次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係る易開封性袋体1は、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bが図3に示すように複層フィルム10である形態(以降、第一実施形態ということもある。)と、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bが図4に示すように単層フィルム20である形態(以降、第二実施形態ということもある。)と、を包含する。
まず、図1~図3を参照して、第一実施形態について説明する。第一実施形態に係る易開封性袋体1は、図1及び図2に示すように、向い合せに配置された表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bを基材2として袋状の構造を有し、袋詰め状態において開口部3が封をされる袋体である。表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bは、図3に示すように、複層フィルム10であり、複層フィルム10の層のうち袋体1の収容空間9に面する最内層が合成樹脂系の製袋用材料からなるシーラント層11である。シーラント層11は、図3に示すように、層の断面中央部又は層の袋外側部(不図示)に、易カット性樹脂からなる開封予定部8を有する。開封予定部8は、図1に示すように、基材2(2A,2B)の面内方向に線状に伸びた形状を有し、かつ、開封予定部8の一端部が開封用の開始部8aとして袋体の第1の縁(図1では左サイドシール4の縁)にあり、開封予定部8の他端部が開封用の終了部8bとして第1の縁がある辺とは異なる辺の第2の縁(図1では右サイドシール5の縁)にある。開封予定部8の開始部8aと終了部8bとを結ぶ中間部8cが袋体1の胴部であって袋体1の縁よりも内側の部位にあり、開封予定部8を伸長方向に沿って切り裂くことによって袋体1が開封される。
易開封性袋体1は、図1及び図2に示すように、向かい合う基材2(2A,2B)の最内面同士を融着などによって接着してシール部4,5,6,7を設けることによって密封した袋体である。基材2は表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bを含む。本実施形態では、向かい合う2枚の基材2のうち、任意3に選ばれたいずれか一方を表面フィルム2Aとし、他方を裏面フィルム2Bとする。また、表面フィルム2Aと裏面フィルム2Bとがそれぞれ別個の2枚のフィルムであるか、又は1枚のフィルム(一連のフィルム)を折り畳み、折り目を境にして、一方を表面フィルム2A、他方を裏面フィルム2Bとしてもよい。シール部4,5,6,7よりも内側の部分は、内容物が充填される収容空間9になっている。内容物は、特に限定されず、例えば、固体、粉体、粒体、液体、粘体若しくは気体又はこれらの混合物である。
易開封性袋体1の形状は、特に限定されず、例えば、図1に示すように、基材2が四角形状であり、各辺にシール部として、袋体1の左側端部の辺に設けられる左サイドシール4と、袋体1の右側端部の辺に設けられる右サイドシール5と、袋体1の上端部の辺に設けられるトップシール6と、袋体1の下端部の辺に設けられるボトムシール7とを有する四方シール袋の他、三方シール袋(不図示)又は自立袋(不図示)であってもよいし、基材2が四角形状以外の形状である変形袋(不図示)であってもよい。
第一実施形態では、表面フィルム2Aは、例えば、図3に示すように、複層フィルム10である。複層フィルム10は、収容空間9側から順に、シーラント層11とベースフィルム層12とを有する。図3では、表面フィルム2Aを示したが、裏面フィルム2Bについても表面フィルム2Aと同様の層構成及び材質を有する。
シーラント層11は、図3に示すように1層だけからなるか、又は2層以上が共押出された多層構造であってもよい(不図示)。シーラント層11の材質は、合成樹脂系の製袋用材料であれば特に限定されない。合成樹脂系の製袋用材料は、例えば、下記<1>~<29>に例示するもののうちから任意のものが採用されてもよい。
<1> 高密度ポリエチレン(HDPE)
<2> 中密度ポリエチレン(MDPE)
<3> 低密度ポリエチレン(LDPE)
<4> ポリプロピレン(PP)
<5> ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
<6> ポリ塩化ビニル(PVC)
<7> ポリスチレン(PS)
<8> ポリ酢酸ビニル(PVAc)
<9> ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
<10> ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)
<11> AS樹脂(SAN)
<12> アクリル樹脂(PMMA)
<13> ポリアミド(PA)/商品名ナイロン(NY)
<14> ポリアセタール(POM)
<15> ポリカーボネート(PC)
<16> 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)
<17> ポリブチレンテレフタレート(PBT)
<18> ポリエチレンテレフタレート(PET)
シーラント層11の厚さは、特に限定されないが、30~150μmであることが好ましく、40~100μmであることがより好ましい。
ベースフィルム層12(12a,12b,12c,12d)は、図3に示すように2層以上が積層された多層構造であるか、又は1層だけであってもよい(不図示)。ベースフィルム層12の材質は、特に限定されないが、例えば、前記<1>~<29>に例示する合成樹脂系の製袋用材料のうちから任意のものが採用されるか、又は非合成樹脂系の製袋用材料が採用されてもよい。非合成樹脂系の製袋用材料は、例えば、紙又はアルミニウム箔(AL)などの金属である。合成樹脂系の製袋用材料と非合成樹脂系の製袋用材料とが組み合わされて採用されてもよい。ベースフィルム層12のうち最外層12dは、易カット性付与の観点から、二軸延伸を施したPET又はNYであることが好ましい。ベースフィルム層12のうち最外層12dとシーラント層11との間の中間層12a,12b,12cは、例えばLDPEなどを含む接着層、又はALなどのバリア層であることが好ましい。これらの中間層12a,12b,12cは、最外層12d又は最内層であるシーラント層11に保護されているため、最外層12d又はシーラント層11と比較して厚さを薄くすることができる。中間層の厚さを薄くすることによって易カット性の向上に付与することができる。また、ベースフィルム層12(12a,12b,12c,12d)は、酸素、水蒸気又は光などを遮断するバリアコート層を含んでいてもよい。
表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bの好ましい層構成の一例としては、外側から収容空間9側に向かい順に、PET12d/PE12c/AL12b/PE12a/LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)11、又はNY12d/PE12c/AL12b/PE12a/LLDPE11である。本明細書において、/は、隣接し合う二層の境界面を示す。この層構成では、シーラント層11は、LLDPEの1層構造であり、ベースフィルム層12は、PET又はNY/PE/AL/PEの4層構造である。シーラント層11には、LLDPEの他、LDPE、二軸延伸PP(OPP)又は無延伸PP(CPP)などが用いられてもよい。ベースフィルム層12において、PEはサンドイッチラミネート法において溶融樹脂として用いられるポリエチレンであり、例えばPETフィルム又はNYフィルムとAL箔とを接着する役割をもつ。また、PEに代えて接着剤を用いるドライラミネート法でフィルム同士を接着させてもよい。接着剤を用いる場合、接着剤には帯電防止剤又は防曇剤などの各種添加剤を含有させることができる。
本実施形態に係る易開封性袋体1は、開口部3となる予定部分に、ミシン目又はハーフカットなどの開封用の傷がなく、開封予定部8が設けられている。開封予定部8は、易カット性樹脂からなり、袋体1の開封予定部8以外の部分と比して相対的に「低強度」な部分である。開封予定部8以外の部分は、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bの開封予定部8を除いた部分である。この場合、二枚のフィルムが接着一体化されている各シール部4,5,6,7や付属品であるところの嵌合具30(図14に図示)などは、原則として、開封予定部8以外の部分には含まれない。ただし、シール部4,5,6,7の場合、その強度を二分した値を開封予定部8以外の部分の強度とするときには、該シール部4,5,6,7を開封予定部8以外の部分に含めてもかまわない。開封予定部8は、袋体1の他の部分と比して相対的に低強度であるため、その周囲の部分よりも引き裂きが行いやすく、開封予定部8に沿ってカットされやすい。その結果、開封予定部8を伸長方向に沿って引き裂くことで、より小さな力で袋体1をより安定的に開封することができる。また、開封予定部8を設けることによって、袋体1にミシン目又はハーフカットなどの開封用の傷を設けずに袋の開封を容易に行うことができる。
易カット性樹脂は、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate copolymer:略称EVA)又はLDPEである。
袋体1における開封予定部8とその他の部分との相対的な強度については、開封予定部8の引張強度を[S1]とし、開封予定部8以外の部分の引張強度を[S2]とした場合に、下記不等式(1)を満足させるように設定することが好ましく、下記不等式(2)を満足させるものがより好ましい。
不等式(1) 〔[S2]×[1/4]〕≦[S1]≦〔[S2]×[2/3]〕
不等式(2) 〔[S2]×[1/3]〕≦[S1]≦〔[S2]×[1/2]〕
袋体1の強度とは、これを構成している製袋用材料が破断・破壊・降伏などを起こす限界応力のことである。ちなみに、実用上の静的な最大荷重下での袋の破断が問題になる場合、製袋用材料の引張強度を適切に設定する必要がある。また、繰返し荷重を受けて袋の疲労が問題になる場合、製袋用材料について疲労限度を考慮に入れた適切な値を採用する必要がある。一方、袋体1(製袋用材料)に作用してよい設計上の応力の大きさの上限値、すなわち、袋体1の許容応力は、設計時に製袋用材料に作用することが予測される応力(使用応力)を指す。この袋体1の許容応力についても、たとえば、荷重を単に断面積で割った平均的な応力なのか各点の局所的な応力なのかを適切に決める必要がある。袋体1(製袋用材料)の強度は、通常、これらの事項やその他の事項を踏まえて基準強度を決定したり、その基準強度に安全率を加算したりして設定する。すなわち、袋体1の強度は、〔[製袋用材料の基準強度]+[製袋用材料の基準強度×安全率]〕のように設定する。さらに、この安全率ついては、材料強度の不確実性・負荷の不確実性・袋詰め対象物の重要性などを考慮に入れて設定している。この安全率が経験則を参照して設定されることもある。
上記[S1]の具体的な引張強度については、50kg/cm2~190kg/cm2の範囲内で設定されることが好ましい。より望ましい[S1]の値は70kg/cm2~160kg/cm2の範囲内にある。さらに望ましい[S1]の値は80kg/cm2~140kg/cm2の範囲内にある。最も望ましい[S1]の値は、90kg/cm2~120kg/cm2の範囲内にある。既述の製袋用材料(フィルム)で製袋される袋体11の場合、開封予定部8の引張強度やその他の部分の引張強度は、それらの引き裂き抵抗力とか引き裂き抵抗性とかに比例するものである。したがって、開封予定部8の強度[S1]を引張強度で規定することに特段の問題がない。換言すると、開封予定部8の引き裂き抵抗力を設定するとき、ここに掲げた具体的数値の範囲内で引張強度を設定すればよいである。
開封予定部8は、図1に示すように、基材2(2A,2B)の面内方向に線状に伸びた形状を有する。ここで、面内方向とは、基材2(2A,2B)の表面に対して水平な任意の方向をいう。よって、「基材2(2A,2B)の面内方向に線状に伸びた形状」とは、基材2(2A,2B)の表面に対して水平ないずれかの方向に伸びる線状であり、開封予定部8が伸びる方向については特に限定されない。
開封予定部8の一端部は、袋体の第1の縁にあり、開封用の開始部8aとなる。さらに、開封予定部8の他端部は、第2の縁にあり、開封用の終了部8bとなる。図1では、一例として、第1の縁が左サイドシール4の縁であり、第2の縁が右サイドシール5の縁である形態を示したが、第2の縁が第1の縁がある辺とは異なる辺の縁であればよく、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の縁が左サイドシール4の縁であり、第2の縁がトップシール6の縁であってもよい(不図示)し、第1の縁がトップシール6の縁であり、第2の縁がボトムシール7の縁であってもよい(不図示)。また、本実施形態では、開封予定部8の両端部のうち、任意に選ばれた一端部を開始部8aとし、他端部を終了部8bとしたにすぎず、開始部8aと終了部8bとは基本的な構成を相互に同じくする。このため、開始部8aと終了部8bとを相互に入れ替えても開封予定部8の機能は実質的に同じである。
中間部8cは、開封予定部8の開始部8aと終了部8bとの間にあり、袋体1の胴部であって袋体1の縁よりも内側の部位にある。すなわち、中間部8cは、基材2のうち収容空間9を構成する部位にある。そして、開封予定部8に沿って基材2を切り裂いて開封した部分が開口部3となる。
本実施形態では、袋体1の外形状、すなわち表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bの外形状が四角形状であり、開封予定部8が、四角形状の袋体1の対向しあう縁を結ぶライン、すなわち、フィルム幅方向に平行な方向に伸びることが好ましい。このようにすることによって、製袋時のミミ(基材2のうち製袋時に袋体となる部分から外れた部分であって、通常廃棄される部分)を減らして製造効率を向上させることができる。
第一実施形態では、開封予定部8は、図3に示すようにシーラント層11の断面中央部に存在するか、又は図7に示すようにシーラント層11の袋外側部に存在する。これらのようにすることによって、開封予定部8と収容空間9との間は必ずシーラント層11を構成する樹脂で隔てられ、開封予定部8が収容空間9側の表面S1上に露出しない。その結果、袋体1の内圧によって、開封予定部8から破袋することを防止することができる。また、開封予定部8がシーラント層11の断面中央部に存在するとき、開封予定部8は、図3に示すように、シーラント層11の収容空間9側とは反対側の表面S2上にも露出しない。開封予定部8がシーラント層11の袋外側部に存在するとき、開封予定部8は、図7に示すように、シーラント層11の収容空間9側とは反対側の表面S2上、すなわち第一実施形態ではベースフィルム層12側の表面上には露出するが、この露出した部分ベースフィルム層12で覆われて保護される。その結果、袋体1の外圧によって、開封予定部8から破袋することを防止することができる。以上のとおり、第一実施形態に係る易開封性袋体1は、外圧及び内圧の両方に対する耐久性を備える。
開封予定部8の断面形状は、図3では一例として四角形状である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ひし形形状(図6に図示)、半円形状(図7に図示)、円形状(不図示)、楕円形状(不図示)、三角形状(不図示)又はひょうたん形状(不図示)であってもよい。
シーラント層11の厚さ方向Tにおける、シーラント層11の厚さに対する開封予定部8の最大厚さの割合は、20%以上であることが好ましい。ここで、開封予定部8の最大厚さとは、シーラント層11の厚さ方向Tにおいて開封予定部8が最も幅広となる部分の厚さをいう。シーラント層11の厚さ方向Tにおける、シーラント層11の厚さに対する開封予定部8の最大厚さの割合は、95%以下であることが好ましい。シーラント層11の厚さ方向Tにおける、シーラント層11の厚さに対する開封予定部8の最大厚さの割合は、40~90%であることがより好ましく、70~90%であることが特に好ましい。
開封予定部8は、表面フィルム2A若しくは表面フィルム2Bのいずれか一方に設けられるか、又は表面フィルム2A及び表面フィルム2Bの両方に設けられる。本実施形態では、開封予定部8が、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bにそれぞれ少なくとも一つ設けられていることが好ましい。
次に、図1、図2及び図4を参照して、第二実施形態について説明する。第二実施形態に係る易開封性袋体1は、図1及び図2に示すように、向い合せに配置された表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bを基材2として袋状の構造を有し、袋詰め状態において開口部3が封をされる袋体である。表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bは、図4に示すように、単層フィルム20であり、単層フィルム20は合成樹脂系の製袋用材料からなる単層21を有する。単層21は、図4に示すように、層21の断面中央部に易カット性樹脂からなる開封予定部8を有する。開封予定部8は、図1に示すように、基材2の面内方向に線状に伸びた形状を有し、かつ、開封予定部8の一端部が開封用の開始部8aとして袋体の第一の縁(図1では左サイドシール4の縁)にあり、開封予定部8の他端部が開封用の終了部8bとして第1の縁4がある辺とは異なる辺の第2の縁(図1では右サイドシール5の縁)にある。開封予定部8の開始部8aと終了部8bとを結ぶ中間部8cが袋体1の胴部であって袋体1の縁よりも内側の部位にあり、開封予定部8を伸長方向に沿って切り裂くことによって袋体1が開封される。
第二実施形態は、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bの層構成が異なる以外は、基本的な構成を第一実施形態と同じくする。このため、第一実施形態と異なる構成を中心に説明し、第一実施形態と共通する構成については説明を省略する。
第二実施形態では、表面フィルム2Aは、例えば、図4に示すように、単層フィルム20である。単層フィルム20は、単層21を有する。図4では、表面フィルム2Aを示したが、裏面フィルム2Bについても表面フィルム2Aと同様の層構成及び材質を有する。
単層21の材質は、特に限定されず、合成樹脂系の製袋用材料であり、例えば、前記<1>~<29>に例示するもののうちから任意のものが採用されてもよい。単層21の材質は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの熱によって融着する熱融着性樹脂であることが好ましく、切れ性の観点から直線状低密度ポリエチレン(LLDPE)又は中密度ポリエチレン(MDPE)であることがより好ましい。
第二実施形態では、開封予定部8は、図4に示すように単層21の断面中央部に存在する。これによって、開封予定部8と収容空間9との間は必ず単層21を構成する樹脂で隔てられ、開封予定部8が収容空間9側の表面S1上に露出しない。その結果、袋体1の内圧によって、開封予定部8から破袋することを防止することができる。また、開封予定部8と袋体1の外側との間も必ず単層21を構成する樹脂で隔てられ、開封予定部8は、シーラント層11の収容空間9側とは反対側の表面S2上、すなわち第二実施形態では袋体1の外側の表面上にも露出しない。その結果、袋体1の外圧によって、開封予定部8から破袋することを防止することができる。以上のとおり、第二実施形態に係る易開封性袋体1は、外圧及び内圧の両方に対する耐久性を備える。
単層21の厚さ方向Tにおける、単層21の厚さに対する開封予定部8の最大厚さの割合は、20%以上であることが好ましい。ここで、開封予定部8の最大厚さとは、単層21の厚さ方向Tにおいて開封予定部8が最も幅広となる部分の厚さをいう。単層21の厚さ方向Tにおける、単層21の厚さに対する開封予定部8の最大厚さの割合は、95%以下であることが好ましい。単層21の厚さ方向Tにおける、単層21の厚さに対する開封予定部8の最大厚さの割合は、40~90%であることがより好ましく、70~90%であることが特に好ましい。
次に、図5~図7を参照して、開封予定部8の変形形状の例について説明する。図5及び図6の変形形状は、第一実施形態に係る易開封性袋体及び第二実施形態に係る袋体のいずれにも適用でき、図7の変形形状は、第一実施形態に係る易開封性袋体に適用できる。図5及び図6において、第一実施形態では、S1はシーラント層11の収容空間9側の表面を示し、S2はシーラント層11のベースフィルム層12側の表面を示す。また、第二実施形態では、S1は単層21の収容空間9側の表面を示し、S2は単層21の袋体1の外側の表面を示す。
本実施形態に係る易開封性袋体1では、図5に示すように、開封予定部8とシーラント層11との界面又は開封予定部8と単層21との界面が凹凸形状をなしていることが好ましい。凹凸形状によって界面の表面積が大きくなるため、易カット性樹脂とシーラント層11の樹脂との接着力が増し、より安定的な易カット性を付与することができる。凹凸形状は、特に限定されず、例えば、図5に示すような複数の円弧を連ならせた形状の他、直線がZ字状に複数回折れ曲がったジグザグ形状(不図示)であってもよい。
本実施形態に係る易開封性袋体1では、図6又は図7に示すように、開封予定部8の線状を横断する断面形状が、開封予定部8の中央部から基材面内方向に向って先細り形状であることが好ましい。開封予定部8の線状を横断する断面形状における基材面内方向Pは、開封予定部8の線状を横断する断面において表面フィルム2A及び/又は裏面フィルム2Bの表面S1又はS2と平行な方向である。先細り形状は、シーラント層11の厚さ方向Tにおける幅が周囲よりも相対的に広い幅広部41と、シーラント層11の厚さ方向Tにおける幅が周囲よりも相対的に狭い先細部42とを有する形状である。先細り形状は、基材面内方向Pにおいて幅広部41の両脇に先細部42がある形状であることが好ましく、そのような形状は、例えば、図6に示すようなひし形形状、図7に示すような半円形状、又は楕円形状(不図示)などの幅広部41が一つである形状の他、楕円形状の中央部がくびれたひょうたん形状のような幅広部41が複数ある形状(不図示)であってもよい。また、先細り形状は、三角形状又はしずく形状などのような基材面内方向Pにおいて幅広部41の一方の脇に先細部42がある形状(不図示)であってもよい。開封予定部8の断面形状を先細り形状とすることによって、開封による亀裂箇所が開封予定部8の幅広部41に集中しやすくなるため、亀裂箇所の輪郭をより綺麗に開封することができる。
本実施形態に係る易開封性袋体1では、図7に示すように、開封予定部8の線状を横断する断面形状が、開封予定部8の中央部から基材面内方向に向って先細り形状であり、かつ、開封予定部8とシーラント層11との界面又は開封予定部8と単層21との界面が凹凸形状をなしていることが好ましい。このとき、開封予定部8は、図7に示すようにシーラント層11の断面の袋外側部にあるか、又は図6に示すようにシーラント層11又は単層21の断面中央部にあってもよい。
次に、図8~図13を参照して、開封予定部8の配置例について説明する。これらの変形形態は、開封予定部8を表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bにそれぞれ設け、表面フィルム2Aに設けられた開封予定部8と裏面フィルム2Bに設けられた開封予定部8とを相互にずれた状態で平行に配置した形態であり、第一実施形態に係る易開封性袋体及び第二実施形態に係る易開封性袋体のいずれにも適用できる。開封予定部8をこのように配置することで、開封時の切り口に段差を設けやすい。段差によって、袋体1の開口部3を広げやすくなる。
本実施形態に係る易開封性袋体1では、図8及び図9に示すように、開封予定部8(81,82)は、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bにそれぞれ少なくとも一つ設けられており、かつ、表面フィルム2Aと裏面フィルム2Bとが、向い合せに重ねられた状態のときに、表面フィルム2Aに設けられた開封予定部81と裏面フィルム2Bに設けられた開封予定部82とが相互にずれた状態で平行に配置されていることが好ましい。開封された切り口に段差が生じるため、袋体1の開口部3を広げやすくなる。表面フィルム2Aと裏面フィルム2Bとが向かい合わせに重ねられたとき、袋体1の平面視において隣り合う開封予定部81,82同士の間隔は、特に限定されないが、1~8mmであることが好ましく、2~5mmであることがより好ましい。なお、図8及び図9では、表面フィルム2Aに設けられた開封予定部81が裏面フィルム2Bに設けられた開封予定部82よりも袋体1の縁よりに設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されず、裏面フィルム2Bに設けられた開封予定部82が表面フィルム2Aに設けられた開封予定部81よりも袋体1の縁よりに設けられた形態であってもよい(不図示)。また、表面フィルム2A及び/又は裏面フィルム2Bが2本以上の開封予定部を有していてもよい。
本実施形態に係る易開封性袋体1では、図10及び図11に示すように、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bのいずれか一方に開封予定部8(84,85)が平行に2本設けられており、他方に開封予定部8(83)が1本設けられており、表面フィルム2Aと裏面フィルム2Bとが、向い合せに重ねられた状態のときに、2本の開封予定部8(84,85)の挟まれた領域に沿って1本の開封予定部8(83)が配置されていることが好ましい。裏面フィルム2Bで開封予定部84又は85のいずれが切り裂かれたとしても、表面フィルム2Aの切り裂きによって生じた縁と裏面フィルム2Bの切り裂きによって生じた縁との間に段差を生じさせることができる。また、例えば、開封用の開始部8aにおいて下側の開封予定部85が切り裂かれていたところ、切り裂きの伸展が下側の開封予定部85の線上から逸脱してそれに平行する上側の開封予定部84が切り裂かれることとなっても、表面フィルム2Aの切り裂きによって生じた縁と裏面フィルム2Bの切り裂きによって生じた縁との間に段差を生じさせることができる。このように、開封予定部8(84,85)を平行に2本設けることによって、開封された切り口により確実に段差が生じるため、袋体1の開口部3を広げやすくなる。2本の開封予定部8(84,85)の挟まれた領域に設けられた1本の開封予定部8(83)は、2本の開封予定部8(84,85)と平行に配置されることが好ましい。向かい合わせに重ねられたとき、袋体1の平面視において隣り合う開封予定部83,84,85同士の間隔は、特に限定されないが、1~8mmであることが好ましく、2~5mmであることがより好ましい。なお、図10及び図11では、表面フィルム2Aに開封予定部83が1本設けられ、裏面フィルム2Bに開封予定部84,85が2本設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されず、裏面フィルム2Bに開封予定部83が1本設けられ、表面フィルム2Aに開封予定部84,85が2本設けられた形態であってもよい(不図示)。
本実施形態に係る易開封性袋体では、図12及び図13に示すように、表面フィルム2Aは開封予定部8(86,87)を少なくとも2本有し、開封予定部8(86,87)は平行に配置されており、裏面フィルム2Bは開封予定部8(88,89)を少なくとも2本有し、開封予定部8(88,89)は平行に配置されており、かつ、表面フィルム2Aと裏面フィルム2Bとが、向い合せに重ねられた状態のときに、表面フィルム2Aに設けられた開封予定部8(86,87)と裏面フィルム2Bに設けられた開封予定部8(88,89)とが相互にずれた状態で平行に配置されていることが好ましい。表面フィルム2Aでは開封予定部86又は87のいずれが切り裂かれ、裏面フィルム2Bでは開封予定部88又は89のいずれが切り裂かれたとしても、表面フィルム2Aの切り裂きによって生じた縁と裏面フィルム2Bの切り裂きによって生じた縁との間に段差を生じさせることができる。また、例えば、開封用の開始部8aにおいて表面フィルム2Aの上側の開封予定部86が切り裂かれていたところ、切り裂きの伸展が上側の開封予定部86の線上から逸脱してそれに平行する下側の開封予定部87が切り裂かれることとなっても、表面フィルム2Aの切り裂きによって生じた縁と裏面フィルム2Bの切り裂きによって生じた縁との間に段差を生じさせることができる。このように、開封された切り口により確実に段差が生じるため、袋体1の開口部3を広げやすくなる。向かい合わせに重ねられたとき、袋体1の平面視において隣り合う開封予定部86,87,88,89同士の間隔は、特に限定されないが、1~8mmであることが好ましく、2~5mmであることがより好ましい。また、表面フィルム2A及び/又は裏面フィルム2Bが3本以上の開封予定部を有していてもよい。
図10~図13に示すように、1枚のフィルムに開封予定部8を2本以上設ける代わりに、例えば、図11において開封予定部84を開封予定部85に向けて延長して開封予定部85と一連に繋げた細長い形態も考えられる。しかし、このような形態では、開封予定部8のような低強度な部分の占める割合が大きくなり、基材2の強度が低下するおそれがある。このため、図10~図13に示すように、開封予定部8を複数本に分けて設けることがより好ましい。
次に、図14~図16を参照して、第一実施形態及び第二実施形態に係る易開封性袋体1(以降、まとめて本実施形態に係る易開封性袋体ということもある。)1の変形形態の例について説明する。
図14は、本実施形態に係る易開封性袋体の変形例を示す平面図である。図15は、図14のC-C線断面図である。本実施形態に係る易開封性袋体1では、図14及び図15に示すように、開封予定部8は、袋体1の縁(図1ではトップシール6の縁)寄りに設けられており、かつ、袋体1の袋口を開閉するための嵌合具30が、開封予定部8よりも袋体1の中央寄りに設けられていることが好ましい。嵌合具30によって再封することができる。
嵌合具30は、再封可能な構造であればよく、その構造は特に限定されない。例えば、嵌合具30として、図15に示すように、一対の雄部材31と雌部材32とを有し、雄部材31と雌部材32とが係脱可能に係合する構造を有するものが使用できる。また、嵌合部30は、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bと別体であるか(図15に図示)、又は表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bと一体であってもよい(不図示)。
嵌合具30と開封予定部8とは、並列して設けられることが好ましく、互いに平行に設けられることがより好ましい。また、図14及び図15では、一例として嵌合具30をトップシール6の縁に沿って設けた形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、嵌合具30を左サイドシール4の縁に設けるか(不図示)、右サイドシール5の縁に設けるか(不図示)、又はボトムシール7の縁に沿って設けてもよい(不図示)。
図16は、ノッチを有する易開封性袋体の一例を示す平面図である。本実施形態に係る易開封性袋体は、図16に示すように、開封用の開始部8aにノッチ加工15が施されている形態を包含する。従来の開封予定部8がない袋体ではノッチ加工15を設けても、シーラント層11又は単層21が厚いため、基材2を引き裂いたときに亀裂部が延びてしまって切り裂きをきれいに伝播させることができないところ、本実施形態では、開封予定部8を設けた上でノッチ加工15を設けることで、ノッチ加工15を始点に基材2を切り裂きやすくなり、更に開封予定部8に沿ってきれいに切り裂きを伝播させることができる。ノッチ加工15は、特に限定されず、例えば、Vノッチ(図16に図示)、Iノッチ(不図示)、Uノッチ(不図示)又は特許文献2のような多数配列のノッチなどの従来のノッチ加工である。
図8~図13に示すように袋体1の平面視において開封予定部8を複数本並列させたとき、ノッチ加工15の位置は、少なくともいずれか1本の開封予定部8の開始部8aに一致させることが好ましい。例えば、ノッチ加工15の位置は、図8では符号81が付された開封予定部、図10では符号83が付された開封予定部、図12では符号88が付された開封予定部の開始部8aに一致させてもよい。これらの開封予定部81,83,88の開始部8aから切り裂き始めることによって、切り裂きの伝播が開封予定部81,83,88から逸脱したとしても、これらの開封予定部81,83,88に並列する開封予定部82,84,85,86,87,89が引き続き切り裂かれるため、袋体の第1の縁(図8、図10、図12では左サイドシール4の縁)から第2の縁(図8、図10、図12では右サイドシール5の縁)にわたって、より確実に基材2を切り裂くことができ、袋体1の開口部を確保することができる。また、ノッチ加工15は、開始部8aに加えて終了部8bに更に設けてもよい。
本実施形態に係る易開封性袋体1の製造方法は、基材の製造工程と、製袋工程と、を含む。基材の製造工程では、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bが、従来のフィルム製造方法で製造される。本実施形態では、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bが、インフレーションフィルム成形によって製造されることが好ましい。インフレーションフィルム成形では、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bが図3に示すように複層フィルム10であるときは、ベースフィルム層12を構成する樹脂とシーラント層11となる樹脂とが層をなして筒状に押出され、表面フィルム2A及び裏面フィルム2Bが図4に示すように単層フィルム20であるときは、単層21を構成する樹脂が筒状に押出される。そして、押し出された樹脂の筒中に空気を吹き込んで膨らませ、これをボビンなどに巻き取ることによって基材の原反が製造される。本実施形態では、インフレーション成形において、開封予定部8となる易カット性樹脂は、シーラント層11の断面中央部若しくは袋外側部、又は単層21の断面中央部となる部分に配置されるように、シーラント層11又は単層21となる樹脂とともに押出される。このような成形方法では、押出成形材料の着色が自由に行える。したがって、開封予定部8となる易カット性樹脂をシーラント層11又は単層21となる樹脂と同色にしたり、開封予定部8となる易カット性樹脂をシーラント層11又は単層21となる樹脂と異色としたりすることが任意に行える。また、製袋工程では、基材の製造工程で得られた基材の原反を適当な長さで切断するとともに、ヒートシールを施すことで袋体1が製造される。
袋体1の基材2のフィルム構成では、最内層であるシーラント層11は通常、内容物保護の観点から他の層と比べて3~4倍の厚さが求められる。そのため、他の層に易カット性を施していても袋開封時にはこの分厚いシーラント層11によって引き裂き抵抗が高くなってしまい、カットの方向性を定めることも困難な上に、消費者、特にお年寄りや子供、身体の不自由な消費者には開封が困難になってしまっていた。逆に、袋体1の耐久性を低くしてしまうと破袋リスクが高くなり、内容物の保護が図れない。このように袋体の強度は、その利便性と相対関係にある。この現状を打破するため、本発明者は、分厚いシーラント層11又は単層21の開封予定線上のみに易カット性樹脂を配置することによって、袋体1の開封抵抗を低下させながら、収容空間9と開封予定部8との間には必ずシーラント層11の樹脂又は単層21の樹脂を隔てて易カット性樹脂が袋体1の収容空間9に露出しないようにすることによって、袋体1に内圧がかかっても内部からの破袋を防ぐことができることを見出して本願発明を完成させた。そして、本発明は、袋体1の耐久性を保持しながら老若男女に開封し易い、強度とその利便性を同時に得ることができる袋体1を提供することができる。また、本実施形態では、易カット性樹脂を、切れ性の悪いシーラント層11内又は単層21内の袋体1の開封予定部分にのみ配置することによって易開封性を付与しているため、袋体1の表面にミシン目又はハーフカットなどの開封用の傷がない。さらに、開封予定部8が袋体1の収容空間9側に直接露出しない位置関係になっている。これらの構成によって、次のような効果が得られる。
・開封用の傷に依存せずとも袋の開封が容易に行えること
・袋の健全性を高めて信頼性を向上させること
・外観上の体裁をより良好なものにすること
・開封操作性を向上させること
・耐久性を向上させること
・開封構成の簡潔化をはかること
・袋製上の製造難易度を緩和させること
・製品のコストダウンをはかること
・袋内圧による破袋を防止すること