製造されたカーボン材料の表皮部(図5A)を剥ぐことで作製したカーボン材料である。この実験例3のSEM画像は、図5Bである。したがって、実験例3のカーボン材料は、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つ。これは、図5Aに示すように、実験例1の製造方法で得られたカーボン材料の表皮部は一部凝集が見られ、その表皮部の凝集体を除去しためだと考えられる。
同様に、実験例6は、実験例4で製造されたカーボン材料の表皮部(図5D)を剥ぐことで作製したカーボン材料である。この実験例6のSEM画像は、図5Eである。したがって、実験例6のカーボン材料は、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つ。これは、図5Dに示すように、実験例4の製造方法で得られたカーボン材料の表皮部は一部凝集が見られ、その表皮部の凝集体を除去しためだと考えられる。
Figure 0007273286000001
表1に示すように実験例1、3では、炭化後でも優れた伸縮性を持つことが確認できた。また、実験例2では、優れた引張強度を有することが確認できた。
このように、第1実施形態および第2実施形態では、セルロースナノファイバーを含む分散液を熱媒により半炭化させて半炭化体を得る半炭化工程と、半炭化体が燃焼しないガスの雰囲気中で加熱して炭化する炭化工程を含む本実施形態の製造方法は、セルロースナノファイバーを熱処理することでカーボン化しているため、優れた比表面積、強度、気孔率が得られる。すなわち、本実施形態のセルロースナノファイバーカーボンは、伸縮性を持ち、機械的強度が高く、大きな比表面積を有する。
同様に、表1に示すように実験例4、6では、炭化後でも優れた伸縮性を持つことが確認できた。また、実験例5では、優れた引張強度を有することが確認できた。
このように、第1実施形態および第2実施形態の変形例では、セルロースナノファイバーを含む分散液を水熱合成により半炭化させて半炭化体を得る半炭化工程と、半炭化体が燃焼しないガスの雰囲気中で加熱して炭化する炭化工程を含む本実施形態の製造方法は、セルロースナノファイバーを熱処理することでカーボン化しているため、優れた比表面積、強度、気孔率が得られる。すなわち、本変形例のセルロースナノファイバーカーボンは、伸縮性を持ち、機械的強度が高く、大きな比表面積を有する。
第1実施形態、第2実施形態およびこれらの変形例の製造方法により製造されたカーボン材料は、天然物由来のセルロースを用いることも可能で、極めて環境負荷が低い。このようなカーボン材料は、日常生活で容易に使い捨てることが可能であるため、小型デバイス、センサ端末、医療用機器、電池、美容器具、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、キャパシター、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等を始めとし、種々のシチュエーションで有効利用することができる。
〔第3実施形態〕
第3実施形態および後述する第4実施形態では、第1実施形態のセルロースナノファイバー分散液(セルロースナノファイバーを含む分散液)のかわりに、セルロースナノファイバーを含むゲルを用いる。また、第3実施形態および第4実施形態のゲルは、バクテリアを用いてセルロースナノファイバーを分散させたバクテリア産生ゲルである。そのため、第3実施形態および第4実施形態の製造方法により製造されたセルロースナノファイバーカーボンは、以降の説明において「バクテリア産生セルロースカーボン」と称する。
図6は、本発明の第3実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。以降の説明において、バクテリア産生セルロースカーボンを「カーボン材料」と称することもある。
本実施形態のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、ゲル生成工程(ステップS11)、半炭化工程(ステップS12)、及び炭化工程(ステップS14)を含む。
ゲル生成工程は、バクテリアを用いてセルロースナノファイバーを分散させたバクテリア産生ゲルを生成する(ステップS11)。ここで、ゲルとは、分散媒が分散質であるナノ構造体の三次元ネットワーク構造により流動性を失い固体状になったものを意味する。具体的には、ゲルは、ずり弾性率が10~10Paである分散系を意味する。ゲルの分散媒は、水(HO)などの水系、または、カルボン酸、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)、プロパノール(COH)、n-ブタノール、イソブタノール、n-ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系のうちの1種類であってもよく、または、これらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。
バクテリアが産生するゲルは、nmオーダーのナノファイバーを基本構造としており、このゲルを用いてカーボン材料を作製することで、得られるカーボン材料は高比表面積を有するものとなる。具体的には、バクテリアが生産するゲルを用いることで比表面積が300m/g以上を有するカーボン材料の合成が可能である。
バクテリア産生ゲルは、ナノファイバーがコイル状や網目状に絡まった構造を有し、更にバクテリアの増殖に基づいてナノファイバーが分岐した構造を有しているため、作製されるカーボン材料は、弾性限界での歪みが50%以上という優れた伸縮性を実現する。
バクテリアは、公知のものが挙げられ、例えば、アセトバクター・キシリナム・サブスピーシーズ・シュクロファーメンタ、アセトバクター・キシリナムATCC23768、アセトバクター・キシリナムATCC23769、アセトバクター・パスツリアヌスATCC10245、アセトバクター・キシリナムATCC14851、アセトバクター・キシリナムATCC11142、アセトバクター・キシリナムATCC10821などの酢酸菌を培養することにより生産されたものであればよい。また、バクテリアは、これらの酢酸菌をNTG(ニトロソグアニジン)などを用いる公知の方法によって変異処理することにより創製される各種変異株を培養することにより生産されたものでもよい。
半炭化工程は、バクテリア産生ゲルを半炭化させて半炭化体を得る(ステップS12)。半炭化工程は、例えば、バクテリア産生ゲルを250℃に加熱したシリコーンオイル中に含浸し、前記バクテリア産生ゲルに含まれる分散媒を気化させ、その後更に、熱処理を継続して行う。半炭化させる手法は、バクテリア産生ゲルが、半炭化できれば、特に限定されるものではない。熱媒は、シリコーンオイル類、多価アルコール類、フェノール類及びフェノール性エーテル類、ポリフェニル類、塩素化ベンゼン及びポリフェニル、ケイ酸エステル類、分留タール及び石油類、食用油などのうちの1種類であってもよく、または、これらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。
また、熱媒の温度は、使用する熱媒によって異なるが、バクテリア産生ゲルが半炭化する温度であれば特に制限されない。例えば、熱媒にシリコーンオイル、バクテリア産生ゲルの分散媒に水を使用した場合、バクテリア産生ゲルを200℃のシリコーンオイルに含浸させれば、分散媒の水が、急激に気化し、その後、バクテリア産生ゲルの半炭化が開始される。バクテリア産生ゲルの半炭化温度は、200℃程度であるため、熱媒の温度は、200℃以上が好適である。
また、半炭化後には、半炭化したバクテリア産生ゲル内に熱媒が含有されているため、水やアルコールなどで洗浄する洗浄工程を入れてもよい。
バクテリア産生ゲルを半炭化することで、分散質が固定され、三次元ネットワーク構造維持したままのセルロースナノファイバーが取り出せる。
炭化工程は、半炭化体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化し、バクテリア産生セルロースカーボンを得る(ステップS13)。半炭化バクテリア産生ゲルの炭化は、不活性ガス雰囲気中で500℃~2000℃、より好ましくは、900℃~1800℃で焼成して炭化すればよい。セルロースが燃焼しないガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであればよい。また、セルロースが燃焼しないガスは、水素ガス、一酸化炭素ガスなどの還元性ガスであってもよく、また、二酸化炭素ガスであってもよい。本実施形態では、カーボン材料に対し賦活効果を有し、高活性化が期待できる二酸化炭素ガスまたは一酸化炭素ガスがより好ましい。
以上述べたバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法によれば、半炭化工程により分散質であるセルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造を維持したままのセルロースナノファイバーが取り出せる。したがって、十分な比表面積を得ることができ、高比表面積のカーボン材料の作製が容易になる。
すなわち、本実施形態で作製されたバクテリア産生セルロースカーボンは、非共有結合によって一体とされたバクテリア産生ゲルの複数のナノファイバーが連なった共連続体の三次元ネットワーク構造を有する。共連続体は、多孔体であり、一体構造とされている。複数のナノファイバーが非共有結合によって一体とされている三次元ネットワーク構造の共連続体は、ナノファイバー同士の結合部が変形可能とされており、伸縮性を有した構造となっている。
図7Aおよび図7Bは、バクテリア産生セルロースカーボンのSEM画像である。倍率は10000倍である。
図7Aは、本実施形態の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンのSEM画像である。当該画像から、セルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造が構築されている様子が分かる。
図7Bは、本実施形態の製造方法とは異なり、バクテリア産生ゲルを大気中で乾燥させて炭化させた場合のバクテリア産生セルロースカーボンの様子を示す。バクテリア産生セルロースゲルは、乾燥中に、分散媒の表面張力の影響を受け、固定化されていないセルロースナノファイバーが凝集するため、セルロースナノファイバーの三次元ネットワーク構造が破壊されてしまう。図7Bに示すように、三次元ネットワーク構造が破壊されてしまうと、高比表面積のカーボン材料の作製は困難である。
以上述べたように、本実施形態の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンは、三次元ネットワーク構造を有し、伸縮性を有するカーボン材料である。また、本実施形態のバクテリア産生セルロースカーボンは、高導電性、耐腐食性、及び高比表面積を有する。
したがって、本実施形態の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンは、電極、空隙、生体組織、機器接続部、等との密着性を高めることが可能である。
本実施形態のバクテリア産生セルロースカーボンは、高導電性、耐腐食性、高比表面積を有しているため、電池、キャパシター、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、医療用機器、美容器具、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等に好適である。
〔第3実施形態の変形例〕
本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、図6に示す第3実施形態の製造方法において、半炭化工程で使用する熱媒に高温高圧の熱水を用いる点で異なり、それ以外は第3実施形態と同様である。
具体的には、本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、図6に示すように、ゲル生成工程(ステップS11)、半炭化工程(ステップS12)、及び炭化工程(ステップS14)を含む。ゲル生成工程、及び炭化工程については、第3実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
本変形例の半炭化工程は、バクテリア産生ゲルを半炭化させて半炭化体を得る(ステップS12)。半炭化工程は、例えば、バクテリア産生ゲルを水熱合成容器に入れ、自生圧化、250℃で熱処理して行う。半炭化させる手法は、バクテリア産生ゲルが、半炭化できれば、特に限定されるものではないが、バクテリア産生ゲルの半炭化温度は、200℃程度であるため、温度は、200℃以上が好適である。
バクテリア産生ゲルを半炭化することで、分散質が固定され、三次元ネットワーク構造維持したままのセルロースナノファイバーが取り出せる。
本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法によれば、半炭化工程により分散質であるセルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造を維持したままのセルロースナノファイバーが取り出せる。したがって、十分な比表面積を得ることができ、高比表面積のカーボン材料の作製が容易になる。
図8は、本変形例の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンのSEM画像である。倍率は10000倍である。当該画像から、セルロースナノファイバーが固定され三次元ネットワーク構造が構築されている様子が分かる。
本変形例の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンは、第3実施形態と同様に、三次元ネットワーク構造を有し、伸縮性を有するカーボン材料である。また、本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンは、高導電性、耐腐食性、及び高比表面積を有する。
したがって、本変形例の製造方法によって作製されたバクテリア産生セルロースカーボンは、電極、空隙、生体組織、機器接続部、等との密着性を高めることが可能である。
本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンは、高導電性、耐腐食性、高比表面積を有しているため、電池、キャパシター、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、医療用機器、美容器具、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等に好適である。
〔第4実施形態〕
図9は、第4実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。図9に示す製造方法は、第3実施形態の製造方法において、第1粉砕工程(ステップS14)、第2粉砕工程(ステップS15)、混合工程(ステップS16)、塗布工程(ステップS17)、及び乾燥工程(ステップS18)を、さらに含む。
第1粉砕工程は、上記の炭化工程(ステップS13)で炭化させた乾燥体(バクテリア産生セルロースカーボン)を粉砕する(ステップS14)。第1粉砕工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライターなどを使用して、バクテリア産生セルロースカーボンを粉末またはスラリー状にする。
この場合、バクテリア産生セルロースカーボンは、二次粒子径が100nm~5mmが好ましく、1μm~1mmがより好ましい。これは、二次粒子径が100nm以下になるまで粉砕した場合、セルロースナノファイバーによる共連続な構造が壊れ、十二分な結着力及び導電パスを得ることが困難となり、電気的な抵抗が増大するためである。また、二次粒子径が5mm以上の場合、結着剤として機能するバクテリア産生ゲルが十二分に分散せず、シート形状に維持することが困難となる。
また、バクテリア産生セルロースカーボンは、気孔率が高く、密度が低いため、カーボン材料を単独で粉砕した場合、粉砕時または粉砕後にバクテリア産生セルロースカーボンの粉末が舞い、取扱いが困難である。そのため、バクテリア産生セルロースカーボンに液体を含浸させてから粉砕することが好ましい。ここで用いる液体は、特に限定されないが、例えば、水(HO)などの水系、または、カルボン酸、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)、プロパノール(COH)、n-ブタノール、イソブタノール、n-ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系のうちの1種類であってもよく、または、これらのうちの2種類以上を混合したものであってもよい。
第2粉砕工程は、ゲル生成工程で生成したバクテリア産生ゲルを粉砕する(ステップS15)。なお、バクテリア産生ゲル及びバクテリア産生セルロースカーボンを同時に粉砕することも可能である。すなわち、第1粉砕工程と、第2粉砕工程とを同時に行うこともできる。その場合、混合工程を省略することができる。
混合工程は、第1粉砕工程と第2粉砕工程のそれぞれで粉砕した材料を混合する(ステップS16)。混合物は、スラリー状である。
塗布工程は、スラリー状の混合物を任意の形状に形成する(ステップS17)。
乾燥工程は、塗布工程で任意の形状に形成(塗布)した混合物から液体を除去する(ステップS18)。スラリー状の混合物(混合スラリー)を乾燥する際に、恒温槽、真空乾燥機、赤外線乾燥機、熱風乾燥機、吸引乾燥機等を用いても良い。更に、アスピレーター等を用いて吸引濾過を行うことで、迅速に乾燥することができる。
以上述べた本実施形態の製造方法で得られた混合スラリーを、塗布工程を行うことなく乾燥させ、シート状にした後、所望の形状に加工しても良い。混合スラリーを任意の形状に形成した後、乾燥させることで、シート状カーボン材料を所望の形状に加工することができる。また、塗布工程で塗布することで、切り抜き加工で生じる切れ端などの材料コストを軽減することができ、ユーザーの好みによる任意形状のカーボン材料を得ることができる。また、カーボン材の強度を高めることもできる。
なお、本実施形態の製造方法は、全ての工程を含まなくても良い。例えば、第1粉砕工程まで行い粉砕した状態のバクテリア産生セルロースカーボンを用いても良い。用いるとは、その状態で流通させることである。同様に混合工程まで行い混合スラリーの状態で流通させても良い。
〔第4実施形態の変形例〕
本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、図9に示す第4実施形態の製造方法において、半炭化工程で使用する熱媒に高温高圧の熱水を用いる点で異なり、それ以外は第2実施形態と同様である。
具体的には、本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、半炭化工程の熱媒に高温高圧の熱水を用いる第3実施形態の変形例の製造方法に、第1粉砕工程(ステップS14)、第2粉砕工程(ステップS15)、混合工程(ステップS16)、塗布工程(ステップS17)、及び乾燥工程(ステップS18)を、さらに含む。
本変形例の第1粉砕工程、第2粉砕工程、混合工程、塗布工程、及び乾燥工程は、第4実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
〔第3実施形態、第4実施形態、及び変形例の実験例〕
以上述べた第3実施形態および第4実施形態の製造方法の効果を確認する目的で、第3実施形態および第4実施形態の製造方法で作製したカーボン材料(実験例1-3)と、当該実施形態とは異なる製造方法で作製したカーボン材料(比較例1、2)とを比較する実験を行った。また、第3実施形態の変形例および第4実施形態の変形例の製造方法で作製したカーボン材料(実験例4-6)についても、同様に実験を行った。
(実験例1)
実験例1は、第3実施形態(図6参照)の製造方法で作成したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)の実験例である。
酢酸菌であるアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)産生のバクテリアセルロースゲルとして、ナタデココ(フジッコ製)を用い、上記バクテリア産生ゲルを250℃に加熱したシリコーンオイルに24時間浸すことでバクテリア産生ゲルに含まれる水を完全に気化させ、更にバクテリア産生ゲルを半炭化した。バクテリア産生ゲルを完全に半炭化させた後、半炭化させたバクテリア産生ゲルを取り出し、これを超純水で洗浄した。
洗浄した後は、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、半炭化させたバクテリア産生ゲルをカーボン化させ、これにより実験例1のカーボン材料を作製した。
(実験例2)
実験例2は、第4実施形態(図9参照)の製造方法で作成したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)の実験例である。
実験例2では、実験例1で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモジナイザー(エスエムテー製)でカーボン材料及びバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間撹拌することで、粉砕・混合を行った。ここでは、図7の第1粉砕工程(ステップS14)と、第2粉砕工程(ステップS15)と、混合工程(ステップS16)とを1つの工程で同時に行った。
この混合物はスラリー状であり、アスピレーター(柴田科学株式会社製)を用いて、吸引濾過し、ろ紙から、カーボン材料を剥離した。その後、カーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行って、実験例2のカーボン材料を作製した。
(実験例3)
実験例3は、第3実施形態(図6参照)の製造方法で作成したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)の実験例である。
実験例3では、実験例1で作製したカーボン材料の表皮部を、カッターなどを用いて表皮部のみを剥ぐことによりカーボン材料を作製した。すなわち、実験例1で作製したカーボン材料の表面を取り除き、実験例3のカーボン材料を作製した。
(実験例4)
実験例4は、第3実施形態の変形例(図6参照)の製造方法で作成したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)の実験例である。
酢酸菌であるアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)産生のバクテリアセルロースゲルとして、ナタデココ(フジッコ製)を用い、上記バクテリア産生ゲルを水熱合成容器に入れ、自生圧化、250℃で加熱し、バクテリア産生ゲルを半炭化した。
半炭化した後は、窒素雰囲気下で600℃、2時間の焼成により、半炭化させたバクテリア産生ゲルをカーボン化させ、これにより実験例4のカーボン材料を作製した。
(実験例5)
実験例5は、第4実施形態の変形例(図9参照)の製造方法で作成したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)の実験例である。
実験例4で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモジナイザー(エスエムテー製)でカーボン材料及びバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間撹拌することで、粉砕・混合を行った。この混合物はスラリー状であり、アスピレーター(柴田科学株式会社製)を用いて、吸引濾過し、ろ紙から、カーボン材料を剥離した。その後、カーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行って、実験例5のカーボン材料を作製した。
(実験例6)
実験例6は、第3実施形態(図6参照)の製造方法で作成したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)の実験例である。
実験例4で作製したカーボン材料の表皮部を、カッターを用いて表皮部のみを剥ぐことにより実験例6のカーボン材料を作製した。
(比較例1)
比較例1は、上記の半炭化工程を行わず通常乾燥で作製したカーボン材料(バクテリア産生セルロースカーボン)である。
比較例1では、実験例1で使用したバクテリア産生ゲルを、恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行った。その後、窒素雰囲気下で600℃で、2時間の焼成により、バクテリア産生セルロースをカーボン化させ、これにより比較例1のカーボン材料を作製した。
(比較例2)
比較例2では、比較例1(通常乾燥)で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモエナジー(エスエムテー製)で12時間攪拌することで粉砕し、カーボン材料が分散したスラリーを作製した。そして、そのスラリー及びバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間攪拌することで、粉砕と混合を行った。
その後、アスピレータ(柴田科学株式会社製)を用いて吸引濾過し、ろ紙からカーボン材料を剥離した。その後、カーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行って、比較例2のカーボン材料を作製した。
(評価方法)
実験例1-6及び比較例1、2で得られた、カーボン材料を、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行うことで、評価した。このカーボン材料は、XRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo. 01-071-4630)単相であることを確認した。なお、PDFカードNoは、国際回折データセンター(International Centre for Diffraction Data,ICDD)が収集したデータベースであるPDF(Powder Diffraction File)のカード番号である。
作製したカーボン材料のSEM画像を図10A~図10Hに示す。また、測定して得られた評価値を表2に示す。
図10A~図10Cは、実験例1-3で得られたカーボン材料のSEM画像である。図10Aは、実験例1で得られたカーボン材料の表皮部(表面)のSEM画像である。図10Aに示すように、実験例1のカーボン材料の表皮部は、一部凝集が見られる。図10Bは、実験例3のSEM画像であって、図10Aのカーボン材料の表皮部を除去するために切断した断面のSEM画像である。図10Cは、実験例2で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。
図10D~図10Fは、実験例4-6で得られたカーボン材料のSEM画像である。図10Dは、実験例4で得られたカーボン材料の表皮部(表面)のSEM画像である。図10Dに示すように、実験例4のカーボン材料の表皮部は、一部凝集が見られる。図10Eは、実験例6のSEM画像であって、実験例4(図10D)のカーボン材料の表皮部を除去するために切断した断面のSEM画像である。図10Fは、実験例5で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。
図10G~図10Hは、比較例1、2で得られたカーボン材料のSEM画像である。図10Gは、比較例1で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。図10Eは、比較例2で得られたカーボン材料の表面のSEM画像である。図10A~図10HのSEM画像の倍率は、いずれも1万倍である。
図10A-図10C(実験例1-3)に示すように、第3実施形態および第4実施形態の製造方法で得られたカーボン材料は、繊維径数十nmのナノファイバーが連続して連なった共連続体であることが確認できる。
同様に、図10D-図10F(実験例4-6)に示すように、第3実施形態の変形例および第4実施形態の変形例の製造方法で得られたカーボン材料は、繊維径数十nmのナノファイバーが連続して連なった共連続体であることが確認できる。
一方、図10Gおよび図10H(比較例1、2)に示すように、水分を含有するバクテリア産生ゲルを通常乾燥させて得たカーボン材料は、気孔がなく、密に凝集したカーボン材料であることが確認できる。
表2に示すように、第3実施形態および第4実施形態のカーボン材料(実験例1-3)と、これらの変形例のカーボン材料(実験例4-6)は、通常乾燥を行う比較例1、2の乾燥工程よりも、分散媒の蒸発に伴う水の表面張力による凝集を抑制することが可能である。その結果、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つカーボン材料を提供できることが確認できた。
また、実験例3は、実験例1で製造されたカーボン材料の表皮部(図10A)を剥ぐことで作製したカーボン材料である。この実験例3のSEM画像は、図10Bである。したがって、実験例3のカーボン材料は、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つ。これは、図10Aに示すように、実験例1の製造方法で得られたカーボン材料の表皮部は一部凝集が見られ、その表皮部の凝集体を除去しためだと考えられる。
同様に、実験例6は、実験例4で製造されたカーボン材料の表皮部(図10D)を剥ぐことで作製したカーボン材料である。この実験例6のSEM画像は、図10Eである。したがって、実験例6のカーボン材料は、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つ。これは、図10Dに示すように、実験例4の製造方法で得られたカーボン材料の表皮部は一部凝集が見られ、その表皮部の凝集体を除去しためだと考えられる。
Figure 0007273286000002
表2に示すように実験例1、3では、炭化後でも優れた伸縮性を持つことが確認できた。また、実験例2では、優れた引張強度を有することが確認できた。
このように、第3実施形態および第4実施形態の製造方法は、バクテリア産生のゲルを熱媒により半炭化させて半炭化体を得る半炭化工程と、前記半炭化体が燃焼しないガスの雰囲気中で加熱して炭化する炭化工程を含む。バクテリア産生セルロースを熱処理することでカーボン化しているため、第3実施形態および第4実施形態で製造されたバクテリア産生セルロースカーボンは、優れた比表面積、強度、気孔率が得られる。すなわち、本実施形態のバクテリア産生セルロースカーボンは、伸縮性を持ち、機械的強度が高く、大きな比表面積を有する。
同様に、表2に示すように実験例4、6では、炭化後でも優れた伸縮性を持つことが確認できた。また、実験例5では、優れた引張強度を有することが確認できた。
このように、第3実施形態および第4実施形態の変形例の製造方法は、バクテリア産生のゲルを水熱合成により半炭化させて半炭化体を得る半炭化工程と、前記半炭化体が燃焼しないガスの雰囲気中で加熱して炭化する炭化工程を含む。バクテリア産生セルロースを熱処理することでカーボン化しているため、第3実施形態および第4実施形態の変形例で製造されたバクテリア産生セルロースカーボンは、優れた比表面積、強度、気孔率が得られる。すなわち、本変形例のバクテリア産生セルロースカーボンは、伸縮性を持ち、機械的強度が高く、大きな比表面積を有する。
第3実施形態、第4実施形態、及びこれらの変形例の製造方法により製造されたカーボン材料は、天然物由来のセルロースを用いることも可能で、極めて環境負荷が低い。このようなカーボン材料は、日常生活で容易に使い捨てることが可能であるため、小型デバイス、センサ端末、医療用機器、電池、美容器具、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、キャパシター、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等を始めとし、種々のシチュエーションで有効利用することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。
例えば、表1および表2の実施例3で記載したように、第1実施形態および第3実施形態の炭化工程(図1、図6参照)の後に、当該炭化工程で作製したカーボン材料の表皮部を、カッターなどを用いて表皮部のみを剥ぐ除去工程を行なってもよい。
同様に、第2実施形態および第4実施形態の炭化工程(図4:S3、図9:S13参照)の後に、当該炭化工程で作製したカーボン材料の表皮部を、カッターなどを用いて表皮部のみを剥ぐ除去工程を行い、その後、以降の工程を行うこととしてもよい。
S1:分散工程
S2:半炭化工程
S3:炭化工程
S4:粉砕工程
S5:混合工程
S6:乾燥工程
S11:ゲル生成工程
S12:半炭化工程
S13:炭化工程
S14:第1粉砕工程
S15:第2粉砕工程
S16:混合工程
S17:塗布工程
S18:乾燥工程

Claims (6)

  1. セルロースナノファイバーをカーボン化するセルロースナノファイバーカーボンの製造方法であって、
    前記セルロースナノファイバーを含む分散液又はゲルを熱媒により半炭化させて半炭化体を得る半炭化工程と、
    前記半炭化体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させてセルロースナノファイバーカーボンを得る炭化工程とを含み、
    前記熱媒は、シリコーンオイル類、多価アルコール類、フェノール類及びフェノール性エーテル類塩素化ベンゼンケイ酸エステル類、分留タール及び石油類、及び、食用油からなる群より選択される少なくとも1つを含み、
    前記熱媒の温度は、200℃以上である
    ことを特徴とするセルロースナノファイバーカーボンの製造方法。
  2. 請求項1に記載のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法において、
    前記炭化工程で炭化させた前記セルロースナノファイバーカーボンを粉砕する粉砕工程
    を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーカーボンの製造方法。
  3. 請求項2に記載のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法において、
    前記粉砕工程で粉砕したセルロースナノファイバーカーボンと、前記セルロースナノファイバーを含む分散液とを混合して混合液を得る混合工程と、
    前記混合液から液体を除去する乾燥工程と
    を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーカーボンの製造方法。
  4. 請求項1に記載のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法において、
    バクテリアを用いて前記セルロースナノファイバーを分散させて前記ゲルを生成するゲル生成工程
    を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーカーボンの製造方法。
  5. 請求項4に記載のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法において、
    前記炭化工程で炭化させた前記セルロースナノファイバーカーボンを粉砕する第1粉砕工程と、
    前記ゲル生成工程で生成した前記ゲルを粉砕する第2粉砕工程と、
    前記第1粉砕工程で粉砕した前記セルロースナノファイバーカーボンと、前記第2粉砕工程で粉砕した前記ゲルを混合して混合物を得る混合工程と
    を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーカーボンの製造方法。
  6. 請求項5に記載のセルロースナノファイバーカーボンの製造方法において、
    前記混合工程で混合した前記混合物を塗布して任意の形状を形成する塗布工程と、
    前記混合物から液体を除去する乾燥工程と
    を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーカーボンの製造方法。
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