JP6519859B2 - カーボンナノファイバー不織布の製造方法 - Google Patents
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電気二重層キャパシタの原理は、図20に示すように、電極表面810と電解液820との界面で電気二重層を形成し、当該電気二重層を介して充電時には電極表面810にイオンを吸着させ放電時には電極表面からイオンを脱着させることで充放電を実現するというものである。したがって、エネルギー密度を高め(高容量化)かつ小型軽量化を図るためには、電極812に用いる炭素材料814の単位体積当たりの表面積(体積比表面積。以下、単に比表面積という場合もある。)の向上が重要となる。
電気二重層キャパシタに用いる炭素材料として、従来より、賦活処理、粉砕工程等の方策を施すことにより比表面積を向上させたカーボンナノファイバー(以下、単にCNFという場合もある。)が用いられてきた。しかし、賦活処理を施したCNFは収縮によって体積が小さくなっていることや、また、粉砕工程(図21(a)参照。)を施したCNFは最終的にはバインダー(接着剤)を用いて金属の集電体816に塗布する必要があることから(図21(b)参照。)、これらの方策による材料は、不織布のまま使用することができないという問題があった。そこで、昨今、電気二重層キャパシタに用いる炭素材料として、エレクトロスピニング法により作製したカーボンナノファイバーを集成させたカーボンナノファイバー不織布を導入する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
本発明の発明者らは鋭意研究を重ねた結果、発想を転換し、連続相(海)と不連続相(島)の構成材料を逆転させた非混和性ポリマーを導入し、中空構造を追求するのではなく極細のカーボンナノファイバーを追求するアプローチをとることで、比表面積が大きい有用なカーボンナノファイバー不織布を得ることができる製造方法に想到した。本発明は、非混和性ポリマー溶液を適切に調整し、それに適したエレクトロスピニング及び熱処理を行うことで、非常に有用な極細のCNFの集合体からなるカーボンナノファイバー不織布を得るというものである。本発明は、以下の要素からなる。
なお、図面における模式図については、各構成要素の寸法、構成要素間の比率等は必ずしも実際のものを厳密に反映したものではない。
1.実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法
図1は、カーボンナノファイバー不織布の製造方法を説明するために示すフローチャートである。図2は、カーボンナノファイバー不織布の製造方法の各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。図2(a)は非混和性ポリマー溶液作製工程S10で作成された非混和性ポリマー溶液100を模式的に示す図であり、図2(b)は複合ナノファイバー不織布作製工程S12によって作成された複合ナノファイバー126を模式的に示す図であり、図2(c)はカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を模式的に示す図である。図3は、非混和性ポリマー溶液作製工程S10を説明するために模式的に示す図である。図4は、非混和性ポリマー溶液100の一例を光学顕微鏡によって観察した写真である。
以下に、実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法を各工程に沿って説明する。
非混和性ポリマー溶液作製工程S10は、非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、第1ポリマーを含む相が不連続相となり第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する工程である(図2(a)参照。)。
次に重要なパラメーターは、材料の混合比である。量が少ない方の材料が島成分となれば、量が多い方の材料と触れ合う表面積が小さくて済むため、溶液状態が安定する。そのため、量が少ない方の材料が島成分となり易く、量が多い方の材料が海成分になり易いということになる。したがって、島にしたい第1ポリマーを相対的に少ない量とし、海にしたい第2ポリマーを相対的に多い量とすることが一般的に好ましい。
同じく重要なパラメーターは材料の分子量である。分子量が小さければ、より小さな液滴ができやすいため海成分になり易く、逆に分子量が大きければ島成分になり易い。したがって、島にしたい第1ポリマーとして相対的に大きな分子量の材料を選定し、海にしたい第2ポリマーとして相対的に小さな分子量の材料を選定するのが、一般的に好ましい。
本発明では、少なくともこれら3つのパラメーターを所与の範囲で制御して、第1ポリマーを含む相が不連続相(島)となり、第2ポリマーを含む相が連続相(海)となる非混和性ポリマー溶液100を作製する。
複合ナノファイバー不織布作製工程S12は、エレクトロスピニング法により、非混和性ポリマー溶液100から「第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアがナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布120」を作製する工程である(図2(b)参照。)。
カーボンナノファイバー不織布作製工程S14は、第1ポリマー102を炭化させるための熱処理を上記の複合ナノファイバー不織布120に施すことにより、第2ポリマー104を熱分解させるとともに第1ポリマー102を炭化させて、第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製する工程である(図2(c)参照。)。
上記の直径とすることによりエレクトロスピニング、熱処理等を効率的に実施することができ、かつ良好な品質のカーボンナノファイバー不織布を得ることができ、実用上も有用なカーボンナノファイバー不織布の製造方法を実施することができる。
本発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、複合ナノファイバー不織布作製工程S12とカーボンナノファイバー不織布作製工程S14との間に、複合ナノファイバー不織布を200℃〜400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程S13(図示しない。)をさらに含むことが好ましい。
実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布は、上記した非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12、及び、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14をこの順序で実施して製造されたカーボンナノファイバー不織布140であって、平均直径が5nm〜100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー146の集合体からなっている。
本発明は、このような極細のCNF146が数多く含まれる集合体によりカーボンナノファイバー不織布140が構成されているため(図8及び図19参照)、仮に従来技術においてCNF946の中空部分(空孔948)の表面積を考慮したとしても、本発明のカーボンナノファイバー不織布140の方がなお大きな比表面積となっている。これを用いれば当然に従来よりも大きな表面積をもつカーボン電極を実現することができ、大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。
すなわち、従来のカーボンナノファイバー不織布は、構成要素のカーボンナノファイバーの直径が比較的太く、かつ、内部(コア)には長手方向に空孔が形成されていることから、却って剛性が高まってしまい柔軟な取り扱いができない構造となっている(図22(c)、図23及び図19(e)〜(f)参照。)。このため、柔軟性のあるシート、不織布等を作製しようとする場合には、従来のカーボンナノファイバー不織布をそのまま用いて作成することは困難であり、上述したような粉砕、バインダーとの混成及び塗布といった更なる工程が必要となる場合がある(図21参照。)。一方、本願発明のカーボンナノファイバー不織布の製造方法で製造されたカーボンナノファイバー不織布は、極めて柔軟性に富むため、出来上がった後に改めて粉砕、バインダーとの混成、塗布といった工程は不要となり、そのまま用いることができる。
上記では、非混和性ポリマー溶液作製工程S10、複合ナノファイバー不織布作製工程S12、繊維構造安定化処理工程S13、及び、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14により製造されたカーボンナノファイバー不織布をそのまま用いて電気二重層キャパシタ等の各種製品に応用する例を述べたが、これに限定されるものではない。
例えば、上記した実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布を、空気を遮断した状態又は真空の状態で2800〜3000℃の範囲内にある温度で加熱し黒鉛化させたカーボンナノファイバーを得て、それを各種製品に応用することもできる。
具体的には、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14により得たカーボンナノファイバー不織布140を、空気を遮断した状態又は真空の状態で2800〜3000℃の範囲内にある温度で加熱して黒鉛化させカーボンナノファイバーを作製する(図示しない黒鉛化工程S15)。その上で、例えば図21で示すように、作製したカーボンナノファイバーを、粉砕し、バインダー(接着剤)と混成して、金属の集電体に塗布することにより電気二重層キャパシタを作製することもできる。
このように作成される電気二重層キャパシタは、従来と同様の工程(粉砕、バインダーとの混成及び塗布)は必要になるものの、それに用いられる素のカーボンナノファイバー(更に遡ればカーボンナノファイバー不織布140)が大きな比表面積を有するため、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。
実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法は、基本的には実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法と同様の構成を有するが、非混和性ポリマー溶液作製工程S10及び複合ナノファイバー不織布作製工程S12の内容が実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法とは異なる。すなわち、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、図10に示すように、複合ナノファイバー不織布作製工程S12において、ケラチンを主成分とする動物組織110から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物114からなるナノ粒子116を実施形態1に係る非混和性ポリマー溶液100に対し分散させた非混和性ポリマー溶液200から複合ナノファイバー不織布を作製する。
図10は、実施形態2の非混和性ポリマー溶液作製工程S10を説明するために模式的に示す図である。図11は、実施形態2の各工程で得られる処理対象を説明するために示す図である。図11(a)は非混和性ポリマー溶液作製工程S10で作成された非混和性ポリマー溶液200を模式的に示す図であり、図11(b)は複合ナノファイバー不織布作製工程S12によって作成された複合ナノファイバー126を模式的に示す図であり、図11(c)はカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を模式的に示す図である。図12は、実施形態のカーボンナノファイバー不織布作製工程S14によって作成されたカーボンナノファイバー146を説明するために模式的に示す図であり、図11(c)において記号Zで示した部分を拡大して模式的に示した図である。図13は、実施形態2において動物組織110(人間の頭髪)から動物組織加工物114(ナノ粒子116)を得る過程を説明するために示す写真である。
(1)動物組織加工物の分散について
実施形態2では第1ポリマー及び第2ポリマーの他に、動物組織加工物114からなるナノ粒子116も添加して非混和性ポリマー溶液200を作製する。撹拌後には、ナノ粒子116が第1ポリマーを含む不連続相(島)と、及び、第2ポリマーを含む連続相(海)とのそれぞれに分散されるように非混和性ポリマー溶液200を作製する(図10参照。)。
そして、実施形態1と同様に複合ナノファイバー不織布作製工程S12(エレクトロスピニング)を経る。その後、カーボンナノファイバー不織布作製工程S14(熱処理)においては、第1ポリマー202(島)に分散されたナノ粒子116は燃焼し、燃焼に伴う副生ガスが発生して、これにより第1ポリマー由来のカーボン144の表面又は内部に空孔148を形成させることができる(図11及び図12参照。)。
このように実施形態2では、動物組織由来のナノ粒子116を分散させることで更に微細な空孔148を形成させることができ、より大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布140を得ることができる。
ところで、動物組織由来のナノ粒子116は焼成することにより残炭率の向上及び組成物である窒素、硫黄、リン、ホウ素、酸素等のヘテロ原子種の残留を期待することができる。そこで、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法においては、空孔148の内壁149には、ヘテロ原子種が付着していることが好ましい。空孔148の内壁149にヘテロ原子種を付着させることにより、内壁149ひいてはカーボンナノファイバー146の表面濡れ性を高めることができる。このようなカーボンナノファイバー146を含むカーボンナノファイバー不織布140を電気二重層キャパシタに用いると、高められた表面濡れ性により、電解液を炭素材料の界面により強く導くことができ、疑似容量性挙動を効果的に引き出すことができる。こうして、より高性能な電気二重層キャパシタを得ることができる。
また、実施形態2に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、動物組織110は、本発明の作用効果を奏するものであれば如何なるものでもよいが、人間の頭髪であることがより好ましい。動物組織110として人間の頭髪を用いれば、理髪店等において大量に発生し、焼却処分等されている人間の頭髪を有効利用することができ、製造コストを低くし、かつ、環境負荷も低減することができる。
以下、図13を参照しながら、動物組織110(人間の頭髪)から動物組織加工物114(ナノ粒子116)を得る過程を説明する。
空孔148の構造及び第1ポリマー由来のカーボン144内の空孔148の分布は、添加するナノ粒子116の構造、寸法、添加量等を調整することにより制御することができる。
以上述べたように、実施形態2のカーボンナノファイバー不織布の製造方法により製造されたカーボンナノファイバー不織布140及び黒鉛化工程S15を経たカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバー146が極細であることだけでなく、当該カーボンナノファイバー146のそれぞれに動物組織由来のナノ粒子116により形成された空孔148が存在するという特徴も備える。個々のカーボンナノファイバー146の外周側の面積に、更に当該空孔148の面積が加わるため、より大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布140となる。このような実施形態2のカーボンナノファイバー不織布又は黒鉛化工程S15を経たカーボンナノファイバーを用いれば、従来よりも更に大きな表面積をもつ炭素材料(電極材料)を実現することができ、より大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。
実施形態1に係るカーボンナノファイバー不織布の製造方法に沿って、カーボンナノファイバー不織布を実際に製造し評価を行った。以下その実験例を説明する。
1.試料の調整
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)を用いた。
溶質としては、第1ポリマーとしてポリアクリロニトリル(PAN)を、第2ポリマーとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いた。
容器としてはビーカーを使用した(図示しない。)。非混和性ポリマー溶液作製工程で使用する撹拌装置は、容器内の撹拌子512(図3等参照。)を回転させて撹拌する通常のマグネティック・スターラーを使用した(図示しない。)。
エレクトロスピニング装置としては、図14で示すエレクトロスピニング装置550を使用した。エレクトロスピニング装置550は、ポリマー溶液を収納するタンクに相当するシリンジ552、ノズル554、ドラム型の回転コレクタ558、電源装置560等を備える。
電気炉は、任意にガスが導入でき、時間軸に対して温度を制御できる通常のものを使用した(図示しない。)。
(1)非混和性ポリマー溶液作製工程S10
実施形態1に沿って、容器に準備したDMFに所定の比率(下記)によるPAN及びPMMAを投入し撹拌した。
効果の確認を行うため、PANとPMMAとの混合比率を、10:0(比較例1)、7:3(比較例2)、5:5(比較例3)及び3:7(実施例)の非混和性ポリマー溶液をそれぞれ作製した(表1参照。)。混合比率以外の条件、例えば濃度等については、非混和性ポリマーの粘度、ターゲットとする平均繊維径、エレクトロスピニングの安定性等を考慮して最適化した値を設定した。
上記した4種類の混合比による試料について、非混和性ポリマー溶液作製工程S10を終えた段階の溶液の相状態(海島構造)をそれぞれ観察した。
観察の結果、表2で報告したとおり、混合比率が7:3(比較例2)及び5:5(比較例3)の非混和性ポリマー溶液は、PANを含む相は連続相(海)となりPMMAを含む相は不連続相(島)となった(図15も併せて参照。)。
一方、混合比率が3:7(実施例)とした場合には、図4に示す非混和性ポリマー溶液が観察され、所期の「PANと、PMMAとが溶媒に溶解され、PANを含む相が不連続相(島)となりPMMAを含む相が連続相(海)となる非混和性ポリマー溶液」を好適に得ることができることを確認した。
図14で示すエレクトロスピニング装置550のシリンジ552に溶液を収納し、ノズル554と回転コレクタ558との距離dを15cmと設定し、ノズル554と回転コレクタ558との間に9kVの電圧を印加してエレクトロスピニングを行った。
エレクトロスピニングは、PANとPMMAとの混合比率が互いに異なる4種類の溶液(比較例2〜3、実施例では非混和性ポリマー溶液)について実施した。その結果、混合比3:7(実施例)の溶液については図7に示す構造の複合ナノファイバー不織布を得た(比較例1〜3に係る不織布の図は本願では特段示さない。)。
4種類の溶液によるそれぞれの不織布及び複合ナノファイバー不織布について、電気炉に投入し、全ての水準に対して同じ雰囲気ガス、同じ温度プロファイルを用いて焼成を行った。
繊維構造安定化処理工程(いわゆる安定化処理)においては、空気雰囲気中において、昇温速度を毎分1℃とした上で300℃にて1時間焼成した(図16参照。)。熱処理(いわゆる炭化処理)においては、窒素雰囲気中において、昇温速度を毎分5℃とした上で900℃にて1時間焼成した(図17参照。)。
図18は、比較例3で作成したカーボンナノファイバー不織布を示す図である。図は電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真である。図19は、実施例及び比較例2のそれぞれにより作製したカーボンナノファイバー不織布を比較説明するために示す図である。図19(a)〜(c)は実施例により作製したカーボンナノファイバー不織布を示す図であり、(d)〜(f)は比較例2により作製したカーボンナノファイバー不織布を示す図である。図19(a)及び図19(d)は電界放射型走査電子顕微鏡によって観察した写真であり、図19(b)及び図19(e)は透過型電子顕微鏡によって観察した写真である。図19(c)及び図19(f)は模式的に示す図である。
PANとPMMAとの混合比率が7:3(比較例2)の場合には、カーボンナノファイバー不織布は図19(d)〜(f)に示す通りの構造となり、5:5(比較例3)の場合には図18(a)〜(d)に示す通りの構造となった。いずれの場合も、カーボンナノファイバー946は、ナノファイバーシェル922に対応する部分が炭化して残留し(942)、その内部に中空状の空孔948が形成された構造となっている。カーボンナノファイバー946の平均直径は約200nmであり、比較的大きい径のファイバーとなった。
一方、PANとPMMAとの混合比率が3:7(実施例)の場合には、図8(a)〜(d)及び図19(a)〜(c)に示す通りの構造となった。非混和性ポリマー溶液の島部分(PAN)が延伸して形成されたカーボンコアの部分が炭化してカーボンナノファイバー146が形成された。カーボンナノファイバー146の平均直径は5nm〜100nmの範囲内にあり、良好に極細に作製された。カーボンナノファイバー不織布140には、上記したカーボンナノファイバー146が数多く含まれることが確認され、従来よりも大きな比表面積をもつカーボンナノファイバー不織布であることを確認した。
このように作成される電気二重層キャパシタは、従来と同様の工程(粉砕、バインダーとの混成及び塗布)は必要になるものの、それに用いられる素のカーボンナノファイバー不織布140が大きな比表面積を有するため、従来よりも大容量の電気二重層キャパシタを実現することができる。
Claims (13)
- 非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、前記第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、前記第1ポリマーを含む相が不連続相となり前記第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する非混和性ポリマー溶液作製工程と、
エレクトロスピニング法により、前記非混和性ポリマー溶液から「前記第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、前記第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアが前記ナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布」を作製する複合ナノファイバー不織布作製工程と、
前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理を前記複合ナノファイバー不織布に施すことにより、前記第2ポリマーを熱分解させるとともに前記第1ポリマーを炭化させて、前記第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製するカーボンナノファイバー不織布作製工程とを含み、
前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、前記不連続相をなす液滴の平均直径が30μm〜500μmの範囲内にある非混和性ポリマー溶液を作製し、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、前記ナノファイバーシェルの平均直径が60nm〜2000nmの範囲内にあり、前記ナノファイバーコアの平均直径が10nm〜200nmの範囲内にある複合ナノファイバー不織布を作製し、
前記カーボンナノファイバー不織布作製工程においては、前記カーボンナノファイバーの平均直径が5nm〜100nmの範囲内にあるカーボンナノファイバー不織布を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項1に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記第1ポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマー、ポリイミド又はポリベンジルイミダゾールからなり、前記第2ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリビニルアルコール(PVA)からなることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項2に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、PAN及びPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%〜35%の範囲内となる条件で非混和性ポリマー溶液を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程と前記カーボンナノファイバー不織布作製工程との間に、前記複合ナノファイバー不織布を200℃〜400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程をさらに含むことを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、ケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物からなるナノ粒子を前記非混和性ポリマー溶液に分散させた非混和性ポリマー溶液から前記複合ナノファイバー不織布を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項5に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記ナノ粒子の平均直径は、1nm〜60nmの範囲内にあることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項5又は6に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記動物組織は、人間の頭髪であることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 非酸化性雰囲気における熱処理により炭化可能な第1ポリマーと、前記第1ポリマーとは混ざり合わない性質を有し、かつ、前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理により熱分解する第2ポリマーとが溶媒に溶解され、前記第1ポリマーを含む相が不連続相となり前記第2ポリマーを含む相が連続相となる非混和性ポリマー溶液を作製する非混和性ポリマー溶液作製工程と、
エレクトロスピニング法により、前記非混和性ポリマー溶液から「前記第2ポリマーからなるナノファイバーシェルの内部に、前記第1ポリマーからなる複数のナノファイバーコアが前記ナノファイバーシェルの長手方向に沿って延在して配列した複合ナノファイバーの集合体からなる複合ナノファイバー不織布」を作製する複合ナノファイバー不織布作製工程と、
前記第1ポリマーを炭化させるための熱処理を前記複合ナノファイバー不織布に施すことにより、前記第2ポリマーを熱分解させるとともに前記第1ポリマーを炭化させて、前記第1ポリマー由来のカーボンからなるカーボンナノファイバー不織布を作製するカーボンナノファイバー不織布作製工程とを含み、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程においては、ケラチンを主成分とする動物組織から水により溶出可能な成分及び有機溶媒により溶出可能な成分を取り除くことによって得られる動物組織加工物からなるナノ粒子を前記非混和性ポリマー溶液に分散させた非混和性ポリマー溶液から前記複合ナノファイバー不織布を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項8に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記第1ポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール樹脂、ピッチ類、セルロース系ポリマー、ポリイミド又はポリベンジルイミダゾールからなり、前記第2ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリビニルアルコール(PVA)からなることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項9に記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記非混和性ポリマー溶液作製工程においては、PAN及びPMMAの合計重量に対するPANの重量の比率が15%〜35%の範囲内となる条件で非混和性ポリマー溶液を作製することを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項8〜10のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記複合ナノファイバー不織布作製工程と前記カーボンナノファイバー不織布作製工程との間に、前記複合ナノファイバー不織布を200℃〜400℃の範囲内にある温度で加熱して繊維構造を安定化させる繊維構造安定化処理工程をさらに含むことを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項8〜11のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記ナノ粒子の平均直径は、1nm〜60nmの範囲内にあることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。 - 請求項8〜12のいずれかに記載のカーボンナノファイバー不織布の製造方法において、
前記動物組織は、人間の頭髪であることを特徴とするカーボンナノファイバー不織布の製造方法。
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